JP2006009146A - 溶銑の精錬方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】転炉に収容された溶銑に脱燐と脱炭とを並行して行うことにより溶銑の精錬効率を高めることができる溶銑の精錬方法を提供する。
【解決手段】転炉に収容された溶銑に、酸化カルシウムを含む生石灰、石灰石又は水酸化カルシウムの粉体を、溶銑トン当たり毎分1.0〜4.5Nmの流量の酸素ガスととともに吹付けることによって脱燐と脱炭の一部とを並行して行うことにより溶銑の炭素濃度を1.8〜3.8質量%とする第1の工程と、転炉に収容された第1の工程を経た溶銑に脱炭の残りを行う第2の工程とを経て、所望の燐濃度及び炭素濃度を有する溶鋼を製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、溶銑の精錬方法に関し、具体的には、転炉に収容された溶銑に脱燐と脱炭とを並行して行うことにより溶銑の精錬効率を高めることができる溶銑の精錬方法に関する。
溶銑を転炉で精錬する際の前処理として、溶銑中の燐を事前に除去する、いわゆる溶銑脱燐が広く普及している。溶銑脱燐された溶銑を転炉で精錬することにより、スラグの少ない精錬を実現でき、精錬時間の短縮やマンガン等の合金元素の使用量を削減できる。
このような溶銑脱りんに関して、例えば、特許文献1には、溶銑にCaO源及び酸素源を添加して脱燐を行う際に、適当な攪拌力で溶銑を攪拌しながら滓化剤を添加することなく、微粉CaO源を、スラグ中のCaO/SiOが1.7〜2.1モル比となるように、酸素源と同一羽口から供給することにより溶銑を効率的に脱燐する発明が開示されている。
溶銑脱燐を行う際に用いる反応容器として、トーピードカーや溶銑鍋等の容器が知られてきたが、何れの容器を用いる場合であっても、脱炭よりも脱燐を優先して進行させることが必要であるとされている。脱燐中に脱炭を進行させてしまうと脱炭に伴って必然的に溶銑の温度が上昇し、脱炭には有利であるものの脱燐に不利な条件となり、脱炭がさらに脱燐よりも進行してしまい、結果的に脱燐を十分に行うことができなくなるからである。
このため、特許文献1により開示された発明は、脱燐中における脱炭の進行を最小限に止めて脱燐を速やかに進行できる条件で脱燐を行うことを前提としており、大半の脱炭は脱燐の後工程で転炉を用いて行うこととしている。
一方、特許文献2や特許文献3には、特許文献1により開示された発明をさらに発展させ、1基の転炉を脱燐炉として用いて溶銑脱燐を行った後に、その溶銑を別のもう1基の転炉を用いて脱炭することにより溶鋼を製造する発明が開示されている。この発明は、転炉は酸素供給能力が大きいために、溶銑脱燐の反応容器として有利であると考えられることに基づくものである。
特開平9−143529号公報 特開昭62−290815号公報 特開昭63−93813号公報
特許文献1に開示された発明は、上述したように、脱燐中における脱炭の進行を最小限に止めて脱燐を速やかに進行することを図るものであり、脱燐中に脱炭の一部を並行して進行させることはできない。このため、脱炭の大半は、脱燐を終えた後の脱炭工程で行うこととなるため、転炉を用いた脱炭の際には大量の酸素を供給する必要があり、結果的に吹錬時間が長時間化する。
なお、この発明において、脱炭工程でのスクラップ配合量増加、マンガン鉱石配合量増加等のために追加の炭材を使用して熱補償しようとしても、この熱補償をするにはさらに吹錬時間を延長する必要が生じてしまい、脱炭に要する時間が長時間化する。
