JP5389531B2 - 封止用保護シートおよび太陽電池モジュール - Google Patents
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Description
また、特許文献2では、封止用保護シートとエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる充填剤層との接着層として、特定の架橋剤で架橋したエチレン−アクリル酸エステル共重合体を用いる方法が示されている。
さらに、特許文献3では、封止用保護シートの接着層として、ジアミン化合物で架橋した変性ポリエチレン樹脂をトルエンなどに溶解した接着剤を用いる方法が示されている。
一方、特許文献2では、太陽電池モジュール製造直後の初期接着性と、耐候性の指標となる高温高湿環境下での強度保持性とに優れた接着層が示されている。しかし記載される方法であっても未だ、初期接着性、高温高湿環境下での強度保持性とも不十分であった。さらに、用いる接着層は、特定の架橋剤で架橋したエチレン−アクリル酸エステル共重合体を5〜100μmの厚みに押出しラミネートなどの方法でフィルム化する必要があり、また2液のウレタン系接着剤の併用も必要としていた。このことにより複雑な製造工程を必要とし、また比較的高価な構成の接着層を厚膜で積層する必要があるなど、工程の簡略化やコスト低減の課題があった。
特許文献3に示される接着剤は、接着剤層と封止用保護シートとの界面の接着性には優れるものの、充填剤との接着性については調べられておらず、実際に充填剤と封止用保護シートとの接着層に用いた場合は、高温高湿環境下での強度保持性は十分ではなかった。さらに、用いる接着剤は、室温付近では粘度が高すぎて、記載される好ましい固形分濃度でコーティングすることができず、およそ60℃以上でないとコーティング可能な粘度とすることができない。そのため接着剤中のトルエンなどの有機溶媒の揮発が激しく、均一にコーティングすることが困難であり、しかも製造に際しても特殊な防爆や排気回収設備を必要とした。
また、特許文献1〜3では酸性雨に対する耐性についての記載はされておらず、実際には屋外での長期間の使用に問題があった。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)充填剤で太陽電池素子を覆ってなる充填剤層とこれを封止するための封止層とを有する太陽電池モジュールの前記充填剤層を封止するための封止用保護シートであって、封止層と、前記封止層の上層側の面に充填剤層と封止層とを接着させるための厚み0.01〜30μmの接着層とを備え、前記接着層が不飽和カルボン酸成分を0.1〜10質量%含有する酸変性ポリオレフィン樹脂を含むことを特徴とする封止用保護シート。
(2)酸変性ポリオレフィン樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル成分を0.1〜25質量%含有することを特徴とする(1)記載の封止用保護シート。
(3)酸変性ポリオレフィン樹脂の融点が、70℃以上であることを特徴とする(1)または(2)記載の封止用保護シート。
(4)接着層が、不揮発性水性化助剤を含まないことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の封止用保護シート。
(5)接着層が、オキサゾリン系架橋剤を含み、その含有量が酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.05〜30質量部であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の封止用保護シート。
(6)封止層が、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂及びポリアクリル樹脂のいずれから構成されることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の封止用保護シート。
(7)さらに下層側にバリア層を含むことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の封止用保護シート。
(8)充填剤で太陽電池素子を覆ってなる充填剤層と、(1)〜(7)のいずれかに記載の封止用保護シートと、を含むことを特徴とする太陽電池モジュール。
本発明における太陽電池モジュール用接着剤(以下、接着剤と略することがある)は、不飽和カルボン酸成分を0.1〜10質量%含有する酸変性ポリオレフィン樹脂を含む水性分散体であり、充填剤で太陽電池素子を覆ってなる充填剤層と、これを封止するための封止層との接着性を高める効果を有している。
不飽和カルボン酸成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。
酸変性ポリオレフィン樹脂における不飽和カルボン酸成分の含有量は、0.1〜10質量%であり、0.5〜8質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましく、2〜4質量%がさらに好ましい。含有量が0.1質量未満の場合は水性分散体とすることが困難であり、10質量%を超える場合は耐候性が低下する傾向がある。
(メタ)アクリル酸エステル成分としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステル化物が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル成分の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。この中で、入手の容易さと接着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがより好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。
酸変性ポリオレフィン樹脂における(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は、0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、2〜18質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が0.1質量%未満の場合は接着性が低下する傾向にあり、25質量%を超える場合は耐候性や耐酸性雨性が低下してしまう傾向にある。
(メタ)アクリル酸エステル成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)等が挙げられる。
