JP5289907B2 - スラグのフォーミングを抑制するための酸化鉄源の投入方法 - Google Patents

スラグのフォーミングを抑制するための酸化鉄源の投入方法 Download PDF

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Description

本発明は、スラグのフォーミングを抑制するための酸化鉄源の投入方法に関する。
従来より、高炉から出銑した溶銑を精錬容器に装入して、精錬容器内の溶銑に酸素を供給すると共に脱りん剤を投入することによって溶銑の脱りんが行われている。このような脱りん処理では、精錬中にスラグのフォーミングが発生するため、このフォーミングを抑制する様々な技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
特許文献1では、 処理容器に収容された溶銑に酸素源を供給して脱燐処理或いは脱珪処理を施す溶銑の予備処理の際に、溶銑の脱燐処理で発生したスラグから回収したスラグを付着する地金を、処理中に処理容器内に上置き添加することでスラグのフォーミングを抑制している。この特許文献1では、フォーミングする際に、地金に付着したスラグ内のCaO含有量を30質量%以上とし、スラグを付着した地金中の鉄分の比率を30質量%以上としている。
また、上述した特許文献1の他に、スラグのフォーミングを抑制するものではないが、少なくとも脱りん処理をする技術として、特許文献2及び特許文献3に示すものがある。
特許文献2では、CaOを主体とする脱燐精錬剤を添加し、酸素源として気体酸素源及び固体酸素源を供給して、添加したCaOを主体とする脱燐精錬剤を滓化させてスラグとなし、溶銑に対して脱燐処理を施す、溶銑の脱燐処理方法において、気体酸素源が供給されている場所と同一場所の溶銑浴面に、固体酸素源の少なくとも一部を、搬送ガスを用いて供給している。また、この特許文献2には、固体酸素源として、粒度が1mm以下の焼結鉱、ミルスケール、砂鉄、集塵ダスト、鉄鉱石のうちの何れか1種または2種以上を使用することが開示されている。
特許文献3では、珪素濃度が0.1wt%以下の溶銑に対して、少なくとも脱燐工程、脱炭工程をこの順序で行う溶銑精錬方法において、脱燐工程では、Fを実質的に含有せず、且つ粒度5mm未満の石灰源と粒度15mm未満の酸化鉄源の混合物を造粒し、これを加熱処理して得られた脱燐剤を用いることにより、30kg/T以下のスラグ量で溶銑中の燐濃度を実質的に製品の燐濃度レベルまで低下させた後、脱炭工程を実施していた。
また、フォーミングを抑制するフォーミングの抑制剤を精錬容器に投入するものではないが、精錬容器へ鉄鉱石や捕集ダストを投入する技術として、特許文献4及び特許文献5に示すものがある。
特許文献4では、溶融還元炉へ鉄鉱石と炭材を装入するに際し、装入された炭材の流れが溶融還元炉内のスラグ浴面に達するまでの間に、装入された鉄鉱石の流れと合流するように鉄鉱石と炭材を溶融還元炉の上部から落下させて装入している。
特許文献5では、予備還元炉を有する鉄浴型溶融還元設備における捕集ダストの装入方法において、溶融還元炉の発生ガスから捕集されたダストと予備還元炉の排ガスから捕集されたダストを気流輸送によってダスト装入経路に合流させ、この合流させた2種類のダストを気流輸送によって溶融還元炉へ装入している。
特開平3−107409号公報 特開2006−241535号公報 特開2000−290714号公報 特許5705170号 特許3684953号
特許文献1の技術であっても、投入するフォーミング抑制剤の種類と、フォーミング抑制剤の大きさと、フォーミング抑制剤の投入量と、フォーミング抑制剤の投入順序とのぞれぞれの関係が示されていないため、これらの技術を操業に適用してもスラグのフォーミングを確実に抑えることが難しいのが実情である。
