JP4743072B2 - 脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法およびそれを用いた溶銑の脱燐処理方法 - Google Patents

脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法およびそれを用いた溶銑の脱燐処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、転炉形式の炉を用いて、実質的にフッ素を含まない脱燐剤を使用して溶銑を脱燐処理する際に、脱燐処理後のスラグの排滓性を向上させる方法、およびその排滓性向上方法を用いることにより、炉内付着地金の成長を抑制し、安定した操業を可能とする溶銑の脱燐処理方法に関する。
転炉を用いて、溶銑中の炭素と燐を同時に精錬していた従来の製鋼精錬方法に対し、最近では、溶銑鍋、トーピード等を用いて、溶銑段階で燐を事前に除去する溶銑の予備脱燐処理が行なわれており、その中でも、転炉を用いた溶銑予備脱燐が盛んに行われている。
一般に、転炉精錬においては、溶鋼中の燐濃度を適正に制御するために、石灰を投入する方法が行われており、石灰の媒溶剤としては、蛍石(CaF2)を添加する方法が知られている。しかし、フッ素が環境に及ぼす影響を考慮して、溶銑の予備脱燐処理においても、蛍石に代表されるフッ素含有物の使用量を極力削減することが求められている。このため、フッ素含有物を極力削減した溶銑の予備脱燐処理において、脱燐処理後の燐濃度を低下させる技術が種々提案されている。
例えば、特許文献1では、フッ素含有物の減少に伴うスラグの滓化性の低下を補うために、酸素をキャリアーガスとして、CaOおよびマンガン酸化物を含有する脱燐剤を溶銑に吹き付ける方法が開示されている。この方法によれば、マンガン酸化物を火点に供給することにより、滓化性が向上することから、フッ素含有物を使用しなくても、脱燐効率の上昇およびMn歩留まりの向上を図ることができる。
しかし、特許文献1で開示される方法では、酸素ガスをキャリアーガスとして、マンガン酸化物を浴面に吹き付ける際に、硬度の高いマンガン酸化物による粉体供給ラインの配管またはフレキシブルホースの摩耗により、配管またはホースに孔が開き、酸素および粉体が外部へ噴出する事態が発生するおそれがある。また、このような酸素ガスの漏洩は防災上も好ましくないことから、特別な防止策が必要になる。
また、特許文献2では、上吹きランスを通じてCaO源を溶銑浴面に吹き付けるとともに、脱燐処理後のスラグ塩基度を2.5超とすることにより、またはそれに加えて、脱燐処理前の溶銑の温度を1280℃以上とすること等により、CaF2添加量を削減しても、低燐溶銑を安定して製造する方法が開示されている。
このように、スラグ塩基度を高め、さらに溶銑温度を高めた場合には、CaF2添加量を削減しても、低燐溶銑を得ることは可能である。しかしながら、特許文献2で開示される方法では、スラグの融点が高くなることから、脱燐後の溶銑を出湯してから残スラグを排出する工程までの間の温度降下によって、スラグの流動性が低下するので、残スラグを全て排出することが困難となる。
このため、特許文献2で開示される方法には、残スラグの影響によって次の吹錬時の脱燐能力が低下するという問題や、転炉の耐火物面にスラグが付着することから、付着スラグを除去するために稼働率が低下するという問題がある。さらに、耐火物面へのスラグの付着が進行すると、転炉内へスクラップを装入できなくなるおそれもある。
特開2001−192724号公報 特開2003−328025号公報
