JP4717463B2 - 水性分散体および積層体 - Google Patents

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本発明は、ポリオレフィン樹脂とポリブタジエンを含有する水性分散体、これから得られる塗膜、およびこの塗膜を積層した積層体に関するものである。
エチレンやプロピレン等のオレフィン成分含有量の高いポリオレフィン樹脂からなる層をポリプロピレン樹脂(以下、PPと略す。)やゴム材料の表面に形成して、これを接着層やヒートシール層として利用することが従来から行われている。ポリオレフィン樹脂層を形成するための方法としては、熔融した樹脂を押出して層を形成する方法、樹脂を有機溶剤に溶解または分散させた液(溶剤系コート剤)をコートする方法、樹脂を水性媒体に分散させた液(水性コート剤)をコートする方法などがあるが、薄い層を形成できることや環境保護、省資源、作業性や作業環境の観点から、産業界では水性コート剤の使用が好まれている。
各種基材への接着性に優れ、高いヒートシール性を付与することのできるポリオレフィン樹脂水性分散体として、特許文献1、2には、不飽和カルボン酸含有量の低いポリオレフィン樹脂を不揮発性水性化助剤を用いずに水性分散体としたものが開示されている。また、特許文献3には、前記水性分散体に粘着付与成分を配合して、特にPPに対する接着性を向上させる技術が開示されている。しかし、これらの公知技術では、ある程度はPPに対する接着性を備えてはいものの、特にPPフィルムの非コロナ処理面への接着性は十分とは言えなかった。また、ゴム材料への接着性に関しては全く不十分であった。
ところで、特許文献4には、マレイン化ポリブタジエンポリマーとウレタンプレポリマーとを含有する水性被覆液が開示されているが、PPやゴム材料に対する接着性は満足するものではなかった。そのうえ、媒体として炭化水素系溶媒を含んでおり、環境面で好ましいものではなかった。
特開2003−119328号公報 特開2003−103734号公報 特開2004−051884号公報 特開平8−73801号公報
本発明は、上記のような課題に対して、水性であり、各種材料、特にPPおよびゴム材料に対する良好な接着性を示すとともに、高いヒートシール性を付与することのできる水性分散体を提供しようとするものである。
本発明者らは、鋭意研究の結果、ポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸成分で変性されたポリブタジエンとを特定量含有した水性分散体が、室温付近でも造膜することができ、その塗膜は耐水性、透明性に優れるとともに、特にポリオレフィン樹脂基材やゴム基材に良好な接着性を有することを見出し本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)不飽和カルボン酸成分を0.1〜10質量%含有するポリオレフィン樹脂(A)、不飽和カルボン酸成分で変性されたポリブタジエン(B)および水性媒体を含有し、(A)および(B)の不飽和カルボン酸成分の一部はそれぞれ塩基性化合物で中和されており、(A)100質量部に対して(B)3〜90質量部を含むことを特徴とする水性分散体。
(2)塩基性化合物が揮発性であることを特徴とする(1)記載の水性分散体。
(3) (A)および(B)の数平均粒子径が0.5μm以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の水性分散体。
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載の水性分散体を含有するプライマー、接着剤または塗料。
(5) (1)〜(3)のいずれかに記載の水性分散体から水性媒体を除去して得られる塗膜。
(6) (5)記載の塗膜を基材上に形成させた積層体。
(7) 基材の材質がポリオレフィン樹脂またはゴムである(6)記載の積層体。
本発明によれば、30℃以下といった低温でも造膜でき、耐水性、透明性に優れた塗膜を形成することのできる水性分散体が提供される。しかもこの塗膜は、様々な基材、特にポリオレフィン樹脂基材やゴム基材に良好な接着性を示し、さらに高いヒートシール性をも有している。なかでも熱可塑性樹脂フィルムの非コロナ処理面、特に接着し難い材料であるPPの非コロナ処理面へも優れた接着性を有している。従って、フィルムのコロナ処理の工程を省くことができ、経済的にも有利である。また、本発明の水性分散体は、プライマー、接着剤、塗料等の用途に好適に使用できる。さらに、本発明は水性分散体として提供されるので環境保護、省資源、消防法等の面からも好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、「不飽和カルボン酸成分で変性されたポリブタジエン」を「変性ポリブタジエン」と略す。
本発明の水性分散体は、不飽和カルボン酸成分を0.1〜10質量%含有するポリオレフィン樹脂(A)、変性ポリブタジエン(B)および水性媒体を含有し、(A)100質量部に対して(B)が3〜90質量部である必要がある。このような割合で両者を含有することで、塗膜の透明性が良好となり、PP等のポリオレフィン材料やゴム材料との接着性が良好となる。(B)の含有量が3質量部未満では(B)の添加効果が小さいため接着性の改良効果が小さく、90質量部を超えると接着性が著しく低下する。塗膜の透明性や接着性をさらに高める点から、(B)の含有量は5〜85質量が好ましく、7〜80質量部がより好ましく、10〜75質量部がさらに好ましく、12〜75質量部が特に好ましい。
