JP4353819B2 - 転炉の操業方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、脱りん工程において、スクラップの溶融に伴う熱の出入りを反映させた熱収支計算を行うスタティックコントロール技術は従来から提案がなされていなかった。また、特許文献2はダイナミックコントロールにおける昇温モデルに、スクラップ未溶解量を考慮するものであり、脱りん工程時の熱収支計算、すなわちスタティックコントロールにかかる技術を適用することは困難であった。
すなわち、本発明における課題解決のための技術的手段は、転炉内にスクラップと共に装入された溶銑の脱りん精錬を行う脱りん工程と、脱りん工程後の溶銑の脱炭精錬を同一転炉にて行う脱炭工程とを有するダブルスラグ法を用いた転炉の操業方法において、下記に示すステップ(1)〜ステップ(9)により、脱りん処理における操業条件を求めると共に、脱炭処理における操業条件を求めた上で、脱りん処理及び脱炭処理を行うことを特徴とする。
(1)最終目標値である脱炭工程が終了して出鋼する際の溶鋼の目標炭素濃度[C]を設定する。
(2)最終目標値である脱炭工程が終了して出鋼する際の溶鋼の目標温度を設定する。
(3)前記最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、中間目標値である脱りん工程後の目標炭素濃度[C]を設定する。
(4)最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、中間目標値である脱りん工程後の目標温度を設定する。
(5)中間目標値である脱りん工程後の目標炭素濃度[C]と、中間目標値である脱りん工程後の目標温度とを基に、脱りん工程において投入する副原料の投入量を求める。
(6)溶銑温度を中間目標値にするべく、脱りん工程での熱収支計算を行い、固酸と気酸との比率を決定する。
(7)脱りん工程における前記副原料の投入量及び気酸と固酸との比率をもとに、スラグのCaO及びSiO 2 を算出して、スラグの塩基度を求める。
(8)前記中間目標値、前記脱りん工程における副原料の投入量及び気酸と固酸との比率を基に、脱炭工程での副原料の投入量を算出すると共に、溶銑温度を最終目標値にするべく、脱炭工程での固酸と気酸との比率を決定する。
(9)脱炭工程における前記副原料の投入量及び気酸と固酸との比率をもとに、スラグのCaO及びSiO 2 を算出して、脱炭工程におけるスラグの塩基度を求める。
ただし、前記脱りん工程での熱収支計算は、脱りん工程において転炉内に入る熱を式(1)に示す入熱Q Total_in とし、転炉から外部に出る熱を式(2)に示す出熱Q Total_out とし、前記入熱Q Total_in と前記出熱Q Total_out とが等しいとして行う。
Q Total_in =
Q in 〔0〕+Q in 〔1〕+Q in 〔2〕+Q in 〔3〕+Q in 〔4〕
+Q in 〔5〕+Q in 〔6〕+Q in 〔7〕 ・・・ (1)
ここで、
Q in 〔0〕:溶銑の有する熱量
Q in 〔1〕:装入成分〔Si〕量による熱量
Q in 〔2〕:装入成分〔Ti〕量による熱量
Q in 〔3〕:装入成分〔AL〕量による熱量
Q in 〔4〕:装入成分〔Mn〕量による熱量
Q in 〔5〕:装入成分〔P〕量による熱量
Q in 〔6〕:鉄の酸化反応による熱量
Q in 〔7〕:装入成分〔C〕量による熱量
Q Total_out =
Q out 〔0〕+Q out 〔1〕+Q out 〔2〕+Q out 〔3〕
+Q out 〔4〕+Q out 〔5〕 ・・・ (2)
ここで、
Q out 〔0〕:発生ガスによる熱量
Q out 〔1〕:スケール投入による熱量
Q out 〔2〕:冷却材(鉄鉱石Fe x O y )投入による熱量
Q out 〔3〕:Mn鉱石投入による熱量
Q out 〔4〕:生ドロ投入による熱量
Q out 〔5〕:スクラップ吸熱量
この技術的手段によれば、脱りん工程で溶解するスクラップを考慮した熱収支計算により、正確な脱りん工程の操業条件を算出でき、この操業条件に基づいて最適な転炉操業が可能となる。