また、特許文献3及び特許文献4では、溶銑に投入する物質の大きさ(粒度)などが一部開示されているものの、この技術での物質はフォーミングを抑制するために用いられておらず、フォーミングと粒度との関係も無いことから、この技術をフォーミング抑制の技術に適用することはできないのが実情である。
さらに、特許文献4及び特許文献5では、精錬容器へ鉄鉱石や捕集ダストを投入することが開示されているものの、単にこれらを精錬容器に投入するのみであって、投入するという技術によってフォーミングの抑制をしようとするものではない。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、脱りんを行うに際して、脱りん効率を低下させることなくスラグのフォーミングを確実に抑制することができるスラグのフォーミングを抑制するための酸化鉄源の投入方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、脱りん用精錬容器内の溶銑の脱りん処理中に、スラグのフォーミングを抑制するための酸化鉄源を投入するに際し、投入する酸化鉄源を、球換算直径が10mm〜50mmの粗粒酸化鉄源と、球換算直径が3mm〜10mmの細粒酸化鉄源とし、前記粗粒酸化鉄源及び細粒酸化鉄源の投入量を式(1)を満たすように設定し、前記粗粒酸化鉄源及び細粒酸化鉄源の投入の際には、細粒酸化鉄源を投入後に粗粒酸化鉄源を連続的に投入する点にある。
Figure 0005289907
本発明によれば、脱りんを行うに際して、脱りん効率を低下させることなくスラグのフォーミングを確実に抑制することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1は、本発明の溶銑の脱りん方法を行う脱りん用精錬容器の全体側面図を示している。
図1に示すように、脱りん用精錬容器1は、上吹き機能を有するものであり、脱りん処理を行うことができるものである。脱りん用精錬容器1は、上方に向かって開口する炉口2を備えている。脱りん用精錬容器1には、当該脱りん用精錬容器1に装入された溶銑3に対して酸素を吹き込む上吹ランス4が炉口2から挿入自在に設けられている。
また、脱りん用精錬容器1には、当該脱りん用精錬容器1内の溶銑3を攪拌するためのガス(例えば、窒素ガス)を吹き込むための吹き込みランス(耐火物ランス)9が炉口2から挿入自在に設けられている。脱りん用精錬容器1には、副原料等を投入するシュート5が配備されている。脱りん用精錬容器1の炉壁には炉体の傾動により溶銑3を出湯できるように出湯口6が形成されている。
脱りん用精錬容器1を用いて脱りん処理を行うには、高炉から出銑した溶銑3を脱りん用精錬容器1に装入し、CaO源である生石灰などの脱りん剤をシュート5を介して溶銑に投入すると共に、酸素を供給する。溶銑3への酸素の供給は、上吹きランス4による気体酸素の吹き込みと、固体酸素源として投入する酸化鉄により行う。また、脱りん処理では、耐火物ランス9から窒素を吹き込んで溶銑3を攪拌しながら処理を行う。
なお、溶銑の攪拌方法については、炉底の羽口からアルゴン、窒素、一酸化炭素等のガスを吹き込んで溶銑3を攪拌しながら処理を行う方法もある。
さらに、脱りん処理では、スラグSのフォーミングを抑制するためのフォーミング抑制剤Mを投入する。
本発明の溶銑の脱りん方法(スラグのフォーミングを抑制するための酸化鉄源の投入方法)について説明する。
本発明では、まず、脱りん用精錬容器1の溶銑3に対して、上吹きランス4によって気体酸素を吹き込みながら酸化鉄源を投入することで、スラグS又は溶銑3に酸素を供給する。また、生石灰などの脱りん剤をシュート5を介して投入して脱りん処理を行う。
[フォーミングを抑制するフォーミング抑制剤について]
さて、このように溶銑3の脱りん処理を行っている際には、脱りん反応を進行させるために供給した酸素によって、スラグ内に生成した酸化鉄と溶銑3中の炭素(C)とが、スラグSと溶銑3との界面付近にて反応して一酸化炭素(CO)が発生する[(FeO)+C→CO+Fe]。この一酸化炭素のガス気泡がスラグ内で膨張するため、フォーミングが発生することになる。
