JP2004285151A - ポリ乳酸ブロック共重合体、その製造方法および成形品 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ乳酸ブロック共重合体、その製造方法および成形品に関するものである。さらに詳しくはポリ乳酸成分と半芳香族ポリエステル成分とからなる、耐熱性に優れるポリ乳酸ブロック共重合体とその成形品、および該ブロック共重合体を生産性よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、地球環境保全の見地から、土中、水中に存在する微生物の作用により自然環境下で分解される生分解性ポリマーが注目され、様々な生分解性ポリマーが開発されている。これらのうち溶融成形が可能な生分解性ポリマーとして、例えばポリヒドロキシブチレートやポリカプロラクトン、コハク酸やアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸成分とエチレングリコールやブタンジオールなどのグリコール成分とからなる脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸などが知られている。
【0003】
ポリ乳酸は、比較的コストが安く、融点もおよそ170℃と耐熱性を有し、溶融成形可能な生分解性ポリマ−として期待されている。また、最近ではモノマーである乳酸が微生物を利用した発酵法により安価に製造されるようになり、より一層低コストでポリ乳酸を生産できるようになってきたため、生分解性ポリマーとしてだけでなく、汎用ポリマーとしての利用も検討されるようになってきた。
【0004】
ポリ乳酸の耐熱性は、生分解性ポリマーの中では優れた特性を有しているものの、通常使用されている汎用ポリマーと比較すると、耐熱性は充分でなく、プラスチック材料としての使用を考えた場合、荷重たわみ温度が低いという問題、衣料用としての使用を考えた場合、アイロン耐熱性が劣るため、アイロンがかけられないという問題、フィルムとしての展開を考えた場合、電子レンジ耐熱性に劣るため、電子レンジを使用できないという様々な問題を有していた。
【0005】
このような背景のもと、近年ポリ乳酸の問題点である耐熱性を改良するための分子設計が活発化している。
【0006】
特許文献1、2、3では、ポリ−L−乳酸(以下PLLAと称する)とポリ−D−乳酸(以下PDLAと称する)を混合することにより、ポリ乳酸ステレオコンプレックスが得られること、得られたポリ乳酸ステレオコンプレックスは、高融点および高結晶性を示し、繊維やフィルム、樹脂成形品として有用な成形品を与えることが開示されている。また、特許文献4には、PLLAまたはPDLAからなる結晶性セグメントとL−乳酸およびD−乳酸を主成分とする非晶性セグメントとが結合されてなるポリ乳酸ブロック共重合体について記載されている。
【0007】
またポリ乳酸の耐熱性を向上させる方法として、ポリ乳酸に比べ融点の高いポリアルキレンテレフタレートとポリ乳酸をブロック化する方法が特許文献5、特許文献6に開示されている。
【0008】
【特許文献1】
特開昭61−36321号公報(第1、2頁)
【0009】
【特許文献2】
特開昭63−241024号公報(第1、2頁)
【0010】
【特許文献3】
特開平2000−17163号公報(第1、2頁)
【0011】
【特許文献4】
特開平9−40761号公報(第1、2頁)
【0012】
【特許文献5】
特開平2002−338673号公報(第1−5頁)
【0013】
【特許文献6】
特開平8−199053号公報(第1、2頁)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1、特許文献2および特許文献3などの方法で得られるポリ乳酸ステレオコンプレックスを得るには、溶液状態または溶融状態でPLLAとPDLAを混合して作製する必要があり、コスト的に有利な溶融状態で混合する場合は、ポリ乳酸ステレオコンプレックスが十分に溶融する温度で混合する必要があり、そのような温度ではポリ乳酸の分解反応も同時に発生するため、成形品として用いる際には、物性の低下を招くという問題があった。
【0015】
また、特許文献4の方法は、ポリ乳酸の硬くて脆い性質を改良する方法であって、得られたポリ乳酸ブロック共重合体の融点は、PLLAまたはPDLAホモポリマーよりも低い値しか示さず耐熱性の改良には至っていない。
【0016】
また特許文献5記載の方法は、ポリアルキレンテレフタレート単位が50重量%以上と、ポリ乳酸単位が少量成分のブロック共重合体であり、ポリ乳酸の本来の特徴である生分解性が著しく損なわれるものであった。またポリアルキレンテレフタレート成分の結晶化や相分離挙動により、ポリ乳酸ブロック共重合体が、溶融時に白濁し、さらに得られる成形品、特に繊維やフィルムの透明性が失われるという問題点があった。
【0017】
さらに特許文献6記載の方法ではポリエステルとの共重合が開示されているが、ポリ乳酸は230℃以上の温度では開重合してラクチドを生成するため、共重合するポリエステルが融点が200℃以下の低融点脂肪族ポリエステルに限られている。
【0018】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、高い耐熱性を有すると同時に高い透明性を有するポリ乳酸ブロック共重合体、その製造方法および成形品を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、ポリ乳酸と特定の構造と特定の熱的特性からなる半芳香族ポリエステル単位からなるポリ乳酸ブロック共重合体が、耐熱性に優れ、かつ透明性に優れることを見出し本発明に至ったものである。
【0020】
すなわち、本発明は、
(i)下記一般式(1)、(2)で表されるポリ乳酸単位と半芳香族ポリエステル単位とを有し、x/y=95/5〜75/25(モル%)であり、DSCにより測定される2つの融点のうち、高融点側の融点が200〜260℃であるポリ乳酸ブロック共重合体、
【0021】
【化2】
【0022】
(x、yはモル%を表し、Rは炭素数2〜6のアルキレン基を表す。)
(ii)半芳香族ポリエステル単位がポリブチレンテレフタレートを主成分とする(i)記載のポリ乳酸ブロック共重合体、
(iii)ポリ乳酸単位と半芳香族ポリエステル単位の少なくとも一部が、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコール、および多価エポキシ化合物から選択される多官能性化合物との共有結合を介して結合したものである(i)または(ii)に記載のポリ乳酸ブロック共重合体、
(iv)ポリ乳酸と融点が200〜260℃で、かつ数平均分子量が500〜10000の半芳香族ポリエステルとを、触媒存在下で溶融混合した後、固相重合することを特徴とする(i)または(ii)記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法、
(v)ポリ乳酸、融点が200〜260℃で、かつ数平均分子量が500〜10000の半芳香族ポリエステル、および多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコール、および多価エポキシ化合物から選択される多官能性化合物を溶融混合することを特徴とする(iii)記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法、
(vi)(i)〜(iii)いずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体を成形してなる成形品である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のポリ乳酸ブロック共重合体とは、下記一般式(1)、(2)で表されるポリ乳酸単位と半芳香族ポリエステル単位から構成されるものである。
【0024】
【化3】
【0025】
x、yはモル%を表し、Rは炭素数2〜6のアルキレン基を表す。
【0026】
上記式中xはポリ乳酸ブロック共重合体中のポリ乳酸単位のモル%を、yはポリ乳酸ブロック共重合体中の半芳香族ポリエステル単位(ポリアルキレンテレフタレート単位)のモル%を表す。
【0027】
なお上記式(1)中、ポリ乳酸単位は実質的にL−乳酸構造、またはD−乳酸構造からなるものである。本発明の効果を発揮する範囲であれば、Lー乳酸単位とD−乳酸単位の組成に制限はないが、通常L−乳酸単位が90モル%以上のポリ乳酸が耐熱性の面で好ましく、より好ましくは95モル%以上である。
【0028】
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体中のxとyのモル%比率(x/y)は、ポリ乳酸ブロック共重合体の耐熱性と透明性の面から、95/5〜75/25であり、好ましくは90/10〜80/20、さらに好ましくは90/10〜85/15である。
【0029】
上記ポリ乳酸単位とポリアルキレンテレフタレート単位との比率を重量分率に換算すると、90/10〜55/45であり、好ましくは80/20〜60/40、さらに好ましくは80/20〜70/30である。
【0030】
上記式中Rは炭素数2〜6のアルキレン基を表し、それぞれ単一であっても1種類以上の混合物であってもよい。炭素数が2〜6のアルキレン基としては、具体的には炭素数が2のエチレン、炭素数が3の1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、炭素数が4の1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、炭素数が5の3,3−ジメチルー1,3−プロピニレン、1,5−ペンチニレン、炭素数が6の1,6−ヘキサメチレンまたはこれらの混合物が挙げられるが、得られるポリ乳酸ブロック共重合体の耐熱性、透明性、生産性の面から、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましく、炭素数2または4のアルキレン基がより好ましく、炭素数4のアルキレン基が特に好ましい。
【0031】
また本発明のポリ乳酸ブロック共重合体は、耐熱性、および熱安定性の面から、DSCにより測定される2つの融点のうち、高融点側の融点が200〜260℃のものであり、好ましくは210〜250℃、より好ましくは220〜240℃のものである。
【0032】
ここで規定する融点とは、示差走査型熱量計(DSC)により測定した値であり、測定条件は、試料10mg、窒素雰囲気下中、昇温速度20℃/分で測定した値である。
【0033】
