JP5461755B2 - ポリ乳酸 - Google Patents
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Description
一方で、L−乳酸単位のみからなるポリ−L−乳酸(PLLA)とD−乳酸単位のみからなるポリ−D−乳酸(PDLA)を、溶液あるいは溶融状態で混合することにより、ステレオコンプレックスポリ乳酸が形成されることが知られている(特許文献1および非特許文献1参照)。このステレオコンプレックスポリ乳酸はPLLAやPDLAに比べて、高融点、高結晶性を示すことが発見されている。
しかし、ステレオコンプレックスポリ乳酸を製造する際に、PLLAおよびPDLAの分子量が高い場合、ステレオコンプレックスポリ乳酸が得がたく、また得られる場合でもステレオコンプレックスポリの生成に長時間要し、工業的な実施が問題となる欠点がある。一方、成形体としての実用的な強度を有するためには、分子量10万以上であることが必要である。また、溶液ブレンドにおいて、10万以上の高分子量のPLLAおよびPDLAからステレオコンプレックスの形成が試みられているが、溶液状態で長期間にわたって保持する必要があり、生産性に問題あった。
なお、主としてL−乳酸単位または主としてD−乳酸単位からなる結晶性ポリマーの結晶性とは、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークを有することを言い、L−乳酸単位または主としてD−乳酸単位からなる該ポリマーが測定前に非晶あることも包含している。
(i)L−乳酸ブロック(LB)とD−乳酸ブロック(DB)とからなり、DB/LB=40/60〜3/97(重量比)であり、重量平均分子量が4万〜13万、分子量分散が1〜2であり、各ブロックの平均連鎖長が5〜40であるポリ乳酸ブロック共重合体(A)と、
(ii)L−乳酸ブロック(LB)とD−乳酸ブロック(DB)とからなり、LB/DB=40/60〜3/97(重量比)であり、重量平均分子量が4万〜13万、分子量分散が1〜2であり、各ブロックの平均連鎖長が5〜40であるポリ乳酸ブロック共重合体(B)とを、
(iii)溶融混合または溶液混合することからなるステレオコンプレックスポリ乳酸の製造方法である。
本発明により得られるポリ乳酸は、重量平均分子量が4〜13万、分子量分散が1〜2で、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、195℃以上の融解ピークの割合が80%以上である。
ポリ乳酸の重量平均分子量は好ましくは8万〜13万である。分子量分散は好ましくは1〜1.8である。なお以下の用例をふくめて、重量平均分子量および数平均分子量は、溶離液にクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量値または数平均分子量値である。
ポリ乳酸は、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、195℃以上の融解ピークの割合が、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。本発明のポリ乳酸には、第一の態様であるポリ乳酸(I)および第二の態様であるポリ乳酸(II)がある。
<ポリ乳酸(I)>
本発明により得られるポリ乳酸(I)は、下記式に示す、L−乳酸単位、D−乳酸単位を基本成分とする。
ポリ乳酸(I)は、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、195℃以上の融解ピークの割合が80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。
融点は、195〜250℃の範囲、より好ましくは200〜220℃の範囲である。融解エンタルピーは、20J/g以上、好ましくは30J/g以上である。具体的には、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、195℃以上の融解ピークの割合が90%以上であり、融点が195〜250℃の範囲にあり、融解エンタルピーが20J/g以上であることが好ましい。
ポリ乳酸(I)は、(1)ポリ乳酸単位(A)および(B−1)からなり、重量比(A)/(B−1)が10/90〜90/10の範囲にあることが好ましい。またポリ乳酸(I)は、(2)ポリ乳酸単位(B)およびポリ乳酸単位(A−1)からなり、重量比(A−1)/(B)が10/90〜90/10の範囲にあることが好ましい。
ポリ乳酸(I)中のポリ乳酸単位の重量比(A)/(B)は、90:10〜10:90である。75:25〜25:75であることが好ましく、さらに好ましくは60:40〜40:60である。
ポリ乳酸(I)は、下記式で表されるL−乳酸若しくはD−乳酸単位を有する結晶性ポリマー(A)および(B)により製造することができる。
結晶性ポリマー(A−1)および(B−1)は、既知の任意のポリ乳酸の重合方法により製造方法することができ、例えばラクチドの開環重合、乳酸の脱水縮合、およびこれらと固相重合を組み合わせしかる後溶融固化させる方法などにより製造することができる。
結晶性ポリマー(A−1)および(B−1)の共重合成分は2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等およびこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等が挙げられる。
本発明の製造方法における結晶性ポリマー(A−1)とポリマー(B−1)との共存比は、(A−1)/(B−1)が10/90〜90/10である。(A−1)/(B−1)=25/75〜75/25であることが好ましく、さらに好ましくは40/60〜60/40である。一方のポリマーの重量比が10未満であるかまたは、90を超えると、ホモ結晶化が優先してしまい、ステレオコンプレックスを形成し難くなるので好ましくない。
また本発明においては、結晶性ポリマー(A−1)および(B−1)を溶媒の非存在下で混合することにより行うことができる。即ち、結晶性ポリマー(A−1)および(B−1)をあらかじめ粉体化あるいはチップ化したものを所定量混合した後に溶融し、あるいは溶融後、混練して混合する方法、結晶性ポリマー(A−1)あるいは(B−1)いずれか一方を溶融させた後に残る一方を加えて混練し混合する方法を採用することができる。従って本発明は、結晶性ポリマーを溶媒の存在下で混合するか、または非存在下で混合し、熱処理するポリ乳酸の製造方法を包含する。
