JP2005206898A - 転炉の操業方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高価な昇熱材を使用せずに済むと共に、脱りん不良を防止できるようにする。また、脱炭工程終了後の目標温度の的中率を向上できるようにする。
【解決手段】転炉内に装入された溶銑の脱りん精錬を行う脱りん工程と、脱りん工程後の溶銑の脱炭精錬を同一転炉にて行う脱炭工程とを備える転炉の操業方法において、脱りん工程での脱珪用を除く総酸素投入量を、9〜14Nm3/tに設定する。また、脱炭工程終了後の溶鋼の目標温度を含む最終目標値に基づいて、脱りん工程終了後の溶銑の中間目標値を算出し、脱炭工程の熱収支が脱炭工程終了後の溶鋼の目標温度に比べて0〜40℃高くなるように、脱りん工程での投入酸素の気酸と固酸との比率を設定する。
【選択図】図2

Description

本発明は、同一容器で溶銑の脱りん精錬と脱炭精錬とを行うダブルスラグ法を用いた転炉の操業方法に関するものである。
従来から用いられている溶銑の精錬方法としては、トーピードカー内の溶銑に副原料を投入して脱りんを行うものや、2基の転炉の一方で脱りんを行い他方で脱炭を行うものなどがあった。
しかしながら、いずれの方法も脱りん工程から脱炭工程に移行する際、溶銑の移し替えを必要とし、溶銑の温度低下やエネルギーロスの発生を余儀なくしていた。
この問題点を解決するために、特許文献1に開示されたようなダブルスラグ法といわれる方法が採用されてきている。ダブルスラグ法は、溶銑を転炉に装入し(装入工程)、副原料添加と酸素吹込みを行って脱りん精錬を施し(脱りん工程)、所定のりん濃度まで低減させ、前記転炉を傾動して脱りん工程で生成したスラグを排出し(排出工程)、その後、同一転炉にて副原料添加と酸素吹錬により、所定の炭素濃度まで脱炭を行う(脱炭工程)ものである。
特許文献1には、かかるダブルスラグ法における脱りん工程での、総酸素投入量を、1.1Nm3/min/tに設定したものが開示されている。
また、特許文献2には、ダブルスラグ法による精錬ではないが、ダイナミックコントロールにより、終点制御を行うために、吹錬条件の予定軌道からのずれを修正可能な範囲に制御するようにしたものが開示されている。
特許2607329号公報(表1) 特公昭59−48926号公報(第2欄16行〜)
しかしながら、特許文献1の技術では、計算すると、脱りん時の脱珪に消費される分を除く総酸素量が溶銑1トンあたり8.6Nm3(8.6Nm3/t)程度になるため、脱りん工程での酸素投入量が少なくなり、脱りん不良を引き起こし易くなるという問題があった。なお、反対に、脱りん工程での酸素投入量が多くなると、脱炭工程での熱余裕が無くなってしまい、高価な昇熱材(FeSi,黒鉛など)を使用しなければならなくなるという問題を生じる。
また、温度予測にはぶれがあるため、脱炭工程での吹止的中率を向上させるには、特許文献2の技術のように、ダイナミックコントロールにより、ずれを修正可能な範囲に温度制御する必要あるが、ずれを修正可能な範囲に温度制御しても、脱炭工程後の温度が目標温度よりも低くなると、ダイナミック制御の際には、〔C〕を吹き下げることで温度を確保する対応をとる。この場合、C下限外れ、加炭材増、スラグ中(T.Fe)の上昇による鉄歩留低下、耐火物寿命低下を招く。そこで、これを防止するため、スタティック制御の段階で、高価な昇熱材を投入しなければならなくなり、精錬コストが高騰する。さらに、昇熱材の歩留が不安定な(特に黒鉛)ため、昇熱量が不安定となり、吹止温度の的中率が低下するという問題があった。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、高価な昇熱材を使用せずに済むと共に、脱りん不良を防止できるようにしたものである。また、高価な昇熱材を使用せずに済むと共に、脱炭工程終了後の目標温度の的中率を向上できるようにしたものである。
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明における課題解決のための技術的手段は、転炉内に装入された溶銑の脱りん精錬を行う脱りん工程と、脱りん工程後の溶銑の脱炭精錬を同一転炉にて行う脱炭工程とを備える転炉の操業方法において、
脱りん工程での脱珪に消費される分を除く総酸素投入量を、9〜14Nm3/tに設定したことを特徴とする。
この技術的手段によれば、脱りん工程における総酸素投入量が適当になり、脱りん不良が起こるのを防止できる。しかも、脱炭工程時に熱余裕をもつことができて、脱炭工程の際に高価な昇熱材を使用しなくて済むようになる。
また、本発明における課題解決のための技術的手段は、脱炭工程での総酸素投入量を、脱炭精錬と脱りん精錬とに必要な酸素投入量から脱りん工程での総酸素投入量を減算した量に設定したことを特徴とする。
この技術的手段によれば、脱炭工程で必要な酸素量を確保して、良好な脱炭をなし得るようになる。
また、本発明における課題解決のための技術的手段は、溶銑を転炉に装入する装入工程と、転炉内の溶銑の脱りん精錬を行う脱りん工程と、前記脱りん工程で生成されたスラグを転炉から排出する排出工程と、前記排出工程後に同一転炉にて溶銑の脱炭精錬を行う脱炭工程とを備える転炉の操業方法において、
脱炭工程終了後の溶鋼の目標温度を含む最終目標値に基づいて、脱りん工程終了後の溶銑の中間目標値を算出し、
脱炭工程の熱収支が脱炭工程終了後の溶鋼の目標温度に比べて0〜40℃高くなるように、脱りん工程での投入酸素の気酸と固酸との比率を設定することを特徴とする。
