JP5394914B2 - イリジウム元素含有蛍光体およびその製造方法 - Google Patents

イリジウム元素含有蛍光体およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、イリジウム元素含有蛍光体およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、II-VI族化合物半導体を母体とする蛍光体であって、イリジウム元素が蛍光体粒子表面から内部まで均質に分散している蛍光体およびその製造方法に関する。
化合物半導体を主たる構成材料とする無機組成物は、蛍光、リン光などの発光材料、蓄光材料などの分野で用いられている。これらには、電気エネルギーによって光を発する特性を有するものもあり、光源として用いられ、表示などの用途で一部用いられている。しかしながら、現在知られている材料は、電気エネルギーの光変換効率が不十分であり、色純度が低く、そのため発熱、消費電力などの問題があり、光源用途、ディスプレイ用途に使用することが難しいか、高価である希土類塩を多量に必要とし、経済的に不向きであるなどの問題を有している。
化合物半導体を主たる構成材料とする無機組成物で、効率よく光を発生させることができる発光材料の原料として、イリジウム元素を含む無機組成物が知られている(特許文献2)。しかしながら、特許文献2に開示されたイリジウム元素含有II-VI族化合物半導体においては、イリジウム元素の含有量の記載がないためその詳細は明らかでないが、少なくとも分散性についての記載は全くない。
特に青色蛍光体は、単色のみならず、白色の発光材料として有用である。
II-VI族化合物半導体を主たる構成要素とする蛍光体において、青色蛍光体として、銅をドーピングしたもの(例えば、非特許文献1参照)、ツリウム(Tm)をドーピングしたもの(例えば、非特許文献2参照)などが知られている。また、II-VI族化合物半導体を水熱条件下などで調製したもの(例えば、特許文献1参照)、さらに、プラセオジムをドーパントとして使用したもの(非特許文献3参照)が知られている。
また、イリジウムを使用した発光体の例がある(特許文献2)。
特開2005−36214号公報 特開2006−143947号公報 Journal of Luminescence 99(2002) 325-334 Journal Non-Crystalline Solids 352(2006) 1628-1632 Japanese Journal of Applied Physics Vol44 No.10,2005,p 7694-7697
以上のように、これまで知られている蛍光材料は用途が限定されており、エネルギー効率、色純度、経済的な課題などの問題を解決することが求められていた。
特に、これまで知られている青色蛍光材料は、エネルギー効率、色純度が低く、光源用途、ディスプレイ用途に使用することが難しいか、高価である希土類塩を多量に必要とし、経済的に不向きであるなどの問題を有しており、これらの課題を解決することが求められていた。また、イリジウム化合物を使用して、特許文献2を追試したところ、蛍光体内にイリジウム金属が析出することがあり、蛍光体の発光性能が必ずしも安定的に発揮されないことが解った。
そこで本発明の目的とするところは、効率よく光を発生させることができるイリジウム元素を含有する蛍光体およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、II-VI族化合物半導体を母体とする蛍光体のうち、イリジウム元素を含有する蛍光体について検討したところ、イリジウム元素がII-VI族化合物半導体の粒子表面に局在化したり、粒子間のイリジウム元素含有量が均一でないと、蛍光体効率向上に充分な貢献ができないこと、およびII-VI族化合物半導体を母体とした場合、イリジウム元素は他の元素に比べてドーピング時に特異的挙動を示すこと、イリジウム元素をII-VI族化合物半導体にドーピングする場合、前駆体を経ることなく蛍光体が形成しやすいことをつきとめた。かかる知見に基づいて、粒子間のみならず、蛍光体内部におけるイリジウム元素の含有量を均質化させることによって上記目的に適う蛍光体を得ることができることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、イリジウム元素を含むII-VI族化合物半導体を母体とする蛍光体であって、イリジウム元素が蛍光体表面から内部まで均質に分散していることを特徴とする蛍光体である。
本発明者らは、II-VI族化合物半導体にイリジウム錯塩を用いることによっても上記課題を解決できることを見出した。即ち、本発明は以下のものをも提供する。
[1] II-VI族化合物半導体及びイリジウム化合物を含む無機組成物を焼成する工程を含む上記イリジウム含有蛍光体の製造方法であって、イリジウム化合物としてイリジウム錯塩を使用することを特徴とする製造方法。