前述の通り、溶銑の予備脱燐処理においては、地球環境に対する負荷の低減を目的としてフッ素含有物の使用量の削減が求められると同時に、製品の燐濃度の低減も要求されている。また、安定した脱燐炉の操業を可能とするには、脱燐精錬後の残スラグの排出性を向上させるとともに、転炉内のスラグ付着量を減少させる必要がある。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、実質的にフッ素を含まない脱燐剤を使用して溶銑を脱燐処理する場合であっても、効率的な脱燐処理を維持しつつ、安定した操業を可能とする脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法、およびそれを用いた溶銑の脱燐処理方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、前述した従来技術の課題を解決するために、最適な操業条件について検討を行った。その結果、脱燐精錬後の残スラグの排出性を向上させるとともに、転炉内の耐火物面へのスラグの付着を抑制するには、残スラグ中に未反応のCaO分を残留させないことが最も重要であることを知得した。
さらに、残スラグの化学組成を制御することにより、残スラグの融点を低下させることが、脱燐精錬後の残スラグの排出性を向上させ、転炉内の耐火物面へのスラグの付着を抑制するには必要であることを見出した。
一方、フッ素含有物を使用しない脱燐精錬において、低燐鋼を安定して製造するには、スラグ塩基度は2.5以上にする必要があることは周知であり、塩基度の高いスラグの融点を低下させるためには、スラグ中の酸化鉄濃度を高めることが有効であることも、周知である。
しかしながら、本発明者らは、スラグ中の酸化鉄濃度を高めることによってスラグの融点を低下させる方法には限界があることを見出した。すなわち、脱燐工程では、溶銑中の炭素濃度は一般に3〜4質量%程度であり、吹錬中のスラグの酸化鉄濃度を高めることは可能であるが、吹錬終了から出湯までの間に、溶銑中の炭素によって酸化鉄は還元されることから、スラグを排出する段階においてはスラグ中の酸化鉄濃度は低下し、スラグの融点は上昇することが判明した。
このため、スラグの融点を低下させるべく、種々の検討を重ねた結果、酸化マンガンを適量添加し、スラグ中のMnO濃度を高めることが、スラグの融点を可能な限り低下させる最良の方法であることを知得した。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、下記(1)および(3)の脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法、並びに(2)および(4)の溶銑の脱燐処理方法を要旨としている。
(1)転炉形式の炉を用いて、実質的にフッ素を含まない脱燐剤を使用して溶銑を脱燐処理するに際し、脱燐処理後のCaOとSiO2の質量濃度比で定義されるスラグ塩基度を2.5以上、3.5以下に、脱燐処理後のスラグ中のT.Fe濃度を3質量%以上、15質量%以下にし、かつ脱燐処理後の鍋中の溶銑温度を1320℃以上、1380℃以下にするとともに、下記の(1)式で定義されるT.Mn原単位を溶銑1tあたり4kg以上とすることを特徴とする脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法。
T.Mn原単位(kg/t)=溶銑中のMn濃度(質量%)×10
+脱燐炉内へのMn純分の投入量(kg/t)・・・(1)
(2)上記(1)に記載の脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法を用いることを特徴とする溶銑の脱燐処理方法。
(3)上記(1)に記載の脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法では、前記脱燐剤として使用するCaO源のうち、CaOの50質量%以上を気体酸素源とともに、上吹きランスを介して溶銑の浴面に吹き付けることが望ましい。