この技術的手段によれば、温度予測にぶれがあっても、脱炭工程の際に熱余裕を持たせることができて、ダイナミック制御にて冷却材投入による調整が容易になり、高価な昇熱材の使用量をゼロにし、コストダウンを図ることができる。また、目標温度の的中率を向上させることが可能となる。
また、本発明における課題解決のための技術的手段は、脱りん工程での脱珪に消費される分を除く総酸素投入量を、9〜14Nm3/tに設定したことを特徴とする。
この技術的手段によれば、脱りん工程における総酸素投入量が適当になり、脱りん不良が起こるのを防止できる。
また、本発明における課題解決のための技術的手段である「目標温度+0〜40℃」の前提条件は、脱炭工程における造滓材、昇熱材の条件が、
造滓材:
T.CaO=(溶銑[P](%)×3+前チャージスラグ残し量(kg/t)×0.0
02−吹止目標[P](%)×10)×53.8+6.3
T.MgO=(溶銑[P](%)×3+前チャージスラグ残し量(kg/t)×0.0
02−吹止目標[P](%)×10)×9.2+1.9
ただし、T.CaO:脱炭工程にて投入する造滓材中のCaO分(kg/t)
T.MgO:脱炭工程にて投入する造滓材中のMgO分(kg/t)
昇熱材:ゼロ
であることを特徴とするが、これよりも造滓材を増やす場合、その分だけ温度余裕を確保できるように脱りん工程での投入酸素の気酸と固酸の比率を設定すればよい。
また、本発明における課題解決のための技術的手段は、算出した脱りん工程後の溶銑の目標温度が1300℃以下の場合、脱りん工程後の溶銑温度が1300℃となるように、脱りん工程での投入酸素の気酸と固酸との比率を調整し、算出した脱りん工程後の溶銑の目標温度が1400℃以上の場合、脱りん工程後の溶銑温度が1400℃となるように脱りん工程での投入酸素の気酸と固酸の比率を調整することを特徴とする。
この技術的手段によれば、脱りん工程の際にスラグの滓化を促進できて、脱りん効率を上げることが可能になる。
また、本発明における課題解決のための技術的手段は、脱りん工程における造滓材、昇熱材の転炉への投入量が、
造滓材:脱りん工程後の溶銑の目標りん濃度を得るに必要なスラグ量と塩基度とを確保す
るために必要な量
昇熱材:ゼロ
の条件の下で、
脱りん工程の熱収支が脱りん工程後の溶銑の目標温度に比べて20〜150℃高くなるように、装入工程の溶銑配合率を設定することを特徴とする。
この技術的手段によれば、脱りん工程の際に、冷却材投入量が少な過ぎることにより、滓化不良が生じてリン濃度に規格上限外れが生じるのを防ぐことができる。逆に、冷却材投入量が多すぎることによるスロッピングが発生を防止することができて、脱りん工程を中断しなけらばならなくなるのを防ぐことができる。
本発明によれば、高価な昇熱材を使用せずに済むと共に、脱りん不良を防止できるようになる。また、高価な昇熱材を使用せずに済むと共に、脱炭工程終了後の目標温度の的中率を向上できるようになる。
以下、本発明にかかる転炉の操業方法を、図を基に説明する。
図1は、転炉1を用いた精錬方法の1つであるダブルスラグ法の手順(操業手順)を示したものである。
まず、装入工程として、転炉1を傾動し、炉内にスクラップ2等を装入した上で溶銑3を流し入れるようにする。
その後、溶銑3中のりんPを主に取り除く脱りん工程として、転炉1の炉口1aからランス4を挿入し、溶銑3上面に近づけ、酸素ガスを吹き付けると同時に、炉底から吹き込みガスで溶銑3を撹拌しつつ精錬(吹錬)を開始する。同時に、石灰CaO等の造滓材や酸化鉄Fexy等の冷却材、すなわち副原料を投入することで、りんPは投入された酸素と反応してスラグ相に移行し、溶銑3の上方に浮いた状態で積層するようになる。このスラグ5の中には未反応のCaOが多く含まれるため、脱りん能力を有するものとなっている。
脱りん工程でのりん処理能力は、様々な条件により変化し、溶銑3の温度Tが低い(1300〜1400℃)ほど高いものとなっている。スラグ5中のCaO/SiO2、すなわち塩基度C/Sを考えた場合、塩基度C/Sが高いほど脱りん能力が高い。
なお、以下、りんPと反応する酸素の内、ランス4からの吹き込まれたものを気酸と呼び、酸化鉄Fexyを起源とする酸素を固酸と呼ぶ。また、溶銑(溶鋼)中の成分Aの濃度を[A]と表記し、スラグ中の成分Aの濃度を(A)と表記する。
次に、脱りん工程により生成されたスラグ5を、転炉1を炉前側へ傾けることで、外部に排出するようにしている。排出されたスラグ5は、転炉1下方に配置された移送手段6により運び出されるようになっている(排出工程)。しかしながら、溶銑を排出することなくスラグ5を完全に排出することは困難であり、スラグは30%程度残る。
排出工程を経た転炉1は、再び元の姿勢に戻され、酸素吹き込みや副原料の投入がなされることで、主に溶銑3中の炭素Cを取り除き[C]を調整する脱炭工程へと進む。脱炭工程後は、転炉1を傾動させ、転炉1の上部側方に設けられた出鋼口7より溶鋼を外へ流し出すようにしている。その際、脱炭工程で生成されたスラグ5Aを残すようにし、次に精錬する溶銑3を装入するようにする(次チャージの装入工程)。
脱炭工程では溶鋼3の出鋼温度Tが1600〜1700℃程度に設定され、脱りん工程での溶銑3の温度Tより高温であるため、排滓工程後に炉内に残留したスラグ5に新たに副原料を追加投入して生成させた脱炭スラグ5Aの脱りん能力は低く、その結果、脱炭スラグ5Aのりん濃度(P)は低く、スラグ5A自体は脱りん工程においてはりん能力が十分にあるものとなっている。
これにより、脱りん能力が十分にある脱炭後スラグ5Aを前チャージスラグ8としてリサイクルさせて有効利用し、廃棄スラグ量を減少することができるようになる。
