JP2008063456A - ポリ乳酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、(A)主としてL―乳酸単位からなり、重量平均分子量が5万〜50万で、融点が140〜180℃のポリマーAと、
(B)主としてD−乳酸単位からなり、重量平均分子量が5万〜50万で、融点が140〜180℃のポリマーBとを、
重量比(A/B)が10/90〜90/10の範囲で共存させ、240〜300℃で熱処理しポリ乳酸を製造する方法であって、ポリマーAおよびポリマーBの少なくとも一方は、ラクチドを分岐性開始剤および金属触媒の存在下で開環重合したものであることを特徴とするポリ乳酸の製造方法である。
【選択図】図1
Description
一方で、主としてL−乳酸単位からなるポリマー(PLLA)と主としてD−乳酸単位からなるポリマー(PDLA)を溶液あるいは溶融状態で混合することにより、ステレオコンプレックスポリ乳酸が形成されることが知られている(特許文献1および非特許文献1参照)。このステレオコンプレックスポリ乳酸はPLLAやPDLAに比べて、高融点、高結晶性を示すことが知られている。
(B)主としてD−乳酸単位からなり、重量平均分子量が5万〜50万で、融点が160〜180℃のポリマーBとを、
重量比(A/B)が10/90〜90/10の範囲で共存させ、240〜300℃で熱処理しポリ乳酸を製造する方法であって、ポリマーAおよびポリマーBの少なくとも一方は、ラクチドを分岐性開始剤および金属触媒の存在下で開環重合したものであることを特徴とするポリ乳酸の製造方法である。また本発明は、該方法により得られたポリ乳酸を包含する。さらに、該ポリ乳酸からなる成形品を包含する。
<ポリ乳酸の製造方法>
(ポリマーA、ポリマーB)
ポリマーAまたはポリマーBは、下記式で表されるL−乳酸単位またはD−乳酸単位から主としてなる。
ポリマーBは、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上のD−乳酸単位から構成される。他の単位としては、L−乳酸単位、乳酸以外の共重合成分単位が挙げられる。L−乳酸単位、乳酸以外の共重合成分単位は、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは2モル%以下である。
ポリマーAおよびポリマーB中の共重合成分単位として、2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位およびこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等由来の単位が例示される。
ポリマーAまたはポリマーBの融点は、160〜180℃、好ましくは165〜176℃のである。
ポリマーAおよびポリマーBの少なくとも一方は、ラクチドを分岐性開始剤および金属触媒の存在下で開環重合したものである。分岐性開始剤とは、開始剤一分子中に2以上の重合性官能基を有しているものをいう。分岐性開始剤を用いることにより多分岐された結合を有するポリ乳酸が得られる。重合性官能基が1つであれば効果は得られず、複数個以上の官能基を有するもので初めて、効果が得られる。
就中、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、およびL−マンニトールおよびD-マンニトールが好ましい。
分岐性開始剤の量は、ラクチド100重量部に対して、好ましくは0.01〜2.0重量部、より好ましくは0.05〜0.8重量部、さらに好ましくは0.08〜0.7重量部である。
金属触媒は、これらの金属のカルボン酸塩、アルコキシド、アリールオキシド、或いはβ−ジケトンのエノラート等として添加することができる。重合活性や色相を考慮した場合、オクチル酸スズ、チタンテトライソプロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシドが特に好ましい。また重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノールなどを好適に用いることができる。
触媒量は、ラクチド100重量部に対して、好ましくは0.001〜0.1重量部、より好ましくは0.003〜0.01重量部である。
ポリマーA(またはポリマーB)は、Lラクチド(またはDラクチド)の含有量が少ない方が好ましい。ラクチドの含有量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.08重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%である。
ポリマーAとポリマーBとは、重量比(A/B)=10/90〜90/10、好ましくは40/60〜60/40、より好ましくは45/55〜55/45で共存させる。熱処理は、240〜300℃、好ましくは240〜280℃、より好ましくは240〜260℃で行う。
熱処理に際して、ポリマーAとBとを混合することが好ましい。混合は、それらが熱処理したときに均一に混合される方法であればいかなる方法をとることも出来る。即ち、ポリマーAおよびBをあらかじめ粉体化あるいはチップ化したものを所定量混合(ドライブレンド)した後に溶融する方法、ポリマーAおよびBを溶融後、混練する方法、ポリマーAあるいはBいずれか一方を溶融させた後に残る一方を加えて混練する方法を採用することができる。
就中、ポリマーAおよびポリマーBとをドライブレンドした後、溶融混合することが好ましい。ここで、上記において粉体あるいはチップの大きさは、ポリマーAおよびBの粉体あるいはチップが均一に混合されれば特に限定されるものではないが、3mm以下が好ましく、さらには1から0.25mmのサイズであることが好ましい。溶融混合する場合、大きさに関係なく、ステレオコンプレックス結晶を形成するが、粉体あるいはチップを均一に混合した後に単に溶融する場合、粉体あるいはチップの直径が3mm以上の大きさになると、ホモ結晶も析出するので好ましくない。
熱処理に用いる装置、方法としては、雰囲気調整を行いながら加熱できる装置、方法であれば用いることができるが、たとえば、バッチ式の反応器、連続式の反応器、二軸あるいは一軸のエクストルーダーなど、またはプレス機、流管式の押し出し機を用いて、成型しながら処理する方法をとることが出来る。
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸は、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、200℃以上の融解ピークの割合が、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。またポリ乳酸の融点は、好ましくは200〜250℃、より好ましくは200〜230℃である。またポリ乳酸の融解エンタルピーは、好ましくは20J/g以上、より好ましくは30J/g以上である。ポリ乳酸の結晶化点は、好ましくは80〜110℃、より好ましくは85〜105℃である。
