JP2001181723A - 溶鉄脱燐用フラックス及び低燐溶銑の製造方法 - Google Patents

溶鉄脱燐用フラックス及び低燐溶銑の製造方法

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JP2001181723A JP36203699A JP36203699A JP2001181723A JP 2001181723 A JP2001181723 A JP 2001181723A JP 36203699 A JP36203699 A JP 36203699A JP 36203699 A JP36203699 A JP 36203699A JP 2001181723 A JP2001181723 A JP 2001181723A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶銑などの脱燐処理を高効率に行うことがで
きる溶鉄脱燐用フラックス及びこれを用いた低燐溶銑の
製造方法を提供する。 【解決手段】 CaO、CaCO、Ca(OH)
中から選ばれる1種以上を主体とする粉末と酸化鉄を主
体とする粉末の混合物を成形したフラックスであって、
フラックス中に含まれるCaO(但し、CaCO及び
Ca(OH)にあってはCaO換算量)とFetO
(但し、FetO:FeO、Fe及びFe
の総和)の重量比[CaO/FetO]が0.25〜4
であることを特徴とする溶鉄脱燐用フラックスであり、
この脱燐用フラックスを用いた低燐溶銑の製造法は、脱
燐処理容器内の溶銑に酸素を供給するとともに、浴面下
に撹拌ガスを吹き込んで浴撹拌を行い、前記脱燐用フラ
ックスを溶銑に添加する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶鉄脱燐用のフラ
ックス及びこれを用いた低燐溶銑の製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来、製鋼のトータルコストのミニマム
化や低燐溶銑の安定した製造を目的として、以下のよう
な溶銑脱燐方法が提案されている。 (1) トピードカー内の溶銑に対して、酸化鉄、石灰など
の脱燐用フラックスをインジェクションして予備脱燐を
行う方法(例えば、特開平10−168509号公報)
【0003】(2) 取鍋内の溶銑に対して酸化鉄、石灰な
どの脱燐用フラックスをインジェクションするか若しく
は吹き付けして予備脱燐を行う方法 (3) 2基の転炉を用いて、一方の転炉で脱燐を行い、他
方の転炉で脱炭を行う方法(例えば、特開昭63−19
5210号公報) (4) 1基の転炉を用いて、脱燐、脱炭工程を連続して行
う方法(例えば、特開平5−247511号公報)
【0004】上記(1)、(2)の方法では、T.Feが低く
且つ[CaO/SiO]が高いスラグを用いるため、
脱燐と脱硫が同時に進行するという利点がある。また、
上記(3)、(4)の方法では、酸化剤として酸素ガスを使用
でき、脱燐処理時の温度制御にはスクラップを用いるこ
とができるため、生産性の向上を図ることができる利点
がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記(1)、(2)
の方法では、酸化剤として鉄鉱石やスケール粉などを大
量に使用するため処理温度が低下し、このため次工程の
転炉でのスクラップ消費量が低下し、結果として溶鋼生
産量が低減するという問題がある。また、これらの方法
において酸化剤として酸素ガスを使用する場合、酸素ガ
スインジェクションに伴う撹拌が過剰となり、このため
T.Feが極端に低くなって脱炭が優先的に進行し、且
つ脱燐が進行しにくくなるという問題がある。また、上
記(3)の方法においては、上吹きする酸素ガス流量が過