本発明において、上記一般式(1)、(2)で表されるポリ乳酸単位と半芳香族ポリエステル単位は、ポリ乳酸中、あるいは半芳香族ポリエステル中のカルボキシ基、水酸基からなる共有結合により連結することもできるし、あるいは、各セグメント間の少なくとも一部は、多官能性化合物との共有結合を介して結合していてもよい。
【0034】
多官能性化合物としては、特に限定されるものではないが、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコール、多価エポキシ化合物などがあり、具体的には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物などの多価カルボン酸無水物、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの多価イソシアネート、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどの多価エポキシ化合物などが挙げられる。好ましくは、多価カルボン酸無水物、多価イソシアネート、多価アルコール、多価エポキシ化合物であり、特に多価イソシアネート、多価エポキシ化合物がより好ましい。
【0035】
本発明のポリ乳酸ブロック共重合は、本発明の性能を損なわない範囲で、さらに他の成分単位を含んでいてもよい。例えば、後述のように半芳香族ポリエステル中に他の成分単位を共重合すること等により導入することができる。
【0036】
さらに本発明において、ポリ乳酸ブロック共重合体の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、5万以上であることが機械物性の点で好ましい。特に、5万〜120万であることが成形性および機械物性の点でより好ましい。なお、数重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量の値である。
【0037】
次に、本発明のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法について説明する。本発明のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法は、上述の特徴を有するポリ乳酸ブロック共重合体が得られれば特に限定されるものではないが、下記記載の(a)、(b)の方法により製造することができる。
【0038】
(a)ポリ乳酸と融点が200〜260℃で、かつ数平均分子量が500〜10000の半芳香族ポリエステルとを、触媒存在下で溶融混合した後、固相重合する方法。
【0039】
(b)ポリ乳酸、融点が200〜260℃で、かつ数平均分子量が500〜、10000の半芳香族ポリエステル、および多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコール、および多価エポキシ化合物から選択される多官能性化合物を溶融混合する方法。
【0040】
ここでまず、上記製造方法(a)、(b)に用いられる一方の原料であるポリ乳酸の製造方法について説明する。
【0041】
本発明において使用するポリ乳酸を製造する方法としては、特に限定されず一般のポリ乳酸の製造方法を利用することができる。具体的には、L−乳酸またはD−乳酸を原料として、一旦、環状2量体であるL−ラクチドまたはD−ラクチドを生成せしめ、その後、開環重合を行う2段階のラクチド法と、当該原料を溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法、溶媒を用いずに直接脱水縮合後、固相重合をして高分子量化する方法などが知られており、いずれの製法を利用してもよい。
【0042】
また、重合反応に触媒を用いることにより、重合時間を短縮することができる。触媒としては、例えば、錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウムなどの金属及びその誘導体が挙げられる。誘導体としては、金属アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物が好ましい。具体的には、塩化錫、オクチル酸錫、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、酸化鉛、炭酸鉛、塩化チタン、アルコキシチタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。これらの中でも、錫化合物が好ましく、特にオクチル酸錫がより好ましい。
【0043】
触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、使用する原料(L−乳酸、D−乳酸、L−ラクチドまたはD−ラクチド等)100重量部に対して0.001〜2重量部が好ましく、とくに0.001〜1重量部がより好ましい。触媒量が0.001重量部未満では重合時間の短縮効果が低下し、2重量部を越えるとポリ乳酸の熱安定性が低下する。
【0044】
次に上記製造方法(a)、(b)において使用されるもう一方の原料である半芳香族ポリエステルについて説明する。
【0045】
本発明で使用される半芳香族ポリエステルは、最終に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の耐熱性、および溶融時の透明性、フィルム、繊維化した時の透明性の面から、数平均分子量が500〜10000であることが好ましく、さらに好ましくは500〜9000、特に好ましくは900〜8000である。500より小さいとポリ乳酸ブロック共重合体の耐熱性が低く、10000より高いと相溶性が悪く、溶融時に白濁し、かつフィルム、繊維に加工した時に、透明性が低下する。
【0046】
なお、数平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート換算の数平均分子量の値である。
【0047】
本発明で言う半芳香族ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸または芳香族ジカルボン酸エステルと脂肪族ジオールとを重合して得られる構造単位を主成分として含有する半芳香族ポリエステルである。ここで「主成分として含有する」とは本発明の効果が発現する範囲であればよく、特に制限はないが、通常は上記の構造単位を80モル%程度以上含有するものを言う。
【0048】
芳香族ジカルボン酸または芳香族ジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチルエステルを使用することができる。また脂肪族ジオールとしては炭素数2〜6の脂肪族ジオールを使用することができ、具体的にはエチレングリコ−ル、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3ーブタンジオール、3,3−ジメチルー1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどから選ばれる一種または2種以上の混合物が挙げられるが、好ましくは炭素数が2〜4のエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3ーブタンジオール、1,4−ブタンジオールから選ばれる1種または2種以上の混合物、さらに好ましくは1,4−ブタンジオールである。すなわち、半芳香族ポリエステル単位としては、ポリブチレンテレフタレートを主成分とするものであることが好ましい。
【0049】
本発明の半芳香族ポリエステルは、性能を損なわない範囲で、さらに他の成分単位を含んでいてもよい。具体的には、多価カルボン酸、多価アルコール、乳酸以外のヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類またはそれらの誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類またはそれらの誘導体、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などが挙げられる。
【0050】
上記製造方法(a)、(b)の方法においてポリ乳酸成分と半芳香族ポリエステルの成分の混合モル分率は(ポリ乳酸/半芳香族ポリエステル)、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体中のxとyのモル%比率(x/y)が、95/5〜75/25であり、好ましくは90/10〜80/20、さらに好ましくは90/10〜85/15であるように、設定することができる。仕込み混合モル分率と実際に得られるポリ乳酸ブロック共重合体中のモル分率は、本発明の製造方法によれば、通常大きな差はないが、ポリ乳酸成分と半芳香族ポリエステルの成分の混合モル分率は(ポリ乳酸/半芳香族ポリエステル)、95/5〜75/25であり、好ましくは90/10〜80/20、さらに好ましくは90/10〜85/15(モル%)である。
【0051】
前述した製造方法(a)で製造する場合は、上記ポリ乳酸成分と半芳香族ポリエステル成分を触媒存在下で溶融混合した後、固相重合することにより目的のポリ乳酸ブロック共重合体を得ることができる。
【0052】
この製造方法により、ポリ乳酸単位、半芳香族ポリエステル単位とがポリ乳酸中、あるいは半芳香族中のカルボキシ基、水酸基からなる共有結合により連結したポリ乳酸ブロック共重合体が得られる。
【0053】
ポリ乳酸成分と半芳香族ポリエステル成分を溶融混合する方法は、通常公知の方法で行うことができる。例えば、ポリ乳酸および半芳香族ポリエステルを予備混合して、またはせずに押出機などに供給して、150〜280℃の温度範囲において充分混練することにより行うことができるが、混練温度はポリ乳酸単位の分解を抑制する目的、溶融時のポリマーの透明性を達成する目的から、160〜250℃の温度範囲が好ましく、より好ましくは180〜230℃である。なお、溶融状態で反応を行う場合には、ポリマーを溶融させるために、ポリマーの融点以上で反応させることが好ましいが、ポリ乳酸ブロック共重合体の分解反応を抑制するという点で、反応物が固まらない程度にできる限り温度を下げて反応を行うことが好ましい。
【0054】
この場合例えば“ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混練機などを用いることができる。
【0055】
