JP2013087350A - 非焼成溶銑脱りん材および非焼成溶銑脱りん材を用いた溶銑の脱りん方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】乾ベースで、鉄分の総含有率が50質量%以上の粉粒状の鉄鉱石類と、粉粒状の酸化カルシウム含有物質とを混合し塊成化した溶銑脱りん材であって、酸化アルミニウムの含有率が10質量%以下、全鉄分に対する酸化カルシウムの質量比が0.4以上1.4以下であるとともに、鉄鉱石類と酸化カルシウム含有物質とが滓化した状態で結合していない非焼成溶銑脱りん材とする。
【選択図】図1
Description
「鉄鉱石類」:鉄分の総含有率が50質量%以上の酸化第二鉄(Fe2O3)を含む鉱石であり、微粒状の鉄鉱石や製鉄ダストから製造される鉄分の総含有率が50質量%以上の高炉用焼結鉱を含む。その他にも、転炉ダストおよび酸洗スラッジ(熱延鋼板の酸洗プロセスで塩酸廃液から回収される酸化鉄粉)等といった鉄分の総含有率が50質量%以上の、酸化第二鉄(Fe2O3)を含む製鉄副生成物も含まれる。
・・・(1)
(1)式の中で、( )内に示す化学式の物質はスラグ中に存在することを示し、[ ]内に示す化学式の物質は溶銑中に存在することを示す。溶銑脱りん反応を進行させるためには、十分な濃度のCaOがスラグ中に溶解して存在することが必須であり、そのためには、投入されたCaOを溶融滓化させることが重要となる。しかし、CaOの融点は2843Kと高いため、これを溶融滓化するためには、何らかの滓化促進剤の添加が必要である。
例えば、非特許文献1では、ロータリキルンに石灰とともに鉄鉱石を投入して、カルシウムフェライト化する方法を示している。しかし、ロータリキルン内でのリングフォーメーション(溶融物の付着により発生)の制約から、鉄鉱石の添加量は10%が限界とされている。
CaOをカルシウムフェライト化する方法として、製鉄用高炉で使用する焼結鉱を製造するための焼結機を使用する方法も開示されている。一般に、製鉄プロセスにおける高炉用鉱石原料として使用されている焼結鉱は、鉄鉱石粉等の鉄含有原料に副原料および炭材を加えて焼結機を用いて加熱焼成することによって製造されている。例えば、粉鉄鉱石に生石灰、石灰石等の媒溶剤と粉コークスとを添加し、これらをミキサーで混合したのち成形(造粒)し、その後、焼結機のパレット上に装入し堆積させてから、加熱焼成し、さらにその後、破砕−冷却−篩分けの各工程を経て、約5超〜50mm粒径の成品焼結鉱(焼成塊成鉱)とし、これを高炉内に供給している。特許文献2、3では、粒径2mm以下の石灰石と平均粒径1.5mm以下の微粉鉄鉱石類を直径2〜5mmのペレットとし、その周りに炭剤を被覆して、焼結機で焼成することにより、カルシウムフェライトを製造する方法を提示している。また、特許文献4では、粒度を3mm以下とした粉状石灰石と粉状鉄鉱石に炭材を添加した、Ca/Fe比(モル比)を1.5〜2.5とした原料を、混合および造粒することにより製造した擬似粒子を、焼結機で焼結して製鋼用脱りん材を製造する方法を示している。焼結機は、ロータリキルンに比較して、設備費および燃料費が安価であり、かつ融液が多量に生成するカルシウムフェライト生成に適しているとされる。
このため、事前の加熱処理なしに製造可能な溶銑脱りん材を使用することが有効と考えられる。
更に、Al2O3源としてはボーキサイト等が考えられるが高価である。レンガ屑等の廃材を使用することも考えられるが、大量に使用した場合、廃材に含まれる不純物が脱りんに悪影響を及ぼすことも懸念される。したがって、滓化促進剤に含まれるAl2O3の配合比はできる限り低くすべきである。特許文献5では、Al2O3含有率を低くする目的で、Al2O3と同様に融点低減効果を有し、脱りん反応にも寄与する酸化鉄(Fe2O3)を添加することも検討した。その結果、CaO:37〜60質量%、Al2O3:30〜55質量%およびFe2O3:4.9〜21質量%の比率で混合した混合物を、圧縮成型や加圧成型することにより粒状化した滓化促進剤を提案した。しかし、Al2O3含有率は30〜55質量%と未だ高い値である。