なお、脱りん工程であっても、脱炭や脱珪は行われており、脱炭工程であっても、投入された副原料により脱りんが行われ、逐次スラグ5及び5Aが生成される。
上記転炉1の制御には、各工程での物質収支や熱収支計算、反応速度計算にもとづいて組み立てられた精錬モデルを用いており、この精錬モデルをプロセスコンピュータ等で計算することで導出される酸素や副原料の投入量をガイダンス値(指針値)として参照し、それに基づき転炉1を操業するようにしている(スタティックコントロール)。
さらに、このスタティックコントロールに加えて、精錬が終了直前に[C]および溶湯温度Tの測定を行い、その結果に応じて吹き込み酸素量を微調節すると共に一部は冷却材を投入し、目標値になった時点で精錬を終了させるダイナミックコントロールを行うようにしている。
前記ガイダンス値に基づいて、精錬終点の[C]と温度Tを一度の精錬で最終目標値に合致させつつ低コストで転炉1の操業を行うようにしている。
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図2は、第1実施形態の転炉1操業方法におけるガイダンス値を算出する方法、すなわち精錬モデルのフローを示したものである。
まず、鋼種毎に脱りん精錬、脱炭精錬に必要な投入酸素量を以下のように分配する。即ち、脱りん工程での脱珪用を除く総酸素投入量を、溶銑1トンあたり9〜14Nm3(9〜14Nm3/t)、好ましくは溶銑1トンあたり11Nm3(11Nm3/t)に設定し、脱炭工程での総酸素投入量を、脱炭精錬と脱りん精錬とに必要な酸素投入量から脱りん工程での総酸素投入量を減算した量に設定する(S201)。酸素投入量をこのように設定したのは、脱りん吹錬にて、酸素投入量が9Nm3/tよりも少ないと、脱P不良を起こし、反対に、酸素投入量が14Nm3/tよりも多いと、脱C吹錬時の熱余裕が無くなってしまい、高価な昇熱材(FeSi,黒鉛など)を使用することになるからである。
次に、中間目標値である脱りん工程後の目標[C]を決定する(S202)。脱りん工程後の目標[C]は、脱りん時の脱珪用を除く総酸素量を、11(9〜14)Nm3/tの固定値とし、この酸素と結合する炭素量を化学式等から算出して決定するようにしている。
その後、当該脱りん工程での脱りんに必要とされるスラグ量を、ミニマムスラグ量(中間スラグ量)として算出する(S203)。
脱りん工程における溶銑3中の[P]が一定値(0.03%)以下の場合、酸素と結合してスラグ相へ移行する反応スピードが非常に遅くなり、スラグ5による脱りんがほとんど行われない状況となる。すなわち、溶銑3中のりん供給が律速となって脱りん効率が非常に低下するようになる。かかるりん供給律速になるまでの脱P量を吸収するのに最低限必要となるスラグ量をミニマムスラグ量と呼ぶ。ミニマムスラグ量より多い量のスラグ5を生成したとしても、脱りん処理能力は大きく向上することはなく、スラグ排出量のみが増大することとなり非効率である。かかるミニマムスラグ量を可能な限り精度よく算出し、それに基づき操業を行うことは非常に有利である。
このミニマムスラグ量は、式(1)の如く、溶銑3の[P]や、装入工程で転炉1内に装入されている冷銑や故銑、スクラップ2の[P]、前チャージからリサイクルされる前チャージスラグ8の(P)を合計した上でインプットP量として定義し、このインプットP量から脱りん工程後の[P]を差し引いた値に、P25の生成目標量から得られる係数α(例えば、2.29/脱りん後目標(P25)を乗じることでミニマムスラグ量を算出するようにしている。

ミニマムスラグ量 =(インプットP量−脱りん工程後[P]×溶銑量)×α ・・・ (1)

さらに、中間目標値である脱りん工程後の目標温度Tを設定する(S204)。ここでは、溶銑温度が1300°C以下になると、スラグの滓化が促進せず、脱りん効率が低下し、1400°C以上になると、脱りん効率が低下するため、目標温度Tを1300°C〜1400°Cの間に設定する。
以上、設定した脱りん工程後の目標温度Tと目標[C]、すなわち中間目標値を基に、脱りん工程において投入する副原料の量を求める(S205)。本実施形態の場合、脱りん工程で投入される副原料、例えば、石灰CaO等の造滓材は、溶銑3中のりんPを取り去るのに必要十分な量を投入するようにすればよい。
ところが、前記副原料の投入により溶銑温度Tが必要以上に低下する場合がある。そこで、溶銑温度Tを中間目標値に合致させるべく固酸と気酸との比率を決定し、吹き込み酸素量などを決めるようにしている(S206)。気酸すなわちランス4から吹き込まれる酸素および固酸の分解により供給される酸素は、溶銑3中の炭素Cと反応して発熱するが、その内、固酸すなわち冷却材である酸化鉄Fexyは、溶銑3中で酸素O2と鉄Feとに分解する際に大きく吸熱する。したがって、気酸と固酸との比率を調整することで溶銑3の温度Tを上昇又は下降させて中間目標値とすることができる。
さらに、求められた副原料の投入量、及び気酸と固酸との比率をもとに、副原料の酸化過程を示す化学式等からスラグ5の各成分(CaO,SiO2,Al23,MgO,T.Fe等)の生成量を算出すると共に、スラグ予測成分値を算出する。求められたCaOとSiO2の生成量から塩基度C/Sを導出する(S207)。
これらの値が適切でない場合は、投入された副原料により形成されたスラグ5の脱りん能力が著しく低下するため、再度、S205,S206に戻り、再計算を行った上で、適切な塩基度C/Sとなるように、副原料の投入量および、気酸と固酸との比率を算出するとよい。
