JP2000290714A - 溶銑精錬方法 - Google Patents

溶銑精錬方法

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JP2000290714A
JP2000290714A JP11100927A JP10092799A JP2000290714A JP 2000290714 A JP2000290714 A JP 2000290714A JP 11100927 A JP11100927 A JP 11100927A JP 10092799 A JP10092799 A JP 10092799A JP 2000290714 A JP2000290714 A JP 2000290714A
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Yoshiteru Kikuchi
良輝 菊地
Toru Kitagawa
融 北川
Akira Shiroyama
章 白山
Atsushi Watanabe
敦 渡辺
Eiju Matsuno
英寿 松野
Hiroshi Shimizu
宏 清水
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NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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  • Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スラグの発生量を極力少なくできるととも
に、溶鋼の製造コストを低減でき、且つFを実質的に含
まないスラグを使用して効率的且つ安定的な脱燐処理を
行うことができる溶銑精錬方法を提供する。 【解決手段】 珪素濃度が0.1wt%以下の溶銑に対
して、少なくとも脱燐工程、脱炭工程をこの順序で行う
溶銑精錬方法において、脱燐工程では、Fを実質的に含
有せず、且つ粒度5mm未満の石灰源と粒度15mm未
満の酸化鉄源の混合物を造粒し、これを加熱処理して得
られた脱燐剤を用いることにより、30kg/T以下の
スラグ量で溶銑中の燐濃度を実質的に製品の燐濃度レベ
ルまで低下させた後、脱炭工程を実施する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、従来法に較べて省
資源、省エネルギーで、且つスラグ等の発生物の量も極
力少なくできる環境に優しい溶銑精錬方法及びこの溶銑
精錬方法に好適な脱燐剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、転炉を用いた溶銑の精錬工程で
は、溶銑に酸素を吹き付けて溶銑中の炭素および珪素を
酸素と反応させることで、これらをそれぞれCO及びS
iOとして溶銑から分離・除去し、また、炉内に生石
灰(CaO)を投入して溶銑中の硫黄及び燐をCaOと
結合させることで、これらを溶銑から分離・除去し、こ
れらによって炭素、珪素、硫黄、燐を製品に許容される
所定の濃度まで低下させることが行われてきた。
【0003】このような転炉を用いて炭素、珪素、燐等
を同時に除去していた従来法に対し、最近では燐を事前
に溶銑段階で除去すること(溶銑予備脱燐処理)が行わ
れている。このようなプロセスでは転炉吹錬において脱
燐のために必要であったスラグの量を大幅に削減するこ
とが可能となり、この結果、吹錬中にマンガン鉱石を投
入して吹錬終了時点でスラグからのマンガン還元率を高
め、出鋼中または出鋼後に添加されるマンガン合金鉄の
使用量を削減することが可能になってきた。また、この
ようなプロセスでは、マンガン合金鉄の使用量の削減だ
けでなく、低燐鋼などの高品質鋼の製造が容易になる、
製鋼トータルでのスラグ発生量を著しく削減できるなど
の効果が得られる。
【0004】また、上記のような効果をより高めるため
の様々な努力もなされており、例えば、脱燐処理前の溶
銑中Si濃度を低下させること、脱燐処理後の燐濃度を
製品の燐濃度レベルまで低下させることなどが行われて
いる。このうち前者のように脱燐処理前の溶銑中Si濃
度を低下させることは、スラグの脱燐能に影響する塩基
度を少ない石灰添加量で高めることが容易となり、少な
いスラグ量で効率的な脱燐処理を行うことができる。脱
燐処理前の溶銑中Si濃度を低下させるには、高炉内で
の溶銑の低Si化技術、さらには出銑後の酸化脱珪処理
が利用できる。従来、高炉から出銑される溶銑はSi濃
度が0.35〜0.45wt%以上であったが、溶銑の
低Si化技術によりSi濃度が0.2wt%程度の溶銑
が出銑できるという報告もなされている。さらに、出銑
後の酸化脱珪処理では、鋳床で固体酸素源を添加しつつ
脱珪処理したり、鍋や混銑車等の容器内で送酸や固体酸
素源の添加を行いつつ脱珪処理することにより、溶銑中
のSi濃度を0.1wt%以下まで低減させることも可
能となってきた。
【0005】一方、後者の点については、脱燐処理後の
溶銑中燐濃度を0.015wt%という製品の要求レベ
ルまで低減させることが可能であり、この結果、上述し
たように脱燐処理後の脱炭工程においては脱燐のための
スラグを必要としないため、マンガン源を高歩留で添加
することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述したよう
な処理形態は、スラグ量の削減に対しては効果的である
が、脱燐条件に関しては以下のような問題が生じる。す
なわち、炉内に投入されるCaO源(主として石灰石)
は、その添加歩留(「炉内に投入したCaO源量」に対
する「溶銑表面に到達するCaO源量」の比率)を向上
させるために直径10〜30mm程度の粒状で投入され
るが、この投入されたCaO源を溶銑中のPやSと効率
良く反応させるためには、CaO源を溶銑表面において
生成するSiOやFeOの低融点化作用により融体化
させることが必要である。CaO−SiO−FeO系
において高脱燐能を有する融体を生成させるためには、
その組成中のCaO/SiOの重量比を3.0以上と
する必要があり、これに応じてCaOの添加量が決定さ
れる。
【0007】また、従来ではCaO源の融体生成量を増
大させるために蛍石(CaF)を適宜添加し、融体化
を促進する対策が採られてきた。しかし、このような精
錬に用いた転炉スラグには少量とは云えCaFが含ま
れることになり、特に最近ではスラグ中からのFイオン
の溶出が環境保全上望ましくないという観点からFイオ
ンの溶出量の規制基準を強化する傾向にあることから、
発生した転炉スラグの用途が制限されることの一つの要
因となりつつある。
【0008】そして、上記のようにスラグ量の削減のた
めに脱燐処理前の溶銑中Si濃度を低下させると、脱燐
処理時に生成するSiOによるCaO源の融体化作用
が低下する恐れがあり、さらに、上記のような理由から
Fを実質的に含有しないスラグを使用した場合、スラグ
がFを含有しないことによる融体化作用の低下分を補償
するような対策が必要となってくる。特に、送酸能力や
撹拌能力が小さい溶銑鍋や混銑車で脱燐処理を行う場
合、転炉等のように大規模な送酸設備や排気設備を有す
る場合に較べて、生成する酸化鉄量や撹拌による融体生
成量が不十分となりやすく、そのような対策の必要性は
高い。
【0009】また、大量送酸が可能な転炉においても、
脱燐工程において送酸による脱炭量が多大にあると後工
程での熱余裕などの点でスクラップの使用量やマンガン
鉱石の使用量などが制約される。このため少ない酸素添
加量で脱燐を効果的に行うことができれば、熱収支やマ
ンガン歩留などの点での改善効果が期待できる。
【0010】一方、脱燐処理において炉内に添加した粒
状のCaO源の融体化を促進するために、例えば、N.I.