(1)乾ベースで、鉄分の総含有率が50質量%以上の粉粒状の鉄鉱石類と、粉粒状の酸化カルシウム含有物質とを混合し塊成化した溶銑脱りん材であって、酸化アルミニウムの含有率が10質量%以下、全鉄分に対する酸化カルシウムの質量比が0.4以上1.4以下であるとともに、鉄鉱石類と酸化カルシウム含有物質とが滓化した状態で結合していないことを特徴とする非焼成溶銑脱りん材。
(3)前記酸化カルシウム含有物質として、石灰を1223K以上1373K以下で加熱焼成処理することにより製造した生石灰を分級し、分級点下の生石灰粉を使用することを特徴とする(1)項または(2)項に記載の非焼成溶銑脱りん材。
(5)乾ベースで、鉄分の総含有率が50質量%以上の粉粒状の鉄鉱石類と、粉粒状の酸化カルシウム含有物質とを混合した混合物であって、酸化アルミニウムの含有率が10質量%以下であるとともに全鉄分に対する酸化カルシウムの質量比が0.4以上1.4以下である混合物を、圧縮塊成化することを特徴とする(1)項から(4)項までのいずれか1項に記載の非焼成溶銑脱りん材の製造方法。
(7)(5)項または(6)項に記載の方法により製造された非焼成溶銑脱りん材を用いることを特徴とする溶銑の脱燐方法。
まずは、粉粒状の鉄鉱石1と、粉粒状の酸化カルシウム含有物質2とを所定の割合で混合機3に供給し、混合する。混合した粉(混合物4)は、ダブルロール型のブリケット化装置5に通すことにより圧縮塊成化され、酸化鉄とCaOが近接的に配置されたブリケット化装置生産物6となる。鉄鉱石および酸化カルシウム含有物質の粒度としては、約5mm篩い下とすることが望ましい。ブリケット化装置生産物6を構成する酸化鉄とCaOの接触面積は大きいほど、相互の反応は起こりやすくなり、高効率な脱りんを行うことができる。したがって、反応促進の観点からは、粒度は細かくすることが望まれる。ただし、5mm篩い下よりも更に小さくした場合、篩い分級装置の篩い目で目詰まりが発生し易くなり、篩い効率が悪化することが懸念される。したがって、鉄鉱石および酸化カルシウム含有物質の粒度としては、約5mm篩い下とすることが望ましい。
Ca(OH)2=CaO+H2O ・・・・・(3)
生石灰粉としては、石灰石をロータリキルン等により1223K以上1373K以下で焼成し、製造した生石灰を篩い分級した篩い下品を使用することが望ましい。1223K未満では(2)式に示す石灰石の分解が不十分である。一方、1373Kよりも高い温度で焼成した場合は、十分な強度を有する非焼成溶銑脱りん材(ブリケット化装置生成物6)を製造することが困難になる。生石灰粉は鉄鉱石1と混合して圧縮成型する際、バインダーとしての機能も有しているが、焼成時の温度が高くなると生石灰粉の表面が硬化するため、成型性が悪化する。強度が不十分なブリケット化装置生成物は、脱りん炉に搬送する過程で崩壊する。崩壊により、酸化鉄とCaOの近接配置が破壊され、脱りん材としての能力は低下する。
非焼成溶銑脱りん材を、脱りん炉内で溶融させ、カルシウムフェライト化させるためには、非焼成溶銑脱りん材の融点は、脱りん処理中の溶銑温度以下とすることが望ましい。即ち、非焼成溶銑脱りん材の融点は1573K以下となるようにすることが望ましい。そのためには、鉄鉱石粉と酸化カルシウム含有物質粉の混合比率を最適化することが重要である。
比較例1−1は、焼結鉱粉のみの結果である。融点は1873Kで、溶銑温度と比べ高かった。非焼成溶銑脱りん材に含まれるAl2O3濃度は1.70質量%となる。
発明例1−1は、焼結鉱粉を質量比で0.8、生石灰粉を質量比で0.2の比率で混合したケースであるが、融点は1454Kと1573Kよりも低い温度とすることができた。この時のCaO/T.Feは0.55となる。非焼成溶銑脱りん材に含まれるAl2O3濃度は1.41質量%となる。