ここで、上記において粉体あるいはチップの大きさは、実質的に結晶性ポリマー(A−1)および(B−1)の粉体あるいはチップが均一に混合されれば特に限定されるものではないが、3mm以下が好ましく、さらには1から0.25mmのサイズであることが好ましい。溶融混合する場合、大きさに関係なく、ステレオコンプレックス結晶を形成するが、粉体あるいはチップを均一に混合した後に単に溶融する場合、粉体あるいはチップの直径が3mm以上の大きさになると、ホモ結晶も析出するので好ましくない。
熱処理に用いる装置、方法としては、雰囲気調整を行いながら加熱できる装置、方法であれば用いることができるが、たとえば、バッチ式の溶融混練装置、連続式の溶融混練装置、二軸あるいは一軸のエクストルーダーなど、またはプレス機、流管式の押し出し機を用いて、成型しながら処理する方法をとることが出来る。
第二の態様における発明の目的は、ステレオコンプレックス結晶を含有し、成形加工性に優れ、高分子量で、高結晶性で、高融点のポリ乳酸およびその製造方法を提供することにある。本発明者らは、主としてL−乳酸セグメントからなる特定のポリ乳酸ブロック共重合体(A)と、主としてD−乳酸セグメントからなる特定のポリ乳酸ブロック共重合体(B)とを溶融混合または溶液混合することにより、高分子量で、ステレオコンプレックス結晶の含有率が高く、高融点のポリ乳酸が得られることを見い出し、本発明を完成した。
(1)L−乳酸ブロックとD−乳酸ブロックとから構成されるポリ乳酸ブロック共重合体からなり、
(2)各ブロックの平均連鎖長が5〜40であり、
(3)L−乳酸単位(L成分)とD−乳酸単位(D成分)との割合は、D成分/L成分=20/80〜80/20(重量比)であり、
(4)ステレオコンプレックス結晶の含有率が80〜100%であるポリ乳酸(II)が得られる。
ポリ乳酸(II)は、その中に含まれる上記式で表わされるL−乳酸単位(L成分)とD−乳酸単位(D成分)の割合はL成分/D成分(重量比)=20/80〜80/20の範囲で任意に設定することが出来るが、好ましくは25/75〜75/25、より好ましくは40/60〜60/40である。この比率の範囲であれば、高融点となるが、この比率が50/50からずれるほどステレオコンプレックスポリ乳酸の結晶性が損なわれる。
ポリ乳酸(II)の重量平均分子量は4万〜13万、好ましくは5万〜13万、さらに好ましくは8万〜13万である。分子量分散は1〜2、好ましくは1〜1.8である。分子量分散を低く抑えることにより、分子量が低い場合でも、良好な結晶性のポリ乳酸(II)を得ることが出来、分子量が高い場合にはステレオコンプレックス結晶の生成が効率的で且つ高融点のものが好ましく生成する。ポリ乳酸(II)は、ステレオコンプレックス結晶の含有率が80〜100%、好ましくは90〜100%である。
ポリ乳酸(II)は、上記式で表わされるL−乳酸単位とD−乳酸単位以外の共重合成分を10重量%以下の割合で含有していてもよい。この共重合成分は、前述の2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等である。
ポリ乳酸(II)は、
(i)L−乳酸ブロック(LB)とD−乳酸ブロック(DB)とからなり、DB/LB=40/60〜3/97(重量比)であり、重量平均分子量が4万〜13万、分子量分散が1〜2であり、各ブロックの平均連鎖長が5〜40であるポリ乳酸ブロック共重合体(A)と、
(ii)L−乳酸ブロック(LB)とD−乳酸ブロック(DB)とからなり、LB/DB=40/60〜3/97(重量比)であり、重量平均分子量が4万〜13万、分子量分散が1〜2であり、各ブロックの平均連鎖長が5〜40であるポリ乳酸ブロック共重合体(B)とを、
(iii) 溶融混合または溶液混合することにより製造することができる。
(ポリ乳酸ブロック共重合体(A)および(B))
ポリ乳酸ブロック共重合体(A)のL−乳酸ブロック(LB)とD−乳酸ブロック(DB)との割合は、DB/LB(重量比)=40/60〜3/97である。好ましくは35/65〜5/95、より好ましくは30/70〜5/95、さらに好ましくは15/85〜5/95である。(DB/LB)<(3/97)の場合、ステレオコンプレックス結晶生成率が低くなる場合もあるので好ましくない。40/60<(DB/LB)<60/40の場合にはポリ乳酸ブロック共重合体の分子量が小さく、耐熱性に優れた高分子量のステレオコンプレックスポリ乳酸が得られない場合があるので好ましくない。
ポリ乳酸ブロック共重合体(A)および(B)の重量平均分子量は共に、4万〜13万、好ましくは5万〜13万、より好ましくは8万〜13万、分子量分散は1〜2、好ましく1〜1.8である。
また、ポリ乳酸ブロック共重合体(A)および(B)は、共に、示差走査熱量計(DSC)測定において200℃以上の融解ピークと180℃以下の融解ピークの2つの融解ピークを有し、かつ、200℃以上の融解ピークの割合が全融解ピークの10〜50%であることが好ましい。
ポリ乳酸ブロック共重合体(A)および(B)は、その末端基に各種の末端封止が施されたものを用いてもよい。このような末端封止基としては、アセチル基、エステル基、エーテル基、アミド基、ウレタン基、などを例示することが出来る。
溶融混合時の雰囲気は特に限定されるものではなく、常圧、加圧および減圧のいずれの条件下でも行なうことができる。溶融混合時の雰囲気は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス流通下で行うのが好ましい。また溶融の際に分解生成するモノマーを取り除くためには、減圧下で行うことが好ましい。
溶融混合の際の装置等へのポリ乳酸ブロック共重合体(A)と(B)の投入順序などは問わない。従って、2成分を同時に混合装置に投入してもよく、例えばポリ乳酸ブロック共重合体(A)を溶融した後に、ポリ乳酸ブロック共重合体(B)を投入および混合してもよい。この際、各成分は、粉末状、顆粒状またはペレット状などのいずれの形状であってもよい。混合には、スタチックミキサー、ミルロール、ミキサー、単軸または二軸押出機、ニーダー、連続式あるいはバッチ式の溶融混練装置などを用いて加熱し混練すればよい。
混合は、ポリ乳酸ブロック共重合体(A)、(B)をそれぞれ溶媒に溶解しそれらを混合することにより行っても良いし、一方を溶媒に溶解した後、他方を加えて混合しても良い。溶媒の除去は、加熱、減圧留去、抽出またはこれらの組み合わせにより行なうことができる。
ポリ乳酸(II)は、酸化防止剤、光安定剤、触媒安定剤、抗菌剤、染色剤、滑剤、核剤、可塑剤等、また、樹脂の特性を補強するための有機物フィラー、無機物フィラー等、樹脂加工に必要な添加物を含んでいてもよい。
