JP5983900B1 - 溶銑の予備処理方法 - Google Patents

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Abstract

1つの転炉型精錬炉を用いて、高炉から出銑された溶銑の脱珪処理と脱燐処理とを連続して行う溶銑の予備処理方法において、炉内に残留するスラグの質量や組成の状況を正確に把握することが困難であったとしても、効率良く脱珪処理及び脱燐処理する。1つの転炉型精錬炉1を用いて溶銑5の脱珪処理工程と、脱珪処理工程で生成した脱珪スラグ6を排出する中間排滓工程と、精錬炉内に残留させた溶銑5Aを脱燐処理する脱燐処理工程と、脱燐処理された溶銑5Bを出湯する出湯工程とを、この順に行って溶銑を予備処理するにあたり、出湯工程後、脱燐処理工程で生成した脱燐スラグ7を炉外に排出するか否かを、当該チャージの脱燐処理後の溶銑5Bの燐含有量分析値に基づいて決定し、次いで、次チャージの溶銑を前記精錬炉内に装入し、前記予備処理を行う。

Description

本発明は、転炉型精錬炉(converter-type refining furnace)を用いた溶銑の予備処理方法に関し、詳しくは、1つの転炉型精錬炉を用いて、高炉から出銑された溶銑を効率良く脱珪処理及び脱燐処理するための予備処理(pretreatment)方法に関する。
近年、溶銑の予備処理方法(脱珪処理、脱燐処理、脱硫処理)の開発が進み、その結果として、製鋼用純酸素転炉(oxygen steelmaking converter)に装入(charge)される溶銑の燐(P)、硫黄(S)の濃度をそれ以上に除去する必要のないレベルまで低減し、製鋼用純酸素転炉では主に脱炭精錬のみを行う製鋼精錬プロセスが完成しつつある。脱珪処理及び脱燐処理では、溶銑中の珪素(Si)或いは燐が溶銑に供給される酸素源(酸素ガスや酸化鉄)中の酸素によって酸化されて除去される反応(酸化反応)が行われる。一方、脱硫処理では、CaO(酸化カルシウム)などの脱硫剤と溶銑中の硫黄とが反応して硫黄が除去される反応(還元反応)が行われる。
これらの溶銑予備処理のなかで、脱燐処理は、生成される燐酸化物(P)をCaO系のスラグに吸収させて脱燐反応を進行させている。脱燐平衡の観点から、燐酸化物を吸収するためのスラグの塩基度(=(質量%CaO)/(質量%SiO);以下、単に「塩基度」とも記す)は、所定の値、例えば1.5〜3.0の範囲内に制御する必要がある。
溶銑中の珪素は、溶銑中の燐よりも優先的に酸化されることから、溶銑に脱燐処理を施すべく、珪素を含有する溶銑に酸素源を供給しても、先ず、脱珪反応が起こり、溶銑中の珪素が少なくなった以降に脱燐反応が起こる。珪素は酸化されるとSiO(二酸化珪素)になることから、脱燐処理前の溶銑中の珪素濃度が高い場合には、脱燐処理におけるSiOの発生量が多くなる。その結果、スラグの塩基度を所定の値に確保するためのCaO系媒溶剤(CaO-based flux)の使用量が多くなるのみならず、スラグの発生量も多くなり、処理コストを上昇させる。
そこで、上記問題を解決するために種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、1つの転炉型精錬炉を用いて溶銑の脱珪処理と脱燐処理とを実施する場合において、前チャージ(previous heat)で生成した脱燐スラグを排滓(slag discharging)することなく、次チャージ(subsequent heat)の溶銑を転炉型精錬炉に装入している。そして、この溶銑に脱珪処理を実施し、溶銑中の珪素濃度が0.2質量%以下になった時点で、塩基度が1.0〜3.0の範囲の炉内スラグの少なくとも一部を排出し、引き続き、脱燐処理を行う予備処理方法が提案されている。ここで、「脱燐スラグ」とは、脱燐処理で生成するスラグである。また、「チャージ」(heat)とは、新たな溶銑を装入してから、その炉における精錬を完了して炉から溶銑あるいは溶鋼を排出するまでを1単位とする概念であり、溶銑を炉内に保持したまま中断等を挟んで行う複数回の精錬も1つのチャージに含まれる。
また、特許文献2には、1つの転炉型精錬炉を用いて脱珪処理及び脱燐処理を実施する場合において、前チャージで生成した脱燐スラグを排滓することなく次チャージの溶銑を転炉型精錬炉に装入し、この溶銑に脱珪処理を実施している。そして、脱珪処理終了時の溶銑の珪素濃度が0.2質量%以下、脱珪処理後のスラグ塩基度が0.5〜1.5、脱珪処理後の溶銑温度が1240〜1400℃になるように制御し、次いで、脱珪処理後のスラグの40質量%以上を排出し、その後、炉内の溶銑に対して脱燐精錬を行う予備処理方法が提案されている。
特許文献1或いは特許文献2に提案される、前チャージで生成した脱燐スラグを排滓せずに、次チャージの脱珪処理でスラグの塩基度調整用に利用するという技術を適用することで、再利用するスラグ以外の新たなCaO系媒溶剤の使用量が削減可能になると同時に、スラグ発生量を低減できるという効果が得られる。また、特許文献2に提案される技術では、脱珪処理後のスラグ塩基度を低下させるとともに、溶銑温度を低下させる。これにより、スラグから溶銑への復燐(rephosphorization)が抑制され、更に、CaO系媒溶剤の使用量が削減可能になると同時に、排出スラグ中に混入する金属鉄分を低減して鉄歩留りを向上することが可能となる。ここで、「復燐」とは、スラグに含有されていた燐酸化物(P)が分解して、燐が溶銑に移行し、溶銑の燐濃度が上昇する現象である。
特開平11−323420号公報 特開2013−167015号公報
しかしながら、上記従来技術には以下の問題がある。
特許文献1及び特許文献2は、脱燐処理で生成した脱燐スラグを次チャージの脱珪処理で利用した上で、脱珪処理と脱燐処理との途中で炉内のスラグを排出(「中間排滓」(intermediate slag discharging)という)することを必須としている。しかしながら、脱燐スラグの塩基度が低い場合に、脱燐スラグを次チャージの脱珪処理で利用すると、脱珪処理中に生成するSiOによって、このSiOと炉内に残留していた脱燐スラグとで生成される脱珪スラグの塩基度は更に低下する。この結果、脱珪処理中に、脱燐スラグに含有されていた燐酸化物(P)が分解して、燐が溶銑に移行する、所謂「復燐」が発生することがある。ここで、「脱珪スラグ」とは脱珪処理で生成するスラグである。
