JP6844267B2 - 溶銑の精錬方法 - Google Patents
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Description
この製鋼スラグ発生量の削減と製鋼コストの改善を行う対策として、Blow1吹錬後にP(りん)の濃縮したスラグを一部排出(中間排滓)することで、Blow2吹錬における脱P負荷の軽減とそれによる生石灰(転炉(T.CaO))の削減を可能とする、溶銑予備処理(Blow1吹錬)の比率を向上させることが有効である。
更に、吹錬の際に使用する新たに添加する生石灰(以下、新規生石灰とも記載する)の添加量を削減する対策として、Blow1吹錬で生成させた高燐酸のスラグを高効率で排出(中間排滓)し、Blow2吹錬に持ち込まれるP濃度を軽減させ、Blow2吹錬での新規生石灰の添加量を削減することが必要である。
また、特許文献2には、スラグの((Al2O3濃度)+(TiO2濃度))と塩基度を制御することにより、高効率で脱Pと中間排滓を実施することが開示されている。具体的には、Blow1吹錬中のスラグの塩基度を1.4〜2.2の範囲にしている。
特許文献1の条件下では、中間排滓の割合(中間排滓率)と、Blow2吹錬へのスラグとしての持ち込みP量とに、バラツキが発生することを、本発明者らは明らかにした。従って、Blow2吹錬では、持ち込みP量が多い場合(中間排滓率が悪い場合)に合わせて、新規生石灰の添加量を決める必要があり、この添加量を十分に削減できない。
また、特許文献2は、特許文献1に比べて低塩基度ではあるものの、高塩基度の条件下でBlow1吹錬を行っているため、上記理由から、Blow2吹錬での新規生石灰の添加量を十分に削減できない。
このように、従来の技術では、Blow2吹錬での新規生石灰の添加量を十分に削減できないことから、Blow1吹錬とBlow2吹錬の双方で添加する新規生石灰の総添加量も、十分に削減できなかった。
前記CaO源として、CaOを含む造塊スラグ及び生石灰のいずれか一方又は双方を含む副原料を用い、
前記Blow1吹錬後の前記スラグを、Al2O3濃度:3.5質量%以上8質量%以下(但し、8.0質量%を除く)、塩基度:0.8以上1.2以下とし、
前記Blow1吹錬後の前記スラグの排滓を、該Blow1吹錬で生成した前記スラグの総質量を100質量%として50質量%以上80質量%以下の範囲で行う(但し、前記スラグの排滓の途中で銑鉄及び酸化鉄を前記スラグへ投入し、前記スラグを再びフォーミングさせた後に前記転炉型容器を傾動して排滓を行う場合を除く)。
まず、溶銑の精錬方法の概要について、図1を参照しながら説明する。
容器10から転炉型容器11内へ溶銑12を装入する(装入工程)。
この転炉型容器11内の溶銑12にCaO源を添加し、ランス13を用いて上吹き送酸するBlow1吹錬により、脱P溶湯14を溶製する。なお、Blow1吹錬では、主として脱P処理が行われる(Blow1工程)。
そして、中間排滓後の脱P溶湯14に、新たに生石灰(以下、新規生石灰とも記載する)を添加し、ランス13を用いて上吹き送酸するBlow2吹錬を行う。なお、Blow2吹錬では、主として脱C処理が行われるが、脱P処理も行われる(Blow2工程)。
転炉型容器11を傾動させ、脱P処理と脱C処理を行った溶鋼17を、出鋼口18から出鋼する(出鋼工程)。
これにより、Blow1吹錬とBlow2吹錬の双方で添加する新規生石灰の総添加量を、従来に比べて顕著に削減できることを新たに見出した。
スラグが低融点化すると液相率が向上する。
液相化したスラグは、Blow1吹錬の末期において、フォーミング性が良く、中間排滓時の転炉型容器の傾転初期から排滓が開始し、傾転末期(脱P溶湯の漏出直前)まで排滓が安定して継続する。この結果、安定した中間排滓率を実現することができる。
しかし、スラグの融点が高い場合、液相率やフォーミングの発生状況の再現性が、処理チャージによって悪くなる。この原因としては、添加した造塊スラグや新たな生石灰の添加状況、送酸による溶湯の撹拌状況、等が考えられるが、明確ではない。