本発明方法に用いるポリ乳酸ブロック共重合体(A)は、重量平均分子量が0.5万〜2万のポリ−L−乳酸(PLLA)と、重量平均分子量が0.5万〜2万のポリ−D−乳酸(PDLA)とを、PDLA/PLLA=40/60〜3/97(重量比)の割合で、溶融混合または溶液混合した後、固化させ、さらに固相重合することにより製造することができる。
ポリ−L−乳酸(PLLA)とポリ−D−乳酸(PDLA)との重量比は、PDLA/PLLA=40/60〜3/97である。好ましくは35/65〜5/95、より好ましくは30/70〜5/95、さらに好ましくは15/85〜5/95である。
溶融混合時の雰囲気は特に限定されるものではなく、常圧、加圧および減圧のいずれの条件下でも行なうことができる。溶融混合時の雰囲気は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス流通下で行うのが好ましい。また溶融の際に分解生成するモノマーを取り除くためには、減圧下で行うことが好ましい。
固相重合は、減圧下で行うことが好ましく、例えば、0.01〜20hPa、好ましくは0.1〜2hPaとする。ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とは、エステル反応や脱水縮合反応によって化学的に結合されるため、反応の進行に伴ってH2Oが副生する。減圧下で重合させるとこの副生水を系外に除去することができ、反応平衡を重合側に移行させることができる。20hPaを上回ると、このような脱水が不十分となり、一方0.01hPaを下回ってもそれ以上の脱水効果が得られず無駄である。なお、固相重合は、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うこともできる。固相重合の時間は、少なくとも5時間、好ましくは5〜50時間である。重合度の上昇度に対応して固相重合温度を上げることが好ましい。なお、固相重合の装置としては特に装置に限定はなく、回分式、あるいは連続式プロセスにより、たとえば濃縮乾燥装置などを使用することができる。また、コニカルドライヤー、ドラム式加熱器、ベルト搬送式あるいは流動床式固相重合装置などを使用こともできる。
固相重合後に、生成ポリマーの熱安定性向上のために末端基を封止処理を行い、さらに、再沈殿等による触媒と未反応のモノマーを取り除く処理を行なうことが好ましい。
ポリ乳酸ブロック共重合体(B)は、重量平均分子量が0.5万〜2万のポリ−L−乳酸(PLLA)と、重量平均分子量が0.5万〜2万のポリ−D−乳酸(PDLA)とを、PLLA/PDLA=40/60〜3/97(重量比)の割合で、溶融混合または溶媒の存在下で混合した後、固化させ、さらに固相重合し製造することができる。ポリ乳酸ブロック共重合体(B)は、前述のポリ乳酸ブロック共重合体(A)と、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との組成比が異なるだけで、同一の方法により製造することができる。
ポリ乳酸ブロック共重合体(A)および(B)は、樹脂の熱安定性を損ねない範囲で重合に関わる触媒を含有していてもよい。このような触媒としては、各種のスズ化合物、チタン化合物、カルシウム化合物、有機酸類、無機酸類などを挙げることが出来、さらに同時にこれらを不活性化する安定剤を共存させていてもよい。
本発明によれば、ポリ乳酸およびフィラーを含有し、前者/後者(重量)=98/2〜1/99の組成物が得られる。ポリ乳酸には、ポリ乳酸(I)、ポリ乳酸(II)が包含される。フィラーは無機フィラーまたは有機フィラーが好ましい。
これらのフィラーは、繊維状、板状または針状のものを用いることができる。これらのフィラーの中で、繊維状の無機フィラーが好ましく、特にガラス繊維が好ましい。また、フィラーのアスペクト比は5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。特に好ましいのは100以上である。アスペクト比とは、繊維状フィラーの場合は、繊維長を繊維直径で除したもので、板状の場合は、長周期方向の長さを厚さで除したものを指す。フィラーの弾性率は、50GPa以以上であることが好ましい。
フィラーは、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂で被覆または集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで処理、または各種有機物で修飾処理されていてもよい。フィラーは一種類で用いても、2種以上併用しても構わない。
天然繊維は、その繊維の直径が0.1μmから1mmの範囲、好ましくは1μmから500μmの範囲である。その繊維と直径の比からなるアスペクト比(長さ÷直径)が50以上であることが好ましい。この範囲であれば、樹脂と繊維との混合を良好に行うことができ、さらに複合化によって良好な物性の成型品を得ることができる。より好ましくは100〜500、さらに好ましくは100〜300である。
天然繊維は、前出の条件を満たすものであればどのようなものでも好適に用いることができるが、特にケナフ、竹、亜麻、麻、木材パルプ、木綿などの植物性繊維を好適に用いることができる。特に、廃材から得られる木質パルプや、排紙から得られるパルプ、ケナフを原料とする繊維は環境負荷が低く、再生能力が高いため非常に好ましい。
組成物は、本発明の目的を損なわない範囲内で、上記で列記したフィラー以外の通常の添加剤、例えば、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、離形剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌・抗カビ剤、核形成剤、染料、顔料を含む着色剤などの1種あるいは2種以上を含有することができる。また、組成物に対して、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、軟質熱可塑性樹脂などの少なくても一種以上をさらに添加することもできる。
(i)ポリ乳酸を加熱溶融し、天然繊維を配合し、均一に混合分散させる方法;
(ii)予めポリ乳酸のフィルムを作成し、その上に天然繊維を複数並べ、更にその上にポリ乳酸のフィルムを重ねる。この操作を繰り返して得られた積層体をポリ乳酸の融点以上に加熱し、複合化する方法;
(iii)予め賦形した天然繊維に微粒子化したポリ乳酸を付着させ、これをポリ乳酸の融点以上に加熱し複合化する方法;