ポリオレフィン樹脂(A)の主成分は、エチレン系炭化水素化合物を重合したものであれば特に限定はされないが、製造や入手をし易い点から、エチレン系炭化水素化合物としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のアルケンが好ましく、これらの混合物を用いてもよい。この中で、(A)の主成分としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のアルケンがより好ましく、エチレン、プロピレンがさらに好ましい。(A)の主成分であるエチレン系炭化水素化合物の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。含有量が50質量%未満の場合はポリオレフィン樹脂の性質が失われ、基材との密着性などが低下してしまう。
ポリオレフィン樹脂(A)は後述する樹脂の水性化のためや接着性向上の点から、不飽和カルボン酸成分を0.1〜10質量%含有していることが必要であり、0.5〜8質量%含有していることが好ましく、1〜7質量%含有していることがより好ましく、1〜5質量%含有していることが特に好ましい。不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1質量%未満であると、水性媒体中に安定に分散することが困難となり、10質量%を超えると、PP等のポリオレフィン材料やゴム材料との接着性が低下してしまう。
不飽和カルボン酸成分は、不飽和カルボン酸や、その無水物により導入され、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。また、不飽和カルボン酸成分は、ポリオレフィン樹脂(A)中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂(A)には、次のような成分が25質量%を上限として含有されていてもよい。すなわち、1−オクテン、ノルボルネン類等の炭素数6以上のアルケン類やジエン類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類ならびにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二酸化硫黄などであり、これらの混合物でもよい。これらの成分は、ポリオレフィン樹脂(A)中に共重合されていればよく、その形態は特に限定されず、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)等が挙げられる。
上記の中でも、PPやゴム材料との接着性をいっそう向上させる点から、(メタ)アクリル酸エステル類が好ましい。(メタ)アクリル酸エステル類を用いる場合、その量はポリオレフィン樹脂(A)中、0.1〜25質量%の範囲とすることが好ましく、3〜25質量%がより好ましく、5〜25質量%含有していることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル類の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。)
また、ポリオレフィン樹脂(A)は塩素化されていてもよく、その場合塩素化率は5〜50質量%が適当である。塩素化によりPPに対する接着性が向上する。
ポリオレフィン樹脂(A)を塩素化する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、塩素化させたい樹脂をクロロホルム等の塩素系溶剤に溶解させた後、紫外線を照射しながら、または、ラジカル発生剤の存在下で、ガス状の塩素を吹き込むことにより行うことができる。
ポリオレフィン樹脂(A)の具体例を示せば、不飽和カルボン酸含有エチレン樹脂、不飽和カルボン酸含有プロピレン樹脂、不飽和カルボン酸含有エチレン−プロピレン樹脂、不飽和カルボン酸含有エチレン−ブテン樹脂、不飽和カルボン酸含有プロピレン−ブテン樹脂、不飽和カルボン酸含有エチレン−プロピレン−ブテン樹脂、不飽和カルボン酸含有エチレン−酢酸ビニル樹脂、不飽和カルボン酸含有エチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、不飽和カルボン酸含有プロピレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、不飽和カルボン酸含有エチレン−プロピレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、不飽和カルボン酸含有エチレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、不飽和カルボン酸含有プロピレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、不飽和カルボン酸含有エチレン−プロピレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、およびこれらの塩素化物である。中でも、PPやゴム材料との接着性の向上効果が大きいという点から、不飽和カルボン酸含有エチレン−プロピレン樹脂、不飽和カルボン酸含有プロピレン−ブテン樹脂、不飽和カルボン酸含有エチレン−プロピレン−ブテン樹脂、不飽和カルボン酸含有エチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、不飽和カルボン酸含有エチレン−プロピレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、不飽和カルボン酸含有プロピレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、不飽和カルボン酸含有エチレン−プロピレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂がより好ましく、不飽和カルボン酸含有エチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂が特に好ましい。