Rogovtsev らはロータリーキルンで製造する段階で粒の
表層部に酸化鉄をコーティングした精錬用CaO粒が迅
速な脱燐に有効であることを明らかにしている(Steel
in the USSR, July (1972), p518-520)。また、MarkLe
e らによっても、同様の製法で得られた同様の精錬剤
が、転炉における脱燐及び脱硫に極めて有効であること
が報告されている(Electric Furmace Conference (199
6), p539-549)。また、特開昭61−217513号に
は、カルシウムフェライト(2CaO−Fe、C
aO−Fe、CaO−2Fe の総称)の組
成を有する低融点焼結鉱を用いた脱燐方法とその組成に
関する開示がなされている。
【0011】しかしながら、以上のような従来の知見に
もかかわらず、それらの精錬剤は工業的に大量生産する
ことが極めて難しく、また製造コストも高いため、実用
化には至っていない。すなわち、カルシウムフェライト
系の精錬剤は融点が低いため、充填層式の加熱炉を用い
て製造した場合、充填物の溶融や充填物相互の焼結が生
じるため充填物の物流が阻害され、この結果、加熱炉の
操業自体が困難となる。また、ロータリーキルン(回転
炉)を用いて製造した場合、キルン内壁に多量の融着物
が層状に付着するため、この融着物層を度々操業を中断
して除去しなければならず、この場合もロータリーキル
ンの実質的な操業は困難となる。さらに、焼結機を用い
て製造した場合、上述したようにカルシウムフェライト
系の精錬剤は低融点であるため焼結層の通気性が非常に
悪く、この場合も安定的な生産は不可能である。
【0012】また、精錬剤の原料に主としてCaOを用
いる場合には、原鉱石の主成分であるCaCOを焼成
後、これを粉砕した上でカルシウムフェライトにしなけ
ればならないため、製造工程が複雑になり、製造コスト
が高くなる問題がある。また、粒状のCaO源の表面の
みをカルシウムフェライト化することは、溶銑中のSi
やCとの反応等のために脱燐プロセスでは必ずしも迅速
な融体化が行われず、場合によっては未反応のCaOが
精錬後に残ることになる。
【0013】したがって本発明の目的は、このような従
来技術の課題を解決し、スラグの発生量を極力少なくし
て省資源や省エネルギーに寄与することができるととも
に、溶鋼の製造コストを低減でき、しかも、環境に悪影
響を与えるFを実質的に含まないスラグを使用して効率
的且つ安定的な脱燐処理を行うことができる溶銑精錬方
法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めには、発生するスラグ量を極少化することによってス
ラグにより損失するエネルギーを低減でき、且つマンガ
ン合金鉄等の使用量を削減できる精錬方法であることが
必要であるが、さらに、Fを実質的に含まないスラグを
使用して効率的且つ安定的な脱燐処理を行うために、低
コストで安定した製造が可能で且つ融体を生成しやすい
脱燐剤の使用と脱燐条件の適正化が必要である。すなわ
ち、従来、安定した製造が困難であり、しかも低コスト
で製造することがほとんど不可能であった低融点のカル
シウムフェライトからなる脱燐剤に代わり、安価な原料
コストおよび製造コストで製造可能な脱燐剤を用い、こ
れに高い脱燐能を安定して発揮させることが必要であ
る。
【0015】また、使用する脱燐剤については、脱燐剤
の製造時における壁付や粒同志の結合などによって製造
が阻害されることがなく、しかも使用時に融体を迅速に
生成させることができるような、原料条件(原料の種類
や配合割合等)、造粒・加熱条件を明らかにすることが
必要である。さらに、現在、脱燐処理の主流となってい
る混銑車や溶銑鍋等の溶銑搬送容器を利用した脱燐処理
を可能とし、さらには近い将来、脱炭抑制等のために必
要とされるであろう低送酸量での脱燐処理を可能にする
ような脱燐剤であることが必要である。
【0016】本発明は、このような観点から最適な精錬
条件及び脱燐剤の条件を検討した結果なされたもので、
以下のような特徴を有する。 [1] 珪素濃度が0.1wt%以下の溶銑に対して、少な
くとも脱燐工程、脱炭工程をこの順序で行う溶銑精錬方
法において、脱燐工程では、Fを実質的に含有せず、且
つ粒度5mm未満の石灰源と粒度15mm未満の酸化鉄
源の混合物を造粒し、これを加熱処理して得られた脱燐
剤を用いることにより、30kg/T以下のスラグ量で
溶銑中の燐濃度を実質的に製品の燐濃度レベルまで低下
させた後、脱炭工程を実施することを特徴とする溶銑精
錬方法。
【0017】[2] 上記[1]の溶銑精錬方法において、脱
炭工程では新たに発生するスラグ量を20kg/T以下
にして吹錬することを特徴とする溶銑精錬方法。 [3] 上記[1]または[2]の溶銑精錬方法において、脱燐工
程では転炉型容器を用いて脱燐処理を行い、溶湯中に
0.2Nm/min・T以下の供給量で撹拌ガスを吹
き込むとともに、転炉型容器内に2.0Nm/min
・T以下の供給量(但し、純酸素換算量)で酸素ガスま
たは酸素含有ガスを供給することを特徴とする溶銑精錬
方法。
【0018】[4] 上記[1]または[2]の溶銑精錬方法にお
いて、脱燐工程では鍋または混銑車を用いて脱燐処理を
行い、溶湯中に0.04Nm/min・T以下の供給
量で撹拌ガスを吹き込むとともに、鍋または混銑車内に
0.8Nm/min・T以下の供給量(但し、純酸素
換算量)で酸素ガスまたは酸素含有ガスを供給すること