また、本発明における課題解決のための技術的手段は、前記脱りん工程での熱収支計算は、転炉に対する入熱量と出熱量とが等しいとして行い、前記出熱量は、スクラップ溶解時に溶銑より奪われる熱量であるスクラップ吸熱量を含んでいることを特徴とする。
また、本発明における課題解決のための技術的手段は、前記スクラップを重量によりクラス分けし且つ各クラスに応じた溶解熱を積算することで、前記スクラップ吸熱量を求めることを特徴とする。
この技術的手段によれば、スクラップをその重量でクラス分けすると共に、それぞれのクラスに属するスクラップとその溶解熱を対応づけておき、実際に使用するスクラップの溶解熱を前記対応関係から求め且つ積算することにより、スクラップ吸熱量を正確に求めることができるようになる。
この技術的手段によれば、スクラップ吸熱量を統計的手法を用いて求めた近似式により正確に算出することができるようになる。
また、本発明における課題解決のための技術的手段は、前記転炉にて使用されるスラグ及び地金付着スラグを前記脱りん工程での熱収支計算に加味して行うことを特徴とする。
この技術的手段によれば、転炉内に投入されるスラグの溶解及び昇温に必要とされる熱量を考慮することで、より精度の高い脱りん工程での熱収支計算を行うことが可能となる。
図1は、転炉1を用いた精錬方法の1つであるダブルスラグ法の手順(操業手順)を示したものである。
まず、装入工程として、転炉1の底部に故銑や鉄屑、製鋼工程で生じる地金等のスクラップ2を入れ、転炉1を傾動し、炉内に溶銑3を流し入れるようにする。
その後、溶銑3中のりんPを主に取り除く脱りん工程として、転炉1の炉口1aからランス4を挿入し、溶銑3上面に近づけ、酸素ガスを吹き付けると同時に、炉底から吹き込みガスで溶銑3を撹拌しつつ精錬(吹錬)を開始する。同時に、石灰CaO等の造滓材や酸化鉄FexOy等の冷却材、すなわち副原料を投入することで、りんPは投入された酸素と反応してスラグ相に移行し、溶銑3の上方に浮いた状態で積層するようになる。このスラグ5の中には未反応のCaOが多く含まれるため、脱りん能力を有するものとなっている。
なお、以下、りんPと反応する酸素の内、ランス4からの吹き込まれた酸素O2を気酸と呼び、酸化鉄FexOyを起源とする酸素Oを固酸と呼ぶ。また、溶銑(溶鋼)中の成分Aの濃度を[A]と表記し、スラグ中の成分Aの濃度を(A)と表記する。
排出工程を経た転炉1は、再び元の姿勢に戻され、酸素吹き込みや副原料の投入をなされることで、主に溶銑3中の炭素Cを取り除き[C]を調整する脱炭工程へと進む。脱炭工程後は、転炉1を傾動させ、転炉1の上部側方に設けられた出鋼口7より溶鋼を外へ流し出すようにしている。その際、脱炭工程で生成されたスラグ5を残すようにし、次に精錬する溶銑3を装入するようにする(次チャージの装入工程)。
なお、前記装入工程で転炉1内に装入されるスクラップ2の内、地金と呼ばれるものには、図1に示すように、
(1)溶銑地金:別工程で発生した脱珪用スラグに混在して残留しているメタル、或いはトーピードカーに設けられた装入口などに付着したメタル
(2)炉口地金:転炉1の炉口1aに固着するメタル
(3)炉下地金:溶銑3がスロッピング等により転炉1外に噴出し転炉3下に堆積したメタル
(4)平パン地金:転炉1または取鍋から移送手段6に移し替えられた転炉スラグ或いは連鋳造塊スラグの下層部に溜まるメタル、ポット地金、受け容器地金と表記される場合もある。
(5)溶銑鍋地金:溶銑鍋10内、特にスラグライン部に固着するメタル
がある。
転炉1において使用される主なスラグは、
(1)前チャージ残留スラグ:前回の転炉精錬で生成、残留したスラグ
(2)地金付着スラグ:転炉へ主原料(鉄源)として装入した地金に付着しているスラグ
(3)溶銑鍋残留スラグ:転炉に溶銑を注入する際に溶鉄とともに装入されるスラグ(装入前の除滓時に残留したスラグ)
(4)炉下スラグ:スロッピングや排滓などにより転炉の下に落下したスラグ
(5)転炉スラグ:転炉精錬後に排滓したスラグ
(6)連鋳スラグ:連鋳鋳造後の取鍋に残留したスラグ
(7)合金鉄スラグ:FeMnやSiMnなどの合金鉄の製造時に発生したスラグ
