JP2005015889A - 転炉内スラグの流出防止方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】脱燐処理した溶銑を転炉で酸素吹錬する際に、該酸素吹錬中に炉内にMn鉱石を添加すると共に、酸素吹錬の末期又は終了後に、炉内スラグのT.Fe濃度及びMnO濃度に応じ、T.FeとMnOとの合計値が20mass%以下の時には(1)式を満たす範囲内でCaO又はCaCO3 を主成分とする精錬剤を炉内に添加し、T.FeとMnOとの合計値が20mass%を越える時には(2)式を満たす範囲内で前記精錬剤を添加し、炉内スラグを固化させて流出を抑制する。(1)式、(2)式におけるWcは精錬剤の添加量、Wsは炉内の推定スラグ量である。
Wc×100 ≧ 0.5×Ws×[T.Fe(mass%)+MnO(mass%)−10] …(1)
Wc×100 ≧ 0.2×Ws×[T.Fe(mass%)+MnO(mass%)+ 5] …(2)
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転炉から取鍋への出鋼時における転炉内スラグの取鍋への流出防止方法に関し、詳しくは、転炉内スラグの固相率を高めることによってスラグの流出を防止する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶銑を転炉内で脱炭精錬する場合には、溶銑の脱燐反応促進のために、或いは転炉での脱燐が不要な、予備脱燐処理が施された溶銑の脱炭精錬でも、転炉内に添加されるMn鉱石や鉄鉱石の脈石として持ち来されるSiO2 分に応じて、CaO系の造滓剤が添加され、塩基度(CaO/SiO2 )が2〜6程度のスラグが形成されている。スラグは、溶銑表面を覆うことにより、供給される酸素ジェットによる溶湯の飛散を低減する効果も有している。このスラグは、転炉から取鍋への出鋼時、転炉からの溶鋼流に混入して取鍋内に流出する。
【0003】
通常、溶鋼は、転炉での脱炭精錬終了後に取鍋内で金属Alやフェロシリコン等の強脱酸剤によって脱酸処理され、酸素吹錬によって増加した溶鋼中溶存酸素が低減される。特に、高い清浄性を要求される鋼種では、金属Alによる脱酸処理が行われており、溶鋼中溶存酸素は実質的にゼロまで低減される。このように、溶鋼は脱酸処理され、溶鋼中の溶存酸素量は減少するが、この溶鋼と接触している溶鋼上のスラグ中にはFeOやMnO等の低級酸化物が含まれており、FeやMnはAlやSi等の強脱酸元素よりも酸素との親和力が小さいため、脱酸処理後にスラグ中のFeOやMnOが溶鋼中のAlやSiによって還元される反応が継続して発生し、溶鋼中には反応生成物であるAl2 O3 やSiO2 が生成し、AlやSiの歩留まりが低下するのみならず、清浄性の高い溶鋼を得ることができない。又、取鍋内スラグそれ自体が、溶鋼中に巻き込まれて非金属介在物となる場合もある。
【0004】
この問題を解決すべく、従来から、転炉からのスラグの流出を防止する方法が多数提案されている。例えば、特許文献1には、酸素吹錬末期に転炉内にCaO分を添加して、炉内スラグの塩基度を高めると同時にスラグ中のT.Fe濃度を希釈し、スラグの融点を上昇せしめてスラグを固化し、出鋼時のスラグ流出を防止する方法が提案されており、又、特許文献2には、酸素吹錬末期又は酸素吹錬終了後に、転炉内スラグの固相率が30%以上となる量のMgOを転炉内に添加し、スラグを固化して出鋼時のスラグ流出を防止する方法が提案されている。尚、スラグ中のT.Feとは、スラグ中の全ての鉄酸化物の鉄分の合計値のことである。
【0005】
【特許文献1】
特開昭64−36717号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平2−111810号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで近年、溶銑予備処理技術の発展に伴い、転炉の脱炭精錬で必要とする造滓剤が減少し、転炉精錬における生成スラグ量が大幅に低減した結果、従来のフェロマンガン等の合金鉄を添加して溶鋼のMn濃度を調整する方法に代わって、転炉内にMn鉱石を添加して溶融還元する方法が一般的になってきた。炉内のスラグ量が少なくなった上に、Mn鉱石を添加しているので、スラグのMnO濃度は従来のスラグと比較すると格段に高くなる。スラグ中のMnO濃度が増加すると、スラグの融点が低下すると同時に、溶鋼温度範囲におけるスラグの粘性が低下するため、出鋼時、溶鋼流に混入するスラグ量が増大し、スラグの転炉からの流出量は従来に比べて大幅に増加する。
【0008】