大な場合、T.Feが高く、脱燐中にも優先的に脱炭が
進行してしまい、結果的に脱燐処理が遅延し、生産性が
低下する場合もある。
【0006】また、上記(4)の方法により脱燐と脱炭を
同じ転炉内で連続的に行った場合、脱炭時におけるスラ
グからの復燐を抑制するために、脱燐、脱炭工程の途中
で炉を傾動し、スラグ排滓を行う必要がある。スラグ排
滓を効率的に行うためには、a)1400℃以上での高
温処理、b)スラグの低融点化、のいずれかを行う必要
があるが、a)の場合には脱燐反応の遅延化を招き、ま
た、b)の場合はスラグ量(媒溶剤添加量)の増加につ
ながり、結果的にコストメリットを享受できない場合も
ある。
【0007】本発明の目的は、上述した従来の脱燐方法
の問題に鑑み、溶銑などの脱燐処理を高効率に行うこと
ができる溶鉄脱燐用フラックス及びこれを用いた低燐溶
銑の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、溶銑脱燐
処理を高効率化する方策について、投入するフラックス
の組成などの面から検討を行い、その結果、石灰石や石
灰などのCaO源(CaO、CaCO、Ca(OH)
の中から選ばれる1種以上)の粉末と酸化鉄粉末とを
CaO/FetO(CaO:CaCO及びCa(O
H)にあってはCaO換算量、FetO:FeO、F
及びFeの総和)の割合が特定の範囲に
なるように混合して成形し、好ましくはこれを加熱処理
して少なくとも一部にカルシウムフェライトを生成させ
たものを脱燐用フラックスとして用いることにより、従
来の媒溶剤を使用した場合に比べて格段に優れた脱燐効
率が得られること、また、この脱燐用フラックスを特定
の方法で行われる低燐溶銑の製造に用いることにより、
特に効率的な脱燐処理を行うことができることを見い出
した。
【0009】本発明はこのような知見に基づきなされた
もので、その特徴は以下のとおりである。 [1]CaO、CaCO、Ca(OH)の中から選
ばれる1種以上を主体とする粉末と酸化鉄を主体とする
粉末の混合物を成形したフラックスであって、フラック
ス中に含まれるCaO(但し、CaCO及びCa(O
H)にあってはCaO換算量)とFetO(但し、F
etO:FeO、Fe及びFe の総和)の
重量比[CaO/FetO]が0.25〜4であること
を特徴とする溶鉄脱燐用フラックス。
【0010】[2]上記[1]の脱燐用フラックスにおい
て、CaO、CaCO、Ca(OH)の中から選ば
れる1種以上を主体とする粒径1mm以下の粉末と酸化
鉄を主体とする粒径1mm以下の粉末の混合物を成形し
たことを特徴とする溶鉄脱燐用フラックス。 [3]上記[1]又は[2]の脱燐用フラックスにおい
て、成形後加熱処理を施して少なくとも一部にカルシウ
ムフェライトを生成させたことを特徴とする溶鉄脱燐用
フラックス。
【0011】[4]上記[1]〜[3]のいずれかの脱燐
用フラックスを用い、脱燐処理容器内の溶銑に酸素を供
給するとともに、浴面下に撹拌ガスを吹き込んで浴撹拌
を行う低燐溶銑の製造方法であって、前記脱燐用フラッ
クスを溶銑に添加することを特徴とする低燐溶銑の製造
方法。 [5]上記[4]の製造方法において、インジェクション
ランスを通じて、浴面下に撹拌ガスとともに脱燐用フラ
ックスを吹き込むことを特徴とする低燐溶銑の製造方
法。
【0012】[6]上記[4]の製造方法において、底吹
きノズル又は横吹きノズルから浴中に撹拌ガスを吹き込
むとともに、脱燐用フラックスを浴面上への上置き及び
/又はインジェクションランスを通じた浴面下への吹き
込みにより、浴に対して添加することを特徴とする低燐
溶銑の製造方法。 [7]上記[4]〜[6]のいずれかの製造方法におい
て、脱燐処理前のSi濃度が0.2重量%以下の溶銑に
対して脱燐処理を行うことを特徴とする低燐溶銑の製造
方法
