JP5388805B2 - 脱炭スラグを用いた脱りん方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、脱炭工程に先だって上底吹き転炉型精錬容器にて溶銑の脱りん処理を行う脱炭スラグを用いた脱りん方法に関する。
従来より、リサイクルスラグを使用して上底吹き転炉型精錬容器にて溶銑の脱りん処理を行う技術として、例えば、特許文献1のものがある。
特許文献1では、燐酸を1%以上含むリサイクル滓を用いた上底吹き機能を有する精錬炉による溶銑脱燐処理において、上吹き送酸速度を0.8〜2.4Nm3/min/tとし、脱燐後スラグのP25とCaOの質量比を0.15以下、CaO/SiO2を1.2〜2.2としている。また、脱燐処理における酸素原単位を13〜20Nm3/tとしている。
また、上底吹き転炉型精錬容器にて溶銑の脱りん処理を行う技術としては、特許文献2や特許文献3のものがある。
特許文献2では、Siを含有する溶銑を、塩基度(CaO/SiO2 ;重量比)の値が1.5〜3.0の範囲であるスラグを用いて、上底吹き転炉で脱りん精錬するにあたり、底吹き攪拌力ΣεBottomの値を1.5〜3.4(kw/ton)の範囲とし、且つ、上吹き送酸速度QO2 gas と鉄鉱石供給による酸素分換算送酸速度QO2 ore の総和ΣQO2 (Nm3 /min/ton)の値を攪拌力の値に応じて、上吹き送酸形態によって決まる、吹錬期間中の(L/L0 )の平均値(L/L0 )の値を0.25以下にしている。
特許文献3では、底吹き攪拌と酸素ガス上吹きとを行いつつ脱燐を含む精錬を行う溶銑予備処理方法において、底吹き攪拌動力を1kW/t以上、上吹き送酸速度を0.7〜1.0Nm3/t/min、予備処理後のスラグ中CaO/SiO2 を2.5以下、T.Feを3%以上20%以下としている。
特開2002−241826号公報 特開2002−322506号公報 特許第3709069号公報
特許文献1では、リサイクルスラグを使用して溶銑の脱りん処理を行う技術であるが、脱りん処理に使用しているリサイクルスラグの一部は元々に脱りん処理にて発生したものである。この技術によって、スラグの総量は少なくなるものの、脱りん処理にて使用したスラグをリサイクルすると、脱りん効率が非常に悪くなるのが実情である。
一方、特許文献2及び特許文献3では、リサイクルスラグを用いて脱りん処理を行うに際し、底吹き攪拌力やL/L0 を制御しているものの、生石灰の粒径、溶銑に供給する酸素量と使用するスラグの量との関係などが示されておらず、リサイクルスラグを用いて十分に脱りんを行うことは非常に難しいのが実情である。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、脱りん処理の際にリサイクルスラグとして脱炭スラグを使用しても十分に脱りん処理を行うことができる脱炭スラグを用いた脱りん方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、脱炭工程に先だって上底吹き転炉型精錬容器に前記脱炭工程にて生成した脱炭スラグをリサイクルして溶銑の脱りん処理を行うに際し、投入する造滓剤の粒径を5〜40mmとし、気体酸素の吹き込みの際の溶湯の凹み深さLと浴の深さL0との比を0.01〜0.20にすると共に、底吹き攪拌動力密度εを0.5〜3.5kw/tとし、さらに、処理中に供給する酸素量であって脱珪反応に使用される酸素以外の酸素量と供給する全CaOに対する前記脱炭スラグ中のCaOの割合との関係を規定した。
この際、溶銑段階でそこまでの低りん化が要求されない汎用鋼は式(1)を、溶銑段階での低りん化が要求される極低りん鋼や高炭鋼は式(2)を満たすようにするとよい。もちろん、汎用鋼でも式(2)を満たすことにより、溶銑段階での低りん化は可能であるが、式(2)は式(1)より酸素量が多いため、処理後の炭素量が低くなり、その後の脱炭工程の熱尤度が低下するという不具合が発生する恐れがある。このため、溶銑段階でそこまでの低りん化が要求されない汎用鋼は式(1)を満たすだけで十分である。