(iv)ポリ乳酸を繊維状に加工し、天然繊維と併せてヤーンを作り、これに所定の形状を与えた後、ポリ乳酸のガラス転移温度以上に加熱し複合化する方法;などがあげられる。
このようにして得られた生分解性複合体は、十分な強度を示すとともにポリ乳酸、天然繊維ともに環境に負荷を与えることはないので、様々な成形品として好適に使用できる。特に強度を必要とする構造部材、建築材料はもちろんのこと、建具材料、建設仮設材などに好適である。本発明の生分解性複合体は、熱変形温度(HDT)が好ましくは240℃以下、さらに好ましくは200℃以下、さらに好ましくは170℃以下である。本発明の組成物は、シート、マットなどの成形体として種々の用途に使用することができる。
本発明により得られるポリ乳酸を用いて、射出成形品、押出成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、フィルム、シート不織布、繊維、布、他の材料との複合体、農業用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品またはその他の成形品を得ることができる。成形は常法により行うことができる。ポリ乳酸には、ポリ乳酸(I)およびポリ乳酸(II)が包含される。例えば、結晶性ポリマー(A−1)と(B−1)とを、重量比(A−1)/(B−1)=10/90〜90/10で溶媒中に含有する溶液を流延した後、溶媒を蒸発させフィルム状にして、270〜300℃で熱処理することによりフィルムを製造することができる。
(1)還元粘度:
ポリマー0.12gを10mLのテトラクロロエタン/フェノール(容量比1/1)に溶解し、35℃における還元粘度(mL/g)を測定した。
(2)重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn):
ポリマーの重量平均分子量および数平均分子量(Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレンに換算した。
検出器;示差屈折計島津RID−6A
カラム;東ソ−TSKgelG3000HXL、TSKgelG4000HXL,TSKgelG5000HXLとTSKguardcokumnHXL-Lを直列に接続したもの、あるいは東ソ−TSKgelG2000HXL、TSKgelG3000HXLとTSKguardcokumnHXL-Lを直列に接続したものを使用した。溶離液としてはクロロホルムを使用し、温度40℃、流速1.0ml/minで流し、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノールを含むクロロホルム)の試料を10μl注入した。
(3)結晶化点、融点、融解エンタルピーおよび195℃以上の融解ピークの割合:
島津DSC−60示差走査熱量測定計DSCを用いた。測定は、試料10mgを窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で室温から250℃まで昇温し、20分間放冷、再び10℃/分で250℃まで昇温させた。第一スキャンで、ホモ結晶融解温度およびステレオコンプレックス結晶融解温度(Tm)、ホモ結晶融解熱およびステレオコンプレックス結晶融解熱(ΔHm)、第二スキャンでは結晶化温度(Tc)を求めた。195℃以上の融解ピークの割合(%)は、195℃以上(高温)の融解ピーク面積と140〜180℃(低温)融解ピーク面積から以下の式により算出した。
R195以上(%)=A195以上/(A195以上+A140〜180)×100
R195以上:195℃以上の融解ピークの割合
A195以上:195℃以上の融解ピーク面積
A140〜180:140〜180℃の融解ピーク面積
結晶化度は、100%結晶化したポリ乳酸のホモ結晶融解熱(ΔHmh0)を−203.4J/g、100%結晶化したポリ乳酸ステレオコンプレックス体結晶融解熱(ΔHms0)を−142J/gとして、DSCから実際に得られた結晶融解熱△Hmのうち、ホモ結晶融解熱(ΔHmh)、ステレオコンプレックス結晶化熱融解熱(ΔHmまたは△Hms)より、下記式によって算出した。
χc(総)(%)=100×(ΔHmh/ΔHmh0+ΔHms/ΔHms0)
さらに、ステレオコンプレックス結晶の含有率は下記式によって算出した。
χc(SC)(%)=100×[(ΔHms/ΔHms0)/(ΔHmh/ΔHmh0+ΔHms/ΔHms0)]
13CNMR装置:日本ブルカー製 BURKER ARX−500
サンプル:50mg/0.7ml
測定溶媒:10% HFIP含有重水素化クロロホルム
内部標準:テトラメチルシラン(TMS)1%(v/v)
測定温度:27℃(300K)
測定周波数:125MHz
13C−NMR測定により、カルボニル炭素(C=O)に帰属される炭素のピークのうち、ピーク(a)(170.1−170.3MHz辺り)はホモ配列(LLLLLLまたはDDDDDD)に、ピーク(b)(170.0−169.8MHz辺り)はラセミ鎖(LLLDDD…)に帰属し、これらのピークの積分値から、下記の式により平均連鎖長を算出した。
v=ピーク(a)の積分値/ピーク(b)の積分値
ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸を構成するL−乳酸とD−乳酸の構成比率から光学純度を求めた。試料1gに5M水酸ナトリウム5mlとイソプロパノール2.5mlを添加し、40℃で加熱攪拌しながら加水分解した後に1M硫酸で中和した。中和液1mlを25倍に希釈することで濃度を調整した。これをHPLCにて、紫外光UV254nmでのL−乳酸とD−乳酸との検出ピーク面積を測定し、ポリ乳酸重合体を構成するL−乳酸の重量比率[L](%)とD−乳酸の重量比率[D](%)とをから光学純度(%)、を下記式によって算出した。
光学純度(%)=100×[L]/([L]+[D])
(または 100×[D]/([L]+[D])
コンポスト容器(容積11リットル)に植種源として、多孔質木片(松下電工株式会社製バイオチップ)1.72kg、微細気孔を持つセルロース粒子(松下電工株式会社製バイオボール)0.075kg、に毎日野菜屑約1〜1.5kgを補充し、3時間に1度2分間撹拌し、1週間に1回手動にて鋤き込みし、水分50〜60%、pH7.5〜8.5、内温45〜55℃に保持した状態のコンポスト中に、生分解性複合体の成型品を入れ、所定時間後にフィルムをサンプリングした。30日間コンポスト処理した後の成型品の形状が明らかに崩壊しはじめている場合を分解性ありとした。