スラグSのフォーミングを抑制するために、炭材系の物質を投入して、スラグ内の酸化鉄の濃度を低減する方法が考えられるが、スラグ内の酸化鉄の濃度を低下させてしまうと、脱りん反応が促進されなくなる。即ち、脱りん反応は、一般的に、3(CaO)+5(FeO)+2P→(3CaO・P25)+5Feであるため、酸化鉄の濃度が低減してしまうと脱りん反応が促進しなくなる。
よって、脱りん反応を阻害することなく、スラグSのフォーミングを抑制するためには、スラグSの酸化鉄の濃度を低下させずに、スラグ内に生成した微細化のCOガスの気泡を収縮することが良い。
そこで、本発明では、スラグ内へ固体の酸化鉄源(例えば、鉄鉱石、スケール、焼結鉱等)を投入することによって、酸化鉄源の分解熱(例えば、鉄鉱石であれば−1229Mcal/t、吸熱反応)により、スラグSを冷却し、スラグ内に生成している微細なCOガスの気泡を収縮させる、即ち、スラグSに対する酸化鉄源の吸熱によってスラグフォーミングを抑制することとしている。以降、説明の便宜上、フォーミングを抑制するために投入する酸化鉄源のことを、フォーミング抑制剤Mということがある。
本発明では、投入する酸化鉄源、即ち、投入するフォーミング抑制剤Mを大きさ毎に分けて投入することとしている。具体的には、酸化鉄源を投入するにあたっては、球換算直径が10mm〜50mm(10mm超[より大きい]50mm以下)の粗粒酸化鉄源M1と、球換算直径が3mm〜10mm(3mm以上10mm以下)の細粒酸化鉄源M2との2種類に分類している。球換算直径は、フォーミング抑制剤Mに着目し、各粒の体積を相当球に換算して、その球の直径の値としている。
球換算直径が10mm〜50mmの粗粒酸化鉄源M1は、スラグSの比重よりも嵩比重が比較的高いために、スラグS内に浸入し易く、当該粗粒酸化鉄源M1の溶融分解反応するための時間、即ち、単位時間当たりの溶融分解反応が遅いため、フォーミングの抑制を緩やかに進行させることができる。ゆえに、粗粒酸化鉄源M1では、緩やかにフォーミングの抑制を行うという効果がある。
ここで、球換算直径が50mmを超えた粗粒酸化鉄源M1は、容易にスラグ内に浸入するものの、スラグSと溶銑3との界面付近に到達してしまい、上述したように、逆に、溶銑3の炭素と反応して大きなフォーミングを発生させてしまう場合がある。ゆえに、粗粒酸化鉄源M1は球換算直径が10mm〜50mmとしている。
一方で、球換算直径が3mm以上10mm以下の細粒酸化鉄源M2は、当該細粒酸化鉄源M2がスラグSに到達した際に、短時間で溶融分解反応が完了するため、短時間で十分なフォーミングの抑制を促進させることができる。ここで、球換算直径が3mm未満の酸化鉄源(フォーミング抑制剤M)は、スラグSへ向けて脱りん用精錬容器1の上方から投入した際に、炉口から放出されるガス(上昇気流)により飛散して歩留が悪くなる虞があり、歩留が悪くなる場合がある。
したがって、脱りん処理時の際に、スラグSのフォーミングを抑制するために投入するフォーミング抑制剤Mに関しては、球換算直径が10mm〜50mmの粗粒酸化鉄源M1と、球換算直径が3mm〜10mmの細粒酸化鉄源M2との2種類にする必要がある。
[フォーミング抑制剤(酸化鉄源)の投入量について]
本発明では、上述したように、球換算直径が10mm〜50mmの粗粒酸化鉄源M1と、球換算直径が3mm〜10mmの細粒酸化鉄源M2との2種類の酸化鉄源を投入することとしているが、それぞれの酸化鉄源の投入量は、式(1)を満たすように設定している。
Figure 0005289907
式(1)に示すように、投入する全体の酸化鉄源(A+B)に対する粗粒酸化鉄源M1の比率が0.5未満である場合、フォーミングを抑制するための酸化鉄源の量が不足し、十分にスラグSを吸熱してスラグS内のCOガスの気泡を収縮させることができない。即ち、スラグS内のCOガスの気泡を収縮させるための冷却熱が不足し、スラグSのフォーミングを十分に抑制することができない。よって、スラグSが脱りん用精錬容器1外へ流出するために、十分に脱りんを進行させることができない。