(8)その他の精錬スラグ:溶銑脱珪スラグ(高炉スラグ)、溶銑脱硫スラグなど
である。
上記転炉1の制御には、各工程での物質収支や熱収支計算、反応速度計算にもとづいて組み立てられた精錬モデルを用いており、この精錬モデルをプロセスコンピュータ等で計算することで導出される酸素や副原料の投入量をガイダンス値(指針値)として参照し、それに基づき転炉1を操業するようにしている(スタティックコントロール)。
さらに、このスタティックコントロールに加えて、精錬が終了直前に[C]および溶銑温度Tの測定を行い、その結果に応じて吹き込み酸素量を微調節し、目標値になった時点で精錬を終了させるダイナミックコントロールを行うようにしている。
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
本実施形態は、転炉1内にスクラップ2と共に装入された溶銑3の脱りん精錬を行う脱りん工程と、脱りん工程後の溶銑3の脱炭精錬を同一転炉にて行う脱炭工程とを備える転炉の操業方法において、脱りん工程で溶解するスクラップ2を考慮した熱収支計算を行うことで、脱りん工程における操業条件を算出し、この操業条件に基づいて転炉の操業を行うものである。
まず、最終目標値として脱炭工程が終了して出鋼する際の溶鋼の目標温度Tや目標炭素濃度[C]を設定する(S201、S202)。
次に、この最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、中間目標値である脱りん工程後の溶銑の目標温度Tと目標[C]を決定するようにする(S203,S204)。
なお、「入熱=出熱」の方程式には、熱量Qの変数として中間目標値である脱りん工程後の目標温度Tが含まれると共に目標[C]も含まれており、両者は未知数であるが、方程式は1つであるため、このままでは解が一義的に決定しない。そこで、脱りん工程後の目標[C]は、脱りん時の総酸素量を溶銑1トンあたり標準状態で11m3(11Nm3/t)の固定値とし、この酸素と結合する炭素量を化学式等から逆算する。決定された目標[C]を用いて「入熱=出熱」の方程式を解くと、脱りん工程後の溶銑3の目標温度Tが計算できる。
本実施形態の場合、脱りん工程で投入される副原料、例えば、生石灰CaO等の造滓材は、溶銑3中のりんPを取り去るのに必要十分な量を投入するようにすればよい。
ところが、前記副原料の投入により溶銑温度Tが必要以上に低下する場合がある。そこで、溶銑温度Tを中間目標値に合致させるべく、脱りん工程での熱収支計算を行い、固酸と気酸との比率を決定し、吹き込み酸素量などを決めるようにしている(S206)。
図3にはS206の詳しいステップが示されており、まず、脱りん工程時に、装入主原料、脱りん後溶銑量、スラグ量を求めるようにする(S301)。転炉内に装入される全主原料量は、高炉から搬入される溶銑3の量とスクラップ2の量とを略合わせたものである。
入熱としては、式(1)に示すように、高炉から搬入される溶銑3の持つ熱量や溶銑成分の酸化に伴う発熱を考える。
QTotal_in=
Qin〔0〕+Qin〔1〕+Qin〔2〕+Qin〔3〕+Qin〔4〕
+Qin〔5〕+Qin〔6〕+Qin〔7〕 ・・・ (1)
ここで、
Qin〔0〕:溶銑の有する熱量
Qin〔1〕:装入成分〔Si〕量による熱量
Qin〔2〕:装入成分〔Ti〕量による熱量
Qin〔3〕:装入成分〔AL〕量による熱量
Qin〔4〕:装入成分〔Mn〕量による熱量
Qin〔5〕:装入成分〔P〕量による熱量
Qin〔6〕:鉄の酸化反応による熱量
Qin〔7〕:装入成分〔C〕量による熱量
出熱としては、式(2)に示すように、脱りん工程終了時の溶銑3の有する熱量や投入冷却材(FexOy)による吸熱、スクラップ2の溶解に必要な熱量(スクラップ吸熱量)を考える。
QTotal_out=
Qout〔0〕+Qout〔1〕+Qout〔2〕+Qout〔3〕
+Qout〔4〕+Qout〔5〕 ・・・ (2)
ここで、
Qout〔0〕:発生ガスによる熱量
Qout〔1〕:スケール投入による熱量
Qout〔2〕:冷却材(鉄鉱石FexOy)投入による熱量
Qout〔3〕:Mn鉱石投入による熱量
Qout〔4〕:生ドロ投入による熱量
