JP5033396B2 - ポリ乳酸組成物 - Google Patents
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Description
かかる現状に鑑み、脱石油原料から成る樹脂、或いは微生物によって分解される生分解性プラスチックが盛んに研究されるようになってきた。生分解プラスチックは、脂肪族カルボン酸エステル単位を有し微生物により分解され易い。その反面、熱安定性に乏しく、溶融紡糸、射出成形、溶融製膜などの高温に晒される工程における分子量低下、或いは色相悪化が深刻である。
このような現状を打開すべく、ポリ乳酸の耐熱性向上について種々検討がなされてきた。そのひとつにステレオコンプレックスポリ乳酸が挙げられる。ステレオコンプレックスポリ乳酸とはステレオコンプレックス結晶を含むポリ乳酸であり、一般的なホモ結晶からなるポリ乳酸よりも30℃乃至50℃高い融点を示す。然しながらステレオコンプレックス結晶は常に現れるわけではなく、特に高分子量領域では寧ろホモ結晶が現れることが多い。また、ステレオコンプレックス結晶のみから成るステレオコンプレックスポリ乳酸であっても、再溶融の後、結晶化を行った場合、ホモ結晶が混在する場合がある。このような現象を改善すべく、ステレオコンプレックス結晶のみを成長させる結晶核剤について研究が行われている。
また特許文献2には、特許文献1と同様の方法で芳香族尿素系化合物を使用すると、ステレオコンプレックス結晶のみから成るステレオコンプレックスポリ乳酸が得られることが記載されている。
しかしながら、これらの方法でステレオコンプレックスポリ乳酸を製造する場合、大量の含ハロゲン系有機溶媒を使用するため、回収のためのプロセスが必要であり、環境負荷も著しくなる。また、オキサミド誘導体や芳香族尿素系化合物は含窒素化合物であり、ステレオコンプレックスポリ乳酸を溶融混練によって調製する場合、分子量低下と着色が問題となる。
X={△Hb/(△Ha+△Hb)}×100(%) (1)
[但し、式(1)中、△Haと△Hbは、それぞれ示差走査熱量計(DSC)の昇温過程において、150℃以上190℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピー(△Ha)、および190℃以上250℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピー(△Hb)である。]
三斜晶系無機核剤はメタケイ酸カルシウムであることが好ましい。三斜晶系無機核剤の平均粒径は、0.1μm以上、10μm未満であることが好ましい。
本発明は、前記ポリ乳酸組成物からなる成形体を包含する。
〈ポリ乳酸組成物〉
ポリ乳酸は、主として下記式で表される乳酸単位からなる。乳酸単位には、L−乳酸単位とD−乳酸単位がある。
本発明のポリ乳酸組成物は、ポリ乳酸の混合物100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.5〜2重量部の三斜晶系無機核剤を含有する。三斜晶系無機核剤は、ステレオコンプレックス結晶と同じ三斜晶系の結晶格子を有しているためステレオコンプレックス結晶の結晶核剤として有効であるが、斜方晶系に属するホモ結晶に対しては結晶核剤として然程機能しない。その結果、ホモ結晶の成長を遅延させ、その間にステレオコンプレックス結晶の成長を促進することが可能である。三斜晶系無機核剤として、具体的には、リン酸二水素カルシウム・一水和物、メタケイ酸カルシウム、硫酸水素ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム等を用いることができるが、分子量低下を抑制する観点から、メタケイ酸カルシウムを用いることが好ましい。
三斜晶系無機核剤の含有量が0.01重量部未満であると、ホモ結晶含有率が増加し、一方、10重量部を越えると、再凝集して結晶核剤としての効能が低下する。三斜晶系無機核剤の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上、10μm未満である。この範囲内にあるときには、ステレオコンプレックス結晶の結晶化が効率的に進行する。三斜晶系無機核剤の平均粒径は、より好ましくは0.5μm以上、10μm未満である。平均粒径の測定方法としては、アルゴンレーザーやヘリウムレーザーを使用する静的散乱法が最も実用的な測定法として例示できる。
本発明のポリ乳酸組成物は、下記式(1)で表されるステレオコンプレックス結晶含有率(X)が80%以上である。
X={△Hb/(△Ha+△Hb)}×100(%) (1)
但し、式(1)中、△Haと△Hbは、それぞれ示差走査熱量計(DSC)の昇温過程において150℃以上190℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピー(△Ha)と190℃以上250℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピー(△Hb)を示す。
ここで、Xが80%未満であると、熱変形温度(HDT)が180℃未満となり好ましくない。Xは、好ましくは80%以上、100%以下、更に好ましくは90%以上、100%以下である。
本発明のポリ乳酸組成物は、例えば、以下の方法によって得ることができる。即ち、本発明は、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸を、前者と後者との重量比が60:40〜40:60の範囲で、三斜晶系無機核剤の存在下で混合することを特徴とするステレオコンプレックス結晶を含有するポリ乳酸組成物の製造方法を包含する。
ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との重量比は、60:40〜40:60である。ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸の重量平均分子量は、各々、好ましくは5万〜50万、より好ましくは8〜20万である。
ポリ−L−乳酸とは、L−乳酸単位を主として含む重合体であり、またポリ−D−乳酸とは、D−乳酸単位を主として含む重合体である。
ポリ−L−乳酸は、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%のL−乳酸単位を含有する。他の単位としては、D−乳酸単位、乳酸以外の共重合単位が挙げられる。D−乳酸単位、乳酸以外の共重合単位は、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
