JP2010059354A - ポリ乳酸組成物 - Google Patents

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雅之 平田
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秀樹 山根
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Tomoka Komazawa
友香 駒沢
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和明 十河
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Abstract

【課題】ステレオコンプレックス結晶の含有率が極めて高いポリ乳酸組成物を提供する。
【解決手段】L−乳酸単位とD−乳酸単位との質量比がL−乳酸単位/D−乳酸単位=60/40〜91/9であり、かつステレオコンプレックス結晶の含有率が80〜100%であるポリ乳酸ブロック共重合体と、ポリ−D−乳酸と、を含むポリ乳酸組成物、またはL−乳酸単位とD−乳酸単位との質量比がL−乳酸単位/D−乳酸単位=40/60〜9/91であり、かつステレオコンプレックス結晶の含有率が80〜100%であるポリ乳酸ブロック共重合体と、ポリ−L−乳酸と、を含むポリ乳酸組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ乳酸組成物に関し、さらに詳細には、高い分子量を有し、かつ、より低コストで、加熱溶融処理を繰り返しても、ステレオコンプレックス結晶のみが成長しうるポリ乳酸組成物に関する。
石油由来のプラスチックの多くは軽く強靭であり耐久性に優れ、容易かつ任意に成形することが可能であるので、量産されて我々の生活を多岐にわたって支えてきた。しかし、これらのプラスチックは、環境中に廃棄された場合、容易に分解されずに蓄積する。また、焼却の際には大量の二酸化炭素を放出し、地球温暖化に拍車を掛けている。
かかる現状に鑑み、脱石油原料からなる樹脂、または微生物によって分解される生分解性プラスチックが盛んに研究されるようになってきた。現在検討されているほとんどの生分解性プラスチックは、脂肪族カルボン酸エステル単位を有し、微生物により分解され易い。その反面、熱安定性に乏しく、溶融紡糸、射出成形、溶融製膜などの高温に晒される成形工程における分子量低下や色相悪化が深刻である。
その中でもポリ乳酸(以下、PLAとも称す)は、耐熱性に優れ、色相、機械強度のバランスが取れたプラスチックである。ポリ−L−乳酸(以下、PLLAとも称す)またはポリ−D−乳酸(以下、PDLAとも称す)のホモポリマー(以下、homoPLAまたはホモPLAとも称す)の製造方法としては、ラクチドを原料とした開環重合法や乳酸の脱水縮合による直接重合法が知られている。一般的に、前記ポリ−L−乳酸および前記ポリ−D−乳酸の融点は、170℃付近とされている。そのため、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートに代表される石油化学系ポリエステルと比較すると耐熱性が低く、例えば、製造したポリ−L−乳酸を繊維等として使用する場合、製品にアイロンが掛けられないといった課題を抱えている。そのため、より高い耐熱性が必要とされているのが現状である。
このような現状を打開すべく、ポリ乳酸の耐熱性向上について検討がなされてきた。そのひとつに、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを混合して形成してなるステレオコンプレックスポリ乳酸(以下、scPLAとも称す)が挙げられる。
しかしながら、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを1:1の質量比で混合する場合、ステレオコンプレックス結晶のみが常に現れるわけではなく、特に、高分子量領域では同時にホモPLA結晶が現れることも多い。また、加熱溶融処理によって、安定的にステレオコンプレックス結晶の含有率が100%であるscPLAを形成することは困難であり、このようにホモPLAが存在することで、高融点を有するscPLAの特徴が十分にいかされない問題があった。そこで、ホモPLAが混在せず、安定してscPLAの含有率が100%である製品を作ることが強く求められている。
そこで、前記ポリ−L−乳酸と前記ポリ−D−乳酸との混合によるscPLAの製造方法とは別に、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを等量混合し、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを反応させ共有結合させる、ポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、ポリ乳酸ブロック共重合体の分子間の、L−乳酸単位の連鎖とD−乳酸単位の連鎖との間で、優先的にscPLAが生成し、示差走査熱量測定(DSC)のチャート上にホモPLAのピークは確認されないというものである。すなわち、ホモPLAが混在せず、安定してscPLAの含有率が100%である製品を作ることができるというものである。
また、特許文献2には、芯鞘複合型の繊維であって、芯部を構成する成分が、光学純度が70〜100%eeであるポリ−L−乳酸と光学純度が70〜100%eeであるポリ−D−乳酸とをブレンドして得られるステレオコンプレックスを形成しているポリ乳酸系重合体である、熱接着性繊維が開示されている。
特開2002−356543号公報 特開2003−342836号公報
しかしながら、現在、D成分の原料であるD−ラクチドまたはD−乳酸は、供給源が限られているうえに流通量が少なく、L成分の原料であるL−ラクチドまたはL−乳酸と比較して市場価格が高い。よって、従来の技術に従って、D成分とL成分とを等量混合した場合、D成分とL成分との質量比が1:1であるステレオコンプレックスポリ乳酸の製造コストも必然的に高くなる。
また、上記の特許文献1には、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸からなるマルチブロックコポリマーの製造方法が開示されており、前記マルチブロックコポリマーはステレオコンプレックス結晶のみを含むステレオコンプレックスポリ乳酸であるとされている。しかしながら、前記マルチブロックコポリマーのブロック数を増やす度に再沈殿を実施しなくてはならず、工業生産には不向きであるという問題がある。
さらに、上記の特許文献1に記載の技術では、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とのブレンド比率が、30/70〜70/30(質量比)の範囲を外れると、立体特異的な結合であるステレオコンプレックスの形成を阻害し、得られるポリ乳酸系重合体の結晶融解開始温度を180℃以上とすることが困難であり、幅広い成形温度の範囲に対応できないという問題があった。