また、液相率やフォーミングの発生状況がばらつくと、傾転末期のみで排滓が行われる場合も発生し、中間排滓率がばらつく。
ここで、スラグのAl2O3濃度が3.5質量%未満の場合、スラグ融点の低下が不足するため、フォーミング発生のバラツキの原因となる。また、スラグの滓化が不足するため脱P反応も進み難い。
一方、スラグのAl2O3濃度が10質量%超であっても、必要なスラグ融点の低下は達成できるが、相対的にCaO量が減少するため、脱P性が低下する。
このスラグのAl2O3濃度(アルミナ成分)の制御には、造塊スラグの使用が有効である。これは、造塊スラグが一般に、アルミナ成分を多量に含むことによる。
なお、造塊スラグは、プリメルト品と実質的に同等であるため滓化し易く、CaOも含むためCaO源としても有効である。
一方、スラグの塩基度が1.2超の場合、スラグ融点の低下が不足し、フォーミング状況や中間排滓率のバラツキにつながる。
以上のことから、Blow1吹錬後のスラグの塩基度を、0.8以上1.2以下(好ましくは、下限を0.85)とした。
このスラグの塩基度の制御には、CaO源として生石灰(CaO)を使用できる。
また、CaO源として更に、過去の溶銑の精錬で発生した脱炭スラグを用いることもできる。この脱炭スラグは、過去の溶銑の精錬において、Blow2吹錬後に得られるスラグであり、溶解状態のものでもよく、また、固体状態(石ころ状)のものでもよい。
上記したように、Blow1吹錬後のスラグのAl2O3濃度と塩基度を規定して、中間排滓率のバラツキを抑制したとしても、Blow2吹錬時に添加する新規生石灰を有効活用するには、中間排滓率に適正値が存在することを、本発明者らは明らかにした。
即ち、前記したように、Blow1吹錬で生成したスラグの総質量を100質量%として50質量%以上80質量%以下の範囲で中間排滓を行う必要がある。
なお、中間排滓率の調整は、例えば、オペーレータ(作業者)が、上記した転炉型容器11の傾動角度を調整することで実施できる。
一方、中間排滓率が80質量%超の場合、Blow1吹錬からBlow2吹錬へのスラグの持ち込み量が減少するため、Blow2吹錬時に添加する新規生石灰の滓化に必要なSiO2量やAl2O3量が不足する。この結果、Blow2吹錬時に添加した新規生石灰の滓化不良が発生し、脱Pのバラツキが発生するため、新規生石灰を多く添加する必要があり、新規生石灰の添加量の削減ができない。
即ち、新規生石灰の滓化不良を防ぐためには、Blow1吹錬から適量のスラグを持ち越す必要がある。
中間排滓率とは、Blow1吹錬後に生成したスラグ(滓)を、中間排滓にて、Blow2吹錬に装入(持ち越し)せずに、Blow1吹錬後に生成した全スラグ量から除去したスラグ量の割合を指す。なお、スラグの秤量を行わない場合は、中間排滓率を定量化するために、SiO2の収支計算から求めるとよい。
以下、この計算方法例について、図2を参照しながら説明する。
Blow1工程では、Si(溶銑やスクラップ等に存在)とSiO2(副原料等に存在)が、精錬開始時に転炉型容器に装入(図2中のBlow1装入)され、Blow1吹錬が実行される。
Blow1工程が終了すると、SiとSiO2は全て、SiO2として全量スラグに移行する(図2中の(I):Blow1吹錬後)。
なお、図2中のBlow2吹錬後は、Blow2工程が終了した後の転炉型容器内のSiO2量を示している。即ち、上記した未排滓のもの(図2中の(III))と、Blow2工程で新たに生成したもの(Blow2装入)である。
以上のことから、Blow2吹錬後の上記した未排滓のSiO2(図2中の「B」)と、Blow1装入のSiO2(図2中の「A」)との質量比「{1−(B/A)}×100」が、中間排滓率(質量%)と、定義される。
WSiO2 Blow1×(1−a)=SWBlow2×SCSiO2 Blow2−WSiO2 Blow2 ・・・(1)
WSiO2 Blow1:Blow1工程で転炉型容器内に装入したSiO2量(トン)。SiO2換算した溶銑やスクラップに含まれる金属Si(SiO2量に換算)と、副原料に含まれるSiO2の合計値。
SWBlow2:Blow2工程におけるスラグの質量(トン)。
