JP2008248021A - ポリ乳酸組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の目的は、下記要件(a)〜(f)を同時に満足し、特定のカットファイバーを含有するポリ乳酸組成物によって達成される。
(a)重量平均分子量が7万以上70万以下であること。
(b)繊維成分を取り除いた樹脂成分中にSn原子、Ti原子、Al原子、Ca原子の少なくともいずれかひとつを3ppm以上3000ppm以下含有すること。
(c)P原子を10ppm以上5000ppm以下含有すること。
(d)(Sn、Ti、Al、Caのg原子数)/(Pのg原子数)が0.01以上5以下であること。
(e)分子量150以下の化合物の含有量が0.2重量%以下であること。
(f)COOH末端基濃度が30当量/トン以下であること。
【選択図】なし
Description
かかる現状に鑑み、脱石油原料から成る樹脂、或いは微生物によって分解される生分解性プラスチックが盛んに研究されるようになってきた。現在検討されているほとんどの生分解プラスチックは、脂肪族カルボン酸エステル単位を有し微生物により分解され易い。その反面、熱安定性に乏しく、溶融紡糸、射出成形、溶融製膜などの高温に晒される工程における分子量低下、或いは色相悪化が深刻である。
エポキシの三者をブレンドする方法(例えば特許文献2)、ポリ乳酸、共重合ポリエステル、ポリエステル繊維の三者を含有する方法(たとえば、特許文献3)等各種検討がなされてきたがいまだ不十分なものであった。
(A)L−乳酸単位90モル%以上とD−乳酸単位および/または乳酸以外の共重合成分単位10モル%未満とにより構成されるポリ乳酸(A)30〜70重量部、
(B)D−乳酸単位90モル%以上とL−乳酸単位および/または乳酸以外の共重合成分単位10モル%未満とにより構成されるポリ乳酸(B)70〜30重量部および、
(C)繊維径が0.2μm〜15μm、繊維長が3mm以上30mm以下のカットファイバーを、ポリ乳酸(A)とポリ乳酸(B)との合計量を100重量部として20〜100重量部含み、
下記要件(a)〜(f)を同時に満足する、ポリ乳酸組成物によって達成される。
(a)重量平均分子量が7万以上70万以下であること。
(b)Sn原子、Ti原子、Al原子、Ca原子の少なくともいずれかひとつを3ppm以上3000ppm以下含有すること。
(c)P原子を10ppm以上5000ppm以下含有すること。
(d)(Sn、Ti、Al、Caのg原子数)/(Pのg原子数)が0.01以上5以下であること。
(e)分子量150以下の化合物の含有量が0.2重量%以下であること。
(f)COOH末端基濃度が30当量/トン以下であること。
(A)L−乳酸単位90モル%以上とD−乳酸単位および/または乳酸以外の共重合成分単位10モル%未満とにより構成されるポリ乳酸(A)30〜70重量部、
(B)D−乳酸単位90モル%以上とL−乳酸単位および/または乳酸以外の共重合成分単位10モル%未満とにより構成されるポリ乳酸(B)70〜30重量部および、
(C)繊維径が0.2μm〜15μm、繊維長が0.1mm以上30mm以下のカットファイバーをポリ乳酸(A)とポリ乳酸(B)との合計量を100重量部として20〜100重量部含み、
下記要件(a)〜(f)を同時に満足する、耐衝撃性の改善された成形体によって達成することができる。
(a)重量平均分子量が10万以上50万以下であること。
(b)Sn原子、Ti原子、Al原子、Ca原子の少なくともいずれかひとつを5ppm以上300ppm以下含有すること。
(c)P原子を20ppm以上5000ppm以下含有すること。
(d)(Sn、Ti、Al、Caのg原子数)/(Pのg原子数)が0.01以上5以下であること。
(e)分子量150以下の化合物の含有量が0.1重量%以下であること。
(f)COOH末端基濃度が30当量/トン以下である。
またポリ乳酸(B)は、D−乳酸単位を主として含む重合体である。ポリ−D−乳酸は90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%のD−乳酸単位を含有する。他の単位としては、L−乳酸単位、乳酸以外の単位が挙げられる。L−乳酸単位、乳酸以外の単位は、0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸中の乳酸以外の単位は、2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位およびこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等由来の単位が例示される。