前述した特許文献1では、スラグの固化率を、スラグの塩基度とスラグ中T.Fe濃度の2つの因子の関数として捉えており、スラグの固化率に及ぼすMnO濃度の影響を全く考慮していない。又、同様に、特許文献2では、スラグの固化率を、スラグの塩基度とスラグ中T.Fe濃度とスラグ中MgO濃度の3つの因子の関数として捉えており、スラグの固化率に及ぼすMnO濃度の影響を全く考慮していない。従って、特許文献1及び特許文献2の方法では、スラグ量が少なく且つMn鉱石が添加されことによってスラグ中のMnO濃度が高くなる転炉精錬においては、スラグの転炉からの流出を十分に防止することができない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、スラグ量が少なく、スラグ中のMnO濃度が高い転炉精錬の場合でも、出鋼時の転炉からのスラグの流出を十分に防止することが可能であるスラグ流出防止方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討・研究を行った。以下に、検討・研究結果を説明する。
【0011】
出鋼時のスラグの流出を防止するため、先ず、スラグ中の成分がスラグの固相率に及ぼす影響について調査した。その結果、スラグ中のT.Fe濃度の上昇によってスラグの固相率は大幅に低下し、又、T.Feと同様に、転炉内でMn鉱石を溶融還元した場合に増加するMnOもスラグの固相率を大幅に低下させることが明らかとなった。スラグ中のMnO濃度は、スラグ量を抑え且つMn鉱石を添加した転炉精錬では20〜30mass%に達することもあり、スラグを固化するための精錬剤を添加し、添加した精錬剤の冷却効果でスラグを固化させてスラグの流出を防止する上で、スラグ中のMnO濃度を考慮することが極めて重要であるとの知見が得られた。
【0012】
そこで、転炉脱炭精錬におけるスラグ組成の範囲において、T.Fe濃度及びMnO濃度を変化させ、T.Fe濃度及びMnO濃度とスラグ固相率との関係を、汎用の熱力学計算ソフトを使用して算出・検討した。計算に当たっては、スラグの温度を1650〜1700℃、スラグの塩基度(CaO/SiO2 )を2〜4、スラグ中のMgO濃度を5〜15mass%とした。計算結果を図1に示す。
【0013】
固相率に及ぼすT.Fe及びMnOの影響はほぼ同等であったため、図1に示すように、指標としてT.Fe+MnOを用いた。又、固相率にはインデックスを用い、スラグ流出の抑制効果が現れる固相率インデックスを100とした。即ち、T.Fe+MnOが10mass%以下の組成のスラグではスラグ流出は抑制されており、従って、この範囲は固相率インデックスを100とした。スラグの固相率インデックスは、T.Fe+MnOの上昇に伴って減少し即ちスラグは流出し易くなり、T.Fe+MnOが約20mass%の位置を境界として、固相率インデックスの傾斜が変化することが分かった。
【0014】
図1に示す結果に基づき、実炉試験を実施した。酸素吹錬終了後、CaOを主成分とする生石灰をスラグ固化用の精錬剤として転炉内に添加し、固化用精錬剤の添加量を変更して出鋼時のスラグの流出量を測定した。スラグ流出量の測定方法は、取鍋内に流出したスラグの厚みを測定し、スラグ厚みの測定値に基づいて流出量を換算する方法、又は、転炉内スラグに所定量のトレーサー元素を添加し、取鍋内スラグのトレーサー元素の濃度に基づいて流出量を換算する方法を用いた。
【0015】
精錬剤の添加量が同一であっても炉内のスラグ量によって固相率に及ぼす精錬剤の影響が異なるため、炉内スラグ量に対する精錬剤添加量の比(精錬剤添加量/炉内スラグ量)を操作因子として、図1に示す固相率の近似直線にのっとり近似させた結果、図2に示すように、スラグ流出抑制効果の有無の境界線が求められた。即ち、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計値が20mass%以下の場合には、下記の(1)式を満たす範囲内でスラグを固化するためのCaOを主成分とする精錬剤を転炉内に添加し、一方、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計値が20mass%を越える場合には、下記の(2)式を満たす範囲内で前記精錬剤を転炉内に添加することで、添加した精錬剤によって転炉内のスラグを固化させ、スラグの流出量を低減可能であることが分かった。但し、(1)式及び(2)式において、Wcはスラグを固化するための精錬剤の添加量(kg)、Wsは転炉内の推定スラグ量(kg)であり、図2に示す境界線が(1)式及び(2)式によって表される。
【0016】
【数1】
【0017】
【数2】
【0018】