SCSiO2 Blow2:Blow2吹錬後のスラグのSiO2濃度(質量%)。
WSiO2 Blow2:Blow2工程で転炉型容器内に装入したSiO2量(トン)。スラグリサイクル(造塊スラグや脱炭スラグ)及び/又は珪石等の副原料に含まれるSiO2の合計値。なお、Blow1工程から持ち越したスラグに含まれるSiO2量は除く。
SWBlow1=(WCaO Blow1+WSiO2 Blow1)/(SCCaO Blow1+SCSiO2 Blow1) ・・・(2)
SWBlow2={(1−a)×SWBlow1×(SCCaO Blow1+SCSiO2 Blow1)+(WCaO Blow2+WSiO2 Blow2)}/(SCCaO Blow2+SCSiO2 Blow2) ・・・(3)
WCaO Blow1:Blow1工程で転炉型容器内に装入したCaO量(トン)。造塊スラグ及び/又は生石灰の副原料に含まれるCaOの合計値。
SCCaO Blow1:Blow1吹錬後のスラグのCaO濃度(質量%)。
SCSiO2 Blow1:Blow1吹錬後のスラグのSiO2濃度(質量%)。
SWBlow1:Blow1工程におけるスラグ質量。
WCaO Blow2:Blow2工程で転炉型容器内に装入したCaO量(トン)。スラグリサイクル及び/又は生石灰の副原料に含まれるCaOの合計値。
SCCaO Blow2:Blow2吹錬後のスラグのCaO濃度(質量%)。
SCSiO2 Blow2:Blow2吹錬後のスラグのSiO2濃度(質量%)。
以上の計算から、中間排滓率を算出できる。
Blow2吹錬で投入する新規生石灰量は、Blow2吹錬における脱Pに必要とする脱P巾から計算される。
この脱P巾は、Blow2吹錬終了時の「目標P」(例えば、製品に要求されている成分スペックに相当)とインプットするP「溶銑P」から計算されるため、これらを項とした以下に示す式(4)〜式(6)から、Blow2吹錬での新規生石灰量を決定する。
(中間排滓後[P])=(Blow1吹錬後[P])+{100%−(中間排滓率(%))}×{(溶銑[P])−(Blow1吹錬後[P])} ・・・(5)
(Blow1吹錬後[P])=(溶銑[P])×{100%−(Blow1吹錬の脱P率(%))} ・・・(6)
ここで、αは0.1〜0.4(過去の実績値から得られた吹錬の工程能力に応じた定数)、[P]は溶鉄中に含まれるP濃度(質量%)、である。
1)主原料の条件
a)量
下記の装入物を用い、合計で300〜400トンの溶湯を転炉(転炉型容器)で溶製した。
・溶銑の装入量:250〜350トン
・冷銑の装入量:0又は0を超え50トン以下
・スクラップの装入量:0又は0を超え100トン以下
b)転炉に装入した溶銑の主要成分
・C:3.0〜5.0(質量%)
・Si:10〜100(×10−2質量%)
・Mn:5〜10(×10−2質量%)
・P:50〜200(×10−3質量%)
・S:1〜20(×10−3質量%)
2)副原料(副材)の条件
・投入銘柄:生石灰、石灰石、珪石、MgO、炭材、スラグリサイクル(脱炭スラグや造塊スラグ)
・投入方法:上方添加
3)転炉の形態
・上底吹転炉
・上吹条件/送酸速度:40000〜95000(Nm3/hr)
・底吹条件/底吹ガス種:O2、CO2、N2、LPG
表2中の「Blow1吹錬」の「脱P率(%)」は、以下の式で示される。
{1−(Blow1吹錬の吹き止め時の溶湯の到達P濃度(質量%))/(吹錬開始前(Blow1吹錬開始前)の溶湯P濃度(質量%))}×100
表2中の「Blow2吹錬」の「目標P濃度」は、「中間排滓率」の「最小値」を実施したときの溶鋼のP濃度である。なお、「中間排滓率」の「最小値」と「最大値」はそれぞれ、同様の操業を実施した際の中間排滓率のバラツキの最小値と最大値である。
表2中の「新規生石灰」の単位である「kg/t」は、溶湯1トンあたりの新規生石灰の添加量である。なお、「新規生石灰」の「Blow1+Blow2」とは、「Blow1吹錬」と「Blow2吹錬」の「新規生石灰」の合計量である。
表2中の「新規生石灰」の「評価」は、28(kg/t)以下を「少」(新規生石灰の添加量を十分に削減できた)とし、28(kg/t)超を「多」(新規生石灰の添加量を削減できなかった)とした。