また各種性能面やコーティングする際の厚みを均一にしやすいなどの理由から、水性分散体中の酸変性ポリオレフィン樹脂の数平均粒子径が1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.2μm以下がさらに好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。
水性分散体に添加する塩基性化合物として、塗膜形成時に揮発するアンモニア又は有機アミン化合物が塗膜の耐水性の面から好ましく、中でも沸点が30〜250℃、さらには50〜200℃の有機アミン化合物が好ましい。沸点が30℃未満の場合は、後述する樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化が完全に進行しない場合がある。沸点が250℃を超えると樹脂塗膜から乾燥によって有機アミン化合物を飛散させることが困難になり、塗膜の耐水性が低下する場合がある。
有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。
塩基性化合物の添加量は酸変性ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基に対して0.5〜3.0倍当量であることが好ましく、0.8〜2.5倍当量がより好ましく、1.01〜2.0倍当量が特に好ましい。0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、3.0倍当量を超えると塗膜形成時の乾燥時間が長くなったり、水性分散体が着色する場合がある。
本発明において使用される有機溶剤としては、沸点が30〜250℃のものが好ましく、50〜200℃のものが特に好ましい。これらの有機溶剤は2種以上を混合して使用してもよい。なお、有機溶剤の沸点が30℃未満の場合は、樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化の効率が十分に高まらない場合がある。沸点が250℃を超える有機溶剤は樹脂塗膜から乾燥によって飛散させることが困難であり、塗膜の耐水性が低下する場合がある。
上記の有機溶剤の中でも、樹脂の水性化促進に効果が高く、しかも水性媒体中から有機溶剤を除去し易いという点から、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、低温乾燥性の点からエタノール、n−プロパノール、イソプロパノールが特に好ましい。
ここで不揮発性水性化助剤とは、樹脂の分散や安定化に寄与する不揮発性の化合物のことを意味する。不揮発性水性化助剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性(非イオン性)界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、反応性界面活性剤、水溶性高分子などが挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、乳化剤類も含まれる。
例えば、アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸およびその塩、アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体等やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のソルビタン誘導体等が挙げられ、両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。反応性界面活性剤としては、アルキルプロペニルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルジアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩等の反応性2重結合を有する化合物が挙げられる。水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩等が挙げられる。
これらは単独でも2種類以上を併用してもよい。
付加重合性オキサゾリンとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリンおよび2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどが挙げられ、これらは単独でも2種類以上を併用して使用してもよい。これらの中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが入手の容易さや接着性を良好にするために好ましい。これら付加重合性オキサゾリンの使用量は、特に限定されないが、モノマー成分中5質量%以上とすることが好ましく、5〜90質量%がより好ましく、10〜60質量%がさらに好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
付加重合性オキサゾリンと共重合可能な単量体としては、オキサゾリン基と反応しないものから選ぶことが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、(メタ)アクリル酸−2−アミノエチルおよびその塩、(メタ)アクリル酸のカプロラクトン変性物、(メタ)アクリル酸−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよび(メタ)アクリル酸−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウムおよび(メタ)アクリル酸アンモニウム等の(メタ)アクリル酸塩;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドおよびN−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド;酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテルおよびエチルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチレンおよびプロピレン等のα−オレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニル等のハロゲン含有・α,β−不飽和脂肪族炭化水素;スチレン、α−メチルスチレンおよびスチレンスルホン酸ナトリウム等のα,β−不飽和芳香族炭化水素などが挙げられ、これらは単独でも2種類以上を併用して使用してもよい。