一方、上述したように、溶銑脱燐の際に必要以上に脱炭を進行させると脱燐を十分に行うことができなくなる。このため、特許文献2、3により開示された発明を適用する場合であっても、転炉が本質的に有する酸素供給能力を十分に発揮することができる条件を選択することはできず、転炉が有する酸素供給能力の半分程度の低送酸速度でしか脱燐を行うことはできない。
このように、特許文献1〜3により開示されたこれらの従来の発明によって、脱燐を速やかに行って脱燐時間を短縮すると、後続する脱炭が長時間化してしまう。したがって、脱燐及び脱炭の全体に要する時間は、長時間化した脱炭に律速されてしまうため、結果的に精錬の生産性をあまり高めることができない。
脱燐を行った後に転炉による脱炭に要する時間(吹錬時間)を短縮して生産性を向上するには、転炉に装入する溶銑の炭素濃度を低下しておくことが最も簡単である。しかし、上述したように、脱燐中に脱炭を促進すると脱燐を十分行うことができなくなるおそれがあるため、これまでは、通常の操業では脱燐時に脱炭を促進できないと考えられてきた。
このような状況下で、本発明者らは、転炉での生産性の向上と熱補償とをさらに抜本的に改善し、脱炭と溶銑温度の上昇とをともに図りながら良好な脱燐を可能とするためには、脱燐の進行に必須である生石灰を脱燐に好適な条件で添加することにより相対的に脱炭に対して脱燐を優先的に進行させる条件とすればよいという前提に立脚して、鋭意検討を重ねた。
その結果、本発明者らは、生石灰中の酸化カルシウムと酸素の比率を特定の範囲に規定して、生石灰の粉体を酸素とともに溶銑に吹き付ければ、生石灰の滓化が促進され、脱炭に対して相対的に脱燐を促進することができるようになることを知見した。
なお、溶銑脱燐に関する従来の技術においても、生石灰中の酸化カルシウムと酸素の比率を特定の範囲に規定することによって脱燐を促進する発明が知られている。しかし、この発明は、脱炭の進行を最小限にして脱燐を優先して進行させる条件を規定するのみであり、脱燐の促進とともに脱炭の一部を進行させることができる条件は全く開示されていない。
本発明者らは、生石灰中の酸化カルシウムと酸素の比率および上吹きランスより供給する酸素の流量を良好な範囲に規定して、生石灰の粉体を酸素とともに溶銑に吹き付ければ、脱燐の促進と脱炭の一部の進行とをともに図ることができることを知見し、さらに、溶銑脱燐における後述する固気比と処理後の溶銑中炭素濃度とにも適正な範囲が存在することを知見し、これらを適正な範囲に規定することにより、転炉での生産性の向上と熱補償とをさらに抜本的に改善できることを知見して、本発明を完成した。
本発明は、転炉に収容された溶銑に、酸化カルシウムを含む生石灰、石灰石又は水酸化カルシウムの粉体を、溶銑トン当たり毎分1.0Nm以上4.5Nm以下の流量の酸素ガスととともに、例えば上吹きランスノズルから、吹付けることによって脱燐と脱炭の一部とを並行して行うことにより溶銑の炭素濃度を1.8%以上3.8%以下(本明細書では特にことわりがない限り「%」は「質量%」を意味するものとする。)とする第1の工程と、転炉に収容された第1の工程を経た溶銑に脱炭の残りを行う第2の工程とを経て、所望の燐濃度及び炭素濃度を有する溶鋼を製造することを特徴とする溶銑の精錬方法である。
この本発明に係る溶銑の精錬方法の第1の工程では、(i)生成するスラグのCaF濃度を1%以下とすること、(ii)粉体及び酸素ガスの混合物における酸化カルシウム純分と酸素ガスとの重量比率である固気比を0.15以上3.0以下とすること、又は(iii)溶銑トン当たり毎分0.03Nm以上0.4Nm以下の流量の底吹きガスを吹き込むことが望ましい。
