JP4497942B2 - 転炉の操業方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、いずれの方法も脱りん工程から脱炭工程に移行する際、溶銑の移し替えを必要とし、溶銑の温度低下やエネルギーロスの発生を余儀なくしていた。
この問題点を解決するために、特許文献1に開示されたようなダブルスラグ法といわれる方法が採用されてきている。ダブルスラグ法は、溶銑を転炉に装入し(装入工程)、副原料添加と酸素吹込みを行って脱りん精錬を施し(脱りん工程)、所定のりん濃度まで低減させ、前記転炉を傾動して脱りん工程で生成したスラグを排出し(排出工程)、その後、同一転炉にて副原料添加と酸素吹錬により、所定の炭素濃度まで脱炭を行う(脱炭工程)ものである。
また、特許文献2には、ダブルスラグ法による精錬ではないが、ダイナミックコントロールにより、終点制御を行うために、吹錬条件の予定軌道からのずれを修正可能な範囲に制御するようにしたものが開示されている。
また、温度予測にはぶれがあるため、脱炭工程での吹止的中率を向上させるには、特許文献2の技術のように、ダイナミックコントロールにより、ずれを修正可能な範囲に温度制御する必要あるが、ずれを修正可能な範囲に温度制御しても、脱炭工程後の温度が目標温度よりも低くなると、ダイナミック制御の際には、〔C〕を吹き下げることで温度を確保する対応をとる。この場合、C下限外れ、加炭材増、スラグ中(T.Fe)の上昇による鉄歩留低下、耐火物寿命低下を招く。そこで、これを防止するため、スタティック制御の段階で、高価な昇熱材を投入しなければならなくなり、精錬コストが高騰する。さらに、昇熱材の歩留が不安定な(特に黒鉛)ため、昇熱量が不安定となり、吹止温度の的中率が低下するという問題があった。
すなわち、本発明における課題解決のための技術的手段は、転炉内にスクラップと共に装入された溶銑の脱りん精錬を行う脱りん工程と、脱りん工程後の溶銑の脱炭精錬を同一転炉にて行う脱炭工程とを有するダブルスラグ法を用いた転炉の操業方法において、下記に示すステップ(1)〜ステップ(14)により、脱りん処理における操業条件を求めると共に、脱炭処理における操業条件を求めた上で、脱りん処理及び脱炭処理を行う点にある。
(1)最終目標値である脱炭工程が終了して出鋼する際の溶鋼の目標炭素濃度[C]を設定する。
(2)最終目標値である脱炭工程が終了して出鋼する際の溶鋼の目標温度を設定する。
(3)前記最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、中間目標値である脱りん工程後の目標炭素濃度[C]を設定する。
(4)脱りん工程での脱りんに必要とされるスラグ量を、ミニマムスラグ量として算出する。
(5)最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、中間目標値である脱りん工程後の目標温度を設定する。
(6)中間目標値である脱りん工程後の目標温度と、中間目標値である脱りん工程後の目標炭素濃度[C]とを基にして、脱りん工程において投入する副原料の量を求める。
(7)溶銑温度を中間目標値にするべく、脱りん工程における固酸と気酸との投入比率を決定する。
(8)脱りん工程における前記副原料の投入量及び気酸と固酸との比率をもとに、スラグのCaO及びSiO2を算出して、スラグの塩基度を求める。
(9)脱りん工程における熱収支計算を行って、この計算により得られた溶銑の温度が、脱りん工程後の目標温度に比べて20℃〜150℃高くなるように、脱りん工程でのスクラップと溶銑との割合を設定する。脱りん後の目標温度は、1300℃〜1400℃である。
(10)上記ステップ(9)で求めた脱りん工程でのスクラップと溶銑との条件に基づいて、上記ステップ(1)〜ステップ(8)における設定をやり直す。
