JP2021195558A - 極低りん鋼の溶製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】造滓材の使用量を削減しつつ、極低りん鋼を溶製する。【解決手段】本発明は転炉型容器を用いた極低りん鋼の溶製方法に関し、第1脱りん工程、第1中間排滓工程、第2脱りん工程、第2中間排滓工程及び脱炭処理工程を有し、第1脱りん工程では、工程終了後のスラグの塩基度が0.8〜1.3となるようにCaO源を添加し、脱珪外酸素量が4.0〜10.0Nm3/トンとなるように酸素を供給しながら、溶銑の終点温度を1300〜1380℃とし、第1中間排滓工程では排滓前のスラグ量の30〜50質量%を転炉型容器内に残留させ、第2脱りん工程では工程終了後のスラグの塩基度が0.8〜1.3となるように、CaO源をCaO換算で0〜5kg/トン添加し、2.0〜4.0Nm3/トンの吹酸量で酸素を供給しながら、溶湯の終点温度を1300〜1380℃とし、第2中間排滓工程では排滓前のスラグの30〜60質量%を転炉型容器外へと排滓する。【選択図】図3

Description

本発明は、極低りん鋼の溶製方法に関する。
鋼を溶製する際のコストを低減するためには、脱りん処理及び脱炭処理を施す精錬工程における生石灰(CaO)等の造滓材の低減が必要となる。同一の転炉型容器を利用した溶銑予備処理では、造滓材の低減が可能な一方で、脱炭工程へのスラグ残留によるスラグから溶鋼への復りんが発生するため、造滓材の削減と低りん鋼溶製の両立が課題となる。このため、転炉型容器の精錬において、効率的な脱りんを行うことが希求されている。
上記の効率的な脱りんに関し、転炉型容器において、溶銑予備処理(脱りん処理)と脱炭処理の双方を実施する方法が知られている。この方法は、脱りん等の溶銑予備処理を目的とした吹酸と、溶銑予備処理後のスラグの排滓(中間排滓)と、中間排滓後に脱炭を目的とした吹酸と、を行う方法である。以下では、このような2回の吹酸を行う方法を、「2ブロー法」と呼ぶ場合がある。
また、近年では、溶銑予備処理において中間排滓工程を更に設け、溶銑予備処理を2回実施する技術が実施されている。この方法は、脱りん等を目的とした吹酸を伴う1回目の溶銑予備処理工程、1回目の中間排滓工程、脱りん等を目的とした吹酸を伴う2回目の溶銑予備処理工程、2回目の中間排滓工程、吹酸を伴う脱炭工程という5段階の工程を行うものである。このような工程を経ることで、極低りん鋼の溶製を行うことが可能となる。以下では、このような3回の吹酸を行う方法を、「3ブロー法」と呼ぶ場合がある。上記のような3ブロー法を用いた極低りん鋼の溶製方法の一例として、例えば、以下の特許文献1及び特許文献2に開示されている方法がある。
特許文献1では、3回の吹酸とその間に実施される2回の排滓とを実施し、2回目の吹酸時においても生石灰を添加してスラグの塩基度を所定の範囲内とすることで、極低りん鋼を溶製する旨が開示されている。
また、特許文献2においても、3回の吹酸とともに複数回の排滓を行う旨が開示されており、更に、脱炭精錬のスラグ(すなわち、3回目の吹酸後に得られるスラグ)を、次チャージの脱珪処理(1回目の吹酸が行われる処理)に用いること、及び、2回目の吹酸時に生石灰等の造滓材を添加することが開示されている。
特開2011−144415号公報 特開2018−188730号公報
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2の方法では、2回目の吹酸時にも造滓材として生石灰を添加するため、更なるコスト削減のために生石灰等の造滓材の使用量を削減することが望まれている。
上記の希求に関し、本発明者が鋭意検討した結果、単に2回目の吹酸時の生石灰使用量を削減するだけでは、所望のりん含有量を実現することはできず、極低りん鋼を実現するためには、更なる改良が必要であることが明らかとなった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、造滓材の使用量を削減しつつ、より安定して極低りん鋼を溶製することが可能な、極低りん鋼の溶製方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者が鋭意検討した結果、溶鋼中のりん濃度にのみ着目するのではなく、溶鋼及びスラグをあわせた系全体としてのりん量を制御することが重要であることを知見し、本発明を完成するに至った。
上記知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)転炉型容器を用いて溶銑予備処理と脱炭処理を行う、極低りん鋼の溶製方法であって、溶銑の脱りん処理を行う第1脱りん工程と、前記第1脱りん工程の後に実施される第1中間排滓工程と、前記第1中間排滓工程の後に、溶湯に対して再度脱りん処理を行う第2脱りん工程と、前記第2脱りん工程の後に実施される第2中間排滓工程と、前記第2中間排滓工程の後の溶湯に対して、CaO源を添加して脱炭処理を行う脱炭処理工程と、を有し、前記第1脱りん工程では、前記溶銑に対して、前記第1脱りん工程終了後のスラグの塩基度が0.8〜1.3の範囲内となるようにCaO源を添加し、脱珪外酸素量が4.0〜10.0Nm/トンの範囲内となるように酸素を供給しながら、前記溶銑の終点温度を1300〜1380℃の範囲内とし、前記第1中間排滓工程では、スラグを前記転炉型容器外に排滓して、排滓前のスラグ量の30〜50質量%を前記転炉型容器内に残留させ、前記第2脱りん工程では、前記第2脱りん工程終了後のスラグの塩基度が0.8〜1.3の範囲内となるように、CaO源を、CaO換算で0〜5kg/トン添加し、2.0〜4.0Nm/トンの範囲内の吹酸量で酸素を供給しながら、前記溶湯の終点温度を1300〜1380℃の範囲内とし、前記第2中間排滓工程では、排滓前のスラグの30〜60質量%を、前記転炉型容器外へと排滓する、極低りん鋼の溶製方法。