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)48.75gとD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)1.25gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.05g、触媒としてオクチル酸スズ25mgを加え、190℃、2時間、重合を行いポリマーA1を製造した。得られたポリマーA1の還元粘度は1.50(mL/g)、重量平均分子量11万、分子量分散1.8であった。融点(Tm)は158℃であった。結晶化点(Tc)は117℃であった。
製造例1で得られたポリマーA1を7%5N塩酸のアセトン溶液で洗浄し、触媒を除去し、ポリマーA2を得た。得られたポリマーA2の還元粘度は1.47(mL/g)、重量平均分子量10万、分子量分散1.5であった。融点(Tm)は158℃であった。結晶化点(Tc)は121℃であった。
製造例1で得られたポリマーA1を10g、ピリジン5mL/クロロホルム200mLに溶解し、室温で、無水酢酸9mLを加えた。5時間、攪拌後、1時間、加熱還流を行い、ポリマー末端をアセチル化し、ポリマーA3を得た。得られたポリマーA3の還元粘度は1.54(mL/g)、重量平均分子量11万、分子量分散1.6であった。融点(Tm)は156℃であった。結晶化点(Tc)は119℃であった。
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)1.25gとD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)48.75gを用いた以外は製造例1と同様な操作を行い、ポリマーB1を製造した。ポリマーB1の還元粘度は1.66、重量平均分子量12万、分子量分散1.8であった。融点(Tm)は156℃であった。結晶化点(Tc)は120℃であった。
ポリマーB1を用いた以外は製造例2と同様の操作を行い、触媒を除去し、ポリマーB2を得た。得られたポリマーB2の還元粘度は1.65(mL/g)、重量平均分子量12万、分子量分散1.7であった。融点(Tm)は156℃であった。結晶化点(Tc)は120℃であった。
ポリマーB1を用いた以外は製造例3と同様の操作を行いポリマー末端をアセチル化し、ポリマーB3を得た。得られたポリマーB3の還元粘度は1.46(mL/g)、重量平均分子量12万、分子量分散1.7であった。融点(Tm)は156℃であった。結晶化点(Tc)は121℃であった。
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)47.50gとD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)2.50gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、オクチル酸スズ25mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーA4を製造した。得られたポリマーA4の還元粘度は1.43、重量平均分子量10万、分子量分散1.8であった。融点(Tm)は148℃であった。結晶化点(Tc)は131℃であった。
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)2.50gとD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)47.50gを用いた以外は製造例7と同様の操作を行いポリマーB4を製造した。得られたポリマーB4の還元粘度は1.52、重量平均分子量11万分子量分散1.8であった。融点は147℃であった。結晶化点(Tc)は133℃であった。
ポリマーA1の5%クロロホルム溶液およびポリマーB1の5%クロロホルム溶液を等量混合し、キャスト製膜を行った後、窒素雰囲気下で加熱し、クロロホルムを蒸発させ、その後20℃/分で280℃まで昇温し、280℃で3分間維持した後、液体窒素でクエンチしてフィルムを得た。得られたフィルムの重量平均分子量は11万、分子量分散は1.7であった。このフィルムについてDSC測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点202℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは33J/gであった。140〜180℃の融解ピークは観測されず、195℃以上の融解ピークの割合(R195以上)は100%であった。結晶化点は117℃であった。
ポリマーA4の5%クロロホルム溶液およびポリマーB4の5%クロロホルム溶液を用いた以外は実施例1と同じ操作を行った。得られたフィルムの重量平均分子量は10万、分子量分散は1.6であった。DSCチャートには、融点200℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは40J/gであった。R195以上は、100%であった。結晶化点は110℃であった。
ポリマーA2およびポリマーB2を等量、フラスコに加え、窒素置換後、280℃まで昇温し、280℃で3分間、溶融ブレンドを行った。得られた樹脂の重量平均分子量は11万、分子量分散は1.6で、還元粘度は1.47mL/gであり、ポリマーA2およびポリマーB2の分子量および還元粘度と殆ど差は見られなかった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点207℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは41J/gであった。140〜180℃の融解ピークは観測されず、195℃以上の融解ピークの割合(R195以上)は100%であった。結晶化点は111℃であった。
ポリマーA3およびポリマーB3を用いた以外は実施例3と同じ操作を行った。得られた樹脂の重量平均分子量は11万、分子量分散1.6で、還元粘度は1.50mL/gであり、ポリマーA3およびポリマーB3の分子量および還元粘度と殆ど差は見られなかった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点201℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは39J/gであった。195℃以上の融解ピークの割合(R195以上)は100%であった。結晶化点は108℃であった。