その他の樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、変性ナイロン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂等が挙げられる。
その他の添加剤としては、例えば、金属酸化物微粒子、粘着付与剤、ワックス類、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、ヌレ剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料、染料、分散剤などが挙げられる。
これらは単独でも2種類以上を併用してもよい。
また、これらは水溶性または水分散性のものが混合安定性の点から好ましく、水性分散体または水溶液として利用することがより好ましい。
コーティング方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることが可能であり、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が挙げられる。
これらの方法により封止層表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理を供することにより、均一な接着層を封止層表面に密着させて形成することができる。
乾燥処理法としては、乾燥時間を短くできることや、上記架橋剤との反応を促進させるために、加熱処理法が好ましい。乾燥温度は、50〜200℃の範囲が好ましく、70〜180℃がより好ましく、80〜150℃がさらに好ましく、90〜120℃が特に好ましい。乾燥温度が50℃未満では、乾燥効果が不十分であったり、接着性が低下する傾向がある。乾燥温度が200℃を超えた場合は封止層が変形や変質する場合がある。また乾燥時間は特に限定されず、通常2〜600秒の範囲で行うことが可能である。
封止層に用いられる基材としては、充填剤を封止できるものであれば特に限定されないが、屋外での長期間の使用に耐えうるのもが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと示すこともある。)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリフッ化ビニル(以下、PVFと示すこともある。)、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと示すこともある。)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル樹脂、アルミ箔などの金属箔などが挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂の中ではPETが、フッ素樹脂の中ではPVF、PVDFが経済性や接着性などの観点から好ましい。
また封止層は、他の層との積層した際の接着性を向上させるために、コロナ放電処理、フレームプラズマ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理、オゾン処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、薬品処理、溶剤処理などの表面処理がなされていてもよい。
さらに封止層は、水蒸気バリア性を付与させるために、アルミ蒸着膜、アルミナ蒸着膜、シリカ蒸着膜、アルミナ・シリカ二元蒸着などの蒸着膜を設けてあってもよい。
その他の層としては、水蒸気バリア性などを目的としたバリア層や、強度保持などを目的とした支持層、またそれらを接着させる接着剤層などが挙げられる。
このような封止用保護シートの構成としては、例えば上層側から、接着層/封止層/接着剤層/バリア層/接着剤層/支持層、接着層/封止層/接着剤層/バリア層、接着層/封止層/接着剤層/支持層などが例示でき、接着層/封止層/接着剤層/バリア層/接着剤層/支持層のようにバリア層と支持層を備えていることが好ましい。
これらの構成の封止用保護シートは、予め封止層とその他の層を積層し、次いで本発明の接着剤をコーティングして接着層を形成して製造してもよいし、また封止層単体に本発明の接着剤をコーティングして接着層を設けた後にその他の層を積層して製造してもよい。
なお、本発明では、充填剤と封止用保護シートとの接着を担う層のことを接着層と呼び、その他の接着に用いる層のことを接着剤層と呼ぶ。
バリア層としては、例えば、アルミ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム、シリカ/アルミナ二元蒸着フィルムなどの蒸着フィルム、アルミ箔などの金属箔、塩化ビニリデン、液晶ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、金属箔、蒸着フィルムが水蒸気バリア性に優れ好ましい。なお蒸着フィルムは一般にポリエステル樹脂フィルムやポリアミド樹脂フィルムなどに蒸着されていることが多いが、比較的水蒸気バリア性に優れるPETなどのポリエステル樹脂フィルムの蒸着フィルムが好ましい。ポリエステル樹脂フィルムとしては、前記耐加水分解性のポリエステル樹脂を用いてもよい。バリア層の厚みは特に限定されないが、例えば3〜100μmの範囲で用いることが可能であり、5〜50μmの範囲が好ましく用いられる。
支持層の基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル樹脂、アルミ箔などの金属箔などが挙げられる。中でも、屋外での長期間の使用に適性のある、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂フィルムとしては、前記耐加水分解性のポリエステル樹脂がより好ましい。支持層の厚みは特に限定されず、例えば10〜500μmの範囲で用いることが可能であり、20〜250μmの範囲が好ましく用いられる。
充填剤に用いられるオレフィン系共重合体としては、透明性、耐久性など充填剤特性を有していれば特には限定されず、エチレン系共重合体、ポリプロピレン系共重合体などが挙げられ、透明性に優れるエチレン系の共重合体が好ましい。エチレン系共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体やそれらの混合物などが挙げられ、透明性、耐久性、太陽電池モジュールとするための成形性に優れるエチレン−酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
太陽電池モジュールの構成としては、太陽電池素子を充填剤で覆った充填剤層の上層側に、ガラスなどからなる上層透明基材層が設けられることが一般的である。