(2)前記溶銑のSi含有量は、0.1〜1.2質量%の範囲内である、(1)に記載の極低りん鋼の溶製方法。
以上説明したように本発明によれば、造滓材の使用量を削減しつつ、より安定して極低りん鋼を溶製することが可能となる。
本発明者が得られた知見について説明するための模式図である。 本発明者が得られた知見について説明するための模式図である。 本発明の実施形態に係る極低りん鋼の溶製方法の流れを模式的に示した説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(本発明者による検討内容について)
以下では、本発明の実施形態に係る極低りん鋼の溶製方法について説明するに先立ち、本発明者が上記のような課題を解決するための行った検討内容について、まず説明する。
本発明者は、上記のような課題を解決するにあたって、はじめに、上記特許文献に開示されている技術について、検討を行った。まず、上記特許文献2に開示されている3ブロー法に基づく方法は、溶銑予備処理として、1回目の吹酸時における脱珪処理と、2回目の吹酸時における脱りん処理と、を区別して実施しており、また、脱りん処理は1回しか実施しない。そのために、上記特許文献2に開示されている方法では、りん含有量が100ppm以下という極低りん鋼の溶製を目的とする場合に、りんの低減レベルに限界があることが判明した。
一方、上記特許文献1に開示されている3ブロー法に基づく方法は、中間排滓を1回はさみ、2回の脱りん吹酸処理を実施した後に、中間排滓と脱炭吹酸処理を実施するため、相応のりん量の低減が可能となる。この方法では、2回目の脱りん処理の際に、CaO源をCaO換算で5〜10kg/トン投入しているが、本発明者の知見では、脱りん処理時における生石灰等の造滓材投入量には、未だ削減の余地があった。
また、特許文献1に開示されている方法では、脱りん処理終了後のりん濃度にバラつきが発生する場合があるため、脱炭処理時に生石灰等の造滓材の過剰投入が必要となり、この点でも、造滓材投入量には削減の余地があった。
そこで、本発明者は、2回目の脱りん処理の際に、造滓材としてのCaO源の未投入を含め、CaO源の投入量を5kg/トン以下とすることで造滓材使用量の削減を図り、りん含有量が100ppm以下である極低りん鋼をより安定して溶製することを目指し、検討に取り組んだ。
(本発明者が得られた知見について)
<第1の知見>
上記特許文献1では、2回目の脱りん処理時にCaO源を投入することで、1回目の脱りん処理後に得られるスラグ中のP濃度よりも、2回目の脱りん処理後に得られるスラグ中のP濃度を低くすることができるため、脱炭処理時の復りんを抑制でき、極低りん鋼を溶製可能であると言及している。
しかしながら、本発明者が各種の検討を行った結果、脱炭処理時に転炉型容器内に持ち込まれるスラグ(2回目の排滓処理後の残留スラグ)に含まれるりん(P)は、概ねその全てが一旦は溶湯中に復りんしてしまうことを見出した。かかる知見より、本発明者は、脱炭処理工程に持ち込まれるスラグ中のりん濃度ではなく、スラグ中のりんの総量を減少させることに想到した。すなわち、脱炭処理に持ち込まれるスラグ中のりん濃度が低いとしてもスラグに含まれるりんの総量が多ければ、溶湯中に復りんするりんの量も多くなり、極低りん鋼の溶製に不利に作用するとともに、造滓材の削減にもつなげにくいことに想到した。
図1は、処理対象の溶銑に含まれるPの質量割合を100として、上記着想に基づく3ブロー法での溶銑予備処理の各工程における系内(換言すれば、転炉型容器の内部)のりん量の推移を、模式的に示したものである。なお、図1は、あくまでも模式的なものであって、図中に示した数値が、以下で詳述する極低りん鋼の溶製方法における各工程でのりん量を正確に反映しているわけではない。
1回目の脱りん工程において、脱りん工程開始前に溶湯中に存在しているりんの一部は、スラグに分配されて、1回目の脱りん工程の終了時には、例えば図1に示したような割合で、溶湯中及びスラグ中のそれぞれに存在するようになる。
ここで、1回目の中間排滓処理が実施されることで、スラグの一部が系外へと排出されるため、系内のりん総量は、1回目の脱りん工程開始時よりも少なくなる。
2回目の脱りん工程においても、1回目の脱りん工程と同様に、溶湯中のりんはスラグに分配されて、2回目の脱りん工程の終了時には、例えば図1に示したような割合で、溶湯中及びスラグ中のそれぞれに存在するようになる。ここで、2回目の中間排滓処理が実施されることで、スラグの一部が系外へと排出されるため、系内のりん総量は、1回目の脱りん工程終了時よりも少なくなる。
このように、本発明者が得た着想によれば、複数回の脱りん工程及び中間排滓工程により系内のりんを系外へと排出することで、系内に存在するりんの総量を削減して、脱炭処理の開始時に系内に存在するりんの総量(すなわち、溶湯及びスラグに含まれるりんの総量)を低減させる。これにより、脱炭処理時に一旦は溶湯中に復りんするりんの総量を減らすことができ、極低りん鋼の溶製が可能となる。
図2に、脱炭工程における吹酸時間を横軸とし、溶湯中のりん濃度[質量%]を縦軸として、脱炭処理におけるりん濃度の推移を模式的に示した。図2では、脱炭処理開始時における溶湯中のりん総量の質量割合を、100質量%として表示している。
