JP2008120873A - ポリ乳酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、主としてL―乳酸単位からなり、融点が140〜180℃のポリマーL1およびポリマーL2、
主としてD−乳酸単位からなり、融点が140〜180℃のポリマーD1およびポリマーD2を、重量比(L1+L2)/(D1+D2)が10/90〜90/10の範囲で混合し、240〜300℃で熱処理しポリ乳酸を製造する方法であって、以下の条件、
ML1/ML2=1.5〜3
MD1/MD2=1.5〜3
(但し、ML1、ML2、MD1およびMD2は各々ポリマーL1、L2、D1およびD2の重量平均分子量を示す。)
を満足することを特徴とするポリ乳酸の製造方法である。
【選択図】図1
Description
一方で、主としてL−乳酸単位からなるポリマー(PLLA)と主としてD−乳酸単位からなるポリマー(PDLA)を溶液あるいは溶融状態で混合することにより、ステレオコンプレックスポリ乳酸が形成されることが知られている(特許文献1および非特許文献1参照)。このステレオコンプレックスポリ乳酸はPLLAやPDLAに比べて、高融点で、高結晶性を示すことが知られている。
しかし、通常、ステレオコンプレックスポリ乳酸は溶液法で製造され、溶液状態での長時間混合、溶剤を揮発させる工程が必要となり、製造工程が煩雑になるばかりでなく、コストアップにつながるという問題があった。
(L2)主としてL―乳酸単位からなり、融点が140〜180℃のポリマーL2、
(D1)主としてD−乳酸単位からなり、融点が140〜180℃のポリマーD1および
(D2)主としてD−乳酸単位からなり、融点が140〜180℃のポリマーD2を、
重量比(L1+L2)/(D1+D2)が10/90〜90/10の範囲で混合し、220〜300℃で熱処理しポリ乳酸を製造する方法であって、以下の条件、
ML1/ML2=1.5〜3
MD1/MD2=1.5〜3
(但し、ML1、ML2、MD1およびMD2は、各々ポリマーL1、L2、D1およびD2の重量平均分子量を示す。)
を満足することを特徴とするポリ乳酸の製造方法である。また本発明は、該方法により得られたポリ乳酸を包含する。さらに、該ポリ乳酸からなる成形品を包含する。
(ポリマーL1、L2、D1、D2)
ポリマーL1、L2、D1またはD2は、下記式で表されるL−乳酸単位またはD−乳酸単位から主としてなる。
ポリマーD1またはD2は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上のD−乳酸単位から構成される。他の単位としては、L−乳酸単位、乳酸以外の共重合成分単位が挙げられる。L−乳酸単位、乳酸以外の共重合成分単位は、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは2モル%以下である。
ポリマーL1、L2、D1およびD2中の共重合成分単位として、2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位およびこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等由来の単位が例示される。
ML1/ML2=1.5〜3
MD1/MD2=1.5〜3
但し、ML1、ML2、MD1およびMD2は、各々ポリマーL1、L2、D1およびD2の重量平均分子量を示す。ML1/ML2は、好ましくは1.5〜2.8、より好ましくは1.5〜2.7である。MD1/MD2は、好ましくは1.5〜2.8、より好ましくは1.5〜2.7である。ML1が10万を超え、ML2が5万〜10万であり、MD1が10万を超え、MD2が5万〜10万であることが好ましい。
ポリマーL1、L2、D1およびD2の融点は、各々、好ましくは140〜180℃、より好ましくは155〜180℃、さらに好ましくは160〜180℃である。ポリマーL1、L2、D1およびD2は、ラクチドの含有量が少ない方が好ましい。ラクチドの含有量は、好ましくは1000ppm、より好ましくは500ppm、さらに好ましくは100ppmである。
ポリマーL1およびL2、D1およびD2は、L−ラクチドまたはD−ラクチドを金属触媒の存在下で開環重合することにより製造することができる。
触媒量は、ラクチド100重量部に対して、好ましくは0.001〜0.1重量部、より好ましくは0.003〜0.01重量部である。
ポリマーL1、L2、D1およびD2は、重量比{(L1+L2)/(D1+D2)}=10/90〜90/10、好ましくは40/60〜60/40、より好ましくは45/55〜55/45で共存させる。
熱処理は、光学純度によって処理する温度が異なるが、220〜300℃、好ましくは220〜280℃、より好ましくは220〜260℃で行う。
熱処理に際して、ポリマーL1、L2、D1およびD2を混合することが好ましい。混合は、それらが熱処理したときに均一に混合される方法であればいかなる方法をとることも出来る。即ち、ポリマーをあらかじめ粉体化あるいはチップ化したものを所定量混合(ドライブレンド)した後に溶融する方法、ポリマーを溶融したのち混練する方法、ポリマーの一部を溶融させた後に残部を加えて混練する方法を採用することができる。
また、ポリマーL1、L2、D1およびD2の混合を、ポリマーL1とポリマーL2とを溶融混合する工程(i)、ポリマーD1とポリマーD2とを溶融混合する工程(ii)、並びに工程(i)および(ii)で得られた混合物を混合する工程(iii)により行うこともできる。工程(i)および(ii)における溶融混合は180〜220℃で行うことが好ましい。
また混合は、ポリマーL1、L2、D1およびD2を同時に溶融混合する工程(iv)により行うことも好ましい。
熱処理に用いる装置、方法としては、雰囲気調整を行いながら加熱できる装置、方法であれば用いることができるが、たとえば、バッチ式の反応器、連続式の反応器、二軸あるいは一軸のエクストルーダーなど、またはプレス機、流管式の押し出し機を用いて、成型しながら処理する方法をとることが出来る。
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸はステレオコンプレックスを含有する、所謂ステレオコンプレックスポリ乳酸である。該ポリ乳酸は、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、200℃以上の融解ピークの割合が、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。またポリ乳酸の融点は、好ましくは200〜250℃、より好ましくは205〜250℃である。またポリ乳酸の融解エンタルピーは、好ましくは20J/g以上、より好ましくは30J/g以上である。
よって、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸は、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、200℃以上の融解ピークの割合が90%以上であり、融点が200〜250℃の範囲にあり、融解エンタルピーが20J/g以上であることが好ましい。