本発明において、ポリオレフィン樹脂(A)は、分子量の目安となる190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが通常0.01〜10000g/10分、好ましくは0.1〜1000g/10分、より好ましくは1〜500g/10分、さらに好ましくは2〜300g/10分、特に好ましくは2〜200g/10分のものを用いることができる。ポリオレフィン樹脂(A)のメルトフローレートが0.01g/10分未満では、基材との接着性が低下する傾向があったり、樹脂の水性化が困難になったりする。一方、ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが10000g/10分を超えると、塗膜は硬くてもろくなり、基材との接着性が低下してしまう。
変性ポリブタジエン(B)の不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸が好ましく、入手のし易さからマレイン酸、無水マレイン酸が特に好ましい。(B)中の不飽和カルボン酸の含有量は、酸価として10〜400mgKOH/gが好ましく、30〜300mgKOH/gがより好ましく、50〜300mgKOH/gがさらに好ましく、ポリオレフィン樹脂(A)との相溶性やPP等の接着性が向上する点から70〜250mgKOH/gが特に好ましい。酸価が10mgKOH/g未満では、ポリオレフィン樹脂(A)との混合安定性が低下する傾向にあり、400mgKOH/gを超える場合はPPやゴム材料に対する接着性が低下する。
また、変性ポリブタジエン(B)におけるブタジエンの骨格は、1,2−ビニル型、1,4−トランス型、または1,4−シス型のいずれの構造を有するものでよく、これらの混合物であってもよく、その比率も特に限定されない。
変性ポリブタジエン(B)の数平均分子量は、200〜20000が好ましく、500〜10000がより好ましい。数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
変性ポリブタジエン(B)は、ポリブタジエンを不飽和カルボン酸変性して得られるが、市販のものを用いるのが簡便である。市販のものとしては、日本曹達社製マレイン化ブタジエン(BN−1010等)、新日本石油社製マレイン化ブタジエン(M−1000−20、M−1000−80、M−2000−20、M−2000−80等)、degussa社製マレイン化ブタジエン(polyvest OC800S等)を使用することができる。
ポリオレフィン樹脂(A)、変性ポリブタジエン(B)の不飽和カルボン酸成分は、それらの一部が塩基性化合物で中和されている。水性分散体の分散安定性の点から、中和度は30〜100%であることが好ましく、50〜100%がより好ましく、70〜100%がさらに好ましく、80〜100%が特に好ましい。不飽和カルボン酸成分の一部が中和されることでアニオンを生じ、アニオンの静電気的反発力によって樹脂微粒子間の凝集が防がれ、水性分散体を安定化させることができる。
塩基性化合物は、塗膜形成後の塗膜の耐水性の点から、揮発性であることが好ましい。本発明において、「揮発性」とは常圧における沸点が250℃以下であることを指すものとする。沸点が250℃を超えると樹脂塗膜から乾燥によって有機アミン化合物を飛散させることが困難になり、塗膜の耐水性が悪化する場合がある。揮発性の塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。
本発明でいう水性媒体とは、水を主成分とする媒体であって、水溶性の塩基性化合物や有機溶剤を含有していてもよい。
水性分散体中のポリオレフィン樹脂(A)および変性ポリブタジエン(B)の樹脂粒子の数平均粒子径(以下、mn)は、水性分散体の保存安定性、塗膜の透明性、30℃以下の低温での造膜性が向上する点から、いずれも0.5μm以下が好ましく、0.005〜0.3μmがより好ましく、0.01〜0.2μmがさらに好ましく、0.01〜0.1μmが特に好ましい。さらに、重量平均粒子径(以下、mw)に関しては、1μm以下が好ましく、0.01〜0.5μmがより好ましく、0.01〜0.2μmが特に好ましい。
本発明の水性分散体には、基材との接着性、耐水性、耐溶剤性等の性能をさらに向上させるために、架橋剤を添加してもよい。好ましい添加量は(A)、(B)の総和100質量部に対して0.1〜30質量部であり、より好ましくは0.5〜20質量部である。架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属等を用いることができ、このうちイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が好ましい。また、これらの架橋剤を組み合わせて使用することもできる。