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の脱燐用フラックスは、C
aO、CaCO、Ca(OH)の中から選ばれる1
種以上を主体とする粉末(以下、便宜上“CaO源の粉
末”という)と酸化鉄を主体とする粉末(以下、便宜上
“酸化鉄粉末”という)の混合物を成形し、好ましくは
これを加熱処理して少なくとも一部にカルシウムフェラ
イトを生成させたフラックスであって、フラックス中に
含まれるCaO(但し、CaCO及びCa(OH)
にあってはCaO換算量)とFetO(但し、Fet
O:FeO、Fe及びFeの総和)の重量
比[CaO/FetO]が0.25〜4からなるもので
ある。
【0014】このようなCaO源の粉末と酸化鉄粉末の
混合物を成形して得られた脱燐用フラックスを用いるこ
とにより高効率の脱燐処理が可能となるのは、CaO源
の粉末とメタル酸化源(酸化鉄)の粉末が適度な割合で
均質に混合され且つ成形されたフラックスは、浴中にお
いてCaO源とメタル酸化源とが極く近接した状態で脱
燐反応に関与できるためであると考えられる。すなわ
ち、溶銑脱燐プロセスではメタル中Pとメタル酸化源と
によってPが生成し、このPがフラックス
中のCaOによって3CaO・P、4CaO・P
などを主体とした複合酸化物として固定され、ス
ラグ側へ除去される。したがって、CaO源の粉末とメ
タル酸化源(酸化鉄)の粉末が適度な割合で均質に混合
され且つ成形されたフラックスが浴中に投入された場
合、CaO源とメタル酸化源が極く近接した状態で上記
脱燐反応に関与するため、脱燐反応が効率的に生じるも
のと考えられる。
【0015】また、上記脱燐用フラックスが成形後、加
熱処理されて少なくとも一部にカルシウムフェライトを
生成させたものである場合には、CaO源として通常使
用される生石灰などと比較して低融点の化合物組成(例
えば、CaO・Fe:1205℃,2CaO・F
:1443℃)を有することになり、脱燐処理
中のスラグ滓化特性が飛躍的に改善されることも脱燐効
率が向上する要因として挙げられる。
【0016】脱燐用フラックス中に含まれるCaO(但
し、CaCO及びCa(OH)にあってはCaO換
算量)とFetO(但し、FetO:FeO、Fe
及びFeの総和)の割合の適正範囲を調査する
ため、CaO源の粉末と酸化鉄粉末とを、CaOとFe
tOの重量比[CaO/FetO]を0.15〜10の
範囲で種々変えて混合し、この混合物を造粒成形するこ
とによりペレット状の脱燐用フラックスを製造し、これ
らを図3に示す取鍋型精錬容器を用いた溶銑脱燐と図4
に示す転炉型精錬容器を用いた溶銑脱燐において、それ
ぞれ媒溶剤として投入した。なお、上記脱燐用フラック
スはCaO源の粉末として石灰石粉末または石灰粉末を
用い、このCaO源の粉末と酸化鉄粉末の混合物に水を
加えて混合し、造粒機で造粒成形した後、表3に示す種
々の条件で加熱処理した。
【0017】図3の取鍋型精錬容器を用いた溶銑脱燐の
処理条件を表1に示す。この脱燐処理では、インジェク
ションランスから浴中に媒溶剤と撹拌ガスを吹き込むと
ともに、上吹きランスから浴面に酸素ガスを吹き込ん
だ。また、図4の転炉型精錬容器を用いた溶銑脱燐の処
理条件を表2に示す。この脱燐処理では、炉上ホッパー
から媒溶剤を浴面に上置き装入するとともに、上吹きラ
ンスから浴面に酸素ガスを吹き込んだ。なお、これらの
溶銑脱燐では、上吹きランスからの送酸条件、処理前後
の溶銑温度、処理時間などは可能な限り一定となるよう
に制御した。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】以上の溶銑脱燐における処理終了時のメタ
ル中[P]濃度を、フラックス中に含まれるCaO(但
し、CaCO及びCa(OH)にあってはCaO換