表2に示すように、実施例1、参考例は、Al2O3濃度を適正範囲内(3.5〜10%)としたため、中間排滓率のバラツキを抑制できた。そして、中間排滓率を適正範囲内(50〜80%)にすることで、目標P濃度15×10−3%を達成するために必要な「Blow2吹錬」の新規生石灰の添加量を26.7(kg/t)に削減でき、その結果、「Blow1+Blow2」の新規生石灰の添加量を26.7(kg/t)に削減できた。
また、比較例2は、Al2O3濃度を適正範囲の上限値超(12質量%)としたため、相対的にCaO量が減少して脱P性が低下した(脱P率:30%)。このため、目標P濃度達成のために必要な「Blow2吹錬」の新規生石灰の添加量を28.7(kg/t)まで増加させる必要があり、その結果、「Blow1+Blow2」の新規生石灰量も増加した。
表2に示すように、実施例1、2は、塩基度を適正範囲内(0.8〜1.2)としたため、中間排滓率のバラツキを抑制できた。そして、中間排滓率を上記した適正範囲内にすることで、目標P濃度達成のために必要な「Blow2吹錬」の新規生石灰の添加量を26.7(kg/t)に削減でき、その結果、「Blow1+Blow2」の新規生石灰の添加量を26.7(kg/t)に削減できた。
また、比較例4は、塩基度を適正範囲の上限値超(1.5)としたため、Blow1吹錬で新規生石灰を添加する必要があり、また、高塩基度とすることで中間排滓率がばらついた(45〜90%)。このため、目標P濃度達成のため、「Blow1吹錬」で新規生石灰を3(kg/t)添加する必要があり、また、「Blow2吹錬」で新規生石灰を26.6(kg/t)添加する必要があり、その結果、「Blow1+Blow2」の新規生石灰の添加量を29.6(kg/t)に増加させる必要があった。
前記したように、実施例1は、Al2O3濃度と塩基度をそれぞれ上記した適正範囲内としたため、中間排滓率のバラツキを抑制できた。そして、中間排滓率を上記した適正範囲内にすることで、目標P濃度達成のため、「Blow1+Blow2」の新規生石灰の添加量を26.7(kg/t)に削減できた。
一方、比較例5は、中間排滓率を、適正範囲の上限を超えた範囲(90〜100%)に調整したため(Blow1吹錬後にスラグのほとんど全部を排滓したため)、目標P濃度達成のために必要な「Blow2吹錬」の新規生石灰の添加量を30.7(kg/t)まで増加させる必要があり、その結果、「Blow1+Blow2」の新規生石灰量も増加した。
また、比較例6は、中間排滓率を、適正範囲の下限を逸脱する範囲(40〜70%)に調整したため、Blow2吹錬に持ち込まれるP量が多くなり、目標P濃度達成のために必要な「Blow2吹錬」の新規生石灰の添加量を28.3(kg/t)まで増加させる必要があり、その結果、「Blow1+Blow2」の新規生石灰量も増加した。
Claims (2)
- 転炉型容器内の溶銑にCaO源を添加して上吹き送酸するBlow1吹錬により脱P溶湯を溶製した後、生成したスラグを排滓し、前記脱P溶湯に新たに生石灰を添加して上吹き送酸するBlow2吹錬を行う溶銑の精錬方法において、
前記CaO源として、CaOを含む造塊スラグ及び生石灰のいずれか一方又は双方を含む副原料を用い、
前記Blow1吹錬後の前記スラグを、Al2O3濃度:3.5質量%以上8質量%以下(但し、8.0質量%を除く)、塩基度:0.8以上1.2以下とし、
前記Blow1吹錬後の前記スラグの排滓を、該Blow1吹錬で生成した前記スラグの総質量を100質量%として50質量%以上80質量%以下の範囲で行うことを特徴とする溶銑の精錬方法(但し、前記スラグの排滓の途中で銑鉄及び酸化鉄を前記スラグへ投入し、前記スラグを再びフォーミングさせた後に前記転炉型容器を傾動して排滓を行う場合を除く)。 - 請求項1記載の溶銑の精錬方法において、前記CaO源として更に、過去の溶銑の精錬で発生した脱炭スラグを用いることを特徴とする溶銑の精錬方法。
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