よって、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸は、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、200℃以上の融解ピークの割合が90%以上であり、融点が200〜250℃の範囲にあり、融解エンタルピーが20J/g以上であることが好ましい。
ポリ乳酸のL乳酸単位とD乳酸単位の比(L/D)は、好ましくは30/70〜70/30、より好ましくは40/60〜60/40である。L/Dが上記範囲を外れるとポリ乳酸の結晶化度が低下する。
本発明により得られるポリ乳酸には、本発明の目的を損なわない範囲内で、通常の添加剤、例えば、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、離形剤、各種フィラー、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌・抗カビ剤、核形成剤、染料、顔料を含む着色剤等を所望に応じて含有することができる。
本発明により得られるポリ乳酸を用いて、射出成形品、押出成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、フィルム、シート不織布、繊維、布、他の材料との複合体、農業用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品またはその他の成形品を得ることができ、成形は常法により行うことができる。
(1)重量平均分子量(Mw):
ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC(カラム温度40℃、クロロホルム)により、ポリスチレン標準サンプルとの比較で求めた。
(2)結晶化点、融点、融解エンタルピーおよび200℃以上の融解ピークの割合:
DSCを用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分で測定し、結晶化点(Tc)、融点(Tm)および融解エンタルピー(ΔHm)を求めた。
200℃以上の融解ピークの割合(%)は、200℃以上(高温)の融解ピーク面積と140〜180℃(低温)融解ピーク面積から以下の式により算出した。
R200以上(%)=A200以上/(A200以上+A140〜180)×100
R200以上:200℃以上の融解ピークの割合
A200以上:200℃以上の融解ピーク面積
A140〜180:140〜180℃の融解ピーク面積
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)200gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ペンタエリスリトール0.12g、触媒としてオクチル酸スズ12mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーA1を製造した。得られたポリマーA1の重量平均分子量20万、融点(Tm)は174℃であった。
D−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)200gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ペンタエリスリトール0.15g、触媒としてオクチル酸スズ12mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーB1を製造した。得られたポリマーB1の重量平均分子量18万、融点(Tm)は172℃であった。
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)48.75gとD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)1.25gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ペンタエリスリトール0.20g、触媒としてオクチル酸スズ12mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーA2を製造した。得られたポリマーA2の重量平均分子量16万、融点(Tm)は158℃であった。
D−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)48.75gとL−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)1.25gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ペンタエリスリトール0.19g、触媒としてオクチル酸スズ12mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーB2を製造した。得られたポリマーB2の重量平均分子量17万、融点(Tm)は158℃であった。
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)48.75gとD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)1.25gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、エチレングリコール0.10g、触媒としてオクチル酸スズ12mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーA3を製造した。得られたポリマーA3の重量平均分子量16万、融点(Tm)は157℃であった。
D−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)48.75gとL−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)1.25gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、エチレングリコール0.21g、触媒としてオクチル酸スズ12mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーB3を製造した。得られたポリマーB3の重量平均分子量17万、融点(Tm)は158℃であった。
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)48.75gとD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)1.25gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、L−マンニトール0.25g、触媒としてオクチル酸スズ12mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーA4を製造した。得られたポリマーA4の重量平均分子量16万、融点(Tm)は156℃であった。