なお、本発明において、カットファイバーとは、繊維を切断して上記繊維長の範囲にしたものを意味するが、このようなカットする前の繊維としては、ガラス繊維、天然繊維、合成繊維、炭素繊維等を用いればよいが、ガラス繊維、合成繊維が好ましい。
本発明のポリ乳酸組成物は、上記カットファイバーをポリ乳酸(A)とポリ乳酸(B)との合計量を100重量部として20〜100重量部含む必要があるが、この範囲内にないと、十分な補強効果が得られない。
要件(a)について;
本発明のポリ乳酸組成物は、重量平均分子量が、7万〜70万、好ましくは10万〜50万、より好ましくは15万〜35万である。この範囲内にあるときには、実用に供するに十分な力学物性が得られる。なお、重量平均分子量は溶離液にクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量値である。
本発明のポリ乳酸組成物は、ポリ乳酸組成物の全重量を基準として、Sn原子、Ti原子、Al原子、Ca原子の少なくともいずれかひとつを3ppm以上3000ppm以下含有することが必要である。これら原子はポリ乳酸製造時の触媒由来のものであり、この範囲内に無いと安定性が著しく損なわれるので好ましくない。
本発明のポリ乳酸組成物は、ポリ乳酸組成物の全重量を基準として、P原子を0.01ppm以上3000ppm以下で含有することが必要である。P原子は、ポリ乳酸製造時の触媒失活剤もしくは安定剤に由来するものであるが、この範囲内に無いと、安定性が損なわれる。
本発明のポリ乳酸組成物は、(Sn、Ti、Al、Caのg原子数)/(Pのg原子数)が0.01以上5以下であることが必要である。ここで、Sn、Ti、Al、Ca、Pのg原子数とは、モル数を意味するものである。
本発明のポリ乳酸組成物は、分子量150以下の化合物の含有量が、ポリ乳酸組成物を基準として、0.2重量%以下であることが必要である。この範囲内に無いと長期耐久性が著しく低下する。なお、ここで分子量150以下の化合物としては、ラクチド、乳酸等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明のポリ乳酸組成物は、カルボキシル末端基濃度が30当量/トン以下であることが必要である。この範囲内に無いと、耐加水分解性が低下する。
本発明の組成物は、基本的に公知方法をいずれも採用することができる。
なお、本発明において、ポリ乳酸(A)、ポリ乳酸(B)は、公知の方法で製造することができる。例えば、L−またはD−ラクチドを金属触媒の存在下、加熱し開環重合させ製造することができる。また、金属触媒を含有する低分子量のポリ乳酸を結晶化させた後、減圧下または不活性ガス気流下で加熱し固相重合させ製造することができる。さらに、有機溶媒の存在/非存在下で、乳酸を脱水縮合させる直接重合法で製造することができる。
重合反応は、従来公知の反応容器で実施可能であり、例えばヘリカルリボン翼等、高粘度用攪拌翼を備えた縦型反応容器を単独、または並列して使用することができる。重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ベンジルアルコールなどを好適に用いることができる。
固相重合法では、前述した開環重合法や乳酸の直接重合法によって得られた、比較的低分子量の乳酸ポリエステルをプレポリマーとして使用する。プレポリマーは、そのガラス転移温度(Tg)以上融点(Tm)未満の温度範囲にて予め結晶化させることが、融着防止の面から好ましい形態と言える。結晶化させたプレポリマーは固定された縦型反応容器、或いはタンブラーやキルンの様に容器自身が回転する反応容器中に充填され、プレポリマーのガラス転移温度(Tg)以上融点(Tm)未満の温度範囲に加熱される。重合温度は、重合の進行に伴い段階的に昇温させても何ら問題はない。また、固相重合中に生成する水を効率的に除去する目的で前記反応容器類の内部を減圧することや、加熱された不活性ガス気流を流通する方法も好適に併用される。
金属触媒は、ポリ乳酸100重量部に対して、0.001重量部以上1重量部未満含有し、好ましくは、0.005重量部以上0.1重量部未満である。金属触媒の添加量が少なすぎると重合速度が著しく低化するため好ましくない。逆に多すぎると反応熱によるポリ乳酸の着色、或いはカルボジイミド系化合物の着色を促し、得られる組成物の色相と熱安定性が悪化する。