また、この時触媒を用いることにより、ポリ乳酸と半芳香族ポリエステルのエステル交換反応によるブロック化を速やかに進行させることができる。このような触媒としては、例えば、錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウムなどの金属及びその誘導体が挙げられる。誘導体としては、金属アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物が好ましい。具体的には、塩化錫、オクチル酸錫、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、酸化鉛、炭酸鉛、塩化チタン、アルコキシチタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。これらの中でも、好ましくはアルコキシチタン、オクチル酸錫である。
【0056】
触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、使用するポリ乳酸と半芳香族ポリエステル100重量部に対して、0.001〜2重量部が好ましく、特に0.005〜0.1重量部がより好ましい。
【0057】
製造法(a)においては、上記のようにして得られたポリ乳酸と半芳香族ポリエステルを溶融混合して得られた混合物は、引き続き固相重合に供する。
【0058】
この時溶融混合して得られた混合物は固相重合に適した大きさの粉粒状に粉砕あるいは、ペレット状の形状で固相重合に供することができる。
【0059】
またこれらの混合物はあらかじめ加熱により、粒状物あるいはペレット形状物を結晶化させると、固相重合速度が上がり、また固相重合時に混合物の融着等が発生しない。この時の加熱温度は、混合物の性状、ポリ乳酸と半芳香族ポリエステルの混合比率や結晶化特性により異なり、混合物の融着が発生せず、結晶化が促進される温度であれば特に制限はなく、混合物の融着が発生しないように、できる限り温度を上げて加熱を行うことが好ましい。通常80〜170℃が好ましく、より好ましくは90〜160℃である。また加熱温度を上記温度範囲条件において、徐々に昇温することもできる。この時の加熱時間も同様に、混合物の性状、ポリ乳酸と半芳香族ポリエステルの混合比率や結晶化特性により異なり、混合物の融着が発生せず、結晶化が促進される程度の時間であれば特に制限はないが、通常5分から5時間が好ましく、より好ましくは10分から1時間である。
【0060】
上記のごとくにして得られたポリ乳酸と半芳香族ポリエステルの混合物の固相重合は、通常公知の方法により行うことができるが、90〜170℃の温度で乾燥気流下、あるいは減圧下加熱することで行うことができる。
【0061】
乾燥気流下、あるいは減圧下加熱しながらの固相重合温度は90〜170℃であるが、好ましくは100〜160℃である。
【0062】
乾燥気流下とは通常窒素、ヘリウムなどの不活性ガス気流下で行うことができ、この時の固相重合時間は、特に制限はないが、通常1時間以上500時間以下、好ましくは1時間以上400時間以下である。
【0063】
また減圧下加熱しながらの固相重合時間もまた特に制限はないが、通常1時間から100時間、好ましくは1時間から50時間である。
【0064】
つぎに製造方法(b)について説明する。
【0065】
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体は、ポリ乳酸、融点が200〜260℃で、かつ数平均分子量が500〜10000の半芳香族ポリエステル、および多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコール、および多価エポキシ化合物から選択される多官能性化合物を溶融混合することにより製造することができる。この製造方法により、ポリ乳酸単位、半芳香族ポリエステル単位の少なくとも一部が、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコールおよび多価エポキシ化合物から選択される多官能性化合物との共有結合を介して結合しているポリ乳酸ブロック共重合体が得られる。
【0066】
本製造方法で用いられる多官能性化合物の具体例は前記したとおりのものである。
【0067】
多官能性化合物の配合量は、特に限定されるものではないが、ポリ乳酸成分と半芳香族ポリエステル100重量部に対して0.001重量部以上、5重量部以下が好ましく、また0.01重量部以上、3重量部以下がより好ましい。
【0068】
上記製造方法(b)において、ポリ乳酸、半芳香族ポリエステルおよび多官能性化合物を溶融混合する方法は、通常公知の方法で行うことができる。例えば、ポリ乳酸および半芳香族ポリエステルを予備混合して、またはせずに押出機などに供給して、150℃から280℃の温度範囲において充分混練することにより行うことができるが、混練温度はポリ乳酸単位の分解を抑制する目的、溶融時のポリマーの透明性を達成する目的から、160℃から250℃の温度範囲が好ましく、より好ましくは180℃から230℃である。なお、溶融状態で反応を行う場合には、ポリマーを溶融させるために、ポリマーの融点以上で反応させることが好ましいが、ポリ乳酸ブロック共重合体の分解反応を抑制するという点で、反応物が固まらない程度にできる限り温度を下げて反応を行うことが好ましい。
【0069】
この場合例えば“ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混練機、撹拌槽型反応器、ミキサー型反応器、塔型反応器および押出し機型反応器などを用いることができる。また、これらの反応器は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0070】
また、この時触媒を用いることにより、ポリ乳酸、半芳香族ポリエステルおよび多官能性化合物の反応によりブロック化を速やかに進行させることができる。このような触媒としては、例えば、錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウムなどの金属及びその誘導体が挙げられる。誘導体としては、金属アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物が好ましい。具体的には、塩化錫、オクチル酸錫、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、酸化鉛、炭酸鉛、塩化チタン、アルコキシチタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。これらの中でも、特に好ましくはアルコキシチタン、オクチル酸錫である。
【0071】
触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、使用するポリ乳酸と半芳香族ポリエステル100重量部に対して、0.001〜2重量部が好ましく、0.005〜0.1重量部が特に好ましい。
【0072】
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体またはポリ乳酸組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常の添加剤、例えば紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、離形剤、染料および顔料を含む着色剤などの1種または2種以上を添加することができる。
【0073】
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体またはポリ乳酸組成物は、成形品として広く用いることができる。成形品とは、フィルム、シート、繊維・布、不織布、射出成形品、押出し成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、および他の材料との複合体などであり、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品またはその他の用途として有用である。
【0074】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ここで、実施例中の部数は、重量部を示す。
【0075】
(1)溶融混合と溶融時透明性評価
東洋精機製小型ブラベンダーを用い、230℃、30分間所定の成分を配合して溶融混合した。溶融時の透明性は黙視により観察し、透明:○、やや白濁:△、白濁:×により判断した。
【0076】
(2)分子量測定
数平均分子量、重量平均分子量は、前述したようにゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量の値である。GPC測定は、検出器にWATERS社示差屈折計WATERS410を用い、ポンプにMODEL510高速液体クロマトグラフィーを用い、カラムにShodex GPC HFIP−806MとShodex GPC HFIP−LGを直列に接続したものを用いて行った。測定条件は、流速0.5mL/minとし、溶媒にヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)またはクロロホルムを用い、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1mL注入した。
【0077】
(3)NMR測定
NMR装置として日本電子データム製のJNM−AL400、FT NMR SYSTEM、AL SPECTROMETERを用い、測定物を溶解する重水素化溶媒中、例えば重水素化クロロホルム、重水素化DMSO、重水素化ヘキサフロロイソプロパノールなどの重水素化溶媒を用い、サンプル濃度0.1〜0.5wt/vol%で測定した。積算時間はスペクトルのS/N比より適宜調整した。
【0078】
(4)ポリ乳酸ブロックポリマー組成とエステル交換率
サンプル50mgを重水素化クロロホルム5mlに2時間室温で溶解させた後、
重水素化クロロホルム不溶部分をフィルターで濾過し、炉液部分をNMR測定サンプルとした。NMRスペクトル中、8.1ppm付近に観察される半芳香族ポリエステル単位由来の芳香族のピークと5.2ppmに観察されるポリ乳酸単位由来のピークから、下記式に基づきエステル交換率を算出した。
【0079】
クロロホルム可溶部の半芳香族ポリエステル(モル%)=
(8.0ppmのシグナル強度/4)/((5.2ppmのシグナル強度)+(8.0ppmのシグナル強度))/4×100
エステル交換率=(クロロホルム可溶部の半芳香族ポリエステル(モル%))/(仕込み半芳香族ポリエステル(モル%))×100
なおブロックポリマー中のポリ乳酸組成とポリエステル組成は、重水素化ヘキサフロロイソプロパノールを用い、半芳香族ポリエステル由来の8.0ppmのシグナル強度、およびポリ乳酸由来の5.2ppmのピーク強度比より算出した。
【0080】
(5)フィルム作成