を特徴とする溶銑精錬方法。 [5] Fを実質的に含有せず、且つ粒度5mm未満の石灰
源と粒度15mm未満の酸化鉄源の混合物を造粒し、こ
れを加熱処理して得られたことを特徴とする脱燐剤。
【0019】[6] 上記[5]の脱燐剤において、石灰石の
か焼の前処理として行われる石灰原石の洗浄工程で発生
する石灰石粉を少なくとも一部として含む石灰源と酸化
鉄源の混合物を造粒し、これを加熱処理して得られたこ
とを特徴とする脱燐剤。 [7] 上記[5]または[6]の脱燐剤において、石灰源と、鉄
鉱石粉、鉄鉱石の焼結工程で発生するダスト、溶銑の脱
硫処理時に発生するダスト、鋼材の熱間圧延工程で発生
する酸化鉄粉の中から選ばれる1種以上の酸化鉄源の混
合物を造粒し、これを加熱処理して得られたことを特徴
とする脱燐剤。 [8] 上記[5]〜[7]のいずれかの脱燐剤において、石灰源
中のCaと酸化鉄源中のFeとの重量比[Ca]/[F
e]が0.8以上となるように混合された石灰源と酸化
鉄源の混合物を造粒し、これを加熱処理して得られたこ
とを特徴とする脱燐剤。
【0020】[9] 上記[5]〜[8]のいずれかの脱燐剤にお
いて、石灰源と酸化鉄源の混合物を造粒し、これを乾燥
を主目的として900℃未満の温度で加熱処理して得ら
れたことを特徴とする脱燐剤。 [10] 上記[5]〜[8]のいずれかの脱燐剤において、石灰
源中のCaと酸化鉄源中のFeとの重量比[Ca]/
[Fe]が0.8以上2.0未満となるように混合され
た石灰源と酸化鉄源の混合物を造粒し、これを乾燥と脱
炭酸を主目的として900℃以上1250℃以下の温度
で加熱処理して得られたことを特徴とする脱燐剤。
【0021】[11] 上記[5]〜[8]のいずれかの脱燐剤に
おいて、石灰源中のCaと酸化鉄源中のFeとの重量比
[Ca]/[Fe]が2.0以上となるように混合され
た石灰源と酸化鉄源の混合物を造粒し、これを乾燥と脱
炭酸を主目的として900℃以上1450℃以下の温度
で加熱処理して得られたことを特徴とする脱燐剤。 [12] 上記[5]〜[11]のいずれかの脱燐剤において、石灰
源と酸化鉄源の混合物を造粒し、これを竪型炉、回転
炉、流動層炉、移動層炉のいずれかで加熱処理して得ら
れたことを特徴とする脱燐剤。 [13] 上記[1]〜[4]のいずれかの溶銑精錬方法におい
て、脱燐工程において上記[6]〜[12]に記載のいずれか
の脱燐剤を用いることを特徴とする溶錬精錬方法。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細をその限定理
由とともに説明する。本発明法は、珪素濃度が0.1w
t%以下の溶銑に対して、少なくとも脱燐工程、脱炭工
程をこの順序で行う溶銑精錬方法である。珪素濃度が
0.1wt%以下の溶銑を得るためには、通常、高炉か
ら出銑された溶銑を脱珪工程にて脱珪処理する。但し、
高炉溶銑の珪素濃度が0.1wt%以下の場合には、脱
珪処理することなく後述する脱燐処理を行うことができ
る。この場合、後述するような脱珪工程が省略できる。
一方、高炉溶銑の珪素濃度が0.1wt%以下であって
も、これをさらに鍋脱珪工程等において脱珪処理(例え
ば、珪素濃度0.02wt%程度まで脱珪処理)するこ
ともできる。
【0023】このように溶銑中の珪素濃度を0.1wt
%以下まで低減させることにより、後に行われる脱燐工
程において脱燐のために必要な高塩基度のスラグの量を
十分に低減させることができる。ここで、溶銑の珪素濃
度をなるべく低減させた方が、脱燐工程において高塩基
度スラグを造滓し易く、スラグ量の低減化には有利であ
るので、脱燐工程においてスラグ量を可能な限り低減さ
せるには、高炉溶銑を脱珪処理して珪素濃度を可能な限
り低減させることが好ましい。
【0024】一般に、高炉から出銑された溶銑は鋳床を
経由して溶銑鍋等の容器に注湯及び貯留されるが、脱珪
工程では鋳床での脱珪若しくは容器内での脱珪のいずれ
か、またはその両方を実施してよい。脱珪処理は鋳床、
容器への注湯過程において実施することも可能である。
必要な脱硅幅や容器での処理能力によって、それらの中
から選択された処理形態の脱珪処理を行う。容器内での
脱珪処理では、処理容器として溶銑鍋や装入鍋等の取
鍋、混銑車、その他の脱珪専用容器等が用いられる。
【0025】脱珪処理では脱珪剤として酸素源が添加さ
れ、また、必要に応じて媒溶剤として焼石灰などのCa
O分が添加され、スラグの塩基度が調整される。脱珪剤
としては、固体酸素(通常、鉄鉱石、ミルスケール等の
酸化鉄)または気体酸素(酸素ガスまたは酸素含有ガ
ス)のいずれを用いてもよく、また両者を併用してもよ
い。
【0026】脱珪処理では溶銑をガス撹拌等により十分
に撹拌し、脱珪剤をスラグ中に効率的に溶解させること
が、脱珪効率を高める上で有効である。この点、取鍋等
の容器内で行う脱珪処理は、その溶銑保持形状のために
溶銑を十分に撹拌できるため、他の方法(例えば、鋳床
での脱珪処理)よりも効率が良い。したがって、特に優
れた脱珪効率を得るためには、取鍋等の容器内での脱珪
処理を実施し、或いは鋳床脱珪を実施してから容器内で
の脱珪処理を実施するのが特に好ましい。このような容
器としては、媒溶剤や脱珪剤等の供給機能と溶銑の撹拌
機能を備えたものであればよく、先に述べた溶銑鍋等の
取鍋、混銑車、その他の脱珪専用容器のいずれでもよ
い。
【0027】脱珪剤や媒溶剤の添加は、溶湯流或いは溶
湯浴面上への上置きや浴中への吹き込みにより行われ
