JP4353817B2 - 転炉の操業方法 - Google Patents

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Description

本発明は、転炉精錬などのように精錬容器を用いて溶銑にフラックスの添加と酸素吹き込みを行う転炉の操業方法に関する。
従来より、転炉精錬にあっては通常、吹錬開始前に目標温度(吹き止め温度)並びに目標炭素量(吹き止め炭素量)を得るための熱収支におけるスタティック計算(以下、単に熱計算という)を行い、目標Pレベルの達成に必要な造滓剤(フラックス)及び目標炭素量に見合う吹錬酸素量を決定し、これに基づいて目標温度の調整に必要な冷却材(鉄鉱石など)又は昇熱材(黒鉛など)の装入量を決定し、これら決定された精錬条件により操業を行う所謂スタティック制御を基本としている。そして、このスタティック制御に精錬終了直前の温度やCなどの測定・分析情報をもとに必要に応じて精錬条件の修正を行なう所謂ダイナミック制御を組み合わせた操業が行われている。
従って、吹錬前の上記熱計算の誤差が大きくなると特に重要な処理後の温度が目標値から外れてしまい、処理時間の延長やコストアップは勿論のこと、更に品質への悪影響が生じることになる。すなわち、先ず処理後の温度が目標値から高く外れた場合にはPのスラグ、メタル間の分配比が下がって脱P効率が低下し、脱P不良を来たすことになり、また転炉耐火物の溶損量が増大し、さらにこの温度が高すぎると温度調整のため鉄鉱石などの冷却材の投入が間に合わなくなり、吹錬終了後に投入することになり精錬時間の延長を余儀なくされる。そして、この鉄鉱石などの追加投入により、スラグ中のT.Fe(Feのトータル)が増大して鉄歩留が低下すると共に鋼の品質が劣化することになる。
一方、処理後の温度が目標値から低く外れた場合には吹錬酸素を過剰に供給してCの吹き下げを行わなければならず、結果として溶鋼(メタル)を燃焼させる割合が大きくなり、スラグ中のT.Feが上昇し、やはり品質の劣化を招くことになる。スラグ中のT.Feの上昇は耐火物の溶損拡大にもつながり好ましくない。Cの吹き下げは目標Cへの到達のために必要であった酸素量以上に、熱を確保するために余分に供給することになるから当然ながら吹錬時間を延長せざるを得ないことになる。このように、吹錬前の熱計算が正確に行わなければ転炉精錬の実操業に多大な悪影響と不利を及ぼすことになるのである。
ところで、近年、環境問題及びコスト低減の観点から、廃棄物などのリサイクル(再資源化)が検討、推進されてきているが、鉄鋼業における製鋼の分野においても溶銑や溶鋼の処理、精錬の過程やその他製鉄所や工場内で発生する各種の精錬スラグの有効利用が活発に行われ始めている。例えば、転炉精錬では後の実施形態の項でその定義を含めて詳述するが、前チャージの残留スラグ、地金付着スラグ、転炉々下スラグ、溶銑鍋残留スラグ、転炉スラグ、合金鉄スラグ、連鋳スラグ、造塊スラグなどの精錬スラグなどがすでに使用されまたはその使用が検討されている現状にある。
これらの精錬スラグは、転炉精錬に使用されるフラックスとして有効なCaOやMgOなどの塩基成分を有すると共に鉄分などのメタルが含まれているものが多く、しかもすでに精錬工程を経てスラグとなったものであるため熱間のスラグは勿論のこと、冷間で利用する場合でも滓化が容易であり省エネルギーの面でも有利である。このため、これらの精錬スラグを転炉精錬時のフラックスの一部として積極的に活用する機運が高まっており、その結果、転炉への使用量の増加や使用スラグの種類の拡大がなされつつある。
ところが、従来はこうした精錬スラグを転炉において使用していたにもかかわらず前記の熱計算にあってはこれらのスラグを全く無視するか、無視しないまでも計算式の中では他の誤差要因と一緒に一括して所謂不明項として取り扱っている(特許文献1、2など)にとどまっている状況にある。従って、こうした従来技術においては熱計算の結果に誤差を必然的に含むものであり、特に不明項として処理する場合であっても使用するスラグの量や種類の変動に伴って計算誤差が大きくなり、何れもスタティック制御を正確に行うことが出来ず、前述のような転炉操業に対する多大な悪影響や不利を伴う問題が内在することになる。
特開平2−190413号公報 特開平5−33029号公報
本発明は、こうした従来の背景に鑑み、各種精錬スラグを積極的に使用する場合においても、精度の高い熱計算を行うことができ、精錬後の目標温度に対する的中率を高めることが可能な安定して効率の良い溶銑の精錬操業を実現することをその課題としてなされたものである。
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明における課題解決のための技術的手段は、転炉内にスクラップと共に装入された溶銑の脱りん精錬を行う脱りん工程と、脱りん工程後の溶銑の脱炭精錬を同一転炉にて行う脱炭工程とを有するダブルスラグ法を用いた転炉の操業方法において、
下記に示すステップ(1)〜ステップ(9)により、脱りん処理における操業条件を求めると共に、脱炭処理における操業条件を求めた上で、脱りん処理及び脱炭処理を行う点にある。
(1)最終目標値である脱炭工程が終了して出鋼する際の溶鋼の目標炭素濃度[C]を設定する。
(2)最終目標値である脱炭工程が終了して出鋼する際の溶鋼の目標温度を設定する。
(3)前記最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、中間目標値である脱りん工程後の目標炭素濃度[C]を設定する。