卓上プレス機を用い、プレス温度230℃、金型温度80℃で厚み200μmのフィルムを作成した。
【0081】
(6)融点測定
上記フィルムを用い、セイコー電子工業製 ロボットDSC RDC220を用い、窒素雰囲気下、30℃から250℃まで20℃/分の昇温温度で昇温後、250℃で5分間保持して試料を完全に融解させ、250℃から30℃まで20℃/分で降温、30℃で5分間保持した後、30℃から250℃まで20℃/分の昇温速度で昇温した時に観察される低融点側の融点(Tm1)および高融点側の融点(Tm2)を求めた。
【0082】
(7)透明性評価
上記により得られたフィルムを肉眼観察し下記3段階で評価した。◎:透明、△:やや白濁、×:白色
(8)耐熱性評価
上記フィルムを1mm×5cmのたんざく状に切り、アイロンを所定の温度に加熱し、10秒間アイロンをのせた後のフィルムの形状を観察した。形状が変化しない場合は、温度を10℃ずつ上昇させ、形状が変化しない最高温度をアイロン耐熱温度とした。アイロンの設定温度は100℃から210℃まで変更させた。
【0083】
参考例1
L−ラクチド 50g、エチレングリコール(EG:0.04g)を撹拌装置のついた反応容器中で、窒素雰囲気下、120℃で均一に溶解させた後、温度を150℃にし、オクチル酸錫 0.2gを加えた後、4時間重合反応させた。重合反応終了後、反応物をクロロホルムに溶解させ、メタノール中で撹拌しながら沈殿させ、モノマーを完全に除去して、ポリ−L−乳酸(PLA)を得た(収率85%)。その分子量と融点は下記のとおりである。
PLA:Mn=21400、Mw/Mn=4.2(HFIP中)、Tm=166℃。
【0084】
参考例2
テレフタル酸(40g)と1,4−ブタンジオール(43g)を攪拌機のついた3口フラスコに秤量し、チタンテトラブトキシド(0.021g)の存在下150℃で1時間加熱攪拌し、さらに反応温度を150℃から230℃まで5時間かけて徐々に昇温した。得られた融液をステンレスの受け皿に吐出し、冷却後粉砕した(PBT−1)。その分子量と融点は下記のとおりである。
PBT−1:Mn=400、Mw/Mn=1.2(HFIP中)、Tm=180℃。
【0085】
参考例3
テレフタル酸(40g)と1,4−ブタンジオール(43g)を攪拌機のついた3口フラスコに秤量し、チタンテトラブトキシド(0.021g)の存在下150℃で1時間加熱攪拌し、さらに反応温度を150℃から250℃まで6時間かけて徐々に昇温した。得られた融液をステンレスの受け皿に吐出し、冷却後粉砕した(PBT−2)。その分子量と融点は下記のとおりである。
PBT−2:Mn=1100、Mw/Mn=2.1(HFIP中)、Tm=185℃。
【0086】
参考例4
テレフタル酸(40g)と1,4−ブタンジオール(43g)を減圧ラインのついた、試験管重合装置に秤量し、チタンテトラブトキシド(0.021g)の存在下150℃で1時間加熱攪拌し、さらに反応温度を150℃から230℃まで5時間かけて徐々に昇温した。その後1時間かけて徐々に減圧度を上げ、減圧度0.1mmHgに到達させた。0.1mmHg到達後、3時間反応させた後、内容物を吐出した(PBT−3)。その分子量と融点は下記のとおりである。
PBT−3:Mn=15100,Mw/Mn=3.2(HFIP中)、Tm=222℃。
【0087】
参考例5
参考例2で調製したPBT−1と参考例4で調製したPBTー3を、総量100gとし、重量比で80:20(重量%)とし、チタンテトラブトキシド(0.01g)を添加し、ブラベンダーを用い、250℃で30分間エステル交換させることで、PBT−4を調整した。その分子量と融点は下記のとおりである。
PBT−4:Mn=8800,Mw/Mn=3.5(HFIP中)、Tm=212℃。
【0088】
参考例6
参考例3で調製したPBT−2と参考例4で調製したPBT−3を、総量100gとし、重量比50:50(重量%)とし、チタンテトラブトキシド(0.01g)を添加し、ブラベンダーを用い、250℃で30分間エステル交換させることで、PBT−5を調整した。その分子量と融点は下記のとおりである。
PBT−5:Mn=6010、Mw/Mn=4.1(HFIP中)、Tm=204℃。
【0089】
参考例7
テレフタル酸(40g)とエチレングリコール(35g)を攪拌機のついた3口フラスコに秤量し、チタンテトラブトキシド(0.021g)の存在下150℃で1時間加熱攪拌し、さらに反応温度を150℃から250℃まで6時間かけて徐々に昇温した。得られた融液をステンレスの受け皿に吐出し、冷却後粉砕した(PET−1)。その分子量と融点は下記のとおりである。
【0090】
PET−1:Mn=900、Mw/Mn=2.1(HFIP中)、Tm=220℃。
【0091】
実施例1〜11、比較例1〜5
実施例1〜10、比較例3〜5は、参考例1で調製したポリ乳酸成分と、上記参考例2〜6で調製した半芳香族ポリエステル成分を総量100gになるように配合し、チタンテトラブトキシド(0.005g)を添加し、230℃で30分間溶融混合した。
【0092】
PET−1を半芳香族成分として使用した実施例11は、溶融混合温度を260℃に設定し、溶融混合時間を15分とした。
【0093】
上記方法により得られた溶融混合物を小型粉砕機で粉砕した後、実施例1〜10では、窒素雰囲気下100℃で1時間、120℃で1時間、130℃で1時間、140℃で1時間と、徐々に昇温し、加熱することにより結晶化を促進させた。その後窒素気流下140℃で200時間固相重合した。実施例11では窒素雰囲気下100℃、120℃、140℃、160℃でそれぞれ1時間加熱することにより結晶化を促進させた後、窒素気流下、160℃で200時間固相重合した。なお比較例1、2では参考例で調製したPLA、PBT−4を各単独で使用した。一連の反応条件、および反応に使用したポリ乳酸成分、半芳香族成分の熱特性を表1に示す。
【0094】
上記表1の条件により得られたポリマーをプレス成形後(実施例1〜10、比較例1〜5:プレス温度230℃、実施例11、プレス温度250℃)、DSC測定、NMRによるエステル交換率、フィルムの透明性、アイロン耐熱性を評価した。一連のポリマーについて、GPC測定結果、DSC測定結果、透明性、アイロン耐熱性を表2に示す。
【0095】
実施例1〜11、比較例3〜5のポリ乳酸と半芳香族ポリエステルの仕込み組成と得られたポリマー中のポリ乳酸と半芳香族ポリエステル組成の比較から、仕込み組成とポリマー中組成はNMR誤差範囲内でほぼ一致している。
【0096】
実施例1〜8より、少量の低分子量PBT(Mn=8800、6010、1100)とPLAを触媒存在下、溶融混合した後、固相重合することにより、PLAとPBTのエステル交換が定量的に進行し、かつ融点降下が生じないことがわかる。すなわちPLAとPBTから構成されるブロック共重合体が得られたことがわかる。PLA中のPBT量が5〜25モル%の範囲において、PBTの結晶性が保持できると同時に、透明なフィルムが得られることがわかる。
【0097】
また実施例9、10では分子量Mn=500のPBTを使用したところ、PBTー5(Mn=6010)を使用した実施例2や、PBT−4(Mn=8800)を使用した実施例3に比べ、アイロン耐熱性の若干の低下が認められるものの、フィルムの透明性、アイロン耐熱性など本発明の効果を発揮するレベルの特徴が得られていることがわかる。
【0098】
またPET−1(Mn=900、Tm=220℃)を用いた場合も、同様にPLAとPETとのエステル交換が定量的に進行しており、PLAとPETから構成されるブロック共重合体が得られ、かつフィルムの透明性、アイロン耐熱性に優れることがわかる。
【0099】
また上記実施例1〜11と比較例1、2の比較からも明らかなように、PLA単独ではアイロン耐熱性に劣り、またPBT単独は生分解性が損なわれるのは周知のとおりであるが、結晶性が高く、フィルムの透明性が損なわれる。
【0100】
また比較例3〜5においてPBT成分を30モル%、40モル%と増加させると、比較例3〜5のいずれもエステル交換反応は定量的に進行するものの、PBTー4(Mn=8800)を本発明の範囲以上に配合した比較例3、4ではアイロン耐熱性が向上するものの、フィルム透明性が顕著に低下し、本発明の効果が失われることがわかる。またPBT−2(Mn=1100)を本発明の範囲以上に配合した比較例5では、結晶性が低下し、アイロン耐熱性が低下することがわかる。
【0101】
実施例12〜14
実施例12〜14では参考例で調製したポリ乳酸成分と、半芳香族ポリエステル成分を総量100gになるように配合し、実施例12ではヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を1g、実施例13では無水ピロメリット酸を1g、実施例14ではビスフェノールA型ジエポキシド1gをチタンテトラブトキシド(0.005g)と共に添加し、230℃、30分間溶融混合し、ポリ乳酸ブロック共重合体を得た。それ以外については実施例1〜11と同様の評価を行った。なお反応率は上記エステル交換率と同様の方法により、算出したものを反応率とした。一連の条件および結果を表3、表4に示す。
【0102】
実施例12〜14、比較例6〜8の結果から、ヘキサメチレンジイソシアネート、無水ピリメリット酸またはビスフェノールA−ジエポキシドを添加すると、定量的に反応が進行し、ポリ乳酸ブロックが得られ、耐熱性、透明性に優れたポリマーになることがわかる。一方本発明の範囲を超えた量のPBTを同様の方法で反応させた場合、ポリ乳酸ブロック共重合体が得られるものの、透明性に劣り、また耐熱性も不充分であることがわかる。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
【0107】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリ乳酸と特定の構造と特定の熱的特性からなる半芳香族ポリエステル単位からなるポリ乳酸ブロック共重合体により、耐熱性に優れ、かつ透明性に優れるポリ乳酸ブロック共重合体、その製造方法および成形品を提供できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ乳酸ブロック共重合体、その製造方法および成形品に関するものである。さらに詳しくはポリ乳酸成分と半芳香族ポリエステル成分とからなる、耐熱性に優れるポリ乳酸ブロック共重合体とその成形品、および該ブロック共重合体を生産性よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、地球環境保全の見地から、土中、水中に存在する微生物の作用により自然環境下で分解される生分解性ポリマーが注目され、様々な生分解性ポリマーが開発されている。これらのうち溶融成形が可能な生分解性ポリマーとして、例えばポリヒドロキシブチレートやポリカプロラクトン、コハク酸やアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸成分とエチレングリコールやブタンジオールなどのグリコール成分とからなる脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸などが知られている。
【0003】
ポリ乳酸は、比較的コストが安く、融点もおよそ170℃と耐熱性を有し、溶融成形可能な生分解性ポリマ−として期待されている。また、最近ではモノマーである乳酸が微生物を利用した発酵法により安価に製造されるようになり、より一層低コストでポリ乳酸を生産できるようになってきたため、生分解性ポリマーとしてだけでなく、汎用ポリマーとしての利用も検討されるようになってきた。
【0004】
ポリ乳酸の耐熱性は、生分解性ポリマーの中では優れた特性を有しているものの、通常使用されている汎用ポリマーと比較すると、耐熱性は充分でなく、プラスチック材料としての使用を考えた場合、荷重たわみ温度が低いという問題、衣料用としての使用を考えた場合、アイロン耐熱性が劣るため、アイロンがかけられないという問題、フィルムとしての展開を考えた場合、電子レンジ耐熱性に劣るため、電子レンジを使用できないという様々な問題を有していた。
【0005】
このような背景のもと、近年ポリ乳酸の問題点である耐熱性を改良するための分子設計が活発化している。
【0006】
特許文献1、2、3では、ポリ−L−乳酸(以下PLLAと称する)とポリ−D−乳酸(以下PDLAと称する)を混合することにより、ポリ乳酸ステレオコンプレックスが得られること、得られたポリ乳酸ステレオコンプレックスは、高融点および高結晶性を示し、繊維やフィルム、樹脂成形品として有用な成形品を与えることが開示されている。また、特許文献4には、PLLAまたはPDLAからなる結晶性セグメントとL−乳酸およびD−乳酸を主成分とする非晶性セグメントとが結合されてなるポリ乳酸ブロック共重合体について記載されている。
【0007】
またポリ乳酸の耐熱性を向上させる方法として、ポリ乳酸に比べ融点の高いポリアルキレンテレフタレートとポリ乳酸をブロック化する方法が特許文献5、特許文献6に開示されている。
【0008】
【特許文献1】
特開昭61−36321号公報(第1、2頁)
【0009】
【特許文献2】
特開昭63−241024号公報(第1、2頁)
【0010】
【特許文献3】
特開平2000−17163号公報(第1、2頁)
【0011】
【特許文献4】
特開平9−40761号公報(第1、2頁)
【0012】
【特許文献5】
特開平2002−338673号公報(第1−5頁)
【0013】
【特許文献6】
特開平8−199053号公報(第1、2頁)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1、特許文献2および特許文献3などの方法で得られるポリ乳酸ステレオコンプレックスを得るには、溶液状態または溶融状態でPLLAとPDLAを混合して作製する必要があり、コスト的に有利な溶融状態で混合する場合は、ポリ乳酸ステレオコンプレックスが十分に溶融する温度で混合する必要があり、そのような温度ではポリ乳酸の分解反応も同時に発生するため、成形品として用いる際には、物性の低下を招くという問題があった。
【0015】
また、特許文献4の方法は、ポリ乳酸の硬くて脆い性質を改良する方法であって、得られたポリ乳酸ブロック共重合体の融点は、PLLAまたはPDLAホモポリマーよりも低い値しか示さず耐熱性の改良には至っていない。
【0016】
また特許文献5記載の方法は、ポリアルキレンテレフタレート単位が50重量%以上と、ポリ乳酸単位が少量成分のブロック共重合体であり、ポリ乳酸の本来の特徴である生分解性が著しく損なわれるものであった。またポリアルキレンテレフタレート成分の結晶化や相分離挙動により、ポリ乳酸ブロック共重合体が、溶融時に白濁し、さらに得られる成形品、特に繊維やフィルムの透明性が失われるという問題点があった。
【0017】
さらに特許文献6記載の方法ではポリエステルとの共重合が開示されているが、ポリ乳酸は230℃以上の温度では開重合してラクチドを生成するため、共重合するポリエステルが融点が200℃以下の低融点脂肪族ポリエステルに限られている。
【0018】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、高い耐熱性を有すると同時に高い透明性を有するポリ乳酸ブロック共重合体、その製造方法および成形品を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、ポリ乳酸と特定の構造と特定の熱的特性からなる半芳香族ポリエステル単位からなるポリ乳酸ブロック共重合体が、耐熱性に優れ、かつ透明性に優れることを見出し本発明に至ったものである。
【0020】
すなわち、本発明は、
(i)下記一般式(1)、(2)で表されるポリ乳酸単位と半芳香族ポリエステル単位とを有し、x/y=95/5〜75/25(モル%)であり、DSCにより測定される2つの融点のうち、高融点側の融点が200〜260℃であるポリ乳酸ブロック共重合体、
【0021】
【化2】
【0022】
(x、yはモル%を表し、Rは炭素数2〜6のアルキレン基を表す。)
(ii)半芳香族ポリエステル単位がポリブチレンテレフタレートを主成分とする(i)記載のポリ乳酸ブロック共重合体、
(iii)ポリ乳酸単位と半芳香族ポリエステル単位の少なくとも一部が、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコール、および多価エポキシ化合物から選択される多官能性化合物との共有結合を介して結合したものである(i)または(ii)に記載のポリ乳酸ブロック共重合体、
(iv)ポリ乳酸と融点が200〜260℃で、かつ数平均分子量が500〜10000の半芳香族ポリエステルとを、触媒存在下で溶融混合した後、固相重合することを特徴とする(i)または(ii)記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法、
(v)ポリ乳酸、融点が200〜260℃で、かつ数平均分子量が500〜10000の半芳香族ポリエステル、および多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコール、および多価エポキシ化合物から選択される多官能性化合物を溶融混合することを特徴とする(iii)記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法、
(vi)(i)〜(iii)いずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体を成形してなる成形品である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のポリ乳酸ブロック共重合体とは、下記一般式(1)、(2)で表されるポリ乳酸単位と半芳香族ポリエステル単位から構成されるものである。
【0024】
【化3】
【0025】
x、yはモル%を表し、Rは炭素数2〜6のアルキレン基を表す。
【0026】
上記式中xはポリ乳酸ブロック共重合体中のポリ乳酸単位のモル%を、yはポリ乳酸ブロック共重合体中の半芳香族ポリエステル単位(ポリアルキレンテレフタレート単位)のモル%を表す。
【0027】
なお上記式(1)中、ポリ乳酸単位は実質的にL−乳酸構造、またはD−乳酸構造からなるものである。本発明の効果を発揮する範囲であれば、Lー乳酸単位とD−乳酸単位の組成に制限はないが、通常L−乳酸単位が90モル%以上のポリ乳酸が耐熱性の面で好ましく、より好ましくは95モル%以上である。
【0028】
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体中のxとyのモル%比率(x/y)は、ポリ乳酸ブロック共重合体の耐熱性と透明性の面から、95/5〜75/25であり、好ましくは90/10〜80/20、さらに好ましくは90/10〜85/15である。
【0029】
上記ポリ乳酸単位とポリアルキレンテレフタレート単位との比率を重量分率に換算すると、90/10〜55/45であり、好ましくは80/20〜60/40、さらに好ましくは80/20〜70/30である。
【0030】
上記式中Rは炭素数2〜6のアルキレン基を表し、それぞれ単一であっても1種類以上の混合物であってもよい。炭素数が2〜6のアルキレン基としては、具体的には炭素数が2のエチレン、炭素数が3の1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、炭素数が4の1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、炭素数が5の3,3−ジメチルー1,3−プロピニレン、1,5−ペンチニレン、炭素数が6の1,6−ヘキサメチレンまたはこれらの混合物が挙げられるが、得られるポリ乳酸ブロック共重合体の耐熱性、透明性、生産性の面から、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましく、炭素数2または4のアルキレン基がより好ましく、炭素数4のアルキレン基が特に好ましい。
【0031】
また本発明のポリ乳酸ブロック共重合体は、耐熱性、および熱安定性の面から、DSCにより測定される2つの融点のうち、高融点側の融点が200〜260℃のものであり、好ましくは210〜250℃、より好ましくは220〜240℃のものである。
【0032】
ここで規定する融点とは、示差走査型熱量計(DSC)により測定した値であり、測定条件は、試料10mg、窒素雰囲気下中、昇温速度20℃/分で測定した値である。
【0033】
本発明において、上記一般式(1)、(2)で表されるポリ乳酸単位と半芳香族ポリエステル単位は、ポリ乳酸中、あるいは半芳香族ポリエステル中のカルボキシ基、水酸基からなる共有結合により連結することもできるし、あるいは、各セグメント間の少なくとも一部は、多官能性化合物との共有結合を介して結合していてもよい。
【0034】
多官能性化合物としては、特に限定されるものではないが、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコール、多価エポキシ化合物などがあり、具体的には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物などの多価カルボン酸無水物、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの多価イソシアネート、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどの多価エポキシ化合物などが挙げられる。好ましくは、多価カルボン酸無水物、多価イソシアネート、多価アルコール、多価エポキシ化合物であり、特に多価イソシアネート、多価エポキシ化合物がより好ましい。