また、図2において、「改善前」と示しているものは、転炉型容器内のりん総量が高位である場合の溶湯中のりん濃度推移を示しており、「改善後」と示しているものは、転炉型容器内のりん総量が低位である場合の溶湯中のりん濃度推移を示している。
脱炭が進行すると、図2に示したようにスラグからの復りんが生じ、溶湯中のりん濃度は、脱炭処理の開始時(換言すれば、2回目の脱りん処理の終了時)よりも高位となる。このとき、図2に示したように、転炉型容器内のりんの総量が高位であるほど、復りん量の増加速度は速くなり、最終的な溶湯中への復りん量も高位となる。一方、転炉型容器内のりんの総量が低位であるほど、復りん量の増加速度は遅くなり、最終的な溶湯中への復りん量も低位となる。
また、図2に示したように、脱炭処理の末期には、脱りん反応が再度進行し、溶湯中のりん濃度は低下していく。
図2に示したような推移で脱炭処理における溶湯中のりん量が推移していくことから、上記特許文献1のように、スラグ中のりん濃度に着目するだけでは不十分であり、系内(すなわち、転炉型容器内)に存在するりんの総量に着目することが重要であることがわかる。
<第2の知見>
2ブロー法及び3ブロー法の双方において、中間排滓工程は、転炉型容器を一定の角速度で傾転させることでスラグを容器外へと排出し、溶湯が排出し始める時期に傾転を停止することで溶湯の排出を防止する。かかる中間排滓工程において、転炉型容器の内部に残留するスラグの割合は、スラグのフォーミング状況に依存し、一般に、スラグフォーミングが進行しているほど、スラグの排出量を増加可能(換言すれば、転炉型容器内のスラグ残留量を低減可能)であることが知られている。
上記のような観点に着目した結果、本発明者は、1回目の中間排滓工程の前、及び、2回目の中間排滓工程の前におけるスラグのフォーミングを安定して増加させることで、それぞれの中間排滓処理後の転炉型容器内の残留スラグ量のバラつきを抑制可能であり、結果として、溶湯及びスラグの双方に含まれるりん総量のバラつきを抑制可能であることに想到した。
1回目の中間排滓処理後のスラグ残留量のバラつきは、2回目の中間排滓処理後のスラグ残留量のバラつきの原因となり、2回目の中間排滓後のスラグ残留量のバラつきは、脱炭処理時のりん総量(特に、スラグのりん総量)のバラつきの原因となる。その結果、脱炭処理時には、CaO源として生石灰等を多量に添加する必要が生じてしまう。
そのため、各中間排滓工程の前におけるスラグのフォーミングを安定して確保することで、脱炭処理時のりん総量を低位に安定させることが可能となり、より一層の造滓材使用量の削減を図ることが可能となる。また、このようなスラグのフォーミングの安定化を図ることで、チャージ間でのりん総量のバラつきも抑制することが可能となり、結果として、操業安定性をより向上させることが可能となる。
本発明者は、以上説明したような2つの知見に基づき更なる検討を行った結果、以下で説明する、本発明の実施形態に係る極低りん鋼の溶製方法を完成するに至った。
(極低りん鋼の溶製方法について)
以下では、図3を参照しながら、上記2つの知見に基づき完成された、本実施形態に係る極低りん鋼の溶製方法について、詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る極低りん鋼の溶製方法の流れの一例を模式的に示した説明図である。
本実施形態に係る極低りん鋼の溶製方法は、上吹き転炉や上底吹き転炉等に代表される転炉型容器を用いて溶銑予備処理と脱炭処理を行うことで、りん含有量が100ppm以下の極低りん鋼を溶製する方法である。この極低りん鋼の溶製方法は、図3に模式的に示したように、第1脱りん工程と、第1中間排滓工程と、第2脱りん工程と、第2中間排滓工程と、脱炭工程と、を有しており、脱炭工程の終了後に、得られた極低りん鋼を出湯する出湯工程が行われる。
以下では、転炉型容器の一例としての上吹き転炉を用い、上吹き転炉に挿入された上吹きランスから酸素を供給することで極低りん鋼を溶製する場合に着目し、本実施形態に係る極低りん鋼の溶製方法を構成する各工程について、詳細に説明する。なお、上吹き転炉以外の転炉型容器を用いて、異なる吹酸方法により酸素の供給を行う場合についても、本実施形態に係る極低りん鋼の溶製方法を適用することが可能である。
<第1脱りん工程>
第1脱りん工程は、転炉型容器(例えば、図3に示したような上吹き転炉)の内部に装入された溶銑に対して、脱りん処理を施す工程である。より詳細には、第1脱りん工程では、転炉型容器内の溶銑に対して、第1脱りん工程終了後のスラグの塩基度が0.8〜1.3の範囲内となるようにCaO源を添加し、脱珪外酸素量が4.0〜10.0Nm/トンの範囲内となるように酸素を供給しながら、溶銑の終点温度を1300〜1380℃の範囲内とする。
ここで、上吹き転炉10に代表される転炉型容器に装入される溶銑は、ケイ素(Si)含有量が0.1〜1.2質量%の範囲内であることが好ましい。装入される溶銑のSi含有量を、0.1〜1.2質量%の範囲内とすることで、本実施形態に係る極低りん鋼の溶製方法による効果をより確実に発現させることが可能となる。
第1脱りん工程終了後のスラグの塩基度(=スラグ中のCaO含有量[質量%]/スラグ中のSiO含有量[質量%])を、0.8以上とすることで、第1脱りん工程におけるスラグフォーミング量を確保しながら、溶湯の脱りん進行レベルを確保することが可能となる。第1脱りん工程終了後のスラグの塩基度は、好ましくは0.9以上である。一方、第1脱りん工程終了後のスラグの塩基度を、1.3以下とすることで、第1脱りん工程におけるスラグフォーミング量を安定して確保する(すなわち、スラグフォーミング量のバラつきを抑制する)ことが可能となる。第1脱りん工程終了後のスラグの塩基度は、好ましくは1.2以下である。