(4)最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、中間目標値である脱りん工程後の目標温度を設定する。
(5)中間目標値である脱りん工程後の目標炭素濃度[C]と、中間目標値である脱りん工程後の目標温度とを基に、脱りん工程において投入する副原料の投入量を求める。
(6)溶銑温度を中間目標値にするべく、脱りん工程での熱収支計算を行い、固酸と気酸との比率を決定する。
(7)脱りん工程における前記副原料の投入量及び気酸と固酸との比率をもとに、スラグのCaO及びSiO 2 を算出して、スラグの塩基度を求める。
(8)前記中間目標値、前記脱りん工程における副原料の投入量及び気酸と固酸との比率を基に、脱炭工程での副原料の投入量を算出すると共に、溶銑温度を最終目標値にするべく、脱炭工程での固酸と気酸との比率を決定する。
(9)脱炭工程における前記副原料の投入量及び気酸と固酸との比率をもとに、スラグのCaO及びSiO 2 を算出して、脱炭工程におけるスラグの塩基度を求める。
ただし、前記脱りん工程での熱収支計算は、脱りん工程において転炉内に入る熱を式(1)に示す入熱Q〔9〕 in とし、転炉から外部に出る熱を式(2)に示す出熱Q out 〔10〕とし、前記入熱Q〔9〕 in と前記出熱Q out 〔10〕とが等しいとして行う。
Q〔9〕 in
in 〔0〕+Q in 〔1〕+Q in 〔2〕+Q in 〔3〕+Q in 〔4〕+Q in 〔5〕+ in 〔6〕+Q in 〔7〕+Q in 〔8〕+Q in 〔Slag・bef〕+Q in 〔Slag・hm〕 ・・・(1) ここで、
in 〔0〕:溶銑払出量による熱量
in 〔1〕:装入成分〔Si〕量による熱量
in 〔2〕:装入成分〔Ti〕量による熱量
in 〔3〕:装入成分〔AL〕量による熱量
in 〔4〕:装入成分〔Mn〕量による熱量
in 〔5〕:装入成分〔P〕量による熱量
in 〔6〕:鉄の酸化による熱量
in 〔7〕:装入成分〔C〕量による熱量
in 〔8〕:装入スラグ〔SiO 2 〕量による熱量
in 〔Slag・bef〕:前チャージ残留スラグ量による熱量
in 〔Slag・hm〕:溶銑鍋残留スラグ量による熱量
out 〔10〕=
out 〔0〕+Q out 〔1〕+Q out 〔2〕+Q out 〔3〕+Q out 〔4〕+Q out 〔5〕+Q out 〔st(比熱)〕+Q out 〔slag(比熱)〕+Q out 〔slag(溶融熱)〕+Q out 〔sc(溶融熱)〕 ・・・(2)
ここで、Q out 〔0〕:発生ガスによる熱量
out 〔1〕:スケール投入による熱量
out 〔2〕:鉄鉱石投入による熱量
out 〔3〕:Mn鉱石投入による熱量
out 〔4〕:生ドロ投入による熱量
out 〔5〕:不明項目による熱量
out 〔st(比熱)〕:吹止時の溶鋼量による熱量
out 〔slag(比熱)〕:吹止時のスラグの比熱による熱量
out 〔slag(溶融熱)〕:スラグの溶融による熱量
out 〔sc(溶融熱)〕:スクラップの溶融による熱量
この技術的手段によれば、精錬スラグを積極的に使用する場合においても、精度の高い熱計算を行うことができ、精錬後の目標温度に対する的中率を高めることが可能となる。
また、本発明における課題解決のための技術的手段は、前記熱収支計算は、スラグ及び地金付着スラグの比熱を個別に加味して熱量を計算していることを特徴とする。
この技術的手段によれば、各種のスラグの比熱の相違を熱収支計算に反映してより高精度に精錬条件を決定することができるようになる。
また、本発明における課題解決のための技術的手段は、前記使用スラグが、前チャージ残留スラグ、地金付着スラグ、溶銑鍋残留スラグ、転炉スラグ、連鋳スラグ、造塊スラグ、合金鉄スラグ、溶銑地金付着スラグから選ばれる1種以上からなることを特徴とする。
この技術的手段によれば、1種又は複数種の精錬スラグを個別に加味して精錬条件を決定することができるようになる。
本発明によれば、溶銑の脱P、脱C精錬に当って使用される精錬スラグの比熱による熱容量を熱収支の計算に加味して精錬条件を決定するため、精度の高い熱計算を行うことができ、従ってスタティック制御による処理後の溶鋼温度の目標温度に対するばらつきを小さくし、その的中率を向上させることが可能となる。
そして、この結果、脱P不良の防止、耐火物の溶損も軽減、精錬時間の短縮、スラグ中のT.Feの低下に伴う鉄歩留が向上、吹錬酸素量の低減及び鉄鉱石などの冷却材使用量の低減を図ることができる。
以下、本発明にかかる溶銑の精錬方法を、図を基に説明する。
図1〜図3は本発明を、従来から用いられている、トーピードカー内の溶銑に副原料を投入して脱りんを行なった後に脱炭を行う脱炭工程での精錬や、2基の転炉の一方で脱りんを行い他方で脱炭を行う精錬における脱炭工程での精錬に適用実施した場合の第1実施形態を示している。
図1は、転炉1を用いた吹錬の手順(操業手順)を示したものである。
まず、装入工程として、後述する前チャージ残留スラグ8が残っている転炉1を傾動し、炉内にスクラップ2等を装入した上で溶銑3を流し入れるようにする。
その後、脱炭工程では、脱炭を主に行うが、同時に脱りんも促進する必要があり、転炉1の炉口1aからランス4を挿入し、溶銑3上面に近づけ、酸素ガスを吹き付けると同時に、炉底から吹き込みガスで溶銑3を撹拌しつつ精錬(吹錬)を開始する。同時に、石灰CaO等の造滓材や酸化鉄Fexy等の冷却材、すなわち副原料を投入することで、りんPは投入された酸素と反応してスラグ相に移行し、溶銑3の上方に浮いた状態で積層するようになる。