【0035】
本発明のポリ乳酸ブロック共重合は、本発明の性能を損なわない範囲で、さらに他の成分単位を含んでいてもよい。例えば、後述のように半芳香族ポリエステル中に他の成分単位を共重合すること等により導入することができる。
【0036】
さらに本発明において、ポリ乳酸ブロック共重合体の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、5万以上であることが機械物性の点で好ましい。特に、5万〜120万であることが成形性および機械物性の点でより好ましい。なお、数重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量の値である。
【0037】
次に、本発明のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法について説明する。本発明のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法は、上述の特徴を有するポリ乳酸ブロック共重合体が得られれば特に限定されるものではないが、下記記載の(a)、(b)の方法により製造することができる。
【0038】
(a)ポリ乳酸と融点が200〜260℃で、かつ数平均分子量が500〜10000の半芳香族ポリエステルとを、触媒存在下で溶融混合した後、固相重合する方法。
【0039】
(b)ポリ乳酸、融点が200〜260℃で、かつ数平均分子量が500〜、10000の半芳香族ポリエステル、および多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコール、および多価エポキシ化合物から選択される多官能性化合物を溶融混合する方法。
【0040】
ここでまず、上記製造方法(a)、(b)に用いられる一方の原料であるポリ乳酸の製造方法について説明する。
【0041】
本発明において使用するポリ乳酸を製造する方法としては、特に限定されず一般のポリ乳酸の製造方法を利用することができる。具体的には、L−乳酸またはD−乳酸を原料として、一旦、環状2量体であるL−ラクチドまたはD−ラクチドを生成せしめ、その後、開環重合を行う2段階のラクチド法と、当該原料を溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法、溶媒を用いずに直接脱水縮合後、固相重合をして高分子量化する方法などが知られており、いずれの製法を利用してもよい。
【0042】
また、重合反応に触媒を用いることにより、重合時間を短縮することができる。触媒としては、例えば、錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウムなどの金属及びその誘導体が挙げられる。誘導体としては、金属アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物が好ましい。具体的には、塩化錫、オクチル酸錫、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、酸化鉛、炭酸鉛、塩化チタン、アルコキシチタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。これらの中でも、錫化合物が好ましく、特にオクチル酸錫がより好ましい。
【0043】
触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、使用する原料(L−乳酸、D−乳酸、L−ラクチドまたはD−ラクチド等)100重量部に対して0.001〜2重量部が好ましく、とくに0.001〜1重量部がより好ましい。触媒量が0.001重量部未満では重合時間の短縮効果が低下し、2重量部を越えるとポリ乳酸の熱安定性が低下する。
【0044】
次に上記製造方法(a)、(b)において使用されるもう一方の原料である半芳香族ポリエステルについて説明する。
【0045】
本発明で使用される半芳香族ポリエステルは、最終に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の耐熱性、および溶融時の透明性、フィルム、繊維化した時の透明性の面から、数平均分子量が500〜10000であることが好ましく、さらに好ましくは500〜9000、特に好ましくは900〜8000である。500より小さいとポリ乳酸ブロック共重合体の耐熱性が低く、10000より高いと相溶性が悪く、溶融時に白濁し、かつフィルム、繊維に加工した時に、透明性が低下する。
【0046】
なお、数平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート換算の数平均分子量の値である。
【0047】
本発明で言う半芳香族ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸または芳香族ジカルボン酸エステルと脂肪族ジオールとを重合して得られる構造単位を主成分として含有する半芳香族ポリエステルである。ここで「主成分として含有する」とは本発明の効果が発現する範囲であればよく、特に制限はないが、通常は上記の構造単位を80モル%程度以上含有するものを言う。
【0048】
芳香族ジカルボン酸または芳香族ジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチルエステルを使用することができる。また脂肪族ジオールとしては炭素数2〜6の脂肪族ジオールを使用することができ、具体的にはエチレングリコ−ル、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3ーブタンジオール、3,3−ジメチルー1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどから選ばれる一種または2種以上の混合物が挙げられるが、好ましくは炭素数が2〜4のエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3ーブタンジオール、1,4−ブタンジオールから選ばれる1種または2種以上の混合物、さらに好ましくは1,4−ブタンジオールである。すなわち、半芳香族ポリエステル単位としては、ポリブチレンテレフタレートを主成分とするものであることが好ましい。
【0049】
本発明の半芳香族ポリエステルは、性能を損なわない範囲で、さらに他の成分単位を含んでいてもよい。具体的には、多価カルボン酸、多価アルコール、乳酸以外のヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類またはそれらの誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類またはそれらの誘導体、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などが挙げられる。
【0050】
上記製造方法(a)、(b)の方法においてポリ乳酸成分と半芳香族ポリエステルの成分の混合モル分率は(ポリ乳酸/半芳香族ポリエステル)、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体中のxとyのモル%比率(x/y)が、95/5〜75/25であり、好ましくは90/10〜80/20、さらに好ましくは90/10〜85/15であるように、設定することができる。仕込み混合モル分率と実際に得られるポリ乳酸ブロック共重合体中のモル分率は、本発明の製造方法によれば、通常大きな差はないが、ポリ乳酸成分と半芳香族ポリエステルの成分の混合モル分率は(ポリ乳酸/半芳香族ポリエステル)、95/5〜75/25であり、好ましくは90/10〜80/20、さらに好ましくは90/10〜85/15(モル%)である。
【0051】
前述した製造方法(a)で製造する場合は、上記ポリ乳酸成分と半芳香族ポリエステル成分を触媒存在下で溶融混合した後、固相重合することにより目的のポリ乳酸ブロック共重合体を得ることができる。
【0052】
この製造方法により、ポリ乳酸単位、半芳香族ポリエステル単位とがポリ乳酸中、あるいは半芳香族中のカルボキシ基、水酸基からなる共有結合により連結したポリ乳酸ブロック共重合体が得られる。
【0053】
ポリ乳酸成分と半芳香族ポリエステル成分を溶融混合する方法は、通常公知の方法で行うことができる。例えば、ポリ乳酸および半芳香族ポリエステルを予備混合して、またはせずに押出機などに供給して、150〜280℃の温度範囲において充分混練することにより行うことができるが、混練温度はポリ乳酸単位の分解を抑制する目的、溶融時のポリマーの透明性を達成する目的から、160〜250℃の温度範囲が好ましく、より好ましくは180〜230℃である。なお、溶融状態で反応を行う場合には、ポリマーを溶融させるために、ポリマーの融点以上で反応させることが好ましいが、ポリ乳酸ブロック共重合体の分解反応を抑制するという点で、反応物が固まらない程度にできる限り温度を下げて反応を行うことが好ましい。
【0054】
この場合例えば“ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混練機などを用いることができる。
【0055】
また、この時触媒を用いることにより、ポリ乳酸と半芳香族ポリエステルのエステル交換反応によるブロック化を速やかに進行させることができる。このような触媒としては、例えば、錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウムなどの金属及びその誘導体が挙げられる。誘導体としては、金属アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物が好ましい。具体的には、塩化錫、オクチル酸錫、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、酸化鉛、炭酸鉛、塩化チタン、アルコキシチタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。これらの中でも、好ましくはアルコキシチタン、オクチル酸錫である。
【0056】
触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、使用するポリ乳酸と半芳香族ポリエステル100重量部に対して、0.001〜2重量部が好ましく、特に0.005〜0.1重量部がより好ましい。