本発明の射出成形体は、上述のポリ乳酸(A)、ポリ乳酸(B)およびカットファイバーを含むが、下記要件(a)〜(f)を同時に満足することを特徴とする。以下に各要件について説明する。
本発明の射出成形体は、重量平均分子量が、10万以上50万以下であることが必要である。より好ましくは15万〜35万である。この範囲内にあるときには、良好な力学物性をもつ。なお、重量平均分子量は溶離液にクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量値である。
本発明の射出成形体は、射出成形体の全重量を基準として、Sn原子、Ti原子、Al原子、Ca原子の少なくともいずれかひとつを5ppm以上300ppm以下含有することが必要である。この範囲内に無いと溶融安定性が損なわれ解重合などが進むので好ましくない。
本発明の射出成形体は、射出成形体の全重量を基準として、P原子を20ppm以上5000ppm以下で含有することが必要である。この範囲内に無いと、長期耐久性が著しく低下する。
本発明のポリ乳酸組成物は、(Sn、Ti、Al、Caのg原子数)/(Pのg原子数)が0.01以上5以下であることが必要である。ここで、Sn、Ti、Al、Ca、Pのg原子数とは、モル数を意味するものである。
本発明の射出成形体は、分子量150以下の化合物の含有量が、ポリ乳酸組成物を基準として、0.1重量%以下であることが必要である。この範囲内に無いこの範囲内に無いと長期耐久性が著しく低下する。なお、ここで分子量150以下の化合物としては、ラクチド、乳酸等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の射出成形体は、カルボキシル末端基濃度が30当量/トン以下であることが必要である。この範囲内に無いと、耐加水分解性が低下する。
本発明で言うステレオコンプレックス結晶とは、試料の示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、195℃以上の融解ピークの割合が好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であること。融点は、195〜250℃の範囲、より好ましくは200〜220℃の範囲であること。融解エンタルピーは、20J/g以上、好ましくは30J/g以上であることを言い、具体的には、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、195℃以上の融解ピークの割合が90%以上であり、融点が195〜250℃の範囲にあり、融解エンタルピーが20J/g以上であることが好ましい。ステレオコンプレックス結晶は、射出成形体を得た後、熱セットを行うことによって形成させることができる。
(1)重量平均分子量(Mw)の測定
重量平均分子量(Mw)はショーデックス製GPC−11を使用し、組成物50mgを5mlのクロロホルムに溶解させ、40℃のクロロホルムにて展開した。重量平均分子量(Mw)、はポリスチレン換算値として算出した。
(2)Sn原子量、Ti原子量、Al原子量、Ca原子量、P原子量の測定
原子吸光光度法により求めた。
(3)Sn、Ti、Al、Ca、Pの各g原子数の測定
添加時の量により求めた。
(4)分子量150以下の化合物の含有量の測定
GPCにより求めた。
(5)COOH末端基濃度の測定
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Waters Allience/Shodex GPC804L/クロロホルム)により求めた。
(6)溶融粘度の測定
Eゾールに溶解してキャピラリー法により求めた。
(7)成形体耐衝撃性の測定
アイゾット衝撃試験機を用い求めた。
(8)ステレオコンプレックス結晶含有率Xの算出法
ステレオコンプレックス結晶含有率Xは、示差走査熱量計(DSC)において150℃以上190℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピーΔHAと、190℃以上250℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピーΔHBから下記式にて算出した。