上記転炉1の制御には、各工程での物質収支や熱収支計算、反応速度計算にもとづいて組み立てられた精錬モデルを用いており、この精錬モデルをプロセスコンピュータ等で計算することで導出される酸素や副原料の投入量をガイダンス値(指針値)として参照し、それに基づき転炉1を操業するようにしている(スタティックコントロール)。
さらに、このスタティックコントロールに加えて、精錬が終了直前に[C]および溶湯温度Tの測定を行い、その結果に応じて吹き込み酸素量を微調節し、目標値になった時点で精錬を終了させるダイナミックコントロールを行うようにしている。
前記ガイダンス値に基づいて、精錬終点の[C]と温度Tを一度の精錬で最終目標値に合致させつつ低コストで転炉1の操業を行うようにしている。
上記装入工程の際又は脱炭工程の際に、前チャージ残留スラグ、地金付着スラグ、転炉炉下スラグ、溶銑鍋残留スラグ、転炉スラグ、連鋳スラグ、造塊スラグ、合金鉄スラグ、その他の精錬スラグ等を転炉1に投入して、溶銑や溶鋼の処理、精錬の過程やその他製鉄所や工場内で発生する各種の精錬スラグの有効利用を図っている。
ここで、転炉1において使用される主な精錬スラグについてその定義を説明すると次の通りである。
(1)前チャージ残留スラグ:前回の転炉精錬で生成、残留したスラグ。
(2)地金付着スラグ:転炉へ主原料(鉄源)として装入した地金に付着しているスラグ。
(3)溶銑鍋残留スラグ:転炉に溶銑を注入する際に溶鉄とともに装入されるスラグ(装入前の除滓時に残留したスラグ)。
(4)炉下スラグ:スロッピングや排滓などにより転炉の下に落下したスラグ。
(5)転炉スラグ:転炉精錬後に排滓したスラグ。
(6)連鋳スラグ:連鋳鋳造後の取鍋に残留したスラグ。
(7)合金鉄スラグ:FeMnやSiMnなどの合金鉄の製造時に発生したスラグ。
(8)その他の精錬スラグ:溶銑脱珪スラグ(高炉スラグ)、溶銑脱硫スラグなど。
本実施形態は、図2及び図3に示すように、まず、最終目標値として脱炭工程が終了して出鋼する際の目標溶鋼温度Tや目標炭素濃度[C]を設定する(S101、S102)。
次に、溶鋼の出鋼量と生成されるスラグ量とを求めるようにする(S201)。すなわち、取り除かれる炭素Cや珪素Si等の量を引くことにより、溶鋼の出鋼量を算出し、前記取り除かれる炭素量や珪素量から生成されるスラグ量を算出する。
次に、S201の計算結果と最終目標値(出鋼時の目標溶鋼温度Tと目標[C])を入力値として、脱炭工程での熱収支計算を行うようにする。つまり、脱炭工程において転炉1内に入る熱を入熱として考えると共に、転炉1から外部に出る熱を出熱とし、「入熱=出熱」の方程式を立て、それを解くようにする(S202)。
入熱としては、溶銑3の有する熱量や脱炭工程での溶銑3の成分(Si,P,C等)の酸化による発熱を考えるようにし、出熱としては、発生ガスが持ち去る熱量や出鋼時に溶鋼が有する熱量、鉄鉱石、ミルスケール、焼結返し鉱などの酸化鉄Fexyや生ドロ等の投入による冷却を考えるようにする。また、気酸が多ければ溶銑3の温度Tは上昇し、固酸が多ければ溶銑3の温度Tは下降する傾向にあるため、気酸と固酸との比率を考慮して調整する。
決定された目標[C]を用いて「入熱=出熱」の方程式を解くと、冷却材(昇熱材)投入量が計算できる(S103,S203)。
そして、熱収支計算は、次のように、スラグ及び地金付着スラグを加味して計算し、この熱収支計算は、スラグ及び地金付着スラグの比熱を個別に加味して熱量を計算している。
in〔9〕=Qout〔10〕
ここで、Qin〔9〕:入熱量合計
out〔10〕:出熱量合計
そして、入熱量合計計算は次の式により行う。
in〔9〕=
in〔0〕+Qin〔1〕+Qin〔2〕+Qin〔3〕+Qin〔4〕+Qin〔5〕+Q in〔6〕+Qin〔7〕+Qin〔8〕+Qin〔Slag・bef〕+Qin〔Slag・ hm〕
ここで、Qin〔0〕:溶銑払出量による熱量
in〔1〕:装入成分〔Si〕量による熱量
in〔2〕:装入成分〔Ti〕量による熱量
in〔3〕:装入成分〔AL〕量による熱量
in〔4〕:装入成分〔Mn〕量による熱量
in〔5〕:装入成分〔P〕量による熱量
in〔6〕:鉄の酸化による熱量
in〔7〕:装入成分〔C〕量による熱量
in〔8〕:装入スラグ〔SiO2〕量による熱量
in〔Slag・bef〕:前チャージ残留スラグ量による熱量
in〔Slag・hm〕:溶銑鍋残留スラグ量による熱量
また、出熱量合計の計算は次の式により行う。
out〔10〕=
out〔0〕+Qout〔1〕+Qout〔2〕+Qout〔3〕+Qout〔4〕+Qout〔5〕+Qout〔st(比熱)〕+Qout〔slag(比熱)〕+Qout〔slag(溶融熱)〕+Qout〔sc(溶融熱)〕
ここで、Qout〔0〕:発生ガスによる熱量
out〔1〕:スケール投入による熱量
out〔2〕:鉄鉱石投入による熱量
out〔3〕:Mn鉱石投入による熱量
out〔4〕:生ドロ投入による熱量
out〔5〕:不明項目による熱量
out〔st(比熱)〕:吹止時の溶鋼量による熱量
out〔slag(比熱)〕:吹止時のスラグの比熱による熱量
out〔slag(溶融熱)〕:スラグの溶融による熱量
out〔sc(溶融熱)〕:スクラップの溶融による熱量
上記Qout〔slag(比熱)〕のスラグの比熱による熱量とは、出鋼時の全スラグ量が保有する熱量(投入スラグ+造滓材+溶銑成分の酸化などからの生成スラグ)であり、Qout〔slag(溶融熱)〕のスラグの溶融による熱量とは、生石灰、軽ドロ、生ドロ、珪石などの造滓材が滓化(スラグ化)してスラグを生成するときに要する熱量である。