本発明によれば、脱りん処理の際にリサイクルスラグとして脱炭スラグを使用しても十分に脱りん処理を行うことができる。
脱炭スラグを用いた脱りん方法(脱りん工程)を含む製鋼工程を示した図である。 脱Si外酸素量GO2と脱炭スラグ割合XCaO(LD)との関係を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1は、本発明の脱炭スラグを用いた脱りん方法(脱りん工程)を含む製鋼工程を示したものである。なお、以下の説明では、溶銑や溶鋼のことを溶湯として説明する。
図1に示すように、一般的に、製鋼工程においては、まず、高炉1から溶湯2を出湯した後、溶湯2を鍋10等にて脱硫処理(脱硫工程)を行う。その後、溶湯2を転炉型精錬容器3に装入して溶湯2に対して脱りん処理(脱りん工程)を行い、その溶湯2を転炉4に装入して脱炭処理(脱炭工程)を行う。脱炭処理を行った溶湯2に対しては、脱ガスや成分調整を行う。なお、以下の説明では、溶銑や溶鋼のことを溶湯として説明する。
脱りん処理を行う転炉型精錬容器3は、気体酸素を溶銑2に吹き込む上吹きランス7と炉底から酸素又は不活性ガスを溶銑2に吹き込むの羽口8を備えた上底吹き型であって、上吹きランス7からの気体酸素により酸素を供給し、羽口6からの酸素又は不活性ガスにより溶湯2を攪拌するものである。また、転炉型精錬容器3は、供給装置9を備えている。この供給装置9は、副原料[生石灰、脱炭スラグ等]を供給するものであって、例えば、ホッパーやシュート等である。
脱炭処理を行う転炉4は、どのような転炉あってもよく特に限定されない。例えば、上吹きランス5から気体酸素を溶湯2等に吹き込む上吹転炉であってもよいし、炉底の羽口6から気体酸素を吹き込む底吹転炉であってもいし、上吹きランス5から気体酸素、羽口6から気体酸素又は不活性ガスを吹き込む上底吹き転炉であってもよい。
本発明の脱炭スラグを用いた脱りん方法においては、転炉4にて脱炭処理(脱炭工程)を行うのに先だって当該転炉4とは別の転炉型精錬容器3にて溶湯2の[P]を下げる脱りん処理を行うものであり、そのときに脱炭工程にて生成した脱炭スラグを供給するものである。即ち、本発明では、脱りん処理を行うに際して、脱炭工程にて発生した脱炭スラグをCaOの供給源として転炉型精錬容器3に供給している。このように、脱炭処理の際に生成したスラグ(脱炭スラグ)を再利用(リサイクル)することにより、両処理におけるトータルのスラグの排出量を低減している。また、脱りん処理においては、当業者常法通りに気体酸素及び固体酸素源(FeO又はFe23)と供給して処理を行う。
なお、溶湯2の脱りん処理を行うにあたって、混銑車や取鍋を使用することも考えられるが、混銑車や取鍋ではフリーボードが小さいために、スロッピングが発生しやすくなる。このような場合は、スロッピング防止のために、気体酸素の供給速度を転炉型精錬容器3に比べて遅くする必要があり、脱りん処理に時間がかかることがある。そのため、本発明では、混銑車や取鍋を用いずに、転炉型精錬容器3によって脱りん処理を行うものを対象としている。
さて、脱炭スラグには、高融点のMgO−FeOxや2CaO・SiO2が含まれており、滓化しにくいことと、事前脱りん処理を実施した溶銑であっても脱炭工程では副次的に脱りんが起こり、それにより多少なりともりんを含むため、脱炭スラグを用いずに脱りん処理を行う場合に比べて、脱りん効率(脱りん能)が低下するという傾向にある。しかしながら、脱りん処理や脱炭処理におけるトータルのスラグ量を低減させるためには、脱炭処理(脱炭工程)にて発生した脱炭スラグを用いることも考える必要がある。 そこで、発明者は、後述するように、精鋭研究を行い脱炭スラグを脱りん処理に用いたとしても脱りん効率を落とさない条件を見出したのである。なお、特開2002−241826公報(特許文献1)に記載されているように、脱りん処理にて発生した脱りんスラグを、再度、脱りん処理に用いることが考えられているが、脱りんスラグ中の(P)が非常に高く、脱りんスラグを、再度脱りん処理に使用すれば脱りん効率は低下してしまい、結果としてスラグ量低減には繋がらない。