(4)上記(2)に記載の溶銑の脱燐処理方法では、前記脱燐剤として使用するCaO源のうち、CaOの50質量%以上を気体酸素源とともに、上吹きランスを介して溶銑の浴面に吹き付けることが望ましい。
本発明において、「転炉形式の炉」とは、脱燐剤などの粉体を上吹きランスにより溶銑に吹き付けて脱燐処理を行うことのできる充分なフリーボード(上部空間)を有する転炉形式の脱燐炉を意味し、溶銑をガス攪拌するための底吹き機構を有することが好ましい。
また、「実質的にフッ素を含まない脱燐剤」とは、蛍石などのように高濃度のフッ素を含むものを使用しない脱燐剤を意味し、例えば、脈石成分として1質量%未満のフッ素が含有される物質や、製鋼工程で発生する転炉スラグおよび取鍋スラグなどを使用する場合であっても、最終的にスラグ中のフッ素濃度が0.4質量%未満となるような物質を用いた脱燐剤であれば該当する。
また、「脱燐処理後のスラグ中の成分濃度(質量%)」とは、脱燐処理後の溶銑を出湯した後(すなわち排滓時)のスラグ成分分析値を意味し、「スラグ中のT.Fe濃度」とは、スラグ中に酸化鉄として存在するFe成分の濃度(質量%)を意味する。
本発明によれば、転炉形式の脱燐炉を用いて溶銑を脱燐処理する際に、実質的にフッ素を含まない脱燐剤を使用した場合であっても、脱燐処理後のスラグの排滓性を向上させることができる。さらに、脱燐精錬後の残スラグの排出性を向上させるとともに、炉内付着地金の成長を抑制することにより、安定して低燐溶銑を得ることができる。
したがって、本発明の排滓性向上方法および脱燐処理方法によれば、地球環境に対する負荷を低減できると同時に、低燐溶銑を得ることのできる脱燐炉の操業を、安定かつ継続的に実施することが可能となる。
以下に、本発明を前記のように規定した理由および好ましい範囲について説明する。それらの調査は250t転炉を用い、脱燐処理後の溶銑中のP濃度を0.035質量%以下とした溶銑を対象として行った。調査対象とした溶銑の脱燐処理前および処理後の溶銑成分を表1に示す。
Figure 0004743072
(1)脱燐処理後のスラグ塩基度が2.5以上、3.5以下
本発明の溶銑の脱燐処理方法は、脱燐処理を行うに際し、実質的にフッ素を含まない脱燐剤を使用するものであり、脱燐処理後のCaO/SiO2で定義されるスラグ塩基度が、2.5〜3.5の範囲となるように、溶銑中のシリコン濃度の値に応じて、生石灰や石灰石などのCaO含有物質を投入する。
実質的にフッ素を含まない脱燐剤とは、前述の通り、蛍石などのように高濃度のフッ素を含むものを使用しない脱燐剤を意味し、最終的にスラグ中のフッ素濃度が0.4質量%未満となるような物質を用いた脱燐剤をいう。
スラグ塩基度が2.5未満では、スラグの脱燐能力が低下し、低燐溶銑を安定して得られないばかりでなく、吹錬中のスラグの粘度が上昇することによって、スラグのフォーミングが発生し、過度なフォーミングの場合には、スラグが炉外へ溢れるスロッピングや、出湯中の炉口からのスラグ横溢などが発生する。
また、スラグ塩基度が3.5を超えて高くなると、本発明におけるその他の要件を満たした場合であっても、スラグ中の未反応のCaO分(以下、「遊離CaO」ともいう)を3質量%以下に減少させることが困難となり、排滓性が低下するとともに、炉内スラグ付着量の増加を招くことになる。
図1は、遊離CaO濃度と残スラグの排出性との関係を示す図である。同図に示すように、転炉内のスラグの排出性は、スラグ中の遊離CaO濃度と相関があり、残スラグが20質量%以上炉内に残留すると、操業性が著しく悪化することから、スラグ中の遊離CaO濃度は3質量%以下にすることが有効である。
(2)スラグ中のT.Fe濃度が3質量%以上、15質量%以下
スラグ中のT.Fe(全鉄分)濃度が3質量%未満になると、遊離CaOが増加することから、スラグ中のT.Fe濃度を3質量%以上にする必要がある。そのためには、吹錬中の上吹きランス高さを高くすることにより、または底吹きガスの流量を低下させることにより、生成した酸化鉄または投入した酸化鉄が、溶銑中の炭素によって還元される反応速度を遅らせることが必要となる。