従って、各種精錬スラグを積極的に使用する場合においても、精度の高い熱計算を行うことができ、精錬後の目標温度に対する的中率を高めることが可能な安定して効率の良い溶銑の精錬操業を実現することができる。
上記熱収支計算において、前チャージ残留スラグは1600〜1700℃であり、溶銑鍋残留スラグは1250〜1350℃程度あって、これらは熱間のスラグであるから、前チャージ残留スラグ量による熱量及び溶銑鍋残量スラグ量による熱量は、入熱量として加算するのである。
また、地金付着スラグ、転炉炉下スラグ、溶銑鍋残留スラグ、転炉スラグ、連鋳スラグ、造塊スラグ、合金鉄スラグ等の冷間のスラグは、比熱により転炉1内の熱を奪うものであるから、スラグの比熱による熱量は、出熱量として加算するのである。
なお、各種の精錬スラグの比熱は、スラグ発生の場所毎に異なるため、発生場所毎のスラグについて、比熱を実際に求めて、スラグ全体の比熱の平均値を求め、この比熱の平均値からスラグの比熱による熱量を算出するようにしている。
続いて、図2のように、溶銑温度Tを最終目標値にするべく、固酸と気酸との比率を決定する(S104)。気酸が多ければ溶銑3の温度Tは上昇し、固酸が多ければ溶銑3の温度Tは下降する傾向にあるため、気酸と固酸との比率を調整することで溶銑3の温度Tを最終目標値とすることができるようになる。
次に、化学反応過程などを考慮することで、脱炭工程での塩基度C/Sやスラグ予測成分値を、副原料の投入量および、気酸と固酸との比率から算出している(S105)。S105で求められた塩基度C/Sの値が適切でない場合は、S103,S104に戻り、塩基度C/Sを適切にするように計算を再度行うようにしている。
図4〜図7は本発明の精錬方法をダブルスラグ法による精錬に適用実施した場合の第2実施形態を示している。
図4は、転炉1を用いた精錬方法の1つであるダブルスラグ法の手順(操業手順)を示したものである。
まず、装入工程として、後述する前チャージ残留スラグ8が残っている転炉1を傾動し、炉内にスクラップ2等を装入した上で溶銑3を流し入れるようにする。
その後、溶銑3中のりんPを主に取り除く脱りん工程として、転炉1の炉口1aからランス4を挿入し、溶銑3上面に近づけ、酸素ガスを吹き付けると同時に、炉底から吹き込みガスで溶銑3を撹拌しつつ精錬(吹錬)を開始する。同時に、石灰CaO等の造滓材や酸化鉄Fexy等の冷却材、すなわち副原料を投入することで、りんPは投入された酸素と反応してスラグ相に移行し、溶銑3の上方に浮いた状態で積層するようになる。このスラグ5の中には未反応のCaOが多く含まれるため、脱りん能力を有するものとなっている。
脱りん工程でのりん処理能力は、様々な条件により変化し、溶銑3の温度Tが低い(1300〜1400℃)ほど高いものとなっている。スラグ5中のCaO/SiO2、すなわち塩基度C/Sを考えた場合、塩基度C/Sが高いほど脱りん能力が高い。
なお、以下、りんPと反応する酸素の内、ランス4からの吹き込まれたものを気酸と呼び、酸化鉄Fexyを起源とする酸素を固酸と呼ぶ。また、溶銑(溶鋼)中の成分Aの濃度を[A]と表記し、スラグ中の成分Aの濃度を(A)と表記する。
次に、脱りん工程により生成されたスラグ5を、転炉1を炉前側へ傾けることで、外部に排出するようにしている。排出されたスラグ5は、転炉1下方に配置された移送手段6により運び出されるようになっている(排出工程)。しかしながら、溶銑を排出することなくスラグ5を完全に排出することは困難であり、スラグは30%程度残る。
排出工程を経た転炉1は、再び元の姿勢に戻され、酸素吹き込みや副原料の投入がなされることで、主に溶銑3中の炭素Cを取り除き[C]を調整する脱炭工程へと進む。脱炭工程後は、転炉1を傾動させ、転炉1の上部側方に設けられた出鋼口7より溶鋼を外へ流し出すようにしている。その際、脱炭工程で生成されたスラグ5Aを残すようにし、次に精錬する溶銑3を装入するようにする(次チャージの装入工程)。
脱炭工程では溶鋼3の出鋼温度Tが1600〜1700℃程度に設定され、脱りん工程での溶銑3の温度Tより高温であるため、排滓工程後に炉内に残留したスラグ5に新たに副原料を追加投入して生成させた脱炭スラグ5Aの脱りん能力は低い。その結果、脱炭スラグ5Aのりん濃度(P)は低く、スラグ5A自体は脱りん工程においては脱りん能力が十分にあるものとなっている。
これにより、脱りん能力が十分にある脱炭後スラグ5Aを前チャージ残留スラグ8としてリサイクルさせて有効利用し、廃棄スラグ量を減少することができるようになる。
なお、脱りん工程であっても、脱炭や脱珪は行われており、脱炭工程であっても、投入された副原料により脱りんが行われ、逐次スラグ5および5Aが生成される。
上記転炉1の制御には、各工程での物質収支や熱収支計算、反応速度計算にもとづいて組み立てられた精錬モデルを用いており、この精錬モデルをプロセスコンピュータ等で計算することで導出される酸素や副原料の投入量をガイダンス値(指針値)として参照し、それに基づき転炉1を操業するようにしている(スタティックコントロール)。
さらに、このスタティックコントロールに加えて、精錬が終了直前に[C]および溶湯温度Tの測定を行い、その結果に応じて吹き込み酸素量を微調節すると共に一部は冷却材を投入し、目標値になった時点で精錬を終了させるダイナミックコントロールを行うようにしている。
前記ガイダンス値に基づいて、精錬終点の[C]と温度Tを一度の精錬で最終目標値に合致させつつ低コストで転炉1の操業を行うようにしている。