そこで、本発明は、低コストで得られ、かつステレオコンプレックス結晶の含有率が極めて高いポリ乳酸組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、上記の目的を達成する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明者らは、従来の技術に囚われることなく検討を進めた結果、驚くべきことに、L−乳酸単位(L成分)とD−乳酸単位(D成分)とが偏った組成比(質量比)であるポリ乳酸ブロック共重合体とポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸とを混合し得られる組成物が、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸とを等量混合した際に得られるsbPLAと同等の耐熱性を有することを見出した。そして、前記のL−乳酸単位(L成分)とD−乳酸単位(D成分)とが偏った組成比(質量比)であるポリ乳酸ブロック共重合体を使用することにより、D−ラクチドの使用量を抑制でき、ステレオコンプレックスポリ乳酸の製造コストを低減させるという、解決不可能と思われていた課題の解決にも繋がりうることを見出した。
すなわち、本発明は、L−乳酸単位とD−乳酸単位との質量比がL−乳酸単位/D−乳酸単位=60/40〜91/9であり、かつ、ステレオコンプレックス結晶の含有率が80〜100%であるポリ乳酸ブロック共重合体と、ポリ−D−乳酸と、を含むことを特徴とする、ポリ乳酸組成物である。
また、本発明は、L−乳酸単位とD−乳酸単位との質量比がL−乳酸単位/D−乳酸単位=40/60〜9/91であり、かつステレオコンプレックス結晶の含有率が80〜100%であるポリ乳酸ブロック共重合体と、ポリ−L−乳酸と、を含むことを特徴とする、ポリ乳酸組成物である。
さらに、本発明は、上記ポリ乳酸組成物の製造方法である。
さらに、本発明は、上記ポリ乳酸組成物または上記ポリ乳酸組成物の製造方法によって得られたポリ乳酸組成物を含む成形品である。
本発明のポリ乳酸組成物によれば、使用するL成分(ポリ−L−乳酸またはL−ラクチド)とD成分(ポリ−D−乳酸またはD−ラクチド)との組成(質量比)が大幅に偏っていても、ステレオコンプレックス結晶の含有率が極めて高い、ポリ乳酸組成物が得られうる。そのため、製造段階でL成分とD成分との製造コストおよび/または価格差がある場合に、安価なほうをより多く用いることにより、従来のステレオコンプレックスポリ乳酸と同等の特性を有し、極めて低コストで安価で、かつ高機能および高付加価値を有する製品を製造し提供することができる。
また、本発明の製造方法によれば、溶融と結晶化とを繰り返してもステレオコンプレックス結晶のみが成長しうる、ポリ乳酸組成物を製造することができる。
さらに、本発明の組成物に含まれるポリ乳酸ブロック共重合体の結晶融点を高温領域に制御できることから、得られるポリ乳酸組成物は耐熱性に優れうる。したがって、本発明のポリ乳酸組成物を溶融成形して、糸、フィルム、または各種の成形品にすることができる。特に、本発明のポリ乳酸組成物を、ポリ乳酸の用途としては従来不適であった繊維として使用した場合、例えば160℃、さらにはより高温(180℃程度)でのアイロン掛けを行っても、繊維生地を痛めることがないため、あらゆる繊維製品に幅広く適用できる。また、本発明のポリ乳酸組成物は、生分解性を有することから、廃棄後も環境への影響がない地球環境にやさしい製品を提供することができる。
以下、本発明のポリ乳酸組成物に含まれるポリ乳酸ブロック共重合体、ならびにポリ−D−乳酸およびポリ−L−乳酸を詳細に説明する。
<ポリ乳酸ブロック共重合体>
本発明のポリ乳酸組成物に含まれるポリ乳酸ブロック共重合体は、D−乳酸単位とL−乳酸単位との質量比が、L成分/D成分=60/40〜91/9であるか、またはL成分/D成分=40/60〜9/91である。前記ポリ乳酸ブロック共重合体は、(i)ポリ−L−乳酸(L成分)の存在下でD−ラクチド(D成分)の開環重合を行うか、または(ii)ポリ−D−乳酸(D成分)の存在下でL−ラクチド(L成分)の開環重合を行うことにより製造することができる。以下、前記ポリ乳酸ブロック共重合体について、さらに詳しく説明する。
((i)のポリ−L−乳酸(PLLA)または(ii)のポリ−D−乳酸(PDLA))
上記(i)のポリ−L−乳酸(PLLA)または上記(ii)のポリ−D−乳酸(PDLA)は、下記化学式(1)で表されるL−乳酸単位またはD−乳酸単位から実質的に構成される。
前記PLLAは、PLLA中のすべての構成単位を100モル%として、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは92〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%のL−乳酸単位から構成される。前記PLLA中のL−乳酸単位が90モル%未満であると、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の融点が高くなりにくい場合がある。
前記PLLAは、L−乳酸単位以外の構成単位を含んでいてもよい。L−乳酸単位以外の構成単位の含有量は、PLLA中のすべての構成単位を100モル%として、好ましくは10〜0モル%、より好ましくは8〜0モル%、さらに好ましくは5〜0モル%である。PLLA中に含まれうるL−乳酸単位以外の構成単位の例としては、D−乳酸単位、乳酸以外の化合物由来の構成単位などが挙げられる。
前記PDLAは、PDLA中のすべての構成単位を100モル%として、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは92〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%のD−乳酸単位から構成される。前記PDLA中のD−乳酸単位が90モル%未満であると、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の融点が高くなりにくい場合がある。
前記PDLAは、D−乳酸単位以外の構成単位を含んでいてもよい。D−乳酸単位以外の構成単位の含有量は、PDLA中のすべての構成単位を100モル%として、好ましくは10〜0モル%、より好ましくは8〜0モル%、さらに好ましくは5〜0モル%である。PDLA中に含まれうるD−乳酸単位以外の構成単位の例としては、L−乳酸単位、乳酸以外の化合物由来の構成単位などが挙げられる。
前記PLLA中または前記PDLA中に含まれうる乳酸以外の化合物由来の構成単位の例としては、例えば、ジカルボン酸由来の単位、多価アルコール由来の単位、ヒドロキシカルボン酸由来の単位、もしくはラクトン由来の単位、またはこれらの構成単位から得られるポリエステル由来の単位、ポリエーテル由来の単位、もしくはポリカーボネート由来の単位などが好ましく挙げられる。ただし、これらに制限されるものではない。
前記ジカルボン酸の例としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、またはイソフタル酸などが好ましく挙げられる。前記多価アルコールの例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、もしくはポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール、またはビスフェノールにエチレンオキシドを付加させた芳香族多価アルコールなどが好ましく挙げられる。前記ヒドロキシカルボン酸の例として、例えば、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸などが好ましく挙げられる。前記ラクトンの例としては、例えば、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、またはδ−バレロラクトンなどが好ましく挙げられる。