また、中間排滓でのスラグの排出量は必ずしも狙い通りに制御できない場合がある。この場合に、炉内に残留するスラグ量のばらつきは大きくなる。特に中間排滓でのスラグの排出において、大きな排滓速度を得ようとしたり、スラグのフォーミング(slag foaming)が不十分な場合に炉内の残滓量を低減しようとしたりして、転炉型精錬炉の傾動角度を大きくすると、スラグとともに溶銑も炉口(throat of furnace)から或る程度排出されてしまう。この場合に、溶銑の排出量は一定ではないので、中間排滓における炉内からの排出物の質量を測定しても、測定される排出量のうちのスラグの質量を正確に把握することは直ちにはできない。従って、中間排滓後の脱燐処理におけるスラグの組成や量の制御は、不確定な要素があるので、想定外に塩基度が低下したり、スラグ量が増大したりする場合がある。このような脱燐処理で生成した脱燐スラグを排滓せずに次チャージの脱珪処理で利用すると、精錬中に炉口からスラグが噴出し、精錬の中断を余儀なくされたり、中間排滓時の排滓時間が増大したりして、予備処理の生産性が低下するという問題、即ち予備処理を実施する比率が低下するという問題も発生する。
つまり、操業条件によっては、前チャージの脱燐スラグを、排滓することなく次チャージの脱珪処理で利用することで、却って操業を阻害することもある。
特許文献1及び特許文献2は、これらの問題について、何ら配慮していない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、1つの転炉型精錬炉を用いて、高炉から出銑された溶銑の脱珪処理と脱燐処理とを、この順に連続して(in succession)行う溶銑の予備処理方法において、複数のチャージに亘って連続して行われる溶銑の予備処理操業中に炉内に残留するスラグの質量や組成の状況を正確に把握することが困難であったとしても、溶銑には状況に応じた最適な予備処理方法が施され、再利用するスラグ以外の新たなCaO系媒溶剤の使用量とスラグ排出量とを抑制して、効率良く脱珪処理及び脱燐処理することのできる、溶銑の予備処理方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]1つの転炉型精錬炉を用い、高炉から出銑された溶銑を脱珪処理する脱珪処理工程と、脱珪処理した溶銑を前記精錬炉内に残留させた状態で、前記脱珪処理工程で生成した脱珪スラグの少なくとも一部を前記精錬炉から排出する中間排滓工程と、該中間排滓工程で前記精錬炉内に残留(retain)させた溶銑を脱燐処理する脱燐処理工程と、脱燐処理された溶銑を前記精錬炉から出湯(tap)する出湯工程とを、この順に行って溶銑を予備処理するにあたり、前記出湯工程後、前記脱燐処理工程で生成した前記精錬炉内の脱燐スラグを炉外に排出するか否かを、当該チャージの脱燐処理後の溶銑の燐含有量分析値に基づいて決定し、脱燐スラグを排出すると決定した場合には脱燐スラグを前記精錬炉から排出し、脱燐スラグを排出しないと決定した場合には脱燐スラグを前記精錬炉から排出せずに、次いで、次チャージの溶銑を前記精錬炉内に装入し、前記予備処理を行うことを特徴とする、溶銑の予備処理方法。
[2]前記脱燐処理後の溶銑の燐含有量分析値が0.030質量%から0.060質量%の範囲内の或る所定値Z以下の場合には、前記脱燐スラグを前記精錬炉から排出せず、前記脱燐処理後の溶銑の燐含有量分析値が前記所定値Zを超える場合には、前記脱燐スラグを前記精錬炉から排出することを特徴とする上記[1]に記載の溶銑の予備処理方法。
[3]前記中間排滓工程直後の前記精錬炉内における前記脱珪スラグの残留量が25kg/溶銑−トン以下であることを特徴とする上記[1]または上記[2]に記載の溶銑の予備処理方法。
[4]前記脱珪処理工程前の溶銑の珪素含有量が0.70質量%以下であることを特徴とする、上記[1]から上記[3]のいずれか1つに記載の溶銑の予備処理方法。
本発明によれば、1つの転炉型精錬炉を用いて、高炉から出銑された溶銑の脱珪処理と脱燐処理とを連続して行う溶銑の予備処理方法において、脱燐処理工程後の溶銑の燐含有量分析値に基づいて、炉内の脱燐スラグを炉外に排出するか否かを決定するので、複数のチャージに亘って連続して行われる溶銑の予備処理操業中に炉内に残留するスラグの質量や組成の状況を正確に把握することが困難であっても、溶銑には、状況に応じた最適な予備処理方法が施され、再利用するスラグ以外の新たなCaO系媒溶剤の使用量を抑制して、溶銑を効率良く脱珪処理し且つ効率良く脱燐処理することが実現される。
本発明に係る溶銑の予備処理方法を実施する際に用いる転炉型精錬炉の概略縦断面図である。 本発明に係る溶銑の予備処理方法を連続する2チャージに適用し、前チャージの脱燐スラグを炉外に排出しなかった場合の当該チャージの溶銑の予備処理方法を工程順に示す概略図である。
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は、本発明に係る溶銑の予備処理方法を実施する際に用いる転炉型精錬炉の概略縦断面図である。図2は、本発明に係る溶銑の予備処理方法を連続する2チャージに適用し、前チャージの脱燐スラグを炉外に排出しなかった場合の当該チャージの溶銑の予備処理方法を工程順に示す概略図である。尚、図1は、図2−(B)の脱珪処理工程を示す図である。
本発明に係る溶銑の予備処理方法では、図1に示すような上底吹き(top and bottom blowing)可能な転炉型精錬炉1を用いる。上吹きは、転炉型精錬炉1の内部を昇降可能な上吹きランス2を介して、上吹きランス2の先端から、酸素源として酸素含有ガスを溶銑5に向けて供給して行われる。酸素含有ガスとしては、酸素ガス、酸素富化空気、空気、酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを使用することができる。図1では、酸素含有ガスとして酸素ガス9を使用した例を示している。ここで、酸素ガス9とは工業用純酸素である。底吹きは、転炉型精錬炉1の底部に設けられた底吹き羽口(bottom-blowing tuyere)3を介して行われる。底吹きガス10としては、酸素ガスを含むガスでも、或いはアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスのみでもよい。底吹きガス10は、溶銑中に吹き込むことにより溶銑5の攪拌を強化して冷鉄源の溶解を促進する機能を有するほか、底吹き羽口3から搬送用ガスとともに造滓剤(slag forming agent)を溶銑中に吹き込む機能を有してもよい。
本発明においては、溶銑5の精錬に2基以上の転炉型精錬炉1を使用する。そのうちの少なくとも1基の転炉型精錬炉1を本発明に係る溶銑予備処理に使用し、残りの少なくとも1基の転炉型精錬炉1を脱炭精錬用の製鋼用純酸素転炉として使用し、本発明に係る溶銑予備処理の施された溶銑5の脱炭精錬(転炉製鋼(converter steelmaking))を実施する。つまり、溶銑予備処理用の転炉型精錬炉1で予備処理を行い、次いで、予備処理の施された溶銑5を脱炭精錬用の製鋼用純酸素転炉に移し替えて脱炭精錬を行う。また、本発明は、1基の転炉型精錬炉1を用いて2チャージ以上のチャージを連続して予備処理する場合に適用し、好ましくは、10チャージ以上のチャージを連続して予備処理する場合に適用する。
