JP5469870B2 - リグニンペルオキシオダーゼの製造方法 - Google Patents
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Description
ヒトの皮膚および毛髪の色は、植物および微生物にも存在する色素であるメラニンの量、性状および分布によって決定される。
皮膚を明色化する(美白化する)製品がこの数年の間でますます大衆化している。美白用製品の主目的は、皮膚の色を薄くするか、皮膚を白くすることであり、あるいは、肝斑、そばかす、妊娠斑および老人性色素斑などの色素沈着障害を処置することである。数種類の美白用製品が現在、入手可能である。
本発明は、例としてだけであるが、添付されている図面を参照して、本明細書中に記載される。次に図面を詳しく具体的に参照して、示されている細目は、例としてであり、また、本発明の好ましい実施形態の例示的な議論のためだけのものであり、従って、本発明の原理および概念的態様の最も有用かつ容易に理解された記述であると考えられるものを提供するために示されていることが強調される。これに関して、記述を図面と一緒に理解することにより、本発明のいくつかの形態が実際にどのように具体化され得るかが当業者には明らかになるので、発明の構造的詳細を、発明の基本的な理解のために必要であるよりも詳細に示すことは試みられていない。
皮膚の明色化を最適化および制御するために、リグニン改変酵素は、好ましくは、皮膚を明色化する目的のために配合される化粧用組成物に含まれる。
リグニン改変酵素(例えば、リグニンペルオキシダーゼなど)は、1U/g〜100U/gの範囲から選択される濃度で本発明の化粧用組成物に含まれる。現在知られている形態によれば、本発明の化粧用組成物に含まれるリグニン改変酵素は、5U/g〜100U/gの範囲から選択される濃度で提供される。リグニン改変酵素の好ましい濃度は、組成物の具体的な使用に従って選択されることが理解され、従って、一般的な皮膚明色化のためには、5U/g〜20U/gの好ましい濃度が利用され、一方で、そばかす明色化のためには、5U/g〜100U/gのより広い濃度が利用される。
有効成分(例えば、LIP)の経皮吸収を高めるために、数多くの薬剤の1つまたは複数を化粧用組成物に加えることができ、これらには、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、界面活性剤、アゾン、アルコール、アセトン、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。
本明細書中に開示される薬剤の薬学的に効果的な量に加えて、本発明のこの態様の化粧用組成物はまた皮膚科学的に許容され得るキャリアを含む。
本発明の組成物において利用されるキャリアは広範囲の様々な形態であり得る。これらには、水中油型エマルション、油中水型エマルション、水中油中水型エマルションおよび油中水中シリコーン型エマルション(これらに限定されない)を含むエマルションキャリア、クリーム、軟膏、水溶液、ローションまたはエアロゾルが含まれる。当業者によって理解されるように、特定の成分は、組成物における成分の水溶解性/分散性に依存して、水相または油/シリコーン相のいずれかに主に分布する。
化粧用組成物は、下記において記載されるように、溶液、ローション、スプレー、クリーム、軟膏、膏薬、ゲルなどを含む、皮膚への適用のために化粧品業界によって利用されている様々な形態のいずれかで配合することができる。
ローションおよびクリーム(これらに限定されない)を含む本発明の局所用組成物は、皮膚科学的に許容され得る皮膚軟化剤を含むことができる。そのような組成物は、好ましくは、約2%〜約50%の皮膚軟化剤を含む。本明細書中で使用される「皮膚軟化剤」は、乾燥の防止または軽減のために、そして同様に皮膚の保護のために有用である物質を示す。広範囲の様々な好適な皮膚軟化剤が知られており、これらを本発明において使用することができる。例えば、Sagarin、Cosmetics,Science and Technology(第2版、第1巻、3243頁、1972年)を参照のこと;これには、皮膚軟化剤として好適な物質の数多くの例が含まれる。好ましい皮膚軟化剤はグリセリンである。グリセリンは、好ましくは、約0.001%〜約20%(より好ましくは0.01%〜約10%、最も好ましくは約0.1%〜約5%)の量で使用され、例えば、3%の量で使用される。
有効成分
本発明の教示に従って配合される毛髪明色化用組成物は、本明細書中上記に記載される酸化性の薬剤および媒介因子を含む。