より高い融点を有する重合体を得るという観点から、前記PLLA中のL−乳酸単位とD−乳酸単位との質量比は、L−乳酸単位/D−乳酸単位=95/5〜100/0の範囲であることが好ましく、前記PDLA中のD−乳酸単位とL−乳酸単位との質量比は、D−乳酸単位/L−乳酸単位=95/5〜100/0の範囲であることが好ましい。
前記PLLAまたは前記PDLAの重量平均分子量は、好ましくは0.7万〜45万、より好ましくは0.7万〜20万である。前記PLLAおよび前記PDLAの重量平均分子量が前記範囲から外れると、ポリ乳酸ブロック共重合体中のステレオコンプレックス結晶の含有率が、80%以上になり難い場合がある。なお、本発明において、前記重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲル浸透クロマトグラフィ)法により測定したポリスチレン換算の値を採用するものとする。
前記PLLAまたは前記PDLAを得る方法は、特に制限されず、例えば、L−乳酸またはD−乳酸を脱水縮合する方法、L−ラクチドまたはD−ラクチドを開環重合する方法などが挙げられるが、高分子量体を得やすく、分子量の制御も容易であることから、L−ラクチドまたはD−ラクチドを開環重合する方法が好ましい。
前記PDLAまたは前記PLLAを得るために用いられるL−ラクチドまたはD−ラクチドの純度は、特に制限されないが、高い分子量を有するポリマーを得るという観点から、前記L−ラクチド中または前記D−ラクチド中に含まれる遊離酸が、前記L−ラクチドまたは前記D−ラクチド100質量%に対して、10質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.15質量%以下であることがさらに好ましく、0.05質量%以下であることが特に好ましい。前記L−ラクチド中または前記D−ラクチド中の遊離酸が、10質量%を超えると、開環重合反応が進行しない場合がある。前記L−ラクチドまたは前記D−ラクチドを精製する方法は特に制限されず、例えば、晶析もしくは蒸留など従来公知の方法、特開2004−149418号公報に記載の方法、または特開2004−149419号公報に記載の方法などを、適宜選択して採用することができる。
前記開環重合は、有機溶媒と重合触媒との存在下で行われうる。前記重合触媒は、重合反応を進行させるものであれば、特に制限されず、例えば、第2族元素、希土類金属、第4周期の遷移金属、アルミニウム、ゲルマニウム、スズおよびアンチモンからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含む化合物などが好ましく挙げられる。前記第2族元素の例としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムなどが挙げられる。前記希土類元素の例としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウムなどが挙げられる。前記第4周期の遷移金属の例としては、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、チタンなどが挙げられる。
上記のような金属元素を含む重合触媒の例としては、上記で例示した金属のカルボン酸塩、上記で例示した金属のアルコキシド、上記で例示した金属のアリールオキシド、または上記で例示した金属のβ−ジケトンのエノラートなどが好ましく挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。重合活性や色相を考慮した場合、前記金属元素を含む重合触媒は、2−エチルへキサン酸スズ、チタンテトライソプロポキシド、およびアルミニウムトリイソプロポキシドからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
前記金属元素を含む重合触媒の使用量は、前記L−ラクチドまたは前記D−ラクチド100質量部に対して、好ましくは0.001〜0.5質量部、より好ましくは0.001〜0.1質量部、さらに好ましくは0.003〜0.01質量部である。前記金属元素を含む重合触媒の使用量が、前記L−ラクチドまたは前記D−ラクチド100質量部に対して0.001質量部未満の場合には、反応の進行が遅く、L成分(ポリ−L−乳酸またはL−ラクチド)とD成分(ポリ−D−乳酸またはD−ラクチド)との組成比(質量比)が大幅に偏って製造される、本発明で用いられるポリ乳酸ブロック共重合体の製造コストを低減する効果が得られない場合がある。一方、前記金属元素を含む重合触媒の使用量が、前記L−ラクチドまたは前記D−ラクチド100質量部に対して0.5質量部を超える場合には、反応の制御が困難になり、ラセミ化や分散度の増加が起こる場合があり、得られる重合体の着色が顕著になる虞があり、得られる重合体の用途が制限される虞がある。
前記金属元素を含む重合触媒の存在下で開環重合を行う場合には、重合開始剤を用いてもよい。前記重合開始剤の例としては、アルコール化合物などが挙げられる。前記アルコール化合物は、ポリ乳酸の重合を阻害せず、かつ、不揮発性であることが好ましい。具体的な例としては、例えば、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、またはラウリルアルコールなどが挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
前記重合開始剤の使用量は、前記L−ラクチドまたは前記D−ラクチド100質量部に対して、好ましくは0〜20質量部、より好ましくは0.1〜15質量部である。前記重合開始剤の使用量が前記L−ラクチドまたは前記D−ラクチド100質量部に対して20質量部を超える場合には、目的とする分子量のポリマーを得ることが困難となる場合がある。
前記金属元素を含む重合触媒の存在下での前記L−ラクチドまたは前記D−ラクチドの開環重合の雰囲気は、特に制限されるものではないが、生成物の着色を抑制する等の理由から、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
前記金属元素を含む重合触媒の存在下での前記L−ラクチドまたは前記D−ラクチドの開環重合の反応時間は、好ましくは15分〜5時間、より好ましくは30分〜2時間である。前記反応時間が15分未満の場合には、反応が不十分で目的とするポリマーを得ることができない場合があり、5時間を超える場合には得られるポリマーの着色または分散度の増加などが起こる場合がある。
前記金属元素を含む重合触媒の存在下での前記L−ラクチドまたは前記D−ラクチドの開環重合の反応温度は、好ましくは100℃〜250℃、より好ましくは150℃〜230℃、さらに好ましくは170℃〜230℃である。反応温度が100℃未満の場合には、反応の進行が遅く、得られるポリマー中のL成分(ポリ−L−乳酸またはL−ラクチド)とD成分(ポリ−D−乳酸またはD−ラクチド)の組成比(質量比)が大幅に偏って製造される、本発明で用いられるポリ乳酸ブロック共重合体の製造コストを低減する効果が得られない場合がある。反応温度が250℃を超える場合には、反応の制御が困難になり、ラセミ化や分散度の増加が起こる虞があり、また、得られるポリマーの着色が顕著になる虞があり、得られるポリマーの用途が制限される虞がある。
前記金属元素を含む重合触媒の存在下での前記L−ラクチドまたは前記D−ラクチドの開環重合の反応圧力は、溶液中で開環重合を進行させることができる範囲内であれば、特に制限されるものではなく、大気圧下、減圧下、および加圧下のいずれで行ってもよい。耐圧製の製造装置が不要であり製造コストの低減に寄与できるなどの観点から、大気圧下で行うことが好ましい。