Qout〔5〕:スクラップ吸熱量
前記スクラップ吸熱量Qout〔5〕は、装入工程で転炉内に装入されたスクラップ、すなわち冷銑や鉄屑、製鋼工程で生じる地金等が溶解する際に必要とされる熱量である。
本実施形態の場合は、前記スクラップ吸熱量Qout〔5〕を以下の2つの手法にて、推定するようにしている。
1つの手法は、スクラップ2を重量によりクラス分けし且つ各クラスに応じた溶解熱を積算することで、前記スクラップ吸熱量Qout〔5〕を求めるようにしている。
その後、装入工程で実際に装入されるスクラップ2について、図4に照らし合わせながら溶解熱を求め、それらを加えあわせることで、スクラップ吸熱量Qout〔5〕を求めるようにする。
すなわち、本願出願人は、装入したスクラップ2の重量を重いもの(重量)と、比較的軽いもの(中量)と、非常に軽量であって脱りん工程で容易に溶解するもの(軽量)とに分類しておき、そのうちの2変数(重量スクラップの重さ、中量スクラップの重さ)とスクラップ吸熱量Qout〔5〕との関係が、式(3)に示す重回帰近似式で表されることを試験結果より明らかにしている。この重回帰近似式を用いることで、スクラップ吸熱量Qout〔5〕を容易に且つ正確に求めることができる。
スクラップ吸熱量Qout〔5〕=4.89×脱C量+0.118×発生スラグ量
+0.030×重量スクラップ合計量
−0.212×中量スクラップ合計量
−13094 ・・・(3)
以上の手順で求められた気酸と固酸との比率は、非常に重要な操業条件ガイダンス値であり、気酸すなわちランス4から吹き込まれる酸素O2及び固酸の分解により供給される酸素Oは、溶銑3中の炭素Cと反応して発熱するが、その内、固酸すなわち冷却材である酸化鉄FexOyは、溶銑3中で酸素Oと鉄Feとに分解する際に大きく吸熱する。したがって、気酸と固酸との比率を調整することで溶銑3の温度Tを上昇又は下降させて中間目標値とすることができる。
これらの値が適切でない場合は、投入された副原料により形成されたスラグ5の脱りん能力が著しく低下するため、再度、S205,S206に戻り、再計算を行った上で、適切な塩基度C/Sとなるように、副原料の投入量および、気酸と固酸との比率を算出するとよい。
続いて、図2に示す如く、脱りん工程におけるガイダンス値を入力値、最終目標値を出力値として、脱炭工程でのガイダンス値を算出するようにしている。
まず、中間目標値や脱りん工程でのガイダンス値を基に、脱炭工程での副原料(生石灰CaO等)の投入量を算出するようにする(S208)。S208においては、脱りん工程で生成されたスラグ5の一定量(30%)が繰り越される、換言すれば排出工程において一定量のスラグ5が残留するものとして計算を進めている。
S209においても、吹止溶鋼温度Tを最終目標値に合致させるべく、脱炭工程での熱収支計算を行い、固酸と気酸との比率を決定し、吹き込み酸素量などを決めるようにしている。脱炭工程での熱収支計算は、転炉に対する入熱量と出熱量とが等しい(QTotal_in=QTotal_out)として行い、出熱量は、脱りん工程で溶けきらず残っているスクラップの溶解熱を考慮するものとなっている。すなわち、熱収支計算の具体的なやり方は脱りん工程と略同様である。
S208→S209→S210により、求められた副原料の投入量および、気酸と固酸との比率は、脱炭工程における転炉操業のガイダンス値であり、それに基づいて、転炉1の操業を行うようにするとよい。
以上のようにして求められたガイダンス値を用いて転炉1の操業を行うことで、ダブルスラグ法での各工程が最適パスを取るようにすることができるようになる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態は、転炉1内にて使用されるスラグ(前チャージスラグを含む)及び地金付着スラグの溶解及び昇温に必要とされる熱量を考慮した上で、前記脱りん工程での熱収支計算を行うものである。
入熱には、式(4)に示すように、高炉から搬入される溶銑3の持つ熱量や溶銑成分の酸化、前チャージ残留スラグ量による熱量や溶銑3と共に装入される溶銑スラグ量による熱量がある。
QTotal_in=
