JP5608562B2 - ポリ乳酸樹脂組成物およびポリ乳酸樹脂用添加剤 - Google Patents

ポリ乳酸樹脂組成物およびポリ乳酸樹脂用添加剤 Download PDF

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Description

本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物およびポリ乳酸樹脂用添加剤に関し、詳細には、耐熱性および柔軟性に優れたポリ乳酸樹脂組成物、およびこれを製造するために用いるポリ乳酸樹脂用添加剤に関する。
近年、持続発展可能な社会の構築が切望されており、高分子材料分野においても再生可能資源を利用した材料開発が盛んに行われている。ポリ乳酸は植物由来の材料により合成することが可能であり、機械強度も既存のプラスチックに近い性質を示すため、石油由来プラスチックの代替として注目されている。しかし、耐熱性や柔軟性に乏しい点が、幅広い応用展開を図る上で大きな課題となっている。
ポリ乳酸の柔軟性を向上させる例として、10〜40wt%の乳酸またはラクチド、あるいは10〜60wt%の直鎖状の乳酸オリゴマーまたはラクチドオリゴマーをポリ乳酸に添加したポリ乳酸樹脂組成物が開示されている(特許文献1)。しかしながら、樹脂中に含まれる低分子化合物は、表面への滲み出し(いわゆるブリードアウト)を生じやすい。なぜなら、低分子化合物がポリ乳酸の非結晶部分に相溶しているため、この部分の分子鎖は添加物によって運動しやすくなっており、外部エネルギーが加わることで非結晶部分が徐々に結晶化し、相溶可能部分が減少し、低分子化合物が表面に押し出されるからである。一方、比較的高分子の直鎖状の乳酸オリゴマーを配合した場合は、低分子化合物と異なりブリードアウトが生じにくいが、添加した乳酸オリゴマー自身が結晶性を有するので、可塑化の妨げとなる。
ポリ乳酸の柔軟性を向上させる別の例として、乳酸の誘導体を添加したポリ乳酸樹脂組成物が開示されている(特許文献2)。しかしながら、この場合も添加物が低分子化合物であり、添加量によってはブリードアウトが生じやすい。
ポリ乳酸の柔軟性を向上させるさらに別の例として、環状の乳酸オリゴマーとポリ乳酸とからなる樹脂組成物が開示されている(特許文献3)。乳酸由来のオリゴマーとポリマーとの組み合わせにより柔軟性を付与できるため、透明性および植物度(植物由来原料の割合)を維持できる。しかしながら、可塑化の促進は十分でなく、環状の乳酸オリゴマーの製造収率が低いこと、そして環状オリゴマーの分子量の制御が困難であることが問題である。
その他、ポリ乳酸に柔軟性を付与するために、他樹脂やフィラーの配合による改質が検討されているが、ポリ乳酸の透明性を損なうことや、植物度を低下させることなどが問題となっている。
一方、ポリ乳酸の耐熱性を上げるためには、例えば、耐熱性を有するタルクやマイカなどの無機フィラーをポリ乳酸に添加する方法が挙げられる。すなわち、ポリ乳酸に高耐熱性を有する無機フィラーを添加することにより、ポリ乳酸の機械特性を改善し、ポリ乳酸を固くする効果が得られる。しかしながら、ポリ乳酸に無機フィラーを添加するのみでは、実用面における十分な耐熱性を確保することは困難であり、比重が高くなるという新たな問題を生じる。
ところで、ポリ乳酸は、結晶構造をとり得るが、結晶化しにくい高分子であるため、ポリ乳酸を通常の汎用樹脂と同様の方法で成形すると、成形品は非結晶性となるため、機械強度に劣り、かつ熱変性を生じやすい。
これに対し、成形中または成形後に熱処理を施すことによって、ポリ乳酸を結晶化でき、成形品の耐熱性の向上を図ることができる。しかしながら、このような熱処理による結晶化方法は、結晶化に長時間を必要とするという実用上の問題がある。ポリ乳酸の成形品を金型内で熱処理工程を経て結晶化を終了させるためには、かなりの時間がかかる。
また、ポリ乳酸の結晶核となる物質を添加せずに、ポリ乳酸のみで結晶化させる(均一核生成)と、結晶核の自由発生頻度が小さいため、結晶のサイズがミクロンオーダー程度と大きくなる。このため、ポリ乳酸の結晶自体が光散乱の要因となり、白濁して透明性が失われ、実用上の有効性が低減する。
結晶構造をとり得るポリマーに関し、上記のような課題を解決するために、すなわち結晶構造をとり得るポリマーの結晶化を促進するために、造核剤(核剤)の添加という手法が検討されている。核剤とは、結晶性高分子の一次結晶核となり、結晶性ポリマーの結晶成長を促進するものをいう。また広義には、結晶性高分子の結晶化を促進するもの、すなわち高分子の結晶化速度そのものを速くするものを核剤ということもある。核剤が樹脂に添加されると、高分子の結晶を微細化でき、剛性が改善されたり、あるいは透明性が改善されたりするという効果が得られる。また、成形中に結晶化させる場合においては、結晶化の全体の速度を速める(時間を短縮する)ことから、成形サイクルを短縮できるという利点もある。
ポリ乳酸の結晶化を促進する核剤の例としては、タルク、層状粘度化合物、スルホイソフタル酸ジメチル金属塩、銅フタロシアニンの添加、ポリカーボネートとのアロイなどがある。しかしながら、いずれも再生可能資源を利用した植物由来の添加剤ではなく、植物度を低下させることなどが問題となっている。
植物度を低下させない添加剤としては、ポリ−D乳酸またはD−乳酸とデンプンとの共重合樹脂からなるA成分と、融点または軟化点がポリ乳酸の融点または軟化点以下である生分解樹脂からなるB成分とのブロック重合体をポリ乳酸に混入する例が開示されている(特許文献4)。しかしながら、この添加剤はポリ乳酸に対する相溶性が低く、樹脂組成物における相溶安定性が低下するという問題がある。このため、相溶化剤を加えることが必要であり、結果として植物度を低下させることが問題となる。
また、トリプトファン、フェニルアラニンなどのアミノ酸をポリ乳酸に混入する例が開示されている(特許文献5)。しかしながら、これらの添加剤は、ポリ乳酸に対する相溶性が低く、また、粒径の分布および添加量を制御することが必要とされ、凝集を防ぐためには凝集防止剤を加えることも必要であることから、植物度を低下させることが問題となる。
さらに、従来の核剤は、いずれも結晶化促進効果が十分でなく、汎用樹脂と同等の成形サイクルでは十分な結晶化度、すなわち耐熱性が得られないことが問題であった。ポリ乳酸の融点は170℃であり、十分な結晶化が進行すれば、このような問題は解決できるものと考えられる。
ところで、油脂を開始剤として用いてラクチドまたは乳酸を重合して得られた星型分岐状ポリエステルポリオールが開示されている(特許文献6)。しかしながら、この分岐状ポリマーは低結晶性であり、ポリ乳酸へ添加しても、結晶化を促進する効果はない。
米国特許5180765号 特開平9−100401号公報 特開平6−306264号公報 特開2007−063516号公報 特開2006−282940号公報 国際公開第2008/29527号
本発明は、植物度を低下させずに、柔軟性および耐熱性に優れるポリ乳酸樹脂組成物を提供することを課題とする。本発明はまた、ポリ乳酸樹脂に添加することで、その柔軟性および耐熱性を改善できるポリ乳酸樹脂用添加剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ポリ乳酸に、分子構造の異なるポリ乳酸を加えることで、ポリ乳酸の可塑化および結晶化が促進されることを見出した。ポリ乳酸は、可塑化の促進により柔軟性が向上し、結晶化の促進により耐熱性が向上する。すなわち、ポリ乳酸に、分子構造の異なるポリ乳酸を加えることで、ポリ乳酸の柔軟性と耐熱性とを向上できることを見出した。
上記分子構造の異なるポリ乳酸とは、分岐状ポリ乳酸をいい、分子中に極性基を少なくとも3個有する化合物を中心とし、上記極性基を起点としてポリ乳酸鎖がつながった分岐鎖を有し、分岐鎖末端は水酸基である。分岐状ポリ乳酸は、ポリ乳酸と同様に乳酸をモノマーとする重合体であるが、分岐状であること、および分子中に極性基を少なくとも3個有する化合物が中心に存在することにより、分子鎖の結晶化が阻害されるため、結晶性が低く、融点が低く、さらに柔軟である。したがって、従来の課題であったブリードアウトなどを抑えるために比較的高分子の分岐状ポリ乳酸をポリ乳酸に添加しても、分岐状ポリ乳酸自体は非結晶性であり、ポリ乳酸の可塑化を妨げない。分岐状ポリ乳酸は、このようにポリ乳酸と同類の高分子化合物でありながら非常に柔軟であることが特徴である。
本発明者らは、分岐状ポリ乳酸をポリ乳酸に添加することで、ポリ乳酸の結晶化が阻害されるとともに、ポリ乳酸分子の分子間力が弱められる結果、ポリ乳酸は可塑化され、柔軟性が向上することを見出した。分岐状ポリ乳酸とポリ乳酸とは同じモノマー単位を有することから、非常に相溶性が高いため、分岐状ポリ乳酸が添加されたポリ乳酸は可塑化が促進され、経時的にも安定して性能を維持することができる。
本発明者らはまた、分岐状ポリ乳酸の分岐鎖のうち少なくとも1個の末端水酸基における水素をアシル基で置換することにより、分岐状ポリ乳酸の結晶性が向上することを見出した。このような分岐状ポリ乳酸は、ポリ乳酸と同様に乳酸をモノマーとする重合体であるが、分岐状であり、分子中に極性基を少なくとも3個有する化合物が中心に存在するにもかかわらず、非常に結晶性が高く、溶融後の冷却過程で速やかに結晶化する。分岐状ポリ乳酸は、このように分岐鎖のうち少なくとも1個の末端水酸基における水素をアシル基で置換することにより、ポリ乳酸と同類の高分子化合物でありながら非常に結晶性が高いことが特徴である。
このような分岐状ポリ乳酸をポリ乳酸に添加することで、分岐状ポリ乳酸がまず結晶を生成し、その結晶表面にポリ乳酸の分子が吸着し、エピタキシャルに結晶化が進行することで、結晶化速度が大幅に向上し、結晶化度、すなわち耐熱性が向上する。融点に近い温度領域においても結晶生成が促進されるため、従来のように高温での保持が必要なく、冷却時に速やかに結晶が成長する。このように分岐状ポリ乳酸は化学反応における触媒と同様、結晶化過程において結晶生成の「場」を与えることで、結晶化を促進するものである。
添加物(核剤)による結晶化促進の作用機構の本質はエピタキシーであり、核剤表面の結晶格子定数とベース樹脂の結晶格子定数との整合性が核剤としての基本性能を決定付ける。したがって、ポリ乳酸の結晶構造に近い結晶構造を表面に有する核剤を設計できることが重要となるが、本発明では、分岐鎖のうち少なくとも1個の末端水酸基における水素がアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸は、ベース樹脂のポリ乳酸とモノマーが共通することから、結晶表面の整合性が非常に良好である。
ポリ乳酸と分岐状ポリ乳酸とは、分子レベルの相溶性に優れるため、相溶安定性に優れ、経時的にも安定して性能を維持できる樹脂組成物を提供することができる。また、ポリ乳酸と分岐状ポリ乳酸とは、モノマーが共通するため、良好なエピタキシーを有し、結晶核生成速度が速い樹脂組成物を提供することができる。さらに、ポリ乳酸と分岐状ポリ乳酸とは、結晶サイズが小さい上に、類似する構造により屈折率も近似するため、透明な樹脂組成物を提供することができる。
なお、ポリ乳酸の結晶化を促進するのは、分岐鎖のうち少なくとも1個の末端水酸基における水素がアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸分子を含有する、分岐状ポリ乳酸である。すなわち、本発明における分岐状ポリ乳酸は、分岐鎖の末端水素基における水素がアシル基で置換された分岐状ポリ乳酸分子と、分岐鎖の末端水素基における水素が置換されていない分岐状ポリ乳酸分子との混合物でもよく、あるいは、すべての分子が、分岐鎖の末端水素基における水素がアシル基で置換された分岐状ポリ乳酸分子であってもよい。混合物の場合、分岐鎖の末端水素基における水素がアシル基で置換された分岐状ポリ乳酸分子の割合が高い方が好ましい。
分岐状ポリ乳酸およびこれを配合されるポリ乳酸は、すべてまたは大部分が植物由来の原料からなるため、これらを組み合わせたポリ乳酸樹脂組成物においても植物度を低下させることはない。
本発明は、これらの知見に基づき完成されたものであり、分子中にポリ乳酸からなる分岐鎖を少なくとも3個有する分岐状ポリ乳酸からなるポリ乳酸樹脂用添加剤であって、該分岐状ポリ乳酸が、分子中に水酸基を少なくとも3個有するポリエーテルポリオール、ヌクレオシド、および糖アルコールからなる群より選択される少なくとも1種を開始剤として用いてラクチド、乳酸またはポリ乳酸を重合して得られる、ポリ乳酸樹脂用添加剤を提供する。
なお、本明細書において単に「ポリ乳酸」という場合は、下記のように、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とする、実質的に分岐を有しない直鎖状のポリ乳酸を指す。本明細書においては、「分子中にポリ乳酸からなる分岐鎖を少なくとも3個有する分岐状ポリ乳酸」を少なくとも包含しない意味で用いられる。
本発明の1つの実施態様では、上記分子中に水酸基を少なくとも3個有するポリエーテルポリオールは、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールである。
本発明の別の実施態様では、上記ヌクレオシドは、アデノシン、グアノシン、ウリジン、5−メチルウリジン、またはシチジンである。
本発明のさらに別の実施態様では、上記糖アルコールは、炭素数3〜8のアルドースの還元によって生じるアルジトールである。
本発明のある実施態様では、上記アルジトールは、グリセリン、エリトリトール、アラビニトール、キシリトール、ソルビトール、またはマンニトールである。
本発明のさらに別の実施態様では、さらに、上記分岐状ポリ乳酸は、上記ポリ乳酸からなる分岐鎖のうち少なくとも1個の末端水酸基における水素がアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸分子を含有する。
本発明のある実施態様では、上記アシル基は、ジカルボン酸由来である。
本発明の他の実施態様では、上記アシル基は、カルボキシル基において陽イオンと塩を形成しているジカルボン酸由来である。
本発明はまた、分子中にポリ乳酸からなる分岐鎖を少なくとも3個有する分岐状ポリ乳酸からなるポリ乳酸樹脂用添加剤であって、該分岐状ポリ乳酸が、ヒマシ油を開始剤として用いてラクチド、乳酸またはポリ乳酸を重合して得られ、そして該分岐状ポリ乳酸が、該ポリ乳酸からなる分岐鎖のうち少なくとも1個の末端水酸基における水素が、カルボキシル基において陽イオンと塩を形成しているフタル酸由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸分子を含有する、ポリ乳酸樹脂用添加剤を提供する。
本発明はまた、分子中にポリ乳酸からなる分岐鎖を少なくとも3個有する分岐状ポリ乳酸からなるポリ乳酸樹脂用添加剤であって、該分岐状ポリ乳酸の数平均分子量が、4000〜40000である、ポリ乳酸樹脂用添加剤を提供する。
本発明はまた、分子中にポリ乳酸からなる分岐鎖を少なくとも3個有する分岐状ポリ乳酸からなるポリ乳酸樹脂用添加剤であって、該分岐状ポリ乳酸が、分子量3000以下の分岐状ポリ乳酸分子を10質量%以下の割合で含有する、ポリ乳酸樹脂用添加剤を提供する。
本発明はまた、分子中にポリ乳酸からなる分岐鎖を少なくとも3個有する分岐状ポリ乳酸からなるポリ乳酸樹脂用添加剤であって、該分岐状ポリ乳酸の融点が、100〜160℃である、ポリ乳酸樹脂用添加剤を提供する。
本発明はまた、分子中にポリ乳酸からなる分岐鎖を少なくとも3個有する分岐状ポリ乳酸からなるポリ乳酸樹脂用添加剤であって、該分岐状ポリ乳酸が、溶融後100℃/分の冷却速度で冷却する場合に20〜50J/gの発熱量を有する、ポリ乳酸樹脂用添加剤を提供する。
本発明はまた、分子中にポリ乳酸からなる分岐鎖を少なくとも3個有する分岐状ポリ乳酸からなるポリ乳酸樹脂用添加剤であって、該分岐状ポリ乳酸のガラス転移温度が、30℃以下である、ポリ乳酸樹脂用添加剤を提供する。
本発明はまた、分子中にポリ乳酸からなる分岐鎖を少なくとも3個有する分岐状ポリ乳酸からなるポリ乳酸樹脂用添加剤であって、該分岐状ポリ乳酸を構成する乳酸(L体あるいはD体)の光学純度が、94%以上である、ポリ乳酸樹脂用添加剤を提供する。
本発明の1つの実施態様では、上記分岐状ポリ乳酸は、分子中に極性基を少なくとも3個有する化合物を開始剤として用いてラクチド、乳酸またはポリ乳酸を重合して得られ、そして上記分岐状ポリ乳酸は、上記ポリ乳酸からなる分岐鎖のうち少なくとも1個の末端水酸基における水素がアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸分子を含有する。