本発明においては、1基の転炉型精錬炉1を用いて脱珪処理と脱燐処理とを溶銑5に対して行うが、その場合に、精錬パターンを、精錬パターン1、精錬パターン2の下記に示す2種類の精錬パターンのなかから選択した1つの精錬パターンで予備処理を実施する。
精錬パターン1:転炉型精錬炉内の溶銑を脱珪処理する脱珪処理工程と、該脱珪処理工程で生成した脱珪スラグを前記転炉型精錬炉から排出する中間排滓工程と、前記転炉型精錬炉内に残留させた溶銑を脱燐処理する脱燐処理工程と、脱燐処理された溶銑を前記転炉型精錬炉から出湯する出湯工程と、前記脱燐処理工程で生成した脱燐スラグを転炉型精錬炉から排滓せずに前記転炉型精錬炉内に次チャージの溶銑を装入する溶銑装入工程とを、この順に行う精錬方法。
精錬パターン2:転炉型精錬炉内の溶銑を脱珪処理する脱珪処理工程と、該脱珪処理工程で生成した脱珪スラグを前記転炉型精錬炉から排出する中間排滓工程と、前記転炉型精錬炉内に残留させた溶銑を脱燐処理する脱燐処理工程と、脱燐処理された溶銑を前記転炉型精錬炉から出湯する出湯工程と、前記脱燐処理工程で生成した脱燐スラグを転炉型精錬炉から排滓する排滓工程と、前記転炉型精錬炉内に次チャージの溶銑を装入する溶銑装入工程とを、この順に行う精錬方法。
先ず、精錬パターン1について、各工程の順序に沿って説明する。
精錬パターン1では、前チャージの溶銑の予備処理も精錬パターン1で実施した場合には、図2−(A)に示すように、前チャージの脱燐処理工程で生成した脱燐スラグ7の全量が炉内に残留する。この転炉型精錬炉1に残留した脱燐スラグ7の上に鉄スクラップなどの冷鉄源8を装入し、高炉から出銑された当該チャージで使用する溶銑5を、装入鍋(charging ladle)11を介して装入する(溶銑装入工程)。前チャージの溶銑の予備処理を精錬パターン2で実施した場合には、空の転炉型精錬炉1に、鉄スクラップなどの冷鉄源8を装入した後、溶銑5を装入する。
次いで、この転炉型精錬炉内の溶銑5に、酸素源として酸素ガス及び/または酸化鉄を供給して、図2−(B)に示すように、脱珪処理を実施する(脱珪処理工程)。溶銑5に含有される珪素と供給する酸素源中の酸素とが反応(脱珪反応;Si+2O→SiO)して脱珪処理が進行する。この脱珪反応による珪素の酸化熱で溶銑温度が上昇し、溶銑中の冷鉄源8の溶解が促進される。また、炉内に残留していた前チャージの脱燐スラグ7は脱珪反応によって生成するSiOや供給した酸素源との反応により生成する酸化鉄及び添加した造滓剤と混合及び反応し、炉内に脱珪スラグ6が生成される。尚、図2において、脱珪処理後の溶銑は、脱珪処理前の溶銑5と区別するために、溶銑5Aと表示している。
この場合、脱珪処理工程において、炉内に残留していた前チャージの脱燐スラグ7から溶銑5への復燐が生じないようにするために、脱珪スラグ6の塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO))を適切に調整する。
脱燐スラグ中の燐は、多くの場合、2CaO・SiOと3CaO・Pとの固溶体として存在することが知られている。従って、復燐反応を防止するためには、この固溶体が、脱燐スラグ7と脱珪処理で生成するSiOとが反応して生成する脱珪スラグ6に溶解することを防ぐようにすればよい。本発明者らは、鋭意研究の結果、脱珪処理後の脱珪スラグ6の塩基度が、状態図上のSiO飽和領域に到達しないように脱珪スラグ6の組成を調整することで、復燐反応を実質的に防止できることを見出した。
通常の脱珪処理条件においては、溶銑温度が1300℃程度で、脱珪スラグ中のFeO濃度が10〜20質量%程度であるので、実用的には、脱珪処理後の脱珪スラグ6の塩基度を0.8以上とすることで復燐反応が抑制される。復燐をより確実に防止するには、脱珪処理の全期間を通じて、脱珪スラグ6の塩基度を0.8以上に調整すればよい。
脱珪スラグ6の塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO))は、下記の(1)式に基づいて計算することができる。
塩基度=[(炉内残留CaO量(kg/溶銑−t))+(脱珪処理での添加CaO量(kg/溶銑−t))]÷[(炉内残留SiO量(kg/溶銑−t))+(脱珪処理での生成SiO量(kg/溶銑−t))]…(1)
尚、脱珪処理での生成SiO量は、脱珪処理中の溶銑中珪素濃度の変化から算出することができる。
本発明においては、脱珪スラグ6の塩基度の調整のために、脱珪処理前及び/または脱珪処理中に、予め定められた目標とする塩基度と(1)式とに則り、必要に応じてCaO系媒溶剤を炉内に添加する。このCaO系媒溶剤としては、生石灰、炭酸カルシウム、ドロマイト、予備処理スラグ(溶銑の予備処理(脱燐処理)で生成するスラグ)、転炉スラグ(製鋼用純酸素転炉での脱炭精錬で生成するスラグ)、取鍋スラグ(ladle slag)(取鍋内の溶鋼上に存在するスラグであって、出鋼時に取鍋内に流入した転炉スラグとアルミナなどの脱酸生成物とに、生石灰などのスラグ改質剤を添加して形成されたもの)などが使用できる。また、精錬パターン2で炉外へ排出された脱燐スラグ7もCaO系媒溶剤として使用可能である。脱珪処理後の脱珪スラグ6の塩基度は、後述するように排滓性の観点から1.5以下とすることが好ましく、0.8〜1.5の範囲であればよい。なお、脱珪処理後の脱珪スラグ6の塩基度は、CaO系媒溶剤の使用量を低減するためには低い方が有利であり1.2以下とすることがより好ましい。
CaO系媒溶剤の添加方法としては、粒状及び塊状(lump)のものは炉上のホッパーから投入し、粉状のものは上吹きランス2を介するなどして吹き付け添加(「投射」という)することができる。CaO系媒溶剤の添加時期は脱珪処理を開始してからでもよいが、脱珪処理中に脱珪スラグ6を十分に滓化(slag formation)させるためには、CaO系媒溶剤を事前に炉内に投入しておいてもよい。但し、精錬パターン1では、前チャージの脱燐スラグ7を炉内に残留させるので、脱珪処理工程に供する溶銑5の珪素濃度が低い場合には、CaO系媒溶剤の添加が必要でないことがある。
脱珪処理のための酸素源としては、上吹きランス2からの酸素ガス9のみでもよく、また、酸素ガス9に酸化鉄(図示せず)を併用してもよい。短時間で行われる脱珪処理中に目標とする塩基度の脱珪スラグ6を形成させるためには、CaO系媒溶剤の滓化を促進させる機能を有する酸化鉄を使用することが効果的である。一方、本発明の目的の1つである多量の冷鉄源8を溶解させる観点からは、昇熱時及び分解時に吸熱する酸化鉄を用いることは好ましくない。従って、この観点からは、酸素源として酸化鉄を用いることは可能な限り避けることが好ましい。なお、精錬容器として転炉型精錬炉1を使用するので、強攪拌が可能であり、酸素源として酸素ガス9のみを用いて脱珪処理を行っても、十分に目標とする塩基度の脱珪スラグ6を形成させることができる。