これらの本発明に係る溶銑の精錬方法の第2の工程では、転炉に収容された溶銑に酸素を上吹きするとともに、炭素含有物質と、酸化鉄含有物質又は酸化物含有物質の少なくとも一つとを添加して炭素含有物質を燃焼させることが望ましい。
本発明では、第1の工程で転炉に収容された溶銑に脱燐と脱炭とを並行して行うことにより、第2の工程の生産性の向上を図ることができる。これにより、第2の工程に要する時間を、第1の工程に要する時間に見合ったものとすることができるとともに、第2の工程において炭材の添加量を増加して熱補償等を行うことができるようになり、溶銑の精錬効率を高めることができる。
以下、本発明に係る溶銑の精錬方法を実施するための最良の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施の形態では、上述した第1の工程と、第2の工程とを経て、所望の燐濃度及び炭素濃度を有する溶鋼を製造するため、これら第1の工程及び第2の工程を以下に順に説明する。
[第1の工程]
第1の工程では、転炉に収容された溶銑に、生石灰、石灰石又は水酸化カルシウムの粉体を、溶銑トン当たり毎分1.0Nm以上4.5Nm以下の流量の酸素ガスととともに、上吹きランスノズルから吹付けることによって脱燐と脱炭の一部とを並行して行うことにより溶銑の炭素濃度を1.8%以上3.8%以下に低減する。
まず、用いる粉体石灰に対する塊状石灰の比率は適宜決定すればよいが、塊状石灰を50%超使用すると精錬特性の低下をきたすため、粉体石灰に対する塊状石灰の比率は50%未満とすることが望ましい。
脱燐の際に同時に脱炭も進行させることにより第2の工程における転炉の脱炭負荷を低減して精錬工程全体の生産性を高めるためには、上吹きランスノズルから吹き付ける酸素流量を溶銑トン当たり毎分1.0Nm以上に上昇させる必要がある。一方、この酸素流量を溶銑トン当たり毎分4.5Nmを超える程に上昇してしまうと、脱燐に対して脱炭が過度に進行して溶銑温度も過度に上昇してしまい、生石灰の粉体を上吹きランスより供給した場合であっても十分な脱燐が不可能になる。そこで、本実施の形態では、上吹きランスノズルから吹き付ける酸素流量を溶銑トン当たり毎分1.0Nm以上4.5Nm以下と限定する。同様の観点から、この酸素流量の上限は4.0Nmであることが望ましく、下限は2.0Nmを超えることが望ましい。
また、粉体及び酸素ガスの混合物における酸化カルシウム純分と酸素ガスとの重量比率である固気比を0.15以上3.0以下とすることが望ましい。
この固気比が0.15未満であると、脱炭が優先して進行し、溶銑脱燐本来の目的である脱燐を十分に進行することができなくなるとともに、火点で生成される酸化鉄と酸化カルシウムの混合酸化物における酸化鉄の比率が上昇し、融点が低くなるとともに火点の温度が高くなるために滓化が過剰となり、スロッピングが発生して精錬が不安定になる。一方、固気比が3.0を超えると、火点で生成する酸化カルシウムと酸化鉄の混合物の融点が高すぎるとともに、火点の温度が酸化カルシウムの冷却効果により低下するため、ホタル石の混入なしでは十分な滓化が得られなくなり、脱燐を十分に進行できなくなるおそれがある。このため、本実施の形態では、固気比は0.15以上3.0以下とする。
さらに、固気比の上限は2.0であることが望ましい。固気比が2.0超3.0以下であると、火点で生成される酸化鉄と酸化カルシウムとの混合酸化物の融点が固気比が0.15以上2.0以下である場合のこの混合酸化物の融点より高くなる傾向があるので、精錬効果が劣る傾向が有るからである。