本発明のある実施態様では、上記分子中に極性基を少なくとも3個有する化合物は、分子中に水酸基を少なくとも3個有するトリアシルグリセロールを主成分として含有する油脂、分子中にエポキシ基を少なくとも3個有するトリアシルグリセロールを主成分として含有する油脂、分子中に水酸基を少なくとも3個有するポリエーテルポリオール、ヌクレオシド、および糖アルコールからなる群より選択される少なくとも1種である。
本発明のある実施態様では、上記ポリ乳酸樹脂用添加剤は、粒体に加工されている。
本発明はさらに、ポリ乳酸と、分子中にポリ乳酸からなる分岐鎖を少なくとも3個有する分岐状ポリ乳酸からなるポリ乳酸樹脂用添加剤とを含有する、ポリ乳酸樹脂組成物を提供する。
本発明の1つの実施態様では、上記ポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸100質量部に対して、上記ポリ乳酸樹脂用添加剤を1〜30質量部溶融混合してなる。
本発明の別の実施態様では、上記ポリ乳酸樹脂組成物は、さらに、タルクまたはマイカを0.1〜5質量部溶融混合してなる。
本発明のさらに別の実施態様では、上記ポリ乳酸樹脂組成物は、さらに、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを0.1〜5質量部溶融混合してなる。
本発明のさらに別の実施態様では、上記ポリ乳酸樹脂組成物は、さらに、ジエチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、モノオレイン、トリアセチン、トリブチリン、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルリシノール酸メチル、アジピン酸ジエステル、フマル酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、セバシン酸ジエステルからなる群より選択される少なくとも1種を1〜30質量部溶融混合してなる。
本発明のある実施態様では、上記ポリ乳酸樹脂組成物は、粒体に加工されている。
本発明によれば、可塑化の促進により柔軟性が向上し、および結晶化の促進により耐熱性が向上したポリ乳酸樹脂組成物、およびこれを製造するために用いるポリ乳酸樹脂用添加剤を提供することができる。
本発明のポリ乳酸樹脂用添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸の合成および構造の1つの実施態様を示す模式図である。 本発明のポリ乳酸樹脂用添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸の合成および構造の別の実施態様を示す模式図である。 本発明のポリ乳酸樹脂用添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸の合成および構造のさらに別の実施態様を示す模式図である。
以下、本発明をより詳細に説明する。
(ポリ乳酸樹脂用添加剤)
本発明のポリ乳酸樹脂用添加剤は、以下に詳述する分岐状ポリ乳酸からなることを特徴とする。
(分岐状ポリ乳酸)
本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸は、再生可能資源で構成されるように設計されている。すなわち、本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸は、乳酸を構成単位とする分岐鎖(すなわち、ポリ乳酸鎖または乳酸オリゴマー鎖)を分子中に少なくとも3個有する分岐状ポリマーである(図1および図2参照)。
なお、乳酸を構成単位とする分岐鎖の数としては、必ずしも3個に限定されるものではなく、これ以上の数であってもよく、例えば3〜12、好ましくは3〜8であり得る。また、分岐状ポリマーの骨格構造としても、図1に示す例のような星型のもののほか、櫛型、樹脂型、爆裂星型など各種の形態をとり得る。
具体的には、分子中に水酸基を少なくとも3個有する油脂(トリアシルグリセロール)の水酸基に、ポリ乳酸のカルボキシ末端がそれぞれエステル結合されている分岐状ポリ乳酸が挙げられる(図2)。
あるいは、分子中にエポキシ基を少なくとも3個有する油脂(トリアシルグリセロール)のエポキシ基が開環して、ポリ乳酸のカルボキシ末端がそれぞれエステル結合されている分岐状ポリ乳酸が挙げられる(図2)。
あるいは、分子中に水酸基を少なくとも3個有するポリエーテルポリオールの水酸基に、ポリ乳酸のカルボキシ末端がそれぞれエステル結合されている分岐状ポリ乳酸が挙げられる(図1)。
あるいは、ヌクレオシドの水酸基に、ポリ乳酸のカルボキシ末端がそれぞれエステル結合されている分岐状ポリ乳酸が挙げられる(図3)。
あるいは、糖アルコールの水酸基に、ポリ乳酸のカルボキシ末端がそれぞれエステル結合されている分岐状ポリ乳酸が挙げられる(図1)。
このため、油脂、ポリエーテルポリオール、ヌクレオシドまたは糖アルコールを起点として少なくとも3個のポリ乳酸鎖が延び、各ポリ乳酸鎖の末端には水酸基が存在する。このような分岐状ポリ乳酸は、直鎖状のポリ乳酸に比べて、同等の分子量であっても、ガラス転移温度、融点および結晶化度が低い。また、油脂およびポリ乳酸鎖の構成によっては、非結晶性であり得る。
本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸において、乳酸を構成単位とする分岐鎖(すなわち、ポリ乳酸鎖または乳酸オリゴマー鎖)を構成する乳酸成分としては、L−乳酸(以下、L体という場合がある)、D−乳酸(以下、D体という場合がある)、あるいはラセミ体などのD体とL体との混合物(以下、DL体という場合がある)のいずれであってもよい。
なお、下記の実施例においても示されるように、分岐状ポリ乳酸の乳酸成分として、D体を含むものである方(D体ないしDL体)が、一般的なポリ乳酸に対する可塑化の促進効果は高いものとなることが期待できる。しかしながら、分岐状ポリ乳酸の乳酸成分がL体のみの場合であっても、一般的なポリ乳酸に対する十分な改質効果がもたらされるものであり、経済的な観点からすると、L体の分岐状ポリ乳酸も十分に好ましいものである。
また、分岐状ポリ乳酸の分岐鎖のうち少なくとも1個の末端水酸基における水素がアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸は、構成成分の乳酸(L体あるいはD体)の光学純度の高い方が、結晶性が向上し得る。このような分岐状ポリ乳酸をポリ乳酸に添加することで、ポリ乳酸の結晶化速度がさらに大きく向上し、結晶化度、すなわち耐熱性がさらに向上し得る。
また、本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸は、ポリ乳酸からなる分岐鎖のうち少なくとも1個の末端水酸基における水素がアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸分子を含有することが好ましい。末端水酸基とカルボン酸とを縮合させることで、末端水酸基における水素がアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸とすることができる。
ポリ乳酸からなる分岐鎖のうち少なくとも1個の末端水酸基における水素をアシル基で置換することにより、分岐状ポリ乳酸は、ポリ乳酸に添加した場合ポリ乳酸の結晶化を促進する。このような分岐状ポリ乳酸をポリ乳酸に配合したポリ乳酸樹脂組成物は、溶融後の冷却時において、まず結晶性の高い分岐状ポリ乳酸が結晶核生成を起こし、この結晶と整合するようにポリ乳酸の結晶が成長する。このように、ポリ乳酸は分岐状ポリ乳酸によって結晶化が促進され、結晶化度、すなわち耐熱性が向上する。
アシル基(R−CO−)としては、上記一般式中のRがHまたは炭素数1〜14の飽和または不飽和炭化水素残基であるアシル基が挙げられる。例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチニル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
上記アシル基は、ジカルボン酸に由来するものでもよい。ジカルボン酸(HOOC−R−COOH)としては、上記一般式中のRがHまたは炭素数1〜14の飽和または不飽和炭化水素残基であるジカルボン酸が挙げられる。例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、グルタル酸、アジピン酸などが挙げられる。
また、上記アシル基は、カルボキシル基において陽イオンと塩を形成しているジカルボン酸に由来するものでもよい。分岐状ポリ乳酸のポリ乳酸からなる分岐鎖のうち少なくとも1個の末端水酸基とジカルボン酸とを縮合させた後、金属水酸化物、金属アルコラートなどのアルカリで中和することで、ポリ乳酸からなる分岐鎖のうち少なくとも1個の末端水酸基における水素が、カルボキシル基において陽イオンと塩を形成しているジカルボン酸に由来するアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸とすることができる。ジカルボン酸(HOOC−R−COOH)としては、上記一般式中のRがHまたは炭素数1〜14の飽和または不飽和炭化水素残基であるジカルボン酸が挙げられる。例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、グルタル酸、アジピン酸などが挙げられる。
また、本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸の分子量としては、得られるポリ乳酸樹脂組成物の目的とする用途などに応じた所望の機械特性、柔軟性、結晶性などを与えるものであれば特に限定されるものではなく、また、組み合わせて用いられるポリ乳酸の分子量、光学特性などによっても左右されるが、好ましくは、数平均分子量で、4000〜40000、より好ましくは5000〜15000とすることができる。
本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸は、好ましくは分子量2000以下の分岐状ポリ乳酸分子を、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下の割合で含有する。より好ましくは3000以下の分岐状ポリ乳酸分子を、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下の割合で含有する。
本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸の融点としては、好ましくは100〜160℃、より好ましくは120〜160℃である。
本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸は、溶融後100℃/分の冷却速度で冷却する場合に、好ましくは20〜50J/gの発熱量を有し、より好ましくは30〜50J/gの発熱量を有する。
本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸は、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下のガラス転移温度を有する。
本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸において、構成成分の乳酸(L体あるいはD体)の光学純度は、好ましくは94%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは98%以上である。
このような分岐状ポリ乳酸は、例えば、分子中に水酸基を少なくとも3個有するトリアシルグリセロールを主成分とする油脂を開始剤として用いて、(a1)ラクチドを開環重合させる工程、または(b1)乳酸またはポリ乳酸を脱水縮合重合させる工程のいずれかの工程によって得られる。あるいは、分子中にエポキシ基を少なくとも3個有するトリアシルグリセロールを主成分とする油脂を開始剤として用いて、(a2)ラクチドを開環重合させる工程、または(b2)乳酸またはポリ乳酸を脱水縮合重合させる工程のいずれかの工程によって得られる。あるいは、分子中に水酸基を少なくとも3個有するポリエーテルポリオールを開始剤として用いて、(a3)ラクチドを開環重合させる工程、または(b3)乳酸またはポリ乳酸を脱水縮合重合させる工程のいずれかの工程によって得られる。あるいは、ヌクレオシドを開始剤として用いて、(a4)ラクチドを開環重合させる工程、または(b4)乳酸またはポリ乳酸を脱水縮合重合させる工程のいずれかの工程によって得られる。あるいは、糖アルコールを開始剤として用いて、(a5)ラクチドを開環重合させる工程、または(b5)乳酸またはポリ乳酸を脱水縮合重合させる工程のいずれかの工程によって得られる。
なお、本発明において、「重合」とは、重合体を合成することを目的にした1以上の化学反応をいう。
本発明の添加剤は、固形物(塊状物または粉体)として得られ得る。本発明の添加剤は、造粒操作にさらに供することにより粒体に加工され得る。粒体の形状としては、例えば、顆粒、ペレット、タブレットなどが挙げられる。造粒操作は、当業者が通常用いる手順または装置によって行われ得る。
(開始剤)
本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸は、分子中に水酸基またはエポキシ基を少なくとも3個有する化合物を開始剤として用いてラクチド、乳酸またはポリ乳酸を重合することによって合成され得る。このような開始剤としては、油脂、ポリエーテルポリオール、ヌクレオシド、糖アルコールなどが挙げられる。以下、これらについて説明する。
(油脂)
上記開始剤として用いられる油脂は、分子中に水酸基を少なくとも3個有するトリアシルグリセロール、または分子中にエポキシ基を少なくとも3個有するトリアシルグリセロールを主成分とする。以下、これらの油脂を、それぞれ水酸基化油脂またはエポキシ化油脂という場合がある。
本発明において、油脂とは、炭素数の多い脂肪酸(高級脂肪酸)、具体的には炭素数8以上、より好ましくは炭素数14〜20の脂肪酸(高級脂肪酸)と、グリセリンとのエステルを主成分とするものをいう。サラダオイルや大豆油のように常温で液体の油、およびラードや牛脂のように固体の脂肪を含む。本発明においては、再生可能資源である点で、天然物由来の油脂が好ましい。このような油脂は、当業者が通常用いる手段によって得られる。例えば、豆や種子などを原料として、脱穀・粉砕・蒸煮(熱処理)などの前処理を施した後に、融出法、圧搾法、抽出法などの方法により採油し、脱ガム、脱酸、脱色、脱臭などの精製工程によって得られる。
油脂は、構成する脂肪酸の種類によって様々な特徴を有する。本発明においては、開始剤として起点となる水酸基を多く有するトリアシルグリセロールを主成分とする油脂が好適である。このような油脂としては、コーン油、ゴマ油、落花生油、カポック油、ヒマシ油などが挙げられる。
ヒマシ油(蓖麻子油、英語ではCastor oil)は、トウダイグサ科のトウゴマの種子から採取される植物油であり、構成脂肪酸の約90%が不飽和脂肪酸の一種である水酸基を有するリシノール酸である。ヒマシ油は、多くの油脂の水酸基価が10mgKOH/gであるのに対して、水酸基価が155〜177mgKOH/gと多いため、開始剤として好適である。本発明のヒマシ油を開始剤とする分岐状ポリ乳酸である添加剤において、好ましい重合材料の配合量は、脱水乳酸100質量部に対してヒマシ油1.9〜20質量部、ラクチド100質量部に対してヒマシ油2.3〜25質量部、ポリ乳酸100質量部に対してヒマシ油2.3〜25質量部である。
ポリヒマシ油は、ヒマシ油の重合体である。ヒマシ油分子中のリシノール酸由来の不飽和結合(C=C)が、有機過酸化物などを開始剤として用いてラジカル重合することにより、ポリヒマシ油となる。ポリヒマシ油は、ヒマシ油よりも多分岐構造であるとともに、油脂分子中の水酸基の数がヒマシ油よりも多い。このため、ポリヒマシ油は、重合の起点となる水酸基が多く、より分岐の多い構造を有するので、本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸の製造における開始剤としてより好適である。