ポリマーA2の5%クロロホルム溶液およびポリマーB2の5%クロロホルム溶液にそれぞれポリマーに対して10重量%のラクチドを添加した溶液を用いた以外は実施例1と同じ操作を行った。得られたフィルムの重量平均分子量は11万、分子量分散は1.6であった。DSCチャートには、融点203℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは23J/gであった。195℃以上の融解ピークの割合(R195以上)は90%であった。結晶化点は107℃であった。
直径3mmのポリマーA1とポリマーB1のチップを試験管に5gずつ加え、280℃で溶融させた。得られた溶融体は直ちに液体窒素でクエンチした。
得られたポリマーの重量平均分子量は9万、分子量分散1.8であった。DSCチャートには、融点205℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは25J/gであった。195℃以上の融解ピークの割合(R195以上)は91%であった。結晶化点は109℃であった。
キャスト製膜を行った後、240℃で熱処理すること以外は、実施例1と同じ操作を行った。得られたフィルムの重量平均分子量は12万、分子量分散1.8であった。DSCチャートには、融点157℃の融解ピークおよび融点205℃の融解ピークが観測された。R195以上は、53%であった。
以下に示すポリ−L−乳酸(PLLA)とポリ−L−乳酸(PDLA)を用いた以外は実施例1と同じ操作を行いフィルムを得た。得られたフィルムについてDSC測定を行った。その結果、融点173℃の融解ピークおよび融点220℃の融解ピークが観測された。R195以上は、71%であった。
PLLA:L乳酸単位99.5モル%、D乳酸単位0.5モル%、還元粘度2.70mL/g、重量平均分子量15万、分子量分散2.1、融点(Tm)160℃、結晶化点(Tc)124℃。
PDLA:L乳酸単位99.3モル%、D乳酸単位0.7モル%、粘度2.80mL/g、重量平均分子量16万、分子量分散2.2、融点(Tm)158℃、結晶化点(Tc)122℃。以上の結果を表3、表4に示す。
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)1.25gとD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)48.75gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.5g、触媒としてオクチル酸スズ25mgを加え、190℃、1時間、重合を行い、ポリマーを得た。このポリマーを7%5N塩酸のアセトン溶液で洗浄し、触媒を除去し、ポリマーB5を得た。ポリマーB5の還元粘度は1.26(mL/g)、重量平均分子量8万、分子量分散は1.5であった。融点(Tm)は154℃であった。結晶化点(Tc)は116℃であった。
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)1.25gとD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)48.75gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.05g、触媒としてオクチル酸スズ25mgを加え、190℃、1時間、重合を行い、ポリマーを得た。このポリマーを7%5N塩酸のアセトン溶液で洗浄し、触媒を除去し、ポリマーB6を得た。得られたポリマーB6の還元粘度は0.83(mL/g)、重量平均分子量は5万、分子量分散は1.4であった。融点(Tm)は153℃であった。結晶化点(Tc)は110℃であった。
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)50gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.1g、触媒としてオクチル酸スズ25mgを加え、190℃、1時間、重合を行い、ポリマーを得た。このポリマーを7%5N塩酸のアセトン溶液で洗浄し、触媒を除去し、ポリマーA5を得た。得られたポリマーA5の還元粘度は1.05(mL/g)、重量平均分子量は7万、分子量分散は1.4であった。融点(Tm)は154℃であった。結晶化点(Tc)は117℃であった。
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)50gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.1g、触媒としてオクチル酸スズ25mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーを製造した。このポリマーを7%5N塩酸のアセトン溶液で洗浄し、触媒を除去し、ポリマーA6を得た。得られたポリマーA6の還元粘度は1.0(mL/g)、重量平均分子量は6万、分子量分散は1.4であった。融点(Tm)は153℃であった。結晶化点(Tc)は116℃であった。
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)48.75gとD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)1.25gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.1g、触媒としてオクチル酸スズ25mgを加え、190℃、2時間、重合を行いポリマーA7を製造した。得られたポリマーA7の還元粘度は1.68(mL/g)、重量平均分子量は12万、分子量分散は1.8であった。融点(Tm)は156℃であった。結晶化点(Tc)は116℃であった。
D−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)50gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.1g、触媒としてオクチル酸スズ25mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーを製造した。このポリマーを7%5N塩酸のアセトン溶液で洗浄し、触媒を除去し、ポリマーB7を得た。得られたポリマーB7の還元粘度は1.61mL/g、重量平均分子量は12万、分子量分散は1.8であった。融点(Tm)は156℃であった。結晶化点(Tc)は117℃であった。