前記金属元素を含む重合触媒の存在下での前記L−ラクチドまたは前記D−ラクチドの開環重合は、従来公知の製造装置、例えばヘリカルリボン翼などの高粘度用撹拌翼を備えた縦型反応容器などを用いて行うことができる。
前記PLLAは、L−ラクチドを開環重合した後、余剰のラクチドを除去したものであることが好ましい。同様に前記PDLAは、D−ラクチドを開環重合した後、余剰のラクチドを除去したものであることが好ましい。前記PLLAまたは前記PDLAから余剰のラクチドを除去することによって、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の融点を高くすることができるため好ましい。
余剰のラクチドの除去方法は、特に制限されず、例えば、反応系内の減圧、有機溶剤による洗浄(精製)などの操作により行うことができるが、操作の簡易性から、反応系内を減圧することにより行うことが好ましい。
かかる減圧条件としては、特に制限されるものではないが、重合反応終了後の系内の温度を、好ましくは130〜250℃、より好ましくは150〜230℃の範囲とし、系内の圧力は70kPa以下とすることが好ましい。温度が130℃未満の場合には、系内の粘度の増加または系内が固化することにより、装置の運転が困難になる場合がある。一方、250℃を超える場合には、ラクチドの解重合反応が進行し、得られるPLLAまたはPDLAの分散度が増加する場合がある。また、系内圧力が70kPaを超える場合には、ラクチドの除去が不十分となる場合がある。
減圧時の雰囲気は、特に制限されるものではないが、残留ラクチドの分解やポリマーの着色を抑制するという観点から、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
また、前記PLLA中または前記PDLA中のラクチドの残留量が多いと、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の融点が低下する場合があることから、前記のような余剰のラクチドの除去処理の有無にかかわらず、前記PLLAまたは前記PDLAは、L−ラクチドまたはD−ラクチドの含有量が少ない方が好ましい。すなわち、ポリ−L−乳酸の存在下でD−ラクチドの開環重合を行う前の、前記ポリ−L−乳酸中のL−ラクチドの含有量は、前記ポリ−L−乳酸の質量に対して0〜5質量%であることが好ましく、0〜1質量%であることがより好ましく、0〜0.5%質量であることがさらに好ましく、0〜0.1質量%であることが特に好ましい。また、ポリ−D−乳酸の存在下でL−ラクチドの開環重合を行う前の、前記ポリ−D−乳酸中のD−ラクチドの含有量は、前記ポリ−D−乳酸の質量に対して0〜5質量%であることが好ましく、0〜1質量%であることがより好ましく、0〜0.5%質量であることがさらに好ましく、0〜0.1質量%であることが特に好ましい。前記ポリ−L−乳酸中のL−ラクチドの含有量または前記ポリ−D−乳酸中のD−ラクチドの含有量が5質量%を超えると、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の融点が低下する場合がある。
(D−ラクチドまたはL−ラクチドの開環重合)
前記ポリ−L−乳酸または前記ポリ−D−乳酸を得た後、(i)前記ポリ−L−乳酸の存在下でD−ラクチドの開環重合を行うか、または(ii)前記ポリ−D−乳酸の存在下でL−ラクチドの開環重合を行う。ここでは、前記ポリ−L−乳酸または前記ポリ−D−乳酸を得た後の、D−ラクチドまたはL−ラクチドの開環重合について説明する。
前記D−ラクチドの純度は、D−ラクチドの総モル数を100モル%として、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは92〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%である。D−ラクチド以外の成分の含有量は、好ましくは10〜0モル%、より好ましくは8〜0モル%、さらに好ましくは5〜0モル%である。前記D−ラクチドの純度が90モル%未満であると、ポリ乳酸ブロック共重合体中のステレオコンプレックス結晶の含有率が、80%以上になり難い場合がある。前記D−ラクチド中に含まれうる他の成分の例としては、L−ラクチド、L−乳酸、ジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、またはラクトンなどが挙げられる。前記ジカルボン酸、前記多価アルコール、前記ヒドロキシカルボン酸、または前記ラクトンの具体例は前述の通りであるので、ここでは説明を省略する。
前記L−ラクチドの純度は、L−ラクチドの総モル数を100モル%として、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは92〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%である。L−ラクチド以外の成分の含有量は、好ましくは10〜0モル%、より好ましくは8〜0モル%、さらに好ましくは5〜0モル%である。前記L−ラクチドの純度が90モル%未満であると、ポリ乳酸ブロック共重合体中のステレオコンプレックス結晶の含有率が、80%以上になり難い場合がある。前記L−ラクチド中に含まれうる他の成分の例としては、D−ラクチド、D−乳酸、ジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、またはラクトンなどが挙げられる。前記ジカルボン酸、前記多価アルコール、前記ヒドロキシカルボン酸、または前記ラクトンの具体例は前述の通りであるので、ここでは説明を省略する。
前記D−ラクチド中または前記L−ラクチド中の遊離酸の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.15質量%以下であることがさらに好ましく、0.05質量%以下であることが特に好ましい。遊離酸の含有量が10質量%を超えると、最終的に得られるポリマーが高分子量になりにくく、得られるポリマーの用途が制限される場合がある。
前記D−ラクチドまたは前記L−ラクチドの光学純度は、より高い融点を有する共重合体を得るという観点から、90〜100%eeが好ましく、95〜100%eeがより好ましく、98〜100%eeがさらに好ましい。前記光学純度が90%ee未満の場合、得られる重合体の融点および結晶融解エンタルピーの低下に繋がる場合がある。なお、本発明において、前記光学純度は、後述の実施例に記載の方法により測定した値を採用するものとする。
前記D−ラクチドの開環重合または前記L−ラクチドの開環重合は、前記の「上記(i)のポリ−L−乳酸(PLLA)または上記(ii)のポリ−D−乳酸(PDLA)」の項で説明した方法と同様の方法で行うことができる。すなわち、開環重合させる原料ラクチドの種類や純度、重合触媒や重合開始剤などの各種添加剤の種類や使用量、反応条件(温度、時間、圧力、雰囲気など)、反応装置、重合後の余剰のラクチドの除去などは、前述の「(i)のポリ−L−乳酸(PLLA)または(ii)のポリ−D−乳酸(PDLA)」の項で説明した通りであるので、ここでは説明を省略する。
なお、前記の反応条件のうちの反応温度に関しては、前述のポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸の製造時と同様の条件が採用されうるが、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の融点や、前記ポリ−L−乳酸または前記ポリ−D−乳酸中のラクチドの残存量により、溶融重合、固相重合、またはこれらの併用による重合方法を適宜選択して行うことが好ましい。また、PLLAまたはPDLAを製造した後の本開環重合においては、重合触媒のさらなる添加を行ってもよいし、行わなくてもよい。