あるいは、リノール酸やオレイン酸などの不飽和脂肪酸における炭素−炭素不飽和結合に水酸基を導入した水酸基化油脂も、本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸の開始剤として用いることができる。水酸基化油脂としては、水酸基化大豆油、水酸基化亜麻仁油、水酸基化なたね油、水酸基化パーム油、水酸基化とうもろこし油などが挙げられる。
また、本発明においては、開始剤として起点となるエポキシ基を多く有するトリアシルグリセロールを主成分とする油脂も好適である。リノール酸やオレイン酸などの不飽和脂肪酸由来の炭素−炭素不飽和結合にエポキシ基を導入したエポキシ化油脂を、本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸の開始剤として用いることができる。エポキシ化油脂としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化パーム油などが挙げられる。これらのエポキシ化油脂は、塩化ビニル樹脂などの樹脂に、可塑性付与などの用途で添加剤として工業的に用いられている。
なお、以上の水酸基またはエポキシ基を有する油脂において、構成する脂肪酸の不飽和基に水素添加して飽和脂肪酸とした硬化油を用いることもできる。硬化油とすることによって、得られる分岐状ポリ乳酸の熱に対する安定性が増し、溶解性を改質でき、ロジンや、ワックス類、ゴム類、ポリエチレンなどとの相溶性を向上させる。また、他のワックスに配合することにより、得られる分岐状ポリ乳酸の耐溶剤性、耐グリース性、および硬度を向上させることができる。
なお、開始剤として用いられる油脂は、脂肪酸の異なる油脂の混合物であってもよく、分子中に有する水酸基またはエポキシ基の数が3個未満の油脂を不純物として含有していてもよい。油脂は、多くの場合、純物質ではなく混合物であるため、主成分が分子中に水酸基またはエポキシ基を少なくとも3個有する油脂であればよい。開始剤として用いられる油脂における、水酸基またはエポキシ基を少なくとも3個有する油脂の割合は、好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。50質量%未満では、直鎖状の分岐状ポリ乳酸が多く形成され、ガラス転移温度、融点および結晶化度が高くなる。
(ポリエーテルポリオール)
上記開始剤として用いられるポリエーテルポリオールは、分子中に水酸基を少なくとも3個有する。本発明において、ポリエーテルポリオールとは、グリコールなどのモノマーがエーテル結合を介して高分子化したポリマーであって、複数の水酸基を有するものをいう。開始剤として用いられるポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール(エチレンオキサイドを重合して得られる)、ポリプロピレングリコール(プロピレンオキサイドを重合して得られる)、ポリブチレングリコールなどが挙げられ、好ましくはポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールである。
(ヌクレオシド)
上記開始剤として用いられるヌクレオシドは、分子中に水酸基を少なくとも3個有する。本発明において、ヌクレオシドとは、プリンまたはピリミジンなどの塩基と糖とがグリコシド結合した化合物の総称をいう。プリン塩基としては、アデニン、グアニンなどが挙げられ、ピリミジン塩基としては、チミン、シトシン、ウラシルなどが挙げられ、他の塩基としては、ニコチンアミド、ジメチルイソアロキサジンなどが挙げられる。糖としては、デオキシリボース、リボースなどが挙げられる。開始剤として用いられるヌクレオシドとしては、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、ビタミンB2などが挙げられ、好ましくはアデノシン、グアノシン、ウリジン、5−メチルウリジンまたはシチジンである。
(糖アルコール)
上記開始剤として用いられる糖アルコールは、分子中に水酸基を少なくとも3個有する。本発明において、糖アルコールとは、アルドース(アルデヒド基を有する単糖類)、ケトース(ケトン基を有する単糖類)などの糖のカルボニル基が還元された鎖状の多価アルコールをいう。開始剤として用いられる糖アルコールは、好ましくは炭素数3〜8のアルドースの還元によって生じるアルジトールである。アルジトールとしては、グリセリン、エリトリトール、アラビニトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、トレイトール、アリトール、イジトールなどが挙げられ、好ましくはグリセリン、エリトリトール、アラビニトール、キシリトール、ソルビトール、またはマンニトールである。
(ラクチドおよび乳酸)
本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸は、上記開始剤を用いてラクチド、乳酸またはポリ乳酸を重合することによって合成され得る。
乳酸は、グルコースなどの資化可能な炭素源を、乳酸菌などの微生物を用いて発酵させて得ることができる。炭素源であるグルコースは、石油工業的にも得ることができるが、セルロースやデンプンなどの多くの再生可能資源の加水分解によって製造することができる。したがって、乳酸も再生可能資源である。本発明においては、乳酸発酵液をそのまま用いてもよく、乳酸発酵液から単離した乳酸を用いてもよく、あるいは市販の乳酸を用いてもよい。
本発明において、ラクチドとは、2分子の乳酸の脱水縮合によって得られる環状ジエステルをいう。したがって、再生可能資源である。本発明においては、市販のラクチドを用いることができる。
乳酸およびラクチドには光学異性体が存在する。乳酸菌の発酵によって、多くの場合はL体のみが得られる。しかし、いくつかの微生物(例えば、Lactobacillus lactis、Lactobacillus bulgaricus、Leuconostoc cremoris)はD体を生成する。このような微生物を含む数種類の微生物を混合して発酵に供することによって、DL体(ラセミ体)の乳酸を得ることができる。また、乳酸ラセマーゼを生産する微生物により、L−乳酸をラセミ化させて、DL体の乳酸を生成できる。
(ラクチドの開環重合による分岐状ポリ乳酸の製造)
ラクチドは、乳酸2分子が環化した構造を有するため、ラクチドを開環重合することによりポリ乳酸鎖を合成できる。例えば、ラクチドおよび開始剤(水酸基化油脂、エポキシ化油脂、ポリエーテルポリオール、ヌクレオシドまたは糖アルコール)を十分に乾燥した容器に入れ、不活性ガスでパージした後に、触媒を投入して、加熱攪拌することによって、開始剤を起点としてラクチドが開環重合したポリ乳酸鎖を有する分岐状ポリ乳酸を製造することができる。
開始剤として、エポキシ化油脂を用いる場合には、ラクチドを油脂に付加反応させてラクチドによる変性油脂を合成した後に、ラクチドを開環重合させてもよく、あるいは、ラクチドを単独で重合させて得られたポリ乳酸を、油脂に付加反応させてもよい。
ラクチドを重合する際の触媒としては、当業者が通常用いるものが挙げられる。具体的には、ポルフィリンアルミニウム錯体、(n−CO)AlZn、複合金属シアン化錯体、二塩化スズ(SnCl)、2−エチルヘキサン酸スズ、ジエチル亜鉛−水またはジエチルカドミウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、チタニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、トリブチルスズメトキシド、テトラフェニルスズ、酸化鉛、ステアリン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸ビスマス、カリウムアルコラート、フッ化アンチモン触媒、スタナスオクタノエート触媒が挙げられる。収率の点から、二塩化スズ(SnCl)、2−エチルヘキサン酸スズが特に好ましい。
触媒の使用量は特に限定されないが、100質量部のラクチドに対して、約0.0001〜5質量部が適切であり、約0.05〜1質量部が好ましい。
不活性ガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素ガスおよびアルゴンガスが挙げられる。
上記重合反応は、常温下でも行い得るが、必要に応じて加熱する。好ましくは100℃〜180℃に、さらに好ましくは120℃〜160℃に加熱する。100℃未満では反応速度が小さくなるため好ましくない。一方、180℃より高い温度では、分岐状ポリ乳酸の分解速度が大きくなることおよび低分子重合体が気化してしまうことなどの欠点がある。
(乳酸またはポリ乳酸の脱水縮合重合による分岐状ポリ乳酸の製造)
乳酸は、1分子中にカルボキシル基および水酸基を有する化合物であり、乳酸を縮合により重合することによってポリ乳酸鎖を合成できる。例えば、乳酸および開始剤(水酸基価油脂、エポキシ化油脂、ポリエーテルポリオール、ヌクレオシドまたは糖アルコール)を十分に乾燥した容器に入れ、必要に応じて触媒を投入して、加熱あるいは加熱減圧することによって、開始剤を起点として乳酸が縮合重合したポリ乳酸鎖を有する分岐状ポリ乳酸を製造することができる。重合により生成する水を反応系外に排出することによって、重合度をさらに上げることができる。
開始剤として、エポキシ化油脂を用いる場合には、乳酸を油脂に付加反応させて乳酸による変性油脂を合成した後に、乳酸を脱水縮合重合させてもよく、あるいは、乳酸を単独で重合させて得られたポリ乳酸を、油脂に付加反応させてもよい。
重合反応の温度は、溶剤を用いる溶液重合の場合は、溶剤と脱水される水との共沸点から各溶剤の沸点までの温度であり得る。しかし、高温になるほど油脂成分の変性が生じやすくなるため、200℃以下の加温であることが好ましい。例えば、ヒマシ油は200℃以上で分解する。脱水を生じさせるためには、好ましくは共沸点以上(例えば、90℃〜180℃が好ましい)で適切な重合度が得られるのに適した時間(例えば、1〜24時間)加熱することが好ましい。
加熱減圧重合の場合、乳酸重合の過程で、乳酸オリゴマーの解重合反応によってラクチドが生じる可能性がある。ラクチドは、乳酸重合の場合は不純物となる。高温または高真空であるほどラクチドが生成しやすく、生じたラクチドは系内から昇華により消失し、これにより、ポリ乳酸鎖の収率が低下する。このため、加熱温度は100℃〜180℃、減圧は670Pa〜13000Paであることが好ましい。13000Paより高いと、反応系内の水分率が高くなり、縮合が進みにくい。670Pa未満では、ラクチドの生成および昇華が起こりやすくなり、回収する生成物の収率が低下する。
乳酸を重合する際の触媒としては、当業者が通常用いるものが挙げられる。具体的には、二塩化スズ(SnCl)、2−エチルヘキサン酸スズ、テトラフェニルスズ、酸化スズ、硫酸、スズ粉末、トルエンスルホン酸などが挙げられる。
なお、重合反応速度が小さくなるが、触媒を加えずに重合することも可能である。特に、比較的低分子の分岐状ポリ乳酸を製造する場合には、開始剤に対する乳酸の仕込み比が小さいため、触媒は必須ではない。
反応系から水を排出する方法としては、当業者が通常行う方法が採用され、例えば、溶剤との共沸によって反応系から脱水させる。水と共沸可能な溶剤としては、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、およびミネラルスピリットなどが挙げられる。これらの溶媒中で水との共沸点以上に加温することにより、水を反応系外に留出させ、乳酸の脱水縮合を促進することができる。
また、上記トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、およびミネラルスピリットは、いずれも比重が1より小さいので、水と比重分離することができる。水とともに共沸点以上で加熱すると、水と溶剤との共沸物が留出し、この留出物を冷却すると凝集液が得られる。溶剤と水とは比重差があるため、この凝集液は水と溶剤とに分離する。したがって、分離した水を除去することができる。さらに、溶剤も回収して反応系に循環させて再利用することができる。
具体的には、加熱により加熱反応槽から水と溶剤との共沸物が留出する。この留出物を冷却管で凝縮して、水分離器に導き、比重差により下層の水と上層の溶剤とに分離する。このためには、蒸気の排出口を備えた加熱反応槽に、冷却管と、デカンタまたはディーンスタークトラップのような水分離器とを具備することが好ましい。水分離器では、下層の水を系外へ除去するとともに、上層の溶剤を還流して、加熱反応槽に循環させることができる。したがって、溶剤の消費や漏洩なしに、乳酸の縮合反応系から脱水することができる。
上記乳酸の代わりに、ポリ乳酸を用いてもよい。この場合、重合反応は、用いるポリ乳酸の分子量が大きくなるに従い、進行しにくくなるが、開始剤の極性基を起点に1分子以上のポリ乳酸分子が重合した分岐状ポリ乳酸を得ることができる。
(分岐状ポリ乳酸のアシル化)
上記のように、本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸は、ポリ乳酸からなる分岐鎖のうち少なくとも1個の末端水酸基における水素がアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸分子を含有することが好ましい。分岐状ポリ乳酸の末端水酸基は、カルボン酸と縮合させることで末端がアシル化された分岐状ポリ乳酸とすることができる。分岐状ポリ乳酸に、カルボン酸塩化物、あるいはカルボン酸無水物を作用させることでアシル化することができる。例えば、アシル基の1種アセチル基で置換する際は、分岐状ポリ乳酸に対し、ピリジンやトリエチルアミンなどの塩基存在下、塩化アセチルや無水酢酸を作用させることで末端水酸基をアセチル化することができる。
あるいは、分岐状ポリ乳酸は、ポリ乳酸からなる分岐鎖のうち少なくとも1個の末端水酸基における水素がジカルボン酸由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸分子を含有することが好ましい。分岐状のポリ乳酸の末端水酸基に、ジカルボン酸塩化物や、ジカルボン酸無水物を作用させることで、末端水酸基がジカルボン酸とエステル結合されている分岐状ポリ乳酸とすることができる。例えば、分岐状ポリ乳酸に対し、ピリジンやトリエチルアミンなどの塩基存在下、無水フタル酸を作用させることで、分岐状ポリ乳酸の末端水酸基を、ジカルボン酸とのエステルにすることができる。
さらには、分岐状ポリ乳酸は、ポリ乳酸からなる分岐鎖のうち少なくとも1個の末端水酸基における水素が、カルボキシル基において陽イオンと塩を形成しているジカルボン酸由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸分子を含有することが好ましい。分岐状のポリ乳酸の末端水酸基に、ジカルボン酸塩化物や、ジカルボン酸無水物を作用させ、さらに塩基で中和することで、末端水酸基がジカルボン酸塩とエステル結合されている分岐状ポリ乳酸とすることができる。例えば、分岐状ポリ乳酸に対し、ピリジンやトリエチルアミンなどの塩基存在下、無水フタル酸を作用させ、さらに水酸化ナトリウムで中和することで、分岐状ポリ乳酸の末端水酸基を、ジカルボン酸塩とのエステルにすることができる。中和後において、ジカルボン酸塩とのエステルは不溶であるので、遠心分離や濾過などにより回収し、洗浄することによって、末端水酸基における水素が、カルボキシル基において陽イオンと塩を形成しているジカルボン酸由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸を得ることができる。
(乳酸発酵液からの分岐状ポリ乳酸の製造)
上記分岐状ポリ乳酸の原料となる乳酸は、化学合成によって生産されることもあるが、多くは乳酸菌による乳酸発酵によって生産される。このため、乳酸は乳酸発酵液として得られる。
乳酸発酵液とは、グルコースなどの資化可能な炭素源を、乳酸菌などの微生物を用いて乳酸発酵させ乳酸を生成させた水性液体をいう。乳酸発酵液中には、乳酸菌などの菌、発酵によって生成した乳酸、未だ資化されていないグルコースなどの炭素源、副生成物(酢酸、蟻酸など)、菌の栄養源である培地成分などが含まれる。培地成分は、菌の種類によって要求されるものが異なるが、アミノ酸、ペプチド、ビタミン、ヌクレオチド、および界面活性剤のような有機成分、ならびにリン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、およびクエン酸塩のような無機塩または有機酸塩を含む。例えば、乳酸桿菌用の代表的な培地であるMRS(de Man−Rogosa−Sharpe)培地には、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、リン酸カリウム、クエン酸二アンモニウム、酢酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、および界面活性剤が含まれる。また、乳酸球菌用の代表的な培地M17培地には、トリプトン、大豆ペプトン、ラブーレコム末、酵母エキス、アスコルビン酸、硫酸マグネシウム、およびグリセロリン酸二ナトリウムが含まれる。したがって、乳酸発酵液は、乳酸をはじめ、多くの溶質を含む混合液であり、通常、黄色から茶色に着色している。この乳酸発酵液中の乳酸の濃度は、通常、約10〜150g/Lであり得る。