[2] II-VI族化合物半導体及びイリジウム化合物を含む無機組成物を焼成する工程を含む上記イリジウム含有蛍光体の製造方法であって、無機組成物がII族金属塩、VI族化合物及びイリジウム錯塩を水性媒質中で混合して得たものであることを特徴とする製造方法。
[3] 無機組成物が、II族金属塩を含む水溶液及びVI族化合物を含む水性液の少なくとも一方にイリジウム錯塩を存在させ、これらII族金属塩を含む水溶液及びVI族化合物を含む水性液を混合して得たものである[2]記載の製造方法。
[4] イリジウム錯塩がヘキサクロロイリジウム塩である[1]に記載の製造方法。
本発明の蛍光体は、イリジウム元素が蛍光体表面から内部まで均質に分散しているため光変換効率に優れており、光源用途、ディスプレイ用途などに好適である。
実施例1の蛍光体における蛍光スペクトルの測定結果である。 比較例1の蛍光体における蛍光スペクトルの測定結果である。 比較例2の蛍光体における蛍光スペクトルの測定結果である。 実施例2の蛍光体における蛍光スペクトルの測定結果である。 実施例3の蛍光体における蛍光スペクトルの測定結果である。 実施例4の蛍光体における蛍光スペクトルの測定結果である。 比較例4の蛍光体における蛍光スペクトルの測定結果である。 実施例7の蛍光体における蛍光スペクトルの測定結果である。 実施例8の蛍光体における蛍光スペクトルの測定結果である。 実施例13の蛍光体における蛍光スペクトルの測定結果である。
本発明の蛍光体の母体となるII-VI族化合物半導体としては、II族およびVI族元素の化合物から構成されるII-VI族化合物半導体であれば特に制限されるものではなく、硫化亜鉛、硫化カドミウム、セレン化亜鉛、セレン化カドミウムなど何れのものを使用しても構わない。これらは、単独で使用しても構わないし、複合化しても構わない。II-VI族化合物半導体を構成する結晶構造としては特に制限されるものではなく、六方晶、立方晶の単独体、およびこれらの混成体である結晶多形体混合物であってもよい。
II-VI族化合物半導体にイリジウムをドーピングする方法としては、II-VI族化合物半導体、イリジウム化合物および必要に応じて硫黄を混合して加熱焼成する方法が一般的であるが、エネルギー効率を高めるために、断熱材が使用された焼成炉を用いて焼成すると冷却までに時間がかかり、その間に、均質性が失われる傾向がある。すなわち、ドーピングした後、長時間高温を保持すると、内部拡散したイリジウム元素が蛍光体粒子表面にブリードし、蛍光体粒子内で不均質になることが多い。
したがって、本発明の蛍光体を製造するには、II-VI族化合物半導体、イリジウム化合物および必要に応じて硫黄を混合し、0.1GPa以上の衝撃波を付与することによってイリジウム元素をドーピングする方法を採用するのが好ましい。
本発明の蛍光体を製造するのに衝撃波を使用する場合、衝撃によって発生する熱により欠落する硫黄分を補うため硫黄を添加することが好ましい。硫黄の添加量は特に限定されるものではなく、通常、II-VI族化合物半導体100重量部に対して、0.1〜300重量部が好ましく、1重量部〜200重量部がより好ましい。
衝撃波を使用する場合、衝撃圧力によって発生する熱により反応温度まで昇温される。常温までの冷却速度としては、反応器の大きさ、使用する加速度の程度により一律に規定することはできないが、通常、衝撃付与から5分以下で冷却するのが好ましく、1分以下で冷却するのがより好ましい。
イリジウム化合物としては特に限定されるものではなく、塩化イリジウム、臭化イリジウム、ヨウ化イリジウムなどのハロゲン化塩、硫酸イリジウム、硝酸イリジウムなどのイリジウム元素を含む鉱酸塩、酢酸イリジウム、酪酸イリジウム、安息香酸イリジウムなどの有機酸塩、イリジウムアセチルアセトネートなどの錯体を使用しても構わない。
ドーピングされるイリジウム元素の量は限定されるものではないが、あまり多すぎると、経済的ではない上に濃度消光を引き起こすことがあり、また、あまり少なすぎると、高い蛍光効率を引き出すに十分な発光中心とならないので、得られる蛍光体中、5〜10000ppmの範囲とするのが好ましく、10〜8000ppmの範囲とするのがより好ましい。
本発明の蛍光体を製造する際、イリジウムやその他の金属の導入を円滑に行なうことができる点で、衝撃付与時に、融剤を使用するのが好ましい。このような融剤としては、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛などを例示することができる。これらは、単独で使用しても、複数を混合して使用しても構わない。融剤の使用量としては、特に限定されるものではないが、蛍光体中への残存量、蛍光体粒径の成長制御を考慮して、II-VI族化合物半導体100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。
本発明の蛍光体を製造する際、銅、マンガン、銀、希土類元素などを、単独または複数混合してドーピングしてもよい。