固気比を0.15以上3.0以下とする手段は特に限定を要するものではなく、精錬上の要求から必要とされる生石灰量及び酸素量の条件の下で、(a)生石灰粉を混入させる酸素を吹き込む酸素の全量とせずに一部にする方法、(b)生石灰粉の吹き込み期間を吹錬全期とせずに一部の期間にする方法、さらには(c)添加する生石灰の一部を粉体ではなく塊状にする方法のうちの一つ以上を適宜組み合わせればよい。
ただし、上記(a)の場合(生石灰粉を混入させる酸素を吹き込む酸素の全量とせずに一部にする方法)には、生石灰粉を混入さない酸素を、生石灰を混入させる酸素と別系統の酸素配管でランスまで導入し、ランス先端に装着された別のノズルから炉内の溶銑へ吹き込む必要がある。
また、第1の工程で生成するスラグのCaF濃度は1%以下であることが望ましい。スラグのCaF濃度が1%を超えると、スラグからのフッ素の溶出が多くなり、環境上問題となる場合があるためである。
スラグからのフッ素の溶出量は、平成3年8月環境庁告示第46号に準拠した方法、すなわち粒径2mm以下に整粒されたスラグ試料50gを500mlの水とともに6時間の振盪試験にかけ、その後濾過した水に含まれるフッ素の分析により評価される。この評価方法により測定されるフッ素溶出量が土壌汚染対策法とそれに付随する施行令および施行規則において定められた0.8mg/L以下に準じた値となるよう、スラグ中のフッ素を低減することが望ましい。
また、第1の工程で生成するスラグ中のAl濃度は特に限定を要さないが、スラグ中のAl濃度が3%を超えると、固気比が0.15以上3.0以下であってもスロッピングが発生し易くなるため、スラグ中のAl濃度は3%以下とすることが好ましい。
さらに、第1の工程では、溶銑トン当たり毎分0.03Nm以上0.4Nm以下の流量の底吹きガスを吹き込むことが望ましい。これにより、ホタル石を混入しなくとも十分な滓化を図ることができ、脱燐を十分に進行できるからである。
このような第1の工程によって、処理される溶銑の炭素濃度を、1.8%以上3.8%以下に低減する。炭素濃度を1.8%未満にまで低減してしまうと、これに伴って溶銑の温度が上昇して効率的な脱燐が不可能になる。また、炭素濃度を3.8%超程度にしか低減しないと、第2の工程における転炉の脱炭負荷が増加するために、精錬工程の生産性を上げることができなくなるからである。より望ましくは、第1の工程によって、処理される溶銑の炭素濃度を、3.0%未満に低減する。
以上説明した第1の工程により、転炉に収容された溶銑に、脱燐と脱炭の一部とを並行して行うことによって、溶銑の炭素濃度を1.8%以上3.8%以下に低減する。
[第2の工程]
第1の工程を終了した溶銑に、転炉を用いて脱炭の残りを行うことによって、所望の燐濃度及び炭素濃度を有する溶鋼を製造する
第2の工程で用いる転炉は、通常の転炉を用いることができる。この転炉は、第1の工程で用いた転炉をそのまま用いてよいし、あるいは、これとは別の転炉を用いてもよい。
この転炉の形式は、酸素供給を、上吹きランスを介して行うもの、底吹きノズルを介して行うもの、あるいはこれら両者を併用して行うもの等のいずれの形式のものでもよく、特に限定を要さない。酸素供給を上吹きランスを用いて実施する転炉を用いる場合、底吹きノズルを介して適量の撹拌ガスの吹き込むことは、脱炭反応等を促進するために望ましい。