本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸の製造には、乳酸発酵液をそのまま用いてもよく、あるいは乳酸発酵液中の菌体を予め除去して用いてもよい。菌体は水に不溶であるため、乳酸発酵液を静置した後に、上清を回収することによって、菌体を除くことができる。また、遠心分離あるいは濾過によって、菌体を除いてもよい。
本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸の製造においては、乳酸発酵液に、開始剤である水酸基化油脂、エポキシ化油脂、ポリエーテルポリオール、ヌクレオシドまたは糖アルコールを加えて脱水重縮合した後に、油分を回収することによって、本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸を得ることができる。本発明の添加剤を構成する分岐状ポリ乳酸は非水溶性であるのに対して、発酵液中に含まれる他の成分は水溶性であるため、油分を回収することによって、得られた分岐状ポリ乳酸を容易に回収することができる。
さらに、乳酸発酵液中に含まれる他の成分が常温において固体である場合は、脱水重縮合工程中にこれらの成分が反応容器底面および壁面に析出して乾固するので、脱水重縮合の後に水を加えて乾固物を水に溶解させて、油分と分離することもできる。
(ポリ乳酸)
本発明のポリ乳酸樹脂組成物において、上記の分岐状ポリ乳酸とともに用いられるポリ乳酸は、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーである。
本発明において、特に高い耐熱性を有する樹脂組成物を得るためには、ポリ乳酸樹脂として構成成分の乳酸(L体あるいはD体)組成の光学純度が高いものを用いることが好ましい。ポリ乳酸樹脂の総乳酸成分のうち、L体が80%以上含まれるかあるいはD体が80%以上含まれることが好ましく、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることが特に好ましく、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることがさらに好ましい。
また、本発明のポリ乳酸樹脂組成物に用いられるポリ乳酸は、L−乳酸またはD−乳酸に由来しない、他のモノマー単位を含んでいてもよい。例えば、他のヒドロキシカルボン酸を含むことができる。他のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸などの2官能脂肪族ヒドロキシ−カルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトンなどのラクトン類などを挙げることができる。
また、その他のモノマー単位としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸を挙げることができる。しかし、ポリ乳酸であるポリエステル骨格中に縮重合反応により組み込まれ得るものであればこれらに限定されるものではない。
上記他のモノマーの含有量は、全モノマー成分に対し、0〜30モル%であることが好ましく、0〜10モル%であることがより好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物に用いられるポリ乳酸は、公知方法により製造できる。ポリ乳酸の重合法としては、縮重合法、開環重合法、その他の公知の重合法を採用することができる。例えば、縮重合法では、L−乳酸あるいはD−乳酸あるいはこれらの混合物を直接脱水縮重合して任意の組成を有するポリ乳酸を得ることができる。また、開環重合法では、乳酸の環状二量体であるラクチドを必要に応じて重合調整剤などとして用いながら、選択した触媒を用いてポリ乳酸を得ることができる。ラクチドには、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、あるいはL−乳酸とD−乳酸とからなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成および結晶性を有するポリ乳酸を得ることができる。
本発明において用いられるポリ乳酸の分子量は、目的とする用途、例えば射出成形品にした場合に、実質的に十分な機械特性を示すものであれば、特に限定されるものではない。分子量が低いと得られる成形品の強度が低下し、分解速度が速くなる。逆に高いと加工性が低下し、成形が困難になる。本発明に用いられるポリ乳酸の重量平均分子量の好ましい範囲は5万〜40万、より好ましくは10万〜25万である。
なお、本発明のポリ乳酸樹脂組成物に用いられるポリ乳酸は、公知の市販品も適用でき、三井化学株式会社製の商品名レイシア、トヨタ自動車株式会社製の商品名エコプラスチック(U’z)、Cargill Dow Polymer LLC株式会社製の商品名Nature Worksなどが挙げられる。
(ポリ乳酸樹脂組成物)
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、上記のようなポリ乳酸に対し、上記のような分子中にポリ乳酸からなる分岐鎖を少なくとも3個有する分岐状ポリ乳酸を配合してなることを特徴とする。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物中の分岐状ポリ乳酸からなる添加剤の割合は、ポリ乳酸100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは10〜30質量部である。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、例えば、ポリ乳酸と添加剤とを溶融混合することにより製造することができる。ポリ乳酸を融点以上に加熱して溶融させ、添加剤を加えて攪拌あるいは混練などの手段により混合し、冷却することでポリ乳酸樹脂組成物を得ることができる。混練はせん断力を加えた分配により良好な混合とすることができ、ニーダ、回転ロール、押出機などを用いて行うことができる。
また、予めポリ乳酸と添加剤を粗く混ぜておいた上で、溶融混合することもできる。
なお、溶融混合する温度は、ポリ乳酸の融点以上であって、250℃以下であることが好ましい。250℃を超えると、ポリ乳酸の解重合が起こり、分子量や物性の低下を招くことになる。
なお、溶融混合に当たっては、予めポリ乳酸を十分に乾燥して水分を除去した後に混練することが好ましい。水を含有していると加熱時に、ポリ乳酸および分岐状ポリ乳酸の加水分解によって劣化するおそれがある。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、さらに、タルクまたはマイカを0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜3質量部溶融混合してなる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、さらに、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜3質量部溶融混合してなる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、さらに、ジエチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、モノオレイン、トリアセチン、トリブチリン、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルリシノール酸メチル、アジピン酸ジエステル、フマル酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、セバシン酸ジエステルからなる群より選択される少なくとも1種を1〜30質量部、好ましくは5〜20質量部溶融混合してなる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物はまた、ポリ乳酸と添加剤とを、溶媒を用いて溶解させて混合することにより製造することができる。
溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジオキサンなどが挙げられる。これらの溶媒には、ポリ乳酸と添加剤とを室温で溶解させることができる。
キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなどの溶媒には、ポリ乳酸と添加剤とを加熱下で溶解させることもできる。
例えば、ポリ乳酸と添加剤とをクロロホルムに溶解させた後、クロロホルムを留去することで、ポリ乳酸樹脂組成物を製造することができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸に添加剤が添加されている。添加剤である分岐状ポリ乳酸が、ポリ乳酸分子鎖の結晶化を遮蔽するとともに分子鎖の間隔を広げて分子運動を容易にすることでポリ乳酸の柔軟性が向上する。したがって、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は柔軟性に優れている。ポリ乳酸の引張破断伸びは、分岐状ポリ乳酸を添加することで大幅に増大する。すなわち、ポリ乳酸の靱性、特に低速変形靱性が大きく改善される。このように本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、従来のポリ乳酸に可塑性を付与することができる。分岐状ポリ乳酸は、比較的高分子であっても非結晶性であるため、結晶性を高めることなく添加することができ、ブリードアウトを抑えることができる。また、この配合は、分子レベルの相溶をもたらすため、相溶が安定し、ブリードアウトを生じにくい。さらに、ポリ乳酸と分岐状ポリ乳酸とは、結晶サイズが小さい上に、構造が類似するため屈折率も近似し、透明な樹脂組成物を提供することができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物が、ポリ乳酸よりも可塑化が促進されることは、両者の機械特性を比較すること確認できる。ポリ乳酸は、非常に硬い樹脂で、単独で一軸伸張試験を行うと、20%程度のひずみで破断する。これに対して、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、100%〜700%の破断ひずみが観測される。このように、分子構造の異なるポリ乳酸と分岐状ポリ乳酸とを混合することにより、ポリ乳酸の可塑化を促進することができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、溶融状態または塊状で得られ得る。本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、造粒操作にさらに供することにより粒体に加工され得る。粒体の形状としては、例えば、顆粒、ペレット、タブレットなどが挙げられる。造粒操作は、当業者が通常用いる手順または装置によって行われ得る。例えば、二軸押出機などを用いてポリ乳酸を溶融させながら、添加剤を注入して溶融混練し、ストランド形状に押出して冷却後ペレタイザーによってペレットを作製するなどすればよい。このように作製したペレットは十分に乾燥して水分を除去した後、射出成形などに用いることができる。
また、分岐状ポリ乳酸など添加剤のみを造粒操作により粒体に加工した後に、成形前にポリ乳酸と混合し、ポリ乳酸樹脂組成物を得ることもできる。混合の方法としては、例えば、ポリ乳酸ペレットと、添加剤ペレットを粒体どうしをミキサー、手混ぜなどにより乾式混合して得られ得る。乾式混合した粒体はそのまま成形機のホッパーに投入して成形することができる。
(ポリ乳酸樹脂組成物の加工法および用途)
本発明のポリ乳樹脂酸組成物は、射出成形法、ガスアシスト成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空圧空成形法など、現在公知の任意の成形方法によって成形することができる。上記の方法以外でも、インモールド成形法、ガスプレス成形法、2色成形法、サンドイッチ成形法、PUSH−PULLなどを採用することができる。成形条件は、射出シリンダー内での樹脂の熱分解を避けるため、溶融樹脂温度を170〜250℃の温度範囲で成形するのが好ましい。
ポリ乳酸は、ガラス転移温度が57〜60℃と比較的高いことからも明らかなように主鎖がかなり剛直であり、一般的に結晶化速度が遅いとされるポリエチレンテレフタレート樹脂よりもさらに結晶化速度が遅い。したがって、延伸操作を伴わない射出成形においては、金型温度を結晶化に最適な90〜100℃に設定(高温金型)しても半溶融状態のままである。金型温度を室温近傍に設定(低温金型)することによりようやく冷却・固化されるものの、結晶化度は極めて低く、耐熱性に劣るものしか得られない。
ポリ乳酸は、結晶性高分子であり、本質的には十分に結晶化するポテンシャルを有しているが、汎用樹脂などの種々の高分子材料が一般的に成形される条件下で成形されると(例えば金型温度50℃)、ほとんど結晶化が進行しない。一般的には、金型温度をより低く設定して、ポリ乳酸を非晶状態で固化させた成形品が得られるのみである。非晶状態で固化した成形品は、透明性に優れるものの、ホットフイルム用途(温め飲料用など)向けに使用する場合には変形して使用が困難になること、夏場の屋外や輸送中のトラック内で高温に晒されて変形することなどの問題点がある。非晶状態のポリ乳酸成形品の耐熱性、特に熱変形温度は50〜60℃であり、この変形温度はポリ乳酸のガラス転移点に関係している。しかし、一般にホット用容器、家電製品筐体、自動車用材料では100℃以上が必要である。
一方、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、低温金型においても、結晶化度は高く、従来のポリ乳酸に比べて耐熱性が高くなる。このため、結晶化(冷却)に十分な時間をとる必要がなく、成形サイクルが短くなり生産性が向上する。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物が、ポリ乳酸よりも結晶化が促進されることは、両者の熱特性を比較することによって確認できる。ポリ乳酸を200℃にて加熱溶融して10分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したときの結晶化エンタルピーを示差走査熱量測定装置(DSC)によって測定したところ、結晶化による発熱はほとんど観測されなかった。これに対して、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の場合は、20〜60J/gの発熱を示した。ポリ乳酸が結晶性ポリマーであるが非常に結晶化しにくいのに対して、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、非常に結晶化しやすく、結晶性が増大することによって耐熱性も向上する。
なお、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を、成形時、または成形後に何らかの方法で結晶化させることで、さらに結晶化度を高くすることができる。例えば、成形時に該組成物の溶融物を金型内に充填し、高温金型内でそのまま結晶化させる方法、および該組成物の非結晶性の成形品を乾熱処理または湿熱処理する方法により、結晶性を向上させることができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、溶融混練可能であることから、射出成形や押出成形などの方法によって、各種成形品に加工し利用することができる。成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フイルム、繊維、シートなどとして利用することができる。また、フイルムとしては、未延伸、一軸延伸、二軸延伸、インフレーションフイルムなどの各種フイルムとして、繊維としては、未延伸糸、延伸糸、超延伸糸など各種繊維として利用することができる。また、これらの物品は、電気・電子部品、建築部材、自動車部品、日用品など各種用途に利用することができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物から成形品を製造するために、ポリ乳酸および本発明の添加剤、ならびに必要に応じてさらなる成分を、ウェットブレンド法またはドライブレンド法のいずれかにより混合し得る。