本発明の蛍光体は、蛍光体内部においてイリジウム元素が均質化されて含有されているが、蛍光体内部におけるイリジウム元素含有量の、蛍光体表面に含まれるイリジウム元素含有量に対する変動比が±5%以内であるのが好ましい。即ち、次の式を満たすことが好ましい。
−0.05≦[(蛍光体内部におけるIr含有量−蛍光体表面に含ま
れるIr含有量)/(蛍光体表面に含まれるIr含有量)]≦0.05
本発明において、衝撃付与後に得られた衝撃付与物を洗浄する。洗浄によって、ドーピングされなかったイリジウム塩やその他の金属塩、さらには、添加した、余分の融剤を除去する。洗浄は、中性水や酸性水を使用することができる。酸性分としては、特に限定されるものではなく、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの鉱酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの有機酸を使用することができる。これらは、単独で使用することもできるし、複数を混合して使用することもできる。
II-VI族化合物半導体が、高濃度の酸性物と接触すると分解する場合があるので、酸性水を使用する場合、通常0.1〜20重量%の水溶液を使用することが好ましく、より好ましくは1〜10重量%の水溶液を使用する。更に、II-VI族化合物半導体の分解、表面へのイオン残留性を考慮して、酢酸の使用が好ましい。洗浄したII-VI族化合物半導体は、真空、熱風などの方法で乾燥され、所望の蛍光体を得ることができる。
II-VI族化合物半導体にイリジウム元素がドーピングされたことは量子効率を測定することによって確認することができる。量子効率とは、入射光による励起によって放出された光子の数と物質に吸収された入射光の光子の数との比であり、この数値が大きいほどドーピング効果が高いことを意味する。量子効率は分光蛍光光度計によって測定することができる。
本発明において特に好ましい蛍光体の製造方法は、II-VI族化合物半導体及びイリジウム化合物を含む無機組成物を焼成する工程を含むイリジウム含有蛍光体の製造方法であって、イリジウム化合物としてイリジウム錯塩を使用することを特徴とする製造方法である。この製造方法について以下に詳しく説明する。
原料として使用するII-VI族化合物半導体としては、特に制限されるものではなく、前述したとおりである。
イリジウム化合物としてイリジウムの錯塩が用いられる。塩化イリジウムなどのハロゲン化イリジウム塩など一般的に入手されるイリジウム塩を用いた場合、水やアルコールなどの溶媒に溶解しにくく、大量の水を使用しなければならないことに加え、非常に凝集しやすいことから、II-VI族化合物半導体に均質に分散させることができない。そのため、加熱焼成時に、凝集し、加熱により熱還元されて、II-VI族化合物半導体に導入することが難しい。使用されるイリジウムの錯塩に制限はなく、イリジウムの価数にも特に制限はなく、三価、四価のものを用いることができる。例えば、ヘキサクロロイリジウム(III)酸アンモニウム、ヘキサクロロイリジウム(III)酸ナトリウム、ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウム、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸ナトリウム、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸水素、ヘキサブロモイリジウム(III)酸アンモニウム、ヘキサブロモイリジウム(III)酸ナトリウム、ヘキサブロモイリジウム(III)酸カリウム、ヘキサブロモイリジウム(IV)酸アンモニウム、ヘキサブロモイリジウム(IV)酸ナトリウム、ヘキサブロモイリジウム(IV)酸カリウム、ヘキサブロモイリジウム(IV)酸水素、ヘキサヨードイリジウム(III)酸アンモニウム、ヘキサヨードイリジウム(III)酸ナトリウム、ヘキサヨードイリジウム(III)酸カリウム、ヘキサヨードイリジウム(IV)酸アンモニウム、ヘキサヨードイリジウム(IV)酸ナトリウム、ヘキサヨードイリジウム(IV)酸カリウム、ヘキサヨードイリジウム(IV)酸水素、ヘキサアンミンイリジウム(III)塩化物、ヘキサシアノイリジウム(III)酸カリウム、ペンタアンミンクロロイリジウム(III)塩化物などが挙げられる。入手性、安全性や、得られる硫化イリジウムに金属不純物を残存させないことを考慮し、これらのアンモニウム塩を用いることが好ましい。すなわち、ヘキサクロロイリジウム(III)酸アンモニウム、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムなどのヘキサクロロイリジウム塩を使用することが好ましい。