第1の工程により発生したスラグは、その後の脱炭や昇温精錬の際には、復燐を生じないように、溶鉄から分離しておくことが望ましい。スラグの分離の方法は、特に限定を要するものではない。例えば、第1の工程で用いた転炉から出湯する際にスラグをこの転炉内に残して分離し、このスラグを排出した後のこの転炉又は他の転炉に溶鉄のみを再装入することや、第1の工程で用いた転炉を傾動させて炉口からスラグを流出させるか掻き出すこと等により、スラグを溶鉄から分離することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、第2の工程に要する時間を、第1の工程に要する時間に見合ったものとすることができるとともに、溶銑の精錬効率を高めることができる。すなわち、本実施の形態によれば、第2の工程による脱炭負荷が低減されるために脱炭時間が短縮される。このため、第2の工程における吹錬時間を短縮でき、第1の工程に要する時間に見合ったものとすることができるため、第2の工程による処理時間が長いことに起因した第1の工程の待ち時間を短縮でき、生産性を向上することができる。
また、本実施の形態では、上述したように第2の工程での脱炭負荷が低減されるため、この第2の工程において転炉に収容された溶鉄に酸素を上吹きするとともに、例えばコークス、石炭、黒鉛さらには廃プラスチック等の追加の炭素含有物質と、酸化鉄含有物質および/またはマンガン等の合金成分の酸化物含有物質とを添加して炭素含有物質を燃焼させ、その燃焼熱によって、転炉に投入するスクラップ、鉄鉱石さらにはミルスケール等の鉄源、又はマンガン鉱石等の合金成分含有物質を増量しながら精錬を行うことができる。本実施の形態では、このようにして、第2の工程において炭素含有物質の添加量を増加して熱補償等を行うことができるようになるため、溶銑の精錬効率を高めることができる。
つまり、本実施の形態では、第1の工程で行う脱炭の程度を適宜選択することにより、第1の工程のサイクルタイムと第2の工程のサイクルタイムとを適宜調整することができるため、上述した2種の効果のどちらかを選択することもできるし、両者を適宜配分することにより最適な組み合わせとすることもできる。この配分は第1の工程のサイクルタイムと第2の工程のサイクルタイムとを考慮して、両者が同期して操業ができるようにすることができる。
さらに、本発明を実施例を参照しながらより具体的に説明する。
[本発明例1]
2トン試験転炉に炭素含有量4.4%、シリコン含有量0.33%、マンガン含有量0.39%、燐含有量0.075%、硫黄含有量0.021%の溶銑2000kg、スクラップ160kgを装入し、吹錬開始前に塊状の生石灰を10kg投入した。その後、上吹きランスより1分当たり5.2Nmの酸素を生石灰粉同じく1分当たり2.3kgとともに溶銑に吹き付けて精錬を行った。この時は上吹きする全酸素に生石灰粉を混入し、固気比は約0.31であった。試験転炉の底部には底吹きノズルを装着し、1分当たり0.5Nmのアルゴンガスを吹き込んで、溶銑を撹拌した。
なお、本例では、第1の工程での酸素ガス流量は溶銑トン当たり毎分2.6Nmであり、第1の工程における底吹きガス流量は溶銑トン当たり毎分0.25Nmであった。
約12分経過後に炉内に生成した溶銑の炭素含有量は2.26%、マンガン含有量は0.09%、燐含有量は0.010%、硫黄含有量0.019%、温度は1520℃、第1工程で生成するスラグ中のCaF濃度は0.1%以下であり、Al濃度は0.5%以下であった。吹錬中のスロッピングは全く観察されなかった。
[本発明例2]
2トン試験転炉に炭素含有量4.4%、シリコン含有量0.32%、マンガン含有量0.41%、燐含有量0.073%、硫黄含有量0.020%の溶銑2000kg、スクラップ160kgを装入し、吹錬開始前に塊状の生石灰を10kg投入した。その後、上吹きランスより酸素を1分あたり5.2Nmの酸素を生石灰粉同じく1分当たり2.3kgとともに溶銑に吹き付けて精錬を行った。上吹きする全酸素のうち、生石灰粉を混入した酸素は1分当たり0.7Nmであり、固気比は約2.3であった。