一方で、式(1)に示すように、投入する全体の酸化鉄源(A+B)に対する粗粒酸化鉄源M1の比率が0.95を超える場合、スラグSのフォーミングを抑制するための酸化鉄量は十分であるものの、全体的に長時間で溶融分解反応が進むため、短期間で十分なスラグSのフォーミング抑制を行うことができず、逆に、スラグSが脱りん用精錬容器1外へ流出してしまい十分に脱りんを進行させることができない。
したがって、スラグSのフォーミングを十分に抑制するための酸化鉄量、即ち、スラグS内のCOガスの気泡を収縮させるための十分な冷却熱を確保しつつ、時間的な観点からスラグSの吸熱反応が遅れてフォーミングが拡大しないように、粗粒酸化鉄源M1の投入量と、細粒酸化鉄源M2との投入量のバランスを、式(1)に示す如く設定する必要がある。
[フォーミング抑制剤(酸化鉄源)の投入順序について]
本発明では、上述したように、粗粒酸化鉄源M1の投入量と、細粒酸化鉄源M2の投入量とを式(1)を満たすように設定しているが、これら粗粒酸化鉄源M1と細粒酸化鉄源M2とを投入する際には、細粒酸化鉄源M2を粗粒酸化鉄源M1よりも先に投入して、細粒酸化鉄源M2に引き続いて粗粒酸化鉄源M1を連続的に投入することとしている。
炉口2から粗粒酸化鉄源M1や細粒酸化鉄源M2を投入するに際して、これら粒径のことなる粗粒酸化鉄源M1と細粒酸化鉄源M2とを投入する順序は非常に重要である。
ここで、粒径の大きな粗粒酸化鉄源M1を、細粒酸化鉄源M2よりも先に投入した場合、先に投入された粒径の大きな粗粒酸化鉄源M1はスラグS内に浸入してフォーミングを抑制するための吸熱反応を引き起こすものの、この粗粒酸化鉄源M1よりも後に投入された細粒酸化鉄源M2は、スラグS内に浸入し難くなり、細粒酸化鉄源M2によるスラグSへの吸熱反応が十分に行えず、その結果、細粒酸化鉄源M2による十分なフォーミングの抑制効果が低下する。
一方で、粒径の小さな細粒酸化鉄源M2を、粗粒酸化鉄源M1よりも先に投入した場合は、まず、細粒酸化鉄源M2がスラグSの表層面に到達し、その後に、スラグSの表層面に到達した細粒酸化鉄源M2を覆い被さるように、粗粒酸化鉄源M1がスラグSに到達する。よって、先にスラグSの表層面に到達していた細粒酸化鉄源M2が、粗粒酸化鉄源M1の自重により押されて、次第にスラグS内に浸入すると共に、粗粒酸化鉄源M1もスラグS内に浸入する。
スラグS内に浸入した細粒酸化鉄源M2は、直ちに溶融分解反応を引き起こしてスラグSの吸熱を行い、スラグ内のCOガスの気泡を冷却及び収縮する。そして、残された粒径の大きな粗粒酸化鉄源M1は、スラグ内で比較的緩やかに溶融分解反応を起こし、長時間に亘ってフォーミングの抑制を維持することができる。
したがって、粗粒酸化鉄源M1及び細粒酸化鉄源M2の投入の際には、細粒酸化鉄源M2を投入後に粗粒酸化鉄源M1を連続的に投入する必要がある。
細粒酸化鉄源M2を投入後に粗粒酸化鉄源M1を連続的に投入するための、具体例は、図1に示すように、シュート5に酸化鉄源を入れる際に、当該シュート5の排出口5a側(下側、先端側)に、細粒酸化鉄源M2を入れ、シュート5の供給口5b側(上側、基端側)に粗粒酸化鉄源M1を入れる。その上で、シュート5の排出口5aから、細粒酸化鉄源M2、粗粒酸化鉄源M1の順で酸化鉄源を排出すればよい。
なお、本発明によれば、細粒酸化鉄源M2、粗粒酸化鉄源M1の順に投入すればよく、投入する具体的な例は、上記に示した方法に限定されない。例えば、上記の例では、シュート5内を細粒酸化鉄源M2の層と粗粒酸化鉄源M1の層とに分けていたが、このようにシュート5内を2つの層に分けて積み上げなくても、シュート5を用いて、細粒酸化鉄源M2と粗粒酸化鉄源M1とを別々に投入してもよい。また、シュート5を用いずに、作業者が手で細粒酸化鉄源M2を投入した後に、粗粒酸化鉄源M1を投入してもよい。