ポリマーB5の5%クロロホルム溶液およびポリマーA5の5%クロロホルム溶液を等量混合し、キャスト製膜を行った後、窒素雰囲気下で加熱し、クロロホルムを蒸発させ、その後20℃/分で280℃まで昇温し、280℃で3分間維持した後、液体窒素でクエンチしてフィルムを得た。得られたフィルムの重量平均分子量は7万、分子量分散は1.6であった。このフィルムについてDSC測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点211℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは50J/gであった。140〜180℃の融解ピークは観測されず、195℃以上の融解ピークの割合(R195以上)は100%であった。結晶化点は99℃であった。
ポリマーB6およびポリマーA6を等量、フラスコに加え、窒素置換後、260℃まで昇温し、260℃で3分間、溶融ブレンドを行った。得られた樹脂の重量平均分子量は6万、分子量分散は1.5、還元粘度は0.99mL/gであった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点209℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは33J/gであった。140〜180℃の融解ピークはわずかに観測されたが、195℃以上の融解ピークの割合(R195以上)は93%であった。結晶化点は116℃であった。
280℃で熱処理すること以外は、参考例8と同じ操作を行った。得られた樹脂の重量平均分子量は7万、分子量分散は1.6、還元粘度は1.04mL/gであった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点209℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは39J/gであった。140〜180℃の融解ピークは観測されず、195℃以上の融解ピークの割合(R195以上)は100%であった。結晶化点は107℃であった。
ポリマーA7およびポリマーB7を等量、フラスコに加え、窒素置換後、260℃まで昇温し、260℃で3分間、溶融ブレンドを行った。得られた樹脂の重量平均分子量は12万、分子量分散は1.8、還元粘度は1.65mL/gであった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点211℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは30J/gであった。140〜180℃の融解ピークはほとんど観測されず、195℃以上の融解ピークの割合(R195以上)は97%であった。結晶化点は114℃であった。
キャスト製膜を行った後、240℃で熱処理すること以外は、参考例7と同じ操作を行った。得られたフィルムの重量平均分子量は8万、分子量分散は1.5、還元粘度は1.18mL/gであった。DSCチャートには、ホモ結晶に由来するピークとステレオコンプレックス結晶に由来するピークが観測された。R195以上は、54%であった。
以下に示すポリ−L−乳酸(PLLA)とポリ−D−乳酸(PDLA)を用いた以外は実施例1と同じ操作を行いフィルムを得た。得られたフィルムについてDSC測定を行った。その結果、融点173℃の融解ピークおよび融点220℃の融解ピークが観測された。R195以上は、40%であった。
PLLA:L−乳酸単位99.5モル%、D−乳酸単位0.5モル%、還元粘度2.70mL/g、重量平均分子量25万、融点(Tm)166℃、結晶化点(Tc)125℃
PDLA:D−乳酸単位99.3モル%、L−乳酸単位0.7モル%、粘度2.80mL/g、重量平均分子量26万、融点(Tm)168℃、結晶化点(Tc)122℃
以上の結果を表5および表6に示す。
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)48.75重量部とD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)1.25重量部を重合容器に加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.05重量部、触媒としてオクチル酸スズ25×10−3重量部を加え、190℃、2時間、重合を行いポリマーA7を製造した。得られたポリマーA8の還元粘度は1.48(mL/g)、重量平均分子量11万、分子量分散1.7であった。融点(Tm)は158℃であった。結晶化点(Tc)は117℃であった。
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)1.25重量部とD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)48.75重量部を用いた以外は製造例15と同様な操作を行い、ポリマーB8を製造した。ポリマーB8の還元粘度は1.66、重量平均分子量12万、分子量分散1.7であった。融点(Tm)は155℃であった。結晶化点(Tc)は121℃であった。
ポリマーA8およびポリマーB8を等量、フラスコに加え、窒素置換後、280℃まで昇温し、280℃で3分間、溶融ブレンドを行った。得られた樹脂の重量平均分子量は11万、分子量分散1.6で、還元粘度は1.51mL/gであり、ポリマーA7およびポリマーB7の分子量および還元粘度と殆ど差は見られなかった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点207℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは40J/gであった。140〜180℃の融解ピークは観測されず、195℃以上の融解ピークの割合(R195以上)は100%であった。結晶化点は112℃であった。
得られた樹脂3gをクロロホルム50mlに溶解して樹脂溶液とした。ケナフファイバー(繊維径200μm、繊維強度300MPa)のマット(厚み10mm)を12mm×120mm(重さ3g)を切り出して、樹脂溶液に浸漬して乾燥させた。乾燥後、170℃で熱プレスし、成型品を得た。得られた成型品のHDTは160℃であった。生分解性はありと判定された。
実施例11で、熱プレス温度のみ200℃に変更、成型品を得た。得られた成型品のHDTは、168℃であった。生分解性はありと判定された。
ポリマーA8およびポリマーB8のチップをそれぞれ35重量部および、ケナフチョップドファイバー(繊維径200μm、繊維長5mm、繊維強度300MPa)30重量部を混合した。この混合物を融解シリンダーの3つの温度設定ゾーンを投入口側からそれぞれ、200℃、230℃、265℃に設定した射出成型機(日精樹脂工業製小型射出成形機PS−20)に投入し、型温度90℃で射出成型して成型品を得た。得られた成型品のHDTは170℃であった。生分解性はありと判定された。