X={ΔHB/(ΔHA+ΔHB)}×100 (%)
冷却留出管を備えた重合反応容器の原料仕込み口から、窒素気流下でL−ラクチド100重量部およびステアリルアルコール0.15重量部を仕込んだ。続いて反応容器内を5回窒素置換し、L−ラクチドを190℃にて融解させた。L−ラクチドが完全に融解した時点で、原料仕込み口から2−エチルヘキサン酸スズ0.05重量部をトルエン500μLと共に添加し、190℃で1時間重合した。
重合終了後、余剰L−ラクチドを脱揮し、反応容器の吐出口からストランド状のポリ乳酸(A)を得、冷却しながらペレット状に裁断した。
次に、同様の操作にてポリ乳酸(D)の調製を行った。即ち、D−ラクチド100重量部およびステアリルアルコール0.15重量部を仕込み、続いて反応容器内を5回窒素置換し、D−ラクチドを190℃にて融解させた。D−ラクチドが完全に融解した時点で、原料仕込み口から2−エチルヘキサン酸スズ0.05重量部をトルエン500μLと共に添加し、190℃で1時間重合した。
重合終了後、最後に余剰D−ラクチドを脱揮し、反応容器の吐出口からストランド状の組成物を吐出し、冷却しながらペレット状に裁断した。
上記操作によって得られたポリ乳酸(A)ペレット50重量部とポリ乳酸(B)ペレット50重量部、繊維径13μm、繊維長30mmのカットファイバーをポ乳酸(A)とポリ乳酸(B)との合計量に対して30重量部とを良く混合させた後、東洋製機社製ニーダーラボプラストミル50C150を使用し、窒素ガス気流下230℃で10分間混練した。組成物の特性を表1に示す。
実施例1で得られた組成物をペレット化したのち乾燥機で120℃、4時間乾燥させた後、射出成形機で、シリンダー温度230℃、1次圧時間0.5秒、金型温度110℃、サイクル65秒で射出成形を行った。特性を表1に示す。
Claims (3)
- (A)L−乳酸単位90モル%以上とD−乳酸単位および/または乳酸以外の共重合成分単位10モル%未満とにより構成されるポリ乳酸(A)30〜70重量部、
(B)D−乳酸単位90モル%以上とL−乳酸単位および/または乳酸以外の共重合成分単位10モル%未満とにより構成されるポリ乳酸(B)70〜30重量部および、
(C)繊維径が0.2μm〜15μm、繊維長が3mm以上30mm以下のカットファイバーを、ポリ乳酸(A)とポリ乳酸(B)との合計量を100重量部として20〜100重量部含み、
下記要件(a)〜(f)を同時に満足する、ポリ乳酸組成物。
(a)重量平均分子量が7万以上70万以下であること。
(b)繊維成分を取り除いた樹脂成分中にSn原子、Ti原子、Al原子、Ca原子の少なくともいずれかひとつを3ppm以上3000ppm以下含有すること。
(c)P原子を10ppm以上5000ppm以下含有すること。
(d)(Sn、Ti、Al、Caのg原子数)/(Pのg原子数)が0.01以上5以下であること。
(e)分子量150以下の化合物の含有量が0.2重量%以下であること。
(f)COOH末端基濃度が30当量/トン以下であること。 - (A)L−乳酸単位90モル%以上とD−乳酸単位および/または乳酸以外の共重合成分単位10モル%未満とにより構成されるポリ乳酸(A)30〜70重量部、
(B)D−乳酸単位90モル%以上とL−乳酸単位および/または乳酸以外の共重合成分単位10モル%未満とにより構成されるポリ乳酸(B)70〜30重量部および、
(C)繊維径が0.2μm〜15μm、繊維長が0.1mm以上30mm以下のカットファイバーをポリ乳酸(A)とポリ乳酸(B)との合計量を100重量部として20〜100重量部含み、
下記要件(a)〜(f)を同時に満足する、耐衝撃性の改善された成形体。
(a)重量平均分子量が10万以上50万以下であること。
(b)繊維成分を取り除いた樹脂成分中にSn原子、Ti原子、Al原子、Ca原子の少なくともいずれかひとつを5ppm以上300ppm以下含有すること。
(c)P原子を20ppm以上5000ppm以下含有すること。
(d)(Sn、Ti、Al、Caのg原子数)/(Pのg原子数)が0.1以上5以下であること。
(e)分子量150以下の化合物の含有量が0.1重量%以下であること。
(f)COOH末端基濃度が30当量/トン以下である。 - ポリ乳酸単位Aとポリ乳酸単位Bとが、該成形体内で、ステレオコンプレックス結晶を形成している、請求項2記載の成形体。
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