算量)とFetO(但し、FetO:FeO、Fe
及びFeの総和)の重量比[CaO/Fet
O]と表3に示すフラックスの製造条件(CaO源の粉
末の種類及び加熱処理条件)で整理したものを図1およ
び図2に示す。このうち図1(a),(b)は取鍋型精
錬容器を用いた溶銑脱燐の結果を、図2(a),(b)
は転炉型精錬容器を用いた溶銑脱燐の結果を、それぞれ
示している。
【0022】図1および図2によれば、取鍋型精錬容器
及び転炉型精錬容器のいずれを用いた場合でも、フラッ
クス中のCaOとFetOの重量比[CaO/Fet
O]と処理終了時のメタル中[P]濃度には相関関係が
認められ、重量比[CaO/FetO]:0.25〜4
の範囲において、処理終了後のメタル中[P]濃度が顕
著に低下(通常の溶銑脱燐において基準となる処理終了
後の[P]濃度:0.02重量%以下)している。この
ため本発明では、フラックス中のCaO(但し、CaC
及びCa(OH)にあってはCaO換算量)とF
etO(但し、FetO:FeO、Fe及びFe
の総和)の重量比[CaO/FetO]を0.2
5〜4の範囲に規定した。
【0023】また、図1及び図2によれば、上記のよう
な組成の本発明の脱燐用フラックスのなかでも、成形後
の加熱処理温度が高いほど処理終了後のメタル中[P]
濃度が低下しており、これらの結果から脱燐用フラック
スとしては成形後に900℃以上、好ましくは1100
℃以上、さらに好ましくは1300℃以上の温度で加熱
処理することにより少なくとも一部にカルシウムフェラ
イトを生成させたものが望ましい。
【0024】脱燐用フラックスの材料となるCaO源の
粉末と酸化鉄粉末としては、不可避的に含まれる粗粒状
のものを除き、粒径が1mm以下、好ましくは0.5m
m以下、より好ましくは0.3mm以下のものを用いる
のが望ましい。このような粒径の小さいCaO源の粉末
と酸化鉄粉末とが均質に混在することにより、浴中にお
いてCaO源とメタル酸化源である酸化鉄が特に近接し
た状態で脱燐反応に関与し、より効率的な脱燐反応が生
じる。
【0025】脱燐用フラックスの主たる材料はCaO源
の粉末と酸化鉄粉末であるが、必要に応じてバインダー
(例えば、石灰系バインダーやポリエチレン、ポリスチ
レン、ポリビニルアルコールなどのような有機系化合
物)などの添加剤を適量配合してもよい。但し、これら
を過剰に添加すると、却ってバインダーとしての機能が
低下し、成形体(ペレットなど)として必要な強度が確
保できなくなるため、これら添加剤の添加量は材料全体
で20重量%以下とすることが好ましい。
【0026】通常、CaO源の粉末としては、石灰石、
石灰(CaOである生石灰、一部に未焼成の成分が含ま
れる所謂焼石灰など)の中から選ばれる1種以上の粉末
が用いられ、例えば、石灰石を粉砕して得られた粉末、
石灰石切断時に発生した微粉末、焼石灰焼成時に発生し
た粉末など、任意のものを使用できるが、いずれもCa
O、CaCO、Ca(OH)の1種以上を80重量
%以上、好ましくは90重量%以上含有するものである
ことが望ましい。また、酸化鉄粉末としては、例えば、
高炉ダスト、転炉ダスト、スラリー、スケール粉末な
ど、任意のものを用いることができる。
【0027】脱燐用フラックスの成形法も任意であり、
例えば、CaO源の粉末と酸化鉄粉末を水などの存在下
でなるべく均一に混合(必要に応じて、さらに添加剤を
混合)し、ペレタイザーやドラムミキサーなどで造粒す
ることにより、ペレット形状などの任意の形状に形成す
ればよいが、CaO源の粉末と酸化鉄粉末の均質性が維
持できる成形法あればその方法は問わない。また、成形
後の加熱処理はロータリーキルン、マッフル炉など任意
の設備で行うことができ、また、その処理は連続処理及
びバッチ処理のいずれでもよく、フラックスを所定の温
度まで均一に加熱できるものであれば、設備や加熱方式
