JP3345677B2 - 溶銑の脱りん方法 - Google Patents

溶銑の脱りん方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は転炉内での溶銑の脱りん
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】製鋼トータルコストのミニマム化や低り
ん鋼の安定溶銑に関して、従来溶銑の脱りん法として、
(1)トーピードカー内の溶銑に脱りん用フラックスを
インジェクションして予備脱りんを行う方法、(2)取
鍋内の溶銑に脱りん用フラックスをインジェクションす
るか、もしくは吹き付けを行い、予備脱りんを行う方
法、あるいは(3)2基の転炉を用いて、一方で脱りん
を行い、他方で脱炭を行う方法(例えば、特開昭63−
195210号公報)が用いられている。
【0003】しかしながら、トーピードカーを用いた場
合、攪拌が弱いため脱りん反応は平衡から遠く、目標の
脱りん量を達成するために必要以上の生石炭等のフラッ
クスを使用しなければならずフラックス原単位が高いと
いう問題がある。また、トーピードカーや溶銑鍋を処理
容器として用いる場合、上吹き送酸速度を大きくして処
理時間を短縮しようとすると、フリーボードが小さいた
めにスラグの泡立ちによる操業上の障害が生じる。プロ
セス(1)で約20分、プロセス(2)で約11分が脱
りん工程の最短処理時間であるのが現状であった。ま
た、プロセス(3)においても送酸速度は高々1.0N
3 /min/tで操業されており、処理時間も約10
分を要していた。
【0004】本発明者らは、かかる問題点を解決するた
め、種々の脱りん実験を行い、下記のことを明らかにし
た。 底吹き攪拌動力を1kW/t以上に確保することによ
り、ほぼ平衡まで脱りん反応が進行すること。 その結果、処理後温度1250〜1400℃の範囲で
は、温度に応じて処理後のスラグ中CaO/SiO2
0.6〜2.5で十分に目標の脱りん量に達すること。
【0005】送酸速度が2.5Nm3 /min/t以
上の高送酸速度下では、脱りん酸素効率の低下がさほど
認められず、脱りん速度定数が向上し、脱りん処理時間
の短縮が可能であること。 処理後のスラグ中T.Fe濃度を10〜20重量%に
することで、脱りん反応をより適正化でき、鉄歩留りを
維持しつつフラックス原単位を低減できること。
【0006】これらの事実に基づき、「フラックス添加
と酸素上吹きおよび底吹き攪拌とを行って溶銑を脱りん
精錬する際に、底吹き攪拌動力が1.0kW/t以上、
上吹き送酸速度が2.5Nm3 /min/t以上、処理
終点温度が1250℃以上1400℃以下、処理後のス
ラグ中CaO/SiO2 が0.6以上2.5以下、T.
Fe濃度が10〜20重量%であることを特徴とする溶
銑の脱りん方法」(特願平05−165790号)を先
に提案し、これにより(1)見かけ平衡に近いところま
で脱りん反応が進行するような十分大きな底吹き攪拌を
与えて、処理温度に応じた最低必要量まで生石灰等のフ
ラックス原単位を低減すること、および(2)送酸速度
を高めることにより処理時間を短縮することを可能にし
た。
【0007】しかしながら、上述の脱りん方法におい
て、底吹き攪拌動力は溶銑量・溶銑温度・底吹きガス流
量から、上吹き送酸速度は溶銑量から予め計算でき、処
理終点温度は熱バランス計算により、処理後のスラグ中
CaO/SiO2 はフラックス量と溶銑成分から配合計
算により推定できるものの、スラグ中T.Fe濃度に関
しては、底吹き攪拌動力、上吹き送酸速度・ランス高
さ、スラグ組成との関係式がこれまでなく、処理前に推
定することが困難で、処理後のスラグを分析するまで判
らないのが実状であった。そのため、送酸速度を変更す
る際や、スクラップ使用量や転炉での脱炭吹止め温度等
の変化に対して熱バランスから溶銑脱りん処理終点の温
度を変更し、それに応じてスラグ中CaO/SiO2
変更する際、処理後のスラグ中T.Feが目標とする1