る。例えば、溶銑鍋を用いた脱珪処理では、溶銑鍋内に
送酸ランスを通じて気体酸素(酸素ガスまたは酸素含有
ガス)が吹き込まれるとともに、浸漬ランスを通じて撹
拌ガスや石灰粉等の媒溶剤が溶銑中に吹き込まれ、さら
に必要に応じて固体原料(例えば、焼結粉やミルスケー
ル等の固体酸素源)が鍋上方の原料投入装置から上置き
装入される。
【0028】脱燐工程では、上記のような珪素濃度が
0.1wt%以下の低珪素溶銑に対して、Fを実質的に
含有しない脱燐剤を用いて、30kg/T(溶銑ton
当たり)以下、好ましくは20kg/T以下のスラグ量
で脱燐処理を行い、溶銑中の燐濃度を実質的に製品の燐
濃度レベルまで低減させる。この脱燐工程において、脱
燐処理される溶銑が珪素濃度0.1wt%以下の低珪素
溶銑であることはスラグ量の低減化に有効であるが、少
ないスラグ量で効率的な脱燐処理を行うためには脱燐能
が高いスラグを生成させる必要がある。このためにはス
ラグの塩基度を高めることが必要であり、したがって、
脱珪スラグ等の混入は極力抑制することが好ましい。
【0029】脱燐工程では、機械式排滓装置や手作業等
より前工程で生じたスラグを分離した溶銑を溶銑鍋等の
取鍋、混銑車、転炉型容器等を用いて脱燐処理するが、
使用する容器に特別な制約はなく、場合によっては、同
一容器内で前記脱珪処理と脱燐処理を順次実施してもよ
い。
【0030】本発明法の脱燐工程では、脱燐剤として、
Fを実質的に含有せず、且つ石灰源と酸化鉄源の混合物
を造粒し、これを加熱処理して得られた脱燐剤を用いて
脱燐処理を行う。このような脱燐剤は、安価に且つ安定
的に大量生産できるとともに、Fを実質的に含有しない
にも拘らずスラグ中において融体化しやすく、高い脱燐
能を有している。このため低送酸の能力しかない脱燐プ
ロセス(例えば、溶銑鍋等の取鍋や混銑車で行われる脱
燐プロセス)においても、脱燐反応を効率的に促進させ
ることができる。また、その中でも以下に述べるような
脱燐剤は、特に製造コストや脱燐能の面で優れている。
【0031】脱燐剤は、その原料である石灰源の粒度を
5mm未満、好ましくは2mm未満、酸化鉄源の粒度を
15mm未満、好ましくは8mm未満とする。石灰源の
粒度が5mm以上では、同時に配合される酸化鉄源との
接触界面積が小さくなり、石灰源と酸化鉄源との反応に
よる迅速な造滓が阻害される。また、酸化鉄源の粒度が
15mm以上の場合も同様に、石灰源との接触界面積が
小さくなり、石灰源と酸化鉄源との反応による迅速な造
滓が阻害される。
【0032】このように迅速な造滓のためには石灰源と
酸化鉄源とが効率的に反応することが重要であり、この
ためには石灰源と酸化鉄源を適度に細粒化し、両者の接
触界面積を大きくすることが必要である。特に石灰源は
酸化鉄よりも融点が高いため、粒度を適正化することは
重要である。但し、石灰源や酸化鉄源は過剰に細粒化す
る必要はなく、また、鉱山から採取する過程等で自然に
細粒が得られる場合を除き、粉砕器等で微粉砕するにし
ても粉砕エネルギーや歩留まり等の経済性の問題もある
ため細粒化には自ずと限界がある。
【0033】また、これらの石灰源と酸化鉄源は、石灰
源中のCaと酸化鉄源中のFeとの重量比[Ca]/
[Fe]が0.8以上となるように混合されることが好
ましい。[Ca]/[Fe]が0.8未満では、脱燐剤
中に含まれる酸化鉄が多くなるため石灰を滓化させる上
では有利になるが、同時に起こる酸化鉄の還元吸熱が過
剰になるため熱バランスが崩れるという問題が生じる。
また、基本的に脱燐は石灰源中のCaOと燐酸(P
)とが化合物化するものであるから、CaOは一定量
以上は必要であり、上記の比が小さくなり過ぎると全体
として脱燐剤量が過剰となり、脱燐剤の添加設備の大型
化や添加時間の増大等が問題となる。
【0034】なお、脱燐剤中の石灰源の造滓性は、脱燐
工程で同時に添加される気体酸素によって生成する酸化
鉄の作用も関係するため、[Ca]/[Fe]の上限は
一律には規定できないが、脱燐剤添加初期における部分
的な造滓が迅速になされれば、同時に行われる送酸によ
る造滓促進効果も発揮され易いことから、脱燐剤添加初
期における造滓を速やかに進行させるという観点から
[Ca]/[Fe]は通常20程度を上限とすることが
好ましい。
【0035】脱燐剤の原料となる上記石灰源の種類に特
別な制約はないが、上記のような粒度を有し且つ比較的
安価に入手できる石灰源としては、石灰石の“か焼”の
前処理として行われる石灰原石の洗浄工程で発生する石
灰石粉、粒状または塊状石灰の焼成工程で発生するCa
O粉があり、これらの1種以上を石灰源の少なくとも一
部として有効利用することにより、省資源化と原料コス
トの低減化を図ることができる。
【0036】また、その中でも、石灰石の“か焼”の前
処理として行われる石灰原石の洗浄工程で発生する石灰
石粉を使用することは、石灰石の“か焼”産業における
廃棄物(石灰石粉)の有効利用につながり、また、その
ような石灰石粉は、石灰石を粉砕するよりもかなりの低
コストで入手可能であるばかりでなく、環境保全にも有
益である。
【0037】また、脱燐剤の原料となる上記酸化鉄源の
種類にも特別な制約はないが、上記のような粒度を有し
且つ比較的安価に入手できる酸化鉄源としては、鉄鉱石
粉、鉄鉱石の焼結工程で発生するダスト、溶銑の脱硫処
理時に発生するダスト、鋼材の熱間圧延工程で発生する
酸化鉄粉(所謂、ミルスケール)があり、これらの中か