(11)脱りん処理後の転炉内に残留したスラグ量を求める。
(12)脱りん処理後に残留したスラグ量を基に、脱炭工程での副原料の投入量を算出する。
(13)溶銑温度を最終目標値にするべく、脱炭工程での固酸と気酸との比率を決定する。
(14)脱炭工程における前記副原料の投入量及び気酸と固酸との比率をもとに、スラグのCaO及びSiO2を算出して、脱炭工程におけるスラグの塩基度を求める。
ただし、ミニマムスラグ量は、次式にて示される値である。
ミニマムスラグ量 =(インプットP量−脱りん工程後[P]×溶銑量)
×2.29/脱P後目標(P2O5)
この技術的手段によれば、脱りん工程における総酸素投入量が適当になり、脱りん不良が起こるのを防止できる。しかも、脱炭工程時に熱余裕をもつことができて、脱炭工程の際に高価な昇熱材を使用しなくて済むようになる。
この技術的手段によれば、脱炭工程で必要な酸素量を確保して、良好な脱炭をなし得るようになる。
また、本発明における課題解決のための技術的手段は、溶銑を転炉に装入する装入工程と、転炉内の溶銑の脱りん精錬を行う脱りん工程と、前記脱りん工程で生成されたスラグを転炉から排出する排出工程と、前記排出工程後に同一転炉にて溶銑の脱炭精錬を行う脱炭工程とを備える転炉の操業方法において、
脱炭工程終了後の溶鋼の目標温度を含む最終目標値に基づいて、脱りん工程終了後の溶銑の中間目標値を算出し、
脱炭工程の熱収支が脱炭工程終了後の溶鋼の目標温度に比べて0〜40℃高くなるように、脱りん工程での投入酸素の気酸と固酸との比率を設定することを特徴とする。
また、本発明における課題解決のための技術的手段は、脱りん工程での脱珪に消費される分を除く総酸素投入量を、9〜14Nm3/tに設定したことを特徴とする。
この技術的手段によれば、脱りん工程における総酸素投入量が適当になり、脱りん不良が起こるのを防止できる。
造滓材:
T.CaO=(溶銑[P](%)×3+前チャージスラグ残し量(kg/t)×0.0
02−吹止目標[P](%)×10)×53.8+6.3
T.MgO=(溶銑[P](%)×3+前チャージスラグ残し量(kg/t)×0.0
02−吹止目標[P](%)×10)×9.2+1.9
ただし、T.CaO:脱炭工程にて投入する造滓材中のCaO分(kg/t)
T.MgO:脱炭工程にて投入する造滓材中のMgO分(kg/t)
昇熱材:ゼロ
であることを特徴とするが、これよりも造滓材を増やす場合、その分だけ温度余裕を確保できるように脱りん工程での投入酸素の気酸と固酸の比率を設定すればよい。
この技術的手段によれば、脱りん工程の際にスラグの滓化を促進できて、脱りん効率を上げることが可能になる。
造滓材:脱りん工程後の溶銑の目標りん濃度を得るに必要なスラグ量と塩基度とを確保す
るために必要な量
昇熱材:ゼロ
の条件の下で、
脱りん工程の熱収支が脱りん工程後の溶銑の目標温度に比べて20〜150℃高くなるように、装入工程の溶銑配合率を設定することを特徴とする。
図1は、転炉1を用いた精錬方法の1つであるダブルスラグ法の手順(操業手順)を示したものである。
まず、装入工程として、転炉1を傾動し、炉内にスクラップ2等を装入した上で溶銑3を流し入れるようにする。
その後、溶銑3中のりんPを主に取り除く脱りん工程として、転炉1の炉口1aからランス4を挿入し、溶銑3上面に近づけ、酸素ガスを吹き付けると同時に、炉底から吹き込みガスで溶銑3を撹拌しつつ精錬(吹錬)を開始する。同時に、石灰CaO等の造滓材や酸化鉄FexOy等の冷却材、すなわち副原料を投入することで、りんPは投入された酸素と反応してスラグ相に移行し、溶銑3の上方に浮いた状態で積層するようになる。このスラグ5の中には未反応のCaOが多く含まれるため、脱りん能力を有するものとなっている。
なお、以下、りんPと反応する酸素の内、ランス4からの吹き込まれたものを気酸と呼び、酸化鉄FexOyを起源とする酸素を固酸と呼ぶ。また、溶銑(溶鋼)中の成分Aの濃度を[A]と表記し、スラグ中の成分Aの濃度を(A)と表記する。