軟化剤には、炭化水素オイルおよびワックス(例えば、鉱油およびワセリンなど)、植物および動物の油脂(例えば、オリーブ油、パーム油、ひまし油、トウモロコシ油およびダイズ油など、ならびに、ラノリンおよびその誘導体(ラノリン、ラノリン油、ラノリンワックスおよびラノリンアルコールなど)など)が含まれるが、これらに限定されない。他の軟化剤には、10個〜20個の炭素原子を有する脂肪酸(例えば、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸およびパルミチン酸などを含む)のエステル、例えば、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸プロピル、ミリスチン酸ブチル、ステアリン酸プロピル、イソステアリン酸プロピルおよびパルミチン酸プロピルなどが含まれる。他の軟化剤には、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、イソステアリン酸およびパルミチン酸などを含む、10個〜20個の炭素原子を有する脂肪酸が含まれる。軟化剤にはまた、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコールおよびステアリルアルコールなどの、10個〜20個の炭素原子を有する脂肪アルコールが含まれる。
乳化剤/界面活性剤もまた、本発明の毛髪明色化用組成物によって利用されることが好ましい。
酸加水分解に対して安定なコンディショナー薬剤(例えば、エトキシル化モノクアド(quad)とともに少なくとも1つの第四級アンモニウム成分を有するシリコーン化合物など)もまた、本発明の毛髪明色化用組成物を安定化し、場合により粘性を高めるために利用されることが好ましい。
P.chrysosporium菌におけるリグニンペルオキシダーゼ
P.chrysosporium BKM−F−1767の培養物の細胞外液においてリグニン分解活性を示すヘムタンパク質が12個以上存在する。これらは、リグニンペルオキシダーゼ(LIP)およびマンガンペルオキシダーゼ(MNP)の2つのタイプのグリコシル化ヘムペルオキシダーゼに分類することができる。H1、H2、H6、H7、H8およびH10のイソ酵素がLIPであることが報告され、H3、H4、H5およびH9がMNPとして同定されている(Farrellら、1989)。P.chrysosporiumのこれらのLIPイソ酵素は、一群の構造的に関連した遺伝子のファミリーによってコードされており、その物理的特性、基質特異性および安定性が異なる(Farrellら、1989;Stewartら、1992)。それらの分泌を生じさせるプロセスの一部として、いくつかのLIPイソ酵素はタンパク質分解的に切断され、また、グリコシル化される(Ghose、1987;Ritchら、1991;TienおよびKirk、1984)。また、H2、H6、H8およびH10のLIPイソ酵素は、アスパラギン結合型オリゴ糖に含有されるマンノース−6−リン酸成分においてリン酸化されることが報告されている。時間をおいた細胞外液の分析から、イソ酵素H1は、おそらくは、H2の翻訳後の脱リン酸化に由来するという示唆が得られている(KuanおよびTien、1989)。
リグニンペルオキシダーゼを産生させるためのファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)菌の成長−ファネロカエテ・クリソスポリウム菌BKMF−1767(ATCC24725)を2%麦芽抽出物寒天の保存用斜面培養(Difxo、Detroit、MI、米国)において4℃で維持した。
100mlのP.chrysosporium成長用基礎培地(x10)(下記の配合を参照のこと);
10mlのCaCl2ストック液(13.2g/l)(Sigma−Aldrich Corp.、St Louis、MO、米国)。最終濃度、0.132g/L;
12mlのグリセロールストック液(50g/100ml)(Frutarom、イスラエル)。最終濃度、6g/L。
100mlのCaCl2ストック液(13.2g/l)(Sigma、米国)。最終濃度、0.0132g/l;
120mlのグリセロールストック液(50g/100ml)(Frutarom、イスラエル)。最終濃度、6g/l;
50mlのTween−80ストック液(10.8ml/100ml)(Sigma、米国)。最終濃度、0.54ml/l;
1000mlのP.chrysosporium成長用基礎培地(x10)(下記の配合を参照のこと);
3.36gのベラトリルアルコール(Sigma、米国)。最終濃度、2mM。