ら選ばれる1種以上の酸化鉄源を用いることができる。
脱燐剤は、上記のような石灰源と酸化鉄源を混合及び造
粒した後、適当な温度で加熱処理することにより製造さ
れる。
【0038】石灰源と酸化鉄源の混合はドラムミキサー
等のような通常の混合機を用いることができ、また、造
粒にもペレタイザー等のような通常の造粒機を用いるこ
とができる。造粒後の加熱処理は、一般的な竪型加熱
炉、回転炉(ロータリーキルン)、流動層炉やその他の
移動層炉等を用いることができ、これらのいずれかによ
り造粒物の乾燥または乾燥・脱炭酸処理を目的とした加
熱が行われる。ここで、上記脱炭酸処理とは、石灰源と
して石灰石(原鉱石)を用いる場合の主成分である炭酸
カルシウム中の炭酸(CO)を加熱除去する処理のこ
とである。上述したように本発明では石灰源として“か
焼”の前処理として行われる石灰原石の洗浄工程で発生
する石灰石粉を用いることができ、このような炭酸カル
シウムを含む石灰源を使用する場合には脱炭酸処理を行
うことが必要となる。炭酸カルシウムの酸化カルシウム
と炭酸ガスへの分解反応は理論的には800℃以下でも
生じるが、900℃以上であれば迅速且つ安定した分解
反応を生じさせることができる。
【0039】この加熱処理は、造粒物の乾燥を主目的と
する場合には900℃以下の加熱温度で行えばよい。一
方、造粒物の乾燥と脱炭酸処理を主目的として行う場合
には、先に述べた[Ca]/[Fe]の重量比に応じ
て、以下のような加熱温度で行うのが好ましい。すなわ
ち、[Ca]/[Fe]の重量比が0.8以上2.0未
満の場合には900℃以上1250℃以下の加熱温度
で、また[Ca]/[Fe]の重量比が2.0以上の場
合には900℃以上1450℃以下の加熱温度で、それ
ぞれ加熱処理するのが好ましい。加熱温度が900℃未
満では、炭酸カルシウムの酸化カルシウムと炭酸ガスへ
の分解反応を迅速且つ安定して行うことができない。
【0040】一方、[Ca]/[Fe]の重量比が0.
8以上2.0未満の場合に、加熱温度が1250℃を超
えると、流動層炉内の充填物の物流が阻害されたり、或
いはロータリーキルンの内壁に融着物が生成する等の製
造上のトラブルを生じ易くなる。また、[Ca]/[F
e]の重量比が2.0以上の場合には、上記のような物
流阻害や融着物の生成は起こりにくいので、設備的に許
されればより高温度域で短時間の加熱処理を行うことが
可能であるが、加熱温度が1450℃を超えると上記と
同様の製造上のトラブルを生じ易くなる。以上のような
条件で加熱処理することにより、例えば、流動層炉を用
いて加熱処理した際に充填物の物流が阻害されたり、ロ
ータリーキルンを用いて加熱処理した際にキルン内壁に
融着物が生成したりする製造上のトラブルを適切に防止
することができる。
【0041】脱燐剤の好ましい製造条件を確認するた
め、以下のような試験を行った。石灰源として石灰鉱山
で採掘された石灰原石の洗浄工程で発生した粒度2mm
未満の石灰石粉を、酸化鉄源として粒度8mm未満の鉄
鉱石粉をそれぞれ用い、これらを混合して脱燐剤の原料
とした。具体的には、石灰源と酸化鉄源を、それらに含
まれるCaとFeの重量比[Ca]/[Fe]が、それ
ぞれ0.8、1.2、1.8、2.0、3.0、5.
0、8.0となるように配合してドラムミキサーで混合
し、これをペレタイザーで約15〜30mmの粒度に造
粒した後、この造粒物を回転炉(ロータリーキルン)を
用いて加熱処理し、粒状の脱燐剤を製造した。上記加熱
処理では、[Ca]/[Fe]に応じて加熱温度を変え
て処理を行った。
【0042】図1に、得られた脱燐剤の品質及び加熱処
理における製造上のトラブル発生の有無を、原料中の
[Ca]/[Fe]と加熱温度との関係で示す。同図に
よれば、造粒された原料を乾燥と脱炭酸処理を目的とし
て加熱処理する場合、[Ca]/[Fe]の重量比が
0.8以上2.0未満の場合には900℃以上1250
℃以下の温度で、また[Ca]/[Fe]の重量比が
2.0以上の場合には900℃以上1450℃以下の温
度域でそれぞれ加熱処理することにより、製造上のトラ
ブルを生じることなく成分が均一な脱燐剤を製造できる
ことが判る。これに対して上記温度範囲を超える高温処
理を行った場合には、炉内壁への原料の付着、原料の棚
吊り、成分不均一などの製造上のトラブルが発生し、操
業性が著しく悪化する傾向があることが判る。
【0043】本発明の脱燐工程では、30kg/T(溶
銑ton当たり)以下、好ましくは20kg/T以下の
スラグ量で脱燐処理を行うが、上述したような脱燐能の
高い特定の脱燐剤を用いてスラグとメタル間の脱燐反応
を迅速に進行させ、効率的な脱燐を進行させることによ
り、スラグ量が30kg/T以下でも溶銑中の燐濃度を
実質的に製品の燐濃度レベルまで容易に低減させること
ができる。
【0044】脱燐処理では、脱燐剤の添加は溶湯浴面へ
の上置きまたは浴中への吹き込み等により行われる。ま
た、スラグと溶銑間の脱燐反応をより迅速に進行させる
には、脱燐容器内への送酸(酸素ガスまたは酸素含有ガ
スの供給)と浴中への撹拌用ガスの吹き込みを行うこと
が好ましい。一般に、溶銑鍋や転炉型容器を用いた脱燐
処理では、送酸は送酸ランス(上吹きランス)等を通じ
て、また、撹拌用ガスの吹き込みは底吹きノズルや浸漬
ノズルを通じて行われ、撹拌用ガスはこれらを通じて浴
中に吹き込まれる。
【0045】転炉型容器で脱燐処理を行う場合、容器内
への送酸量は純酸素換算量で2.0Nm/min・T