上記装入工程の際又は脱りん工程の際に、前チャージ残留スラグ、地金付着スラグ、転炉炉下スラグ、溶銑鍋残留スラグ、転炉スラグ、連鋳スラグ、造塊スラグ、合金鉄スラグ、その他の精錬スラグ等を転炉1に投入して、溶銑や溶鋼の処理、精錬の過程やその他製鉄所や工場内で発生する各種の精錬スラグの有効利用を図っている。
ここで、転炉1において使用される主な精錬スラグには、前記第1実施形態の場合と同様に、(1)前チャージ残留スラグ、(2)地金付着スラグ、(3)溶銑鍋残留スラグ、(4)炉下スラグ、(5)転炉スラグ、(6)連鋳スラグ、(7)合金鉄スラグ(8)その他の精錬スラグがある。
本実施形態は、図5に示すように、最終目標値である脱炭工程(脱C工程)終了後の目標溶鋼温度T、目標炭素濃度[C]、目標りん濃度[P]を基に、中間目標値である脱りん工程(脱P工程)終了後の目標溶銑温度T、目標炭素濃度[C]、目標りん濃度[P]を算出して、これらガイダンス値である中間目標値及び最終目標値に基づいて転炉1の操業を行うものであり、前記最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、前記中間目標値を算出するようにしている。
換言すれば、前記ダブルスラグ法を行う転炉1の精錬方法において、最終目標値である脱炭工程終了後の目標溶鋼温度T、目標炭素濃度[C]、目標りん濃度[P]を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、中間目標値である脱りん工程終了後の目標溶銑温度T、目標炭素濃度[C]、目標りん濃度[P]を算出し、前記中間目標値を満たすように、脱りん工程での副原料、酸素の投入量を決定し、決定された脱りん工程の副原料、酸素の投入量に基づいて、脱炭工程での副原料、酸素の投入量を決定し、それぞれの投入量をガイダンス値(指針値)として転炉1の操業を行うものである。
図6、図7は、第2実施形態の転炉1の精錬方法におけるガイダンス値を算出する方法、すなわち精錬モデルのフローを示したものである。
まず、最終目標値として脱炭工程が終了して出鋼する際の目標溶鋼温度Tや目標炭素濃度[C]を設定する(S301、S302)。
次に、この最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、中間目標値である脱りん工程後の目標溶銑温度Tと目標[C]を決定するようにする(S303,S304)。
前記中間目標値の決定方法の詳細は、図7に示すようなものであり、まず、脱炭工程での鉄収支計算より、溶鋼の出鋼量と生成されるスラグ量とを求めるようにする(S401)。すなわち、脱りん後の溶銑量と脱炭工程において溶解するスクラップ2等の量とを加えたものから、取り除かれる炭素Cや珪素Si等の量を引くことにより、溶鋼の出鋼量を算出し、前記取り除かれる炭素量や珪素量から生成されるスラグ量を算出する。
次に、S401の計算結果と最終目標値(出鋼時の目標溶鋼温度Tと目標[C])を入力値として、脱炭工程での熱収支計算を行うようにする。つまり、脱炭工程において転炉1内に入る熱を入熱として考えると共に、転炉1から外部に出る熱を出熱とし、「入熱=出熱」の方程式を立て、それを解くようにする(S402)。
入熱としては、脱りん後の溶銑3および残留スラグの有する熱量や脱炭工程での溶銑3の成分(Si,P,C等)の酸化による発熱を考えるようにし、出熱としては、発生ガスが持ち去る熱量や出鋼時に溶鋼およびスラグが有する熱量、酸化鉄Fexyや生ドロ等の投入による冷却を考えるようにする。
なお、「入熱=出熱」の方程式には、中間目標値である脱りん工程後の目標溶銑温度Tと目標[C]が未知数として含まれるものとなっており、このままでは解が一義的に決定しないため、脱りん工程後の目標[C]は、脱りん時の総酸素量を溶銑1トンあたり11Nm3(11Nm3/t)の固定値とし、この酸素と結合する炭素量を化学式等から逆算することにより、決定するようにしている。
決定された目標[C]を用いて「入熱=出熱」の方程式を解くと、脱りん工程後の溶銑3の目標溶銑温度Tが計算できる(S404)。
そして、中間目標値である脱りん工程終了後の目標溶銑温度(吹き止め目標温度)Tの熱収支計算は、次のように、スラグ及び地金付着スラグを加味して計算し、この熱収支計算は、スラグ及び地金付着スラグの比熱を個別に加味して熱量を計算している。
in〔9〕=Qout〔10〕
ここで、Qin〔9〕:入熱量合計
out〔10〕:出熱量合計
そして、入熱量合計計算は次の式により行う。
in〔9〕=
in〔0〕+Qin〔1〕+Qin〔2〕+Qin〔3〕+Qin〔4〕+Qin〔5〕+Q in〔6〕+Qin〔7〕+Qin〔8〕+Qin〔Slag・P〕
ここで、Qin〔0〕:溶銑払出量による熱量
in〔1〕:装入成分〔Si〕量による熱量
in〔2〕:装入成分〔Ti〕量による熱量
in〔3〕:装入成分〔AL〕量による熱量
in〔4〕:装入成分〔Mn〕量による熱量
in〔5〕:装入成分〔P〕量による熱量
in〔6〕:鉄の酸化による熱量
in〔7〕:装入成分〔C〕量による熱量
in〔8〕:装入スラグ〔SiO2〕量による熱量
in〔Slag・P〕:脱Pスラグの炉内残留スラグ量による熱量
また、出熱量合計の計算は次の式により行う。
out〔10〕=
out〔0〕+Qout〔1〕+Qout〔2〕+Qout〔3〕+Qout〔4〕+Qout〔5〕+Qout〔st(比熱)〕+Qout〔slag(比熱)〕+Qout〔slag(溶融熱)〕+Qout〔sc(溶融熱)〕
ここで、Qout〔0〕:発生ガス比率による熱量
out〔1〕:スケール投入による熱量