前記ポリ−L−乳酸または前記ポリ−D−乳酸を得た後の、D−ラクチドまたはL−ラクチドの開環重合におけるD−ラクチドまたはL−ラクチドの添加量は、後述する最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体中の、L−乳酸単位とD−乳酸単位との質量比(L−乳酸単位/D−乳酸単位)、またはD−乳酸単位とL−乳酸単位との質量比(D−乳酸単位/L−乳酸単位)が、後述の範囲内になるように決定すればよい。よって、ポリ−L−乳酸(L成分)の存在下でD−ラクチド(D成分)の開環重合を行う場合、L成分とD成分との質量比は、L成分/D成分=60/40〜91/9であるかまたはL成分/D成分=40/60〜9/91であることが好ましく、L成分/D成分=40/60〜9/91であることがより好ましい。最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の結晶融解エンタルピーを増大させ、耐熱性を高めるという観点から、前記L成分と前記D成分との質量比は、L成分/D成分=29/71〜9/91であるかまたはL成分/D成分=71/29〜91/9であることが好ましく、より高い分子量を有するポリマーを得るという観点から、L成分/D成分=29/71〜9/91であることがより好ましい。D成分とL成分との質量比がL成分/D成分<9/91であるかまたは91/9<L成分/D成分である場合、ステレオコンプレックス結晶の含有率が80%以上であるポリ乳酸ブロック共重合体を製造することが困難となる場合があり、より高い融点を有するポリ乳酸ブロック共重合体を製造することが困難となる場合がある。また、D成分とL成分との質量比が、40/60<D成分/L成分<60/40である場合、D成分(ポリ−D−乳酸またはD−ラクチド)とL成分(ポリ−L−乳酸またはL−ラクチド)との組成が偏りにくくなるため、D成分とL成分との価格差が大きくなる場合に、低コストで高付加価値の製品を安定的に製造することが困難となる場合がある。
また、ポリ−D−乳酸(D成分)の存在下でL−ラクチド(L成分)の開環重合を行う場合、D成分とL成分との質量比は、L成分/D成分=40/60〜9/91であるかまたはL成分/D成分=60/40〜91/9であることが好ましく、L成分/D成分=60/40〜91/9であることがより好ましい。最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の結晶融解エンタルピーを増大させ、耐熱性を高めるという観点から、前記L成分と前記D成分との質量比は、L成分/D成分=29/71〜9/91であるかまたはL成分/D成分=71/29〜91/9であることが好ましく、より高い分子量を有するポリマーを得るという観点から、L成分/D成分=71/29〜91/9であることがより好ましい。L成分とD成分との質量比が91/9<L成分/D成分であるかまたはL成分/D成分<9/91である場合、ステレオコンプレックス結晶の含有率が80%以上であるポリ乳酸ブロック共重合体を製造することが困難となる場合があり、より高い融点を有するポリ乳酸ブロック共重合体を製造することが困難となる場合がある。また、D成分とL成分との質量比が、40/60<L成分/D成分<60/40である場合、L成分(ポリ−L−乳酸またはL−ラクチド)とD成分(ポリ−D−乳酸またはD−ラクチド)との組成が偏りにくくなるため、L成分とD成分との価格差が大きくなる場合に、低コストで高付加価値の製品を安定的に製造することが困難となる場合がある。
重合反応の雰囲気は、得られるポリマーの着色を抑制するという観点から、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
以上のような方法を採用することによって、高い分子量を有し、かつ、溶融と結晶化とを繰り返してもステレオコンプレックス結晶のみが成長するポリ乳酸ブロック共重合体を得ることができる。
上述した本発明で用いられるポリ乳酸ブロック共重合体は、重量平均分子量が好ましくは8万〜50万であり、より好ましくは10万〜40万であり、さらに好ましくは10万〜30万である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、機械強度および成形加工性に優れるポリ乳酸ブロック共重合体を得ることができる。
本発明で用いられるポリ乳酸ブロック共重合体は、示差走査熱量測定(DSC)において、30〜250℃の昇温過程と250〜30℃の冷却過程とからなるプログラムを3回繰り返して、昇温過程で観測されるステレオコンプレックス結晶の融点が好ましくは190〜250℃、より好ましくは195〜250℃、さらに好ましくは200〜250℃である。
また、本発明で用いられるポリ乳酸ブロック共重合体のステレオコンプレックス結晶の含有率は80〜100%であり、好ましくは90〜100%、より好ましくは95〜100%である。さらに、本発明で用いられるポリ乳酸ブロック共重合体の、190〜250℃に現れるステレオコンプレックス結晶の融解エンタルピー(ΔHms)は、好ましくは10J/g以上、より好ましくは20J/g以上、さらに好ましくは30J/g以上である。前記のようなプログラムを3回繰り返して、ステレオコンプレックス結晶の結晶融点が前記の範囲内にあれば、溶融と結晶化とを繰り返しても、ステレオコンプレックス結晶のみが成長することを意味する。上記の溶融と結晶化とのプログラムを3回繰り返す過程で、昇温過程で観測される結晶融点が190℃未満の場合には、ステレオコンプレックスを形成するポリ乳酸ブロック共重合体としての性能が低下する場合がある。一方、250℃を越えると、成形加工時において、ポリ乳酸ブロック共重合体の熱分解により分子量が低下し、本発明のポリ乳酸組成物の機械特性等を損なう場合がある。なお、本発明において、前記のステレオコンプレックス結晶の含有率および融解エンタルピー(ΔHms)は、後述の実施例に記載した方法により算出した値を採用するものとする。
本発明のポリ乳酸組成物が優れた耐熱性を示すためには、前記ポリ乳酸ブロック共重合体のステレオコンプレックス結晶の含有率、前記ポリ乳酸ブロック共重合体のステレオコンプレックス結晶の融点、および前記ステレオコンプレックス結晶の融解エンタルピーが上記の数値範囲にあることが好ましい。
本発明で用いられるポリ乳酸ブロック共重合体中のL−乳酸単位とD−乳酸単位との質量比は、L−乳酸単位/D−乳酸単位=60/40〜91/9であるかまたはL−乳酸単位/D−乳酸単位=40/60〜9/91である。好ましくは、L−乳酸単位/D−乳酸単位=71/29〜91/9であるかまたはL−乳酸単位/D−乳酸単位=29/71〜9/91である。より好ましくは、L−乳酸単位/D−乳酸単位=71/29〜85/15であるかまたはL−乳酸単位/D−乳酸単位=29/71〜15/85である。前記L−乳酸単位と前記D−乳酸単位との質量比が、91/9<L−乳酸単位/D−乳酸単位であるかまたはL−乳酸単位/D−乳酸単位<9/91である場合、得られるポリ乳酸ブロック共重合体中のステレオコンプレックス結晶の含有率が大幅に低下する場合がある。一方、40/60<L−乳酸単位/D−乳酸単位<60/40である場合、L成分(ポリ−L−乳酸またはL−ラクチド)とD成分(ポリ−D−乳酸またはD−ラクチド)との組成が偏りにくくなるため、L成分とD成分との価格差が大きくなる場合に、低コストで高付加価値の製品を安定的に製造することが困難となる場合がある。