(溶銑ton当たり)以下、底吹きガス等の撹拌ガス供
給量は0.2Nm/min・T(溶銑ton当たり)
以下とすることが好ましい。送酸の目的の一つである酸
化鉄生成の観点からすると、送酸量が増大すると浴に酸
素が作用する量が増える分だけ生成する酸化鉄の増加が
期待できるが、送酸量が2.0Nm/min・Tを超
えると浴に対する酸素による作用が制御しにくくなり、
一旦生成した酸化鉄の還元量も増大し、全体での造滓に
とって有用な酸化鉄の滞留量をそれほど多くは確保でき
なくなる。また、酸化鉄の還元量の増大によって脱炭が
進行するため浴の保有熱が消費され、後工程での熱余裕
が失われる等の問題を生じ易い。また、撹拌ガス量も同
様に作用し、造滓や脱燐促進の観点から撹拌ガス量はあ
る程度は必要であるが、その供給量が過剰であると酸化
鉄の還元量が増えすぎ、造滓に有用な酸化鉄の滞留量を
多くできない。この傾向は撹拌ガス量が0.2Nm
min・Tを超えると顕著になり、送酸量が通常の条件
であっても適切な制御ができなくなる。
【0046】また、溶銑鍋や混銑車等のような転炉型容
器以外の容器で脱燐処理を行う場合には、一般に上記よ
りも低送酸量、低撹拌ガス量であり、上記と同様の理由
から送酸量を純酸素換算量で0.8Nm/min・T
(溶銑ton当たり)以下、撹拌用ガス供給量を0.0
4Nm/min・T(溶銑ton当たり)以下とする
ことが好ましい。
【0047】図2は、溶銑鍋1を用いた脱燐処理状況の
一例を模式的に示しており、この例では溶銑鍋1内に送
酸ランス2を通じて気体酸素(酸素ガスまたは酸素含有
ガス)が吹き込まれとともに、浸漬ランス3を通じて撹
拌ガスや石灰粉等の媒溶剤が浴中に吹き込まれ、さら
に、脱燐剤等の固体原料が鍋上方の原料投入装置4から
上置き装入されるようになっている。
【0048】脱炭工程では、転炉型容器を用いて上記低
珪素・低燐溶銑を新たに発生するスラグ量を20kg/
T(溶銑ton当たり)以下にして吹錬を行う。本発明
法においては、事前の脱燐工程において溶銑中の燐濃度
は実質的に製品の燐濃度レベルまで低下しているため、
脱炭工程では実質的な脱燐は必要とされない。このため
脱燐で必要とされるようなスラグ量は必要でない。した
がって、吹錬時に生成する酸化鉄の希釈材としてや、浴
面からの粒滴の飛散や放熱を抑制するために多少のカバ
ースラグは必要であるが、媒溶剤で生成させるスラグ量
は、脱炭時に添加される鉄鉱石やマンガン鉱石からの脈
石分に応じた塩基度調整分のみの極く少量でよく、処理
溶湯に対するスラグの発生量を多くても20kg/T以
下、通常は10kg/T以下の最小限に抑えることがで
きる。また、スラグの精錬能が必須ではなく、スラグ組
成の多少の変動も問題ないため、炉内へのスラグ残し操
業などによりスラグを繰り返し使用することが可能であ
る。この結果、前チャージの吹錬中に生じたマンガン損
失分は次チャージ以降で回収することが可能となってマ
ンガン歩留まりが向上し、出鋼中または出鋼後における
マンガン合金鉄の添加量を削減することができる。
【0049】
【実施例】[実施例1]高炉から出銑された溶銑に対
し、鋳床脱硅−鍋脱硅(溶銑鍋での脱珪)−転炉脱燐−
転炉脱炭を行う一連の工程で溶銑の精錬を行った。この
実施例では、高炉から出銑されたSi濃度約0.28w
t%の溶銑を、鋳床及び溶銑鍋での脱珪処理によりSi
濃度0.1wt%以下まで脱珪した。鍋脱珪工程では、
浸漬ランスから約0.01Nm/min・T(溶銑t
on当たり)の供給量で窒素ガスを浴中に吹き込んで溶
銑を撹拌しつつ、脱硅反応を進行させた。また、必要と
する脱珪量に応じて気体酸素や酸化鉄を添加した。
【0050】この溶銑脱珪後、生成スラグを排滓し、溶
銑を溶銑脱燐を行う転炉に装入した。処理前の溶銑温度
は1260〜1345℃であった。脱燐剤としては、石
灰源(石炭原石の洗浄工程で発生した粒度2mm以下の
石灰石粉)と酸化鉄源(粒度8mm未満の鉄鉱石粉)を
それらに含まれるCaとFeの重量比[Ca]/[F
e]が、それぞれ0.8、1.2、1.8、2.0、
3.0、5.0、8.0となるように配合してドラムミ
キサーで混合した後、ペレタイザーで約15〜30mm
の粒度に造粒し、これを回転炉(ロータリーキルン)を
用いて加熱処理して得られたものを使用した。
【0051】なお、一部の比較例では、石灰源または酸
化鉄源として粒度5mm以上の石灰石粒または粒度15
mm以上の酸化鉄粒を用いた造粒を行い、これを加熱処
理して得られた脱燐剤を用いた。また、他の比較例にお
いては、石灰源と酸化鉄源を造粒することなく、単に混
合しただけで或いは混合することなく脱燐剤として炉に
装入した。
【0052】脱燐剤中の石灰源の配合量は、装入された
溶銑の珪素濃度に応じ決められるため、珪素濃度が低い
溶銑の場合は石灰源配合量は少なく、そのため生成した
脱燐スラグ量にも差が生じた。本実施例では、石灰源の
配合割合によってスラグの塩基度(CaO/SiO
をほぼ4以上に調整した。また、この脱燐処理では炉底
部から約0.11Nm/min・T(溶銑ton当た
り)の吹き込み量で窒素ガスを吹き込んで溶銑の撹拌を
行いつつ、浴面上方から水冷ランスで送酸を行い、酸化
鉄源からの酸素量と合せて酸素供給量が約8Nm/T
(溶銑ton当たり)になるようにした。処理時間は1
0分間で一定とし、脱燐終点温度は1260〜1325
℃であった。また、処理終点のスラグの酸化度を低位と
するため、スラグ中の全酸化鉄濃度の指標である(T.