out〔2〕:鉄鉱石投入による熱量
out〔3〕:Mn鉱石投入による熱量
out〔4〕:生ドロ投入による熱量
out〔5〕:不明項目による熱量
out〔st(比熱)〕:吹止時の溶鋼の比熱による熱量
out〔slag(比熱)〕:吹止時のスラグの比熱による熱量
out〔slag(溶融熱)〕:スラグの溶融による熱量
out〔sc(溶融熱)〕:スクラップの溶融による熱量
従って、各種精錬スラグを積極的に使用する場合においても、精度の高い熱計算を行うことができ、精錬後の目標温度に対する的中率を高めることが可能な安定して効率の良い溶銑の精錬操業を実現することができる。
上記熱収支計算において、前チャージ残留スラグは1600〜1700℃であり、溶銑鍋残留スラグは1250〜1350℃程度あって、これらは熱間のスラグであるから、前チャージ残留スラグ量による熱量及び溶銑スラグ量による熱量は、入熱量として加算するのである。
また、地金付着スラグ、転炉炉下スラグ、溶銑鍋残留スラグ、転炉スラグ、連鋳スラグ、造塊スラグ、合金鉄スラグ等の冷間のスラグは、比熱により転炉1内の熱を奪うものであるから、スラグの比熱による熱量は、出熱量として加算するのである。
なお、各種の精錬スラグの比熱は、スラグ発生の場所毎に異なるため、発生場所毎のスラグについて、比熱を実際に求めて、スラグ全体の比熱の平均値を求め、この比熱の平均値からスラグの比熱による熱量を算出するようにしている。
以上、求まった脱りん工程後の目標溶銑温度Tと目標[C]、すなわち中間目標値を基に、脱りん工程において投入する副原料の量を求めるようにする(S305)。本実施形態の場合、脱りん工程で投入される副原料、例えば、生石灰CaO等の造滓材は、溶銑3中のりんPを取り去るのに必要十分な量を投入するようにすればよい。
ところが、前記副原料の投入により溶銑温度Tが必要以上に低下する場合がある。そこで、溶銑温度Tを中間目標値に合致させるべく固酸と気酸との比率を決定し、吹き込み酸素量などを決めるようにしている(S306)。
脱りん工程での熱収支計算は、次のように、スラグ及び地金付着スラグを加味して計算し、この熱収支計算は、スラグ及び地金付着スラグの比熱を個別に加味して熱量を計算している。
in〔9〕=Qout〔10〕
ここで、Qin〔9〕:入熱量合計
out〔10〕:出熱量合計
そして、入熱量合計計算は次の式により行う。
in〔9〕=
in〔0〕+Qin〔1〕+Qin〔2〕+Qin〔3〕+Qin〔4〕+Qin〔5〕+Q in〔6〕+Qin〔7〕+Qin〔8〕+Qin〔Slag・bef〕+Qin〔Slag・ hm〕
ここで、Qin〔0〕:溶銑払出量による熱量
in〔1〕:装入成分〔Si〕量による熱量
in〔2〕:装入成分〔Ti〕量による熱量
in〔3〕:装入成分〔AL〕量による熱量
in〔4〕:装入成分〔Mn〕量による熱量
in〔5〕:装入成分〔P〕量による熱量
in〔6〕:鉄の酸化による熱量
in〔7〕:装入成分〔C〕量による熱量
in〔8〕:装入スラグ〔SiO2〕量による熱量
in〔Slag・bef〕:前チャージ残留スラグ量による熱量
in〔Slag・hm〕:溶銑鍋残留スラグ量による熱量
また、出熱量合計の計算は次の式により行う。
out〔10〕=
out〔0〕+Qout〔1〕+Qout〔2〕+Qout〔3〕+Qout〔4〕+Qout〔5〕+Qout〔st(比熱)〕+Qout〔slag(比熱)〕+Qout〔slag(溶融熱)〕+Qout〔sc(溶融熱)〕
ここで、Qout〔0〕:発生ガス比率による熱量
out〔1〕:スケール投入による熱量
out〔2〕:鉄鉱石投入による熱量
out〔3〕:Mn鉱石投入による熱量
out〔4〕:生ドロ投入による熱量
out〔5〕:不明項目による熱量
out〔st(比熱)〕:スチールの比熱による熱量
out〔slag(比熱)〕:スラグの比熱による熱量
out〔slag(溶融熱)〕:スラグの溶融による熱量
out〔sc(溶融熱)〕:スクラップの溶融による熱量
気酸すなわちランス4から吹き込まれる酸素および固酸の分解により供給される酸素は、溶銑3中の炭素Cと反応して発熱するが、その内、固酸すなわち冷却材である酸化鉄FeOは、溶銑3中で酸素Oと鉄Feとに分解する際に大きく吸熱する。したがって、気酸と固酸との比率を調整することで溶銑3の温度Tを上昇又は下降させて中間目標値とすることができる。
さらに、求められた副原料の投入量、及び気酸と固酸との比率をもとに、副原料の酸化過程を示す化学式等からスラグ5の各成分(CaO,SiO2,Al23,MgO,T.Fe等)の生成量を算出すると共に、スラグ予測成分値を算出する。求められたCaOとSiO2の生成量から塩基度C/Sを導出する(S307)。
これらの値が適切でない場合は、投入された副原料により形成されたスラグ5の脱りん能力が著しく低下するため、再度、S305,S306に戻り、再計算を行った上で、適切な塩基度C/Sとなるように、副原料の投入量および、気酸と固酸との比率を算出するとよい。
以上述べたように、S305→S306→S307により求められた副原料の投入量および、気酸と固酸との比率は、脱りん工程における転炉1操業のガイダンス値であり、それに基づいて、脱りん工程での転炉1の操業を行うようにしている。
続いて、図3のように、脱りん工程におけるガイダンス値を入力値、最終目標値を出力値として、脱炭工程でのガイダンス値を算出するようにしている。
まず、中間目標値や脱りん工程でのガイダンス値を基に、脱炭工程での副原料(生石灰CaO等)の投入量を算出するようにする(S308)。S308においては、脱りん工程で生成されたスラグ5の一定量(30%)が繰り越される、換言すれば排出工程において一定量のスラグ5が残留するものとして計算を進めている。