これらのイリジウムの導入方法としても特に限定されるものではなく、一般的に、II-VI族化合物半導体と固体混合して、加熱焼成する方法、または、II-VI族化合物半導体を水に分散し、イリジウム錯塩の粉末或いは水に溶解したイリジウム錯塩を加え、攪拌しながら、水を蒸発させて無機組成物を得、その無機組成物を加熱焼成する方法、更には、II-VI族化合物半導体を生成するときにイリジウム錯塩を共存させて生成させ、得られた組成物を加熱焼成する方法、などが用いられる。イリジウム錯塩の凝集を抑制し、II-VI族化合物半導体に定着させるには、イリジウム錯塩を溶解した状態で定着させる方法の使用が好ましい。
II-VI族化合物半導体を生成する方法としては、II族金属塩、VI族化合物及びイリジウム錯塩を水性媒質中で混合すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、II族金属塩を含む水溶液及びVI族化合物を含む水性液の少なくとも一方にイリジウム錯塩を存在させ、これらII族金属塩を含む水溶液及びVI族化合物を含む水性液を混合する方法が挙げられる。水性媒質としては、水の他、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ジメチルスルホキシド類、スルホラン類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類などの有機化合物を、溶解性を保持し水中濃度で50重量%を超えない範囲で含むものであってもよい。イリジウム錯塩は、II族金属塩、VI族化合物及びイリジウム錯塩が最終的に水性媒質中で混合されるのであれば、II族金属塩を含む水溶液またはVI族化合物を含む水性液の少なくとも一方に存在させることでもよい。VI族化合物として金属硫化物などの無機化合物を使用する場合はイリジウム錯塩をII族金属塩を含む水溶液に存在させるのが好ましく、VI族化合物としてチオカルボニル化合物などの有機化合物を使用する場合はイリジウム錯塩をVI族化合物を含む水性液に存在させるのが好ましい。
使用するVI族化合物の量としては、II族元素量に対して、0.5〜5モル倍、未反応II族金属の残留は、用途を限定する為、通常、1.0〜4モル倍、より好ましくは1.1〜2モル倍の範囲で使用する。II-VI族化合物半導体を生成させる温度としては、0℃〜200℃の範囲で実施することができるが、特殊な反応器が不要であることや、安全性、操作性の観点から、0℃〜120℃の範囲で実施することが好ましく、より好ましくは10℃〜90℃の範囲で実施する。II族金属塩としては、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、カドミウムなどの塩が挙げられる。反応速度、反応後の安定性を考慮して、亜鉛、カドミウムの使用が好ましい。使用される塩の種類としては、特に限定されるものではないが、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩、アセチルアセトネートなどの有機金属錯体などを挙げることができる。入手性、水への溶解性、安定性を考慮して、塩酸塩、硝酸塩、酢酸塩の使用が好ましい。VI族化合物としては、反応の安定性、VI族化合物の安定性を考慮して、硫化ナトリウム、硫化カリウムなどのアルカリ金属硫化物、チオアセトアミド、チオ尿素などを使用することができる。これらは単独で使用しても複数を混合して使用しても構わない。
イリジウム錯塩をII-VI族化合物半導体に定着させるときの水の使用量は特に限定されるものではないが、通常、分散性を考慮して、II-VI族化合物半導体のスラリー濃度として、0.1〜50重量%、より好ましくは、1〜30重量%の範囲で定着を行うことが好ましい。
スラリーから水を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、デカンテーションなどの方法を用いると、溶液中に溶解しているイリジウム錯塩をロスするため好ましくない。通常、スラリーから水を、減圧または加熱により留去する方法を使用する。
II-VI族化合物半導体に導入されるイリジウムの量としては、特に限定されるものではないが、多すぎる導入は、その導入量に対し、経済的ではなく、また、濃度消光を引き起こすため好ましくなく、低すぎる濃度は、高い蛍光効率を引き出すに十分な発光中心を持たないため好ましくない。したがって、通常、II-VI族化合物半導体に対し、5〜5000ppmの範囲、より好ましくは、10〜1000ppmの範囲で導入することが好ましい。
イリジウム含有無機組成物を焼成する温度としては、II-VI族化合物半導体の結晶形が変化する温度以上、昇華する温度以下で実施する。即ち、500℃以上、1250℃以下、好ましくは、550℃以上、1000℃以下、より好ましくは、600℃以上、800℃以下の温度で実施する。
焼成温度までの昇温速度は特に限定されるものではないが、通常、2.0℃/分以上40.0℃/分以下の速度で昇温する。早すぎる温度は、炉体やII-VI族化合物半導体を入れる容器を破損するため好ましくなく、遅すぎる速度では、生産効率が著しく低下するため好ましくない。このような観点から、2.5℃/分以上、30.0℃/分以下の速度で実施することが好ましい。