【0057】
製造法(a)においては、上記のようにして得られたポリ乳酸と半芳香族ポリエステルを溶融混合して得られた混合物は、引き続き固相重合に供する。
【0058】
この時溶融混合して得られた混合物は固相重合に適した大きさの粉粒状に粉砕あるいは、ペレット状の形状で固相重合に供することができる。
【0059】
またこれらの混合物はあらかじめ加熱により、粒状物あるいはペレット形状物を結晶化させると、固相重合速度が上がり、また固相重合時に混合物の融着等が発生しない。この時の加熱温度は、混合物の性状、ポリ乳酸と半芳香族ポリエステルの混合比率や結晶化特性により異なり、混合物の融着が発生せず、結晶化が促進される温度であれば特に制限はなく、混合物の融着が発生しないように、できる限り温度を上げて加熱を行うことが好ましい。通常80〜170℃が好ましく、より好ましくは90〜160℃である。また加熱温度を上記温度範囲条件において、徐々に昇温することもできる。この時の加熱時間も同様に、混合物の性状、ポリ乳酸と半芳香族ポリエステルの混合比率や結晶化特性により異なり、混合物の融着が発生せず、結晶化が促進される程度の時間であれば特に制限はないが、通常5分から5時間が好ましく、より好ましくは10分から1時間である。
【0060】
上記のごとくにして得られたポリ乳酸と半芳香族ポリエステルの混合物の固相重合は、通常公知の方法により行うことができるが、90〜170℃の温度で乾燥気流下、あるいは減圧下加熱することで行うことができる。
【0061】
乾燥気流下、あるいは減圧下加熱しながらの固相重合温度は90〜170℃であるが、好ましくは100〜160℃である。
【0062】
乾燥気流下とは通常窒素、ヘリウムなどの不活性ガス気流下で行うことができ、この時の固相重合時間は、特に制限はないが、通常1時間以上500時間以下、好ましくは1時間以上400時間以下である。
【0063】
また減圧下加熱しながらの固相重合時間もまた特に制限はないが、通常1時間から100時間、好ましくは1時間から50時間である。
【0064】
つぎに製造方法(b)について説明する。
【0065】
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体は、ポリ乳酸、融点が200〜260℃で、かつ数平均分子量が500〜10000の半芳香族ポリエステル、および多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコール、および多価エポキシ化合物から選択される多官能性化合物を溶融混合することにより製造することができる。この製造方法により、ポリ乳酸単位、半芳香族ポリエステル単位の少なくとも一部が、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコールおよび多価エポキシ化合物から選択される多官能性化合物との共有結合を介して結合しているポリ乳酸ブロック共重合体が得られる。
【0066】
本製造方法で用いられる多官能性化合物の具体例は前記したとおりのものである。
【0067】
多官能性化合物の配合量は、特に限定されるものではないが、ポリ乳酸成分と半芳香族ポリエステル100重量部に対して0.001重量部以上、5重量部以下が好ましく、また0.01重量部以上、3重量部以下がより好ましい。
【0068】
上記製造方法(b)において、ポリ乳酸、半芳香族ポリエステルおよび多官能性化合物を溶融混合する方法は、通常公知の方法で行うことができる。例えば、ポリ乳酸および半芳香族ポリエステルを予備混合して、またはせずに押出機などに供給して、150℃から280℃の温度範囲において充分混練することにより行うことができるが、混練温度はポリ乳酸単位の分解を抑制する目的、溶融時のポリマーの透明性を達成する目的から、160℃から250℃の温度範囲が好ましく、より好ましくは180℃から230℃である。なお、溶融状態で反応を行う場合には、ポリマーを溶融させるために、ポリマーの融点以上で反応させることが好ましいが、ポリ乳酸ブロック共重合体の分解反応を抑制するという点で、反応物が固まらない程度にできる限り温度を下げて反応を行うことが好ましい。
【0069】
この場合例えば“ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混練機、撹拌槽型反応器、ミキサー型反応器、塔型反応器および押出し機型反応器などを用いることができる。また、これらの反応器は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0070】
また、この時触媒を用いることにより、ポリ乳酸、半芳香族ポリエステルおよび多官能性化合物の反応によりブロック化を速やかに進行させることができる。このような触媒としては、例えば、錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウムなどの金属及びその誘導体が挙げられる。誘導体としては、金属アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物が好ましい。具体的には、塩化錫、オクチル酸錫、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、酸化鉛、炭酸鉛、塩化チタン、アルコキシチタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。これらの中でも、特に好ましくはアルコキシチタン、オクチル酸錫である。
【0071】
触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、使用するポリ乳酸と半芳香族ポリエステル100重量部に対して、0.001〜2重量部が好ましく、0.005〜0.1重量部が特に好ましい。
【0072】
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体またはポリ乳酸組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常の添加剤、例えば紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、離形剤、染料および顔料を含む着色剤などの1種または2種以上を添加することができる。
【0073】
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体またはポリ乳酸組成物は、成形品として広く用いることができる。成形品とは、フィルム、シート、繊維・布、不織布、射出成形品、押出し成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、および他の材料との複合体などであり、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品またはその他の用途として有用である。
【0074】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ここで、実施例中の部数は、重量部を示す。
【0075】
(1)溶融混合と溶融時透明性評価
東洋精機製小型ブラベンダーを用い、230℃、30分間所定の成分を配合して溶融混合した。溶融時の透明性は黙視により観察し、透明:○、やや白濁:△、白濁:×により判断した。
【0076】
(2)分子量測定
数平均分子量、重量平均分子量は、前述したようにゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量の値である。GPC測定は、検出器にWATERS社示差屈折計WATERS410を用い、ポンプにMODEL510高速液体クロマトグラフィーを用い、カラムにShodex GPC HFIP−806MとShodex GPC HFIP−LGを直列に接続したものを用いて行った。測定条件は、流速0.5mL/minとし、溶媒にヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)またはクロロホルムを用い、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1mL注入した。
【0077】
(3)NMR測定
NMR装置として日本電子データム製のJNM−AL400、FT NMR SYSTEM、AL SPECTROMETERを用い、測定物を溶解する重水素化溶媒中、例えば重水素化クロロホルム、重水素化DMSO、重水素化ヘキサフロロイソプロパノールなどの重水素化溶媒を用い、サンプル濃度0.1〜0.5wt/vol%で測定した。積算時間はスペクトルのS/N比より適宜調整した。
【0078】
(4)ポリ乳酸ブロックポリマー組成とエステル交換率
サンプル50mgを重水素化クロロホルム5mlに2時間室温で溶解させた後、
重水素化クロロホルム不溶部分をフィルターで濾過し、炉液部分をNMR測定サンプルとした。NMRスペクトル中、8.1ppm付近に観察される半芳香族ポリエステル単位由来の芳香族のピークと5.2ppmに観察されるポリ乳酸単位由来のピークから、下記式に基づきエステル交換率を算出した。
【0079】
クロロホルム可溶部の半芳香族ポリエステル(モル%)=
(8.0ppmのシグナル強度/4)/((5.2ppmのシグナル強度)+(8.0ppmのシグナル強度))/4×100
エステル交換率=(クロロホルム可溶部の半芳香族ポリエステル(モル%))/(仕込み半芳香族ポリエステル(モル%))×100
なおブロックポリマー中のポリ乳酸組成とポリエステル組成は、重水素化ヘキサフロロイソプロパノールを用い、半芳香族ポリエステル由来の8.0ppmのシグナル強度、およびポリ乳酸由来の5.2ppmのピーク強度比より算出した。
【0080】
(5)フィルム作成
卓上プレス機を用い、プレス温度230℃、金型温度80℃で厚み200μmのフィルムを作成した。
【0081】
(6)融点測定
上記フィルムを用い、セイコー電子工業製 ロボットDSC RDC220を用い、窒素雰囲気下、30℃から250℃まで20℃/分の昇温温度で昇温後、250℃で5分間保持して試料を完全に融解させ、250℃から30℃まで20℃/分で降温、30℃で5分間保持した後、30℃から250℃まで20℃/分の昇温速度で昇温した時に観察される低融点側の融点(Tm1)および高融点側の融点(Tm2)を求めた。
【0082】
(7)透明性評価
上記により得られたフィルムを肉眼観察し下記3段階で評価した。◎:透明、△:やや白濁、×:白色
(8)耐熱性評価