残りの4.5Nmの酸素は同じランスに装着した別ノズルより生石灰分を混入させずに溶銑に吹き付けた。試験転炉の底部には底吹きノズルを装着し、1分当たり0.5Nmのアルゴンガスを吹き込んで、溶銑を撹拌した。
なお、本例では、第1の工程での酸素ガス流量は溶銑トン当たり毎分2.6Nmであり、第1の工程における底吹きガス流量は溶銑トン当たり毎分0.25Nmであった。
約8分後に炉内に生成した溶銑の炭素含有量は3.22%、マンガン含有量は0.11%、燐含有量は0.009%、硫黄含有量0.018%、温度は1420℃、スラグ中のCaF濃度は0.1%以下であり、Al濃度は0.5%以下であった。吹錬中のスロッピングは全く観察されなかった。この時のスラグを採取し、平成3年8月環境庁告示第46号に準拠してフッ素の溶出量を測定した結果、その値は0.4mg/Lであった。
〔本発明例3〕
2トン試験転炉に炭素含有量4.4〜4.5%、シリコン含有量0.33〜0.35%、マンガン含有量0.39〜0.41%、燐含有量0.070〜0.073%、硫黄含有量0.019〜0.020%の溶銑1700kg、スクラップ120kgを装入し、吹錬開始前に塊状の生石灰を10kg投入した。その後、上吹きランスより酸素を1分あたり合計1.5〜8Nm吹き込んで、その内、生石灰粉を混入した酸素量を1分あたり1.5Nmから5.2Nmとし、生石灰粉を同じく1分あたり2.2〜2.3kgとともに溶銑に吹き付けて精錬を行った。これらの各ケースにおける固気比は約0.31〜1.03であった。試験転炉の底部には底吹きノズルを装着し、1分あたり0.2Nmのアルゴンガスを吹き込んで、溶銑を撹拌した。
なお、本例では、第1の工程での酸素ガス流量は、溶銑トン当たり毎分0.88〜4.7Nmであり、第1の工程における底吹きガス流量(溶銑トン当たり毎分0.12Nm)であった。
約10分後に炉内に生成した溶鋼の炭素含有量は1.65〜3.95%、マンガン含有量は0.19〜0.23%、硫黄含有量0.016〜0.019%、温度は1290〜1610℃、スラグ中のCaF濃度は0.1%以下であり、Al濃度は0.5%以下であった。この時の処理後の溶鉄の炭素濃度、脱燐率を図1、図2にグラフでそれぞれ示す。
なお、図2のグラフでおける脱燐率とは、下式で計算される値を示す。
(脱燐率%)
=100×[(吹錬前溶銑中燐濃度)−(吹錬後溶鉄中燐濃度)]/(吹錬前溶銑中燐濃度)
〔本発明例4〕
本発明例3の実験で得られた炭素濃度1.65%から3.95%の溶鉄を取鍋に出湯し、スラグを除去してから2トン試験転炉に再装入して塊状の生石灰を20kg、珪石を6kg添加した後、上吹きランスより酸素を1分当たり4.4Nm吹き込んで、精錬を行った。試験転炉の底部には底吹きノズルを装着し、1分あたり0.2Nmのアルゴンガスを吹き込んで、溶銑を撹拌した。
なお、本例では、第1の工程での酸素ガス流量は、溶銑トン当たり毎分0.88〜4.7Nmであり、第1の工程で生成するスラグのCaF濃度は、0.1%以下であり、第1の工程での固気比は0.31〜1.03であり、第1の工程における底吹きガス流量は、溶銑トン当たり毎分0.12Nmであった。
溶鋼の炭素含有量0.30%に到達した時間と精錬前の溶鉄の炭素濃度の関係を図3にグラフで示す。本発明例3における酸素流量を溶銑トン当たり毎分1.0Nm以上として、溶湯の炭素濃度を3.8%以下、さらには3.0%未満にすることにより、本例における精錬時間の短縮が図れ、生産性が向上した。
〔本発明例5〕