酵素クリーム用の水相:
0.35%(w/w)DMDMヒダントイン(Sharon Lab、イスラエル);
2%(w/w)グリセリン(Cognis、ドイツ);
0.1%(w/w)ベラトリルアルコール(3−ジメトキシベンジルアルコール、Sigma、米国);
81.65%(w/w)DDW(RO Water、イスラエル);
0.2%(w/w)Rhodicare D(キサンタンガム、Rhodia、フランス);
4%(w/w)トランスキュトール(PEG−400、エトキシジグリコール、Gattefoses、フランス);
酵素クリーム用の油相:
5%軽質鉱油;
2.5%(w/w)ドラゴリン100SEP(GMS&PEG−100ステアラート、Dragoco、ドイツ);
3%(w/w)セチルアルコール(Cognis、ドイツ);
0.2%(w/w)ソルビン酸カリウム(Chisso Corp.、日本);
1%(w/w)brij721(Uniqema、イタリア)。
活性化剤クリーム用の水相:
82.888(w/w)DDW(RO Water、イスラエル);
0.1%(w/w)EDTA二ナトリウム(Merck、ドイツ);
4%(w/w)トランスキュトール(PEG−400、エトキシジグリコール、Gattefosse、フランス);
0.1%(w/w)ソルビン酸カリウム(Chisso Corp.、日本);
活性化剤クリーム用の油相:
3.5%(w/w)brij72(Steareth−2、Uniqema、イタリア);
2.5%(w/w)brij721(Steareth−20、Uniqema、イタリア);
5%(w/w)鉱油;
1.3%(w/w)セチルアルコール(Cognis、ドイツ);
0.5%(w/w)シリコン350(Dimethicon、Dow Corning、米国);
0.1%(w/w)ソルビン酸カリウム(Chisso Corp.、日本)。
(実施例1)
P.chrysosporiumからのLIPの精製
P.chrysosporiumから得られた高度に精製されたLIP H1の調製−LIPイソ酵素H1をP.chrysosporiumから精製するために、菌を、本明細書中上記の方法の節で詳しく記載されたようにSTR発酵装置(図2)において成長させた。最初のLIP活性が48時間の成長の後に検出され、成長が120時間まで維持されたとき、活性の著しい増大が検出された(図3)。LIPイソ酵素H1を精製するために、菌の細胞外液を最大LIP活性の時(120時間)に集めた。その後、方法のところで記載されたように、LIPイソ酵素H1タンパク質を精製し、その濃度が測定された。従って、上記の装置および条件を使用して、LIPを確実に産生させることができ、そのH1イソ酵素をHPLCによって精製することができる。
精製されたLIPを使用する水相酸化におけるメラニンの最適化
LIPによるメラニン酸化のために必要とされる条件を最適化するために、酸化反応の重要な成分のそれぞれの最適な濃度を独立的に決定した。
クリーム配合物においてLIPを使用するメラニンの酸化
メラニンを酸化するLIPイソ酵素H1の能力をさらに実証するために、インビボでの皮膚明色化に向けた中間段階として、LIP活性が、水相に可溶化されたメラニンに対するクリーム配合物において調べられた。
クリーム配合物における精製LIP H1によるインビボでの皮膚および毛髪の明色化
皮膚および毛髪をインビボで明色化するLIPの能力を調べるために、クリーム配合物および水性配合物における酵素が皮膚および毛髪にそれぞれ加えられた。
LIP調製プロセスのスケールアップ
商業的目的のために有用な多量のリグニンペルオキシダーゼ(LIP)を製造するために、LIPを、スケールアップされたプロトコルを使用して、P.chrysosporium菌から精製した。
LIPクリームについての皮膚科学的試験:正常な皮膚における低アレルギー誘発性試験、過敏性皮膚試験および過敏化攻撃試験
LIPクリームの皮膚科学的性質を特徴づけるために、また、化粧用製品としての使用のための前提条件として、LIPクリームがいくつかの皮膚科学的試験に供された:低アレルギー誘発性試験、正常な皮膚における過敏化攻撃試験、および過敏性皮膚における過敏化攻撃試験。
正常な皮膚における皮膚科学的試験のための研究被験者:この研究では、年齢範囲が18歳〜64歳である50名の志願者(9名の男性および41名の女性)が含まれた。被験者は良好な全身的健康状態にあり、パッチが当てられる領域において何らかの認められる皮膚の疾患または異常を有していなかった。各研究被験者は、インフォームドコンセント文書を読み、理解し、かつ署名するように要請された。除外基準は下記の通りであった:妊婦または授乳中の女性、処置される帯域において重篤または進行性の疾患および/または病理に罹患している被験者、皮膚水和の何らかの処置(例えば、レチノイド、ステロイド)および/または調節剤を使用している被験者、体重が不安定であるか、または過度な飲酒もしくは喫煙を有する被験者。