ウェットブレンド法は、溶融液状状態による混合である。ポリ乳酸を融点以上に加熱し、液状化させたところに本発明の添加剤、ならびに必要に応じてさらなる成分を混合することで本発明のポリ乳酸組成物を得る。例えば、ニーダーや二軸混練押出機などで加熱しながらせん断力を加え、ポリ乳酸と本発明の添加剤、ならびに必要に応じてさらなる成分を混合する。この時、ポリ乳酸は溶融状態であるが、本発明の添加剤、ならびに必要に応じてさらなる成分は必ずしも液状である必要はなく、固体のままでも良い。本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ウェットブレンド後、造粒操作をさらに供することにより粒体に加工され得る。粒体の形状としては、例えば、顆粒、ペレット、タブレットなどが挙げられる。造粒操作は、当業者が通常用いる手順または装置によって行われ得る。例えば、二軸押出機などを用いてポリ乳酸を溶融させながら、添加剤を注入して溶融混練し、ストランド形状に押出して冷却後ペレタイザーによってペレットを作製するなどすればよい。このように作製したペレットは十分に乾燥して水分を除去した後、射出成形などに用いることができる。
ドライブレンド法は、溶融をさせない固形状態での混合である。本発明の添加剤、ならびに必要に応じてさらなる成分だけを造粒操作により粒体に加工した後に、成形前にポリ乳酸と固形状態で混合し、ポリ乳酸樹脂組成物を得ることもできる。混合の方法としては、例えば、ポリ乳酸ペレットと、添加剤ペレットとの粒体どうしをミキサー、手混ぜなどにより乾式で混合して得られ得る。乾式混合した粒体はそのまま成形機のホッパーに投入して成形することができる。本発明の添加剤、ならびに必要に応じてさらなる成分だけを造粒操作により粒体に加工する操作は、当業者が通常用いる手順または装置によって行われ得る。例えば、二軸押出機などを用いて本発明の添加剤を溶融させながら、必要に応じてさらなる成分を注入して溶融混練し、ストランド形状に押出して冷却後ペレタイザーによってペレットを作製するなどすればよい。ドライブレンド法により成形現場での添加剤の添加量調整が可能となる。
さらにはウェットブレンド法により高濃度に本発明の添加剤、ならびに必要に応じてさらなる成分を配合したポリ乳酸組成物を製造し、造粒操作により粒体に加工した後に、成形前にポリ乳酸とドライブレンドで混合し、ポリ乳酸樹脂組成物を得ることもできる。本発明の添加剤の好適な混合量はポリ乳酸100質量部に対して、1〜30質量部であるが、例えば、ポリ乳酸100質量部に対して、90質量部の添加剤を混合し、高濃度に本発明の添加剤を配合したポリ乳酸組成物(マスターバッチ)を製造し、ドライブレンドによりポリ乳酸を混合することで好適な添加剤配合のポリ乳酸組成物を得ることができる。このウェットブレンドとドライブレンドの組み合わせにより、成形現場での添加剤の添加量調整が可能となると共に、本発明の添加剤を予めせん断力をかけてポリ乳酸を混合しているために、添加剤の混ざりが良い。
また、本発明の添加剤と、必要に応じて加えるさらなる成分とを溶融混合した後、造粒操作により粒体に加工した後に、成形前にポリ乳酸とドライブレンドで混合し、ポリ乳酸樹脂組成物を得る方法により、上記必要に応じて配合する成分は、ポリ乳酸も溶融混合するウェットブレンド法に比べて、本発明の添加剤に近接する機会が増大するために、本発明の添加剤に優先的に寄与させることもできる。例えば、必要に応じてさらに配合する成分として、本発明の添加剤の結晶核となる、タルク、マイカなどの粘土鉱物、フタル酸塩(例えば、フタル酸ナトリウム)などの有機金属化合物などと、本発明の添加剤をウェットブレンド法により湿式混合した後、成形前にポリ乳酸とドライブレンドすることにより、これら結晶核となる物質は成形時の溶融状態において、ポリ乳酸よりも添加剤に接する機会が多く、ポリ乳酸よりも添加剤に優先的に作用し、これら結晶核となる物質により添加剤の結晶化がさらに促進され、結晶化が促進された添加剤によりポリ乳酸はさらに結晶化促進され、結果的により結晶化度の高い、耐熱性の高いポリ乳酸とすることができる。この作用により、本発明の添加剤の結晶化誘発の効果を促進することができる。
樹脂成形のために、粉体または粒体の本発明の添加剤を、ポリ乳酸および必要に応じてさらなる成分と溶融混合などにより混合して粒体のポリ乳酸樹脂組成物を製造した後、成形機内のホッパーに投入し、シリンダーで加熱溶融され、ノズルを通じて押し出され、金型内に充填し得る。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
(実施例1)
L−ラクチド(武蔵野化学株式会社製)100質量部と、開始剤であるポリプロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製、3官能、分子量3000)43質量部とを混合し、2−エチルヘキサン酸スズ1質量部を触媒として添加した。この混合物をアルゴン雰囲気下、130℃にて20時間加熱して、重合物を得た。得られた重合物について、構造を確認するため、H−NMR測定を行った。この結果、ポリプロピレングリコールの水酸基に隣接するメチン由来のピークが消失しており、ポリプロピレングリコールの水酸基を起点とした星型分岐状ポリ乳酸が合成されたことを確認した。得られた分岐状ポリ乳酸について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は10000であった。また、GPCから求めた分子量と仕込み比から算出した分子量とがよく一致したことから、ポリ乳酸のホモポリマーは生成せず、ポリプロピレングリコールを開始剤とした分岐状ポリ乳酸のみが得られたことがわかった。
この分岐状ポリ乳酸5質量部とポリ乳酸(重量平均分子量17万)95質量部とをクロロホルムに溶解させて混合した。この混合物を乾燥してシート状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物は透明であった。この組成物を一軸伸張試験したところ、150%の破断伸びを観測した。
(実施例2)
分子量3000のポリプロピレングリコールに代えて分子量1500のポリプロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシート状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物も透明であった。この組成物を一軸伸張試験したところ、120%の破断伸びを観測した。
(実施例3)
ポリプロピレングリコールに代えてポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、3官能、分子量1500)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシート状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物も透明であった。この組成物を一軸伸張試験したところ、110%の破断伸びを観測した。
(実施例4)
ポリプロピレングリコールに代えてグリセリン(和光純薬工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシート状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物も透明であった。この組成物を一軸伸張試験したところ、100%の破断伸びを観測した。
(比較例1)
ポリ乳酸(重量平均分子量15万)をクロロホルムに溶解させた後、乾燥してシート状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物は透明であった。この組成物を一軸伸張試験したところ、20%の破断伸びを示すにとどまった。
(実施例5)
L−ラクチド(武蔵野化学株式会社製)100質量部と、開始剤であるアデノシン(和光純薬工業株式会社製)43質量部とを混合し、2−エチルヘキサン酸スズ1質量部を触媒として添加した。この混合物をアルゴン雰囲気下、130℃にて20時間加熱して、重合物を得た。得られた重合物は少し黄色に着色していたので、重合物をクロロホルムに溶解させ、次いでこの溶解液に多量のエタノールを滴下することで沈殿を生成させ、沈殿を濾過により回収し、乾燥することで、精製重合物を得た。この精製重合物について、構造を確認するため、H−NMR測定を行った。この結果、アデノシンの水酸基に隣接するメチン由来のピークが消失しており、アデノシンの水酸基を起点とした星型分岐状ポリ乳酸が合成されたことを確認した。得られた分岐状ポリ乳酸について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は10000であった。また、GPCから求めた分子量と仕込み比から算出した分子量とがよく一致したことから、ポリ乳酸のホモポリマーは生成せず、アデノシンを開始剤とした分岐状ポリ乳酸のみが得られたことがわかった。
この分岐状ポリ乳酸5質量部とポリ乳酸(重量平均分子量17万)95質量部とをクロロホルムに溶解させて混合した。この混合物を乾燥してシート状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物は透明であった。この組成物を一軸伸張試験したところ、110%の破断伸びを観測した。
(実施例6)
L−ラクチドに代えてDL−ラクチド(武蔵野化学株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシート状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物も透明であった。この組成物を一軸伸張試験したところ、180%の破断伸びを観測した。
(実施例7)
L−乳酸(和光純薬工業株式会社製、90v/v%水溶液)100質量部を減圧加熱して得られた脱水乳酸90質量部と、開始剤であるグリセリン(和光純薬工業株式会社製)0.8質量部とを混合し、2−エチルヘキサン酸スズ1質量部を触媒として添加した。この混合物を窒素雰囲気下、良く攪拌しながら150℃に加熱して、大気圧下で5時間、13000Paの減圧下で2時間、4000Paの減圧下で2時間、2600Paの減圧下で2時間保持し、次いで180℃に加熱して、1300Paの減圧下で2時間保持して、重合物を得た。得られた重合物について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は10000であった。また、GPCから求めた分子量と仕込み比から算出した分子量とがよく一致したことから、ポリ乳酸のホモポリマーは生成せず、グリセリンを開始剤とした分岐状ポリ乳酸のみが得られたことがわかった。
この分岐状ポリ乳酸10質量部とポリ乳酸(重量平均分子量17万)90質量部とをクロロホルムに溶解させて混合した。この混合物を乾燥してシート状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物は透明であった。この組成物を一軸伸張試験したところ、160%の破断伸びを観測した。
(実施例8)
L−ラクチド(武蔵野化学株式会社製)100質量部と、開始剤であるポリプロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製、3官能、分子量3000)43質量部とを混合し、2−エチルヘキサン酸スズ1質量部を触媒として添加した。この混合物をアルゴン雰囲気下、130℃にて20時間加熱して、重合物を得た。得られた重合物について、構造を確認するため、H−NMR測定を行った。この結果、ポリプロピレングリコールの水酸基に隣接するメチン由来のピークが消失しており、ポリプロピレングリコールの水酸基を起点とした星型分岐状ポリ乳酸が合成されたことを確認した。得られた分岐状ポリ乳酸について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は10000であった。また、GPCから求めた分子量と仕込み比から算出した分子量とがよく一致したことから、ポリ乳酸のホモポリマーは生成せず、ポリプロピレングリコールを開始剤とした分岐状ポリ乳酸のみが得られたことがわかった。
次に、この分岐状ポリ乳酸に、ピリジンに溶解させた無水フタル酸を加え、95℃にて2時間加熱した。得られたピリジン溶液を、水酸化ナトリウム水溶液で中和した。中和によって析出した白色沈殿を遠心沈降により分離回収して、さらに水で洗浄して、末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸を得た。
この分岐状ポリ乳酸20質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)80質量部とを、バッチ式溶融混練機(株式会社東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて180℃で溶融混合して、塊状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物を、示差走査熱量計(DSC)を用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、23J/gの発熱量を観測した。これはポリ乳酸の結晶化による発熱量である。また、−100℃まで冷却した後、再び200℃まで毎分10℃の割合で昇温したところ、43J/gの融解熱量を観測した。融解熱量に対する発熱量の比から、急激な冷却の過程で結晶化が53%進行したことがわかる。
(実施例9)
ポリプロピレングリコールに代えてグリセリン(和光純薬工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例8と同様にして塊状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、35J/gの発熱量を観測した。これはポリ乳酸の結晶化による発熱量である。また、−100℃まで冷却した後、再び200℃まで毎分10℃の割合で昇温したところ、42J/gの融解熱量を観測した。融解熱量に対する発熱量の比から、急激な冷却の過程で結晶化が83%進行したことがわかる。
(実施例10)
ポリプロピレングリコールに代えてグアノシン(和光純薬工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例8と同様にして塊状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、30J/gの発熱量を観測した。これはポリ乳酸の結晶化による発熱量である。また、−100℃まで冷却した後、再び200℃まで毎分10℃の割合で昇温したところ、42J/gの融解熱量を観測した。融解熱量に対する発熱量の比から、急激な冷却の過程で結晶化が71%進行したことがわかる。
(比較例2)
ポリ乳酸(重量平均分子量10万)を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、0.2J/gの発熱量を観測した。これはポリ乳酸の結晶化による発熱量である。また、−100℃まで冷却した後、再び200℃まで毎分10℃の割合で昇温したところ、43J/gの融解熱量を観測した。融解熱量に対する発熱量の比から、急激な冷却の過程で結晶化が0.5%しか進行しなかったことがわかる。これは、ポリ乳酸単独による均一核生成では結晶化がほとんど進行しないことを示している。
(実施例11)
L−乳酸(和光純薬工業株式会社製、90v/v%水溶液)100質量部を減圧加熱して得られた脱水乳酸90質量部と、開始剤であるヒマシ油(和光純薬工業株式会社製)9.1質量部とを混合し、2−エチルヘキサン酸スズ1質量部を触媒として添加した。この混合物を窒素雰囲気下、良く攪拌しながら150℃に加熱して、大気圧下で5時間、13000Paの減圧下で2時間、4000Paの減圧下で2時間、2600Paの減圧下で2時間保持し、次いで180℃に加熱して、1300Paの減圧下で2時間保持して、重合物を得た。得られた重合物について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は8000であった。また、GPCから求めた分子量と仕込み比から算出した分子量とがよく一致したことから、ポリ乳酸のホモポリマーは生成せず、ヒマシ油を開始剤とした分岐状ポリ乳酸のみが得られたことがわかった。