なお、溶銑中のSi含有量が上記の0.1〜1.2質量%の範囲内である場合に、第1脱りん工程終了時のスラグの塩基度を0.8〜1.3とするためには、求められるCaOの添加量は、溶銑(溶湯)1トンあたりの指標で、2〜31kg/トン程度となる。
上記のように、溶銑中のSi含有量には、例えば0.1〜1.2質量%程度と、バラつきが存在する。例えば図3に示したような上吹きランスから溶銑に対して酸素を供給すると、まず、溶銑中に含まれるSiの酸化反応(脱珪反応)が進行し、脱珪反応が概ね終了した後から、脱りん反応が進行するようになる。このため、単に吹酸量を規定しただけでは、上記のようなSi含有量のバラつきに起因して、脱りん反応に寄与する酸素量にバラつきが生じてしまう。そのため、本実施形態に係る極低りん鋼の溶製方法では、脱珪反応に用いられる以外の酸素量を、脱珪外酸素量として規定する。
ここで、用いられる溶銑のSi含有量は、例えばICP(Inductivity Coupled Plasma)発光分光分析法等のような公知の測定手法により、第1脱りん工程に先立って特定することが可能である。得られた溶銑のSi含有量に基づき、化学量論的に、脱珪反応に要する酸素量(脱珪酸素量)を算出することができる。そのため、実際に溶銑に供給する酸素量(吹酸量)から上記の脱珪酸素量を減じた値が、供給する酸素量(吹酸量)に対応する脱珪外酸素量となる。
また、算出した脱珪酸素量と、脱珪外酸素量の制御目標値と、を足し合わせることで、第1脱りん工程において溶銑に供給すべき酸素量(吹酸量)を決定することができる。
本実施形態に係る第1脱りん工程では、上記のような脱珪外酸素量(溶銑1トンあたりの脱珪外酸素量)が4.0〜10.0Nm/トンの範囲内となるように、溶銑に対して酸素を供給する。脱珪外酸素量を4.0Nm/トン以上とし、かつ、上記のようなスラグの塩基度を実現することで、スラグフォーミング量を安定して確保することが可能となる。脱珪外酸素量は、好ましくは4.5Nm/トン以上であり、より好ましくは5.0Nm/トン以上である。一方、脱珪外酸素量が10.0Nm/トンを超える場合には、スラグフォーミング量が急激に増加して転炉型容器からスラグが噴出する場合が生じうるため、かかるスラグの噴出を防止するためにフォーミング鎮静剤を用いる必要が生じ、スラグフォーミング量にバラつきが生じてしまう。そのため、スラグフォーミング量のバラつきを抑制するために、脱珪外酸素量は、10.0Nm/トン以下とする。脱珪外酸素量は、好ましくは9.5Nm/トン以下であり、より好ましくは9.0Nm/トン以下である。
上記のように、第1脱りん工程終了後のスラグの塩基度、及び、脱珪外酸素量の双方を、比較的狭い範囲内とすることで、本実施形態に係る第1脱りん工程では、安定したスラグフォーミング量を実現することができる。これにより、チャージ毎に発生するスラグフォーミング量が安定して、そのバラつきの範囲を従来よりも狭い範囲とすることができる。その結果、次工程の第1中間排滓工程において、所定のスラグ残留率を制御目標とする際に、残留スラグ量のバラつきの抑制が可能となる。例を挙げると、次工程の第1中間排滓工程において、スラグ残留率として例えば平均40質量%を制御目標とする場合に、スラグ残留率を、例えば32〜48質量%の間のバラつきが生じた結果の平均40質量%ではなく、36〜44質量%の間のバラつきが生じた結果の平均40質量%とすることができる。このように、第1脱りん工程終了後のスラグの塩基度、及び、脱珪外酸素量は、スラグフォーミング量の安定化に寄与する重要な要因である。
また、第1脱りん工程において、溶銑の終点温度は、1300〜1380℃の範囲内とする。溶銑の終点温度を1300℃以上とすることで、溶銑の脱りん反応の進行レベルを適切な状態に確保することが可能となる。脱りん反応をより進行させるために、溶銑の終点温度は、1320℃以上とすることが好ましく、1330℃以上とすることがより好ましい。一方、溶銑の終点温度を1380℃以下とすることで、脱りん効率の低下を抑制しながら、脱りん反応を進行させることが可能となる。後段の第2脱りん工程における溶湯の高温化を抑制して脱りん反応の低効率化及び復りんの発生を防止するという観点から、溶銑の終点温度は、1360℃以下であることが好ましく、1350℃以下とすることがより好ましい。
なお、第1脱りん工程において、スラグ塩基度、脱珪外酸素量、及び、溶銑の終点温度の範囲が上記の範囲内であれば、酸素の供給時間(吹酸時間)は特に規定するものではないが、所望のスラグフォーミング量をより安定して実現するために、酸素の供給時間(吹酸時間)は、1〜6分の範囲内とすることが好ましい。
<第1中間排滓工程>
第1中間排滓工程は、第1脱りん工程の後に実施される工程であり、スラグを転炉型容器外に排滓して、排滓前のスラグ量の30〜50質量%を転炉型容器内に残留させる工程である。
本実施形態に係る極低りん鋼の溶製方法では、後段の第2脱りん工程におけるCaO源の投入量をゼロ又は少量(より詳細には、5kg/トン以下)とするために、脱りん材として機能するスラグを、排滓前のスラグ量の30質量%以上残留させる。すなわち、本実施形態に係る第1中間排滓工程では、転炉型容器内におけるスラグの残留率を、30質量%以上とする。スラグの残留率が30質量%未満となる場合には、脱りん材として機能するスラグの残留量が不足することでCaO源の添加が必要となり、造滓材である生石灰等の使用量を削減することができない。スラグの残留率は、好ましくは32質量%以上であり、より好ましくは34質量%以上である。