脱珪反応が進行して溶銑中の珪素含有量が0.20質量%以下になると、次第に脱炭反応も活性化してCOガスの生成速度が増大するようになる。この場合に、脱珪スラグ6の性状が適正なものであれば、脱珪スラグ中に大量の小さなCOガス気泡が含まれるようになり、脱珪スラグ6は、その見掛けの体積が気泡を含まない場合の数倍以上にも増大する、所謂、フォーミング状態となる。脱珪処理後の中間排滓工程では、炉口から溶銑5Aが流出しない範囲で炉体を傾動させて、炉口からの溢流により脱珪スラグ6を排出するので、傾動した炉体の炉口からのスラグ浴面の高さが高いほど効率的にスラグを排出することができる。従って、脱珪処理においては炉口からスラグが噴出しない範囲で脱珪スラグ6のフォーミングを促進させ、中間排滓中もフォーミングを維持できるように、スラグ中の酸化鉄濃度などを調整することが好ましい。
この脱珪処理工程のあとに、中間排滓工程を設け、図2−(C)に示すように、転炉型精錬炉1の出湯口4(tap hole)の設置された側が上方に位置するように、転炉型精錬炉1を傾転させ、脱珪処理で発生した、SiOを大量に含有する低塩基度の脱珪スラグ6を転炉型精錬炉1の炉口からスラグ収容容器(図示せず)に排出する。
中間排滓工程における排滓性の観点から、排出される脱珪スラグ6の塩基度は1.5以下とし、且つ、脱珪スラグ6の温度を1280℃以上とすることが好ましい。これは、脱珪スラグ6の流動性を確保して、良好な排滓性及び排滓率を得るためである。排滓率は、下記の(2)式で求めることができる。
排滓率(質量%)=(排出スラグ質量)×100/[(脱珪処理工程で生成したスラグ質量)+(前チャージの脱燐スラグの残留質量)]…(2)
CaO系媒溶剤の添加量を削減する観点からは、脱珪スラグ6の塩基度を1.2以下とすることが好適である。
脱珪スラグ6の塩基度が1.5を超える場合、固相スラグが生じることでスラグ流動性が低くなる。また、脱珪スラグ6の温度が1280℃を下回っても、同様に固相スラグの増加によりスラグの流動性が低下するほか、液相スラグ自体の粘性上昇が生じる。このため、脱珪スラグ6の流動性は低くなり、中間排滓を効率的に行うことが困難になる。使用する溶銑5の初期条件によっては、例えば脱珪処理が進んで溶銑中珪素濃度が0.05質量%を下回るような段階であっても、脱珪スラグ6の温度が1280℃を下回る場合が発生する。この場合には、脱珪スラグ6の流動性の低下を防止するために、酸素ガスを更に供給し、脱炭反応を利用してスラグ温度を高めてから中間排滓工程を行う必要がある。
中間排滓のための更に好ましい条件は、脱珪スラグ6の温度が1320℃以上である。一方、脱珪スラグ6の温度が高すぎると、脱珪スラグ6の塩基度を0.8以上に調整しても復燐が起きることがあるので、脱珪処理終了後のスラグ温度は1380℃以下であることが好ましい。
中間排滓工程における脱珪スラグ6の排滓率は、以下の理由により30質量%以上を確保することが好ましい。すなわち、その後の脱燐処理工程においては、脱燐反応を進める上で脱燐スラグ7の塩基度を1.5〜3.5に調整する必要があり、排滓率が30質量%を下回ると、脱燐処理工程で添加すべきCaO系媒溶剤の量が多くなってしまう。また、このことにより、脱燐処理における脱燐スラグ7の量が多くなり、脱燐処理中のスラグフォーミングが抑制できず、転炉型精錬炉1の炉口からの脱燐スラグ7の漏洩による操業支障が生じるリスクも高まる。
一方、生成した脱珪スラグ6の80質量%を超えて排出してしまうと、次工程の脱燐処理工程において新たに添加するCaO系媒溶剤の滓化が損なわれ、脱燐反応が阻害される虞があるので、排滓率は80質量%以下とすることが好ましい。
中間排滓工程後に炉内に残留した脱珪スラグ6の質量は、脱珪スラグ6の全質量から、排出した脱珪スラグ6の質量を差し引いて算出する。脱珪スラグ6の全質量は、上記の(2)式の分母、つまり、[(脱珪処理工程で生成したスラグ質量)+(前チャージの脱燐スラグの残留質量)]で求める。ここで、前チャージの脱燐スラグの残留質量は、前チャージの脱燐スラグ7を炉外に排出しなかった場合には、前チャージの中間排滓工程直後に炉内に残留した脱珪スラグ6の質量の算出値(推定値)と、前チャージの脱燐処理工程で添加した媒溶剤や生成した燐酸などの酸化物に起因する脱燐スラグ7の増加量とを合計した値である。一方、前チャージの脱燐スラグ7を炉外に排出した場合には、前チャージの脱燐スラグの残留質量を0(ゼロ)とするか、または、経験的に把握される、炉内への脱燐スラグ付着量の標準的な値としてもよい。
排出した脱珪スラグ6の質量は、スラグ収容容器(図示せず)に排出された脱珪スラグ6などの秤量値、或いは、スラグ収容容器に排出された脱珪スラグ6のフォーミングが鎮静化(subside)した後のスラグ収容容器内でのスラグ表面位置の目視観察などから求める。
ここで、中間排滓では、大きな排滓速度を得ようとしたり、脱珪スラグ6のフォーミングが不十分な場合に炉内の残滓量を低減しようとしたりして、転炉型精錬炉1の傾動角度を大きくすると、脱珪スラグ6とともに溶銑5Aが炉口から或る程度排出される。この場合、溶銑5Aの排出量は必ずしも一定ではない。しかし、多くの場合に、脱珪スラグ中に混入する溶銑5Aの質量比率は、例えば5質量%以下といった範囲で比較的安定したレベルである。このため、排出した脱珪スラグ中に混入する溶銑5Aの質量は、脱珪スラグ6のサンプルから求めた銑鉄の質量比率などを代表値として用い、排出物の秤量値に基づいて算出しても、多くの場合には問題がない。従って、スラグ収容容器への排出物の秤量値から、排出した脱珪スラグ中に混入する溶銑5Aの質量を差し引くことにより、排出した脱珪スラグ6の質量を求めることができる。
算出した炉内残留脱珪スラグ6の質量に基づき、炉内に残留する溶銑5Aの質量に対する脱珪スラグ残留量の比率(kg/溶銑−トン)を求めることができる。中間排滓工程直後の炉内での脱珪スラグ6の残留量は、25kg/溶銑−トン以下であることが好ましい。
脱珪スラグ6の残留量が25kg/溶銑−トン以下であれば、引き続いて行う脱燐処理工程において、CaO系媒溶剤の使用量が過大になることなく、効率良く脱燐処理を実施することが可能となる。また、脱燐処理後の脱燐スラグ量も適正範囲内となることから、脱燐スラグ7を排出しないで炉内に残留させたまま次チャージの溶銑5の予備処理を行う際に、スラグ量が過大となって操業阻害を招くリスクを低減することができる。従って、炉内残留脱珪スラグ6が25kg/溶銑−トン以下になるように、中間排滓を行うことが好ましい。