以上述べたように、S205→S206→S207により求められた副原料の投入量および、気酸と固酸との比率は、脱りん工程における転炉1操業のガイダンス値であり、それに基づいて、脱りん工程での転炉1の操業を行うようにしている。
排出工程で排出されず転炉1内に残留するスラグ量の測定は、排出したスラグ重量を測定して脱Pスラグ量より差し引いて行った。その他の方法として、目視や画像処理手法を用いて測定してもよい(S208)。
S208における測定結果をもとに、繰り越しスラグ量が多ければ、炉内に存在するPが多いということであり、脱炭工程で投入する副原料の量を増やす必要がある。スラグ量の実績から、より正確な気酸と固酸との比率を求めたり、信頼度の高い塩基度C/Sを計算で算出することができるようになる。つまり、副原料の過剰使用や適正値を外れた量での使用を防ぐことができる。
この考えのもと、前記繰り越しスラグ量の実績値を入力値として、脱炭工程での副原料配合量の再計算、気酸と固酸との比率の再計算、脱炭工程での塩基度計算を行うようにする。
このようにして求められた脱炭工程での副原料の投入量および、気酸と固酸との比率のガイダンス値に基づき、転炉1の操業を行うようにする。
続いて、脱りん工程におけるガイダンス値を入力値、最終目標値を出力値として、脱炭工程でのガイダンス値を算出するようにしている。
まず、中間目標値や脱りん工程でのガイダンス値を基に、脱炭工程での副原料(生石灰CaO等)の投入量を算出する(S209)。S209においては、排出工程で排出されず転炉1内に残留するスラグ量に基づき計算を進めている。
次に、溶銑温度Tを最終目標値にするべく、固酸と気酸との比率を決定する(S210)。気酸が多ければ溶銑3の温度Tは上昇し、固酸が多ければ溶銑3の温度Tは下降する傾向にあるため、気酸と固酸との比率を調整することで溶銑3の温度Tを最終目標値とすることができるようになる。
さらに、前記S207と同様に化学反応過程などを考慮することで、脱炭工程での塩基度C/Sやスラグ予測成分値を、副原料の投入量および、気酸と固酸との比率から算出している(S211)。S211で求められた塩基度C/Sの値が適切でない場合は、S209,S210に戻り、塩基度C/Sを適切にするように計算を再度行うようにしている。
S209→S210→S211により、求められた副原料の投入量および、気酸と固酸との比率は、脱炭工程における転炉1操業のガイダンス値であり、それに基づいて、転炉1の操業を行うようにするとよい。
なお、本実施形態の場合、出鋼時の目標りん濃度〔P〕や脱りん工程後の目標りん濃度〔P〕は、脱炭工程での熱収支計算に基づいた計算値を採用せず、適宜最適な値を設定するようにしている。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態は、図3に示すように、最終目標値である脱炭工程(脱C工程)終了後の溶鋼の目標温度T、目標炭素濃度[C]、目標りん濃度[P]を基に、中間目標値である脱りん工程(脱P工程)終了後の目標温度T、目標炭素濃度[C]、目標りん濃度[P]を算出して、これらガイダンス値である中間目標値及び最終目標値に基づいて転炉1の操業を行うものであり、前記最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、前記中間目標値を算出するようにしている。
換言すれば、前記ダブルスラグ法を行う転炉1の操業方法において、最終目標値である脱炭工程終了後の溶鋼の目標温度T、目標炭素濃度[C]、目標りん濃度[P]を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、中間目標値である脱りん工程終了後の溶銑の目標温度T、目標炭素濃度[C]、目標りん濃度[P]を算出し、前記中間目標値を満たすように、脱りん工程での副原料、酸素の投入量を決定し、決定された脱りん工程の副原料、酸素の投入量に基づいて、脱炭工程での副原料、酸素の投入量を決定し、それぞれの投入量をガイダンス値(指針値)として転炉1の操業を行うものである。
図4、図5は、第2実施形態の転炉1操業方法におけるガイダンス値を算出する方法、すなわち精錬モデルのフローを示したものである。
まず、最終目標値として脱炭工程が終了して出鋼する際の溶鋼の目標温度Tや目標炭素濃度[C]を設定する(S301、S302)。
次に、中間目標値である脱りん工程後の目標[C]を決定する(S303)。
脱りん工程後の目標[C]は、脱りん時の脱珪用を除く総酸素量を、後述の如く9〜14Nm3/tの固定値、好ましくは11Nm3/tの固定値とし、この酸素と結合する炭素量を化学式等から算出して決定するようにしている。
その後、前記第1実施形態のS203の場合と同様に、脱りん工程での脱りんに必要とされるスラグ量を、ミニマムスラグ量(中間スラグ量)として算出する(S304)。
次に、最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、中間目標値である脱りん工程後の溶銑の目標温度Tを決定する(S305)。
前記S303、S305の中間目標値の決定方法の詳細は、図4に示すようなものであり、まず、脱炭工程での鉄収支計算より、溶鋼の出鋼量と生成されるスラグ量とを求めるようにする(S401)。すなわち、脱りん後の溶銑量と脱炭工程において溶解するスクラップ2等の量とを加えたものから、取り除かれる炭素Cや珪素Si等の量を引くことにより、溶鋼の出鋼量を算出し、前記取り除かれる珪素量やりん量から生成されるスラグ量を算出する。