本発明は上記検討・研究結果に基づいてなされたものであり、第1の発明に係る転炉内スラグの流出防止方法は、溶銑予備処理にて脱燐処理した溶銑を転炉に装入し、転炉内で酸素吹錬して溶銑を脱炭精錬する際に、当該酸素吹錬中に転炉内にMn鉱石を添加してMn鉱石を転炉内で還元すると共に、酸素吹錬の末期又は酸素吹錬終了後に、転炉内スラグのT.Fe濃度及びMnO濃度に応じ、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計値が20mass%以下の場合には、上記の(1)式を満たす範囲内でCaO又はCaCO3 を主成分とする精錬剤を転炉内に添加し、一方、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計値が20mass%を越える場合には、上記の(2)式を満たす範囲内でCaO又はCaCO3 を主成分とする精錬剤を転炉内に添加し、添加した精錬剤によって転炉内のスラグを固化させ、出鋼時のスラグの転炉からの流出を抑制することを特徴とするものである。
【0019】
第2の発明に係る転炉内スラグの流出防止方法は、第1の発明において、前記精錬剤として、石灰石、生石灰、ドロマイト、焼成ドロマイトのうちの1種以上を用いることを特徴とするものである。
【0020】
第3の発明に係る転炉内スラグの流出防止方法は、第1又は第2の発明において、前記転炉内スラグの量を溶鋼トン当たり20kg以下とするか、又は、造滓剤として転炉内に装入する生石灰を溶鋼トン当たり10kg以下とすることを特徴とするものである。
【0021】
第4の発明に係る転炉内スラグの流出防止方法は、第1ないし第3の発明の何れかにおいて、前記転炉内スラグの塩基度(CaO/SiO2 )を4.0以下とすることを特徴とするものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
高炉から出銑された溶銑を溶銑鍋やトーピードカー等の溶銑保持・搬送用容器で受銑し、次工程の脱炭精錬を行う転炉に搬送する。本発明では、フェロマンガン等の合金鉄の使用量を削減する目的から、転炉における溶銑の脱炭精錬時に、転炉内にMn鉱石を添加してMn鉱石を溶融還元するので、Mn鉱石の歩留まりを向上させるために、転炉におけるスラグ量を極力減少させる必要があり、そのため、この搬送途中で、溶銑に対して脱硫処理や脱燐処理等の溶銑予備処理を施す。近年、溶銑の予備処理を転炉で行う場合もあるので、搬送途中に限らず転炉で予備処理を行ってもよい。
【0024】
この場合、転炉内のスラグ量を極力少なくさせるために、溶銑の燐濃度を製品の燐濃度レベル以下、具体的には0.015mass%程度以下まで予備処理で脱燐することが好ましい。製品の燐濃度レベルまで溶銑の燐濃度を低減した場合には、転炉精錬で必要とする生石灰等の造滓剤は溶鋼トン当たり10kg(以下、「kg/t」と記す)以下となり、生成スラグ量はおよそ20kg/t以下まで低減させることができる。
【0025】
このように、転炉精錬は、生成スラグ量が少ないほど好ましく、従って、炉内のスラグ量を50kg/t以下、即ち、生石灰等の造滓剤の転炉内添加量を20kg/t以下とする、望ましくは、炉内のスラグ量を20kg/t以下、即ち、生石灰等の造滓剤の転炉内添加量を10kg/t以下とし、酸素を上吹き又は底吹きして溶銑の脱炭酸素吹錬を行う。この場合に、炉内のスラグ量を少なくする観点から、スラグの塩基度(CaO/SiO2 )は4.0以下とすることが好ましい。但し、スラグの塩基度が低すぎると、転炉炉体の塩基性耐火物を損傷するので、スラグの塩基度の下限は1.5程度とすることが好ましい。そして、この転炉精錬では、溶鋼のMn成分源としてMn鉱石を転炉内に添加する。Mn鉱石の添加量は、目的とする溶鋼のMn成分に応じて適宜の量を添加し、Mn鉱石の添加時期は酸素吹錬の初期から中期の範囲とする。Mn鉱石を酸素吹錬の中期以降に添加することは、還元時間が確保できなくなるので、好ましくない。
【0026】
このような酸素吹錬の末期、又は酸素吹錬終了後から出鋼までの期間に、スラグを固化させるための冷却用精錬剤を転炉内に添加する。取鍋へのスラグ流出量を極力少なくするために、転炉を傾動させた出鋼中に、出鋼口の鉛直上方位置に存在するスラグに向かって局所的に精錬剤を添加する、或いは吹き付けてもよい。このような局所的な添加は、スラグ量が20kg/t以下、即ち造滓剤の添加量を10kg/t以下にした操業で顕著なスラグ流出の抑制効果を発揮する。
【0027】