<ポリ−D−乳酸またはポリ−L−乳酸>
本発明のポリ乳酸組成物は、上記ポリ乳酸ブロック共重合体の他に、ポリ−D−乳酸またはポリ−L−乳酸を含む。
前記ポリ−D−乳酸または前記ポリ−L−乳酸中の構成単位、製造方法等については、上記の「(i)のポリ−L−乳酸(PLLA)または(ii)のポリ−D−乳酸(PDLA)」の項で説明した内容と同様であるので、ここでは説明を省略する。
L−乳酸単位とD−乳酸単位との質量比がL−乳酸単位/D−乳酸単位=60/40〜91/9であり、かつステレオコンプレックス結晶の含有率が80〜100%であるポリ乳酸ブロック共重合体と、ポリ−D−乳酸と、を含む本発明のポリ乳酸組成物中の前記ポリ−D−乳酸の含有量は、前記ポリ乳酸ブロック共重合体100質量部に対して10〜140質量部であることが好ましく、20〜120質量部であることがより好ましい。
また、L−乳酸単位とD−乳酸単位との質量比がL−乳酸単位/D−乳酸単位=40/60〜9/91であり、かつステレオコンプレックス結晶の含有率が80〜100%であるポリ乳酸ブロック共重合体と、ポリ−L−乳酸と、を含む本発明のポリ乳酸組成物中の前記ポリ−L−乳酸の含有量は、前記ポリ乳酸ブロック共重合体100質量部に対して10〜140質量部であることが好ましく、20〜120質量部であることがより好ましい。
本発明のポリ乳酸組成物は、ポリ乳酸ブロック共重合体と、およびポリ−D−乳酸またはポリ−L−乳酸とを、溶融混合または溶液混合することによって製造することができる。すなわち、本発明は、ポリ−D−乳酸(D−乳酸単位)の存在下でL−ラクチド(L−乳酸単位)の開環重合を行って得られるポリ乳酸ブロック共重合体であって、前記D−乳酸単位と前記L−乳酸単位との質量比が、L−乳酸単位/D−乳酸単位=60/40〜91/9であるポリ乳酸ブロック共重合体と、D−ラクチドの開環重合を行って得られるポリ−D−乳酸と、を溶融混合または溶液混合する段階を含むことを特徴とする、ポリ乳酸組成物の製造方法を提供する。
また、本発明は、ポリ−L−乳酸(L−乳酸単位)の存在下でD−ラクチド(D−乳酸単位)の開環重合を行って得られるポリ乳酸ブロック共重合体であって、前記L−乳酸単位と前記D−乳酸単位との質量比が、L−乳酸単位/D−乳酸単位=40/60〜9/91であるポリ乳酸ブロック共重合体と、L−ラクチドの開環重合を行って得られるポリ−L−乳酸と、を溶融混合または溶液混合する段階を含むことを特徴とする、ポリ乳酸組成物の製造方法を提供する。
以下、前記溶融混合および前記溶液混合について説明する。
<溶融混合>
前記溶融混合は、ポリ乳酸ブロック共重合体と、ポリ−D−乳酸またはポリ−L−乳酸とを溶融状態で混合する方法である。
溶融温度は、ポリ乳酸ブロック共重合体と、ポリ−D−乳酸またはポリ−L−乳酸とが溶融する温度であればよいが、溶融混合中の分解反応を抑えるために、溶融混合物が固まらない程度にできるだけ低くすることが好ましい。したがって、ポリ乳酸ブロック共重合体と、ポリ−D−乳酸またはポリ−L−乳酸との、溶融点のいずれか高い方を下限の温度とし、その下限温度から好ましくは10〜50℃、より好ましくは10〜30℃、特に好ましくは10〜20℃高い温度を上限とする範囲で溶融することが好ましい。さらに具体的には、150℃〜220℃で溶融混合することが好ましい。
溶融混合時の雰囲気は特に限定されるものではなく、常圧および減圧のいずれの条件下でも行なうことができる。常圧の場合には、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスの流通下で行うことが好ましい。また、溶融の際に分解生成するモノマーを取り除くために、減圧下で行うことが好ましい。
溶融混合の際の装置等へのポリ乳酸ブロック共重合体およびポリ−D−乳酸またはポリ−L−乳酸の投入順序は、特に制限されない。例えば、ポリ乳酸ブロック共重合体およびポリ−D−乳酸またはポリ−L−乳酸を同時に混合装置に投入してもよく、ポリ乳酸ブロック共重合体を溶融した後に、ポリ−D−乳酸またはポリ−L−乳酸を投入および混合してもよい。この際、各成分は、粉末状、顆粒状、またはペレット状などいずれの形状であってもよい。溶融混合に用いることができる装置の例としては、例えば、ミルロール、ミキサー、単軸もしくは二軸押出機、または加熱可能なバッチ式容器などが挙げられる。
溶融混合時の混合時間は、好ましくは1〜60分、より好ましくは1〜10分である。
<溶液混合>
前記溶液混合は、ポリ乳酸ブロック共重合体と、ポリ−D−乳酸またはポリ−L−乳酸とを、溶媒に溶かして混合し、その後、溶媒を除去する方法である。
この際、用いられる溶媒は、ポリ乳酸ブロック共重合体と、ポリ−D−乳酸またはポリ−L−乳酸とが溶解するものであれば、特に限定されるものではない。具体的な例としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、フェノール、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ブチロラクトン、トリオキサン、またはヘキサフルオロイソプロパノールなどが挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
溶液中のポリ乳酸ブロック共重合体およびポリ−D−乳酸またはポリ−L−乳酸の含有量は、溶媒100質量部に対し、ポリ乳酸ブロック共重合体およびポリ−D−乳酸(またはポリ−L−乳酸)のいずれか一方または両方が、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは1〜10質量部の範囲になるようにする。
混合は、ポリ乳酸ブロック共重合体およびポリ−D−乳酸またはポリ−L−乳酸をそれぞれ溶媒に溶解しそれらを混合することにより行ってもよいし、ポリ乳酸ブロック共重合体およびポリ−D−乳酸(またはポリ−L−乳酸)のいずれか一方を溶媒に溶解した後、他方を加えて混合してもよい。溶液に用いた溶媒の除去は、加熱、減圧留去、抽出、またはこれらの組み合わせにより行なうことができる。
溶液混合時の混合温度は、好ましくは10〜110℃、より好ましくは10〜30℃である。また、混合時間は、好ましくは1〜60分、より好ましくは1〜10分である。
また、前記ポリ乳酸ブロック共重合体、前記ポリ−D−乳酸、および前記ポリ−L−乳酸は、各種の末端封止が施されたものを用いてもよい。前記ポリ乳酸ブロック共重合体、前記ポリ−D−乳酸、および前記ポリ−L−乳酸に含まれるカルボキシ基やヒドロキシ基などの反応性末端と末端封止剤とを反応させて末端封止を行うことにより、耐加水分解性や溶融安定性を向上させることができる。末端封止基の例としては、アセチル基、エステル基、エーテル基、アミド基、またはウレタン基などが挙げられる。前記末端封止剤の例としては、例えば、脂肪族アルコール、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、またはエポキシ化合物などが挙げられる。
上記の溶融混合または溶液混合によって得られるポリ乳酸組成物の、ステレオコンプレックス結晶の含有率は、好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%、さらに好ましくは95〜100%である。また、本発明のポリ乳酸組成物の、190〜250℃に現れるステレオコンプレックス結晶の融解エンタルピー(ΔHms)は、好ましくは15J/g以上、より好ましくは25J/g以上、さらに好ましくは35J/g以上である。