次に、溶銑温度Tを最終目標値にするべく、固酸と気酸との比率を決定する(S309)。気酸が多ければ溶銑3の温度Tは上昇し、固酸が多ければ溶銑3の温度Tは下降する傾向にあるため、気酸と固酸との比率を調整することで溶銑3の温度Tを最終目標値とすることができるようになる。
さらに、前記S307と同様に化学反応過程などを考慮することで、脱炭工程での塩基度C/Sやスラグ予測成分値を、副原料の投入量および、気酸と固酸との比率から算出している(S310)。S310で求められた塩基度C/Sの値が適切でない場合は、S308,S309に戻り、塩基度C/Sを適切にするように計算を再度行うようにしている。
S308→S309→S310により、求められた副原料の投入量および、気酸と固酸との比率は、脱炭工程における転炉1操業のガイダンス値であり、それに基づいて、転炉1の操業を行うようにするとよい。
なお、本実施形態の場合、出鋼時の目標りん濃度[P]や脱りん工程後の目標りん濃度[P]は、脱炭工程での熱収支計算に基づいた計算値を採用せず、適宜最適な値を設定するようにしている。
以上のように求められるガイダンス値を用いることで、ダブルスラグ法での各工程が最適パスを取るように転炉の操業を行うことができる。
なお、本発明の溶銑の精錬方法は、上記実施の形態に限定されるものではない。
すなわち、最終目標値や中間目標値として、溶鉄(溶鋼又は溶銑)温度Tと[C]とを採用したが、そのいずれか一方であってもよく、[P]や[Mn]や[Si]を最終目標値又は中間目標値として採用してもよい。
また、転炉は上吹き転炉、底吹き転炉、又は上底吹き転炉のいずれであってもよい。
また、上記実施の形態では、本発明を、溶銑の精錬方法として従来から用いられている、トーピードカー内の溶銑に副原料を投入して脱りんを行なった後に脱炭を行う脱炭工程での精錬や、2基の転炉の一方で脱りんを行い他方で脱炭を行う精錬における脱炭工程での精錬に適用実施し、又は、本発明を、ダブルスラグ法による溶銑の精錬に適用実施し、中間目標値である脱りん工程終了後の目標溶銑温度(吹き止め目標温度)Tの熱収支計算に、スラグ及び地金付着スラグの比熱による熱容量を個別に加味して精錬条件を決定して精錬を行うようにしているが、これに代え、本発明を、2基の転炉の一方で脱りんを行い他方で脱炭を行う精錬における脱りん工程での精錬に適用実施し、これらの熱収支計算にスラグ及び地金付着スラグの比熱による熱容量を個別に加味して精錬条件を決定して精錬を行うようにしてもよい。
図8〜図17は、吹錬終了後、炉内のスラグを全て残留させた(一部チャージは完全に排滓した)転炉内に、スクラップシュートにて地金及びスクラップを入れ置きした後、溶銑鍋より溶銑を装入し、その後、転炉プロセスコンピュータによる「スタティック計算」の結果に基づき、造滓材(生石灰、軽ドロ、生ドロ、珪石)、製鋼スラグ、鉄鉱石を炉上ホッパーより投入しながら、気体酸素を上吹きして精錬を行なった。そして、吹錬末期に、ダイナミック制御は行わず、目標〔C〕へ調整したときの温度の的中誤差(=スタテック計算誤差)を評価したものである。
図8〜図12は、本発明の熱収支計算によって脱炭(脱りん)工程を実施した場合と、従来の熱収支計算によって脱炭(脱りん)工程を実施した場合とについての比較を示すものであり、それを50チャージずつ実施した結果が図13〜図17にまとめられている。
図8は、成分規格を示している。図9は、溶銑成分を示している。
図10は、転炉1に装入又は投入した主原料、スラグ、酸素、造滓材の投入(装入)量を示すと共に、吹き止め後(脱炭工程終了後)の溶鋼成分を示している。この結果から本発明の方が比較例に比べて、最終目標値である脱炭工程(脱C工程)終了後の目標溶鋼温度T、目標炭素濃度[C]、目標りん濃度[P]により近づいていることが分かる。
図11は、本発明及び比較例における効果である吹き止め温度誤差及びスタティック的中の有無を示している。これにより、比較例に比べて本発明の方が、吹き止め温度誤差が少なくなっていて、本発明はスタティック計算が的中し、比較例の方はスタティック計算が外れている。
図12は、使用したスラグの代表的な組成(スラグ分とメタル分の比率、並びにスラグ組成、メタル組成)を示したものである。
図13は、240tの転炉1における地金使用の実施条件を示している。図14は、転炉1に装入した溶銑成分を示している。
図15は、溶銑3の脱炭(脱りん)工程を行う際に、各種スラグ、酸素及び造滓材の投入量を示すと共に、脱炭工程終了後の溶鋼成分及び吹き止め温度を示している。脱炭工程終了後のりんの濃度が、りんの規格上限である0.025%を略満たし、最終目標値である脱炭工程終了後の溶銑温度が、目標温度の1680°Cを略満たしていることが分かる。
図16は、熱収支計算にスラグ及び地金付着スラグの比熱による熱容量を個別に加味した本発明と、熱収支計算にスラグ及び地金付着スラグの比熱による熱容量を加味しない従来とを、50チャージについて実施したスタテック計算誤差を、グラフに表したものである。このブラフから、従来に比べて本発明の方が、計算誤差が明らかに少なくなっていることが分かる。
図17は、本発明と従来とのスタテック計算の的中率をグラフに表したものである。ここで、スタテック計算的中率とは、目標温度±20°Cに入る確率をいう。このグラフにより、本発明の方が計算的中率が大幅に向上しているのが分かる。