焼成をおこなう雰囲気は特に限定されるものではなく、空気下、不活性ガス雰囲気下、還元性ガス雰囲気下何れのガス雰囲気の下で実施しても構わない。
焼成時に結晶化の促進や粒径を大きくするために融剤を使用することができる。使用できる融剤としては、前述したように、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどのアルカリ金属塩、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウムなどのアルカリ土類塩、塩化アンモニウム、塩化亜鉛などを使用することができ、これらの融剤は単独で使用しても、複数を混合して使用しても構わない。使用する量としては、特に限定されるものではなく、II-VI族化合物半導体に対して、0.1〜50重量%、操作性、経済性を考慮して、0.5〜10重量%を使用することが好ましい。
前述したように、他の金属を同時にドープすることもできる。同時にドープする方法としては、特に制限されるものではなく、イリジウム錯塩と同時に水に溶解して混合し、焼成することでドープすることもできるし、イリジウム錯塩を混合した後に、塩を固体混合し、焼成することでドープすることも可能である。ドープする元素としては、銀、銅、マンガンなどの遷移金属の他に、セリウム、ユーロピウムなどの希土類元素やガリウムなどの金属元素をドープすることもできる。これらは、塩化物、臭化物などのハロゲン化物、硫酸、りん酸、硝酸などの鉱酸塩、酢酸、プロピオン酸などの有機酸塩として混合することができ、単独または複数を混合して使用しても構わない。
II-VI族化合物半導体に導入される他の元素の量としては、特に限定されるものではないが、多すぎる導入は、その導入量に対し、経済的ではなく、また、濃度消光を引き起こすため好ましくなく、低すぎる濃度は、高い蛍光効率を引き出すに十分な発光中心を持たないため好ましくない。したがって、通常、II-VI族化合物半導体に対し、5〜5000ppmの範囲、より好ましくは、10〜1000ppmの範囲で導入することが好ましい。
焼成時に欠落するVI族元素を補うためそのVI族元素単体を添加することができることは前述したとおりであり、例えば、硫黄分を補うため硫黄を添加することができる。
本発明において、焼成終了後、焼成物を洗浄する。洗浄によって、導入されなかったイリジウム塩、さらには、添加した、余分の融剤を除去する。洗浄は、中性水や酸性水を使用することが出来る。酸性分としては、特に限定されるものではなく、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの鉱酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの有機酸を使用することができる。これらは、単独で使用することも出来るし、複数を混合して使用することもできる。II-VI族化合物半導体が、高濃度の酸性物と接触すると分解する場合があるので、酸性水を使用する場合、通常0.1〜20重量%の水溶液を使用することが好ましく、より好ましくは1〜10重量%の水溶液を使用する。更に、II-VI族化合物半導体の分解、表面へのイオン残留性を考慮して、酢酸の使用が好ましい。
本発明では、焼成した後、洗浄したII-VI族化合物半導体を真空、熱風などの方法で乾燥し、所望の蛍光体を得ることが出来る。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら例に限定されるものではない。
実施例1
堺化学株式会社製硫化亜鉛(RAK−LC)50g、三塩化イリジウム0.25g、硫黄0.5g、硫酸銅(II)5水和物0.22g、塩化マグネシウム6水和物3.21g、塩化ナトリウム1.00gをボールミルにて1時間攪拌混合した。得られた混合物から1gを採取し、理研精機株式会社製油圧成型機(RIKEN POWER P−1B−041)を用い、1kg/cm2の圧力下で、直径20mm、厚さ1mmのタブレットに成型した。
タブレットを鉄製ターゲットカプセルに挿入し、ターゲットカプセルを株式会社ジー・エム・エンジニアリング製の衝撃波発生装置TYPE20に装着した。厚さ2mm、直径40mmの鉄製衝突面を備えた全長30mm、全体重量22gのABS製飛翔体を真空下530m/秒の速度でターゲットカプセルに衝突させた。衝突時の衝撃圧力は11GPaであった。ターゲットカプセルにモーメンタムトラップ(SUS304製)を設置し、発生した熱を速やかに放熱することによって急冷を行った。ターゲットカプセルを回収し、蛍光体である硫化亜鉛混合物1gを回収した。回収物をイオン交換水500mlで洗浄、乾燥し、蛍光体乾燥物0.9gを回収した。
ESCA分析により、蛍光体内部におけるイリジウムの粒子内分析を行なった。ESCAでエッチングした蛍光体粒子の大きさは約20μmであり、エッチング速度は50Å/秒であった。粒子表面(エッチング時間0分に相当)のイリジウム含有量、及びエッチング時間5分間(エッチング深さ1.5μmに相当)及び10分間(エッチング深さ3μmに相当)でエッチングを行った際にイリジウム含有量を測定した。ESCA分析結果を表1に示す。蛍光体内部におけるイリジウム元素含有量の、蛍光体表面に含まれるイリジウム元素含有量に対する変動比が±5%以内であった。また、紫外線照射による蛍光スペクトルの測定結果を図1に、量子効率を表2に示す。