尚、脱珪スラグ6の排滓率(質量%)と脱珪スラグ6の溶銑5Aに対する残留量(kg/溶銑−トン)とは、1対1に対応しない。これは、脱珪スラグ6の質量がチャージによって変化することによる。
中間排滓工程で炉外に排出する脱珪スラグ6は流動性が高いことから、脱珪スラグ中に存在した粒鉄は溶銑中に沈降しやすい。従って、脱珪スラグ6と脱燐処理後の脱燐スラグ7とを比較すると、脱珪スラグ6では、スラグ中に混入する金属鉄分が1/10程度以下に低減する。これに対して、脱燐スラグ中に混入する金属鉄分は脱燐スラグ7と分離することが困難であり、その大部分は鉄分として回収できずに脱燐スラグ7として処理される。このために、脱燐処理後の脱燐スラグ7を炉外に排出しないで、脱珪処理後に脱珪スラグ6のみを炉外に排出する精錬パターン1の精錬方法では、鉄歩留りの大幅な向上が可能となる。
中間排滓工程後は、転炉型精錬炉内に残留させた溶銑5AにCaO系媒溶剤及び酸素源を供給して、図2−(D)に示すように、溶銑5Aを脱燐処理する(脱燐処理工程)。脱燐処理工程において、炉内の脱燐スラグ7の塩基度は1.5〜3.5の範囲、より好ましくは1.8〜3.0の範囲に調整する。この脱燐処理工程において使用する酸素源は、脱珪処理と同様に、上吹きランス2からの酸素ガス9を主体とするが、一部酸化鉄を使用しても構わない。
脱燐処理で使用するCaO系媒溶剤としては、生石灰や炭酸カルシウムなどが使用できる。但し、これらに限定されず、鉄及び酸化鉄以外の成分の合計100質量部に対してCaOを50質量部以上含有し、必要に応じてフッ素やアルミナなどの他の成分を含有するものも、脱燐処理時のCaO系媒溶剤として使用することができる。このCaO系媒溶剤の添加方法としては、粒状及び塊状のものは炉上のホッパーから投入し、粉状のものは上吹きランス2を介するなどして投射することができる。
溶銑中の燐は供給される酸素源中の酸素に酸化されて燐酸化物(P)となり、この燐酸化物が、CaO系媒溶剤の滓化によって形成され脱燐精錬剤として機能する脱燐スラグ7に、3CaO・Pなる安定形態の化合物として取り込まれ、溶銑5Aの脱燐反応が進行する。脱燐処理時間が所定の時間経過したなら、或いは、所定量のCaO系媒溶剤及び酸素源を供給し終えたなら、また、或いは、脱燐反応が進行して溶銑5Aの燐濃度が所定の値に低下したなら、脱燐処理を終了する。尚、図2において、脱燐処理後の溶銑は、脱燐処理前の溶銑5Aと区別するために、溶銑5Bと表示している。
CaO系媒溶剤の使用量は、中間排滓工程後に炉内に残留した脱珪スラグ6の残留量や、脱燐処理後の溶銑5Bの目標とする燐含有量、精錬温度などの条件に応じて調整することが望ましい。例えば、脱珪スラグ6の残留量が15kg/溶銑−トン以下の場合は、脱珪スラグ6の残留量が少なく、比較的少ないCaO系媒溶剤使用量でも、0.03質量%以下の低い溶銑中燐含有量まで効率的に脱燐処理を行うことができる。一方、脱珪スラグ6の残留量が25kg/溶銑−トンを超える場合は、溶銑5Bの目標とする燐含有量(例えば、0.03質量%)まで脱燐するためには大量のCaO系媒溶剤を使用することが必要になり、脱燐スラグ7の量も膨大なものになる。また、脱珪スラグ6の残留量が15kg/溶銑−トンと25kg/溶銑−トンとの間は、目標とする溶銑5Bの燐含有量に応じてCaO系媒溶剤の使用量を調節することなどにより、比較的効率的に脱燐処理を行うことができるが、これに伴って脱燐スラグ7の量も増減する。
脱燐処理終了後、図2−(E)に示すように、転炉型精錬炉1を出湯口4が設置された側に傾転させて転炉型精錬炉内の溶銑5Bを、出湯口4を介して溶銑保持容器(図示せず)に出湯する(出湯工程)。図2−(E)に示す符号5Bは、脱燐処理後の溶銑である。出湯口4から流出する溶銑5Bに脱燐スラグ7が一部混入して流出することが確認された時点で、転炉型精錬炉1をその炉口が上方になるように傾動させ、出湯を終了する。
出湯終了後の転炉型精錬炉1には、脱燐スラグ7が残留し、また、図示はしないが少量の溶銑5Bも残留する。出湯工程では、出湯工程の末期に、出湯口4から流出する溶銑5Bに混入して脱燐スラグ7の一部が流出するが、この脱燐スラグ7の流出は不可避的なものであって意図的に排出したものではないので、本発明では、この状態を脱燐スラグ7の全量が炉内に残留したと定義する。
この出湯工程後、脱燐スラグ7を転炉型精錬炉1から排滓しないで、図2−(A)に示す溶銑装入工程に戻り、転炉型精錬炉1に装入した次チャージの溶銑5の脱珪処理及び脱燐処理を上記に沿って実施する。炉内に残留させた脱燐スラグ7は、脱炭精錬で生成する転炉スラグに比べて低温であり、酸化鉄濃度も低いことから、溶銑5との反応性は比較的低い。従って、冷却材の投入による脱燐スラグ7の固化処置を行わずに、脱燐スラグ7の上方から溶銑5を装入しても、操業上問題となることはない。
但し、図2−(F)に示すように、転炉型精錬炉1を直立(turn upright)させた状態で、炉上のホッパーから転炉型精錬炉1に小サイズの冷鉄源を投入する、或いは、石灰石などの造滓材を投入するなどした後、転炉型精錬炉1を前後に数回往復傾動させ、炉内に残留する脱燐スラグ7を固化(脱燐スラグ固化工程)させても構わない。
このようにして精錬パターン1を実施する。精錬パターン1では、脱燐スラグ7の全量を炉内に残留させて次チャージの脱珪処理を開始するので、前チャージの脱燐スラグ7の有する熱量及び鉄分を次チャージの脱珪処理において回収することができるとともに、前チャージの脱燐スラグ中のCaO分を次チャージの脱珪処理におけるCaO源として活用することができる。これにより、次チャージの脱珪処理での再利用するスラグ以外の新たなCaO系媒溶剤の使用量を削減することができる。
一方、精錬パターン2は、図2−(E)に示す出湯工程で炉口を上に向けるように傾動させて出湯を終了した後、転炉型精錬炉1を更に傾転させ、炉口を真下に向けるようにして脱燐スラグ7を炉口からスラグ収容容器(図示せず)に排出する(排滓工程)。この排滓工程では、スラグ収容容器として、中間排滓工程で排出した脱珪スラグ6を収容していないスラグ収容容器を使用することが望ましい。更に、スラグ収容容器からは別々のヤード(slag cooling yard)やドライピット(dry slag pit)に排出するなどして、脱珪スラグ6と脱燐スラグ7とを分別して管理することが望ましい。
精錬パターン2では、脱燐スラグ7を炉外に排滓する以外は、精錬パターン1に準じて実施し、出湯工程後に脱燐スラグ7を炉外に排滓した後、次チャージの溶銑5を転炉型精錬炉内に装入する。従って、精錬パターン2が適用されたチャージの次チャージでは、排出可能な脱燐スラグ7の全量が炉内から排出された状態の転炉型精錬炉1への溶銑5の装入が行われる。転炉型精錬炉1の内壁には脱燐スラグ7が付着して残留するが、排出可能な脱燐スラグ7の全量が排出されていることから、脱燐スラグ7の付着量はわずかであり、脱燐スラグ7からの復燐は考慮する必要がない。