Qin〔0〕+Qin〔1〕+Qin〔2〕+Qin〔3〕+Qin〔4〕+Qin〔5〕
+Qin〔6〕+Qin〔7〕+Qin〔8〕
+Qin〔slag・bef〕+Qin〔slag・hm〕 ・・・ (4)
ここで、
Qin〔0〕:溶銑払出量による熱量
Qin〔1〕:装入成分〔Si〕量による熱量
Qin〔2〕:装入成分〔Ti〕量による熱量
Qin〔3〕:装入成分〔AL〕量による熱量
Qin〔4〕:装入成分〔Mn〕量による熱量
Qin〔5〕:装入成分〔P〕量による熱量
Qin〔6〕:鉄の酸化による熱量
Qin〔7〕:装入成分〔C〕量による熱量
Qin〔8〕:装入スラグ〔SiO2〕量による熱量
Qin〔slag・bef〕:前チャージ残留スラグ量による熱量
Qin〔slag・hm〕:溶銑鍋残留スラグ量による熱量
出熱としては、式(5)に示すように、脱りん工程終了時の溶銑3の有する熱量や投入冷却材による吸熱、スクラップ2の溶解に必要な熱量(スクラップ吸熱量)、地金付着スラグの溶解に必要な熱量(溶融熱)、溶けた地金付着スラグの昇温に必要な熱量(昇温熱)がある。
QTotal_out=
Qout〔0〕+Qout〔1〕+Qout〔2〕+Qout〔3〕+Qout〔4〕
+Qout〔5〕+Qout〔st(昇温)〕+Qout〔slag(昇温)〕
+Qout〔slag(溶融)〕+Qout〔sc(溶融)〕
・・・ (5)
ここで、Qout〔0〕:発生ガスによる熱量
Qout〔1〕:スケール投入による熱量
Qout〔2〕:冷却材(鉄鉱石FexOy)投入による熱量
Qout〔3〕:Mn鉱石投入による熱量
Qout〔4〕:生ドロ投入による熱量
Qout〔5〕:スクラップ吸熱量
Qout〔st(昇温)〕:吹止時の溶鋼の有する熱量
Qout〔slag(昇温)〕:吹止時のスラグの有する熱量
Qout〔slag(溶融)〕:スラグの溶融熱量
Qout〔sc(溶融)〕:スクラップの溶融熱量
上記熱収支計算において、前チャージ残留スラグは温度1600〜1700℃程度の熱間スラグであり、溶銑鍋残留スラグは温度1250〜1350℃程度の熱間スラグであるから、それらの有する熱量は、入熱量として加算している。
各種の精錬スラグの昇温熱量(比熱)は、スラグ発生の場所毎に異なるため、発生場所毎のスラグについて、比熱を実際に求めた上でスラグ全体の平均値を求め、この比熱の平均値からスラグの昇温熱量Qout〔slag(昇温)〕を算出するようにしている。
このように脱りん工程での熱収支計算に、地金に付着したスラグに関する熱量を加味することにより、精度の高い熱計算を行うことができ、精錬後の目標温度Tに対する的中率を高めることが可能となる。
実施例1では、前チャージ精錬終了後、スラグを残留させた転炉にスクラップを入れ置きした後、溶銑2を装入した。その後、精錬モデルによるスタティック計算で得られたガイダンス値に基づき、副原料(生石灰、鉄鉱石)を溶銑へ投入しつつ、ランスより酸素を吹き付けて脱りん処理を行った。
脱りん処理後、脱りん処理により発生したスラグを排滓し、その後、さらに副原料や酸素を投入することで脱炭処理を行った。スタティックコントロールの精度を確認するためにダイナミックコントロールは行わないようにした。
図6には、第1実施形態及び2実施形態に開示した精錬モデルから得られたガイダンス値を基に、前記溶銑3の脱りん工程を行った結果を示している。
具体的には、比較例1、本発明例1、本発明例2の全てで、溶銑の量は930kg/tであり、スクラップとして、重量屑(厚み150mm以上)を18.0kg/t、中量屑(厚み150〜50mm)を10.0kg/t、軽量屑(厚み50mm以下)を40.0kg/t装入した。その内、スラグが付着した地金は、軽量地金がトータルで22.0kg/t、重量地金がトータルで45.0kg/t装入した。
図9(c)は、脱りん工程での熱収支計算に、溶解するスクラップ及びスラグを考慮した第2実施形態(本発明例2)を50チャージを実施し、得られたスタテック計算誤差をグラフに表したものである。
なお、図9(a)は比較例1であり、本発明を適用しないダブルスラグ法にて、50チャージの精錬を行った結果である。
以上述べた、本発明にかかる転炉1の操業方法は、上記実施の形態に限定されるものではない。