スラグを固化させるための精錬剤の添加量は、炉内スラグのT.Fe濃度及びMnO濃度に応じて決定する。即ち、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計値が20mass%以下の場合には、上記の(1)式を満たす範囲内で精錬剤を転炉内に添加し、一方、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計値が20mass%を越える場合には、上記の(2)式を満たす範囲内で精錬剤を転炉内に添加する。
【0028】
(1)式及び(2)式を算出する際に、スラグ中のT.Fe濃度及びMnO濃度は、転炉内からスラグを採取し、採取したスラグを分析することで求めることができる。又、多数のスラグの分析値データと、送酸量、酸素吹錬終点の溶鋼中炭素濃度、終点温度、Mn鉱石添加量等の転炉操業条件とを照らし合わせ、両者の相関を解析することで、転炉操業条件からもスラグ中のT.Fe濃度及びMnO濃度を推定することができる。推定スラグ量Wsは、スラグのCaO分析値と造滓剤として添加した生石灰中のCaO純分量とのマスバランスから求めることができる。又、造滓剤として添加した生石灰中のCaO純分量と、送酸量、酸素吹錬終点の溶鋼中炭素濃度、終点温度、Mn鉱石添加量等の転炉操業条件とを照らし合わせ、両者の相関を解析することで、転炉操業条件からも推定スラグ量Wsを推定することができる。
【0029】
スラグを固化するための精錬剤としては、安価であり、又、転炉炉体耐火物を損傷させないことから、CaO又はCaCO3 を主成分とする精錬剤を用いることが好ましい。特に、CaCO3 を主成分とする精錬剤は炉内で加熱されると熱分解し、この熱分解の際に多量の熱を奪うので、スラグの固化に一層効果を発揮する。CaO又はCaCO3 を主成分とする安価な精錬剤としては、石灰石、生石灰、ドロマイト、焼成ドロマイトがあり、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。
【0030】
このようにして溶銑を転炉で精錬することによって、転炉内スラグの出鋼時の取鍋への流出が抑制される。その結果、スラグと溶鋼中の脱酸元素との反応が抑制され、清浄性の高い溶鋼を溶製することができる。又、取鍋内のスラグ量が少ないので、スラグを無害化するためのスラグ改質に使用する金属AlやAlドロス等の使用量を削減することも可能となる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明の実施例(実施例1〜15)を比較例(比較例1〜10)と共に説明する。容量が250トンで、酸素を上吹きし、撹拌用ガスを底吹きする、上底吹き複合吹錬用転炉内に、約250トンの溶銑を装入して脱炭吹錬を行った。用いた溶銑は、溶銑予備処理設備にて脱硫処理及び脱燐処理が施された溶銑であり、溶銑の成分は、Si濃度が0.07mass%以下、S濃度が0.01mass%以下、P濃度が0.010〜0.015mass%に統一した。
【0032】
転炉での酸素吹錬の初期には、転炉内にMn鉱石を添加した。又、造滓剤として生石灰を添加してスラグを生成させた。スラグ分析値から求められた、冷却剤としての精錬剤を添加する前のスラグの塩基度(CaO/SiO2 )は1.9〜4.0であり、おおむね2.5〜3.5であった。精錬剤を添加する前のスラグ中のT.Fe濃度及びMnO濃度は採取したスラグの分析値から求め、転炉内のスラグ量はCaOバランスによって求めた。
【0033】
転炉炉底に設置した羽口から、溶銑の攪拌を目的として攪拌用Arガス又は窒素ガスを毎分10〜20Nm3 程度吹き込んだ。酸素供給は上吹きランスで行い、酸素吹錬の初期から脱炭最盛期にかけての送酸速度を60000Nm3 /hr、脱炭速度の遅くなる酸素吹錬末期では30000Nm3 /hrとした。そして、酸素吹錬の末期或いは酸素吹錬終了後に、転炉内に生石灰、石灰石、未焼成ドロマイトの内の一種を添加した。取鍋へのスラグの流出量は、出鋼後に取鍋内のスラグ厚みを測定し、スラグ厚みに基づいてスラグ流出量を求めた。
【0034】
表1に、実施例1〜15及び比較例1〜10の操業条件及び操業結果を示す。尚、表1の「添加量/最低必要量」の欄の「最低必要量」とは、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計濃度に応じて、前述した(1)式及び(2)式によって算出される添加量の下限値であり、添加量/最低必要量の比が1.0以上となる条件が本発明の範囲内となる。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示すように、生石灰を添加した実施例1〜6では、スラグ流出量は安定して2.0kg/t程度になった。特に、スラグを固化させるための精錬剤を最低必要量の1.5倍以上添加すると、スラグ流出量を1.5kg/t程度まで抑制することができた。