次に、この分岐状ポリ乳酸に、ピリジンに溶解させた無水フタル酸を加え、98℃にて2時間加熱した。得られたピリジン溶液を、水酸化ナトリウム水溶液で中和した。中和によって析出した白色沈殿を遠心沈降により分離回収して、さらに水で洗浄して、末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸を得た。
得られた分岐状ポリ乳酸について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は9000、分子量分布(Mw/Mn)は1.6であり、分子量3000以下の分岐状ポリ乳酸分子は1%以下であった。得られた分岐状ポリ乳酸の融点は130℃であった。
この分岐状ポリ乳酸を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、115℃に31J/gの発熱量を観測した。これは結晶化による発熱であることから、分岐状ポリ乳酸は、末端水酸基の置換によって非常に結晶化しやすいポリマーになったことがわかる。
この分岐状ポリ乳酸20質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)80質量部とを、ラボプラストミルを用いて180℃で溶融混合して塊状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、42J/gの発熱量を観測した。これはポリ乳酸の結晶化による発熱量である。また、−100℃まで冷却した後、再び200℃まで毎分10℃の割合で昇温した際に観測ところ、43J/gの融解熱量を観測した。融解熱量に対する発熱量の比から、急激な冷却の過程で結晶化が98%進行したことがわかる。
ポリ乳酸樹脂組成物の冷却過程で、まず分岐状ポリ乳酸の結晶核が生成し、結晶が成長する。次いで分岐状ポリ乳酸の結晶の成長に整合するようにポリ乳酸の結晶核が生成し、結晶が成長する。このようなエピタキシャルな結晶成長により結晶化が促進される。核剤の作用機構の本質はエピタキシーであり、核剤表面の結晶格子定数とベース樹脂の結晶格子定数との整合性が核剤としての基本性能を決定付ける。したがって、ポリ乳酸の結晶構造に近い結晶構造を表面に有する核剤を設計できることが重要となるが、本発明の分岐状ポリ乳酸からなる添加剤は、ベース樹脂のポリ乳酸とモノマーが共通することから、ポリ乳酸に添加する核剤として好適であると考えられる。
(実施例12)
末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸の製造のために、ヒマシ油9.1質量部に代えてヒマシ油3.4質量部を用いたこと以外は、実施例11と同様に行った。
得られた分岐状ポリ乳酸について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は19000、分子量分布(Mw/Mn)は1.7であり、分子量3000以下の分岐状ポリ乳酸分子は1%以下であった。得られた分岐状ポリ乳酸の融点は150℃であった。この分岐状ポリ乳酸を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、117℃に40J/gの発熱量を観測した。これは結晶化による発熱であることから、分岐状ポリ乳酸は、末端水酸基の置換によって非常に結晶化しやすいポリマーになったことがわかる。
この分岐状ポリ乳酸20質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)80質量部とを、ラボプラストミルを用いて180℃で溶融混合して塊状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、43J/gの発熱量を観測した。これはポリ乳酸の結晶化による発熱量である。また、−100℃まで冷却した後、再び200℃まで毎分10℃の割合で昇温したところ、43J/gの融解熱量を観測した。融解熱量に対する発熱量の比から、急激な冷却の過程で結晶化が100%進行したことがわかる。
(実施例13)
L−ラクチド(武蔵野化学株式会社製)100質量部と、開始剤であるヒマシ油(伊藤製油株式会社製)25質量部とを混合し、2−エチルヘキサン酸スズ1質量部を触媒として添加した。この混合物を窒素雰囲気下、130℃にて20時間加熱して、重合物を得た。得られた重合物について、構造を確認するため、H−NMR測定を行った。この結果、ヒマシ油の水酸基に隣接するメチン由来のピークが消失しており、ヒマシ油の水酸基を起点とした星型分岐状ポリ乳酸が合成されたことを確認した。
次に、この分岐状ポリ乳酸に、ピリジンに溶解させた無水フタル酸を加え、98℃にて2時間加熱した。得られたピリジン溶液を、水酸化ナトリウム水溶液で中和した。中和によって析出した白色沈殿を遠心沈降により分離回収して、さらに水で洗浄して、末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸を得た。
得られた分岐状ポリ乳酸について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は4000、分子量分布(Mw/Mn)は1.1であり、分子量3000以下の分岐状ポリ乳酸分子は8%であった。得られた分岐状ポリ乳酸の融点は120℃であった。この分岐状ポリ乳酸を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、100℃に23J/gの発熱を観測した。これは結晶化による発熱であることから、分岐状ポリ乳酸は、末端水酸基の置換によって非常に結晶化しやすいポリマーになったことがわかる。
この分岐状ポリ乳酸20質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)80質量部とを、ラボプラストミルを用いて180℃で溶融混合して塊状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、30J/gの発熱量を観測した。これはポリ乳酸の結晶化による発熱量である。また、−100℃まで冷却した後、再び200℃まで毎分10℃の割合で昇温したところ、41J/gの融解熱量を観測した。融解熱量に対する発熱量の比から、急激な冷却の過程で結晶化が73%進行したことがわかる。
(実施例14)
末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸の製造のために、ヒマシ油25質量部に代えてヒマシ油2.6質量部を用いたこと以外は、実施例13と同様に行った。
得られた分岐状ポリ乳酸について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は40000、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であり、分子量3000以下の分岐状ポリ乳酸分子は1%以下であった。得られた分岐状ポリ乳酸の融点は160℃であった。この分岐状ポリ乳酸を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、108℃に26J/gの発熱量を観測した。これは結晶化による発熱であることから、分岐状ポリ乳酸は、末端水酸基の置換によって非常に結晶化しやすいポリマーになったことがわかる。
この分岐状ポリ乳酸20質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)80質量部とを、ラボプラストミルを用いて180℃で溶融混合して塊状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、34J/gの発熱量を観測した。これはポリ乳酸の結晶化による発熱量である。また、−100℃まで冷却した後、再び200℃まで毎分10℃の割合で昇温したところ、42J/gの融解熱量を観測した。融解熱量に対する発熱量の比から、急激な冷却の過程で結晶化が81%進行したことがわかる。
(実施例15)
末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸の製造のために、ヒマシ油25質量部に代えてヒマシ油2質量部を用いたこと以外は、実施例13と同様に行った。
得られた分岐状ポリ乳酸について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は45000、分子量分布(Mw/Mn)は2であり、分子量3000以下の分岐状ポリ乳酸分子は1%以下であった。得られた分岐状ポリ乳酸の融点は164℃であった。この分岐状ポリ乳酸を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、101℃に14J/gの発熱量を観測した。これは結晶化による発熱であるが、分岐状ポリ乳酸の分子量が大きくなることで、直鎖状ポリ乳酸としての性質が顕著になり、結晶性が低下したことがわかる。
この分岐状ポリ乳酸20質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)80質量部とを、ラボプラストミルを用いて180℃で溶融混合して塊状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、6J/gの発熱量を観測した。これはポリ乳酸の結晶化による発熱量である。また、−100℃まで冷却した後、再び200℃まで毎分10℃の割合で昇温したところ、35J/gの融解熱量を観測した。融解熱量に対する発熱量の比から、急激な冷却の過程で結晶化が17%しか進行しなかったことがわかる。すなわち、分岐状ポリ乳酸はポリ乳酸の結晶化を十分に促進することができなかった。これは、添加する分岐状ポリ乳酸の結晶性が低いために、ポリ乳酸の結晶核の生成頻度が低下し、結晶化度も低下することを示している。
(実施例16)
末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸の製造のために、ヒマシ油25質量部に代えてヒマシ油56質量部を用いたこと以外は、実施例13と同様に行った。
得られた分岐状ポリ乳酸について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は2500、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であり、分子量3000以下の分岐状ポリ乳酸分子は76%であった。得られた分岐状ポリ乳酸の融点は84℃であった。この分岐状ポリ乳酸を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、発熱は観測されなかった。すなわち、分岐状ポリ乳酸は結晶化しなかった。分岐状ポリ乳酸の分子量が小さくなることで、結晶化が阻害され、結晶性が著しく低下したことがわかる。
この分岐状ポリ乳酸20質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)80質量部とを、ラボプラストミルを用いて180℃で溶融混合して塊状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この混合物を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、発熱は観測されなかった。これはポリ乳酸が結晶化しなかったことを示す。また、−100℃まで冷却した後、再び200℃まで毎分10℃の割合で昇温したところ、31J/gの融解熱量を観測した。ポリ乳酸は結晶化可能であるが、急激な冷却の過程では結晶化が全く進行しなかったことがわかる。すなわち、分岐状ポリ乳酸はポリ乳酸の結晶化を全く促進することができなかった。これは、添加する分岐状ポリ乳酸の結晶性が著しく低いために、ポリ乳酸の結晶核の生成頻度が低下し、結晶化度も低下することを示している。
(実施例17)
末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸の製造のために、ヒマシ油25質量部に代えてヒマシ油29質量部を用いたこと以外は、実施例13と同様に行った。
得られた分岐状ポリ乳酸について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は4000、分子量分布(Mw/Mn)は2.4であり、分子量3000以下の分岐状ポリ乳酸分子は24%であった。得られた分岐状ポリ乳酸の融点は80℃であった。この分岐状ポリ乳酸を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、95℃に12J/gの発熱量を観測した。これは結晶化による発熱であるが、分岐状ポリ乳酸に含有される低分子の分岐状ポリ乳酸分子の割合が高くなることで、結晶化が阻害され、結晶性が低下したことがわかる。
この分岐状ポリ乳酸20質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)80質量部とを、ラボプラストミルを用いて180℃で溶融混合して塊状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、10J/gの発熱量を観測した。これはポリ乳酸の結晶化による発熱量である。また、−100℃まで冷却した後、再び200℃まで毎分10℃の割合で昇温したところ、35J/gの融解熱量を観測した。融解熱量に対する発熱量の比から、急激な冷却の過程で結晶化が29%しか進行しなかったことがわかる。すなわち、分岐状ポリ乳酸はポリ乳酸の結晶化を十分に促進することができなかった。これは、添加する分岐状ポリ乳酸の結晶性が低いために、ポリ乳酸の結晶核の生成頻度が低下し、結晶化度も低下することを示している。
分岐状ポリ乳酸を溶融後100℃/分の冷却速度で冷却する場合の発熱量が20J/gに満たないときは、分岐状ポリ乳酸の結晶性が低く、このような分岐状ポリ乳酸をポリ乳酸に配合しても、ポリ乳酸の結晶核の生成頻度が低下し、ポリ乳酸の結晶化を促進することができない。
(実施例18)
L−乳酸(和光純薬工業株式会社製、90v/v%水溶液)100質量部を減圧加熱して得られた脱水乳酸90質量部と、開始剤であるヒマシ油(和光純薬工業株式会社製)9.1質量部とを混合し、2−エチルヘキサン酸スズ1質量部を触媒として添加した。この混合物を窒素雰囲気下、良く攪拌しながら150℃に加熱して、大気圧下で5時間、13000Paの減圧下で2時間、4000Paの減圧下で2時間、2600Paの減圧下で2時間保持し、次いで180℃に加熱して、1300Paの減圧下で2時間保持して、重合物を得た。得られた重合物について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は8000であった。また、GPCから求めた分子量と仕込み比から算出した分子量とがよく一致したことから、ポリ乳酸のホモポリマーは生成せず、ヒマシ油を開始剤とした分岐状ポリ乳酸のみが得られたことがわかった。
次に、この分岐状ポリ乳酸に、ピリジンに溶解させた無水フタル酸を加え、98℃にて2時間加熱した。得られたピリジン溶液を、水酸化ナトリウム水溶液で中和した。中和によって析出した白色沈殿を遠心沈降により分離回収して、さらに水で洗浄して、末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸を得た。
得られた分岐状ポリ乳酸について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は9000、分子量分布(Mw/Mn)は1.6であり、分子量3000以下の分岐状ポリ乳酸分子は1%以下であった。得られた分岐状ポリ乳酸の融点は130℃であった。この分岐状ポリ乳酸を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、115℃に31J/gの発熱量を観測した。これは結晶化による発熱であることから、分岐状ポリ乳酸は、末端水酸基の置換によって非常に結晶化しやすいポリマーになったことがわかる。