次に、脱りん工程により生成されたスラグ5を、転炉1を炉前側へ傾けることで、外部に排出するようにしている。排出されたスラグ5は、転炉1下方に配置された移送手段6により運び出されるようになっている(排出工程)。しかしながら、溶銑を排出することなくスラグ5を完全に排出することは困難であり、スラグは30%程度残る。
脱炭工程では溶鋼3の出鋼温度Tが1600〜1700℃程度に設定され、脱りん工程での溶銑3の温度Tより高温であるため、排滓工程後に炉内に残留したスラグ5に新たに副原料を追加投入して生成させた脱炭スラグ5Aの脱りん能力は低く、その結果、脱炭スラグ5Aのりん濃度(P)は低く、スラグ5A自体は脱りん工程においてはりん能力が十分にあるものとなっている。
なお、脱りん工程であっても、脱炭や脱珪は行われており、脱炭工程であっても、投入された副原料により脱りんが行われ、逐次スラグ5及び5Aが生成される。
上記転炉1の制御には、各工程での物質収支や熱収支計算、反応速度計算にもとづいて組み立てられた精錬モデルを用いており、この精錬モデルをプロセスコンピュータ等で計算することで導出される酸素や副原料の投入量をガイダンス値(指針値)として参照し、それに基づき転炉1を操業するようにしている(スタティックコントロール)。
前記ガイダンス値に基づいて、精錬終点の[C]と温度Tを一度の精錬で最終目標値に合致させつつ低コストで転炉1の操業を行うようにしている。
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
まず、鋼種毎に脱りん精錬、脱炭精錬に必要な投入酸素量を以下のように分配する。即ち、脱りん工程での脱珪用を除く総酸素投入量を、溶銑1トンあたり9〜14Nm3(9〜14Nm3/t)、好ましくは溶銑1トンあたり11Nm3(11Nm3/t)に設定し、脱炭工程での総酸素投入量を、脱炭精錬と脱りん精錬とに必要な酸素投入量から脱りん工程での総酸素投入量を減算した量に設定する(S201)。酸素投入量をこのように設定したのは、脱りん吹錬にて、酸素投入量が9Nm3/tよりも少ないと、脱P不良を起こし、反対に、酸素投入量が14Nm3/tよりも多いと、脱C吹錬時の熱余裕が無くなってしまい、高価な昇熱材(FeSi,黒鉛など)を使用することになるからである。
その後、当該脱りん工程での脱りんに必要とされるスラグ量を、ミニマムスラグ量(中間スラグ量)として算出する(S203)。
脱りん工程における溶銑3中の[P]が一定値(0.03%)以下の場合、酸素と結合してスラグ相へ移行する反応スピードが非常に遅くなり、スラグ5による脱りんがほとんど行われない状況となる。すなわち、溶銑3中のりん供給が律速となって脱りん効率が非常に低下するようになる。かかるりん供給律速になるまでの脱P量を吸収するのに最低限必要となるスラグ量をミニマムスラグ量と呼ぶ。ミニマムスラグ量より多い量のスラグ5を生成したとしても、脱りん処理能力は大きく向上することはなく、スラグ排出量のみが増大することとなり非効率である。かかるミニマムスラグ量を可能な限り精度よく算出し、それに基づき操業を行うことは非常に有利である。
ミニマムスラグ量 =(インプットP量−脱りん工程後[P]×溶銑量)×α ・・・ (1)
さらに、中間目標値である脱りん工程後の目標温度Tを設定する(S204)。ここでは、溶銑温度が1300°C以下になると、スラグの滓化が促進せず、脱りん効率が低下し、1400°C以上になると、脱りん効率が低下するため、目標温度Tを1300°C〜1400°Cの間に設定する。