ポリ−D−乳酸は、90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%のD−乳酸単位を含有する。他の単位としては、L−乳酸単位、乳酸以外の共重合単位が挙げられる。L−乳酸単位、乳酸以外の共重合単位は、0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ベンジルアルコールなどを好適に用いることができる。
本発明のポリ乳酸組成物を用いて、射出成形品、押出成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、フィルム、シート不織布、繊維、布、他の材料との複合体、農業用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品またはその他の成形体を得ることができる。成形は常法により行うことができる。
(1)重量平均分子量(Mw)の測定
重量平均分子量(Mw)はショーデックス製GPC−11を使用し、ポリ乳酸組成物50mgを5mlのクロロホルム/ヘキサフルオロ−2−プロパノール95/5(v/v)溶液に溶解させ、40℃のクロロホルムにて展開した。重量平均分子量(Mw)、はポリスチレン換算値として算出した。
(2)ステレオコンプレックス結晶含有率(X)の算出法
ステレオコンプレックス結晶含有率(X)は、示差走査熱量計(DSC)において150℃以上190℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピーΔHaと、190℃以上250℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピーΔHbから下記式(1)にて算出した。
X={ΔHa/(ΔHa+ΔHb)}×100(%) (1)
(ポリ−L−乳酸の製造)
冷却留出管を備えた重合反応容器の原料仕込み口から、窒素気流下でL−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、重合グレード)100重量部およびステアリルアルコール0.15重量部を仕込んだ。続いて反応容器内を5回窒素置換し、L−ラクチドを190℃にて融解させた。L−ラクチドが完全に融解した時点で、原料仕込み口から2−エチルヘキサン酸スズ0.05重量部をトルエン500μLと共に添加し、190℃で1時間重合した。重合終了後、ジエチルホスホノ酢酸エチル0.055重量部を触媒投入口から添加し、15分間混錬した。最後に余剰L−ラクチドを脱揮し、反応容器の吐出口からストランド状のポリ−L−乳酸を吐出し、冷却しながらペレット状に裁断した。得られたポリ−L−乳酸のMwは、14.7×104であった。
(ポリ−D−乳酸の製造)
次に、同様の操作にてポリ−D−乳酸を調製した。即ち、D−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、重合グレード)100重量部およびステアリルアルコール0.15重量部を仕込み、続いて反応容器内を5回窒素置換し、D−ラクチドを190℃にて融解させた。D−ラクチドが完全に融解した時点で、原料仕込み口から2−エチルヘキサン酸スズ0.05重量部をトルエン500μLと共に添加し、190℃で1時間重合した。重合終了後、ジエチルホスホノ酢酸エチル0.055重量部を触媒投入口から添加し、15分間混錬した。最後に余剰D−ラクチドを脱揮し、反応容器の吐出口からストランド状のポリ−D−乳酸を吐出し、冷却しながらペレット状に裁断した。得られたポリ−D−乳酸のMwは、13.2×104であった。
(ステレオコンプレックスの形成)
ポリ−L−乳酸のペレット50重量部、ポリ−D−乳酸のペレット50重量部および平均粒径2μmのメタケイ酸カルシウム1重量部を良く混合させた後、東洋製機社製ニーダーラボプラストミル50C150を使用し、窒素ガス気流下230℃で5分間混練した。得られたポリ乳酸組成物の重量平均分子量(Mw)、ステレオコンプレックス結晶含有率(X)を表1に示す。
メタケイ酸カルシウム1重量部を平均粒径2μmの過ホウ酸ナトリウム1重量部に替えた以外は実施例1と同様の方法でポリ乳酸組成物を調製した。得られたポリ乳酸組成物のMw、Xを表1に示す。
三斜晶系無機核剤を添加しない以外は実施例1と同様の方法でポリ乳酸組成物を調製した。得られたポリ乳酸組成物のMw、Xを表1に示す
メタケイ酸カルシウム1重量部を日本タルク社製タルク(SG2000)1重量部に替えた以外は実施例1と同様の方法でポリ乳酸組成物を調製した。得られたポリ乳酸組成物のMw、Xを表1に示す。
Claims (6)
- (i)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを含有し、前者と後者との重量比が60:40〜40:60である混合物100重量部および(ii)0.01〜10重量部の三斜晶系無機核剤を含有し、重量平均分子量(Mw)が12万以上であり、下記式(1)で表されるステレオコンプレックス結晶含有率(X)が80%以上であるポリ乳酸組成物。
X={△Hb/(△Ha+△Hb)}×100(%) (1)
[但し、式(1)中、△Haと△Hbは、それぞれ示差走査熱量計(DSC)の昇温過程において、150℃以上190℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピー(△Ha)、および190℃以上250℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピー(△Hb)である。] - 三斜晶系無機核剤が、メタケイ酸カルシウムである請求項1に記載のポリ乳酸組成物。
- 三斜晶系無機核剤の平均粒径が、0.1μm以上、10μm未満である請求項1または2に記載のポリ乳酸組成物。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリ乳酸組成物からなる成形体。
- ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸を、前者と後者との重量比が60:40〜40:60の範囲で、三斜晶系無機核剤の存在下で混合することを特徴とするステレオコンプレックス結晶を含有するポリ乳酸組成物の製造方法。
- ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の重量平均分子量は各々5万〜50万である請求項5に記載の製造方法。
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