本発明のポリ乳酸組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、通常の添加剤、例えば、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、離形剤、各種フィラー、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、抗菌・抗カビ剤、核形成剤、染料、顔料を含む着色剤などを所望に応じて添加することができる。
本発明のポリ乳酸組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、発泡成形、圧空成形、または真空成形など、従来公知の方法により成形されうる。すなわち、本発明は、上記ポリ乳酸組成物を含む成形品である。前記のような成形方法で得られる成形品の例としては、例えば、フィルム、シート、繊維、布、不織布、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、または電気・電子用部品などが挙げられる。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する、なお、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、製造例、実施例および比較例における特性値等の測定は以下の方法で行なった。
(1)重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値を測定した。測定条件は下記表1の通りである。
(2)熱的特性
示差走査熱量測定計(株式会社パーキンエルマージャパン製、DiamondDSC)を用いた。試料3.5〜4.5mgをアルミニウムパンに入れ、下記表2に記載の方法で、20〜30ml/minの窒素気流中で、ガラス転移点(T)、結晶化温度(T)、単独結晶融点(Tmh)、ステレオコンプレックス結晶融点(Tms)、単独結晶融解エンタルピー(ΔHmh)、およびステレオコンプレックス結晶融解エンタルピー(ΔHms)の測定を行った。
(製造例1:ポリ−D−乳酸の製造)
攪拌装置を備えた反応器中にD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、重合グレード、光学純度100%ee)100質量部、重合開始剤としてラウリルアルコール0.25質量部を仕込み、窒素置換を3回行った。190℃にて溶融し、重合触媒として2−エチルヘキサン酸スズ 0.01質量部を添加して3時間撹拌しながらD−ラクチドの開環重合を行った。
開環重合反応終了後、溶融状態のまま反応器から取り出し、冷却してプレート状にした。次にプレート状にした反応物を粉砕し、攪拌装置を備えた反応器内に入れ、120℃、1.33kPaで減圧処理し、余剰のD−ラクチドを除去してポリ−D−乳酸を得た。得られたポリ−D−乳酸のMwは167,000であり、L−乳酸単位とD−乳酸単位との質量比は0:100であった。
(製造例2:ポリ乳酸ブロック共重合体28の製造)
攪拌装置を備えた反応器中にD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、重合グレード、光学純度100%ee)100質量部、重合開始剤としてラウリルアルコール1質量部を仕込み、窒素置換を3回行った。190℃にて溶融し、重合触媒として2−エチルヘキサン酸スズ 0.01質量部を添加して3時間撹拌しながらD−ラクチドの開環重合を行った。
開環重合反応終了後、溶融状態のまま反応器から取り出し、冷却してプレート状にした。次にプレート状にした反応物を粉砕し、攪拌装置を備えた反応器内に入れ、120℃、1.33kPaで減圧処理し、余剰のD−ラクチドを除去してポリ−D−乳酸を得た。
攪拌装置を備えた反応器中に、上記で得られたポリ−D−乳酸(D成分)100質量部と、L−ラクチド(L成分)400質量部とを仕込み(すなわち、D成分とL成分との仕込み質量比が20:80)、窒素置換を3回行った。次に、重合触媒である2−エチルへキサン酸スズを0.04質量部添加し、190℃で3時間、L−ラクチドの開環重合を行い、D−乳酸単位:L−乳酸単位=20:80(質量比)であるポリ乳酸ブロック共重合体を得た。得られたポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量は194,000であった。
(製造例3:ポリ乳酸ブロック共重合体82の製造)
攪拌装置を備えた反応器中にL−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、重合グレード、光学純度100%ee)100質量部、重合開始剤としてラウリルアルコール1質量部を仕込み、窒素置換を3回行った。190℃にて溶融し、重合触媒として2−エチルヘキサン酸スズ 0.010質量部を添加して3時間撹拌しながらL−ラクチドの開環重合を行った。 開環重合反応終了後、溶融状態のまま反応器から取り出し、冷却してプレート状にした。次にプレート状にした反応物を粉砕し、攪拌装置を備えた反応器内に入れ、120℃、1.33kPaで減圧処理し、余剰のL−ラクチドを除去してポリ−L−乳酸を得た。
攪拌機を備えた反応器中に、上記で得られたポリ−L−乳酸100質量部と、D−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、重合グレード、光学純度100%ee)400質量部を仕込み、窒素置換を3回行った。次に、重合触媒である2−エチルへキサン酸スズを0.04質量部添加し、190℃で3時間、D−ラクチドの開環重合を行い、D−乳酸単位:L−乳酸単位=80:20(質量比)ポリ乳酸ブロック共重合体を得た。得られたポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量は186,000であった。
<実施例1>
上記製造例1で得られたポリ−D−乳酸171mgと上記製造例2で得られたポリ乳酸ブロック共重合体429mgとを秤量し、塩化メチレン(12.0ml)と1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール(3.0ml)との混合溶媒に溶解し、20分間攪拌した。この混合溶液を、シャーレにキャストし、溶液キャストフィルム(1A)を成形した。
その後、得られた溶液キャストフィルムを粉砕し、十分に真空乾燥を行った。これらのサンプルを溶融混錬機で混錬を240℃で5〜10分間行い、続いて押し出し成型により、試験片を作製した。この際押し出された試験片を冷水中に急冷し、100℃、2hPaで1時間乾燥させた。溶融成型試験片(1B)を得た。
<実施例2>
ポリ−D−乳酸の使用量を225mgとし、ポリ乳酸ブロック共重合体の使用量を375mgとした以外は、実施例1と同様にして、溶液キャストフィルム(2A)と溶融成型試験片(2B)とを得た。
<実施例3>
ポリ−D−乳酸の使用量を300mgとし、ポリ乳酸ブロック共重合体の使用量を300mgとした以外は、実施例1と同様にして、溶液キャストフィルム(3A)と溶融成型試験片(3B)とを得た。
<比較例1>
上記製造例1で得られたポリ−D−乳酸 600mgを塩化メチレン(12.0ml)と1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール(3.0ml)との混合溶媒に溶解し、20分間攪拌した。この混合溶液を、シャーレにキャストし、溶液キャストフィルムを得た。
<比較例2>