すなわち、最終目標値や中間目標値として、溶鉄(溶鋼又は溶銑)温度Tと[C]とを採用したが、そのいずれか一方であってもよく、[P]や[Mn]や[Si]を最終目標値又は中間目標値として採用してもよい。
また、精錬モデルに、脱りん工程での脱りんに必要とされる最低限のスラグ量であるミニマムスラグ量の考えを導入し、より最適な操業を行うためのガイダンス値を得られるようにすることは非常に好ましい。
また、脱炭工程において、溶解するスクラップを考慮した熱収支計算を行うようにしても何ら問題はない。
2 スクラップ
3 溶銑
4 ランス
5 スラグ
8 チャージスラグ
10 溶銑鍋
Claims (1)
- 転炉内にスクラップと共に装入された溶銑の脱りん精錬を行う脱りん工程と、脱りん工程後の溶銑の脱炭精錬を同一転炉にて行う脱炭工程とを有するダブルスラグ法を用いた転炉の操業方法において、
下記に示すステップ(1)〜ステップ(9)により、脱りん処理における操業条件を求めると共に、脱炭処理における操業条件を求めた上で、脱りん処理及び脱炭処理を行うことを特徴とする転炉の操業方法。
(1)最終目標値である脱炭工程が終了して出鋼する際の溶鋼の目標炭素濃度[C]を設定する。
(2)最終目標値である脱炭工程が終了して出鋼する際の溶鋼の目標温度を設定する。
(3)前記最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、中間目標値である脱りん工程後の目標炭素濃度[C]を設定する。
(4)最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、中間目標値である脱りん工程後の目標温度を設定する。
(5)中間目標値である脱りん工程後の目標炭素濃度[C]と、中間目標値である脱りん工程後の目標温度とを基に、脱りん工程において投入する副原料の投入量を求める。
(6)溶銑温度を中間目標値にするべく、脱りん工程での熱収支計算を行い、固酸と気酸との比率を決定する。
(7)脱りん工程における前記副原料の投入量及び気酸と固酸との比率をもとに、スラグのCaO及びSiO 2 を算出して、スラグの塩基度を求める。
(8)前記中間目標値、前記脱りん工程における副原料の投入量及び気酸と固酸との比率を基に、脱炭工程での副原料の投入量を算出すると共に、溶銑温度を最終目標値にするべく、脱炭工程での固酸と気酸との比率を決定する。
(9)脱炭工程における前記副原料の投入量及び気酸と固酸との比率をもとに、スラグのCaO及びSiO 2 を算出して、脱炭工程におけるスラグの塩基度を求める。
ただし、前記脱りん工程での熱収支計算は、脱りん工程において転炉内に入る熱を式(1)に示す入熱Q Total_in とし、転炉から外部に出る熱を式(2)に示す出熱Q Total_out とし、前記入熱Q Total_in と前記出熱Q Total_out とが等しいとして行う。
Q Total_in =
Q in 〔0〕+Q in 〔1〕+Q in 〔2〕+Q in 〔3〕+Q in 〔4〕
+Q in 〔5〕+Q in 〔6〕+Q in 〔7〕 ・・・ (1)
ここで、
Q in 〔0〕:溶銑の有する熱量
Q in 〔1〕:装入成分〔Si〕量による熱量
Q in 〔2〕:装入成分〔Ti〕量による熱量
Q in 〔3〕:装入成分〔AL〕量による熱量
Q in 〔4〕:装入成分〔Mn〕量による熱量
Q in 〔5〕:装入成分〔P〕量による熱量
Q in 〔6〕:鉄の酸化反応による熱量
Q in 〔7〕:装入成分〔C〕量による熱量
Q Total_out =
Q out 〔0〕+Q out 〔1〕+Q out 〔2〕+Q out 〔3〕
+Q out 〔4〕+Q out 〔5〕 ・・・ (2)
ここで、
Q out 〔0〕:発生ガスによる熱量
Q out 〔1〕:スケール投入による熱量
Q out 〔2〕:冷却材(鉄鉱石Fe x O y )投入による熱量
Q out 〔3〕:Mn鉱石投入による熱量
Q out 〔4〕:生ドロ投入による熱量
Q out 〔5〕:スクラップ吸熱量
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