第1実施形態にかかる精錬法の操業手順を示した図である。 第1実施形態にかかる精錬モデルのフローチャートである。 第1実施形態にかかる脱りん工程後の目標溶銑温度を求めるフローチャートである。 第2実施形態にかかるダブルスラグ法の操業手順を示した図である。 第2実施形態にかかる操業手順の基本的な考えを示した概念図である。 第2実施形態にかかる精錬モデルのフローチャートである。 第2実施形態にかかる脱りん工程後の目標溶銑温度を求めるフローチャートである。 実施例1における成分規格を示した図である。 実施例1の溶銑成分を示した図である。 実施例1(従来)の転炉1に装入又は投入した主原料、スラグ、酸素、造滓材の投入(装入)量を示すと共に、吹き止め後(脱炭工程終了後)の溶鋼成分を示した図である。 実施例1の結果を示した図である。 実施例1の結果を示した他の図である。 実施例1における地金使用の実施条件を示した図である。 実施例1の溶銑成分を示した図である。 実施例1のスラグ、酸素及び造滓材の投入量を示すと共に、脱炭工程終了後の溶鋼成分及び吹き止め温度を示した図である。 実施例1の結果を示した図である。 実施例1の結果を示した他の図である。
1 転炉
2 スクラップ
3 溶銑
4 ランス
5 スラグ
8 前チャージ残留スラグ

Claims (1)

  1. 転炉内にスクラップと共に装入された溶銑の脱りん精錬を行う脱りん工程と、脱りん工程後の溶銑の脱炭精錬を同一転炉にて行う脱炭工程とを有するダブルスラグ法を用いた転炉の操業方法において、
    下記に示すステップ(1)〜ステップ(9)により、脱りん処理における操業条件を求めると共に、脱炭処理における操業条件を求めた上で、脱りん処理及び脱炭処理を行うことを特徴とする転炉の操業方法。
    (1)最終目標値である脱炭工程が終了して出鋼する際の溶鋼の目標炭素濃度[C]を設定する。
    (2)最終目標値である脱炭工程が終了して出鋼する際の溶鋼の目標温度を設定する。
    (3)前記最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、中間目標値である脱りん工程後の目標炭素濃度[C]を設定する。
    (4)最終目標値を基に脱炭工程での熱収支計算を行うことで、中間目標値である脱りん工程後の目標温度を設定する。
    (5)中間目標値である脱りん工程後の目標炭素濃度[C]と、中間目標値である脱りん工程後の目標温度とを基に、脱りん工程において投入する副原料の投入量を求める。
    (6)溶銑温度を中間目標値にするべく、脱りん工程での熱収支計算を行い、固酸と気酸との比率を決定する。
    (7)脱りん工程における前記副原料の投入量及び気酸と固酸との比率をもとに、スラグのCaO及びSiO 2 を算出して、スラグの塩基度を求める。
    (8)前記中間目標値、前記脱りん工程における副原料の投入量及び気酸と固酸との比率を基に、脱炭工程での副原料の投入量を算出すると共に、溶銑温度を最終目標値にするべく、脱炭工程での固酸と気酸との比率を決定する。
    (9)脱炭工程における前記副原料の投入量及び気酸と固酸との比率をもとに、スラグのCaO及びSiO 2 を算出して、脱炭工程におけるスラグの塩基度を求める。
    ただし、前記脱りん工程での熱収支計算は、脱りん工程において転炉内に入る熱を式(1)に示す入熱Q〔9〕 in とし、転炉から外部に出る熱を式(2)に示す出熱Q out 〔10〕とし、前記入熱Q〔9〕 in と前記出熱Q out 〔10〕とが等しいとして行う。
    Q〔9〕 in
    in 〔0〕+Q in 〔1〕+Q in 〔2〕+Q in 〔3〕+Q in 〔4〕+Q in 〔5〕+ in 〔6〕+Q in 〔7〕+Q in 〔8〕+Q in 〔Slag・bef〕+Q in 〔Slag・hm〕 ・・・(1) ここで、
    in 〔0〕:溶銑払出量による熱量
    in 〔1〕:装入成分〔Si〕量による熱量
    in 〔2〕:装入成分〔Ti〕量による熱量
    in 〔3〕:装入成分〔AL〕量による熱量
    in 〔4〕:装入成分〔Mn〕量による熱量
    in 〔5〕:装入成分〔P〕量による熱量
    in 〔6〕:鉄の酸化による熱量
    in 〔7〕:装入成分〔C〕量による熱量
    in 〔8〕:装入スラグ〔SiO 2 〕量による熱量
    in 〔Slag・bef〕:前チャージ残留スラグ量による熱量
    in 〔Slag・hm〕:溶銑鍋残留スラグ量による熱量
    out 〔10〕=
    out 〔0〕+Q out 〔1〕+Q out 〔2〕+Q out 〔3〕+Q out 〔4〕+Q out 〔5〕+Q out 〔st(比熱)〕+Q out 〔slag(比熱)〕+Q out 〔slag(溶融熱)〕+Q out 〔sc(溶融熱)〕 ・・・(2)
    ここで、
    out 〔0〕:発生ガスによる熱量
    out 〔1〕:スケール投入による熱量
    out 〔2〕:鉄鉱石投入による熱量
    out 〔3〕:Mn鉱石投入による熱量
    out 〔4〕:生ドロ投入による熱量
    out 〔5〕:不明項目による熱量
    out 〔st(比熱)〕:吹止時の溶鋼量による熱量
    out 〔slag(比熱)〕:吹止時のスラグの比熱による熱量
    out 〔slag(溶融熱)〕:スラグの溶融による熱量
    out 〔sc(溶融熱)〕:スクラップの溶融による熱量
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