なお、脱りん処理において、脱りん剤を投入するに際しては、スラグSを脱りんスラグとして十分に滓化できるように投入時期を設定すればよく、この実施形態では、溶銑3に供給している供給酸素量(上吹きランスによる酸素の吹き込みや酸化鉄による酸素量)が全酸素量に対して0〜30%となっている期間に投入している。この期間であれば、スラグSを十分に滓化することができ、スラグSを脱りん能の高いものにすることができる。
ここで、全酸素量(全供給酸素量)とは、脱りん処理中に脱りん用精錬容器1内へ供給する気体酸素(上吹きによる気体酸素)および固体酸素源(酸化鉄源)から供給される酸素量の合計である。酸化鉄源から供給される酸素量は、固体酸素原中の酸化鉄が完全にFeとO2に分解すると仮定した際に発生する酸素量である。CaOは、固体酸素源に含まない。
また、フォーミング抑制剤Mを投入するに際し、十分にフォーミングの抑制ができる時期にフォーミングの抑制剤Mを投入することが好ましく、この実施形態では、供給酸素量が全酸素量に対して70〜90%となっている期間に投入している。なお、上述した脱りん剤の投入時期やフォーミングの抑制剤Mの投入時期は特に限定されない。
表1は、溶銑3の脱りんを行った実施条件を示している。表2及び表3は、表1の実施条件に基づき、本発明の溶銑の脱りん方法によって処理を行った実施例をまとめたものである。また、表4〜表7は、表1の実施条件に基づき、本発明の溶銑の脱りん方法とは異なる方法で処理を行った比較例をまとめたものである。
Figure 0005289907
実施条件について詳しく説明する。
表1に示すように、脱りん処理は、90tonクラスの脱りん用精錬容器(脱りん用転炉)1にて行った。溶銑表面から炉口までの高さ(フリーボード高さ)は、4.5mとした。上吹きにおいては、孔数が3個、孔直径が27mm、孔角度が7°の上吹きランスを用いた。また、上吹きランス以外に、粉体を吹き込み、溶銑を攪拌する耐火物ランスを用いた。脱りん用精錬容器1に装入した溶銑3において、[C]=4.5〜4.8質量%、[P]=0.100〜0.125質量%、[Si]=0.30〜0.45質量%とした。溶製鋼種において、[C]の規格上限は、0.45質量%、[P]の規格上限値は、0.020質量%とした。
脱りん処理において、必要な酸素量は、当業者常法のスタティック制御により決定した。例えば、脱りんするためのものであって、処理前溶銑温度、処理前Siおよび処理後目標温度に応じて決める必要な気体酸素と酸化鉄源(フォーミング抑制剤を除く)から供給される固体酸素とを合わせた量。
CaO等副原料は、当業者常法の副原料の制御により決定した。例えば、溶銑3の[P]と鋼種毎目標[P]との差Δ[P]をメタルからスラグSに排出する、即ち脱りんする
ために、処理後目標温度及び上吹き酸素量に応じて決める必要なCaO等副原料の量。 スラグSのフォーミングの状態を調べるために、図1に示すように、フォーミング高さの検知(スラグSの高さ)は、温度測定用のセンサー10を搭載したサブランス11を用いて実施した。炉体上(脱りん用精錬容器1上)に設置したサブランス11を脱りん処理の終了直後に炉内へ降下させ、検出温度が1200℃以上になった時点のサブランス11の高さを脱りん用精錬容器1内のスラグSのフォーミング高さとした(溶銑3の静止浴面からサブランス11の先端までの距離)。
フォーミングを抑制するための酸化鉄源(フォーミング抑制剤M)は、大きさを揃えるために篩い分けして、球換算粒径を調整した鉄鉱石を用いた。
その他、転炉の吹錬制御、転炉の出鋼後の溶鋼処理(二次精錬処理)、連続鋳造についても、当業者常法通りに行った。
Figure 0005289907
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各表の実施例及び比較例における評価について説明する。