次に、S401の計算結果と最終目標値(出鋼時の溶鋼の目標温度Tと目標[C])を入力値として、脱炭工程での熱収支計算を行うようにする。つまり、脱炭工程において転炉1内に入る熱を入熱として考えると共に、転炉1から外部に出る熱を出熱とし、「入熱=出熱」の方程式を立て、それを解くようにする(S402)。
入熱としては、脱りん後の溶銑3および残留スラグの有する熱量や脱炭工程での溶銑3の成分(Si,P,C等)の酸化による発熱を考えるようにし、出熱としては、発生ガスが持ち去る熱量や出鋼時に溶鋼およびスラグが有する熱量、酸化鉄Fexyや生ドロ等の投入による冷却を考えるようにする。
「入熱=出熱」の方程式には、中間目標値である脱りん工程後の溶銑の目標温度Tと目標[C]が未知数として含まれるものとなっており、このままでは解が一義的に決定しないため、脱りん工程での脱珪用を除く総酸素投入量を、溶銑1トンあたり9〜14Nm3(9〜14Nm3/t)、好ましくは溶銑1トンあたり11Nm3(11Nm3/t)に設定すると共に、脱炭工程での総酸素投入量を、脱炭精錬と脱りん精錬とに必要な酸素投入量から脱りん工程での総酸素投入量を減算した量に設定する。酸素投入量をこのように設定したのは、前記第1実施形態の場合と同様に、脱P吹錬にて、酸素投入量が9Nm3/tよりも少ないと、脱P不良を起こし、反対に、酸素投入量が14Nm3/tよりも多いと、脱C吹錬時の熱余裕が無くなってしまい、高価な昇熱材(FeSi,黒鉛など)を使用することになるからである。
そして、脱りん工程後の目標[C]は、脱りん時の総酸素量を溶銑1トンあたり9〜14Nm3、好ましくは11Nm3/tの固定値とし、この酸素と結合する炭素量を化学式等から逆算することにより、決定するようにしている(S403)。
決定された目標[C]および脱C工程後の熱余裕値(0〜40℃の所定値)を用いて「入熱=出熱」の方程式を解くと、脱りん工程後の溶銑3の目標温度Tが計算できる(S404)。
脱C吹錬にて、0〜40℃熱余裕を持たせるというのは、0〜8kg/tの冷却材の投入にほぼ対応しており、脱C吹錬での吹止的中率を向上させることができるからである。すなわち、温度予測のぶれがあっても、やや熱余裕を持たせることで、ダイナミック制御にて冷却材投入による調整が容易となるのである。また、高価な昇熱材(FeSi,黒鉛など)の使用量をゼロとすることにより、昇熱量の不安定さから発生する吹止温度の的中率低下を防止できるからである。逆に、熱余裕が大きすぎると、ダイナミック制御での調整は困難となり、吹止温度が高めに外れてしまう。その結果、耐火物の溶損速度が大きくなるとともに、復PによるP規格上限外れが発生してしまう。さらには冷却材の多量投入によりスラグ中(T.Fe)が上昇して溶鋼品質の低下を招く。
この場合、脱炭工程における造滓材、昇熱材の条件を、脱C吹錬の熱バランスから次のようにする。
造滓材:
T.CaO=(溶銑[P](%)×3+前チャージスラグ残し量(kg/t)×0.002−吹止目標[P](%)×10)×53.8+6.3 ……式〔1〕
T.MgO=(溶銑[P](%)×3+前チャージスラグ残し量(kg/t)×0.002−吹止目標[P](%)×10)×9.2+1.9 ……式〔2〕
ただし、脱P及び耐火物保護に必要な量を確保するという考えから、T.CaO、T. MgOは、脱C吹錬にて投入する造滓材中のそれぞれCaO、MgO分(kg/t)で あり、これらを満たすように生石灰と軽ドロなどを投入する。
昇熱材:ゼロ
ここで、造滓材:生石灰、軽ドロ、生ドロ、蛍石等
昇熱材:FeSi、黒鉛等
このT.CaO、T.MgOの算出式は、脱P後非滓率を70%、脱Cスラグ中(P205)=2.0%、(CaO)=47%として以下の式〔3〕〜〔8〕より算出式を決定した。
また、スラグ量の計算は次のようになる。
脱C前P量=(溶銑P量+前チャージスラグ残し量×0.6%−脱P後P量)×3
0%+脱P後P量 ……式〔3〕
△P=脱C前P量−吹止時溶鋼P量=脱C工程での脱P量 ……式〔4〕
脱Cスラグ量=△P/(2.0%/2.29) ……式〔5〕
T.CaO=脱Cスラグ量×47%−残脱Pスラグ量×30% ……式〔6〕
脱Pスラグ量×30%=5kg/t固定 ……式〔7〕
T.MgO=脱Cスラグ量×9% ……式〔8〕
ただし、T.CaOは、CaOのトータル量であり、T.MgOは、MgOのト ータル量である。
ただし、ここで、図4のS314及び図5のS405〜S409に示すように、算出した脱りん工程後の溶銑の目標温度Tが1300℃以下の場合、脱りん工程後の溶銑温度が1300℃となるように、脱りん工程での投入酸素の気酸と固酸との比率を調整し、算出した脱りん工程後の溶銑の目標温度Tが1400℃以上の場合、脱りん工程後の溶銑温度が1400℃となるように脱りん工程での投入酸素の気酸と固酸の比率を調整する。溶銑温度が1300°C以下になると、スラグの滓化が促進せず、脱りん効率が低下し、1400°C以上になると、脱りん効率が低下するからである。
以上、求まった脱りん工程後の目標温度Tと目標[C]、すなわち中間目標値を基に、脱りん工程において投入する副原料の量を求めるようにする(S306)。本実施形態の場合、脱りん工程で投入される副原料、例えば、生石灰CaO等の造滓材は、溶銑3中のりんPを取り去るのに必要十分な量を投入するようにすればよい。
ところが、前記副原料の投入により溶銑温度Tが必要以上に低下する場合がある。そこで、溶銑温度Tを中間目標値に合致させるべく固酸と気酸との比率を決定し、吹き込み酸素量などを決めるようにしている(S307)。気酸すなわちランス4から吹き込まれる酸素および固酸の分解により供給される酸素は、溶銑3中の炭素Cと反応して発熱するが、その内、固酸すなわち冷却材である酸化鉄Fexyは、溶銑3中で酸素O2と鉄Feとに分解する際に大きく吸熱する。したがって、気酸と固酸との比率を調整することで溶銑3の温度Tを上昇又は下降させて中間目標値とすることができる。