一方、転炉型容器内に、スラグを、排滓前のスラグ量の50質量%以下の量で残留させる(すなわち、スラグの残留率を50質量%以下とする)ことで、スラグに含まれるりん総量の低減が可能となり、後段の脱炭工程における復りん量の低減を実現することができる。スラグの残留量は、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下である。
ここで、上記のスラグ残留率(又は、スラグ残留率を100%から減じた値である中間排滓率)は、例えば特開2018−115350号公報に記載の方法を用いて算出することができる。
また、転炉型容器からスラグを排滓する際に、転炉型容器の排滓時の傾斜におけるスラグ排出開始時刻、開始時刻からの排滓時間、排滓時間中の傾斜速度(角速度)のそれぞれを一定とすることで、スラグ残留率を所望の範囲内に制御することが、一般的な排滓手法として採用されている。本実施形態では、先だって言及した第1脱りん工程において、安定してバラつきの少ないスラグフォーミング量が確保されている。このため、例えば上記のような排滓手法を採用することで、転炉型容器内に残留させるスラグ量を、より安定化することが可能となる。
<第2脱りん工程>
第2脱りん工程は、上記の第1中間排滓工程の後に行われる工程であり、転炉型容器内の溶湯に対して、再度脱りん処理を行う工程である。より詳細には、第2脱りん工程では、第2脱りん工程終了後のスラグの塩基度が0.8〜1.3の範囲内となるように、CaO源を、CaO換算で0〜5kg/トン添加し、2.0〜4.0Nm/トンの範囲内の吹酸量で酸素を供給しながら、溶湯の終点温度を1300〜1380℃の範囲内とする。
第2脱りん工程終了後のスラグの塩基度を、0.8以上とすることで、第2脱りん工程におけるスラグフォーミング量を確保しながら、溶湯の脱りん進行レベルを確保することが可能となる。第2脱りん工程終了後のスラグの塩基度は、好ましくは0.9以上である。一方、第2脱りん工程終了後のスラグの塩基度を、1.3以下とすることで、第2脱りん工程におけるスラグフォーミング量を安定して確保する(すなわち、スラグフォーミング量のバラつきを抑制する)とともに、後段の第2中間排滓工程において、スラグ排滓率の安定化を図ることが可能となる。第2脱りん工程終了後のスラグの塩基度は、好ましくは1.2以下である。
なお、本実施形態に係る極低りん鋼の溶製方法では、先立つ第1中間排滓工程において、スラグ残留率が30〜50質量%の範囲内とすることで、第2脱りん工程に必要な脱りん材(すなわち、スラグ)の量のうち大部分が、予め確保されている。そのため、本実施形態に係る第2脱りん工程では、造滓材としてのCaO源の添加量を、CaO換算で0kg/トン以上5kg/トン以下とすることができる。
また、本実施形態に係る第2脱りん工程において、溶湯に供給する酸素の量(すなわち、吹酸量)は、2.0〜4.0Nm/トンの範囲内とする。第2脱りん工程終了後のスラグの塩基度を上記の範囲内とし、かつ、吹酸量を2.0Nm/トン以上とすることで、極低りん鋼を得るための所望の脱りん量を実現することができる。吹酸量は、好ましくは2.2Nm/トン以上であり、より好ましくは2.4Nm/トン以上である。一方、吹酸量が4.0Nm/トンを超える場合には、スラグフォーミング量が急激に増加して転炉型容器からスラグが噴出する場合が生じうるため、かかるスラグの噴出を防止するためにフォーミング鎮静剤を用いる必要が生じ、スラグフォーミング量にバラつきが生じてしまう。そのため、スラグフォーミング量のバラつきを抑制するために、吹酸量は、4.0Nm/トン以下とする。吹酸量は、好ましくは3.8Nm/トン以下であり、より好ましくは3.6Nm/トン以下である。
上記のように、第2脱りん工程終了後のスラグの塩基度、及び、吹酸量の双方を、比較的狭い範囲内とすることで、本実施形態に係る第2脱りん工程では、安定したスラグフォーミング量を実現することができる。これにより、チャージ毎に発生するスラグフォーミング量が安定して、そのバラつきの範囲を従来よりも狭い範囲とすることができる。その結果、次工程の第2中間排滓工程において、所定のスラグ排滓率を制御目標とする際に、排滓スラグ量のバラつきの抑制が可能となる。例を挙げると、次工程の第2中間排滓工程において、スラグ排滓率として例えば平均40質量%を制御目標とする場合に、スラグ排滓率を、例えば32〜48質量%の間のバラつきが生じた結果の平均40質量%ではなく、36〜44質量%の間のバラつきが生じた結果の平均40質量%とすることができる。このように、第2脱りん工程終了後のスラグの塩基度、及び、吹酸量は、スラグフォーミング量の安定化に寄与する重要な要因である。
また、第2脱りん工程において、溶湯の終点温度は、1300〜1380℃の範囲内とする。溶湯の終点温度を1300℃以上とすることで、溶湯の脱りん反応の進行レベルを適切な状態に確保することが可能となる。脱りん反応をより進行させるために、溶湯の終点温度は、1320℃以上とすることが好ましく、1330℃以上とすることがより好ましい。一方、溶湯の終点温度を1380℃以下とすることで、脱りん効率の低下及び復りんの発生を抑制しながら、脱りん反応を進行させることが可能となる。溶湯の終点温度は、1360℃以下であることが好ましく、1350℃以下とすることがより好ましい。