CaO原単位は、溶銑3に供給したCaOの量であって、スラグ量を基準にすると、スラグ量(kg/t)=CaO原単位(kg/t)/スラグ中のCaO質量%と表すことができるものである。細粒・粗粒径フォーミングの抑制剤投入原単位比率の左欄は、実際に投入したフォーミング抑制剤Mを式(1)に示す如くA/(A+B)に代入した値を示している。
スラグSのフォーミングの状態を調べるためにスラグSの高さ(フォーミング高さ)を測定して、その高さが予め設定したフリーボード高さよりも低いか否かを評価した(フォーミング高さの評価の欄)。フォーミング高さが4.5m以内であるとフォーミングを抑制できているために、4.5m以内であるものを良好「○」とし、4.5mを超えるものを不良「×」とした。
また、脱りん処理後における[P]の実績値が予め定めた値([P]≦0.020質量%)を満たしているか評価した(脱りん処理後[P]の評価の欄)。脱りん処理後の[P]が0.020質量%以下であるものは規格通り脱りん処理が出来ているため良好「○」とし、0.020質量%を超えるものを不良「×」とした。
なお、脱りん処理中に、著しいスラグSのフォーミグが発生しない場合には、処理後の[P]は規格上限近くまで低下する。一方、著しいスラグSのフォーミングが発生し、脱りん用精錬容器1内よりスラグSが流出すると、脱りん反応に必要なスラグS量が確保できないため、処理後の[P]が高くなる。そのため、脱りん処理後の[P]を測定することによって、出湯歩留以外でスラグS流出量が低減できていることを間接的に確認することもできる。
また、実操業の効率の観点から脱りん処理時間の上限値を10分として、その脱りん処理時間内に脱りん処理が行えているか否かも評価した(脱りん処理時間の評価の欄)。脱りん処理時間が10分以内であるものは予定通り脱りん処理を終了することができているため良好「○」とし、10分を超えるものを不良「×」とした。
なお、通常、製鋼工場では、脱りん処理、転炉の吹錬、溶鋼処理、鋳造工程が工程間で無駄な待ち時間を発生させないように、タイムスケジュ-ルを作成し、運用している。脱りん処理時間が、規定通り満たされないと、後工程に影響を与えるため、この実施例ではその判断基準を10分として評価を行っている。当然の如く、脱りん処理時間の評価基準となった10分は限定されるものではなく、判断基準とした時間(10分)は、脱りん用精錬容器1での脱りん処理における標準的な時間である。
さらに、脱りん用精錬容器1での脱りん処理における歩留(出湯歩留)が100%超えているか否かも評価した(出湯歩留の評価の欄)。ここで、歩留について、実際の操業と共に説明する。
脱りん処理を行うにあたり、冷却材として酸化鉄源を50〜60kg/t添加しており、酸化鉄源は溶銑3中で溶融し、更に溶銑3中の炭素により溶銑3へ還元されて新たな鉄源となる。よって、酸化鉄源を50〜60kg/t添加しているため、Fe分として最大40kg/t供給され、歩留が向上することになる。なお、冷却材として投入する酸化鉄源の酸素は、上述した全酸素量に含まれるものとしている。
脱りん処理中には、溶銑3中のSi、C、Mnなどの酸化されやすい元素が一部酸化除去されて、その量は、Siで4kg/t、Cで4kg/t、Mnで2kg/t、Pで1kg/t程度となり、合計で13kg/tとなり、歩留が低下する要因となる。
脱りんの当業者常法において、脱りん処理終了時のスラグS(T.Fe)は、10〜15質量%であり、スラグSへの鉄ロスはおおよそ6kg/t程度である。
したがって、脱P処理中の冷却材からのインプットされた鉄分と、処理中の成分ロス、鉄ロスを加味すると、上記の例では、脱りん後の歩留は、[1000+40(冷却材の分)−13(成分ロス)−6(スラグSへの鉄ロス)]/1000=102.1%となり、100%を超える。
このように、実施例及び比較例において、歩留の評価は、冷鉄源等の投入による鉄源の増加分と、成分のロス(酸化によるロス)と、スラグSへの鉄ロスとを含めて評価している。
次に、各表における実施例及び比較例について、詳しく説明する。