さらに、求められた副原料の投入量、及び気酸と固酸との比率をもとに、副原料の酸化過程を示す化学式等からスラグ5の各成分(CaO,SiO2,Al23,MgO,T.Fe等)の生成量を算出すると共に、スラグ予測成分値を算出する。求められたCaOとSiO2の生成量から塩基度C/Sを導出する(S308)。
これらの値が適切でない場合は、投入された副原料により形成されたスラグ5の脱りん能力が著しく低下するため、再度、S306,S307に戻り、再計算を行った上で、適切な塩基度C/Sとなるように、副原料の投入量および、気酸と固酸との比率を算出するとよい。
以上述べたように、S306→S307→S308により求められた副原料の投入量および、気酸と固酸との比率は、脱りん工程における転炉1操業のガイダンス値であり、それに基づいて、脱りん工程での転炉1の操業を行うようにしている。
排出工程で排出されず転炉1内に残留するスラグ量の測定は、排出したスラグ重量を測定して脱Pスラグ量より差し引いて行った。その他の方法として、目視や画像処理手法を用いて測定してもよい(S309)。
S309における測定結果をもとに、繰り越しスラグ量が多ければ、炉内に存在するPが多いということであり、脱炭工程で投入する副原料の量を増やす必要がある。スラグ量の実績から、より正確な気酸と固酸との比率を求めたり、信頼度の高い塩基度C/Sを計算で算出することができるようになる。つまり、副原料の過剰使用や適正値を外れた量での使用を防ぐことができる。
この考えのもと、前記繰り越しスラグ量の実績値を入力値として、脱炭工程での副原料配合量の再計算、気酸と固酸との比率の再計算、脱炭工程での塩基度計算を行うようにする。
このようにして求められた脱炭工程での副原料の投入量および、気酸と固酸との比率のガイダンス値に基づき、転炉1の操業を行うようにする。
続いて、脱りん工程におけるガイダンス値を入力値、最終目標値を出力値として、脱炭工程でのガイダンス値を算出するようにしている。
まず、中間目標値や脱りん工程でのガイダンス値を基に、脱炭工程での副原料(生石灰CaO等)の投入量を算出するようにする(S310)。S310においては、排出工程で排出されず転炉1内に残留するスラグ量に基づき計算を進めている。
次に、溶銑温度Tを最終目標値にするべく、固酸と気酸との比率を決定する(S311)。気酸が多ければ溶銑3の温度Tは上昇し、固酸が多ければ溶銑3の温度Tは下降する傾向にあるため、気酸と固酸との比率を調整することで溶銑3の温度Tを最終目標値とすることができるようになる。
さらに、前記S308と同様に化学反応過程などを考慮することで、脱炭工程での塩基度C/Sやスラグ予測成分値を、副原料の投入量および、気酸と固酸との比率から算出している(S312)。S312で求められた塩基度C/Sの値が適切でない場合は、S310,S311に戻り、塩基度C/Sを適切にするように計算を再度行うようにしている。
S310→S311→S312により、求められた副原料の投入量および、気酸と固酸との比率は、脱炭工程における転炉1操業のガイダンス値であり、それに基づいて、転炉1の操業を行うようにするとよい。
以上のように求められるガイダンス値を用いることで、ダブルスラグ法での各工程が最適パスを取るように転炉の操業を行うことができる。
なお、本実施形態の場合、出鋼時の溶鋼の目標りん濃度〔P〕や脱りん工程後の溶銑の目標りん濃度〔P〕は、脱炭工程での熱収支計算に基づいた計算値を採用せず、適宜最適な値を設定するようにしている。
図6及び図7は、本発明にかかる第3実施形態における精錬モデルのフローを示したものである。
本実施形態は、脱りん工程の熱収支が脱りん工程後の溶銑の目標温度に比べて20〜150℃高くなるように、装入工程の溶銑配合率(スクラップと溶銑との割合)を設定して、転炉1の操業を行うことが、第2実施形態とは大きく異なる点である。
即ち、図6に示すように、図4のS301〜S308と同様に、S501〜S507において、吹止目標〔C〕設定、吹止目標温度T設定、脱P後吹止目標〔C〕計算、ミニマムスラグ量の計算、脱P後吹止目標温度Tの計算、脱P用副原料配合計算、気酸と固酸との比率計算を行った。
そして、ステップ508で、脱りん工程の熱収支が脱りん工程後の溶銑の目標温度Tに比べて20〜150℃高くなるように、装入工程の溶銑配合率(スクラップと溶銑との割合)を設定した。
ここで、脱りん工程における造滓材、昇熱材の条件を、脱P吹錬の熱バランスから次のようにした。
造滓材:脱りん工程後の溶銑の目標りん濃度を得るに必要なスラグ量と塩基度(CaO/
SiO2)とを確保するために必要な量
昇熱材:ゼロ
このように設定したのは、脱P吹錬時の滓化促進のため、最低限必要な量の冷却材投入量(焼結返し鉱や鉄鉱石、スケールなど)を確保するためである。
即ち、冷却材投入量が少なすぎると、滓化不良となり、脱P吹錬後[P]が高くなり、脱C吹錬後も[P]規格上限外れを発生させてしまうからである。逆に、冷却材投入量が多すぎると、スロッピングが発生して脱P吹錬を途中で中断しなければならなくなるからである。また、脱P吹錬を途中で中断すると、吹錬を再開するには準備時間を要するため、製鋼時間が延長してしまう。再吹錬せずにそのまま脱P吹錬を終了した場合、所定の酸素量を投入できないため、脱P吹錬後[P]が高くなり、脱C吹錬後も[P]規格上限外れを発生させてしまう場合がある。そこで、上記20〜150℃は、溶銑1トン当たり4〜30kgの冷却材の投入にほぼ対応しており、前記の如く装入工程の溶銑配合率を設定することにより、10〜20kg/tの冷却材の投入の確保をするようにしたのである。