そのため、本発明の脱りん処理においては、上述したように脱りんスラグを再度、脱りん処理で用いることは対象としておらず、脱炭処理にて発生した脱炭スラグのみ(脱りんスラグは含まないという意味)を脱りん処理に用いることにしている。
以下、本発明の脱りん処理について詳しく説明する。
[処理中に投入する酸素量と、脱炭スラグとの関係について]
上述したように、脱炭スラグを脱りん処理に用いた場合、脱りん効率が低くなる傾向にある。そのため、発明者は、脱炭スラグを供給したとしても脱りん効率が低下しないよう、酸素量を高くするという考えに至った。即ち、発明者は、リサイクルする脱炭スラグ量に応じて必要な酸素量を規定した。なお、本発明で脱りん処理時に使用する脱炭スラグは、脱りん処理を実施した溶銑の脱炭処理にて発生したものを対象としており、例えば、事前脱りん処理を全く行わず、転炉で脱炭と脱りんを同時に実施した場合に発生するりん濃度が高い脱炭スラグは対象としていない。
本発明の脱りん処理においては、当該処理中に供給する酸素量であって脱珪反応に使用される酸素以外の酸素量と供給する全CaOに対する脱炭スラグの割合XCaO(LD)との関係を式(1)を満たすようにした。なお、説明の便宜上、割合XCaO(LD)のことを脱炭スラグ割合XCaO(LD)ということがある。
式(1)について詳しく説明する。
脱りん処理の際に酸素を供給すると、脱りん反応の前に優先的に脱珪反応が起こり脱珪反応により酸素が使用される。このようなことから、処理中に供給する酸素と脱炭スラグとの関係を規定するに際しては、式(1)に示すように、酸素に関し、脱珪反応(脱珪処理)にて使用される酸素を除いた量を考慮している。なお、脱りん処理中に供給する酸素量であって脱珪反応に使用される酸素以外の酸素量を、説明の便宜上、脱Si外酸素量GO2ということがある。
この脱Si外酸素量GO2は、式(3)により求めることができる。式(3)において気体酸素とは上吹きランスから供給する酸素のことである。式(3)に示される固体酸素量(V02(i))は、全ての副原料に含まれる固体酸素量(V02(S))、即ち、脱りん処理で供給する固体酸素源(例えば、鉄鉱石)の総量を示したものであり、式(4)により求めることができる。また、固体酸素源には、2価の酸化鉄(FeO)及び3価の酸化鉄(Fe23)が含まれるために、式(5)により、全酸化鉄中の3価の酸化鉄の濃度を求め、その値を、式(4)に代入することにより、固体酸素源の総量を求めることとしている。
FeOの濃度及びFe23の濃度の分析方法は、まず、ICP発光分析法において、全鉄濃度(%T.Fe)を求め、臭素メタノール法により、金属鉄濃度(%M.Fe)をJISM8713の方法により求める。また、臭素メタノール法の残査より、EDTA2Na溶液により、(%FeO)をJISM8712の方法により求めた。この方法は、当業者常法通りである。
さて、脱りん処理において、脱炭スラグとは別に供給するCaOは脱りん効率の低下に影響を与えず、脱炭スラグ中のCaO量が脱りん効率の低下に影響を与えることから、処理中に供給する酸素と脱炭スラグとの関係を規定するに際しては、式(1)に示すように、脱炭スラグ割合XCaO(LD)を考慮している。脱炭スラグ割合XCaO(LD)は、式(6)にて求めることができる。
CaOは、生石灰、石灰石、ドロマイド(軽焼ドロマイドも含む)、焼結鉱、脱炭スラグ等に含まれる成分であり、不可避的に混入する微量成分は考慮しないものとする。なお、軽焼ドロマイドとは、特開2009−79264号公報に記載されているように、ドロマイドを加熱焼成したものであり、CaOの成分を、通常、50〜70質量%含むものである。