この分岐状ポリ乳酸20質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)80質量部とタルク1重量部を、ラボプラストミルを用いて180℃で溶融混合して塊状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、50J/gの発熱量を観測した。これはポリ乳酸の結晶化による発熱量である。実施例11より発熱量が大きいことから、ポリ乳酸の結晶性が増大したことがわかる。これは、タルクが分岐状ポリ乳酸の結晶核となり、分岐状ポリ乳酸の結晶化が促進され、次いで分岐状ポリ乳酸の結晶がポリ乳酸の結晶核となり、ポリ乳酸の結晶化が促進されたためと考えられる。分岐状ポリ乳酸の結晶に整合するようにポリ乳酸の結晶が成長することにより、全体として非常に結晶性の高いポリ乳酸樹脂組成物が得られるものと考えられる。
(実施例19)
L−乳酸(和光純薬工業株式会社製、90v/v%水溶液)100質量部を減圧加熱して得られた脱水乳酸90質量部と、開始剤であるヒマシ油(和光純薬工業株式会社製)9.1質量部とを混合し、2−エチルヘキサン酸スズ1質量部を触媒として添加した。この混合物を窒素雰囲気下、良く攪拌しながら150℃に加熱して、大気圧下で5時間、13000Paの減圧下で2時間、4000Paの減圧下で2時間、2600Paの減圧下で2時間保持し、次いで180℃に加熱して、1300Paの減圧下で2時間保持して、重合物を得た。得られた重合物について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は8000であった。また、GPCから求めた分子量と仕込み比から算出した分子量とがよく一致したことから、ポリ乳酸のホモポリマーは生成せず、ヒマシ油を開始剤とした分岐状ポリ乳酸のみが得られたことがわかった。
次に、この分岐状ポリ乳酸に、ピリジンに溶解させた無水フタル酸を加え、98℃にて2時間加熱した。得られたピリジン溶液を、水酸化ナトリウム水溶液で中和した。中和によって析出した白色沈殿を遠心沈降により分離回収して、さらに水で洗浄して、末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸を得た。
得られた分岐状ポリ乳酸について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は9000、分子量分布(Mw/Mn)は1.6であり、分子量3000以下の分岐状ポリ乳酸分子は1%以下であった。得られた分岐状ポリ乳酸の融点は130℃であった。この分岐状ポリ乳酸を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、115℃に31J/gの発熱量を観測した。これは結晶化による発熱であることから、分岐状ポリ乳酸は、末端水酸基の置換によって非常に結晶化しやすいポリマーになったことがわかる。
この分岐状ポリ乳酸20質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)80質量部とポリプロピレングリコール1重量部とを、ラボプラストミルを用いて180℃で溶融混合して塊状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、54J/gの発熱量を観測した。実施例11より発熱量が大きいことから、ポリ乳酸の結晶性が増大したことがわかる。これは、ポリプロピレングリコールが可塑剤として分岐状ポリ乳酸の運動性を促進するため、分岐状ポリ乳酸の結晶成長が促進され、次いで分岐状ポリ乳酸の結晶がポリ乳酸の結晶核となり、ポリ乳酸の結晶化が促進されたためと考えられる。分岐状ポリ乳酸の結晶に整合するようにポリ乳酸の結晶が成長することにより、全体として非常に結晶性の高いポリ乳酸樹脂組成物が得られるものと考えられる。
(実施例20)
実施例11で得られた分岐状ポリ乳酸20質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)80質量部とを、2軸押出混練機(テクノベル株式会社製KZW15TW)を用いて90℃から180℃まで徐々に温度を上げながら2軸スクリューのせん断力により混合押出し、次いでダイスより吐出されたストランドを水槽で冷却後、ペレタイザーによりペレット化してペレット状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。混練機中ではブロッキングなどのつまり現象は観察されず、安定した押出、ストランド形成、ペレット化が可能であった。乾燥後のペレット状ポリ乳酸樹脂組成物を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、41J/gの発熱量を観測した。これはポリ乳酸の結晶化による発熱量である。また、−100℃まで冷却した後、再び200℃まで毎分10℃の割合で昇温したところ、42J/gの融解熱量を観測した。融解熱量に対する発熱量の比から、急激な冷却の過程で結晶化が98%進行したことがわかる。
(実施例21)
実施例17で得られた分岐状ポリ乳酸20質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)80質量部とを、2軸押出混練機(テクノベル株式会社製KZW15TW)を用いて90℃から180℃まで徐々に温度を上げながら2軸スクリューのせん断力により混合押出した。しかし、混練機中では、特にフィード部において、融点の低い分岐状ポリ乳酸のみが軟化、溶融し、接着剤のようにポリ乳酸を固着してスクリュー回転、混練を阻害する現象(ブロッキング)が認められた。また、ダイスより吐出されたストランドは脈動し、安定した径を形成できず、最後には吐出口が完全に詰まってしまった。これは、ポリ乳酸に比して、分岐状ポリ乳酸の融点(または軟化点)が低すぎることによると考えられる。バッチ式の混練機では発生しない現象であるが、連続式の混練機では大きな問題となる。このような問題を回避するには、添加する分岐状ポリ乳酸の融点(もしくは軟化点)が少なくとも100℃以上である必要がある。
(実施例22)
実施例20で得られたペレット状ポリ乳酸樹脂組成物を射出成型機(株式会社日本製鋼所製N100BII)により成形した。ホッパーよりペレットを投入し、40℃に温調した金型に向けて射出したところ、射出後10秒で成形品を取り出すことができた。これは、10秒以内に成形品が固化したことを示している。また、100℃に温調した金型に向けて射出したところ、射出後20秒で成形品を取り出すことができた。これは、ポリ乳酸のガラス転移温度である57℃を大きく上回る温度においても、成形品の形状を維持するのに十分な結晶性が20秒以内に得られたことを示している。
得られた射出成形片の耐熱温度(低荷重)を荷重たわみ温度計により測定したところ、40℃金型成形品では100℃、100℃金型成形品では120℃の耐熱性を示した。
(比較例3)
ポリ乳酸(重量平均分子量10万)を射出成型機により成形した。ホッパーよりペレットを投入し、40℃に温調した金型に向けて射出したところ、射出後10秒で成形品を取り出すことができた。これは、10秒以内に成形品が固化したことを示している。しかし、100℃に温調した金型に向けて射出したところ、射出後150秒でも変形のため成形品を取り出すことができなかった。これは、ポリ乳酸のガラス転移温度である57℃を大きく上回る温度においては、成形品の形状を維持するのに十分な結晶性が150秒以内に得られなかったことを示している。
得られた射出成形片の耐熱温度(低荷重)を荷重たわみ温度計により測定したところ、40℃金型成形品では55℃の耐熱性を示した。これは、ポリ乳酸がほとんど結晶化していないために、ガラス転移温度を超える温度では、成形品が変形し、もはや形状を維持できないことを示している。
(実施例23)
L−乳酸(和光純薬工業株式会社製、90v/v%水溶液)100質量部を減圧加熱して得られた脱水乳酸90質量部に、塩化スズ0.5質量部と、p−トルエンスルホン酸0.5質量部とを触媒として添加した。この混合物を窒素雰囲気下、良く攪拌しながら150℃に加熱して、大気圧下で5時間、13000Paの減圧下で2時間、4000Paの減圧下で2時間、2600Paの減圧下で2時間保持し、次いで180℃に加熱して、1300Paの減圧下で2時間保持して、ポリ乳酸を得た。得られたポリ乳酸について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は5000であった。
このポリ乳酸100質量部とヒマシ油(和光純薬工業株式会社製)6.7質量部とを混合し、1300Paの減圧下で180℃に加熱して重合物を得た。得られた重合物について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は15000であった。また、GPCから求めた分子量と仕込み比から算出した分子量とがよく一致したことから、ポリ乳酸のホモポリマーは生成せず、ヒマシ油を開始剤とした分岐状ポリ乳酸のみが得られたことがわかった。
次に、この分岐状ポリ乳酸に、ピリジンに溶解させた無水フタル酸を加え、98℃にて2時間加熱した。得られたピリジン溶液を、水酸化ナトリウム水溶液で中和した。中和によって析出した白色沈殿を遠心沈降により分離回収して、さらに水で洗浄して、末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸を得た。
得られた分岐状ポリ乳酸について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は15000、分子量分布(Mw/Mn)は1.2であり、分子量3000以下の分岐状ポリ乳酸分子は1%以下であった。得られた分岐状ポリ乳酸の融点は140℃であった。この分岐状ポリ乳酸を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、116℃に36J/gの発熱量を観測した。これは結晶化による発熱であることから、分岐状ポリ乳酸は、末端水酸基の置換によって非常に結晶化しやすいポリマーになったことがわかる。
この分岐状ポリ乳酸20質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)80質量部とを、ラボプラストミルを用いて180℃で溶融混合して塊状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、41J/gの発熱量を観測した。これはポリ乳酸の結晶化による発熱量である。また、−100℃まで冷却した後、再び200℃まで毎分10℃の割合で昇温したところ、42J/gの融解熱量を観測した。融解熱量に対する発熱量の比から、急激な冷却の過程で結晶化が98%進行したことがわかる。
(実施例24)
L−ラクチド(武蔵野化学株式会社製)100質量部と、開始剤であるヒマシ油(和光純薬工業株式会社製)8.9質量部とを混合し、2−エチルヘキサン酸スズ0.5質量部を触媒として添加した。この混合物をアルゴン雰囲気下、130℃にて20時間加熱して、重合物を得た。
次に、この分岐状ポリ乳酸に、ピリジンに溶解させた無水フタル酸を加え、98℃にて2時間加熱した。得られたピリジン溶液を、水酸化ナトリウム水溶液で中和した。中和によって析出した白色沈殿を遠心沈降により分離回収して、さらに水で洗浄して、末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸を得た。
得られた分岐状ポリ乳酸について、DSCを用いてガラス転移温度を測定したところ、30.0℃であった。また、200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、32J/gの発熱量を観測した。これは結晶化による発熱であることから、分岐状ポリ乳酸は、末端水酸基の置換によって非常に結晶化しやすいポリマーになったことがわかる。
(実施例25)
末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸の製造のために、ヒマシ油8.9質量部に代えてヒマシ油11.1質量部を用いたこと以外は、実施例24と同様に行った。
得られた分岐状ポリ乳酸について、DSCを用いてガラス転移温度を測定したところ、24.5℃であった。また、200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、43J/gの発熱量を観測した。これは結晶化による発熱であることから、分岐状ポリ乳酸は、末端水酸基の置換によって非常に結晶化しやすいポリマーになったことがわかる。
(実施例26)
末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸の製造のために、ヒマシ油8.9質量部に代えてヒマシ油12.7質量部を用いたこと以外は、実施例24と同様に行った。
得られた分岐状ポリ乳酸について、DSCを用いてガラス転移温度を測定したところ、13.6℃であった。また、200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、48J/gの発熱量を観測した。これは結晶化による発熱であることから、分岐状ポリ乳酸は、末端水酸基の置換によって非常に結晶化しやすいポリマーになったことがわかる。
(実施例27)
末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸の製造のために、ヒマシ油8.9質量部に代えてヒマシ油7.43質量部を用いたこと以外は、実施例24と同様に行った。
得られた分岐状ポリ乳酸について、DSCを用いてガラス転移温度を測定したところ、42.7℃であった。また、200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、20J/gの発熱量を観測した。実施例24〜26と比較して結晶性は低下していたものの発現され得る。
(実施例28)
デンプンの発酵によって得られた乳酸発酵液を精製して得られたL−乳酸(90v/v%水溶液、光学純度98%)100質量部を減圧加熱して得られた脱水乳酸90質量部と、開始剤であるヒマシ油(和光純薬工業株式会社製)9質量部とを混合し、2−エチルヘキサン酸スズ0.5質量部を触媒として添加した。この混合物を窒素雰囲気下、良く攪拌しながら150℃に加熱して、大気圧下で5時間、13000Paの減圧下で2時間、4000Paの減圧下で2時間、2600Paの減圧下で2時間保持し、次いで180℃に加熱して、1300Paの減圧下で2時間保持して、重合物を得た。
次に、この分岐状ポリ乳酸に、ピリジンに溶解させた無水フタル酸を加え、98℃にて2時間加熱した。得られたピリジン溶液を、水酸化ナトリウム水溶液で中和した。中和によって析出した白色沈殿を遠心沈降により分離回収して、さらに水で洗浄して、末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸を得た。
得られた分岐状ポリ乳酸を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、30J/gの発熱量を観測した。これは結晶化による発熱であることから、分岐状ポリ乳酸は、末端水酸基の置換によって非常に結晶化しやすいポリマーになったことがわかる。
(実施例29)
末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸の製造のために、L−乳酸(光学純度98%)100重量部に代えてL−乳酸(光学純度94%)100質量部を用いたこと以外は、実施例28と同様に行った。
得られた分岐状ポリ乳酸を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、22J/gの発熱量を観測した。これは結晶化による発熱であることから、分岐状ポリ乳酸は、末端水酸基の置換によって非常に結晶化しやすいポリマーになったことがわかる。
(実施例30)
末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸の製造のために、L−乳酸(光学純度98%)100重量部に代えてL−乳酸(光学純度90%)100質量部を用いたこと以外は、実施例28と同様に行った。
得られた分岐状ポリ乳酸を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、7J/gの発熱量を観測した。実施例28および29と比較して結晶性が低下していた。
(実施例31)
末端水酸基における水素がフタル酸ナトリウム塩由来のアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸の製造のために、L−乳酸(光学純度98%)100重量部に代えてL−乳酸(光学純度80%)100質量部を用いたこと以外は、実施例28と同様に行った。