また、スラグ中のT.Fe濃度が15質量%を超えると、鉄分歩留の悪化によってコストが上昇することから、15質量%以下にする。
(3)脱燐処理後の鍋中での溶銑温度が1320℃以上、1380℃以下
脱燐処理後の鍋中での溶銑温度が1320℃未満の場合には、スラグの滓化が阻害され、遊離CaOが増加する。また、溶銑温度が1380℃を超える場合には、高温による脱燐不良が生じる。したがって、脱燐処理後の鍋中での溶銑温度は、1320℃以上、1380℃以下に制御する必要がある。
脱燐処理後の鍋中での溶銑温度を制御する方法としては、吹錬前の溶銑成分および温度情報に基づいて、当該溶銑に吹き込む酸素量から計算される温度上昇分に見合う冷材量を計算により求める方法が一般的である。
また、本発明の溶銑の脱燐処理方法では、溶銑温度を脱燐後の脱燐炉内における温度に替えて、脱燐後の鍋中での溶銑温度で規定している。このように規定する理由は、脱燐処理後の溶銑温度を脱燐炉内で測定することは、脱燐炉の操業能率を低下させるので好ましくないからである。このように、本発明は、次工程の脱炭精錬処理における必要性から測定される、脱燐処理後の溶銑出湯完了直後の溶銑温度を用いて、本発明の範囲を規定することにより、脱燐炉の操業能率向上をも達成することができる。
(4)T.Mn原単位が溶銑1t(トン)あたり4kg以上
T.Mn(全マンガン)原単位は、(1)式に示すように、脱燐前の溶銑中のMn濃度と、脱燐炉内へ投入するMn鉱石中のMn量により規定する。
T.Mn原単位(kg/t)=溶銑中のMn濃度(質量%)×10
+脱燐炉内へのMn純分の投入量(kg/t)・・・(1)
このように規定するのは、投入したMn含有物に起因するMn酸化物と、溶銑中のMnが酸化して生成されたMn酸化物の両方がスラグの融点低下に寄与するからである。また、T.Mnを調整する手段として、Mn含有鉱石の投入が経済的である。Mn含有鉱石に関しては、下記の表2に示す鉄Mn鉱石またはMn鉱石が一般的に使用される。
Figure 0004743072
本発明者らは、T.Mn原単位と、脱燐処理後のスラグ中のMnO濃度および遊離CaO濃度との関係を、脱燐処理後の鍋中の溶銑温度が1320〜1380℃で、かつ、脱燐剤として使用するCaO源のうち、CaOの50〜80質量%が粉状生石灰として上吹きランスから酸素と共に溶銑に吹き付けられる条件で調査した。なお、CaO源としてはCaOを92質量%含有する生石灰(粒径30mm以下、および150μm以下)を用いた。
以下、脱燐剤として使用するCaO源のうち、CaOが粉状原料として供給される比率(粉状原料中のCaO質量×100/脱燐剤として使用するCaO源全体中のCaO質量)を「粉体CaO比率」と記述する。
なお、脱燐剤として使用するCaO源には、塊状原料として粒径30mm以下の生石灰、軽焼ドロマイト、石灰石等があり、粉状原料としては粒径2.8mm以下の生石灰、軽焼ドロマイト、石灰石等がある。本発明に関する試験調査では、CaO源として粒径30mm以下で粒度分布上10mmが主体の生石灰と粒径150μmの粉状生石灰を用いたが、本発明による効果の原料の種類および粒径に対する依存性は、本発明の調査範囲においては実質上無視できる程度に小さい。
また、取鍋スラグ、転炉スラグ、その他滓化促進用のCaO含有フラックス等は、粉体CaO比率の分母となるCaO源中には含めない。その理由としては、取鍋スラグ等は融点が低く滓化し易いことから、スラグ中のCaO分は、他の操業因子にほとんど依存することなく脱燐に寄与するからである。