2トン試験転炉に炭素含有量4.5%、シリコン含有量0.33%、マンガン含有量0.39%、燐含有量0.073%、硫黄含有量0.019%の溶銑2000kg、スクラップ160kgを装入し、吹錬開始前に塊状の生石灰を10kg投入した。その後、上吹きランスより酸素を1分あたり合計5.2Nm吹き込んで、その内、生石灰粉を混入した酸素量を1分あたり5.2Nmとし、生石灰粉を同じく1分あたり2.2kgとともに溶銑に吹き付けて精錬を行った。試験転炉の底部には底吹きノズルを装着し、1分あたり0.2Nmのアルゴンガスを吹き込んで、溶銑を撹拌した。
なお、本例では、第1の工程での酸素ガス流量は、溶銑トン当たり毎分2.6Nmであり、第1の工程で生成するスラグのCaF濃度は0.1%以下であり、第1の工程での固気比は0.32であり、第1の工程における底吹きガス流量(溶銑トン当たり毎分0.10Nmであった。
約12分後に炉内に生成した溶鋼の炭素含有量は2.5%、マンガン含有量は0.17%、硫黄含有量0.016%、温度は1505℃であった。
この実験で得られた溶鉄を取鍋に出湯し、スラグを除去してから2トン試験転炉に再装入して塊状の生石灰を20kg、珪石を6kg、コークスを20kg、鉄マンガン鉱石を20kg添加した後、上吹きランスより酸素を1分あたり5.2Nm吹き込んで、約13分の精錬を行った。試験転炉の底部には底吹きノズルを装着し、1分あたり0.2Nmのアルゴンガスを吹き込んで、溶銑を撹拌した。溶鋼の炭素含有量0.30%に到達した時の溶鋼中マンガン濃度は0.34%であった。
本発明例5の条件から外れた比較例3の精錬に比較して精錬時間が短縮でき、かつ溶鋼マンガン濃度を上昇できた。
〔比較例1〕
2トン試験転炉に炭素含有量4.4%、シリコン含有量0.28%、マンガン含有量0.40%、燐含有量0.072%、硫黄含有量0.019%の溶銑2000kg、スクラップ140kgを装入し、吹錬開始前に塊状の生石灰を15kg投入した。その後、上吹きランスより酸素を1分あたり5.5Nmの酸素を生石灰粉同じく1分当たり1.13kgとともに溶銑に吹き付けて精錬を行った。この時は上吹きする全酸素に生石灰粉を混入し、固気比は約0.14であった。試験転炉の底部には底吹きノズルを装着し、1分当たり0.5Nmのアルゴンガスを吹き込んで、溶銑を撹拌した。
なお、本例では、第1の工程での酸素ガス流量は、溶銑トン当たり毎分2.75Nmであり、3)第1の工程で生成するスラグのCaF濃度は0.1%以下であり、第1の工程における底吹きガス流量は溶銑トン当たり毎分0.25Nmであった。
約15分後に炉内に生成した溶鋼の炭素含有量は1.62%、マンガン含有量は0.13%、燐含有量は0.015%、硫黄含有量0.019%、温度は1498℃、スラグ中のCaF濃度、Al濃度はともに0.5%以下であった。吹錬開始後約7分に大きなスロッピングが観察された。
〔比較例2〕
2トン試験転炉に炭素含有量4.42%、シリコン含有量0.32%、マンガン含有量0.40%、燐含有量0.076%、硫黄含有量0.022%の溶銑2000kg、スクラップ160kgを装入し、吹錬開始前に塊状の生石灰を7kg投入した。その後、上吹きランスより酸素を1分あたり5.2Nmの酸素を生石灰粉4.6kgとともに溶銑に吹き付けて精錬を行った。上吹きする全酸素の内、生石灰粉を混入した酸素は1分あたり0.4Nmであり、固気比は約8.8であった。残りの5.0Nmの酸素は同じランスに装着した別ノズルより生石灰分を混入させずに溶銑に吹き付けた。試験転炉の底部には底吹きノズルを装着し、1分あたり、0.5Nmのアルゴンガスを吹き込んで、溶銑を撹拌した。
なお、本例では、第1の工程での酸素ガス流量は、溶銑トン当たり毎分2.6Nmであり、第1の工程で生成するスラグのCaF濃度は0.1%以下であり、第1の工程における底吹きガス流量は溶銑トン当たり毎分0.25Nmであった。