ところが、前記副原料の投入により溶銑温度Tが必要以上に低下する場合がある。そこで、溶銑温度Tを中間目標値に合致させるべく固酸と気酸との比率を決定し、吹き込み酸素量などを決めるようにしている(S206)。気酸すなわちランス4から吹き込まれる酸素および固酸の分解により供給される酸素は、溶銑3中の炭素Cと反応して発熱するが、その内、固酸すなわち冷却材である酸化鉄FexOyは、溶銑3中で酸素O2と鉄Feとに分解する際に大きく吸熱する。したがって、気酸と固酸との比率を調整することで溶銑3の温度Tを上昇又は下降させて中間目標値とすることができる。
これらの値が適切でない場合は、投入された副原料により形成されたスラグ5の脱りん能力が著しく低下するため、再度、S205,S206に戻り、再計算を行った上で、適切な塩基度C/Sとなるように、副原料の投入量および、気酸と固酸との比率を算出するとよい。
排出工程で排出されず転炉1内に残留するスラグ量の測定は、排出したスラグ重量を測定して脱Pスラグ量より差し引いて行った。その他の方法として、目視や画像処理手法を用いて測定してもよい(S208)。
S208における測定結果をもとに、繰り越しスラグ量が多ければ、炉内に存在するPが多いということであり、脱炭工程で投入する副原料の量を増やす必要がある。スラグ量の実績から、より正確な気酸と固酸との比率を求めたり、信頼度の高い塩基度C/Sを計算で算出することができるようになる。つまり、副原料の過剰使用や適正値を外れた量での使用を防ぐことができる。
このようにして求められた脱炭工程での副原料の投入量および、気酸と固酸との比率のガイダンス値に基づき、転炉1の操業を行うようにする。
続いて、脱りん工程におけるガイダンス値を入力値、最終目標値を出力値として、脱炭工程でのガイダンス値を算出するようにしている。
次に、溶銑温度Tを最終目標値にするべく、固酸と気酸との比率を決定する(S210)。気酸が多ければ溶銑3の温度Tは上昇し、固酸が多ければ溶銑3の温度Tは下降する傾向にあるため、気酸と固酸との比率を調整することで溶銑3の温度Tを最終目標値とすることができるようになる。
S209→S210→S211により、求められた副原料の投入量および、気酸と固酸との比率は、脱炭工程における転炉1操業のガイダンス値であり、それに基づいて、転炉1の操業を行うようにするとよい。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態は、図3に示すように、最終目標値である脱炭工程(脱C工程)終了後の溶鋼の目標温度T、目標炭素濃度[C]、目標りん濃度[P]を基に、中間目標値である脱りん工程(脱P工程)終了後の目標温度T、目標炭素濃度[C]、目標りん濃度[P]を算出して、これらガイダンス値である中間目標値及び最終目標値に基づいて転炉1の操業を行うものであり、前記最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、前記中間目標値を算出するようにしている。
まず、最終目標値として脱炭工程が終了して出鋼する際の溶鋼の目標温度Tや目標炭素濃度[C]を設定する(S301、S302)。
次に、中間目標値である脱りん工程後の目標[C]を決定する(S303)。
脱りん工程後の目標[C]は、脱りん時の脱珪用を除く総酸素量を、後述の如く9〜14Nm3/tの固定値、好ましくは11Nm3/tの固定値とし、この酸素と結合する炭素量を化学式等から算出して決定するようにしている。
次に、最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、中間目標値である脱りん工程後の溶銑の目標温度Tを決定する(S305)。
前記S303、S305の中間目標値の決定方法の詳細は、図4に示すようなものであり、まず、脱炭工程での鉄収支計算より、溶鋼の出鋼量と生成されるスラグ量とを求めるようにする(S401)。すなわち、脱りん後の溶銑量と脱炭工程において溶解するスクラップ2等の量とを加えたものから、取り除かれる炭素Cや珪素Si等の量を引くことにより、溶鋼の出鋼量を算出し、前記取り除かれる珪素量やりん量から生成されるスラグ量を算出する。