近年では太陽電池モジュール自体に柔軟性を付与することを目的に、上層透明基材層として、樹脂フィルム(シート)を用いる場合があり、また本発明の封止用保護シートを構成する封止層と同様の基材層を用いられることも多い。その様な場合にあっては、上層透明基材層と充填剤層との接着層として、本発明の接着剤を用いることが可能である。
1.酸変性ポリオレフィン樹脂の特性
(1)構成
1H−NMR分析(日本電子社製ECA500、500MHz)より求めた。テトラクロロエタン(d2)を溶媒とし、120℃で測定した。
(2)融点
酸変性ポリオレフィン樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製 DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定を行って融点を求めた。
(3)メルトフローレート値(MFR)
JIS K7210:1999記載(190℃、2160g荷重)の方法で測定した。
(1)接着性評価
封止用保護シートの接着層面同士を向かい合わせ、その間に厚み600μmの太陽電池モジュール用エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井ファブロ社製ソーラーエバSC50B)からなる充填剤シートを挟みこんだ状態で、ヒートプレス機(シール圧0.1MPa/cm2)にて140℃で20分間プレスし、擬似試験片を得て、その擬似試験片を15mm幅で切り出し、1日後、擬似試験片の封止用保護シートと封止用保護シートの層間を、引張試験機(インテスコ株式会社製インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い、引張速度200mm/分、T型剥離、25℃での剥離強度を測定した。測定はn=5で行い、測定値はその平均値とした。
(2)耐候性評価
上記(1)の接着性評価で得られた擬似試験片を、高温高湿器内で85℃−85%RHの環境下で3000時間暴露した後に、取り出した擬似試験片を15mm幅で切り出し、擬似試験片の封止用保護シートと封止用保護シートの層間を、引張試験機(インテスコ株式会社製インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い、引張速度200mm/分、T型剥離、25℃での剥離強度を測定した。測定はn=5で行い、測定値はその平均値とした。
(3)耐酸性雨性評価
上記(1)の接着性評価で得られた擬似試験片を、50℃の10質量%硫酸水溶液に1500時間浸漬した後に、擬似試験片を取り出し、流水で水洗した後15mm幅で切り出し、擬似試験片の封止用保護シートと封止用保護シートの層間を、引張試験機(インテスコ株式会社製インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い、引張速度200mm/分、T型剥離、25℃での剥離強度を測定した。測定はn=5で行い、測定値はその平均値とした。
酸変性ポリオレフィン樹脂としては、市販品であるボンダインTX8030(アルケマ社製、以下、TX8030とする。)、ボンダインLX4110(アルケマ社製、以下、LX4110とする。)、ボンダインAX8390(アルケマ社製、以下、AX8390とする。)を用いた。酸変性ポリオレフィン樹脂の組成等を表1に示す。これら酸変性ポリオレフィン樹脂は以下に示す製造例1、2示す方法で水性分散体として利用した。
撹拌機とヒーターを備えた1リットル容ガラス容器に、TX8030またはLX4110を100g、イソプロパノールを125.0g、トリエチルアミンを3.7g、蒸留水を271.3g仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに120分間撹拌した。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ約40℃まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を得た。
この様にして得られたTX8030の水性分散体(以下、TXEmとする。)の固形分濃度は20質量%であり、数平均粒子径は0.085μmであった。
またLX4110の水性分散体(以下、LXEmとする。)の固形分濃度は20質量%であり、数平均粒子径は0.076μmであった。
なお、ポリオレフィン樹脂水性分散体の粒子径は、日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150を用い、樹脂の屈折率は1.5として求めた。
撹拌機とヒーターを備えた1リットル容ガラス容器に、AX8390を100g、ノルマルプロパノールを250.0g、トリエチルアミンを2.5g、蒸留水を147.5g仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに120分間撹拌した。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ約40℃まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なAX8390の水性分散体を得た。
得られたAX8390の水性分散体(以下、AXEmとする。)の固形分濃度は20質量%であり、数平均粒子径は0.150μmであった。
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体としてTXEmを用い、封止層基材として、耐候性PET(数平均分子量20000、環状オリゴマー含有量0.5質量%以下、固有粘度0.7dl/g、カルボジイミド化合物により末端カルボン酸封鎖)からなる厚み188μmのフィルムを用い、TXEmを封止層基材の片面にマイヤーバーでコーティングした後、100℃で2分間、乾燥させ、厚さ3μmの接着層を有する封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
使用する酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体の種類を、表2に示したように変更した以外は実施例1と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
オキサゾリン系架橋剤として市販品であるエポクロスWS700(日本触媒社製、数平均分子量20000の重合体、水溶液、固形分濃度25質量%、以下WS700とする)を用い、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体TXEmの固形分100質量部に対して、WS700の固形分5質量部を添加し撹拌混合した。得られたTXEmとWS700の混合液を、封止層基材である実施例1と同様の厚み188μmの耐候性PETフィルムの片面にマイヤーバーでコーティングした後、100℃で2分間、乾燥させ、厚さ3μmの接着層を有する封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