発明例1−2は、焼結鉱粉を質量比で0.7、生石灰粉を質量比で0.3の比率で混合したケースである。融点は1453Kと1573Kよりも低かった。この時のCaO/T.Feは0.83となる。非焼成溶銑脱りん材に含まれるAl2O3濃度は1.27質量%となる。
発明例1−3は、焼結鉱粉を質量比で0.68、生石灰粉を質量比で0.32の比率で混合したケースである。融点は1453Kと1573Kよりも低かった。この時のCaO/T.Feは0.9となる。非焼成溶銑脱りん材に含まれるAl2O3濃度は1.24質量%となる。
発明例1−4は、焼結鉱粉を質量比で0.60、生石灰粉を質量比で0.40の比率で混合したケースである。融点は1556Kと1573Kよりも低かった。この時のCaO/T.Feは1.22となる。非焼成溶銑脱りん材に含まれるAl2O3濃度は1.12質量%となる。
発明例1−5は、焼結鉱粉を質量比で0.57、生石灰粉を質量比で0.43の比率で混合したケースである。融点は1543Kと1573Kよりも低かった。この時のCaO/T.Feは1.36となる。非焼成溶銑脱りん材に含まれるAl2O3濃度は1.08質量%となる。
発明例1−6は、焼結鉱粉を質量比で0.7、生石灰粉を質量比で0.1、取鍋スラグを質量比で0.2の比率で混合したケースである。融点は1540Kと1573Kよりも低かった。この時のCaO/T.Feは0.57となる。非焼成溶銑脱りん材に含まれるAl2O3濃度は7.46質量%となる。
発明例1−7は、焼結鉱粉を質量比で0.6、生石灰粉を質量比で0.2、取鍋スラグを質量比で0.2の比率で混合したケースである。融点は1453Kと1573Kよりも低かった。この時のCaO/T.Feは0.91となる。非焼成溶銑脱りん材に含まれるAl2O3濃度は7.31質量%となる。
発明例1−8は、焼結鉱粉を質量比で0.5、生石灰粉を質量比で0.3、取鍋スラグを質量比で0.2の比率で混合したケースである。融点は1543Kと1573Kよりも低かった。この時のCaO/T.Feは1.37となる。非焼成溶銑脱りん材に含まれるAl2O3濃度は7.17質量%となる。
比較例1−2は、生石灰粉のみの結果である。融点は1873Kよりも高かった(測定値上限よりも高い温度であった)。
非焼成溶銑脱りん材の脱りん能確認試験を、1チャージ当り最大2.5トンの溶銑を処理することが可能な試験用転炉により行った。
比較例2−1は、鉄鉱石と石灰石の混合物を、約1623Kで加熱溶融することにより製造した、カルシウムフェライト系溶銑脱りん材を使用したケースである。カルシウムフェライト系溶銑脱りん材の成分分析値は表3に示すとおりであり、酸化鉄およびCaOを主成分としている。
発明例2−1は、非焼成溶銑脱りん材を使用したケースである。非焼成溶銑脱りん材の成分分析値は表3に示すとおりであり、全鉄分(T.Fe)に対するCaOの比率が、0.67となるように焼結鉱粉と生石灰粉を混合し、さらに混合物を、図1、2に示すダブルロール型のブリケット化装置5に供給することにより製造した。焼結鉱粉と生石灰粉の成分分析値は表1に示したとおりである。また、焼結鉱粉と生石灰粉の粒度構成を表6に示す。
発明例2−2でも、発明例2−1と同様に非焼成溶銑脱りん材を使用した。表4に、脱りん能確認試験における試験条件および結果を示す。約1573Kの溶銑(溶銑中[%Si]=0.4質量%)2トンを試験転炉に注銑した後、非焼成溶銑脱りん材21.0kgを転炉の上部から投入した。また、副原料として表5に示す成分を有する塊生石灰を12.7kg投入した。その後、上吹きランスから酸素を3.5m3/分(標準状態)の速度で送酸して吹錬を開始した。吹錬時間は約7分間とした。また、上吹きランスからは酸素とともに生石灰粉を毎分2.8kgの速度で吹き付け、装入塩基度(=CaO/SiO2)が2.0となるようにした。溶銑中[%P]は0.11質量%から0.01質量%に減少することが確認された。即ち、比較例2−1で使用したカルシウムフェライト系溶銑脱りん材を使用した時と遜色がない結果が得られた。また、この結果は、極低りん鋼([P]<0.015質量%)の規定をクリアしていることから、十分な脱りん能を有していると判断できる。