【0037】
石灰石又は未焼成ドロマイトを添加した実施例7〜15では、生石灰を使用した実施例に較べ、更にスラグ流出量を抑制することができ、安定してスラグ流出量を1.5kg/t以下にすることができた。特に、スラグを固化させるための精錬剤を最低必要量の1.5倍以上添加すると、スラグ流出量を1.0kg/t程度まで抑制することができ、更に、スラグを固化させるための精錬剤を最低必要量の2.0倍以上添加すると、スラグ流出量を安定して1.0kg/t以下に抑制することができた。
【0038】
これに対して、スラグを固化させるための精錬剤を添加しない比較例、並びに、スラグを固化させるための精錬剤の添加量が少なく、本発明の範囲を満足しない比較例では、スラグ流出量は多く、2.0kg/t以下にはならなかった。
【0039】
又、スラグを固化させるための精錬剤を、炉内スラグ量に対して4.9%の同一量添加した比較例8、実施例3及び実施例7を比較すると、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度とに応じて添加した実施例3及び実施例7ではスラグ流出量は2.0kg/tであったが、比較例8ではスラグ流出量は3.0kg/tであり、スラグを固化させるための精錬剤を単に同一量添加しても、スラグ流出を抑制できないことが分かった。即ち、スラグのT.Fe濃度及びMnO濃度に応じて添加量を決める必要があることが分かった。又、何れの精錬剤を用いても、溶鋼の温度低下は5℃程度で、わずかであった。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、スラグを固化させるための精錬剤を、スラグ中のT.Fe濃度及びMnO濃度に応じて添加するので、スラグ中のMnO濃度が高い転炉精錬の場合でも、安定して出鋼時のスラグ流出を抑制することが可能となり、その結果、溶鋼清浄性の向上、合金鉄歩留まりの向上等の工業上有益な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スラグの固相率に及ぼすスラグ中のT.Fe濃度及びMnO濃度の影響を示す図である。
【図2】スラグ中のT.Fe濃度及びMnO濃度と精錬剤の添加量とを因子として、スラグ流出抑制効果の有無の境界線を示す図である。
Claims (4)
- 溶銑予備処理にて脱燐処理した溶銑を転炉に装入し、転炉内で酸素吹錬して溶銑を脱炭精錬する際に、当該酸素吹錬中に転炉内にMn鉱石を添加してMn鉱石を転炉内で還元すると共に、酸素吹錬の末期又は酸素吹錬終了後に、転炉内スラグのT.Fe濃度及びMnO濃度に応じ、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計値が20mass%以下の場合には、下記の(1)式を満たす範囲内でCaO又はCaCO3 を主成分とする精錬剤を転炉内に添加し、一方、スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計値が20mass%を越える場合には、下記の(2)式を満たす範囲内でCaO又はCaCO3 を主成分とする精錬剤を転炉内に添加し、添加した精錬剤によって転炉内のスラグを固化させ、出鋼時のスラグの転炉からの流出を抑制することを特徴とする、転炉内スラグの流出防止方法。
Wc×100 ≧ 0.5×Ws×[T.Fe(mass%)+MnO(mass%)−10] …(1)
Wc×100 ≧ 0.2×Ws×[T.Fe(mass%)+MnO(mass%)+ 5] …(2)
但し、(1)式及び(2)式において、Wcはスラグを固化するための精錬剤の添加量(kg)、Wsは転炉内の推定スラグ量(kg)である。 - 前記精錬剤として、石灰石、生石灰、ドロマイト、焼成ドロマイトのうちの1種以上を用いることを特徴とする、請求項1に記載の転炉内スラグの流出防止方法。
- 前記転炉内スラグの量を溶鋼トン当たり20kg以下とするか、又は、造滓剤として転炉内に装入する生石灰を溶鋼トン当たり10kg以下とすることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の転炉内スラグの流出防止方法。
- 前記転炉内スラグの塩基度(CaO/SiO2 )を4.0以下とすることを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載の転炉内スラグの流出防止方法。
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