は問わない。
【0028】次に、本発明の脱燐用フラックスを用いた
低燐溶銑の製造方法について説明する。本発明の脱燐用
フラックスが適用できる溶銑脱燐方式に特別な制約はな
く、精錬容器についても取鍋型精錬容器、トピードカ
ー、転炉型精錬容器、その他の任意の脱燐処理用容器を
用いることができるが、そのなかでも、脱燐処理容器内
の溶銑に酸素を供給するとともに、浴面下に撹拌ガスを
吹き込んで浴撹拌を行う方式に適用した場合に、本発明
の脱燐用フラックスの機能を最大限に発揮させることが
できる。この場合、通常、脱燐用フラックスは浴面上へ
の上置き及び/又は浴面下への吹き込みにより浴に対し
て添加される。
【0029】このような方式による低燐溶銑の製造は、
先に述べたいずれの精錬容器で実施してもよいが、上吹
きランスからの気体酸素の吹き込みを可能とし、且つ溶
湯の効果的な撹拌を確保するという観点からは、取鍋型
精錬容器又は転炉型精錬容器を用いるのが好ましい。ま
た、媒溶剤としては本発明の脱燐用フラックスと併用し
て適量の石灰(生石灰、一部に未焼成の成分が含まれる
所謂焼石灰など)などを用いることもでき、これらの媒
溶剤は精錬容器に備えられた上部ホッパーなどから一括
投入又は分割投入によって浴面に上置き装入するか、若
しくはインジェクションランスから撹拌ガスとともに浴
中に吹き込む、などの方法により精錬容器内に投入され
る。
【0030】また、媒溶剤の投入量に特別な制約はな
く、溶銑中のSi、S、Pの各濃度に応じて投入量を決
定すればよいが、媒溶剤として本発明の脱燐用フラック
スのみを用いる場合、本発明の脱燐用フラックスと他の
媒溶剤(通常、石灰)とを併用する場合のいずれにおい
ても、スラグ発生量の制御及びスラグ処理量の増加に伴
うコストの低減化のために、媒溶剤の投入量は40kg
/溶銑ton程度を上限とすること好ましい。本発明の
脱燐用フラックスを用いることにより脱燐効率が効果的
に向上するため、このような少ない媒溶投入量でも効率
的な脱燐処理を行うことができる。
【0031】溶銑への酸素の供給は、例えば、上吹きラ
ンスによる浴面への酸素(酸素ガス又は酸素含有ガス)
の吹き付け、固体酸素源(通常、酸化鉄源)の浴面への
上置き装入又はインジェクションランスなどを通じた浴
中への吹き込みなどの方法により行われ、また、これら
の2つ以上の方法を併用してもよい。また、撹拌ガスは
上記インジェクションランスを通じて浴中に吹き込むか
(この場合、媒溶剤とともに吹き込んでもよいし、撹拌
ガスのみを吹き込んでもよい)、或いは精錬容器に備え
られた底吹きノズル又は横吹きノズルから浴中に吹き込
んでもよい。一般に、取鍋型精錬容器の場合にはインジ
ェクションランスによる吹き込みが、また、転炉型精錬
容器の場合には底吹きノズル又は横吹きノズルを通じた
吹き込みが行われる。
【0032】したがって、本発明の脱燐用フラックスを
用いた低燐溶銑の製造方法の特に好ましい形態は以下の
通りである。 (1) 取鍋型精錬容器内の浴面上に上吹きランスから酸素
を供給するとともに、インジェクションランスを通じ
て、浴面下に撹拌ガスとともに本発明の脱燐用フラック
ス(または、脱燐用フラックス+他の媒溶剤)を吹き込
む低燐溶銑の製造方法。 (2) 転炉型精錬容器内の浴面上に上吹きランスから酸素
を供給するとともに、底吹きノズル又は横吹きノズルか
ら浴中に撹拌ガスを吹き込み、本発明の脱燐用フラック
ス(または、脱燐用フラックス+他の媒溶剤)を浴面上
へ上置き装入する低燐溶銑の製造方法。
【0033】また、脱燐効率を高めるには溶銑中のSi
濃度が低い方が有利であり、このため本発明の脱燐用フ
ラックスを用いた低燐溶銑の製造では、Si濃度が0.
2重量%以下の溶銑に対して脱燐処理を行うことが好ま
しい。また、製造される低燐溶銑の好ましいP量は0.