本発明において、PP基材との接着性を向上させるために、粘着付与成分を添加することができる。粘着付与成分としては、重合ロジン、不均化ロジン、水素添加ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン、及びこれらのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、エチレングリコールエステル、ジエチレングリコールエステル、トリエチレングリコールエステルなどのロジン類;低重合テルペン系、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、テルペンフェノール系、芳香族変性テルペン系、水素添加テルペンなどのテルペン系樹脂;炭素数5個の石油留分を重合した石油樹脂;炭素数9個の石油留分を重合した石油樹脂;前記石油樹脂に水素添加した石油樹脂;マレイン酸変性またはフタル酸変性した石油樹脂;クマロン樹脂;インデン樹脂が挙げられる。この中でも、PPへの接着性の点からテルペン系樹脂が好ましく、中でも芳香族変性テルペン系樹脂が特に好ましい。粘着付与成分の添加量は、本発明の水性分散体の固形分100質量部に対し、1〜80質量部が好ましく、5〜70質量部がより好ましく、10〜60質量部がさらに好ましく、10〜50質量部が特に好ましい。
本発明の水性分散体には、他の重合体の水性分散体を添加してもよい。他の重合体の水性分散体としては、特に限定されない。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の水性分散体を挙げることができる。これらは、2種以上を混合して使用してもよい。他の重合体の水性分散体添加量は、本発明の水性分散体の固形分100質量部に対し、他の重合体の水性分散体(固形分)1〜80質量部が好ましく、5〜70質量部がより好ましく、10〜60質量部がさらに好ましく、10〜50質量部が特に好ましい。
さらに、本発明の水性分散体に、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、帯電防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤等の各種薬剤や、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料あるいは染料を添加してもよい。また、水性分散体の安定性を損なわない範囲で上記以外の有機もしくは無機の化合物を水性分散体に添加することもできる。
本発明の水性分散体を得る方法は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂(A)と変性ポリブタジエン(B)とを同時に水性分散体とする方法や、ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体と変性ポリブタジエン(B)の水性分散体をそれぞれ調製してから、所定の割合で混合して本発明の水性分散体とする方法が挙げられる。
(A)、(B)各樹脂の水性分散体を得るための方法としては、例えば、(A)、(B)樹脂のいずれか一方または両方と、塩基性化合物、水性媒体とを容器中で加熱、攪拌する方法が挙げられる。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されない。
製造装置としては、水性媒体と樹脂との混合物を適度に撹拌できるものであればよく、例えば、公知の固/液撹拌装置や乳化機を使用することができる。密閉可能であるもの、0.1MPa以上の加圧が可能であるものが好ましい。
前記装置に各原料を投入した後、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておく。次いで、槽内の温度を50〜200℃、好ましくは60〜200℃の温度に保ちつつ、好ましくは5〜120分間攪拌を続けることにより樹脂を十分に水性化させ、その後、好ましくは攪拌下で40℃以下に冷却することにより、水性分散体を得ることができる。槽内の温度が50℃未満の場合は、樹脂の水性化が困難になる。槽内の温度が200℃を超える場合には、樹脂の分子量が低下するおそれがある。
また、水性分散体製造の際には、樹脂の分散粒子径を小さくできるという点から、有機溶剤を添加することが好ましい。20℃における水に対する溶解性が20g/L以上のものが好ましく用いられ、さらに好ましくは100g/L以上である。有機溶剤の添加量はポリオレフィン樹脂の水性分散体100質量部に対して1〜40質量部であることが好ましく、2〜30質量部がより好ましく、3〜20質量部が特に好ましい。なお、有機溶剤は、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱することで、その一部を系外へ除去(ストリッピング)することができる。この操作により、有機溶剤量を水性分散体中1質量%以下に減じることもできる。使用される有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられ、乾燥温度を低くできる点から、沸点が100℃以下であるエタノール、イソプロパノール、n−プロパノールが特に好ましい。
本発明の水性分散体における樹脂含有率は、成膜条件、目的とする樹脂層の厚さや性能等により適宜選択でき、特に限定されるものではないが、水性分散体の粘性を適度に保ち、かつ良好な塗膜形成能を発現させる点で、1〜50質量%が好ましく、3〜50質量%がより好ましく、5〜45質量%がさらに好ましく、5〜40質量%が特に好ましい。