なお、第2脱りん工程において、スラグ塩基度、吹酸量、及び、溶湯の終点温度の範囲が上記の範囲内であれば、酸素の供給時間(吹酸時間)は特に規定するものではないが、所望のスラグフォーミング量をより安定して実現するために、酸素の供給時間(吹酸時間)は、0.3〜3.0分の範囲内とすることが好ましい。
<第2中間排滓工程>
第2中間排滓工程は、第2脱りん工程の後に実施される工程であり、排滓前のスラグの30〜60質量%を、転炉型容器外へと排滓する工程である。
本実施形態に係る極低りん鋼の溶製方法では、後段の脱炭工程においても脱りん反応が進行するため、目的とする溶鋼中のりん含有量のレベルに応じて、CaO源を添加することが求められる。後段の脱炭工程において添加したCaO源は、滓化する必要があるが、新たに添加したCaO源単独では一般に融点が高いため、第2脱りん工程で生じたスラグを転炉型容器内に所定量残留させておくことで、後段の脱炭工程において、添加したCaO源の滓化を促進することができる。
また、後段の脱炭工程において、吹酸の火点を除く溶湯の表面は、スラグで遮蔽する必要があるため、溶湯の表面の遮蔽物としてスラグを確保しておくことも重要である。
以上のような2つの観点から、本実施形態に係る第2中間排滓工程では、排滓前のスラグの60質量%以下を、転炉型容器外へと排滓する(換言すれば、排滓前のスラグの40質量%以上を、転炉型容器内に残留させる)。これにより、スラグに含まれるりん総量の低減が可能となり、後述する脱炭工程時の復りん量の低減を実現することが可能となる。第2中間排滓工程におけるスラグの排滓率は、好ましくは55質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下である。
一方、転炉型容器外へと排滓するスラグの量が、排滓前のスラグの30質量%未満である場合には、排滓後に転炉型容器内に残留するスラグに含まれるりん総量の低減が不足し、次工程の脱炭工程における復りん量が増加してしまう。そのため、転炉型容器外へと排滓するスラグの量は、排滓前のスラグの30質量%以上とする(換言すれば、排滓前のスラグの70質量%以下を、転炉型容器内に残留させる)。第2中間排滓工程におけるスラグの排滓率は、好ましくは35質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上である。
なお、上記のスラグ排滓率は、第1中間排滓工程の場合と同様に、例えば特開2018−115350号公報に記載の方法を用いて算出することができる。また、スラグ排滓率の制御手法に関しても、第1中間排滓工程と同様の排滓手法を採用することが可能である。本実施形態では、先だって言及した第1脱りん工程及び第2脱りん工程において、安定してバラつきの少ないスラグフォーミング量が確保されている。このため、上記のような排滓手法を採用することで、転炉型容器外へと排滓するスラグ量を、より安定化することが可能となる。
<脱炭工程>
脱炭工程は、第2中間排滓工程の後の溶湯に対して、CaO源を添加して脱炭処理を行う工程である。脱炭工程で採用する脱炭処理方法については、特に限定されるものではなく、公知の各種の脱炭処理方法を採用することが可能である。
本実施形態に係る極低りん鋼の溶製方法では、上記第1脱りん工程〜第2中間排滓工程により、スラグのりん総量を低減しており、また、脱炭工程に持ち込むスラグ量もバラつきが少ない。これにより、脱炭処理時の復りん量が安定化され、より容易に、りん含有量が100ppm以下である極低りん鋼を溶製することが可能となる。
また、上記のように、スラグ量のバラつきが少ないため、極低りん鋼のりん要求濃度に対して必要に応じて投入されるCaO源の投入量を、概ね一定レベルとすることができる。その結果、過剰なCaO源の投入を抑制することが可能となり、造滓材投入量の削減を図ることが可能となる。
以上、図3を参照しながら、本実施形態に係る極低りん鋼の溶製方法について、詳細に説明した。
以下では、実施例を示しながら、本発明に係る極低りん鋼の溶製方法について、具体的に説明する。なお、以下に示す例は、本発明に係る極低りん鋼の溶製方法の一例にすぎず、本発明に係る極低りん鋼の溶製方法が下記の例に限定されるものではない。
転炉型容器の一例として、容量が350トンの上底吹き転炉を用い、その内部に溶銑を300トン〜350トンの範囲内となるように装入した後、第1脱りん工程、第1中間排滓工程、第2脱りん工程、第2中間排滓工程、脱炭工程、の順で処理を行った。これにより、処理後に得られる溶鋼のりん濃度0.0010質量%(10ppm)以下を狙い値として、溶鋼を溶製した。
なお、用いた溶銑の主要成分の含有量は、以下の通りであり、残部は、Fe及び不純物である。
C :3.0〜5.0(質量%)
Si:10〜100(×10−2質量%)
Mn:5〜10(×10−2質量%)
P :50〜200(×10−3質量%)
S :1〜20(×10−3質量%)
溶銑中のSiが全て酸化するという前提で、以下の表1に記載のようなスラグの塩基度の狙い値を設定し、第1脱りん工程で添加するCaO源(生石灰、石灰石、リサイクルスラグ)の添加量(CaO換算値)を決定した。
なお、上吹きランスから酸素を上吹きする際には、溶銑中のSi含有量から脱珪酸素量を算出し、以下の表1に示した脱珪外酸素量となるように吹酸量を決定し、以下の表1に示した溶銑終点温度となるように、冷材の添加量を調整した。吹酸時間は、1〜6分程度であった。なお、第1脱りん工程の処理中では、COを用いた底吹き撹拌も実施した。なお、底吹き撹拌には、酸素の併用も可能である。常用される底吹きの吹酸量は、上吹きの吹酸量に比べて極めて少ないため、本発明における吹酸の作用は、主として上吹き酸素を考慮すればよい。