Fe)濃度は2%wt以下とした。
【0053】転炉での脱燐処理が終了した溶銑は、一旦
装入鍋に出湯し、しかる後別の転炉に再装入し、最終脱
炭を主目的とした処理を行った。この脱炭処理では炉底
部から約0.13Nm/min・T(溶銑ton当た
り)の供給量で窒素ガスまたはアルゴンガスによる吹き
込み撹拌を行いつつ、浴上方から水冷ランスにより3.
5Nm/min・T(溶銑ton当たり)の送酸量で
送酸を行った。
【0054】この脱炭工程では、マンガン鉱石等から混
入するSiOに対してスラグの塩基度が約3.5に調
整されるよう石灰源を添加した。脱炭処理後のスラグは
全量排滓せず、炉内に15〜30kg/T(溶銑ton
当たり)相当のスラグが残留する状態で処理を連続して
行った。前チャージに処理されたスラグを残し、これを
当該チャージで用いるため、スラグ中のマンガン源も継
続して利用でき、基本的にはマンガンの損失はない条件
で処理を行った。すなわち、この脱炭工程で装入された
マンガン鉱石から混入するSiO量に応じて増量され
たスラグへのマンガン分配分が、マンガン損失として生
じる条件であった。この脱炭工程では、処理終了時の溶
鋼中炭素濃度がほぼ0.08wt%、溶湯温度が165
0℃になるように制御した。本実施例における脱燐工程
での一連の処理条件と処理結果を表1および表2に示
す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】[実施例2]高炉から出銑された溶銑に対
し、鍋脱硅(溶銑鍋での脱珪)−鍋脱燐(溶銑鍋での脱
燐)−転炉脱炭を行う一連の工程で溶銑の精錬を行っ
た。この実施例では、高炉から出銑されたSi濃度約
0.2wt%の溶銑を溶銑鍋での脱珪処理によりSi濃
度0.1wt%以下まで脱珪した。鍋脱珪工程での処理
形態、脱珪条件は実施例1とほぼ同様とした。
【0058】この溶銑脱珪後、生成スラグを排滓し、同
一溶銑鍋にて溶銑脱燐を行った。この脱燐工程では、1
60tonの溶銑に対して浸漬ランスを通じて約0.0
1〜0.04Nm/min・T(溶銑ton当たり)
の供給量の窒素ガスで浴中に脱燐剤を吹き込むことによ
り浴の撹拌を行いつつ、浴上方から水冷ランスを通じて
送酸を行い、酸化鉄源からの酸素量と合せて酸素供給量
が約8Nm/T(溶銑ton当たり)になるようし
た。処理前の溶銑温度は1275〜1360℃であっ
た。処理時間は10分間で一定とし、脱燐終点温度は1
265〜1340℃であった。また、処理終点のスラグ
の酸化度を低位とするため、スラグ中の全酸化鉄濃度の
指標である(T.Fe)濃度は、5wt%以下とした。
【0059】脱燐剤としては、石灰源(石灰原石の洗浄
工程で発生した粒度2mm以下の石灰石粉)と酸化鉄源
(粒度8mm未満の鉄鉱石粉)をそれらに含まれるCa
とFeの重量比[Ca]/[Fe]が、それぞれ0.
8、2.0、3.0、8.0となるように配合してドラ
ムミキサーで混合した後、ペレタイザーで約15〜30
mmの粒度に造粒し、これを回転炉(ロータリーキル
ン)を用いて加熱処理して得られたものを使用した。な
お、比較例においては、石灰源と酸化鉄源を造粒するこ
となく、単に混合しただけで或いは混合することなく脱
燐剤として炉に装入した。
【0060】溶銑鍋での脱燐処理が終了した溶銑は、排
滓後、一旦装入鍋に出湯し、しかる後転炉に再装入し、
最終脱炭を主目的とした処理を行った。この脱炭工程は
実施例1とほぼ同様の条件で行った。本実施例における
脱燐工程での一連の処理条件と処理結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】[実施例3]溶銑脱珪処理を経たSi:
0.04wt%、C:4wt%、P:0.1wt%の組
成の溶銑(溶銑温度:1300℃)を160tonの溶
銑鍋を用いて、脱燐剤として特定の造粒物を使用する本
発明法と、脱燐剤として生石灰または表面をカルシウム
フェライト化したCaOを使用する従来法によりそれぞ
れ脱燐処理し、その際の溶銑の燐濃度の変化を調べた。
その結果を図3に示す。
【0063】なお、本発明法で使用した脱燐剤は、石灰
源として石灰原石“か焼”の前処理として行われる洗浄
工程で発生した石灰石粉と石灰石を粉砕して得た粉状石
灰石を8:2の割合で用いた。これら石灰源の粒度は2
mm以下であった。また、酸化鉄源としては、工場で発
生する転炉ダスト、鉄鉱石粉及び圧延時に発生するスケ
ール粉を4:4:2の割合で混合して用いた。これら酸
化鉄源の粒度は6mm以下であった。また、従来法で用
いた脱燐剤は、粒度25〜40mm程度の塊石灰石表面
に、約1:2.9の割合の生石灰粉と鉄鉱石粉を水添加
して混合したものを付着させた後、バッチ式炉において
約1200℃で焼成したものである。生成したカルシウ
ムフェライトの量は、塊石灰から生成した核となる生石
灰の量の7〜8%程度である。
【0064】図3において、本発明例(1)は重量比
[Ca]/[Fe]:1.2の脱燐剤を8.7kg/T
(溶銑ton当たり)添加した例、本発明例(2)は重
量比[Ca]/[Fe]:3.0の脱燐剤を7kg/T
(溶銑ton当たり)添加した例、従来法(2)は脱燐
剤として生石灰を5.2kg/T(溶銑ton当たり)
添加した例、従来法(1)は脱燐剤として粒度30mm
程度のCaOの表面をカルシウムフェライト化させたも
のを5.6kg/T(溶銑ton当たり)添加した例で
ある。各試験例でのCaOの添加量は5.2kg/T
(溶銑ton当たり)で一定とし、また、酸素原単位
(固体酸素量と気体酸素量の和)も8Nm/T(溶銑
ton当たり)で一定とした。
【0065】図3によれば、本発明法の脱燐処理では脱
燐剤の融体化が容易であるため、従来法に較べて脱燐速
度が顕著に向上し、溶銑の燐濃度が短時間で低いレベル
まで低下している。また、本発明法では[Ca]/[F
e]が1.2、3.0のいずれの場合でも、実質的に同
様の効果が得られている。
【0066】
【発明の効果】以上述べたように本発明法によれば、ス
ラグの発生量を極力少なくして省資源や省エネルギーに
寄与することができるとともに、溶鋼の製造コストを低
減でき、しかも、環境に悪影響を与えるFを実質的に含
まないスラグを使用して効率的且つ安定的な脱燐処理を