また、精錬パターン2が適用されたチャージに続いて行われる次チャージの脱珪処理工程では、前チャージの脱燐スラグ7が残留していないので、前チャージの脱燐スラグ7に代えて他のCaO系媒溶剤を用いて、上記の精錬パターン1の脱珪処理工程と同様に、脱珪スラグ6の組成調整を実施する。この際に用いるCaO系媒溶剤は、特に限定しないが、生石灰や石灰石などの一般的なCaO系媒溶剤の他、予備処理スラグ(脱燐スラグ)、転炉スラグ、取鍋スラグ、精錬パターン2の排滓工程で炉外に排滓された脱燐スラグ7などの製鋼スラグを再利用してもよい。
これらの製鋼スラグのうちで、特に、精錬パターン2の排滓工程で炉外に排出された脱燐スラグ7は、比較的低塩基度であって短時間の脱珪処理でも滓化し易いので、粉砕しないで比較的大塊のままで利用することができ、且つ、脱燐スラグ中に多く含有される銑鉄を溶銑5に回収することもできるので、脱珪処理で使用するCaO系媒溶剤として好ましい。その場合に、脱燐スラグ7の処理費用を節約するために、脱燐スラグ7の粉砕や地金分の選別は行わず、スラグ収容容器から直接、或いは、ドライピットなどの置き場を介して、ホイールローダーなどの重機で取り分けて鉄スクラップ装入用シュートに投入し、鉄スクラップとともに転炉型精錬炉1に装入することが好ましい。この際、脱燐スラグ7やこれに混入している比較的大塊の地金は、できるだけ高温のまま取り扱って、転炉型精錬炉1に装入することが、放熱ロスを抑制する観点から好ましい。すなわち、精錬パターン2の排滓工程で炉外に排出された脱燐スラグ7を、粉砕せずに高温のまま脱珪処理で使用するCaO系媒溶剤として用いることが好ましい。
また、精錬パターン2が適用されたチャージの次チャージでは、溶銑装入時に炉内に残留するスラグ量が少ないので、溶銑5の珪素含有量が例えば0.35質量%以下と少ない場合には、図2−(C)に示す中間排滓工程を行わず、それ以外は、精錬パターン1に準じて実施することもできる。この場合には中間排滓工程を行わないので、中間排滓工程の時間分だけ操業時間を短縮することができる。また、適量の脱珪スラグ6を炉内に残留させたまま次工程の脱燐処理工程を行うので、炉内のスラグ量をほぼ正確に把握することができるとともに、CaO系媒溶剤の滓化が促進され、過剰なCaO系媒溶剤を添加することなく脱燐に必要なスラグ量を確保することができる。更に、脱燐スラグ7の全量を炉内に残留させて次チャージの脱珪処理を開始するので、次チャージでは、当該チャージで中間排滓工程を含む上記の精錬パターン1を実施した場合と同一の効果を得ることができる。
また、当該チャージで使用する溶銑5の珪素含有量が0.70質量%超えの場合には、脱珪処理後の溶銑5Aの珪素濃度を十分に低下できない場合があり、脱珪スラグ6を中間排滓しても脱燐処理工程でのスラグ量が多くなり過ぎて、脱燐スラグ7の全量を炉内に残したまま次チャージの脱珪処理工程を行うことができなくなる場合がある。つまり、精錬パターン1を選択することができなくなる場合があるので、珪素含有量が0.70質量%以下の溶銑5を対象として本発明を適用することが好ましい。
また、前チャージの精錬パターンに拘わらず、脱珪処理前の溶銑5の珪素含有量が0.70質量%超えの場合には、図2−(B)に示す脱珪処理工程後、脱燐処理を行うことなく、脱珪処理された溶銑5Aを転炉型精錬炉1から出湯し、この溶銑5Aを製鋼用純酸素転炉で行う脱炭精錬に供する場合もある。脱珪スラグ6の生成量が過大で、溶銑5Aの転炉型精錬炉1からの出湯に支障が生じる場合には、溶銑5Aの出湯に先立って、転炉型精錬炉1を出湯の際とは反対側に傾動させ、炉口から脱珪スラグ6を出湯に支障がない程度に部分的に排出し、その後、溶銑5Aを出湯するようにしてもよい。その際には、溶銑5Aの出湯後、転炉型精錬炉1の底部が上方になるように転炉型精錬炉1を反対方向に傾転させ、脱珪スラグ6を炉口から排出する。
尚、脱燐処理後の脱燐スラグ7は流動性が低いので、炉内の脱燐スラグ7の残留量を制御するように部分的に排出することは困難である。また、部分的に排出することを敢て行うとしても作業時間の大幅な延長を招くことになる。したがって、通常は、炉内の付着分を除いてほぼ全量を排出する方法か、或いは、排滓を行わずに炉内に残留させたまま次チャージに持ち越す方法のどちらかから選択して実施する。
本発明では、精錬パターン1と精錬パターン2との選択は、以下のようにして行う。
(A):当該チャージの脱燐処理後の溶銑5Bの燐含有量分析値が0.030質量%から0.060質量%の範囲内の所定値Z以下の場合に、精錬パターン1の精錬方法で予備処理を行う。
(B):当該チャージの脱燐処理後の溶銑5Bの燐含有量分析値が上記所定値Z超えの場合には、精錬パターン2の精錬方法で予備処理を行う。
所定値Zは、処理条件に応じて、0.030質量%から0.060質量%の溶銑5Bの燐含有量分析値の範囲内で設定した或る値である。所定値Zは、使用する転炉型精錬炉1の設備や当該チャージの脱燐処理及び次チャージの脱珪処理の精錬条件、次チャージの溶銑の処理前の成分や温度の条件や目標とする脱燐処理後の溶銑5Bの燐含有量などの条件に応じて、次チャージの予備処理において、スラグ噴出や脱燐不足などの操業阻害を招いたり、脱珪処理後の中間排滓における作業時間が過大になったりしない範囲で、できるだけ脱燐スラグ7を炉内に残留させたまま次チャージで利用する割合が低下しないように、実績に基づいて適宜定めればよい。
溶銑の脱燐処理は、過去の脱燐処理の実績などに基づいて、溶銑中の燐含有量を所定の目標範囲とするように、酸素源及びCaO系媒溶剤の使用量などの操業条件を調節して実施される。所定値Zには、当該チャージの溶銑中の燐含有量の目標範囲に対して、ある程度高い値が設定される。したがって、溶銑中の燐含有量が所定値Z超えであることは、想定した通りに脱燐処理の操業条件を制御出来ていない場合に対応する。これには、中間排滓後のスラグの残留量が想定したよりも多くて、脱燐スラグの塩基度が想定したよりも低かった場合や、スラグ量が多過ぎたり、スラグの塩基度が低かったりしたために脱燐処理中にスラグのフォーミングが過剰となって、吹錬を中断するなどして酸素源を予定通りに供給できなかった場合などが含まれる。これらの場合に脱燐処理後のスラグを排滓せずに次チャージの溶銑を装入して脱珪処理を行うと、スラグから溶銑への復燐が生じたり、スラグの噴出を避けるために、吹錬の中断などによって処理時間の延長を招いたりするおそれがある。