2重量%以下である。また、脱燐処理後の他の溶銑成分
としては、通常、C:3.3〜4.5重量%、S:0.
030重量%以下である。通常、脱燐処理開始前の溶銑
温度は1250〜1350℃であるが、脱燐用フラック
スの早期の溶融を促進させるためには1270℃以上と
することが好ましい。なお、本発明の脱燐用フラックス
は溶銑脱燐に好適なものであるが、それ以外の溶鉄の脱
燐処理にも適用できる。
【0034】
【実施例】[実施例1]図3に示すような取鍋型精錬容
器(150ton)を用いて溶銑脱燐を実施し、低燐溶
銑を製造した。この実施例では、石灰石粉末又は石灰粉
末と酸化鉄粉末とを水分の存在下で混合・造粒して成形
した後、加熱処理して得られたペレット状のフラックス
であって、含有するCaO(但し、CaCO及びCa
(OH)にあってはCaO換算量)とFetO(但
し、FetO:FeO、Fe及びFeの総
和)の重量比[CaO/FetO]と加熱処理温度が種
々異なる脱燐用フラックスを用いて、これをインジェク
ションランスから撹拌ガス(窒素ガス又はArガスを主
体とするガス)とともに浴中に吹き込むとともに、上吹
きランスから送酸を行うことで溶銑脱燐を行った。
【0035】なお、本実施例における主要な処理条件は
表1と同様であり、また処理される溶銑の成分、温度条
件、供給酸素量、フラックスを通じて供給されるCaO
量などは可能な限り一定となるように留意した。また、
目標とする処理終了時のメタクリル中P濃度[P]は
0.02重量%以下とした。
【0036】各実施例の処理終了時のメタル中P濃度
[P]を、脱燐用フラックスの組成及び加熱処理温度、
その他の脱燐処理条件とともに表4〜表6に示す。これ
によれば、本発明例の脱燐用フラックスを用いた場合に
は、いずれも処理終了時のメタル中P濃度[P]≦0.
02重量%が達成されているのに対し、比較例の脱燐用
フラックスを用いた場合には、いずれも処理終了時のメ
タル中P濃度[P]≦0.02重量%が達成されていな
い。
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】[実施例2]図4に示すような転炉型精錬
容器(350ton)を用いて溶銑脱燐を実施し、低燐
溶銑を製造した。この実施例では、石灰石粉末又は石灰
粉末と酸化鉄粉末とを水分の存在下で混合・造粒して成
形した後、加熱処理して得られたペレット状のフラック
スであって、含有するCaO(但し、CaCO及びC
a(OH)にあってはCaO換算量)とFetO(但
し、FetO:FeO、Fe及びFeの総
和)の重量比[CaO/FetO]と加熱処理温度が種
々異なる脱燐用フラックスを用いて、これを炉上ホッパ
ーから上置き装入し(一括投入又は分割投入)、底吹き
ノズルから撹拌ガス(窒素ガス又はArガスを主体とす
るガス)を浴中に吹き込むとともに、上吹きランスから
送酸を行うことで溶銑脱燐を行った。
【0041】なお、本実施例における主要な処理条件は
表2と同様であり、また、処理される溶銑の成分、温度
条件、供給酸素量、フラックスを通じて供給されるCa
O量などは可能な限り一定となるように留意した。ま
た、目標とする処理終了時のメタル中P濃度[P]は
0.02重量%以下とした。
【0042】各実施例の処理終了時のメタル中P濃度
[P]を、脱燐用フラックスの組成及び加熱処理温度、
その他の脱燐処理条件とともに表7〜表9に示す。これ
によれば、本発明例の脱燐用フラックスを用いた場合に
は、いずれも処理終了時のメタル中P濃度[P]≦0.
