JP5404269B2 - 脱りん方法 - Google Patents
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Description
特許文献1では、Siを含有する溶銑を、塩基度(CaO/SiO2 ;重量比)の値が1.5〜3.0の範囲であるスラグを用いて、上底吹き転炉で脱りん精錬するにあたり、底吹き攪拌力ΣεBottomの値を1.5〜3.4(Kw/ton)の範囲とし、且つ、上吹き送酸速度QO2 gas と鉄鉱石供給による酸素分換算送酸速度QO2 ore の総和ΣQO2 (Nm3 /min/ton)の値を攪拌力の値に応じて、上吹き送酸形態によって決まる、吹錬期間中の(L/L0 )の平均値(L/L0 )の値を0.25以下にしている。
特許文献2では、溶銑を装入した反応処理容器底部からガス攪拌を行いつつ、生石灰の過半量を塊状で上方添加し、気体酸素を上吹ランスから吹き付け、溶銑脱燐処理をする際に、生石灰源として粉体の生石灰から造粒した造粒生石灰を添加し、且つ、脱燐処理後の塩基度を1.5〜2.0にしている。
さて、特許文献2の技術では生石灰の粒径が開示され、特許文献3ではスラグ中MgOを制御して脱りん処理を行うことが開示されているが、これらの技術は、サイクルスラグを前提として脱りん処理を行うものではないため、特許文献1〜特許文献3の技術を組み合わせたとしても、スラグの滓化性などを向上させるのは非常に難しいのが実情である。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、脱炭工程に先だって上底吹き転炉型精錬容器にて気体酸素、固体酸素源及びリサイクルスラグであるMgOを含む脱炭スラグを供給して、処理後の温度が1290〜1310℃となるように溶銑の脱りん処理を行うに際し、処理中に供給する酸素量であって脱珪反応に使用される酸素以外の酸素量を10Nm3/t以上とし、投入する生石灰の粒径を5〜40mmとし、気体酸素の吹き込みの際の溶湯の凹み深さLと浴の深さL0との比を0.01〜0.20にすると共に、底吹き攪拌動力密度εを0.5〜3.5kw/tとし、脱りん処理後のスラグ量に対するMgO量が1.9〜4.5質量%となるように、前記脱炭スラグを供給する点にある。
図1は、本発明の脱りん方法(脱りん工程)を含む製鋼工程を示したものである。なお、以下の説明では、溶銑や溶鋼のことを溶湯として説明する。
図1に示すように、一般的に、製鋼工程においては、まず、高炉1から溶湯2を出湯した後、溶湯2を鍋7等にて脱硫処理(脱硫工程)を行う。その後、溶湯2を転炉型精錬容器3に装入して溶湯2に対して脱りん処理(脱りん工程)を行い、その溶湯2を転炉4に装入して脱炭処理(脱炭工程)を行う。脱炭処理を行った溶湯2に対しては、脱ガスや成分調整を行う。なお、以下の説明では、溶銑や溶鋼のことを溶湯として説明する。
脱りん処理を行う転炉型精錬容器3は、気体酸素を溶銑2に吹き込む上吹きランス7と炉底から酸素又は不活性ガスを溶銑2に吹き込むの羽口8を備えた上底吹き型であって、上吹きランス7からの気体酸素により酸素を供給し、羽口6からの酸素又は不活性ガスにより溶湯2を攪拌するものである。また、転炉型精錬容器3は、供給装置9を備えている。この供給装置9は、副原料[生石灰、固体酸素源(例えば、酸化鉄)、脱炭スラグ)]を供給するものであって、例えば、ホッパーやシュート等である。
[処理中に投入する酸素量について]
本発明では、脱りん処理を行うに際して、酸素源として気体酸素や固体酸素源を供給しているが、脱りん処理中に供給する酸素量(後述するように、脱珪反応で使用される分を除く)を10Nm3/t以上としている。
[生石灰の粒径について]
脱りん反応は、便宜上、2[P]+5(FeO)+3(CaO)→3(CaO・P2O5)+5Feと示されるように、酸素とCaOが必要である。このCaOが脱りん反応に寄与するためには、スラグ中に溶融する必要があるが、脱りん処理時の処理温度は1250〜1400℃に対し、CaOの融点は文献によって異なるが、2600℃程度であり処理温度よりも非常に高い。このCaOの供給源としては生石灰が一般的であるが、生石灰は大部分CaOからなるため、溶融し難い。従来の技術では、例えば、特開平03−122209や特開2003-12912などに示されるように、蛍石やアルカリ金属酸化物等の融点降下剤を使用することにより、生石灰の融点を下げて溶融し易いようにしていた。このように蛍石等を使用した場合、脱りん処理にて生成したスラグ中には、環境上基準が制限されているフッ素が多く含まれることになり、当該スラグを精錬以外のもの(舗装材や建材等)に使用する際には、スラグの再利用先が制限されるという問題が生じる。
生石灰の粒径が40mmを超えてしまうと、生石灰が溶け難くなってしまうことから、生石灰の粒径は、40mm以下としている。