入熱としては、脱りん後の溶銑3および残留スラグの有する熱量や脱炭工程での溶銑3の成分(Si,P,C等)の酸化による発熱を考えるようにし、出熱としては、発生ガスが持ち去る熱量や出鋼時に溶鋼およびスラグが有する熱量、酸化鉄FexOyや生ドロ等の投入による冷却を考えるようにする。
決定された目標[C]および脱C工程後の熱余裕値(0〜40℃の所定値)を用いて「入熱=出熱」の方程式を解くと、脱りん工程後の溶銑3の目標温度Tが計算できる(S404)。
脱C吹錬にて、0〜40℃熱余裕を持たせるというのは、0〜8kg/tの冷却材の投入にほぼ対応しており、脱C吹錬での吹止的中率を向上させることができるからである。すなわち、温度予測のぶれがあっても、やや熱余裕を持たせることで、ダイナミック制御にて冷却材投入による調整が容易となるのである。また、高価な昇熱材(FeSi,黒鉛など)の使用量をゼロとすることにより、昇熱量の不安定さから発生する吹止温度の的中率低下を防止できるからである。逆に、熱余裕が大きすぎると、ダイナミック制御での調整は困難となり、吹止温度が高めに外れてしまう。その結果、耐火物の溶損速度が大きくなるとともに、復PによるP規格上限外れが発生してしまう。さらには冷却材の多量投入によりスラグ中(T.Fe)が上昇して溶鋼品質の低下を招く。
造滓材:
T.CaO=(溶銑[P](%)×3+前チャージスラグ残し量(kg/t)×0.002−吹止目標[P](%)×10)×53.8+6.3 ……式〔1〕
T.MgO=(溶銑[P](%)×3+前チャージスラグ残し量(kg/t)×0.002−吹止目標[P](%)×10)×9.2+1.9 ……式〔2〕
ただし、脱P及び耐火物保護に必要な量を確保するという考えから、T.CaO、T. MgOは、脱C吹錬にて投入する造滓材中のそれぞれCaO、MgO分(kg/t)で あり、これらを満たすように生石灰と軽ドロなどを投入する。
昇熱材:ゼロ
ここで、造滓材:生石灰、軽ドロ、生ドロ、蛍石等
昇熱材:FeSi、黒鉛等
このT.CaO、T.MgOの算出式は、脱P後非滓率を70%、脱Cスラグ中(P205)=2.0%、(CaO)=47%として以下の式〔3〕〜〔8〕より算出式を決定した。
脱C前P量=(溶銑P量+前チャージスラグ残し量×0.6%−脱P後P量)×3
0%+脱P後P量 ……式〔3〕
△P=脱C前P量−吹止時溶鋼P量=脱C工程での脱P量 ……式〔4〕
脱Cスラグ量=△P/(2.0%/2.29) ……式〔5〕
T.CaO=脱Cスラグ量×47%−残脱Pスラグ量×30% ……式〔6〕
脱Pスラグ量×30%=5kg/t固定 ……式〔7〕
T.MgO=脱Cスラグ量×9% ……式〔8〕
ただし、T.CaOは、CaOのトータル量であり、T.MgOは、MgOのト ータル量である。
ところが、前記副原料の投入により溶銑温度Tが必要以上に低下する場合がある。そこで、溶銑温度Tを中間目標値に合致させるべく固酸と気酸との比率を決定し、吹き込み酸素量などを決めるようにしている(S307)。気酸すなわちランス4から吹き込まれる酸素および固酸の分解により供給される酸素は、溶銑3中の炭素Cと反応して発熱するが、その内、固酸すなわち冷却材である酸化鉄FexOyは、溶銑3中で酸素O2と鉄Feとに分解する際に大きく吸熱する。したがって、気酸と固酸との比率を調整することで溶銑3の温度Tを上昇又は下降させて中間目標値とすることができる。
これらの値が適切でない場合は、投入された副原料により形成されたスラグ5の脱りん能力が著しく低下するため、再度、S306,S307に戻り、再計算を行った上で、適切な塩基度C/Sとなるように、副原料の投入量および、気酸と固酸との比率を算出するとよい。
排出工程で排出されず転炉1内に残留するスラグ量の測定は、排出したスラグ重量を測定して脱Pスラグ量より差し引いて行った。その他の方法として、目視や画像処理手法を用いて測定してもよい(S309)。