02重量%が達成されているのに対し、比較例の脱燐用
フラックスを用いた場合には、いずれも処理終了時のメ
タル中P濃度[P]≦0.02重量%が達成されていな
い。
【0043】
【表7】
【0044】
【表8】
【0045】
【表9】
【0046】
【発明の効果】以上述べたように、本願の請求項1乃至
請求項3の発明に係る脱燐用フラックスを用いることに
より、溶銑などの脱燐処理を高効率に実施することがで
きる。また、本願の請求項4乃至請求項7の発明に係る
低燐溶銑の製造方法によれば、上記脱燐用フラックスの
機能を最大限に発揮させ、特に効率的な溶銑脱燐を行う
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】取鍋型精錬容器を用いた溶銑脱燐であって、C
aO源の粉末と酸化鉄粉末の混合物を成形した後、加熱
処理して得られた脱燐用フラックスを用いて実施された
溶銑脱燐において、処理終了時のメタル中[P]濃度
を、脱燐用フラックス中に含有されるCaOとFetO
の重量比[CaO/FetO]と脱燐用フラックスの製
造条件(CaO源の粉末の種類及び加熱処理条件)で整
理して示したグラフ
【図2】転炉型精錬容器を用いた溶銑脱燐であって、C
aO源の粉末と酸化鉄粉末の混合物を成形した後、加熱
処理して得られた脱燐用フラックスを用いて実施された
溶銑脱燐において、処理終了時のメタル中[P]濃度
を、脱燐用フラックス中に含有されるCaOとFetO
の重量比[CaO/FetO]と脱燐用フラックスの製
造条件(CaO源の粉末の種類及び加熱処理条件)で整
理して示したグラフ
【図3】取鍋型精錬容器を用いた本発明による低燐溶銑
の製造法の一実施状況を示す説明図
【図4】転炉型精錬容器を用いた本発明による低燐溶銑
の製造法の一実施状況を示す説明図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 菊地 良輝 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 村井 剛 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 渡辺 敦 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 赤井 真一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 新井 学 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4K014 AA03 AB03 AB04 AB06 AB12 AC08 AC11 AC16

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 CaO、CaCO、Ca(OH)
    中から選ばれる1種以上を主体とする粉末と酸化鉄を主
    体とする粉末の混合物を成形したフラックスであって、
    フラックス中に含まれるCaO(但し、CaCO及び
    Ca(OH)にあってはCaO換算量)とFetO
    (但し、FetO:FeO、Fe及びFe
    の総和)の重量比[CaO/FetO]が0.25〜4
    であることを特徴とする溶鉄脱燐用フラックス。
  2. 【請求項2】 CaO、CaCO、Ca(OH)
    中から選ばれる1種以上を主体とする粒径1mm以下の
    粉末と酸化鉄を主体とする粒径1mm以下の粉末の混合
    物を成形したことを特徴とする請求項1に記載の溶鉄脱
    燐用フラックス。
  3. 【請求項3】 成形後加熱処理を施して少なくとも一部
    にカルシウムフェライトを生成させたことを特徴とする
    請求項1又は2に記載の溶鉄脱燐用フラックス。
  4. 【請求項4】 請求項1、2又は3に記載の脱燐用フラ
    ックスを用い、脱燐処理容器内の溶銑に酸素を供給する
    とともに、浴面下に撹拌ガスを吹き込んで浴撹拌を行う
    低燐溶銑の製造方法であって、前記脱燐用フラックスを
    溶銑に添加することを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
  5. 【請求項5】 インジェクションランスを通じて、浴面
    下に撹拌ガスとともに脱燐用フラックスを吹き込むこと
    を特徴とする請求項4に記載の低燐溶銑の製造方法。
  6. 【請求項6】 底吹きノズル又は横吹きノズルから浴中
    に撹拌ガスを吹き込むとともに、脱燐用フラックスを浴
    面上への上置き及び/又はインジェクションランスを通
    じた浴面下への吹き込みにより、浴に対して添加するこ
    とを特徴とする請求項4に記載の低燐溶銑の製造方法。
  7. 【請求項7】 脱燐処理前のSi濃度が0.2重量%以
    下の溶銑に対して脱燐処理を行うことを特徴とする請求
    項4、5又は6に記載の低燐溶銑の製造方法。
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