0〜20重量%から外れ、(1)目標の[P]レベルに
到達しない、(2)[P]外れを防止するためフラック
スを余分に投入しフラックス原単位の平均値が増加す
る、(3)鉄歩留りが悪化するといった障害がしばしば
生じていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前述の問題
点を解決すべく、脱りん処理後のスラグ中T.Fe濃度
を事前に予測し、該濃度が10〜20重量%となるよう
に上吹き送酸速度、ランス高さ、底吹き攪拌動力を調整
して、脱りん反応が適正化された状態で処理を行い、処
理後の[P]濃度を精度良く制御するとともに、平均の
フラックス原単位を低減し、かつ鉄歩留りの低下を極力
抑えようとするものである。
【0009】すなわち、本発明は、処理後の[P]的中
率を向上し、フラックス原単位を低減し、かつ鉄歩留り
の低下を極力抑えた溶銑の脱りん法を提供するものであ
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは下記の通りである。フラックス添加と酸素上吹きお
よび底吹き攪拌とを行って溶銑を脱りん精錬する際に、
底吹き攪拌動力が1.0kW/t以上、上吹き送酸速度
が2.5Nm3/min/t以上、処理後のスラグ中C
aO/SiO2 が0.6以上2.5以下、処理終点温度
が1250℃以上1400℃以下であることを特徴とす
る溶銑の脱りん方法において、式(1)で計算されるス
ラグ中T.Fe濃度が10〜20重量%となるように、
上吹き送酸速度、底吹きガス流量、上吹きランス高さを
制御することを特徴とする溶銑の脱りん方法。
【0011】 スラグ中T.Fe濃度(重量%) =6.49×(上吹き送酸速度)(Nm3/min/t)−5.73×(底吹き攪拌動力)(kW/t) −15.35 ×(L/LO )+9.68|2−CaO/SiO2|+11.73 (1) 以下本発明を詳述する。本発明は、まず底吹き機能の付
いた転炉内に溶銑を装入した後、フラックスを上方もし
くは底吹きインジェクションにより添加し、上吹きラン
スから酸素ガスを吹き付け、底からガス攪拌を行いつ
つ、脱りん精錬を行う。この際、特願平05−1657
90号で示したように、底吹き攪拌動力が1.0kW/
t以上、上吹き送酸速度が2.5Nm3 /min/t以
上、処理終点温度が1250℃以上1400℃以下、処
理後のスラグ中CaO/SiO2 が0.6以上2.5以
下、T.Fe濃度が10〜20重量%とすることで、フ
ラックス原単位を低減し、かつ鉄歩留り低下を極力抑え
た、短時間での脱りん処理が可能となる。
【0012】本発明者らは種々の脱りん実験を行い、処
理後のスラグ中T.Fe濃度と、上吹き送酸速度、ラン
ス高さ、底吹き攪拌動力、スラグ中CaO/SiO2
の関係を調査し、重回帰分析から(1)式で示す関係を
見出した。 スラグ中T.Fe濃度(重量%) =6.49×(上吹き送酸速度)(Nm3/min/t)−5.73×(底吹き攪拌動力)(KW/t) −15.35 ×(L/LO )+9.68|2−CaO/SiO2|+11.73 (1) L :上吹きジェットによる溶鋼の凹み深さ (mm) LO :静止溶鋼深さ (mm) ここで、底吹き攪拌動力は(2)式から(第101,1
02回西山記念技術講座、日本鉄鋼協会、1984,
p.73)計算される値を使用する。
【0013】
【数1】
【0014】また、Lは(3)式から(「鉄冶金反応工
学」,日刊工業新聞社,1969,p.94)計算され
る値を使用する。 L=Lh ・exp(−0.78h/Lh ) (3) Lh =63.0(kFO2/nd)2/3 h :静止湯面からのランス高さ(mm) k :ジェットの干渉係数(−) FO2:上吹き酸素流量(Nm3 /h) n :ランスの孔数(−) d :ランスの孔径(mm) 種々の脱りん実験における処理後のスラク中T.Fe濃
度と(1)式から計算されるT.Fe濃度との関係を図
1に示す。(1)式により処理後のスラグ中T.Fe濃
度を非常に精度良く推定でき、特願平05−16579