本発明の水性分散体には、乳化剤成分が含まれていてもよいが、その量は、耐水性、基材との接着性、衛生面の理由から、(A)と(B)の合計量100質量部に対して10質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは5質量部以下であり、含有しないことが特に好ましい。こうした化合物は乾燥後にも塗膜中に残存し、塗膜を可塑化して性能を悪化させたり、塗膜から溶出したりするからである。
本発明でいう乳化剤成分としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
本発明の水性分散体は、被膜形成能に優れているので、公知の成膜方法により製膜することができる。例えば、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により各種基材表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥または乾燥と焼付けのための加熱処理に供することにより、均一な樹脂被膜を各種基材表面に接着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。加熱温度や加熱時間は、基材の特性や添加剤の種類、配合量等により適宜選択されるものであるが、通常、30℃〜基材の融点、好ましくは60℃〜基材の融点、乾燥時間は1秒〜5分程度である。なお、架橋剤を添加した場合は、樹脂と架橋剤との反応が十分進行するような条件を適宜選定すればよい。必要に応じてさらにエージング処理を行ってもよい。
本発明の水性分散体の塗布量は、その用途に応じて適宜選択されるものであるが、乾燥後の塗布量として0.001〜100g/mが好ましく、0.01〜50g/mがより好ましく、0.01〜30g/mが特に好ましい。0.001〜100g/mの範囲となるように成膜すれば、均一性に優れた樹脂塗膜が得られる。プライマーとしての使用に際しては、必ずしも高い塗布量は必要ではなく、0.001〜5g/m程度でじゅうぶんな効果が得られる。0.005〜2g/mがより好ましく、0.005〜1g/mが特に好ましい。
本発明の水性分散体は、各種の基材上に塗布し、水性媒体を除去することにより、積層体を得ることができる。適用可能な基材としては、紙、合成紙、熱可塑性樹脂、鋼板、アルミ箔、木材、織布、編布、不織布、石膏ボード、木質ボード等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリグリコール酸やポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル樹脂に代表される生分解性樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、PP、ポリエチレン、エチレン−ビニルアセテート共重合体、アイオノマー等のポリオレフィン樹脂、ゴム系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂またはそれらの混合物が挙げられ、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン、エチレン−ビニルアセテート共重合体、アイオノマー、PP、ゴム系樹脂が好ましく、PP、ゴム系樹脂への使用が特に好ましい。なお、ゴム系樹脂としては、ポリオレフィンゴム(ポリオレフィンエラストマー)、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、天然ゴム、スチレン−アクリロニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等が挙げられる。ポリオレフィンゴム(ポリオレフィンエラストマー)としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、およびこれらの変性体(酸変性、塩素化物)などが挙げられる。
熱可塑性樹脂の形態としては、フィルム(シートも含むものとする。)であることが好ましく、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、その製法も特に限定されない。また、フィルムは、複数の層からなる積層体であってもよい。厚さも特に限定されるものではないが、通常は1〜500μmの範囲であればよい。さらに、未延伸フィルムに水性分散体を塗布した後、フィルムを延伸する、いわゆるインラインコートを行ってもよい。
また、熱可塑性樹脂フィルムには、通常、濡れ性や接着性を向上させるためにコロナ処理が施されるが、本発明の水性分散体から得られる塗膜は上記熱可塑性樹脂フィルムの非コロナ処理面、特に接着し難い材料であるPPの非コロナ処理面への優れた接着性を有している。従って、コロナ処理の工程を省くこともできるため経済的にも有利である。
熱可塑性樹脂フィルムには、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよく、酸素ガスバリア層等のガスバリアコート層が積層されていてもよい。
本発明の水性分散体は、プライマー、接着剤、塗料の各用途に好適である。
プライマーとして使用する場合、前述した基材表面に前述した厚みになるように本発明の水性分散体から得られる塗膜を形成することで表面が改質される。そのことによって、易接着性が得られるため、さらにその上に他の材料(インキ、フィルムなど)を積層することが容易になる。