第1中間排滓工程では、スラグ残留率の狙い値を35〜45%とし(ただし、以下の表1において、比較例No.7では10〜20%を狙い値とし、比較例No.8では、60〜80%を狙い値とした。)、上底吹き転炉の傾斜速度(角速度)を一定とし、溶湯の排出開始前となる所定の角度で傾斜を停止した。なお、本発明の発明例であれば、概ね狙い値に対して±5の振れ幅となるため、狙い値が35〜45%の場合、実績値は30〜50%となる。比較例の一部については、スラグ残留率がバラつく条件であり、表1に記載した狙い値に対して、実績値が+5を超える場合、及び/又は、−5を下回る場合があった。
また、実際のスラグ残留率は、特開2018−115350号公報に記載の方法を用いてスラグ排出率を算出し、得られたスラグ排出率を100%から減じて、スラグ残留率とした。
第2脱りん工程では、以下の表1に示した吹酸量を狙い値とし、以下の表1に示した溶湯終点温度となるように、冷材の添加量を調整した。また、CaO源(生石灰、石灰石、リサイクルスラグ)は、CaO換算で0〜5kg/トンの範囲内とし、スラグ塩基度の調整のために、珪石も併用させる場合があった。吹酸時間は、1〜6分程度であった。なお、第2脱りん工程の処理中では、COを用いた底吹き撹拌も実施した。なお、底吹き撹拌には、酸素の併用も可能である。常用される底吹きの吹酸量は、上吹きの吹酸量に比べて極めて少ないため、本発明における吹酸の作用は、主として上吹き酸素を考慮すればよい。
第2中間排滓工程では、スラグ排滓率の狙い値を35〜55%とし(ただし、以下の表1において、比較例No.15では10〜20%を狙い値とし、比較例No.16では、75〜85%を狙い値とした。)、上底吹き転炉の傾斜速度(角速度)を一定とし、溶湯の排出開始前となる所定の角度で傾斜を停止した。なお、本発明の発明例であれば、概ね狙い値に対して±5の振れ幅となるため、狙い値が35〜55%の場合、実績値は30〜60%となる。比較例の一部については、スラグ排滓率がバラつく条件であり、表1に記載した狙い値に対して、実績値が+5を超える場合、及び/又は、−5を下回る場合があった。
また、実際のスラグ排滓率は、特開2018−115350号公報に記載の方法を用いて算出した。
脱炭工程では、酸素の上吹きにより、脱炭処理を行った。吹酸量は30〜60Nm/トンとした。その他の詳細な条件については、公知の常用される方法に従った。また、過去の極低りん鋼を溶製するための操業での経験を踏まえ、溶鋼りん濃度が0.0010質量%以下となるように、添加するCaO源の量を決定した。
以上説明したような方法に即して半年間の操業を行い、以下の表1に示す各操業条件に該当する操業の操業結果をまとめた。各No.ついて、複数チャージの操業をしている。以下の表1において、第1中間排滓工程におけるスラグの残留率狙い値、及び、第2中間排滓工程におけるスラグの排滓率狙い値のそれぞれは上下限値を記載した数値範囲としているが、表1各No.の複数チャージ操業において、狙い値上下限値とその中間値1以上の合計3以上を操業条件としている。
<評価方法>
[スラグ残留率・排出率のバラつき]
第1中間排滓工程におけるスラグの残留率、及び、第2中間排滓工程におけるスラグの排出率のチャージ間のバラつきについては、残留率(排滓率)の狙い値に対し、±5以内の残留率(排滓率)の実績値であった場合を評点「A」とし、狙い値に対して実績値が、+5を超える場合、及び/又は、−5を下回る場合を評点「B」とした。
[全工程でのCaO源添加量]
第1脱りん工程、第2脱りん工程及び脱炭工程のそれぞれで添加したCaO源の合計添加量を算出した。以下の表1における比較例1での合計添加量を基準量として、基準量よりも30%以上削減された場合を評点「A」とし、基準量と同等か多い量を使用した場合を評点「B」とした。なお、合計添加量は基準量よりも少ないが削減量が30%未満であった場合は、基準量と同等と判断し、評点「B」とした。
得られた結果を、以下の表1にまとめて示した。
Figure 2021195558
比較例1では、第1脱りん工程において、多量のフォーミングが発生する傾向にあり、スロッピング防止のためにフォーミング抑制剤を常用せざるを得ず、結果として十分なスラグフォーミング量を確保できなかったために、第1中間排滓工程においてスラグ残留率にバラつきが生じた。また、このスラグ残留率のバラつきが原因となって、第2中間排滓工程でのスラグ排滓率にもバラつきが生じた。その結果、脱炭工程においてCaO源を増加せざるを得なくなった。
比較例2では、第1脱りん工程においてフォーミングが不足し、十分なスラグフォーミング量が確保できず、結果として、比較例1と同様に、第1中間排滓工程及び第2中間排滓工程において、スラグ残留率及びスラグ排滓率にバラつきが生じ、全工程におけるCaO源添加量は、比較例1と同等の量となった。
比較例3及び比較例4では、第1脱りん工程において脱りん反応が進行せず、脱炭工程において系内のりん総量が多くなったため、脱炭工程においてCaO源を増加せざるを得なくなり、全工程におけるCaO源添加量は、比較例1よりも多くなった。
比較例5では、第1脱りん工程において脱珪外酸素量が不足したために、十分なスラグフォーミング量を確保できず、第1中間排滓工程においてスラグ残留率にバラつきが生じた。また、このスラグ残留率のバラつきが原因となって、第2中間排滓工程でのスラグ排滓率にもバラつきが生じた。その結果、脱炭工程においてCaO源を増加せざるを得なくなり、全工程におけるCaO源添加量は、比較例1よりも多くなった。