0号で示したような、フラックス原単位を低減し、鉄歩
留り低下を極力抑えた効率の良い脱りん処理条件を安定
して実現できることが明らかになった。
【0015】
【実施例】8t試験転炉を用いて、脱りん実験を10チ
ャージ実施した。4.3〜4.6%のC,約0.1%の
P,約0.3%のSiを含む初期温度1180〜130
0℃の約6tの溶銑を6分間精錬した。フラックスとし
て生石灰を処理後のCaO/SiO2 が1.5となるよ
うに配合計算して投入した。上吹き送酸速度は2.5〜
3.5Nm3 /min/t、底吹きはN2 ガス200,
300Nm3 /h(2.0,3.0kW/t)の2条件
で精錬を行い、その際、(1)式から計算されるT.F
e濃度が15%になるようにL/L0 を決定し、(3)
式からランス高さを求めた。また、処理後の溶銑温度が
1350℃一定となるように、スクラップ量を適宜被処
理溶銑と配合した。
【0016】表1、表2(表1のつづき)に、本実施例
における諸元と(1)式から計算されるスラグ中T.F
e濃度と実績T.Fe濃度、目的の[P]濃度と実績
[P]濃度、鉄歩留りおよび生石灰原単位を示す。スラ
グ中T.Fe濃度は計算値の±2%に制御されているこ
とが判る。また、全てのチャージで[P]濃度は目標
[P]濃度以下となっており、制御性が良く効率的な脱
りん処理であることを示している。
【0017】表3には、本実施例における[P]濃度の
的中率、すなわち目標の[P]濃度に達成した割合、
[P]のバラツキ、すなわち目標[P]濃度からの偏差
の平均値、および生石灰原単位と鉄歩留りの平均値を示
す。比較として、(1)式を用いていなかった時の従来
法50チャージにおける各値を併せて示す。従来法と比
較して、[P]濃度の的中率が飛躍的に向上し、[P]
のバラツキも低下して、生石灰原単位が低減され、鉄歩
留り低下の抑制が可能であることが明らかになった。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
【発明の効果】本発明により、処理後の[P]的中率を
向上し、フラックス原単位を低減するとともに、鉄歩留
りの向上を図ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】(1)式で計算されるスラグ中T.Fe濃度と
実績の処理後T.Feの関係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−70626(JP,A) 特公 平2−200715(JP,B2) 鉄と鋼,日本,日本鉄鋼協会,1990 年,Vol.76,1817−1822 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21C 5/35 C21C 1/02 110

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フラックス添加と酸素上吹きおよび底吹
    き攪拌とを行って溶銑を脱りん精錬する際に、底吹き攪
    拌動力が1.0kW/t以上、上吹き送酸速度が2.5
    Nm3 /min/t以上、処理後のスラグ中CaO/S
    iO2 が0.6以上2.5以下、処理終点温度が125
    0℃以上1400℃以下であることを特徴とする溶銑の
    脱りん方法において、式(1)で計算されるスラグ中
    T.Fe濃度が10〜20重量%となるように、上吹き
    送酸速度、底吹きガス流量、上吹きランス高さを制御す
    ることを特徴とする溶銑の脱りん方法。 スラグ中T.Fe濃度(重量%) =6.49×(上吹き送酸速度)(Nm3/min/t)−5.73×(底吹き攪拌動力)(kW/t) −15.35 ×(L/LO )+9.68|2−CaO/SiO2|+11.73 (1) L :上吹きジェットによる溶鋼の凹み深さ LO :静止溶鋼深さ
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