脱Si外酸素量GO2と脱炭スラグ割合XCaO(LD)との関係を式(1)を満たすようにすることによって、脱炭スラグを脱りん処理に用いたとしても、脱りん効率を落とすことなく、脱りん後の溶湯2の[P]を0.025質量%以下にすることができる。
また、脱Si外酸素量GO2と脱炭スラグ割合XCaO(LD)との関係を式(2)を満たすようにすることにより、脱炭スラグを脱りん処理に用いたとしても、脱りん効率を落とすことなく、脱りん後の溶湯2の[P]を0.010質量%以下にすることができる。
なお、式(1)や式(2)を満たせば、脱りん効率が向上するため脱Si外酸素量GO2の上限値は規定しないが、余りにも脱Si外酸素量GO2が多すぎる場合、脱りん処理後における[C]が低下し過ぎてしまい、脱炭工程における熱尤度が無くなる虞がある。熱尤度が無くなると脱炭処理に、炭素やFeSi等の昇温材を供給しなければならず、生産コストが高くなると共に、操業効率が低下する。このような観点から脱Si外酸素量GO2は、25Nm3を超えないことが好ましい。
[造滓剤の粒径について]
脱りん反応は、便宜上、2[P]+5(FeO)+3(CaO)→3(CaO・P25)+5Feと示されるように、酸素とCaOが必要である。
そのため、本発明の脱炭スラグを用いた脱りん方法においては、脱炭スラグの他にCaO源として、即ち、造滓剤として生石灰を供給している。このCaOが脱りん反応に寄与するためには、スラグ中に溶融する必要があるが、脱りん処理時の処理温度は1250〜1400℃に対し、CaOの融点は文献によって異なるが、2600℃程度であり処理温度よりも非常に高く、生石灰は大部分CaOからなるため、溶融し難い。
従来の技術では、例えば、特開平03−122209や特開2003-12912などに示されるように、蛍石やアルカリ金属酸化物等の融点降下剤を使用することにより、生石灰(造滓剤)の融点を下げて溶融し易いようにしていた。このように蛍石等を使用した場合、脱りん処理にて生成したスラグ中には、環境上基準が制限されているフッ素が多く含まれることになり、当該スラグを精錬以外のもの(舗装材や建材等)に使用する際には、スラグの再利用先が制限されるという問題が生じる。
そのため、本発明によれば、従来のように、環境上基準が制限されているフッ素が含まれる融点降下剤を使用しなくても、生石灰が溶融し易いように、生石灰(造滓剤)の粒径を小さくしている。具体的には、生石灰(造滓剤)の粒径を5mm以上40mm以下としている。なお、生石灰の粒径は、JISZ8801に準拠している篩を用いて判別した。
生石灰の粒径が5mm未満であり小さいと、生石灰を投入した際に、転炉型精錬容器からの上昇気流により飛散したり、炉体の上に設けたガス回収のための集塵機に吸い込まれることがある。即ち、生石灰の粒径が5mm未満であり小さいと、溶湯2の浴面に到達する生石灰の量が少なくなり、生石灰の歩留が低下する。
生石灰の粒径が40mmを超えてしまうと、生石灰が溶け難くなってしまうことから、生石灰の粒径は、40mm以下としている。
なお、生石灰を溶湯2に供給する方法として、特開昭63−199815や特開2005−272883に示されているように、インジェクションやブラスティングを用いることによって集塵機に吸い込まれることなく粒径の小さい生石灰を投入することができるが、これらの設備を用いると大掛かりなものとなり、大規模な設備投資が必要となることから、本発明では、生石灰の供給は、炉体の上方から供給装置9等によるものを対象としている。
なお、造滓剤である生石灰の粒径を規定しているが、脱炭スラグも造滓剤と言えるため、脱炭スラグの粒径も生石灰と同じように規定することが好ましい。
[溶湯の凹み深さLと浴の深さL0との比について]