低アレルギー誘発性試験−この試験では、LIPクリームを含有するパッチの適用に対する反応が、パッチ除去の20分後、24時間後および48時間後に記録された。本明細書中下記の表3に示されるように、50名の研究被験者全員において、LIPクリームに対する皮膚反応は認められなかった。
LIPクリームは皮膚色素沈着を白化することにおいて非常に効率的である
皮膚白化におけるLIPクリームの効果が二重盲検研究で先行技術でのクリームと比較された。
研究被験者−この研究では、疾患を有さず、皮膚疾患またはアトピー性疾患(喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎)の病歴を有さず、また、試験中の物質のいずれか、および化粧用調製物の成分のいずれかに対する知られている過敏性を有さないアジア系の18歳〜65歳の12名の健康な男性および女性が含まれた。研究では、全身的または局所的な処置のための、抗炎症性薬物、抗ヒスタミン剤またはコルチコステロイドによる処置を受けている候補者は、その処置が、研究に登録する前に、全身的処置の場合には2週間、局所的処置の場合には3日中断されない限り、除かれた。妊婦および母乳授乳中の女性だけでなく、診断または処置の任意の段階にあるガン、腎臓疾患または肝臓疾患を有する場合もまた、研究候補者から除かれた。
LIPクリームは3週間の適用の後で皮膚色素沈着を低下させた−皮膚白化におけるLIPクリームの効果を評価するために、LIPクリームが12名の健康な志願者の右腕の上部部分に1日に2回塗布された。2名の研究被験者の代表的な写真を含む図11a〜図11bおよび図13a〜図13bに示されるように、3週間のクリーム塗布の後、右前腕の上部部分は、クリーム塗布前よりもはるかに白くなっているようであった。
Claims (10)
- リグニンペルオキシダーゼを製造する方法であって:
(a)発酵装置においてファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)菌を、3日〜10日の所定の期間、グリセロールおよびベラトリルアルコールを含有する撹拌および通気された培養培地において多孔性マトリックス上で培養すること、ただし前記通気された培養は、前記培養培地を0.1〜1リットルの空気/培養培地1リットル/分の範囲における通気速度に供することによって得られる;
(b)前記所定の期間の後、水性抽出物を前記ファネロカエテ・クリソスポリウム菌から抽出して、それによりリグニンペルオキシダーゼを製造すること、ただし前記水性抽出物はイソ酵素H1および/またはイソ酵素H2のリグニンペルオキシダーゼ酵素活性を含み、前記酵素活性は前記培養培地1リットルあたりかつ1分あたり500〜2000μmolのベラトリルアルコールを酸化することができ、前記抽出が7日間の培養の後に行われた場合、前記酵素活性は前記培養培地1リットルあたりかつ1分あたり1600μmolのベラトリルアルコールを酸化することができる;
を含む方法。 - 前記培養培地はマンガンイオンを含まない請求項1に記載の方法。
- 前記発酵装置は、10リットルの培養培地を含む請求項1に記載の方法。
- 前記発酵装置は、100リットルの培養培地を含む請求項1に記載の方法。
- 以下のことをさらに含む請求項1に記載の方法:
(c)前記水性抽出物をクロマトグラフィー精製に供し、それにより前記水性抽出物から前記イソ酵素H1および/またはイソ酵素H2を精製する。 - 前記培養は37℃の温度で達成される請求項1に記載の方法。
- 前記撹拌された培養培地は、前記培養培地を50rpm〜300rpmの範囲における速度で撹拌することによって得られる請求項1に記載の方法。
- 前記グリセロールは3グラム/リットル〜20グラム/リットルの濃度範囲で提供される請求項1に記載の方法。
- 前記ベラトリルアルコールは0.5mM〜4mMの濃度範囲で提供される請求項1に記載の方法。
- 前記ファネロカエテ・クリソスポリウム菌は、前記多孔性マトリックス上に固定化されており、前記多孔性マトリックスはポリウレタンフォームである請求項1に記載の方法。
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