比較例1
実施例1で得た混合物から10gを取り出して坩堝に入れ、窒素雰囲気下、700℃で6時間焼成した。室温まで8時間かけて冷却した後、イオン交換水1800mlで洗浄、乾燥し、蛍光体乾燥物9.2gを回収した。
ESCA分析により、蛍光体内部におけるイリジウムの粒子内分析を行なった。ESCAでエッチングした蛍光体粒子の大きさは約20μmであり、エッチング速度は50Å/秒であった。粒子表面(エッチング時間0分に相当)のイリジウム含有量、及びエッチング時間5分間(エッチング深さ1.5μmに相当)及び10分間(エッチング深さ3μmに相当)でエッチングを行った際にイリジウム含有量を測定した。ESCA分析結果を表1に示す。紫外線照射による蛍光スペクトルの測定結果を図2に、量子効率を表2に示す。
比較例2
実施例1において、三塩化イリジウムを混合しなかった以外は、実施例1と同様に行い、蛍光体乾燥物9.0gを得た。紫外線照射による蛍光スペクトルの測定結果を図3に、量子効率を表2に示す。
実施例2
三塩化イリジウムの使用量を0.25gから0.6gに換えた以外は実施例1と同様にして蛍光体を製造し、ESCA分析を行った。
ESCAでエッチングした蛍光体粒子の大きさは約20μmであり、エッチング速度は50Å/秒であった。粒子表面(エッチング時間0分に相当)のイリジウム含有量、及びエッチング時間5分間(エッチング深さ1.5μmに相当)及び10分間(エッチング深さ3μmに相当)でエッチングを行った際にイリジウム含有量を測定した。結果を表1に示す。また、紫外線照射による蛍光スペクトルの測定結果を図4に、量子効率を表2に示す。
Figure 0005394914
Figure 0005394914
なお、分光蛍光光度計の測定条件は以下のとおりであった。
測定装置:日本分光株式会社製 FP−6500
励起波長:350nm
励起バンド幅:5nm
ソフトウェア:Spectra Manager for Windows 95/NT Ver1.00.00 2005 日本分光株式会社製
実施例3
200mlナス型フラスコに硫化亜鉛20gをイオン交換水100gに分散させ、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウム0.023g(Irとして硫化亜鉛に対して500ppm)を溶解した。1時間攪拌した後、ナス型フラスコを回転型エバポレータに装着し、2000Pa、80℃にて減圧で水を留去した。その後、更に、130Paまで減圧し、更に乾燥を1時間継続した。得られた固体に、塩化ナトリウム3.0g、塩化カリウム3.0g、硫黄6gを乳鉢にとり、攪拌混合し、容積60mlの坩堝に入れた。焼成炉を窒素置換した後、坩堝を入れ、再度窒素置換した。焼成炉を炉内温度700℃まで、毎時200℃で昇温、設定温度到達後、6時間内温を保持した後、8時間かけて、室温まで冷却した。得られた混合物を、5%酢酸水溶液100gで洗浄、イオン交換水200gで3回洗浄し、120℃にて真空乾燥し、乾燥品18.84gを得た。
実施例1と同様にして、紫外線照射による蛍光スペクトルを測定した結果を図5に、実施例1と同様にしてESCA分析を行った結果を表4に示す。
イリジウムのみを使用した場合でも蛍光を示すが、他の実施例の結果からわかるようにマンガンなどの発光中心をドーピングすることにより、さらに良好な蛍光体とすることができる。
2種類の方法でICP発光分析用サンプルを作り、上記で得られた乾燥品のICP分析を行った。
方法1 試料100mgを白金坩堝に入れ、硫酸および硫酸水素カリウムを加えて溶融し、2M硫酸で1Lに希釈してサンプルを調製した
方法2 試料100mgを2N塩酸に溶解し、不溶物をメンブランフィルターで濾過した後、イオン交換水で1Lに希釈してサンプルを調製した。
各方法のIr分析結果を表3に示す。
比較例3
ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウム0.023gに代え、テトラクロロイリジウム0.017gを使用した以外は実施例3と同様に行った。
実施例3と同様にして2種類の方法でICP発光分析用サンプルを作り、ICP分析を行った。結果を表3に示す。
実施例1と同様にしてESCA分析を行った結果を表4に示す。
実施例4
硝酸亜鉛297.6g、硝酸マンガン3gをイオン交換水2Lに溶解し、A液を調製した。ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウム0.032gと硫化ナトリウム288.6gをイオン交換水2Lに溶解し、B液を調製した。B液を調製後1時間静置してから使用した。A液及びB液を定量ポンプを用いて、各々毎秒5mLで送液し、スタティックミキサー(ノリタケ製T4−15 R−4PT)にて攪拌、更に塩ビ製チューブに送液、滞留時間3分後、連続的に遠心分離機に送液し、生成した固体を分取した。