石灰石から生石灰を製造する際の焼成温度は、1223K以上1373K以下とすることが望ましい。1223K未満では(2)式に示した石灰石の分解が不十分である。一方、1373Kよりも高い温度で焼成した場合、十分な強度を有する塊成化物(ブリケット化装置生成物)を製造することが困難になる。脱りん炉で使用するためにはブリケット化装置生成物1個当りの圧壊強度は100N/塊以上とする必要がある。表7には、生石灰製造時の焼成温度とブリケット化装置生成物の圧壊強度との関係を示す。
発明例3−1は、石灰の焼成温度を1273Kとした。非焼成溶銑脱りん材の1個当りの圧壊強度は260N/塊であり、必要とされる圧壊強度(100N/塊)よりも大きかった。
発明例3−2は、石灰の焼成温度を1323Kとした。非焼成溶銑脱りん材の1個当りの圧壊強度は150N/塊であり、必要とされる圧壊強度(100N/塊)よりも大きかった。
発明例3−3は、石灰の焼成温度を1373Kとした。非焼成溶銑脱りん材の1個当りの圧壊強度は110N/塊であり、必要とされる圧壊強度(100N/塊)よりも大きかった。
2 酸化カルシウム含有物質
3 混合機
4 混合物
5 ダブルロール型ブリケット化装置
6 ブリケット化装置生産物
6a ブリケット化装置生産物粗粒品(非焼成溶銑脱りん材)
6b ブリケット化装置生産物粉粒状品
7 篩い分級装置
8 脱りん炉
9 ロール
10 モールド(ポケット)
Claims (7)
- 乾ベースで、鉄分の総含有率が50質量%以上の粉粒状の鉄鉱石類と、粉粒状の酸化カルシウム含有物質とを混合し塊成化した溶銑脱りん材であって、酸化アルミニウムの含有率が10質量%以下、全鉄分に対する酸化カルシウムの質量比が0.4以上1.4以下であるとともに、前記鉄鉱石類と前記酸化カルシウム含有物質とが滓化した状態で結合していないことを特徴とする非焼成溶銑脱りん材。
- 前記鉄鉱石類として、製鉄用高炉の原料である焼結鉱を分級し、分級点以下の焼結鉱粉を使用することを特徴とする請求項1に記載の非焼成溶銑脱りん材。
- 前記酸化カルシウム含有物質として、石灰を1223K以上1373K以下で加熱焼成処理することにより製造した生石灰を分級し、分級点下の生石灰粉を使用することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非焼成溶銑脱りん材。
- 前記非焼成溶銑脱りん材の体積が1cm3以上15cm3以下であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の非焼成溶銑脱りん材。
- 乾ベースで、鉄分の総含有率が50質量%以上の粉粒状の鉄鉱石類と、粉粒状の酸化カルシウム含有物質とを混合した混合物であって、酸化アルミニウムの含有率が10質量%以下であるとともに全鉄分に対する酸化カルシウムの質量比が0.4以上1.4以下である混合物を、圧縮塊成化することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の非焼成溶銑脱りん材の製造方法。
- 前記圧縮塊成化の装置としてダブルロール型ブリケット化装置を用いることを特徴とする請求項5に記載の非焼成溶銑脱りん材の製造方法。
- 請求項5または請求項6に記載の方法により製造された非焼成溶銑脱りん材を用いることを特徴とする溶銑の脱燐方法。
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