ポリ−D−乳酸を使用せず、上記製造例2で得られたポリ乳酸ブロック共重合体の使用量を600mgとしたこと以外は、比較例1と同様にして、溶液キャストフィルムを得た。
<比較例3>
ポリ−D−乳酸を使用せず、上記製造例3で得られたポリ乳酸ブロック共重合体の使用量を600mgとしたこと以外は、比較例1と同様にして、溶液キャストフィルムを得た。
<比較例4>
上記製造例2で得られたD−乳酸単位:L−乳酸単位=20:80(質量比)であるポリ乳酸ブロック共重合体300mgと、上記製造例3で得られたD−乳酸単位:L−乳酸単位=80:20(質量比)であるポリ乳酸ブロック共重合体300mgとを、塩化メチレン(12.0ml)と1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール(3.0ml)との混合溶媒に溶解し、20分間攪拌した。この混合溶液を、シャーレにキャストし、溶液キャストフィルム(4A)を得た。
その後、得られた溶液キャストフィルムを粉砕し、十分に真空乾燥を行った。これらのサンプルを溶融混錬機で混錬を240℃で5〜10分間行い、続いて押し出し成型により、試験片を作製した。この際押し出された試験片を冷水中に急冷し、100℃、2hPaで1時間乾燥させた。溶融成型試験片(4B)を得た。
上記で得られた各実施例および各比較例の溶液キャストフィルム、溶融成型試験片について、DSCで分析した結果を下記表3に示す。
上記表3から明らかなように、実施例1〜3の本発明のポリ乳酸組成物によれば、使用するL成分(ポリ−L−乳酸またはL−ラクチド)とD成分(ポリ−D−乳酸またはD−ラクチド)との仕込み比(質量比)が大幅に偏っているポリ乳酸ブロック共重合体を含んでいても、ΔHmsが高い組成物、すなわち、ステレオコンプレックス結晶の含有率が非常に高いポリ乳酸組成物となることが分かった。これに対し、比較例1〜4ではΔHmsが低下した。
また、実施例1〜3、比較例1、および比較例3で作製した溶液キャストフィルムについて、偏光板を挿入して光学顕微鏡を用いて観察し撮影した写真(倍率:1000倍)を図1〜5に示す。
図1〜図3は、ポリ乳酸ブロック共重合体およびポリ乳酸ブロック共重合体とポリ−D−乳酸から形成されるステレオコンプレックスの球晶であると推測される。図4は、ポリ−D−乳酸との球晶であると推測される。図5の写真に写っているのは、ポリ乳酸ブロック共重合体から形成されるステレオコンプレックスの球晶であると推測される。球晶の大きさは、比較例1(図4参照)>比較例3(図5参照)>実施例2(図2参照)>実施例3(図3参照)>実施例1(図1参照)の順となっている。比較例1では、球晶サイズが他のものに比べかなり大きくなる(約50μm)のに対し、比較例3では、約10〜20μmとなっている。特に、実施例2および実施例3では、0.1〜1μmの球晶も多く存在している。また、実施例1では球晶はあまり見られない。実施例1のΔHmsの値が20J/g以上であるにも関わらず球晶が見えないのは、光を透過するようなサイズの球晶が多く存在していることを示唆している。これらのことから、フィルムのHazeの値が、上記の順序で小さくなっていると言える。よって、本発明のポリ乳酸組成物は、シート成型、射出成型、または真空成型などに用いられる透明フィルムへの適用が期待できる。
実施例1で製造した溶液キャストフィルムを光学顕微鏡(倍率:1000倍)で観察し撮影した写真である。 実施例2で製造した溶液キャストフィルムを光学顕微鏡(倍率:1000倍)で観察し撮影した写真である。 実施例3で製造した溶液キャストフィルムを光学顕微鏡(倍率:1000倍)で観察し撮影した写真である。 比較例1で製造した溶液キャストフィルムを光学顕微鏡(倍率:1000倍)で観察し撮影した写真である。 比較例3で製造した溶液キャストフィルムを光学顕微鏡(倍率:1000倍)で観察し撮影した写真である。

Claims (12)

  1. L−乳酸単位とD−乳酸単位との質量比がL−乳酸単位/D−乳酸単位=60/40〜91/9であり、かつステレオコンプレックス結晶の含有率が80〜100%であるポリ乳酸ブロック共重合体と、
    ポリ−D−乳酸と、
    を含むことを特徴とする、ポリ乳酸組成物。
  2. 前記ポリ−D−乳酸の含有量が、前記ポリ乳酸ブロック共重合体100質量部に対して10〜140質量部であることを特徴とする、請求項1に記載のポリ乳酸組成物。
  3. 前記ポリ乳酸ブロック共重合体中の前記L−乳酸単位と前記D−乳酸単位との質量比が、L−乳酸単位/D−乳酸単位=71/29〜91/9であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリ乳酸組成物。
  4. L−乳酸単位とD−乳酸単位との質量比がL−乳酸単位/D−乳酸単位=40/60〜9/91であり、かつステレオコンプレックス結晶の含有率が80〜100%であるポリ乳酸ブロック共重合体と、
    ポリ−L−乳酸と、
    を含むことを特徴とする、ポリ乳酸組成物。
  5. 前記ポリ−L−乳酸の含有量が、前記ポリ乳酸ブロック共重合体100質量部に対して、10〜140質量部であることを特徴とする、請求項4に記載のポリ乳酸組成物。
  6. 前記ポリ乳酸ブロック共重合体中の前記L−乳酸単位と前記D−乳酸単位との質量比が、L−乳酸単位/D−乳酸単位=29/71〜9/91であることを特徴とする、請求項4または5に記載のポリ乳酸組成物。
  7. 前記ポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が8万〜50万であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリ乳酸組成物。
  8. DSCにおいて、20〜250℃の昇温過程と250〜20℃の急冷過程とから成るプログラムを三回繰り返しても、昇温過程で観測される結晶融点が190〜250℃の範囲にある請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリ乳酸組成物。
  9. 球晶の大きさが0.01〜1.0μmである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリ乳酸組成物。
  10. ポリ−D−乳酸(D−乳酸単位)の存在下でL−ラクチド(L−乳酸単位)の開環重合を行って得られるポリ乳酸ブロック共重合体であって、前記D−乳酸単位と前記L−乳酸単位との質量比が、L−乳酸単位/D−乳酸単位=60/40〜91/9であるポリ乳酸ブロック共重合体と、
    D−ラクチドの開環重合を行って得られるポリ−D−乳酸と、
    を溶融混合または溶液混合する段階を含むことを特徴とする、ポリ乳酸組成物の製造方法。
  11. ポリ−L−乳酸(L−乳酸単位)の存在下でD−ラクチド(D−乳酸単位)の開環重合を行って得られるポリ乳酸ブロック共重合体であって、前記L−乳酸単位と前記D−乳酸単位との質量比が、L−乳酸単位/D−乳酸単位=40/60〜9/91であるポリ乳酸ブロック共重合体と、
    L−ラクチドの開環重合を行って得られるポリ−L−乳酸と、
    を溶融混合または溶液混合する段階を含むことを特徴とする、ポリ乳酸組成物の製造方法。
  12. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリ乳酸組成物、または請求項10もしくは11に記載の製造方法によって得られるポリ乳酸組成物を含む成形品。
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