溶湯の凹み深さLと浴の深さL0との比は、気体酸素の強さを示す指標であり、脱りん処理などでは吹錬状況の指標として良く用いられる。言い換えれば、Lは、吹錬時、即ち、上吹きランス4から溶銑2に向けて酸素を吹き込んだ際の溶湯の凹み深さであり、L0は、非吹錬時、即ち、上吹きランス4から溶湯に向けて酸素を吹き込んでない状態での浴深さである。溶湯の凹み深さLと、上吹きランス4から酸素を吹き込んだ際の酸素流量との関係は、式(7)で求められる。この式(7)は、「鉄冶金反応工学」[改訂新版]2版 瀬川清著 日刊工業新聞刊94頁(5.5)に記載されている一般的な式である。
なお、式(7)で示されるノズル係数kは、特許第2736555号公報の図10を用いて上吹きランス4のノズル孔角度と、ノズル孔数との関係から求めた。この実施形態では、6孔の15°の上吹きランス7であり、ノズル係数kは、1.31とした。L0は、特公平4−81734等に開示されたマイクロ波レベル計を用いて、空炉での炉底高さ及び溶湯2装入後の湯面高さを測定して、その差で浴深さを求めた。
L/L0が大きく、溶湯2に対する気体酸素の衝突圧が強すぎると、脱りん反応が起こりにくい火点領域が大きくなるために、脱りん効率が低下する。また、気体酸素の衝突圧が強すぎると、[C]+1/2O2→COに示される反応が優勢となり、脱りん効率が低下する。
そのため、本発明では、気体酸素を供給するにあたっては、脱りん効率が低下しないように、気体酸素の衝突圧が小さいソフトブローにて気体酸素を吹き込むこととしている。
具体的には、L/L0が0.01以上0.20以下となる範囲にて、気体酸素を供給することにより上述したソフトブローを行っている。ここで、L/L0が0.20よりも大きくなると、もはやソフトブローとは言えず、気体酸素の衝突圧が強くなるため、上述した理由により脱りん効率は低下する。
L/L0が0.01未満であると、気体酸素の吹き込みが弱すぎるため、例えば、多くの気体酸素が溶湯2の浴面に達する前に、炉内のCOガスと反応し(所謂2次燃焼)、スラグ中の酸化鉄量が少なくなり、脱りん効率が低下する。また、L/L0が0.01未満であると、気体酸素の吹き込みが弱すぎるため、気体酸素の衝突圧によるスラグと溶湯の混合が少なくなるため、反応界面積が小さくなり、結果として脱りん効率が低下する。
[底吹き攪拌動力密度について]
脱りん処理においては、溶銑等を攪拌するために底吹きを行う攪拌動力密度も重要である。攪拌動力密度を計算する式としては、森ら(鉄と鋼67(1981),672頁)によって提唱された式、中西ら(鉄と鋼68(1982),A14頁)、によって提唱された式があるが、本発明では底吹き攪拌動力密度を求めるにあたって、式(8)に示すように、森の式を用いた。
式(8)において、鋼浴深さh0は、浴の深さL0と同じである(h0=L0)。また、式(8)の溶銑温度は、脱りん処理前と脱りん処理後とを測定して、その平均とした。式(8)のηは、0.06とした(η=0.06)。
底吹き攪拌動力密度が、0.5kw/t未満であり、弱すぎるとると、スラグ−溶銑浴面へのりんの物質移動が遅れるとともに、スラグ中でのCaOの拡散速度が遅くなるため、生石灰の滓化が遅れ、脱りん反応に支障をきたし、脱りん効率が低下する。また、攪拌によるスラグへの熱供給が少なくなると共に、スラグ中のFeO濃度が高くなり、脱りん効率が低下する。
底吹き攪拌動力密度が、3.5kw/tよりも大きく、強すぎると、スラグと溶銑の活発な反応のために、スラグ中のFeOが低下し、脱りん処理のための酸化源が不足すると共に、生石灰の滓化が遅れ、攪拌動力が低い場合と同様に脱りん効率が低下する。
表1は、実施条件を示したものである。
表1に示すように、脱りん処理は、250tonクラスの上底吹き型の転炉型精錬容器にて行った。上吹きにおいては、孔数が6個、孔直径55mm、孔角度15°の上吹きランスを用いた。底吹きガスはN2ガス、一層環状管(ガスが吹き出す箇所が環型となっているもの)、一層環状管の個数は4個とした。