本発明により得られるポリ乳酸には、本発明の目的を損なわない範囲内で、通常の添加剤、例えば、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、離形剤、各種フィラー、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌・抗カビ剤、核形成剤、染料、顔料を含む着色剤等を所望に応じて含有することができる。
本発明により得られるポリ乳酸を用いて、射出成形品、押出成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、フィルム、シート不織布、繊維、布、他の材料との複合体、農業用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品またはその他の成形品を得ることができ、成形は常法により行うことができる。
ポリマーの重量平均分子量、数平均分子量および分散度はGPC(カラム温度40℃、クロロホルム)により、ポリスチレン標準サンプルとの比較で求めた。
(2)結晶化点、融点、融解エンタルピーおよび200℃以上の融解ピークの割合:
DSCを用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分で測定し、結晶化点(Tc)、融点(Tm)および融解エンタルピー(ΔHm)を求めた。
200℃以上の融解ピークの割合(%)は、200℃以上(高温)の融解ピーク面積と140〜180℃(低温)融解ピーク面積から以下の式により算出した。
R200以上(%)=A200以上/(A200以上+A140〜180)×100
R200以上:200℃以上の融解ピークの割合
A200以上:200℃以上の融解ピーク面積
A140〜180:140〜180℃の融解ピーク面積
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)50.0gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.05g、触媒としてオクチル酸スズ25mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーA1を製造した。得られたポリマーA1の重量平均分子量15万、分散度は1.82であった。融点(Tm)は174℃であった。
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)50gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.15g、触媒としてオクチル酸スズ25mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーA2を製造した。得られたポリマーA2の重量平均分子量9万、分散度は1.72であった。融点(Tm)は172℃であった。
製造例1および製造例2で得られたポリマーA1およびA2を等量、ドライブレンドし、200℃にてフラスコ中で溶融混合ポリマーA3を得た。得られたポリマーA3の重量平均分子量13万、分散度は2.03であった。融点(Tm)は172℃であった。
D−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)50.0gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.05g、触媒としてオクチル酸スズ25mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーB1を製造した。得られたポリマーB1の重量平均分子量15万、分散度は1.75であった。融点(Tm)は176℃であった。
D−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)50gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.20g、触媒としてオクチル酸スズ25mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーB2を製造した。得られたポリマーB2の重量平均分子量7万、分散度は1.62であった。融点(Tm)は172℃であった。
製造例4および製造例5で得られたポリマーB1およびB2を等量、ドライブレンドし、200℃にてフラスコ中で溶融混合ポリマーB3を得た。得られたポリマーB3の重量平均分子量12万、分散度は1.93であった。融点(Tm)は174℃であった。
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)48.75gとD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)1.25gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.05g、触媒としてオクチル酸スズ25mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーA4を製造した。得られたポリマーA4の重量平均分子量16万、分散度は1.67であった。融点(Tm)は158℃であった。
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)48.75gとD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)1.25gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.15g、触媒としてオクチル酸スズ25mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーA5を製造した。得られたポリマーA5の重量平均分子量10万、分散度は1.65であった。融点(Tm)は159℃であった。
製造例7および製造例8で得られたポリマーA4およびA5を等量、ドライブレンドし、200℃にてフラスコ中で溶融混合ポリマーA6を得た。得られたポリマーA6の重量平均分子量14万、分散度は1.84であった。融点(Tm)は156℃であった。
D−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)48.75gとL−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)1.25gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.05g、触媒としてオクチル酸スズ25mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーB4を製造した。得られたポリマーB4の重量平均分子量16万、分散度は1.72であった。融点(Tm)は159℃であった。