S309における測定結果をもとに、繰り越しスラグ量が多ければ、炉内に存在するPが多いということであり、脱炭工程で投入する副原料の量を増やす必要がある。スラグ量の実績から、より正確な気酸と固酸との比率を求めたり、信頼度の高い塩基度C/Sを計算で算出することができるようになる。つまり、副原料の過剰使用や適正値を外れた量での使用を防ぐことができる。
このようにして求められた脱炭工程での副原料の投入量および、気酸と固酸との比率のガイダンス値に基づき、転炉1の操業を行うようにする。
続いて、脱りん工程におけるガイダンス値を入力値、最終目標値を出力値として、脱炭工程でのガイダンス値を算出するようにしている。
次に、溶銑温度Tを最終目標値にするべく、固酸と気酸との比率を決定する(S311)。気酸が多ければ溶銑3の温度Tは上昇し、固酸が多ければ溶銑3の温度Tは下降する傾向にあるため、気酸と固酸との比率を調整することで溶銑3の温度Tを最終目標値とすることができるようになる。
S310→S311→S312により、求められた副原料の投入量および、気酸と固酸との比率は、脱炭工程における転炉1操業のガイダンス値であり、それに基づいて、転炉1の操業を行うようにするとよい。
なお、本実施形態の場合、出鋼時の溶鋼の目標りん濃度〔P〕や脱りん工程後の溶銑の目標りん濃度〔P〕は、脱炭工程での熱収支計算に基づいた計算値を採用せず、適宜最適な値を設定するようにしている。
図6及び図7は、本発明にかかる第3実施形態における精錬モデルのフローを示したものである。
即ち、図6に示すように、図4のS301〜S308と同様に、S501〜S507において、吹止目標〔C〕設定、吹止目標温度T設定、脱P後吹止目標〔C〕計算、ミニマムスラグ量の計算、脱P後吹止目標温度Tの計算、脱P用副原料配合計算、気酸と固酸との比率計算を行った。
ここで、脱りん工程における造滓材、昇熱材の条件を、脱P吹錬の熱バランスから次のようにした。
造滓材:脱りん工程後の溶銑の目標りん濃度を得るに必要なスラグ量と塩基度(CaO/
SiO2)とを確保するために必要な量
昇熱材:ゼロ
このように設定したのは、脱P吹錬時の滓化促進のため、最低限必要な量の冷却材投入量(焼結返し鉱や鉄鉱石、スケールなど)を確保するためである。
x=(a−b)×Qsa1÷(Qsa2−Qsa1)
溶銑量=700kg/t+x
a: 700kg/t
b:1000kg/t
Qsa1:熱収支a
Qsa2:熱収支b
スクラップ量計算:
得られた溶銑量を使用して、スクラップ量を求める。
上記の溶銑量、スクラップ量で熱収支計算を行う。
熱収支結果が+20〜150°Cの範囲内なら、その値を決定値として処理終了 する。
熱収支結果が+20〜150°Cの範囲以外で、正の場合は溶銑量を−5kg/ tしてスクラップ計算量に戻る。
熱収支結果が+20〜150°Cの範囲以外で、負の場合は溶銑量を+5kg/ tしてスクラップ計算量に戻る。
第1実施形態を適用した精錬にかかる各データは、図中では本発明1又は本発明例1と記載され、第2実施形態を適用した精錬にかかる各データは、図中では本発明2又は本発明例2と記載され、第3実施形態を適用した精錬にかかる各データは、図中では本発明3又は本発明例3と記載されている。
本実施例では、脱P処理前の溶銑は、500kg高周波炉にて銑鉄を溶融して調整し、溶銑鍋へ装入した(一部、成分調整のため、試薬を追加投入した)。
図10は、500kg高周波炉にて溶解して、転炉に装入した溶銑成分を示している。比較例1〜3及び本発明例1〜3は、何れも略同一の溶銑成分としている。