溶湯の凹み深さLと浴の深さL0との比は、気体酸素の強さを示す指標であり、脱りん処理などでは吹錬状況の指標として良く用いられる。言い換えれば、Lは、吹錬時、即ち、上吹きランス4から溶銑2に向けて酸素を吹き込んだ際の溶湯の凹み深さであり、L0は、非吹錬時、即ち、上吹きランス4から溶湯に向けて酸素を吹き込んでない状態での浴深さである。溶湯の凹み深さLと、上吹きランス4から酸素を吹き込んだ際の酸素流量との関係は、式(4)で求められる。この式(4)は、「鉄冶金反応工学」[改訂新版]2版 瀬川清著 日刊工業新聞刊94頁(5.5)に記載されている一般的な式である。
そのため、本発明では、気体酸素を供給するにあたっては、脱りん効率が低下しないように、気体酸素の衝突圧が小さいソフトブローにて気体酸素を吹き込むこととしている。
具体的には、L/L0が0.01以上0.20以下となる範囲にて、気体酸素を供給することにより上述したソフトブローを行っている。ここで、L/L0が0.20よりも大きくなると、もはやソフトブローとは言えず、気体酸素の衝突圧が強くなるため、上述した理由により脱りん効率は低下する。
L/L0が0.01未満であると、気体酸素の吹き込みが弱すぎるため、例えば、多くの気体酸素が溶湯2の浴面に達する前に、炉内のCOガスと反応し(所謂2次燃焼)、スラグ中の酸化鉄量が少なくなり、脱りん効率が低下する。また、L/L0が0.01未満であると、気体酸素の吹き込みが弱すぎるため、気体酸素の衝突圧によるスラグと溶湯の混合が少なくなるため、反応界面積が小さくなり、結果として脱りん効率が低下する。
脱りん処理においては、溶銑等を攪拌するために底吹きを行う攪拌動力密度も重要である。攪拌動力密度を計算する式としては、森ら(鉄と鋼67(1981),672頁)によって提唱された式、中西ら(鉄と鋼68(1982),A14頁)、によって提唱された式があるが、本発明では底吹き攪拌動力密度を求めるにあたって、式(5)に示すように、森の式を用いた。
底吹き攪拌動力密度が、0.5kw/t未満であり、弱すぎるとると、スラグ−溶銑浴面へのりんの物質移動が遅れるとともに、スラグ中でのCaOの拡散速度が遅くなるため、生石灰の滓化が遅れ、脱りん反応に支障をきたし、脱りん効率が低下する。また、攪拌によるスラグへの熱供給が少なくなると共に、スラグ中のFeO濃度が高くなり、脱りん効率が低下する。
[脱炭スラグについて]
本発明の脱りん処理においては、上述した生石灰とは別にCaO源の一部として脱炭スラグを必ず供給することにしているが、供給する脱炭スラグは、脱りん処理後のスラグ(脱りんスラグということがある)のMgO量が4.5%以下となる範囲で設定することにしている。
表1は、実施条件を示したものである。
転炉型精錬炉に装入した溶湯(溶銑)において、[C]=4.2〜4.6質量%、[Si]=0.2〜0.4質量%、[Mn]=0.2〜0.4質量%、[P]=0.100〜0.130質量%、HMR=90〜100%とした。
また、実施例1〜実施例18では、気体酸素の吹き込みの際の溶湯の凹み深さLと浴の深さL0との比を0.01〜0.20(溶銑凹み深さの欄のL/L0の値が0.01〜0.20の範囲内)とし、底吹き攪拌動力密度εを0.5〜3.5kw/t(攪拌動力密度の欄のεの値が0.5〜3.5の範囲内)とし、投入するMgO量が脱りん処理後のスラグ量に対して4.5%以下となる範囲で脱炭スラグを供給している(脱炭スラグリサイクルの欄の脱炭スラグ投入量の値が、脱炭スラグ限界量よりも低い)。
一方、比較例19〜比較例24では、脱Si外酸素量が10Nm3/t未満であり、供給量が少ないために脱りん効率が低下し、脱りん処理後の[P]を規格値以下にすることができなかった(実験結果の欄、評価「×」)。
以上のように、脱炭スラグを転炉型精錬容器に供給して脱りん処理を行う場合は、MgO量が脱りん処理後のスラグ量に対して4.5%以下となるように脱炭スラグを供給しなければならないと共に、固体酸素源の比率、投入する生石灰の粒径、溶湯の凹み深さLと浴の深さL0との比、底吹き攪拌動力密度εを本発明にしめした条件のように設定する必要がある。これによって、脱炭スラグのようなリサイクルスラグを用いた脱りん処理においても脱りん効率を低下させずに効率良く、脱りん処理を行うことができる。
2 溶湯(溶銑、溶鋼)
3 転炉型精錬容器
4 転炉
5 上吹きランス
6 羽口
7 上吹きランス
8 羽口
9 供給装置
Claims (1)
- 脱炭工程に先だって上底吹き転炉型精錬容器にて気体酸素、固体酸素源及びリサイクルスラグであるMgOを含む脱炭スラグを供給して、処理後の温度が1290〜1310℃となるように溶銑の脱りん処理を行うに際し、
処理中に供給する酸素量であって脱珪反応に使用される酸素以外の酸素量を10Nm3/t以上とし、投入する生石灰の粒径を5〜40mmとし、気体酸素の吹き込みの際の溶湯の凹み深さLと浴の深さL0との比を0.01〜0.20にすると共に、底吹き攪拌動力密度εを0.5〜3.5kw/tとし、脱りん処理後のスラグ量に対するMgO量が1.9〜4.5質量%となるように、前記脱炭スラグを供給することを特徴とする脱りん方法。
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