得られた分岐状ポリ乳酸を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、発熱現象は観測されなかった。
(実施例32)
実施例14で得られた分岐状ポリ乳酸10質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)90質量部とアセチルクエン酸トリブチル10質量部とを、ラボプラストミルを用いて170℃で溶融混合して塊状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、88℃に41J/gの発熱量を観測した。結晶性の高いポリ乳酸樹脂組成物を得ることができた。
(実施例33)
実施例14で得られた分岐状ポリ乳酸10質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)90質量部とトリエチレングリコールジメチルエーテル10質量部とを、ラボプラストミルを用いて170℃で溶融混合して塊状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、104℃に41J/gの発熱量を観測した。結晶性の高いポリ乳酸樹脂組成物を得ることができた。
(実施例34)
実施例14で得られた分岐状ポリ乳酸10質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)90質量部とを、ラボプラストミルを用いて170℃で溶融混合して塊状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。この組成物を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、25J/gの発熱量を観測した。実施例14、32および33と比較して、ポリ乳酸樹脂組成物の結晶性は低下したものの添加剤(分岐状ポリ乳酸)による向上はみられた。
(実施例35)
実施例14で得られた分岐状ポリ乳酸8質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)92質量部とアセチルクエン酸トリブチル8質量部とを、2軸押出混練機(テクノベル株式会社製KZW15TW)を用いて90℃から170℃まで徐々に温度を上げながら2軸スクリューのせん断力により混合押出し、次いでダイスより吐出されたストランドを水槽で冷却後、ペレタイザーによりペレット化してペレット状のポリ乳酸樹脂組成物を得た。混練機中はブロッキングなどのつまり現象は観察されず、安定した押出、ストランド形成、ペレット化が可能であった。乾燥後のペレット状ポリ乳酸樹脂組成物を、射出成型機(東洋機械金属株式会社Si−80IV)により成形した。ホッパーよりペレットを投入し、90℃に温調した金型に向けて射出したところ、射出後30秒で成形品を取り出すことができた。これは、30秒以内に成形品が固化したことを示している。これは、ポリ乳酸のガラス転移温度である57℃を大きく上回る温度においても、成形品の形状を維持するのに十分な結晶性が30秒以内に得られたことを示している。
得られた射出成形片の耐熱温度(低荷重)を荷重たわみ温度計により測定したところ、130℃の耐熱性を示した。
(実施例36)
実施例11で得られた分岐状ポリ乳酸を、2軸押出混練機(テクノベル株式会社製KZW15TW)を用いて90℃から150℃まで徐々に温度を上げながら2軸スクリューにより押出し、次いでダイスより吐出されたストランドを水槽で冷却後、ペレタイザーによりペレット化してペレット状の分岐状ポリ乳酸を得た。ポリ乳酸(重量平均分子量16万)も同様にしてペレット化した。
次に、ペレット状の分岐状ポリ乳酸2kgとペレット状ポリ乳酸8kg(重量平均分子量16万)とを樹脂袋に入れて袋ごと振り混ぜて、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を射出成型機(株式会社日本製鋼所製N100BII)により成形した。ホッパーよりペレット状の分岐状ポリ乳酸とペレット状ポリ乳酸との混合からなるポリ乳酸樹脂組成物を投入し、40℃に温調した金型に向けて射出したところ、射出後10秒で成形品を取り出すことができた。これは、10秒以内に成形品が固化したことを示している。また、100℃に温調した金型に向けて射出したところ、射出後25秒で成形品を取り出すことができた。これは、ポリ乳酸のガラス転移温度である57℃を大きく上回る温度においても、成形品の形状を維持するのに十分な結晶性が25秒以内に得られたことを示している。
得られた射出成形片の耐熱温度(低荷重)を荷重たわみ温度計により測定したところ、40℃金型成形品では100℃、100℃金型成形品では120℃の耐熱性を示した。
(実施例37)
実施例14で得られた分岐状ポリ乳酸40質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)60質量部とアセチルクエン酸トリブチル40質量部とを、2軸押出混練機(テクノベル株式会社製KZW15TW)を用いて90℃から170℃まで徐々に温度を上げながら2軸スクリューのせん断力により混合押出し、次いでダイスより吐出されたストランドを水槽で冷却後、ペレタイザーによりペレット化してペレット状のポリ乳酸樹脂組成物(マスターバッチ)を得た。マスターバッチのペレット状のポリ乳酸樹脂組成物を乾燥した。混練機中はブロッキングなどのつまり現象は観察されず、安定した押出、ストランド形成、ペレット化が可能であった。乾燥後のペレット状ポリ乳酸樹脂組成物3kgと、ポリ乳酸ペレット(重量平均分子量10万)12kgとを樹脂袋に入れて袋ごと振り混ぜて、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を、射出成型機(東洋機械金属株式会社Si−80IV)により成形した。ホッパーより混合したペレットを投入し、90℃に温調した金型に向けて射出したところ、射出後30秒で成形品を取り出すことができた。これは、30秒以内に成形品が固化したことを示している。これは、ポリ乳酸のガラス転移温度である57℃を大きく上回る温度においても、成形品の形状を維持するのに十分な結晶性が30秒以内に得られたことを示している。
得られた射出成形片の耐熱温度(低荷重)を荷重たわみ温度計により測定したところ、130℃の耐熱性を示した。
(実施例38)
L−乳酸(和光純薬工業株式会社製、90v/v%水溶液)100質量部を減圧加熱して得られた脱水乳酸90質量部と、開始剤であるグリセリン(和光純薬工業株式会社製)2.1質量部とを混合し、2−エチルヘキサン酸スズ1質量部を触媒として添加した。この混合物を窒素雰囲気下、良く攪拌しながら150℃に加熱して、大気圧下で5時間、13000Paの減圧下で2時間、4000Paの減圧下で2時間、2600Paの減圧下で2時間保持して、重合物を得た。得られた重合物について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は4000であった。また、GPCから求めた分子量と仕込み比から算出した分子量とがよく一致したことから、ポリ乳酸のホモポリマーは生成せず、グリセリンを開始剤とした分岐状ポリ乳酸のみが得られたことがわかった。
次に、この分岐状ポリ乳酸に、ピリジンに溶解させた無水酢酸とイミダゾールを加え、30分間還流した。得られたピリジン溶液を、水酸化ナトリウム水溶液で中和した。中和後にクロロホルムにより抽出し、さらに水で洗浄して、末端水酸基における水素がアセチル基で置換されている分岐状ポリ乳酸を得た。
この分岐状ポリ乳酸と10質量部と、実施例11で得られた分岐状ポリ乳酸10質量部とポリ乳酸(重量平均分子量10万)80質量部とを、2軸押出混練機(テクノベル株式会社製KZW15TW)を用いて90℃から180℃まで徐々に温度を上げながら2軸スクリューのせん断力により混合押出し、次いでダイスより吐出されたストランドを水槽で冷却後、ペレタイザーによりペレット化してペレット状のポリ乳酸樹脂組成物を得、これを乾燥した。混練機中ではブロッキングなどのつまり現象は観察されず、安定した押出、ストランド形成、ペレット化が可能であった。乾燥後のペレット状ポリ乳酸樹脂組成物を、DSCを用いて200℃にて加熱溶融して5分間保持した後、20℃まで毎分100℃の割合で降温したところ、36J/gの発熱量を観測した。これはポリ乳酸の結晶化による発熱量である。また、−100℃まで冷却した後、再び200℃まで毎分10℃の割合で昇温したところ、42J/gの融解熱量を観測した。融解熱量に対する発熱量の比から、急激な冷却の過程で結晶化が86%進行したことがわかる。
次に、このペレット状ポリ乳酸樹脂組成物を射出成型機(株式会社日本製鋼所製N100BII)により成形した。ホッパーよりペレットを投入し、40℃に温調した金型に向けて射出したところ、射出後15秒で成形品を取り出すことができた。これは、15秒以内に成形品が固化したことを示している。また、100℃に温調した金型に向けて射出したところ、射出後30秒で成形品を取り出すことができた。これは、ポリ乳酸のガラス転移温度である57℃を大きく上回る温度においても、成形品の形状を維持するのに十分な結晶性が30秒以内に得られたことを示している。
得られた射出成形片の耐熱温度(低荷重)を荷重たわみ温度計により測定したところ、100℃金型成形品では115℃の耐熱性を示した。
(実施例39)
L−乳酸(和光純薬工業株式会社製、90v/v%水溶液)100質量部を減圧加熱して得られた脱水乳酸90質量部と、開始剤であるヒマシ油(和光純薬工業株式会社製)9.1質量部とを混合し、2−エチルヘキサン酸スズ1質量部を触媒として添加した。この混合物を窒素雰囲気下、良く攪拌しながら150℃に加熱して、大気圧下で5時間、13000Paの減圧下で2時間、4000Paの減圧下で2時間、2600Paの減圧下で2時間保持し、次いで180℃に加熱して、1300Paの減圧下で2時間保持して、重合物を得た。得られた重合物について、GPCを用いて分子量を求めたところ、数平均分子量は8000であった。また、GPCから求めた分子量と仕込み比から算出した分子量とがよく一致したことから、ポリ乳酸のホモポリマーは生成せず、ヒマシ油を開始剤とした分岐状ポリ乳酸のみが得られたことがわかった。
次に、この分岐状ポリ乳酸に、ピリジンに溶解させた無水酢酸とイミダゾールを加え、30分間還流した。得られたピリジン溶液を、水酸化ナトリウム水溶液で中和した。中和によって析出した白色沈殿を遠心沈降により分離回収して、さらに水で洗浄して、末端水酸基における水素がアセチル基で置換されている分岐状ポリ乳酸を得た。
この得られた分岐状ポリ乳酸100質量部と、フタル酸二ナトリウム10質量部とを、2軸押出混練機(テクノベル株式会社製KZW15TW)を用いて90℃から170℃まで徐々に温度を上げながら2軸スクリューのせん断力により混合押出し、次いでダイスより吐出されたストランドを水槽で冷却後、ペレタイザーによりペレット化してペレット状のポリ乳酸樹脂組成物を得、これを乾燥した。混練機中はブロッキングなどのつまり現象は観察されず、安定した押出、ストランド形成、ペレット化が可能であった。乾燥後のペレット状ポリ乳酸樹脂組成物1kgと、同様にしてペレット化したポリ乳酸ペレット(重量平均分子量10万)9kgとを樹脂袋に入れて袋ごと振り混ぜて、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を、射出成型機(東洋機械金属株式会社Si−80IV)により成形した。ホッパーより混合したペレットを投入し、90℃に温調した金型に向けて射出したところ、射出後30秒で成形品を取り出すことができた。これは、30秒以内に成形品が固化したことを示している。これは、ポリ乳酸のガラス転移温度である57℃を大きく上回る温度においても、成形品の形状を維持するのに十分な結晶性が30秒以内に得られたことを示している。
得られた射出成形片の耐熱温度(低荷重)を荷重たわみ温度計により測定したところ、120℃の耐熱性を示した。
本発明のポリ乳酸樹脂用添加剤は、ポリ乳酸に配合することでポリ乳酸の柔軟性および耐熱性を向上させることができる。本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、従来にない柔軟性が得られるため、フイルムなどとして、農業用資材、水産用資材、土木建築用資材、食品包装、医療介護品、衣料繊維、家具、事務用品、雑貨、日用品などへの用途の拡大が期待される。また、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、耐熱性にも優れるため、自動車、家電製品、その他様々な耐熱性が求められる工業製品への用途の拡大が期待される。さらに、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ベース樹脂のポリ乳酸、および添加剤の分岐状ポリ乳酸がともに植物由来であり、二酸化炭素削減による地球温暖化防止、脱石油による省資源への効果も期待される。

Claims (9)

  1. 分子中にポリ乳酸からなる分岐鎖を少なくとも3個有する分岐状ポリ乳酸からなるポリ乳酸樹脂用添加剤であって、
    該分岐状ポリ乳酸が、分子中に極性基を少なくとも3個有する化合物を開始剤として用いてラクチド、乳酸またはポリ乳酸を重合して得られ、そして
    該分岐状ポリ乳酸が、該ポリ乳酸からなる分岐鎖のうち少なくとも1個の末端水酸基における水素が、一般式R−CO−で表され、Rが炭素数〜14の不飽和炭化水素基であるアシル基で置換されている分岐状ポリ乳酸分子を含有し、
    ここで、該分岐状ポリ乳酸の数平均分子量が、4000〜40000である、
    ポリ乳酸樹脂用添加剤。
  2. 前記分子中に極性基を少なくとも3個有する化合物が、分子中に水酸基を少なくとも3個有するトリアシルグリセロールを主成分として含有する油脂、分子中にエポキシ基を少なくとも3個有するトリアシルグリセロールを主成分として含有する油脂、分子中に水酸基を少なくとも3個有するポリエーテルポリオール、ヌクレオシド、および糖アルコールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂用添加剤。
  3. 前記分岐状ポリ乳酸が、数平均分子量3000以下の分岐状ポリ乳酸分子を10質量%以下の割合で含有する、請求項1または2に記載のポリ乳酸樹脂用添加剤。
  4. 前記分岐状ポリ乳酸が、30℃以下のガラス転移温度を有する、請求項1から3のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂用添加剤。
  5. ポリ乳酸と、請求項1から4のいずれかの項に記載のポリ乳酸樹脂用添加剤とを含有する、ポリ乳酸樹脂組成物。
  6. ポリ乳酸100質量部に対して、請求項1から4のいずれかの項に記載のポリ乳酸樹脂用添加剤を1〜30質量部溶融混合してなる、請求項5に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  7. さらに、タルクまたはマイカを0.1〜5質量部溶融混合してなる、請求項5または6に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  8. さらに、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを0.1〜5質量部溶融混合してなる、請求項5または6に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  9. さらに、ジエチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、モノオレイン、トリアセチン、トリブチリン、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルリシノール酸メチル、アジピン酸ジエステル、フマル酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、セバシン酸ジエステルからなる群より選択される少なくとも1種を1〜30質量部溶融混合してなる、請求項5または6に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
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