次チャージでこれらの問題が発生するリスクは、当該チャージで所定値Zを低く設定するほど相対的に低減され、所定値Zがある程度よりも高くなると急激に増大する傾向にある。このため、所定値Zは0.060質量%以下であることが好ましい。一方、脱燐スラグを排滓することなく次チャージの脱珪処理で利用できるチャージの比率は、所定値Zを低く設定するほど相対的に低下する。このため、所定値Zは0.030質量%以上とすることが好ましい。
また、炉形状や、次チャージの脱珪処理での酸素供給速度などの操業条件、次チャージの溶銑の処理前の珪素含有量や温度の条件などによって、次チャージの脱珪処理がスラグの噴出の観点から不利な条件で行われる場合には、当該チャージにおける所定値Zは低めに設定して、次チャージでのスラグの噴出によるリスクを低減することが好ましい。また、次チャージにおいて目標とする脱燐処理後の溶銑の燐含有量が低い場合にも、当該チャージにおける所定値Zは低めに設定しておくことが好ましい。このように、所定値Zはチャージ毎に上記諸条件を考慮して決定することが好ましいが、チャージ毎の変動が少ない場合は、標準的な固定値を用いても良い。
精錬パターン1及び精錬パターン2は、図2−(E)に示す出湯工程までは同一であり、出湯工程後に、脱燐スラグ7を排滓しないで次チャージの溶銑5を装入するか、脱燐スラグ7を排滓した後に次チャージの溶銑5を装入するかで異なる。従って、出湯工程の完了までに、脱燐処理後の溶銑5Bの燐含有量分析値が判明すれば、本発明を問題なく適用することができる。
精錬パターン2は、脱珪スラグ6の中間排滓が円滑に行われなかったなどで、脱燐反応が順調に行われなかった場合に適用される。つまり、このような場合の脱燐処理で生成する脱燐スラグ7は、塩基度が低い、または、スラグ量が過大で反応効率が低いなどの問題を有している。このような脱燐スラグ7を次チャージで利用すると、スラグ過多に起因するスラグ噴出を起こしたり、CaO系媒溶剤の使用量の増大をもたらしたりして、操業に悪影響を及ぼす可能性が高いからである。脱燐反応が順調でない場合は、溶銑5Bの燐含有量が多くなるので、適正なZを設定することで、精錬パターン2を選択して次チャージにおける上記悪影響を回避することができる。
また、精錬パターン1の予備処理を多数回繰り返すと、炉内スラグ量の推定値には次第に誤差が蓄積して実態との乖離が大きくなることが考えられる。中間排滓でのスラグ排出量は、操業条件の影響を受けて減少し易く、また、実際よりも多く評価し易いので、実際の炉内スラグ量は推定値よりも多くなり易い傾向にある。したがって、両者の乖離が大きくなり過ぎると、脱燐スラグの塩基度が低下するなどして脱燐処理に不利な条件となって、溶銑5Bの燐含有量が増大し、所定値Zよりも高くなる。このような場合には、精錬パターン2を適用することによって、炉内スラグ量の推定値の誤差を小さくして、再び適切な精錬制御を行うことが可能となる。
また更に、脱燐処理後の溶銑5Bの燐含有量分析値が所定値Z以下の場合であっても、当該チャージの直後に、出湯口4などの内張り耐火物の補修などのために炉内に脱燐スラグ7を残留できない場合や、定期修理のような休止期間が予定されている場合には、炉内に脱燐スラグ7を残留させないようにするために、精錬パターン2を適用する。
以上説明したように、本発明によれば、1つの転炉型精錬炉1を用いて、脱珪処理と脱燐処理とを連続して行う溶銑5の予備処理方法において、脱燐処理工程後の溶銑5Bの燐含有量分析値に基づいて、炉内の脱燐スラグ7を炉外に排出するか否かを決定する。つまり、燐処理工程後の溶銑5Bの燐含有量分析値に基づいて精錬パターン1、2のどちらの精錬パターンとするかを決定するので、複数のチャージに亘って連続して行われる溶銑5の予備処理操業中に炉内に残留するスラグの質量や組成の状況を正確に把握することが困難であっても、溶銑5には、状況に応じた最適な予備処理方法が施され、溶銑5を効率良く脱珪処理し且つ効率良く脱燐処理することが実現される。
図1に示す転炉型精錬炉を用いて、所定値Zを0.040質量%として本発明を適用して行う溶銑予備処理(本発明例1)、所定値Zを0.050質量%として本発明を適用して行う溶銑予備処理(本発明例2)、精錬パターン1だけを適用して行う溶銑予備処理(比較例1)、精錬パターン2だけを適用して行う溶銑予備処理(比較例2)を、それぞれ1ヶ月以上に亘って実施した。予備処理を施した後の溶銑は、別の転炉型精錬炉、つまり、製鋼用純酸素転炉(以下、単に「転炉」と記す)に装入して脱炭精錬を行い、溶鋼を溶製した。予備処理から脱炭精錬までの結果をそれぞれ比較した。
本発明例1、2及び比較例1、2とも、脱珪処理前の溶銑の珪素含有量は0.20〜0.70質量%、溶銑の燐含有量は0.100〜0.120質量%、溶銑温度は1260〜1350℃の範囲であり、溶銑中珪素含有量、溶銑中燐含有量及び溶銑温度の各度数分布には、本発明例1、2及び比較例1、2の間で有意な差はなかった。
溶銑装入前に予備処理用の転炉型精錬炉に装入する鉄スクラップの量は、各試験期間での実績値に基づいて、脱珪処理終了時点の溶銑温度が1300〜1350℃の範囲内となるように、50〜100kg/溶銑−トンの範囲で調整した。この予備処理後の溶銑を脱炭精錬する際には、脱炭精錬用の転炉には鉄スクラップの装入は行わなかった。
本発明例1、2及び比較例1、2において、精錬パターン1及び精錬パターン2ともに、脱珪処理後の中間排滓時の排滓性を向上させるべく、脱珪処理中に炉内の脱珪スラグのフォーミングを促進させるように送酸条件などの調整を行った。但し、炉内脱珪スラグの組成や量の制御が不十分で、フォーミングが過剰となって炉口から脱珪スラグが噴出した場合には、一旦精錬を中断し、鎮静材を投入してフォーミングを鎮静化した後に精錬を再開した。このような場合には、処理時間の延長を招いた。
脱燐処理工程においては、いずれの場合も脱燐処理後の溶銑の燐含有量の目標値を0.030質量%以下とし、CaO系媒溶剤を供給して塩基度を1.5〜3.0の範囲で調整しつつ脱燐処理を行った。CaO系媒溶剤としては生石灰(CaO)の他、本発明例1、2では精錬パターン2の場合に排出された脱燐スラグも使用した。排出された脱燐スラグは、発生量と消費量とのバランスを勘案して2〜5トン/チャージを、精錬パターン2を適用したチャージの次チャージやその他のチャージで、鉄スクラップとともに鉄スクラップ装入用シュートを介して転炉型精錬炉に装入し、脱珪処理でのCaO系媒溶剤として使用した。
脱炭精錬に供する溶銑は、極力、脱珪及び脱燐の予備処理を行ったが、後工程の連続鋳造工程での複数チャージの連続した鋳造を継続するために、脱炭精錬用の転炉への溶銑の供給が間に合わない場合には、予備処理を実施しない溶銑、或いは、予備処理を途中で終了した溶銑を脱炭精錬用の転炉に装入して脱炭精錬を行った。予備処理を実施しない溶銑を脱炭精錬用の転炉に装入する場合には、予備処理用の転炉型精錬炉に装入するのに相当する量の鉄スクラップを、溶銑装入前に脱炭精錬用の転炉に装入した。また、脱炭精錬では、脱炭精錬用の転炉に装入した溶銑の燐濃度などに応じて、脱燐精錬剤である生石灰などの使用量を調整した。脱炭精錬は平均約40チャージ/日の頻度で実施し、各試験期間によって脱炭精錬頻度に有意な差はなかった。