そして、ステップ508で設定した装入工程の溶銑配合率、脱りん工程における造滓材、昇熱材の条件に基づいて、S601〜S608において、吹止目標[C]設定、吹止目標温度T設定、脱P後吹止目標[C]計算、ミニマムスラグ量の計算、脱P後吹止目標温度Tの計算、脱P用副原料配合計算、気酸と固酸との計算を、やり直し、さらに、S609〜S612において、図4のS309〜S312と同様に、脱P後のスラグ残量の計算、脱C用副原料配合計算、気酸と固酸との比率計算、脱C用塩基度計算を行って、溶銑の精錬を実行する。
なお、S508の主原料配合計算は、具体的には、図8のフローチャートに示すような手順で行われ、溶銑量を1000Kg/t(=溶銑Max値)として、鉄収支式よりスクラップ量を求める。求めた溶銑量、スクラップ量で熱収支計算を行い、その結果(熱収支a)が負であれば、このときの溶銑量、スクラップ量を決定値として以下の処理を実行しない。また、溶銑量を700kg/t(=溶銑Min値)として、鉄収支式よりスクラップ量を求める。求めた溶銑量、スクラップ量で熱収支計算を行い、その結果(熱収支b)が負であれば、このときの溶銑量、スクラップ量を決定値として以下の処理を実行しない。
溶銑計算:
x=(a−b)×Qsa1÷(Qsa2−Qsa1)
溶銑量=700kg/t+x
a: 700kg/t
b:1000kg/t
Qsa1:熱収支a
Qsa2:熱収支b
スクラップ量計算:
得られた溶銑量を使用して、スクラップ量を求める。
熱収支計算:
上記の溶銑量、スクラップ量で熱収支計算を行う。
熱収支結果が+20〜150°Cの範囲内なら、その値を決定値として処理終了 する。
熱収支結果が+20〜150°Cの範囲以外で、正の場合は溶銑量を−5kg/ tしてスクラップ計算量に戻る。
熱収支結果が+20〜150°Cの範囲以外で、負の場合は溶銑量を+5kg/ tしてスクラップ計算量に戻る。
なお、本実施形態の場合、出鋼時の目標りん濃度[P]や脱りん工程後の目標りん濃度〔P〕は、脱炭工程での熱収支計算に基づいた計算値を採用せず、適宜最適な値を設定するようにしている。
以上述べた、第1実施形態〜第3実施形態を実際の転炉操業に適用し、精錬を行った結果を図9〜図16に示している。
第1実施形態を適用した精錬にかかる各データは、図中では本発明1又は本発明例1と記載され、第2実施形態を適用した精錬にかかる各データは、図中では本発明2又は本発明例2と記載され、第3実施形態を適用した精錬にかかる各データは、図中では本発明3又は本発明例3と記載されている。
本実施例では、脱P処理前の溶銑は、500kg高周波炉にて銑鉄を溶融して調整し、溶銑鍋へ装入した(一部、成分調整のため、試薬を追加投入した)。
前チャージの吹錬終了後、炉内のスラグを残留させた(一部チャージは一部排滓した)転炉内に、スクラップ・地金を入れ置きした後、溶銑鍋より溶銑を装入した。その後、転炉プロセスコンピュータによる「スタティック計算」結果に基づき、脱P材(生石灰、鉄鉱石)を炉上ホッパーより投入しながら、上吹き酸素を吹き付けて脱P処理を行った。脱P処理後、溶銑を出湯することなく、転炉を炉前側へ傾動して脱Pスラグを排滓した。その後、転炉を正立させて、造滓材(生石灰、軽ドロ、生ドロ、珪石)、鉄鉱石を炉上ホッパーより投入しながら、気体酸素を上吹きして脱C吹錬を行った。吹錬末期に、ダイナミック制御を行い、目標温度・〔C〕へ調整した。
図9は、成分規格を示している。比較例1〜3及び本発明例1〜3は、何れも目標りん濃度及び上限りん濃度を同一のものとしている。図11に示すように、本発明例1〜3は、脱りん工程における総酸素投入量を9〜14Nm3/t内にしたものであり、比較例1及び比較例2は、脱りん工程における総酸素投入量を9Nm3/tよりも少なくし、比較例3は、脱りん工程における総酸素投入量を14Nm3/tよりも多くしたものである。
図10は、500kg高周波炉にて溶解して、転炉に装入した溶銑成分を示している。比較例1〜3及び本発明例1〜3は、何れも略同一の溶銑成分としている。
図11は、転炉に装入した主原料を示すと共に、脱りん工程における各種スラグ、酸素及び造滓材の投入量を示し、また、脱りん工程終了後の溶銑成分を示している。脱P後の溶銑成分は、本発明例1〜3の場合、比較例1〜3に比べてりんの濃度が低くなっており、図9に示す目標りん濃度に近くなっている。
図12は、脱炭工程における前チャージスラグ量を示すと共に、脱炭工程における酸素、造滓材及び昇熱材の投入量を示し、また、脱炭工程終了後の溶鋼成分を示している。本発明例1〜3の場合、脱炭工程において高価な昇熱材である黒鉛を使用しなくて済み、冷却材である鉄鉱石の使用も比較的少なくて済むようになっている。また、本発明例1〜3の場合、比較例1〜3に比べて脱炭工程の吹止温度は目標値である1680℃に近い値になっている。特に、本発明例3の場合、鉄鉱石の使用量が4.1kg/tと少なくて済み、しかも脱炭工程の吹止温度が目標温度である1680℃になっている。