表2及び表3に示す実施例では、投入する酸化鉄源を、球換算直径が10mm〜50mmの粗粒酸化鉄源M1と、球換算直径が3mm〜10mmの細粒酸化鉄源M2としている(粗粒酸化鉄源球換算直径の欄、細粒酸化鉄源球換算直径の欄)。
また、表2及び表3に示す実施例では、粗粒酸化鉄源M1の投入量(粗粒酸化鉄投入量)と、細粒酸化鉄源の投入量(細粒酸化鉄投入量)とが、式(1)を満たすように設定している(細粒・粗粒径フォーミングの抑制剤投入原単位比率の欄)。
さらに、表2及び表3に示す実施例では、細粒酸化鉄源M2を先に投入して粗粒酸化鉄源M1を後に投入している(細粒・粗粒投入順)。
このように、実施例においては、本発明の条件を満たしているので、表4に示すように、フォーミングの高さを予め設定したフリーボードの高さよりも低くすることができる(フリーボードの高さ、評価「○」)と共に、脱りん処理後[P]を規格上限値よりも低くすることができる(脱りん処理後[P]、評価「○」)。また、実施例においては、脱りん処理時間を予め規定した時間よりも短くすることができる(脱りん処理時間、評価「○」)と共に、歩留も100%以上にすることができる(出湯歩留、評価「○」)。
即ち、脱りん処理中に脱りん用精錬容器1外へ噴出するスラグS量を低減することができ、溶銑3の歩留を向上させつつ、脱りんを規定通りの値にすることができて脱りん効率も非常に優れている。
比較例1〜比較例15では、細粒酸化鉄源M2の球換算直径が3mm未満となっている。比較例16〜比較例25では、細粒酸化鉄源M2も大きな粗粒酸化鉄源M1の球換算直径が10mmよりも小さくなっている。
比較例26〜比較例30では、細粒酸化鉄源M2の球換算直径が3mm未満であり、これよりも大きな粗粒酸化鉄源M1の球換算直径が10mmよりも小さくなっている。比較例31〜比較例37では、粗粒酸化鉄源M1の投入量と、細粒酸化鉄源の投入量とが、式(1)を満たすものになっていない。
比較例38〜比較例42では、粗粒酸化鉄源M1を先に投入して細粒酸化鉄源M2を後に投入している。比較例43〜比較例44では、粗粒酸化鉄源M1の球換算直径が50mmを超えたものとなっている。
このように、比較例においては、本発明の条件を満たしていないものがあるため、フリーボードの高さ、脱りん処理後[P]脱りん処理時間、出湯歩留の全ての項目について、条件を満たすことができなかった(表7、評価「×」)。
ここで、本発明の条件を満たすことによって、上述した効果が得られるが、各表の実施例及び比較例を見ると、実施例においては、粗粒酸化鉄源M1と細粒酸化鉄源M2との球換算直径の差(球径差)は少なくとも5mm以上(最も差がないものの値5mm)であり、比較例においては、その差は2mm以上である。ゆえに、粗粒酸化鉄源M1と細粒酸化鉄源M2との球換算直径の球径差を5mm以上とすることによって、より効果が得られると考えられる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
脱りん用精錬容器の全体側面図である。
符号の説明
1 脱りん用精錬容器
2 炉口
3 溶銑
4 上吹ランス
5 シュート
6 出湯口
10 温度測定用のセンサー
11 サブランス
M フォーミング抑制剤(酸化鉄源)
M1 粗粒酸化鉄源
M2 細粒酸化鉄源

Claims (1)

  1. 脱りん用精錬容器内の溶銑の脱りん処理中に、スラグのフォーミングを抑制するための酸化鉄源を投入するに際し、
    投入する酸化鉄源を、球換算直径が10mm〜50mmの粗粒酸化鉄源と、球換算直径が3mm〜10mmの細粒酸化鉄源とし、前記粗粒酸化鉄源及び細粒酸化鉄源の投入量を式(1)を満たすように設定し、前記粗粒酸化鉄源及び細粒酸化鉄源の投入の際には、細粒酸化鉄源を投入後に粗粒酸化鉄源を連続的に投入することを特徴とするスラグのフォーミングを抑制するための酸化鉄源の投入方法。
    Figure 0005289907
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