約5分後に炉内に生成した溶鋼の炭素含有量は3.91%、マンガン含有量は0.16%、燐含有量は0.021%、硫黄含有量0.020%、温度は1320℃、スラグ中のCaF濃度、Al濃度はともに0.5%以下であった。吹錬中のスロッピングは全く観察されなかったが、生石灰の溶融滓化が不良で、溶銑中[P]が十分に低下しなかった。
〔比較例3〕
2トン試験転炉に炭素含有量4.5%、シリコン含有量0.34%、マンガン含有量0.38%、燐含有量0.072%、硫黄含有量0.018%の溶銑2000kg、スクラップ160kgを装入し、吹錬開始前に塊状の生石灰を10kg投入した。その後、上吹きランスより酸素を1分あたり合計5.2Nm吹き込んで、その内、生石灰粉を混入した酸素量を1分あたり5.2Nmとし、生石灰粉を同じく1分あたり2.2kgとともに溶銑に吹き付けて精錬を行った。試験転炉の底部には底吹きノズルを装着し、1分あたり、0.2Nmのアルゴンガスを吹き込んで、溶銑を撹拌した。
なお、本例では、第1の工程での酸素ガス流量は、溶銑トン当たり毎分2.6Nmであり、第1の工程で生成するスラグのCaF濃度は0.1%以下であり、第1の工程での固気比は0.30であり、第1の工程における底吹きガス流量(溶銑トン当たり毎分0.10Nmであった。
約5分後に炉内に生成した溶鋼の炭素含有量は3.85%、マンガン含有量は0.14%、硫黄含有量0.017%、温度は1330℃であった。
この実験で得られた溶鉄を取鍋に出湯し、スラグを除去してから2トン試験転炉に再装入して塊状の生石灰を20kg、珪石を6kg添加した後、上吹きランスより酸素を1分あたり5.2Nm吹き込んで、約17分の精錬を行った。試験転炉の底部には底吹きノズルを装着し、1分あたり0.2Nmのアルゴンガスを吹き込んで、溶銑を撹拌した。溶鋼の炭素含有量0.30%に到達した時の溶鋼中マンガン濃度は0.16%であった。
酸素流量と炭素濃度との関係を示すグラフである。 酸素流量と脱燐率との関係を示すグラフである。 精錬前炭素濃度と精錬時間との関係を示すグラフである。

Claims (5)

  1. 転炉に収容された溶銑に、酸化カルシウムを含む生石灰、石灰石又は水酸化カルシウムの粉体を、溶銑トン当たり毎分1.0〜4.5Nmの流量の酸素ガスととともに吹付けることによって脱燐と脱炭の一部とを並行して行うことにより溶銑の炭素濃度を1.8〜3.8質量%とする第1の工程と、転炉に収容された該第1の工程を経た溶銑に脱炭の残りを行う第2の工程とを経ることを特徴とする溶銑の精錬方法。
  2. 前記第1の工程では、生成するスラグのCaF濃度を1質量%以下とする請求項1に記載された溶銑の精錬方法。
  3. 前記第1の工程では、前記粉体及び前記酸素ガスの混合物における酸化カルシウム純分と酸素ガスとの重量比率である固気比を0.15〜3.0とする請求項1又は請求項2に記載された溶銑の精錬方法。
  4. 前記第1の工程では、溶銑トン当たり毎分0.03〜0.4Nmの流量の底吹きガスを吹き込む請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された溶銑の精錬方法。
  5. 前記第2の工程では、前記転炉に収容された溶銑に酸素を上吹きするとともに、炭素含有物質と、酸化鉄含有物質および/または酸化物含有物質とを添加して該炭素含有物質を燃焼させる請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された溶銑の精錬方法。
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