D−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)48.75gとL−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)1.25gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、L−マンニトール0.25g、触媒としてオクチル酸スズ12mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーB4を製造した。得られたポリマーB4の重量平均分子量17万、融点(Tm)は157℃であった。
ポリマーA1およびポリマーB1を等量、ドライブレンドし、フラスコに加え、窒素置換後、260℃まで昇温し、260℃で3分間、溶融ブレンドを行った。
得られた樹脂の重量平均分子量は18万であった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点222℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは66J/gであった。140〜180℃の融解ピークは観測されず、200℃以上の融解ピークの割合(R200以上)は100%であった。結晶化点は96℃であった。図1にDSCチャートを示す。
溶融温度を240℃とした以外は実施例1と同様な方法で溶融ブレンドを行った。得られた樹脂の重量平均分子量は19万で、分散度は2.07であった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点218℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは56J/gであった。140〜180℃の融解ピークがわずかに観測され、200℃以上の融解ピークの割合(R200以上)は95%であった。結晶化点は92℃であった。
ポリマーA2およびポリマーB2を使う以外は実施例1と同様な方法で溶融ブレンドを行った。得られた樹脂の重量平均分子量は14万であった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点210℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは45J/gであった。140〜180℃の融解ピークはほとんど観測されず、200℃以上の融解ピークの割合(R200以上)は98%であった。結晶化点は89℃であった。
ポリマーA1およびポリマーB2を使う以外は実施例1と同様な方法で溶融ブレンドを行った。得られた樹脂の重量平均分子量は16万であった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点215℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは52J/gであった。140〜180℃の融解ピークはわずかに観測され、200℃以上の融解ピークの割合(R200以上)は99%であった。結晶化点は93℃であった。
ポリマーA3およびポリマーB3を使う以外は実施例1と同様な方法で溶融ブレンドを行った。得られた樹脂の重量平均分子量は13万であった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点207℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは39J/gであった。140〜180℃の融解ピークは観測されず、200℃以上の融解ピークの割合(R200以上)は100%であった。結晶化点は89℃であった。
ポリマーA4およびポリマーB4を使う以外は実施例1と同様な方法で溶融ブレンドを行った。得られた樹脂の重量平均分子量は14万であった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点204℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは37J/gであった。140〜180℃の融解ピークは若干観測され、200℃以上の融解ピークの割合(R200以上)は97%であった。結晶化点は89℃であった。
以下に示すステアリルアルコールで重合を開始したポリマーA(PLLA)とポリマーA(PDLA)を用いた以外は実施例1と同じ操作を行い、樹脂を得た。得られた樹脂についてDSC測定を行った。その結果、融点173℃の融解ピーク及び融点220℃の融解ピークが観測された。R200以上は40%であった。
PLLA:重量平均分子量21万、分散度1.72、融点(Tm)172℃、結晶化点(Tc)125℃。
PDLA:重量平均分子量20万、分散度1.68、融点(Tm)171℃、結晶化点(Tc)122℃。
Claims (8)
- (A)主としてL―乳酸単位からなり、重量平均分子量が5万〜50万で、融点が160〜180℃のポリマーAと、
(B)主としてD−乳酸単位からなり、重量平均分子量が5万〜50万で、融点が160〜180℃のポリマーBとを、
重量比(A/B)が10/90〜90/10の範囲で共存させ、240〜300℃で熱処理しポリ乳酸を製造する方法であって、ポリマーAおよびポリマーBの少なくとも一方は、ラクチドを分岐性開始剤および金属触媒の存在下で開環重合したものであることを特徴とするポリ乳酸の製造方法。 - 分岐性開始剤が、多価アルコールである請求項1記載の製造方法。
- 分岐性開始剤が、ジオール、トリオール、テトラオールおよび糖類からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の製造方法。
- 金属触媒が、スズ、チタンおよびアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の化合物である請求項1記載の製造方法。
- ポリ乳酸が、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、200℃以上の融解ピークの割合が90%以上であり、融点が200〜250℃の範囲にあり、融解エンタルピーが20J/g以上である請求項1記載の製造方法。
- ポリマーAとポリマーBとをドライブレンドした後、溶融混合により熱処理を行う請求項1記載の製造方法。
- 請求項1記載の方法により得られたポリ乳酸。
- 請求項7記載のポリ乳酸からなる成形品。
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