得られた固体20gに、塩化ナトリウム3.0g、塩化カリウム3.0g、硫黄6gを乳鉢にとり、攪拌混合し、容積60mLの坩堝に入れた。焼成炉を窒素置換した後、坩堝を入れ、再度窒素置換した。焼成炉を炉内温度700℃まで毎時200℃で昇温し、設定温度到達後、6時間内温を保持した後、8時間かけて室温まで冷却した。得られた混合物を5%酢酸水溶液100gで洗浄、イオン交換水200gで3回洗浄し、120℃にて真空乾燥し、乾燥品19.10gを得た。
実施例3と同様にして2種類の方法でICP発光分析用サンプルを作り、ICP分析を行った。結果を表3に示す。
実施例1と同様にして、紫外線照射による蛍光スペクトルを測定した結果を図6に、ESCA分析を行った結果を表4に、量子効率を表5に示す。
比較例4
実施例2においてヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウム0.032gに代え、テトラクロロイリジウム0.024gを使用した以外は実施例4と同様に行い、乾燥品18.66gを得た。
実施例3と同様にして2種類の方法でICP発光分析用サンプルを作り、ICP分析を行った。結果を表3に示す。
実施例1と同様にして、紫外線照射による蛍光スペクトルを測定した結果を図7に、ESCA分析を行った結果を表4に、量子効率を表5に示す。
実施例5
実施例3においてヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウム0.023gに代え、ヘキサクロロイリジウム(III)酸アンモニウム0.023gを使用した以外は実施例3と同様に行い、乾燥品18.32gを得た。
実施例3と同様にして2種類の方法でICP発光分析用サンプルを作り、ICP分析を行った。結果を表3に示す。
実施例1と同様にしてESCA分析を行った結果を表4に示す。
実施例6
実施例3においてヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウム0.023gに代え、ヘキサブロモイリジウム(IV)酸アンモニウム0.039gを使用した以外は実施例1と同様に行い、乾燥品18.51gを得た。
実施例3と同様にして2種類の方法でICP発光分析用サンプルを作り、ICP分析を行った。結果を表3に示す。
実施例1と同様にしてESCA分析を行った結果を表4に示す。
比較例5
実施例6においてヘキサブロモイリジウム(IV)酸アンモニウム0.039gに代え、テトラブロモイリジウム(IV)0.028gを使用した以外は実施例6と同様に行い、乾燥品18.87gを得た。
実施例3と同様にして2種類の方法でICP発光分析用サンプルを作り、ICP分析を行った。結果を表3に示す。
実施例1と同様にしてESCA分析を行った結果を表4に示す。
実施例7
攪拌器、還流管、温度計を装着した2L三つ口フラスコに、硝酸亜鉛6水和物223.2g、塩化銅(II)258mg、ヘキサクロロイリジウム(III)酸アンモニウム130.55mgを取り、水750mL、硝酸1.5gを添加し溶解した。ここにチオアセトアミド84.5gを添加し、85℃まで昇温、そのまま3時間加熱攪拌した。室温まで冷却し、上層をデカンテーションで除きながら、イオン交換水で洗浄し、洗浄液のpHが6になったところで洗浄を終了し、硫化亜鉛を得た。これを150℃にて12時間熱風乾燥し、60.7gの固体を得た。
得られた固体20gに、塩化ナトリウム3.0g、塩化カリウム3.0g、硫黄6gを乳鉢に取り、攪拌混合し、容積60mLの坩堝に入れた。焼成炉を窒素乾燥した後、坩堝を入れ、再度窒素置換した。焼成炉を炉内温度700℃まで毎時200℃で昇温し、設定温度到達後、6時間内温を保持した後、8時間かけて室温まで冷却した。得られた混合物を5%酢酸水溶液100gで洗浄、イオン交換水200gで3回洗浄し、120℃にて真空乾燥し、乾燥品19.30gを得た。
実施例1と同様にして、紫外線照射による蛍光スペクトルを測定した結果を図8に、ESCA分析を行った結果を表4に、量子効率を表5に示す。
実施例3と同様にして2種類の方法でICP発光分析用サンプルを作り、ICP分析を行った。結果を表3に示す。
イリジウム金属は塩酸に溶解しないため、塩酸法(上記方法2)でICP測定を実施すると、イオンとして蛍光体中に導入されていないIrは検出されない。実施例3及び比較例3で得られた蛍光体中のイリジウム濃度を比較すると、実施例3では、方法1及び方法2の何れの方法でICP分析を行ってもほぼ同じ程度のイリジウムが検出されたので、蛍光体中にイリジウム金属が含まれていないことがわかる。一方、比較例1では方法1のイリジウム濃度に比して方法2のイリジウム濃度が著しく低いので、発光特性に寄与しないイリジウム金属が蛍光体中に多量に含まれていることがわかる。