使用する酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体の種類を、表2に示したように変更した以外は実施例4と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
オキサゾリン系架橋剤の添加量を、表2に示したように変更した以外は実施例4と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
接着層の厚みを0.5μmとなるようにした以外は実施例4と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
封止層基材として厚み100μmのPVFフィルムを用いた以外は、実施例4と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
封止層基材として厚み100μmのPVDFフィルムを用いた以外は、実施例4と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
酸変性ポリオレフィン樹脂としてAX8390を用い、固形分濃度8質量%となるように70℃のトルエンに溶解し、AX8290のトルエン溶液を得た(AX8290のトルエン溶液は60℃未満の温度ではゲル状となるため液温は60℃以上を保った)。AX8390のトルエン溶液を、実施例1と同様の厚み188μmの耐候性PETフィルムを封止層基材として用い、片面にマイヤーバーでコーティングした後、100℃で2分間、乾燥させ、厚さ3μmの接着層を有する封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
酸変性ポリオレフィン樹脂としてAX8390を用い、固形分濃度8質量%となるように70℃のトルエンに溶解した。ついでオキサゾリン系架橋剤として市販品であるエポクロスRPS−1005(日本触媒社製、数平均分子量70000の重合体、固形、以下、RPS−1005とする。)を用いて、トルエン溶液中のAX8290の固形分100質量部に対して、RPS−1005を10質量部を添加し、撹拌混合した(混合液は60℃未満の温度ではゲル状となるため液温は60℃以上を保った)。得られたAX8390とRPS−1005の混合液を、実施例1と同様の厚み188μmの耐候性PETフィルムを封止層基材として用い、片面にマイヤーバーでコーティングした後、100℃で2分間、乾燥させ、厚さ3μmの接着層を有する封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
酸変性ポリオレフィン樹脂としてAX8390を用い、固形分濃度8質量%となるようにAX8390を70℃のトルエンに溶解した。ついでアミン系架橋剤として市販品であるTSL9306(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、ジアミノジシロキサン、以下TSL9306とする)を用いて、トルエン溶液中のAX8290の固形分に対して、TSL9306を10質量部を添加し、撹拌混合した(混合液は60℃未満の温度ではゲル状となるため液温は60℃以上を保った)。得られたAX8390とTSL9306の混合液を、実施例1と同様の厚み188μmの耐候性PETフィルムを封止層基材として用い、片面にマイヤーバーでコーティングした後、100℃で2分間、乾燥させ、厚さ3μmの接着層を有する封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
酸変性ポリオレフィン樹脂として、TX8030を用いた以外は、比較例1と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
酸変性ポリオレフィン樹脂として、TX8030を用いた以外は、比較例2と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
封止層基材として厚み100μmのPVFフィルムを用いた以外は、比較例2と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
封止層基材として厚み100μmのPVDFフィルムを用いた以外は、比較例2と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
Claims (8)
- 充填剤で太陽電池素子を覆ってなる充填剤層とこれを封止するための封止層とを有する太陽電池モジュールの前記充填剤層を封止するための封止用保護シートであって、封止層と、前記封止層の上層側の面に充填剤層と封止層とを接着させるための厚み0.01〜30μmの接着層とを備え、前記接着層が不飽和カルボン酸成分を0.1〜10質量%含有する酸変性ポリオレフィン樹脂を含むことを特徴とする封止用保護シート。
- 酸変性ポリオレフィン樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル成分を0.1〜25質量%含有することを特徴とする請求項1記載の封止用保護シート。
- 酸変性ポリオレフィン樹脂の融点が、70℃以上であることを特徴とする請求項1または2記載の封止用保護シート。
- 接着層が、不揮発性水性化助剤を含まないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の封止用保護シート。
- 接着層が、オキサゾリン系架橋剤を含み、その含有量が酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.05〜30質量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の封止用保護シート。
- 封止層が、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂及びポリアクリル樹脂のいずれから構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の封止用保護シート。
- さらに下層側にバリア層を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の封止用保護シート。
- 充填剤で太陽電池素子を覆ってなる充填剤層と、請求項1〜7のいずれかに記載の封止用保護シートと、を含むことを特徴とする太陽電池モジュール。
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