図2は、T.Mn原単位とスラグ中のMnO濃度との関係を示す図であり、図3は、スラグ中のMnO濃度と遊離CaO濃度との関係を示す図である。図2に示すように、T.Mn原単位を増加させるに伴って、スラグ中のMnO濃度が上昇し、T.Mn原単位が4kg/t以上では、スラグ中のMnO濃度が7質量%以上となった。
また、図3に示すように、スラグ中のMnO濃度の上昇に伴って、スラグ中の遊離CaO濃度が低下する。本発明の調査範囲では、スラグ中のMnO濃度が7質量%以上であれば、安定して遊離CaO濃度が3質量%以下となった。
このことから、本発明の調査範囲では、T.Mn原単位を4kg/t以上にすることが重要であることが確認できた。T.Mnを4kg/t以上にすれば、スラグ中のMnO濃度が増加してスラグの融点を低下させることができるとともに、スラグ中の遊離CaO濃度を3質量%以下にできることから、スラグの排滓性を向上できるとともに、炉内スラグ付着量の増加を抑制することが可能となる。
しかし、Mn含有鉱石は比較的高価であること、および使用するMn原単位が過度に多い場合には、脱燐処理後の鍋中の溶銑温度が低下することを考慮すれば、実際に使用するT.Mn原単位は10kg/t以下に制約される。排滓性向上効果を高める上では、T.Mn原単位は4kg/t〜10kg/tが適当である。
(5)CaO源中の粉体CaO比率が50質量%以上
図4は、CaO源中の粉体CaO比率と遊離CaO濃度との関係を示す図である。上吹きランスを介してCaO源を酸素と共に溶銑浴面に吹き付けると、酸素火点の高温個所にCaO源が供給されることから、反応効率が向上し、遊離CaO濃度を減少させることが可能となる。この場合のCaO粒径は、150μm以下が搬送性などの観点から好ましいが2.8mm以下であれば反応効率上では大きな相違はない。図4に示す関係から、粉体CaO比率が50質量%以上であれば、安定して遊離CaO濃度を2質量%以下にできることが分かる。
ここで、遊離CaO濃度が2質量%以下であることは、スラグを路盤材とする際に、蒸気エージング時間の短縮が可能となるなど、物流の効率化の面で重要な指標となる。
なお、本発明における粉体CaO比率は、特に断りの無い限り50〜80%であるが、粉体CaO比率を92%および100%とした場合の遊離CaO濃度を図4に併記した。このように粉体CaO比率を高めることにより、遊離CaO濃度を、実質的に存在しないといえる濃度である0.3%以下まで低下させることができる。
さらに、上吹き酸素流量は、溶銑1tあたり、1.4〜2.0Nm3/min程度が望ましく、攪拌用の底吹き不活性ガスの流量は、溶銑1tあたり、0.09〜0.31Nm3/min程度が脱燐の安定化および操業能率の向上を両立させる観点から望ましい。
本発明の溶銑の脱燐処理方法の効果を確認するため、下記の試験を行い、排滓性、炉内スラグ付着性等の評価を行った。
(試験条件)
脱燐処理前の溶銑成分が、[C]:4.2〜4.8質量%、[Si]:0.15〜0.45質量%、[P]:0.095〜0.125質量%、[Mn]:0.15〜0.25質量%であり、脱燐処理前の温度が1300〜1370℃である溶銑約264tおよびスクラップ約29tを、上底吹き転炉に注銑した。そして、底吹きガスとして、N2を溶銑1tあたり0.20Nm3/minの供給速度で吹き込むとともに、4孔ストレートランスを用い、上吹き酸素を溶銑1tあたり1.71Nm3/minの供給速度で吹き込みながら吹錬した。
脱燐前の溶銑中のMn濃度は0.15〜0.25質量%であり、脱燐炉の溶銑率は89〜91質量%であった。生石灰は、CaO純分が約92%であり、粒径30mm以下の塊、および150μm以下の粉体を使用した。また、Mn含有鉱石は前記表2に示す化学組成を有する鉄マンガン鉱石を使用した。
(試験結果)
表3に実施例の試験条件および試験結果を示す。
Figure 0004743072