L−ラクチド500重量部を用いて製造例15に準じた操作で合成したPLLA3gをクロロホルム50mlに溶解して樹脂溶液とした。ケナフファイバー(繊維径200μm、繊維強度300MPa)のマット(厚み10mm)を12mm×120mm(重さ3g)を切り出して、樹脂溶液に浸漬して乾燥させた。乾燥後、200℃で熱プレスし、成型品を得た。得られた成型品のHDTは、90℃であった。
濃度90重量%のL−乳酸水溶液(株式会社武蔵野化学研究所)1kgを150℃/4,000Paで6時間撹拌しながら水を留出させてオリゴマー化した。このオリゴマーに塩化第一スズ0.2gとp−トルエンスルホン酸0.2gとを添加し、180℃/1,300Paで6時間溶融重合させた。冷却後、固体を粉砕し、重量平均分子量が7,800、Tmが153℃のポリ−L−乳酸を得た。光学純度は99.2%であった。
濃度90重量%のD−乳酸水溶液(株式会社武蔵野化学研究所)を用いて製造例17と同様の操作を行い、重量平均分子量が8,000、Tmが154℃のポリ−D−乳酸を得た。光学純度は99.0%であった。
製造例17で得たポリ−L−乳酸80gと製造例18で得られたポリ−D−乳酸20gを混合し、常圧で5分加熱した。混合の際、樹脂の温度は、各ポリマーの融点から徐々に昇温し、175℃で均一に混合したことを確認した。このポリ−D/L−乳酸ブレンドを、冷却して固化させ粉砕して粒子状にした。ついで、減圧(0.5mmHg)下、140℃で7時間、次に150℃で6時間、更に160℃で7時間、段階的に昇温し(総時間20時間)固相重合を行い、ポリ乳酸ステレオブロック共重合体A9を得た。このポリ乳酸ブロック共重合体A9の、重量平均分子量(Mw)、多分散度(Mw/Mn)、平均連鎖長vを測定した。これらの結果を表7に示す。
製造例18で得たポリ−D−乳酸80gと製造例17で得られたポリ−L−乳酸20gを用いて製造例19と同様の操作を行い、ポリ乳酸ステレオブロック共重合体B9を得た。このポリ乳酸ブロック共重合体B9について製造例19と同様に各特性を評価した。これらの結果を表7に示す。
ポリ乳酸ブロック共重合体A9とポリ乳酸ブロック共重合体B9のそれぞれ1gをクロロホルム18ml中に溶解させ、無水酢酸を1−2滴添加し、1時間攪拌し、末端処理をした。その後、HFIPを2ml添加し完全に溶解させた後にメタノール200ml中に再沈殿させ、吸引ろ過、乾燥させた。乾燥はバキュームオーブンにて室温で2時間、60℃で2時間、80℃で6時間を連続的に行なった。
末端処理、精製後のポリ乳酸ブロック共重合体A8とB8のそれぞれ0.5gをクロロホルム9ml とHFIP 1mlの混合溶媒に溶解させ(全量20ml)、L/D組成が50/50になるように混合した。混合攪拌20分後にガラスシャーレに流し込み、室温、常圧下で15h静置。乾燥はバキュームオーブンにて室温で2時間、60℃で2時間、80℃で6時間の乾燥を連続的に行なった。このステレオコンプレックスポリ乳酸について製造例19と同様に各特性を評価した。これらの結果を表8に示す。
PLLA:重量平均分子量11万、多分散度(Mw/Mn)2.66、融点(Tm)165℃
PDLA:重量平均分子量10万、多分散度(Mw/Mn)2.49、融点(Tm)166℃
下記、ポリ−L−乳酸(PLLA)とポリ−L−乳酸(PDLA)を用いて、ポリ−L−乳酸:ポリ−D−乳酸=50:50の割合で混合した以外は実施例14と同様に操作してフィルムを得た。このフィルムについて製造例19と同様に各特性を評価した。これらの結果を表8に示す。
PLLA:重量平均分子量11万、多分散度(Mw/Mn)2.66、融点(Tm)165℃
PDLA:重量平均分子量10万、多分散度(Mw/Mn)2.49、融点(Tm)166℃
Claims (6)
- L−乳酸単位90〜99モル%と、D−乳酸単位および/または乳酸以外の共重合成分単位1〜10モル%とにより構成され、DSC測定で融点が140〜170℃であり、重量平均分子量が4万〜13万、分子量分散が1〜2の結晶性ポリマー(A−1)と、D−乳酸単位90〜99モル%と、L−乳酸単位および/または乳酸以外の共重合成分単位1〜10モル%とにより構成され、DSC測定で融点が140〜170℃であり、重量平均分子量が4万〜13万、分子量分散が1〜2の結晶性ポリマー(B−1)とを、重量比(A−1)/(B−1)が90/10〜10/90の範囲で共存させ、270〜300℃で熱処理することを特徴とするポリ乳酸の製造方法。
- 結晶性ポリマーを溶媒の存在下で混合するか、または非存在下で混合し、熱処理することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 結晶性ポリマーが、粉体またはチップ状である請求項1記載の製造方法。
- ステレオコンプレックス結晶の含有率が80〜100%であるポリ乳酸を製造する方法であって、
(i)L−乳酸ブロック(LB)とD−乳酸ブロック(DB)とからなり、DB/LB=40/60〜3/97(重量比)であり、重量平均分子量が4万〜13万、分子量分散が1〜2であり、各ブロックの平均連鎖長が5〜40であるポリ乳酸ブロック共重合体(A)と、
(ii)L−乳酸ブロック(LB)とD−乳酸ブロック(DB)とからなり、LB/DB=40/60〜3/97(重量比)であり、重量平均分子量が4万〜13万、分子量分散が1〜2であり、各ブロックの平均連鎖長が5〜40であるポリ乳酸ブロック共重合体(B)とを、
(iii)溶融混合または溶液混合することからなるステレオコンプレックスポリ乳酸の製造方法。 - 重量平均分子量が0.5万〜2万のポリ−L−乳酸(PLLA)と、重量平均分子量が0.5万〜2万のポリ−D−乳酸(PDLA)とを、PDLA/PLLA=40/60〜3/97(重量比)の割合で、溶融混合または溶液混合した後、固化させ、さらに固相重合し、ポリ乳酸ブロック共重合体(A)を製造する工程を含む請求項4記載の製造方法。
- 重量平均分子量が0.5万〜2万のポリ−L−乳酸(PLLA)と、重量平均分子量が0.5万〜2万のポリ−D−乳酸(PDLA)とを、PLLA/PDLA=40/60〜3/97(重量比)の割合で、溶融混合または溶液混合した後、固化させ、さらに固相重合し、ポリ乳酸ブロック共重合体(B)を製造する工程を含む請求項4記載の製造方法。
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