本発明例1においては、所定値Zを0.040質量%として、また、本発明例2においては所定値Zを0.050質量%として、当該チャージの脱燐処理後の溶銑の燐含有量分析値に応じて、前記の精錬パターン1または精錬パターン2を選択し、当該チャージの溶銑の予備処理を行った後、次チャージの溶銑を装入して、引き続き溶銑の予備処理を行った。中間排滓工程直後の炉内での脱珪スラグ残留量(Q)は、前チャージの実績から計算される脱珪処理前の炉内での脱燐スラグの残留量と、当該チャージの脱珪処理の実績から計算される脱珪処理でのスラグ増加量との合計値(Q1)から、炉下のスラグ収容容器の台車に設置した秤量装置による排出物質量の測定値(Q2)から銑鉄の含有量を3質量%と仮定して推定される脱珪スラグの排出量(0.97×Q2)を減算することによって算出(算出式;Q=Q1−0.97×Q2)した。
表1に、予備処理用の転炉型精錬炉及び脱炭精錬用の転炉への鉄スクラップの合計装入量(kg/溶銑−トン)、予備処理用の転炉型精錬炉及び脱炭精錬用の転炉での生石灰の合計使用量(kg/溶銑−トン)、予備処理用の転炉型精錬炉及び脱炭精錬用の転炉での通算の鉄歩留り(質量%)、予備処理用の転炉型精錬炉におけるスラグ噴出による精錬中断が発生したチャージの比率、脱珪処理後に中間排滓を行った場合に要した排滓時間、脱珪及び/または脱燐の予備処理の実施比率(実施比率(%)=(予備処理チャージ数)×100/(脱炭精錬チャージ数))、及び脱燐処理後の溶銑の燐含有量分析値が0.030質量%以下となったチャージ数の脱炭精錬チャージ数に対する比率について、それぞれの試験期間における結果を示す。表1に示す値はそれぞれの平均値である。また、本発明例における精錬パターン2の適用チャージ比率(精錬パターン2の適用チャージ比率(%)=(精錬パターン2の適用チャージ数)×100/(精錬パターン1の適用チャージ数+精錬パターン2の適用チャージ数))は、本発明例1の場合で7.5%、本発明例2の場合で4.0%であった。
表1に示すように、比較例2では、鉄スクラップ装入量が少なく、生石灰の合計使用量が多く、且つ、鉄歩留りが低く、予備処理及び脱炭精錬を効率的に行うことはできなかった。
比較例1では、比較例2に比べて、鉄スクラップ装入量が増加するとともに鉄歩留りが向上しており、脱燐スラグを高温のまま次チャージに再利用することによる、熱量のメリット及び脱燐スラグ中の鉄分の回収メリットが明らかであった。しかし、生石灰の合計使用量は、脱珪処理において前チャージの脱燐スラグを石灰源として利用できるにも拘わらず比較例2と同等であり、生石灰使用量の削減は得られなかった。これは、予備処理中のスラグ噴出による精錬の中断や中間排滓時の排滓時間の延長によって予備処理の実施比率が低下したことや、脱燐処理後の溶銑の燐含有量を十分に低減できなかったチャージの比率が増加したことによって、脱炭精錬での生石灰使用量の増大と相殺されたことによる。
これに対して本発明例1、2においては、比較例1のような予備処理実施比率の低下や脱燐処理後の溶銑の燐含有量の上昇を招くことはなく、脱燐スラグを高温のまま次チャージに再利用することが可能であった。これにより、本発明例1、2では、比較例1及び比較例2に比較して、生石灰の合計使用量が大幅に低減可能であり、溶銑に対して効率的に予備処理を行うことが確認できた。
本発明例1と本発明例2を比較すると、本発明例2では、所定値Zを本発明例1の0.040質量%から0.050質量%に増大させたことにより、精錬パターン2の適用比率は7.5%から4.0%に低下したが、スラグ噴出による精錬中断が発生したチャージの比率は3%から5%に増大し、脱燐処理後の溶銑の燐含有量分析値が0.030質量%以下となったチャージ数の脱炭精錬チャージ数に対する比率は87%から82%に低下し、予備処理の実施比率は92%から90%に低下した。したがって、脱燐スラグを排滓することなく次チャージの脱珪処理で利用したチャージの比率は増大したものの、表1に示すように、更に通算の鉄歩留りを向上したりや生石灰使用量を低減したりする期待効果は得られなかった。これは、上記の他の評価指標の変化の影響によって、これらの期待効果が相殺されたことによる。
1 転炉型精錬炉
2 上吹きランス
3 底吹き羽口
4 出湯口
5 溶銑
6 脱珪スラグ
7 脱燐スラグ
8 冷鉄源
9 酸素ガス
10 底吹きガス
11 装入鍋

Claims (4)

  1. 1つの転炉型精錬炉を用い、高炉から出銑された溶銑を前記転炉型精錬炉に装入し、前記溶銑を脱珪処理する脱珪処理工程と、脱珪処理した溶銑を前記精錬炉内に残留させた状態で前記脱珪処理工程で生成した脱珪スラグの少なくとも一部を前記精錬炉から排出する中間排滓工程と、該中間排滓工程で前記精錬炉内に残留させた溶銑を脱燐処理する脱燐処理工程と、脱燐処理された溶銑を前記精錬炉から出湯する出湯工程とを、この順に行って溶銑を予備処理するにあたり、
    前記出湯工程後、前記脱燐処理工程で生成した前記精錬炉内の脱燐スラグを炉外に排出するか否かを、前記脱燐スラグが生成された前記脱燐処理工程後の溶銑の燐含有量分析値に基づいて決定し、脱燐スラグを排出すると決定した場合には脱燐スラグを前記精錬炉から排出し、脱燐スラグを排出しないと決定した場合には脱燐スラグを前記精錬炉から排出せずに、次いで、次チャージの溶銑を前記精錬炉内に装入し、前記予備処理を行うことを特徴とする、溶銑の予備処理方法。
  2. 前記脱燐処理後の溶銑の燐含有量分析値が0.030質量%から0.060質量%の範囲内の或る所定値Z以下の場合には、前記脱燐スラグを前記精錬炉から排出せず、前記脱燐処理後の溶銑の燐含有量分析値が前記所定値Zを超える場合には、前記脱燐スラグを前記精錬炉から排出することを特徴とする、請求項1に記載の溶銑の予備処理方法。
  3. 前記中間排滓工程直後の前記精錬炉内における前記脱珪スラグの残留量が25kg/溶銑−トン以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の溶銑の予備処理方法。
  4. 前記脱珪処理工程前の溶銑の珪素含有量が0.70質量%以下であることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の溶銑の予備処理方法。
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