本発明で規定する脱燐処理後のスラグ塩基度、T.Fe濃度および溶銑温度並びにT.Mn原単位についての条件を満足する本発明例T9〜T19では、表3に示すように、脱燐性能(脱燐処理後の溶銑中のP濃度≦0.020質量%)、排滓性および炉内スラグ付着性のいずれにおいても良好な結果が得られた。さらに、脱燐剤として使用するCaO源を粉体として添加した本発明例T14〜T19では、スラグ中の遊離CaO濃度の低減効果が顕著であった。
これに対し、本発明で規定する条件のいずれか1つ以上を満足しなかった比較例T1〜T5およびT7では、排滓性が低下するとともに、炉内スラグ付着量が増加した。スラグ中のT.Fe濃度が本発明で規定する条件を満足しなかった比較例T6では、排滓性および炉内スラグ付着性においては良好な結果が得られたが、激しいスロッピングが発生したこと、およびT.Fe濃度が15質量%を超えるような操業では鉄分歩留が悪化してコストが上昇することを考慮すれば、総合的に好ましくないものである。また、脱燐処理後の鍋中での溶銑温度が本発明で規定する条件を満足しなかった比較例T8も、排滓性および炉内スラグ付着性においては良好な結果を示したが、鍋中での溶銑温度が1380℃を超えたことから、脱燐管理目標値である脱燐処理後の溶銑中のP濃度の上限(≦0.020質量%)を超えていた。
本発明によれば、転炉形式の脱燐炉を用いて溶銑を脱燐処理する際に、実質的にフッ素を含まない脱燐剤を使用した場合であっても、脱燐処理後のスラグの排滓性を向上させることができる。さらに、脱燐精錬後の残スラグの排出性を向上させるとともに、炉内付着地金の成長を抑制することにより、安定して低燐溶銑を得ることができる。
したがって、本発明の排滓性向上方法および脱燐処理方法によれば、地球環境に対する負荷を低減できると同時に、低燐溶銑を得ることのできる脱燐炉の操業を、安定かつ継続的に実施することが可能となる。これにより、操業能率の大幅な向上を可能とする溶銑の脱燐処理方法として溶銑処理工程において広く適用できる。
遊離CaO濃度と残スラグの排出性との関係を示す図である。 T.Mn原単位とスラグ中MnO濃度との関係を示す図である。 スラグ中MnO濃度と遊離CaO濃度との関係を示す図である。 CaO源中の粉体CaO比率と遊離CaO濃度との関係を示す図である。

Claims (4)

  1. 転炉形式の炉を用いて、実質的にフッ素を含まない脱燐剤を使用して溶銑を脱燐処理するに際し、
    脱燐処理後のCaOとSiO2の質量濃度比で定義されるスラグ塩基度を2.5以上、3.5以下に、脱燐処理後のスラグ中のT.Fe濃度を3質量%以上、15質量%以下にし、かつ脱燐処理後の鍋中の溶銑温度を1320℃以上、1380℃以下にするとともに、下記の(1)式で定義されるT.Mn原単位を溶銑1tあたり4kg以上とすることを特徴とする脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法。
    T.Mn原単位(kg/t)=溶銑中のMn濃度(質量%)×10
    +脱燐炉内へのMn純分の投入量(kg/t)・・・(1)
  2. 請求項1に記載の脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法を用いることを特徴とする溶銑の脱燐処理方法。
  3. 前記脱燐剤として使用するCaO源のうち、CaOの50質量%以上を気体酸素源とともに、上吹きランスを介して溶銑の浴面に吹き付けることを特徴とする請求項1に記載の脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法。
  4. 前記脱燐剤として使用するCaO源のうち、CaOの50質量%以上を気体酸素源とともに、上吹きランスを介して溶銑の浴面に吹き付けることを特徴とする請求項2に記載の溶銑の脱燐処理方法。
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