行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】石灰源と酸化鉄源の混合物を造粒した後、これ
を加熱処理して脱燐剤を製造する際に、得られた脱燐剤
の品質や加熱処理における製造上のトラブル発生の有無
を、原料中の[Ca]/[Fe]と加熱温度との関係で
示すグラフ
【図2】溶銑鍋を用いた脱燐処理状況の一例を模式的に
示す説明図
【図3】本発明法と従来法により低珪素溶銑を脱燐処理
した場合において、溶銑の燐濃度の変化を示すグラフ
【符号の説明】
1…溶銑鍋、2…送酸ランス、3…浸漬ランス、4…原
料投入装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C21C 7/068 C21C 7/068 (72)発明者 白山 章 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 渡辺 敦 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 松野 英寿 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 清水 宏 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4K002 AB02 AD01 AD02 AE01 AE10 4K013 BA02 BA03 CA03 CA04 CB03 CC01 CF12 CF13 DA03 EA02 EA03 EA12 EA39 FA01 FA02 4K014 AA03 AB03 AB04 AB12 AC04 AC14 AD01 AD21 AD23

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 珪素濃度が0.1wt%以下の溶銑に対
    して、少なくとも脱燐工程、脱炭工程をこの順序で行う
    溶銑精錬方法において、 脱燐工程では、Fを実質的に含有せず、且つ粒度5mm
    未満の石灰源と粒度15mm未満の酸化鉄源の混合物を
    造粒し、これを加熱処理して得られた脱燐剤を用いるこ
    とにより、30kg/T以下のスラグ量で溶銑中の燐濃
    度を実質的に製品の燐濃度レベルまで低下させた後、脱
    炭工程を実施することを特徴とする溶銑精錬方法。
  2. 【請求項2】 脱炭工程では新たに発生するスラグ量を
    20kg/T以下にして吹錬することを特徴とする請求
    項1に記載の溶銑精錬方法。
  3. 【請求項3】 脱燐工程では転炉型容器を用いて脱燐処
    理を行い、溶湯中に0.2Nm/min・T以下の供
    給量で撹拌ガスを吹き込むとともに、転炉型容器内に
    2.0Nm/min・T以下の供給量(但し、純酸素
    換算量)で酸素ガスまたは酸素含有ガスを供給すること
    を特徴とする請求項1または2に記載の溶銑精錬方法。
  4. 【請求項4】 脱燐工程では鍋または混銑車を用いて脱
    燐処理を行い、溶湯中に0.04Nm/min・T以
    下の供給量で撹拌ガスを吹き込むとともに、鍋または混
    銑車内に0.8Nm/min・T以下の供給量(但
    し、純酸素換算量)で酸素ガスまたは酸素含有ガスを供
    給することを特徴とする請求項1または2に記載の溶銑
    精錬方法。
  5. 【請求項5】 Fを実質的に含有せず、且つ粒度5mm
    未満の石灰源と粒度15mm未満の酸化鉄源の混合物を
    造粒し、これを加熱処理して得られたことを特徴とする
    脱燐剤。
  6. 【請求項6】 石灰石のか焼の前処理として行われる石
    灰原石の洗浄工程で発生する石灰石粉を少なくとも一部
    として含む石灰源と酸化鉄源の混合物を造粒し、これを
    加熱処理して得られたことを特徴とする請求項5に記載
    の脱燐剤。
  7. 【請求項7】 石灰源と、鉄鉱石粉、鉄鉱石の焼結工程
    で発生するダスト、溶銑の脱硫処理時に発生するダス
    ト、鋼材の熱間圧延工程で発生する酸化鉄粉の中から選
    ばれる1種以上の酸化鉄源の混合物を造粒し、これを加
    熱処理して得られたことを特徴とする請求項5または6
    に記載の脱燐剤。
  8. 【請求項8】 石灰源中のCaと酸化鉄源中のFeとの
    重量比[Ca]/[Fe]が0.8以上となるように混
    合された石灰源と酸化鉄源の混合物を造粒し、これを加
    熱処理して得られたことを特徴とする請求項5、6また
    は7に記載の脱燐剤。
  9. 【請求項9】 石灰源と酸化鉄源の混合物を造粒し、こ
    れを乾燥を主目的として900℃未満の温度で加熱処理
    して得られたことを特徴とする請求項5、6、7または
    8に記載の脱燐剤。
  10. 【請求項10】 石灰源中のCaと酸化鉄源中のFeと
    の重量比[Ca]/[Fe]が0.8以上2.0未満と
    なるように混合された石灰源と酸化鉄源の混合物を造粒
    し、これを乾燥と脱炭酸を主目的として900℃以上1
    250℃以下の温度で加熱処理して得られたことを特徴
    とする請求項5、6、7または8に記載の脱燐剤。
  11. 【請求項11】 石灰源中のCaと酸化鉄源中のFeと
    の重量比[Ca]/[Fe]が2.0以上となるように
    混合された石灰源と酸化鉄源の混合物を造粒し、これを
    乾燥と脱炭酸を主目的として900℃以上1450℃以
    下の温度で加熱処理して得られたことを特徴とする請求
    項5、6、7または8に記載の脱燐剤。
  12. 【請求項12】 石灰源と酸化鉄源の混合物を造粒し、
    これを竪型炉、回転炉、流動層炉、移動層炉のいずれか
    で加熱処理して得られたことを特徴とする請求項5、
    6、7、8、9、10または11に記載の脱燐剤。
  13. 【請求項13】 脱燐工程において、請求項6、7、
    8、9、10、11または12に記載の脱燐剤を用いる
    ことを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の溶
    銑精錬方法。
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