比較例6では、第1脱りん工程において脱珪外酸素量が多くなりすぎたため、第1脱りん工程の末期に過剰なスラグフォーミングが発生し、フォーミング鎮静剤を用いることとなった。その結果、第1中間排滓工程においてスラグ残留率にバラつきが生じ、全工程におけるCaO源添加量は、比較例1よりも多くなった。
比較例7では、第1中間排滓工程においてスラグ残留率狙い値が低すぎ、スラグ残留率の実績値が5〜25%程度であって30%未満であるため、第2脱りん工程において脱りん材(すなわち、スラグ)の不足を招き、第2脱りん工程での脱りん反応が十分に進行しなかった。その結果、脱炭工程においてCaO源を増加せざるを得なくなり、全工程におけるCaO源添加量は、比較例1と同等となった。
比較例8では、第1中間排滓工程においてスラグ残留率狙い値が高すぎ、スラグ残留率の実績値が55〜85%程度であって50%超であるため、結果として脱炭工程において系内のりん総量が多くなったため、脱炭工程においてCaO源を増加せざるを得なくなり、全工程におけるCaO源添加量は、比較例1よりも多くなった。
比較例9では、第2脱りん工程において、多量のフォーミングが発生する傾向にあり、スロッピング防止のためにフォーミング抑制剤を常用せざるを得ず、結果として十分なスラグフォーミング量を確保できなかったために、第2中間排滓工程でのスラグ排滓率にもバラつきが生じた。その結果、脱炭工程においてCaO源を増加せざるを得なくなり、全工程におけるCaO源添加量は、比較例1と同等となった。
比較例10では、第2脱りん工程において、安定したスラグフォーミング量を確保できなかったために、第2中間排滓工程でのスラグ排滓率にもバラつきが生じた。その結果、脱炭工程においてCaO源を増加せざるを得なくなり、全工程におけるCaO源添加量は、比較例1よりも多くなった。
比較例11では、第2脱りん工程において吹酸量が不足したために、脱りん反応が十分に進行しなかった。その結果、脱炭工程においてCaO源を増加せざるを得なくなり、全工程におけるCaO源添加量は、比較例1よりも多くなった。
比較例12では、第2脱りん工程において吹酸量が多くなりすぎたため、第2脱りん工程の末期に過剰なスラグフォーミングが発生し、フォーミング鎮静剤を用いることとなった。その結果、第2中間排滓工程においてスラグ排滓率にバラつきが生じ、全工程におけるCaO源添加量は、比較例1よりも多くなった。
比較例13及び比較例14では、第2脱りん工程において脱りん反応が進行せず、脱炭工程において系内のりん総量が多くなったため、脱炭工程においてCaO源を増加せざるを得なくなり、全工程におけるCaO源添加量は、比較例1よりも多くなった。
比較例15では、第2中間排滓工程においてスラグ排滓率狙い値が低すぎ、スラグ排滓率の実績値が5〜25%程度であって30%未満であるため、結果として脱炭工程において系内のりん総量が多くなったため、脱炭工程においてCaO源を増加せざるを得なくなり、全工程におけるCaO源添加量は、比較例1よりも多くなった。
比較例16では、第2中間排滓工程においてスラグ排滓率狙い値が高すぎ、スラグ排滓率の実績値が70〜90%程度であって60%超であるためスラグが少なすぎ、脱炭工程における滓化の進行が望みにくいためCaO源を増加せざるを得ず、全工程におけるCaO源添加量は、比較例1よりも多くなった。
一方、本発明例に該当する実施例では、第1脱りん工程及び第2脱りん工程において、安定したスラグフォーミング量が実現されることで、第1中間排滓工程におけるスラグ残留率、及び、第2中間排滓工程におけるスラグ排滓率のバラつきを抑制でき、全工程でのCaO源添加量も、比較例1と比べて、30%以上の削減を図ることが可能であった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される

Claims (2)

  1. 転炉型容器を用いて溶銑予備処理と脱炭処理を行う、極低りん鋼の溶製方法であって、
    溶銑の脱りん処理を行う第1脱りん工程と、
    前記第1脱りん工程の後に実施される第1中間排滓工程と、
    前記第1中間排滓工程の後に、溶湯に対して再度脱りん処理を行う第2脱りん工程と、
    前記第2脱りん工程の後に実施される第2中間排滓工程と、
    前記第2中間排滓工程の後の溶湯に対して、CaO源を添加して脱炭処理を行う脱炭処理工程と、
    を有し、
    前記第1脱りん工程では、前記溶銑に対して、前記第1脱りん工程終了後のスラグの塩基度が0.8〜1.3の範囲内となるようにCaO源を添加し、脱珪外酸素量が4.0〜10.0Nm/トンの範囲内となるように酸素を供給しながら、前記溶銑の終点温度を1300〜1380℃の範囲内とし、
    前記第1中間排滓工程では、スラグを前記転炉型容器外に排滓して、排滓前のスラグ量の30〜50質量%を前記転炉型容器内に残留させ、
    前記第2脱りん工程では、前記第2脱りん工程終了後のスラグの塩基度が0.8〜1.3の範囲内となるように、CaO源を、CaO換算で0〜5kg/トン添加し、2.0〜4.0Nm/トンの範囲内の吹酸量で酸素を供給しながら、前記溶湯の終点温度を1300〜1380℃の範囲内とし、
    前記第2中間排滓工程では、排滓前のスラグの30〜60質量%を、前記転炉型容器外へと排滓する、極低りん鋼の溶製方法。
  2. 前記溶銑のSi含有量は、0.1〜1.2質量%の範囲内である、請求項1に記載の極低りん鋼の溶製方法。
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