実施例4〜7及び比較例4〜5においても、実施例3及び比較例3と同様な分析結果が得られた。
実施例8
攪拌器、温度計、還流管を装着した2Lセパラブルフラスコに硝酸亜鉛6水和物360.0g、硫酸マグネシウム7.20g、0.1M硝酸銀水溶液57ml、硝酸ガリウム3.66g、六塩化イリジウム酸アンモニウム195.86mgをとり、イオン交換水1200gに溶解した。ここに硝酸1.0gを添加し、pHを約2程度に調整し、攪拌しながら90℃まで昇温した。
所定の温度に到達したところで、チオアセトアミド133.6gを固体で添加した。添加して2時間攪拌した後、30℃に冷却して反応を停止した。冷却中、窒素を流気し、系内の硫化水素を排出した。得られた反応液からデカンテーションで反応液を除き、更にイオン交換水を用いて固体洗浄し、洗浄液のpHが5以上になるまで洗浄を行った。得られた固体を120℃、12時間熱風乾燥して、固体92.9gを得た。
得られた固体20gに、塩化ナトリウム3.0g、塩化カリウム3.0g、硫黄6gを乳鉢にとり、攪拌混合して坩堝に入れた。焼成炉を窒素置換し、700℃まで、200℃/時で昇温6時間保持、室温まで冷却した。得られた固体を5%酢酸水溶液100gで洗浄、イオン交換水200gで3回洗浄し、120℃にて真空乾燥し、乾燥品19.31gを得た。実施例3と同様にして紫外線照射による蛍光スペクトルを測定した結果を図9に、ESCA分析を行った結果を表4に、量子効率を表5に示す。また、ICP発光分析サンプルを作り、ICP分析を行った結果、方法1では482ppm、方法2では489ppmであった。
Figure 0005394914
Figure 0005394914
Figure 0005394914
実施例9〜12
表6に示すイリジウム錯塩と量を使用する以外は実施例3と同様に実施した。結果を表6に示す。
Figure 0005394914
実施例13
三塩化イリジウム0.25gに代えて、四塩化イリジウム0.28gを使用する以外は実施例1と同様にして蛍光体を得た。実施例1と同様にして測定した蛍光体内部のイリジウムの分析結果、量子効率、蛍光体中のイリジウムの濃度、及び蛍光スペクトルを表7及び図10に示す。
Figure 0005394914
参考例
実施例1と同様にして得た混合物3gに、ペンスリット火薬30gを混合、混練した後、円筒状に成型した。成型物の中心に、銅製雷管を装着した後、ポリエチレン袋に入れ、内部を銅箔でコーティングした50L耐圧容器に、雷管を装着した混合物を入れて密封し、内部を1Torrまで減圧、窒素ガスを導入する操作を3回繰り返し、系内を窒素置換した。更に、1Torrまで減圧して、反応系を密封した。
耐圧容器を爆破試験用ドーム内に設置し、発破を行った。発破終了後、系内に窒素導入した後、開蓋し、内部に水1Lを投入して、爆破物を洗浄回収した。遠心分離機により、洗浄物から、炭化物と硫化亜鉛を分離し、目的の爆破物を0.6g回収した。
回収物をICP分析したところ、方法1では291ppm、787ppm、119ppm、方法2では199ppm、512ppm、66ppmであり、イリジウム化合物の導入は確認されたが、粒子間の分散の均一性は認められなかった。
本発明により、イリジウムが蛍光体表面から内部まで均質に分散している蛍光体とその製造方法を提供することができる。本発明の蛍光体は、イリジウムが蛍光体粒子表面から内部まで均質に分散しているため光変換効率に優れており、光源用途、ディスプレイ用途などに好適である。

Claims (4)

  1. II−VI族化合物半導体及びヘキサクロロイリジウム塩を含む無機組成物を焼成して得られる、イリジウム元素を含むII−VI族化合物半導体を母体とする蛍光体であって、蛍光体表面に含まれるイリジウム元素含有量と、蛍光体内部に含まれるイリジウム元素含有量と、は、
    −0.05≦[(蛍光体内部におけるIr含有量−蛍光体表面に含まれるIr含有量)/(蛍光体表面に含まれるIr含有量)]≦0.05
    を満たすように、イリジウム元素が蛍光体表面から内部まで均質に分散していることを特徴とする蛍光体。
  2. II−VI族化合物半導体及びイリジウム化合物を含む無機組成物を焼成する工程を含む請求項1に記載のイリジウム含有蛍光体の製造方法であって、イリジウム化合物としてヘキサクロロイリジウム塩を使用することを特徴とする製造方法。
  3. II−VI族化合物半導体及びイリジウム化合物を含む無機組成物を焼成する工程を含む請求項1に記載のイリジウム含有蛍光体の製造方法であって、無機組成物がII族金属塩、VI族化合物及びヘキサクロロイリジウム塩を水性媒質中で混合して得たものであることを特徴とする製造方法。
  4. 無機組成物が、II族金属塩を含む水溶液及びVI族化合物を含む水性液の少なくとも一方にヘキサクロロイリジウム塩を存在させ、これらII族金属塩を含む水溶液及びVI族化合物を含む水性液を混合して得たものである請求項3記載の製造方法。
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