図12は、脱炭工程における前チャージスラグ量を示すと共に、脱炭工程における酸素、造滓材及び昇熱材の投入量を示し、また、脱炭工程終了後の溶鋼成分を示している。本発明例1〜3の場合、脱炭工程において高価な昇熱材である黒鉛を使用しなくて済み、冷却材である鉄鉱石の使用も比較的少なくて済むようになっている。また、本発明例1〜3の場合、比較例1〜3に比べて脱炭工程の吹止温度は目標値である1680℃に近い値になっている。特に、本発明例3の場合、鉄鉱石の使用量が4.1kg/tと少なくて済み、しかも脱炭工程の吹止温度が目標温度である1680℃になっている。
図16は、脱C吹錬吹止時のリン濃度と脱P吹錬時の熱余裕との関係をグラフに表したものであり、本発明の第3実施形態のように脱P吹錬時の熱余裕を20℃〜150℃の範囲に設定した場合、脱C吹錬吹止〔P〕がP規格上限の0.025%以下に納まっている。
すなわち、最終目標値や中間目標値として、溶鉄(溶鋼又は溶銑)温度Tと[C]とを採用したが、そのいずれか一方であってもよく、[P]や[Mn]や[Si]を最終目標値又は中間目標値として採用してもよい。
また、転炉は上吹き転炉、底吹き転炉、又は上底吹き転炉のいずれであってもよい。
2 スクラップ
3 溶銑
4 ランス
5 スラグ
8 前チャージスラグ
Claims (1)
- 転炉内にスクラップと共に装入された溶銑の脱りん精錬を行う脱りん工程と、脱りん工程後の溶銑の脱炭精錬を同一転炉にて行う脱炭工程とを有するダブルスラグ法を用いた転炉の操業方法において、
下記に示すステップ(1)〜ステップ(14)により、脱りん処理における操業条件を求めると共に、脱炭処理における操業条件を求めた上で、脱りん処理及び脱炭処理を行うことを特徴とする転炉の操業方法。
(1)最終目標値である脱炭工程が終了して出鋼する際の溶鋼の目標炭素濃度[C]を設定する。
(2)最終目標値である脱炭工程が終了して出鋼する際の溶鋼の目標温度を設定する。
(3)前記最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、中間目標値である脱りん工程後の目標炭素濃度[C]を設定する。
(4)脱りん工程での脱りんに必要とされるスラグ量を、ミニマムスラグ量として算出する。
(5)最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、中間目標値である脱りん工程後の目標温度を設定する。
(6)中間目標値である脱りん工程後の目標温度と、中間目標値である脱りん工程後の目標炭素濃度[C]とを基にして、脱りん工程において投入する副原料の量を求める。
(7)溶銑温度を中間目標値にするべく、脱りん工程における固酸と気酸との投入比率を決定する。
(8)脱りん工程における前記副原料の投入量及び気酸と固酸との比率をもとに、スラグのCaO及びSiO2を算出して、スラグの塩基度を求める。
(9)脱りん工程における熱収支計算を行って、この計算により得られた溶銑の温度が、脱りん工程後の目標温度に比べて20℃〜150℃高くなるように、脱りん工程でのスクラップと溶銑との割合を設定する。脱りん後の目標温度は、1300℃〜1400℃である。
(10)上記ステップ(9)で求めた脱りん工程でのスクラップと溶銑との条件に基づいて、上記ステップ(1)〜ステップ(8)における設定をやり直す。
(11)脱りん処理後の転炉内に残留したスラグ量を求める。
(12)脱りん処理後に残留したスラグ量を基に、脱炭工程での副原料の投入量を算出する。
(13)溶銑温度を最終目標値にするべく、脱炭工程での固酸と気酸との比率を決定する。
(14)脱炭工程における前記副原料の投入量及び気酸と固酸との比率をもとに、スラグのCaO及びSiO2を算出して、脱炭工程におけるスラグの塩基度を求める。
ただし、ミニマムスラグ量は、次式にて示される値である。
ミニマムスラグ量 =(インプットP量−脱りん工程後[P]×溶銑量)
×2.29/脱P後目標(P2O5)
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