図13は、脱P吹錬時の総酸素量と脱C吹錬時の温度調整材量との関係を、グラフに表したものである。このグラフから、本発明の第1実施形態の場合は、高価な昇熱材である黒鉛が不要になり、冷却材である鉄鉱石投入も比較的少なくて済むし、P規格上限外れもなくなっているのが分かる。また、本発明の第2実施形態の場合は、さらに、冷却材である鉄鉱石の投入量が8kg/t以下となり、より好ましいものとなっているのが分かる。 図14は、比較例(従来方法)、本発明の第1実施形態、本発明の第2実施形態について、昇熱材である黒鉛の使用量をグラフにしたものであり、比較例では昇熱材である黒鉛使用量が1.9kg/tであったのに対して、本発明の第1実施形態及び本発明の第2実施形態の場合、高価な昇熱材の使用がゼロになっている。
図15は、吹止温度ダイナミック的中率をグラフに表したものであり、比較例の場合、吹止温度ダイナミック的中率が82%であったのに対して、本発明の第1実施形態の場合、吹止温度ダイナミック的中率が89%になり、本発明の第2実施形態の場合、吹止温度ダイナミック的中率が100%になった。
図16は、脱C吹錬吹止時のリン濃度と脱P吹錬時の熱余裕との関係をグラフに表したものであり、本発明の第3実施形態のように脱P吹錬時の熱余裕を20℃〜150℃の範囲に設定した場合、脱C吹錬吹止〔P〕がP規格上限の0.025%以下に納まっている。
なお、本発明の転炉1の操業方法は、上記実施形態に限定されるものではない。
すなわち、最終目標値や中間目標値として、溶鉄(溶鋼又は溶銑)温度Tと[C]とを採用したが、そのいずれか一方であってもよく、[P]や[Mn]や[Si]を最終目標値又は中間目標値として採用してもよい。
また、転炉は上吹き転炉、底吹き転炉、又は上底吹き転炉のいずれであってもよい。
ダブルスラグ法の操業手順を示した図である。 第1実施形態にかかる精錬モデルのフローチャートである。 第2実施形態の基本的な考えを示した概念図である。 第2実施形態にかかる精錬モデルのフローチャートである。 脱りん工程後の目標温度を求めるフローチャートである。 第3実施形態にかかる精錬モデルのフローチャートである。 第3実施形態にかかる精錬モデルのフローチャートである。 第3実施形態にかかる主原料配合計算のフローチャートである。 実施例1において成分規格を示した図である。 実施例1において転炉に装入した溶銑の成分を示した図である。 実施例1の脱りん工程における造滓材投入量等を示した図である。 実施例1の脱炭工程における造滓材投入量等を示した図である。 実施例1の結果を示したグラフである。 実施例1の結果を示した他のグラフである。 実施例1の結果を示した他のグラフである。 実施例1の結果を示した他のグラフである。
符号の説明
1 転炉
2 スクラップ
3 溶銑
4 ランス
5 スラグ
8 前チャージスラグ

Claims (7)

  1. 転炉内に装入された溶銑の脱りん精錬を行う脱りん工程と、脱りん工程後の溶銑の脱炭精錬を同一転炉にて行う脱炭工程とを備える転炉の操業方法において、
    脱りん工程での脱珪に消費される分を除く総酸素投入量を、9〜14Nm3/tに設定したことを特徴とする転炉の操業方法。
  2. 脱炭工程での総酸素投入量を、脱炭精錬と脱りん精錬とに必要な酸素投入量から脱りん工程での総酸素投入量を減算した量に設定したことを特徴とする請求項1に記載の転炉の操業方法。
  3. 溶銑を転炉に装入する装入工程と、転炉内の溶銑の脱りん精錬を行う脱りん工程と、前記脱りん工程で生成されたスラグを転炉から排出する排出工程と、前記排出工程後に同一転炉にて溶銑の脱炭精錬を行う脱炭工程とを備える転炉の操業方法において、
    脱炭工程終了後の溶鋼の目標温度を含む最終目標値に基づいて、脱りん工程終了後の溶銑の中間目標値を算出し、
    脱炭工程の熱収支が脱炭工程終了後の溶鋼の目標温度に比べて0〜40℃高くなるように、脱りん工程での投入酸素の気酸と固酸との比率を設定することを特徴とする転炉の操業方法。
  4. 脱りん工程での脱珪に消費される分を除く総酸素投入量を、9〜14Nm3/tに設定したことを特徴とする請求項3に記載の転炉の操業方法。
  5. 脱炭工程における造滓材、昇熱材の条件が、
    造滓材:
    T.CaO=(溶銑[P](%)×3+前チャージスラグ残し量(kg/t)×0.0
    02−吹止目標[P](%)×10)×53.8+6.3
    T.MgO=(溶銑[P](%)×3+前チャージスラグ残し量(kg/t)×0.0
    02−吹止目標[P](%)×10)×9.2+1.9
    ただし、T.CaO:脱炭工程にて投入する造滓材中のCaO分(kg/t)
    T.MgO:脱炭工程にて投入する造滓材中のMgO分(kg/t)
    昇熱材:ゼロ
    であることを特徴とする請求項3に記載の転炉の操業方法。
  6. 算出した脱りん工程後の溶銑の目標温度が1300℃以下の場合、脱りん工程後の溶銑温度が1300℃となるように、脱りん工程での投入酸素の気酸と固酸との比率を調整し、算出した脱りん工程後の溶銑の目標温度が1400℃以上の場合、脱りん工程後の溶銑温度が1400℃となるように脱りん工程での投入酸素の気酸と固酸の比率を調整することを特徴とする請求項3に記載の転炉の操業方法。
  7. 脱りん工程における造滓材、昇熱材の転炉への投入量が、
    造滓材:脱りん工程後の溶銑の目標りん濃度を得るに必要なスラグ量と塩基度とを確保す
    るために必要な量
    昇熱材:ゼロ
    の条件の下で、
    脱りん工程の熱収支が脱りん工程後の溶銑の目標温度に比べて20〜150℃高くなるように、装入工程の溶銑配合率を設定することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の転炉の操業方法。
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