転炉型精錬炉に装入した溶湯(溶銑)において、[C]=4.2〜4.6質量%、[Si]=0.2〜0.4質量%、[Mn]=0.2〜0.4質量%、[P]=0.100〜0.130質量%、HMR=90〜100%とした。
溶銑Si、処理前温度により、脱りん処理後の温度が1290〜1310℃となるように当業者常法の配合計算によりHMRを決定した。副原料は、転炉型精錬容器内に溶銑、スクラップを投入した後に、供給装置9により全量投入した。脱りん処理に必要なCaO量は、当業者常法の副原料制御により決定し、塩基度は1.5〜2.5に設定した。脱炭スラグにおいては、(T.Fe)=15〜22質量%、(CaO)=42〜48質量%、(SiO2)=10〜12%、(MnO)=3〜5質量%、(MgO)=5〜9質量%、(P25)=0.5〜2.5質量%の組成のものを用いた。また、脱炭スラグは、脱りん処理により[P]≦0.025質量%とした溶銑に対して脱炭処理を行ったときに発生したものを使用した。脱炭スラグの粒径も5mm以上40mm以下とした。また、脱炭スラグ以外のCaO源は、生石灰を使用した。
表2〜表5は、表1の実施条件に基づいて脱りん処理を行った実施例及び比較例とをまとめたものである。表2及び表3は、本発明の脱炭スラグを用いた脱りん方法にて処理を行った実施例をまとめたものであり、表4及び表5は、本発明の脱炭スラグを用いた脱りん方法とは異なる方法にて処理を行った比較例をまとめたものである。
生石灰の粒径において、最大粒径40mm、最小粒径5mmである場合は、すべての粒子が呼び寸法が40mmより下で40mmにもっとも近い37.5mmのふるい下(すべての粒子が通過する)となり、且つ、呼び寸法が5mmより上で5mmにもっとも近い5.6mmのふるい上(すべての粒子が通過しない)になる。つまり、実施例及び比較例において、5.6mm篩下比率の欄には残ってしまった粒子を%で示し、37.5mm篩上比率の欄にも残ってしまった粒子を%で示した。実施例及び比較例では、気体酸素の量を気酸量として示し、固体酸素源の量を固酸量として示した。
実施例1〜実施例13では、脱Si外酸素量GO2と脱炭スラグ割合XCaO(LD)との関係を式(1)を満たしている。つまり、実施例1〜実施例13では、図2に示すように、脱Si外酸素量GO2と脱炭スラグ割合XCaO(LD)とを示すプロット点が、式(1)を満たすエリアAにあるものとなっている。なお、表2において、脱Si外酸素量GO2が下限脱Si外酸素量を上回っている。
また、実施例1〜実施例13では、投入する造滓剤(CaO)の粒径を5〜40mmとし、気体酸素の吹き込みの際の溶湯の凹み深さLと浴の深さL0との比を0.01〜0.20にすると共に、底吹き攪拌動力密度εを0.5〜3.5kw/tとしている。
そのため、脱りん処理後に汎用鋼で必要とされる[P](吹錬後の[P]の規格上限値)を、0.025質量%以下にすることができた(実験結果の欄、評価「○」)。なお、汎用鋼において、吹錬後の[P]の規格上限値が0.025質量%であるということは、特開2001−98314等に記載されているように極めて一般的なことである。
実施例14〜実施例22では、脱Si外酸素量GO2と脱炭スラグ割合XCaO(LD)との関係を式(2)を満たしている。つまり、実施例14〜実施例22では、図2に示すように、脱Si外酸素量GO2と脱炭スラグ割合XCaO(LD)とを示すプロット点が、式(2)を満たすエリアBにあるものとなっている。
そのため、脱りん処理後に低りん鋼で必要とされる[P](吹錬後の[P]の規格上限値)を、0.010質量%以下にすることができた(実験結果の欄、評価「○」)。なお、低りん鋼において、吹錬後の[P]の規格上限値が0.010質量%であるということは、特開2003−3208等に記載されているように極めて一般的なことである。