上記フィルムを1mm×5cmのたんざく状に切り、アイロンを所定の温度に加熱し、10秒間アイロンをのせた後のフィルムの形状を観察した。形状が変化しない場合は、温度を10℃ずつ上昇させ、形状が変化しない最高温度をアイロン耐熱温度とした。アイロンの設定温度は100℃から210℃まで変更させた。
【0083】
参考例1
L−ラクチド 50g、エチレングリコール(EG:0.04g)を撹拌装置のついた反応容器中で、窒素雰囲気下、120℃で均一に溶解させた後、温度を150℃にし、オクチル酸錫 0.2gを加えた後、4時間重合反応させた。重合反応終了後、反応物をクロロホルムに溶解させ、メタノール中で撹拌しながら沈殿させ、モノマーを完全に除去して、ポリ−L−乳酸(PLA)を得た(収率85%)。その分子量と融点は下記のとおりである。
PLA:Mn=21400、Mw/Mn=4.2(HFIP中)、Tm=166℃。
【0084】
参考例2
テレフタル酸(40g)と1,4−ブタンジオール(43g)を攪拌機のついた3口フラスコに秤量し、チタンテトラブトキシド(0.021g)の存在下150℃で1時間加熱攪拌し、さらに反応温度を150℃から230℃まで5時間かけて徐々に昇温した。得られた融液をステンレスの受け皿に吐出し、冷却後粉砕した(PBT−1)。その分子量と融点は下記のとおりである。
PBT−1:Mn=400、Mw/Mn=1.2(HFIP中)、Tm=180℃。
【0085】
参考例3
テレフタル酸(40g)と1,4−ブタンジオール(43g)を攪拌機のついた3口フラスコに秤量し、チタンテトラブトキシド(0.021g)の存在下150℃で1時間加熱攪拌し、さらに反応温度を150℃から250℃まで6時間かけて徐々に昇温した。得られた融液をステンレスの受け皿に吐出し、冷却後粉砕した(PBT−2)。その分子量と融点は下記のとおりである。
PBT−2:Mn=1100、Mw/Mn=2.1(HFIP中)、Tm=185℃。
【0086】
参考例4
テレフタル酸(40g)と1,4−ブタンジオール(43g)を減圧ラインのついた、試験管重合装置に秤量し、チタンテトラブトキシド(0.021g)の存在下150℃で1時間加熱攪拌し、さらに反応温度を150℃から230℃まで5時間かけて徐々に昇温した。その後1時間かけて徐々に減圧度を上げ、減圧度0.1mmHgに到達させた。0.1mmHg到達後、3時間反応させた後、内容物を吐出した(PBT−3)。その分子量と融点は下記のとおりである。
PBT−3:Mn=15100,Mw/Mn=3.2(HFIP中)、Tm=222℃。
【0087】
参考例5
参考例2で調製したPBT−1と参考例4で調製したPBTー3を、総量100gとし、重量比で80:20(重量%)とし、チタンテトラブトキシド(0.01g)を添加し、ブラベンダーを用い、250℃で30分間エステル交換させることで、PBT−4を調整した。その分子量と融点は下記のとおりである。
PBT−4:Mn=8800,Mw/Mn=3.5(HFIP中)、Tm=212℃。
【0088】
参考例6
参考例3で調製したPBT−2と参考例4で調製したPBT−3を、総量100gとし、重量比50:50(重量%)とし、チタンテトラブトキシド(0.01g)を添加し、ブラベンダーを用い、250℃で30分間エステル交換させることで、PBT−5を調整した。その分子量と融点は下記のとおりである。
PBT−5:Mn=6010、Mw/Mn=4.1(HFIP中)、Tm=204℃。
【0089】
参考例7
テレフタル酸(40g)とエチレングリコール(35g)を攪拌機のついた3口フラスコに秤量し、チタンテトラブトキシド(0.021g)の存在下150℃で1時間加熱攪拌し、さらに反応温度を150℃から250℃まで6時間かけて徐々に昇温した。得られた融液をステンレスの受け皿に吐出し、冷却後粉砕した(PET−1)。その分子量と融点は下記のとおりである。
【0090】
PET−1:Mn=900、Mw/Mn=2.1(HFIP中)、Tm=220℃。
【0091】
実施例1〜11、比較例1〜5
実施例1〜10、比較例3〜5は、参考例1で調製したポリ乳酸成分と、上記参考例2〜6で調製した半芳香族ポリエステル成分を総量100gになるように配合し、チタンテトラブトキシド(0.005g)を添加し、230℃で30分間溶融混合した。
【0092】
PET−1を半芳香族成分として使用した実施例11は、溶融混合温度を260℃に設定し、溶融混合時間を15分とした。
【0093】
上記方法により得られた溶融混合物を小型粉砕機で粉砕した後、実施例1〜10では、窒素雰囲気下100℃で1時間、120℃で1時間、130℃で1時間、140℃で1時間と、徐々に昇温し、加熱することにより結晶化を促進させた。その後窒素気流下140℃で200時間固相重合した。実施例11では窒素雰囲気下100℃、120℃、140℃、160℃でそれぞれ1時間加熱することにより結晶化を促進させた後、窒素気流下、160℃で200時間固相重合した。なお比較例1、2では参考例で調製したPLA、PBT−4を各単独で使用した。一連の反応条件、および反応に使用したポリ乳酸成分、半芳香族成分の熱特性を表1に示す。
【0094】
上記表1の条件により得られたポリマーをプレス成形後(実施例1〜10、比較例1〜5:プレス温度230℃、実施例11、プレス温度250℃)、DSC測定、NMRによるエステル交換率、フィルムの透明性、アイロン耐熱性を評価した。一連のポリマーについて、GPC測定結果、DSC測定結果、透明性、アイロン耐熱性を表2に示す。
【0095】
実施例1〜11、比較例3〜5のポリ乳酸と半芳香族ポリエステルの仕込み組成と得られたポリマー中のポリ乳酸と半芳香族ポリエステル組成の比較から、仕込み組成とポリマー中組成はNMR誤差範囲内でほぼ一致している。
【0096】
実施例1〜8より、少量の低分子量PBT(Mn=8800、6010、1100)とPLAを触媒存在下、溶融混合した後、固相重合することにより、PLAとPBTのエステル交換が定量的に進行し、かつ融点降下が生じないことがわかる。すなわちPLAとPBTから構成されるブロック共重合体が得られたことがわかる。PLA中のPBT量が5〜25モル%の範囲において、PBTの結晶性が保持できると同時に、透明なフィルムが得られることがわかる。
【0097】
また実施例9、10では分子量Mn=500のPBTを使用したところ、PBTー5(Mn=6010)を使用した実施例2や、PBT−4(Mn=8800)を使用した実施例3に比べ、アイロン耐熱性の若干の低下が認められるものの、フィルムの透明性、アイロン耐熱性など本発明の効果を発揮するレベルの特徴が得られていることがわかる。
【0098】
またPET−1(Mn=900、Tm=220℃)を用いた場合も、同様にPLAとPETとのエステル交換が定量的に進行しており、PLAとPETから構成されるブロック共重合体が得られ、かつフィルムの透明性、アイロン耐熱性に優れることがわかる。
【0099】
また上記実施例1〜11と比較例1、2の比較からも明らかなように、PLA単独ではアイロン耐熱性に劣り、またPBT単独は生分解性が損なわれるのは周知のとおりであるが、結晶性が高く、フィルムの透明性が損なわれる。
【0100】
また比較例3〜5においてPBT成分を30モル%、40モル%と増加させると、比較例3〜5のいずれもエステル交換反応は定量的に進行するものの、PBTー4(Mn=8800)を本発明の範囲以上に配合した比較例3、4ではアイロン耐熱性が向上するものの、フィルム透明性が顕著に低下し、本発明の効果が失われることがわかる。またPBT−2(Mn=1100)を本発明の範囲以上に配合した比較例5では、結晶性が低下し、アイロン耐熱性が低下することがわかる。
【0101】
実施例12〜14
実施例12〜14では参考例で調製したポリ乳酸成分と、半芳香族ポリエステル成分を総量100gになるように配合し、実施例12ではヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を1g、実施例13では無水ピロメリット酸を1g、実施例14ではビスフェノールA型ジエポキシド1gをチタンテトラブトキシド(0.005g)と共に添加し、230℃、30分間溶融混合し、ポリ乳酸ブロック共重合体を得た。それ以外については実施例1〜11と同様の評価を行った。なお反応率は上記エステル交換率と同様の方法により、算出したものを反応率とした。一連の条件および結果を表3、表4に示す。
【0102】
実施例12〜14、比較例6〜8の結果から、ヘキサメチレンジイソシアネート、無水ピリメリット酸またはビスフェノールA−ジエポキシドを添加すると、定量的に反応が進行し、ポリ乳酸ブロックが得られ、耐熱性、透明性に優れたポリマーになることがわかる。一方本発明の範囲を超えた量のPBTを同様の方法で反応させた場合、ポリ乳酸ブロック共重合体が得られるものの、透明性に劣り、また耐熱性も不充分であることがわかる。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
【0107】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリ乳酸と特定の構造と特定の熱的特性からなる半芳香族ポリエステル単位からなるポリ乳酸ブロック共重合体により、耐熱性に優れ、かつ透明性に優れるポリ乳酸ブロック共重合体、その製造方法および成形品を提供できる。
Claims (6)
- 半芳香族ポリエステル単位がポリブチレンテレフタレートを主成分とするものである請求項1記載のポリ乳酸ブロック共重合体。
- ポリ乳酸単位と半芳香族ポリエステル単位の少なくとも一部が、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコール、および多価エポキシ化合物から選択される多官能性化合物との共有結合を介して結合したものである請求項1または2に記載のポリ乳酸ブロック共重合体。
- ポリ乳酸と融点が200〜260℃で、かつ数平均分子量が500〜10000の半芳香族ポリエステルとを、触媒存在下で溶融混合した後、固相重合することを特徴とする請求項1または2記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
- ポリ乳酸、融点が200〜260℃で、かつ数平均分子量が500〜10000の半芳香族ポリエステル、および多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコール、および多価エポキシ化合物から選択される多官能性化合物を溶融混合することを特徴とする請求項3記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体を成形してなる成形品。
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