D−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)48.75gとL−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)1.25gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.15g、触媒としてオクチル酸スズ25mgを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーB5を製造した。得られたポリマーB5の重量平均分子量9.7万、分散度は1.64であった。融点(Tm)は157℃であった。
製造例10および製造例11で得られたポリマーB4およびB5を等量、ドライブレンドし、200℃にてフラスコ中で溶融混合ポリマーB6を得た。得られたポリマーB6の重量平均分子量14万、分散度は1.94であった。融点(Tm)は158℃であった。
ポリマーA1、ポリマーA2、ポリマーB1およびポリマーB2の4種類を等量、ドライブレンドし、フラスコに加え、窒素置換後、260℃まで昇温し、260℃で3分間、溶融ブレンドを行った。得られた樹脂の重量平均分子量は13万で、分散度は2.12であった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点220℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは63J/gであった。140〜180℃の融解ピークは観測されず、200℃以上の融解ピークの割合(R200以上)は100%であった。結晶化点は87℃であった。図1にDSCチャートを示す。
溶融温度を240℃とした以外は実施例1と同様な方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は13.5万で、分散度は2.07であった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点223℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは56J/gであった。140〜180℃の融解ピークは観測されず、200℃以上の融解ピークの割合(R200以上)は100%であった。結晶化点は92℃であった。
ポリマーA3およびポリマーB3を使う以外は実施例1と同様な方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は11万で、分散度は2.21であった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点218℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは54J/gであった。140〜180℃の融解ピークはわずかに観測され、200℃以上の融解ピークの割合(R200以上)は98%であった。結晶化点は89℃であった。
ポリマーA4、ポリマーA5、ポリマーB4およびポリマーB5を使う以外は実施例1と同様な方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は11万で、分散度は2.16であった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点208℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは41J/gであった。140〜180℃の融解ピークはわずかに観測され、200℃以上の融解ピークの割合(R200以上)は99%であった。結晶化点は93℃であった。
ポリマーA6およびポリマーB6を使う以外は実施例1と同様な方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は12万で、分散度は2.26であった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点207℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは39J/gであった。140〜180℃の融解ピークは観測されず、200℃以上の融解ピークの割合(R200以上)は100%であった。結晶化点は89℃であった。
ポリマーA4、ポリマーA5、ポリマーB4およびポリマーB5を重量比1:3:1:3の割合で使う以外は実施例1と同様な方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は12万で、分散度は3.02であった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点204℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは43J/gであった。140〜180℃の融解ピークはほとんど観測されず、200℃以上の融解ピークの割合(R200以上)は99%であった。結晶化点は93℃であった。
以下に示すポリ−L−乳酸(PLLA)とポリ−L−乳酸(PDLA)を用いた以外は実施例1と同じ操作を行い、樹脂を得た。得られた樹脂についてDSC測定を行った。その結果、融点173℃の融解ピーク及び融点220℃の融解ピークが観測された。R200以上は、40%であった。
PLLA:重量平均分子量21万、分散度1.72 融点(Tm)172℃、結晶化点(Tc)125℃。
PDLA:重量平均分子量20万、分散度1.68 融点(Tm)171℃、結晶化点(Tc)122℃。
Claims (7)
- (L1)主としてL―乳酸単位からなり、融点が140〜180℃のポリマーL1、
(L2)主としてL―乳酸単位からなり、融点が140〜180℃のポリマーL2、
(D1)主としてD−乳酸単位からなり、融点が140〜180℃のポリマーD1および
(D2)主としてD−乳酸単位からなり、融点が140〜180℃のポリマーD2を、
重量比(L1+L2)/(D1+D2)が10/90〜90/10の範囲で混合し、220〜300℃で熱処理しポリ乳酸を製造する方法であって、以下の条件、
ML1/ML2=1.5〜3
MD1/MD2=1.5〜3
(但し、ML1、ML2、MD1およびMD2は、各々ポリマーL1、L2、D1およびD2の重量平均分子量を示す。)
を満足することを特徴とするポリ乳酸の製造方法。 - ML1が10万を超え、ML2が5万〜10万であり、MD1が10万を超え、MD2が5万〜10万である請求項1記載の製造方法。
- 混合を、ポリマーL1とポリマーL2とを溶融混合する工程(i)、ポリマーD1とポリマーD2とを溶融混合する工程(ii)、並びに工程(i)および(ii)で得られた混合物を混合する工程(iii)により行う請求項1記載の製造方法。
- 混合を、ポリマーL1、L2、D1およびD2を同時に溶融混合する工程(iv)により行う請求項1記載の製造方法。
- ポリ乳酸が、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、200℃以上の融解ピークの割合が90%以上であり、融点が200〜250℃の範囲にあり、融解エンタルピーが20J/g以上である請求項1記載の製造方法。
- 請求項1記載の方法により得られたポリ乳酸。
- 請求項5記載のポリ乳酸からなる成形品。
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