一方、比較例23〜比較例32では、脱Si外酸素量GO2と脱炭スラグ割合XCaO(LD)との関係が式(1)を満たしておらず(脱Si外酸素量が下限脱Si外酸素量を下回っている)、脱りん処理後の[P]を規格値以下にすることができなかった(実験結果の欄、評価「×」)。つまり、比較例23〜比較例32では、図2に示すように、脱Si外酸素量GO2と脱炭スラグ割合XCaO(LD)とを示すプロット点が、式(1)及び式(2)を満たさないエリアCにあるものとなっている。
比較例33〜比較例34では、生石灰の粒径が5mm未満であり小さいために、溶湯2の浴面に到達する生石灰の量が少ないために脱りん効率が低下し、脱りん処理後の[P]を規格値以下にすることができなかった(実験結果の欄、評価「×」)。比較例35では、生石灰の粒径が40mmを超えて大きいために、生石灰が溶け難くスラグの滓化性が低下するため脱りん効率が低下し、脱りん処理後の[P]を規格値以下にすることができなかった(実験結果の欄、評価「×」)。
比較例36〜比較例37では、溶湯の凹み深さLと浴の深さL0との比が0.01未満で小さく気体酸素の吹き込みが弱すぎるため脱りん効率が低下し、脱りん処理後の[P]を規格値以下にすることができなかった(実験結果の欄、評価「×」)。比較例38では、溶湯の凹み深さLと浴の深さL0との比が0.2よりも大きく気体酸素の吹き込みが強すぎるため、もはやソフトブローとは言えない状況下である。そのため、脱りん効率が低下し、脱りん処理後の[P]を規格値以下にすることができなかった(実験結果の欄、評価「×」)。
比較例39〜比較例40では、底吹き攪拌動力密度εが0.5kw/t未満で小さく攪拌力が弱すぎるために、脱りん効率が低下し、脱りん処理後の[P]を規格値以下にすることができなかった(実験結果の欄、評価「×」)。比較例41〜比較例42では、底吹き攪拌動力密度εが3.5kw/tを超えて大きく攪拌力が強すぎるために、結果的に、脱りん効率が低下し、脱りん処理後の[P]を規格値以下にすることができなかった(実験結果の欄、評価「×」)。
以上のように、脱炭スラグを転炉型精錬容器に供給して脱りん処理を行う場合は、脱Si外酸素量GO2と脱炭スラグ割合XCaO(LD)との関係、投入する造滓剤の粒径、気体酸素の吹き込みの際の溶湯の凹み深さLと浴の深さL0との比、底吹き攪拌動力密度εを本発明に示した条件のように設定する必要がある。これによって、脱炭スラグのようなリサイクルスラグを用いた脱りん処理においても脱りん効率を低下させずに効率良く、脱りん処理を行うことができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 高炉
2 溶湯(溶銑、溶鋼)
3 転炉型精錬容器
4 転炉
5 上吹きランス
6 羽口
7 上吹きランス
8 羽口
9 供給装置
10 取鍋

Claims (2)

  1. 脱炭工程に先だって上底吹き転炉型精錬容器に前記脱炭工程にて生成した脱炭スラグをリサイクルして溶銑の脱りん処理を行うに際し、
    処理中に供給する酸素量であって脱珪反応に使用される酸素以外の酸素量GO2と供給する全CaOに対する前記脱炭スラグ中のCaOの割合XCaO(LD)との関係を式(1)を満たすようにし、投入する造滓剤の粒径を5〜40mmとし、気体酸素の吹き込みの際の溶湯の凹み深さLと浴の深さLとの比を0.01〜0.20にすると共に、底吹き攪拌動力密度εを0.5〜3.5kw/tとしていることを特徴とする脱炭スラグを用いた脱りん方法。
  2. 処理中に供給する酸素量であって脱珪反応に使用される酸素以外の酸素量GO2と供給する全CaOに対する前記脱炭スラグ中のCaOの割合XCaO(LD)との関係を式(2)を満たすようにすることを特徴とする請求項1に記載の脱炭スラグを用いた脱りん方法。
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