接着剤として使用する場合、本発明の水性分散体、あるいはこれに前述したよう化合物を配合して接着剤とする。本発明の水性分散体をフィルム等に塗布・乾燥して接着剤層を形成したのち、この接着剤層の上にさらに他の基材を載せ、加熱して接着する、いわゆるヒートシール接着剤としての使用形態が好適であるが、紙や布などを基材とする場合には、基材に水性分散体を塗布し、ウエットな状態で他の基材を載せ、自然乾燥、または加熱乾燥により接着することもできる。
塗料として使用する場合、本発明の水性分散体に顔料や染料を配合して塗料とする。得られた塗料は、各種基材に対する密着性が良好である。とりわけ、一般には塗料が密着しにくいとされているPP(非コロナ処理面)にも良好に用いることができる。
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、各種の特性については以下の方法によって測定または評価した。
1.樹脂の特性
(1)ポリオレフィン樹脂の構成
不飽和カルボン酸成分以外の構成は、H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)より求めた。オルトジクロロベンゼン(d)を溶媒とし、120℃で測定した。不飽和カルボン酸含有量は、樹脂の酸価をJIS K5407に準じて測定し、その値から算出した。
(2)メルトフローレート(MFR)
JIS 6730記載(190℃、2160g荷重)の方法で測定した。
2.水性分散体の特性
(1)水性分散体の固形分濃度
水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
(2)水性分散体の平均粒子径
日機装株式会社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340、動的光散乱法)を用い、数平均粒子径および重量平均粒子径を求めた。ここで、粒子径算出に用いる樹脂の屈折率は1.50とした。
(3)水性分散体のポットライフ
水性分散体を室温で30日放置した後の水性分散体の外観を次の3段階で評価した。
○:外観に変化なし。
△:増粘がみられる。
×:固化、凝集や沈殿物の発生が見られる。
3.材料特性
以下の評価においては、合成紙としてポリプロピレン系合成紙であるユポ紙(FGS−95、ユポコーポレーション社製)、熱可塑性樹脂フィルムとして、PPフィルム(出光ユニテック社製、スーパーピュアレイ、300μm)、未延伸PPフィルム(CPP)(東レ社製、60μm)、ゴム系材料として黒天然ゴム板(雨林製作所社の科学機器総合カタログ2004−2005、商品番号15−18−13−05)を用いた。
(1)塗膜の耐水性評価方法
CPPフィルムの未処理面に水性分散体を乾燥後の塗布量が2g/mになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、90℃で2分間、乾燥させた。得られたコートフィルムは室温で1日放置後、評価した。塗膜を水で濡らした布で10回擦り、塗膜の状態を目視で評価した。
○:変化なし、△:塗膜がくもる、×:塗膜が剥離または完全に溶解
(2)塗膜の透明性
JIS K7105に準じて、日本電色工業社製のNDH2000「濁度、曇り度計」を用いて「ヘーズ(%)」を測定した。ヘーズが2.8%のPETフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12,厚み12μm)に乾燥後の塗布量が2g/mになるように水性分散体をマイヤーバーを用いてコートした後、25℃で3日放置して乾燥させてコートフィルムを作製した。このようにして作製したコートフィルム全体のヘーズを測定することで塗膜の透明性を評価した。
(3)水性分散体の密着性(プライマーとしての評価)
基材に水性分散体を乾燥後の塗布量が1g/mになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、80℃で2分間、乾燥させた。得られた積層体は室温で1日放置後、評価した。塗膜表面に粘着テープ(ニチバン社製TF−12)を貼り付け、テープを一気に剥がした場合の剥がれの程度を目視で評価した。
○:全く剥がれなし、△:一部、剥がれた、×:全て剥がれた
(4)塗料の密着性
基材に塗料を乾燥後の塗布量が1g/mになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、80℃で2分間、乾燥させた。得られた積層体は室温で1日放置後、評価した。塗膜表面に粘着テープ(ニチバン社製TF−12)を貼り付け、テープを一気に剥がした場合の剥がれの程度を目視で評価した。
○:全く剥がれなし、△:一部、剥がれた、×:全て剥がれた
(5)ヒートシール性(ヒートシール接着剤としての評価)
水性分散体を合成紙またはCPPの非コロナ処理面に乾燥後の塗布量が4g/mになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、90℃で2分間、乾燥させた。得られたコートフィルムの塗膜(コート面)が接するようにして、ヒートプレス機(シール圧0.3MPaで10秒間)にて120℃でプレスした。このサンプルを15mm幅で切り出し、1日後、引張試験機(インテスコ株式会社製インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い、引張速度200mm/分、引張角度180度で塗膜の剥離強度を測定することでヒートシール性(ヒートシール強度)を評価した。
(ポリオレフィン樹脂P−1の製造)
プロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体(ヒュルスジャパン社製、ベストプラスト708、プロピレン/ブテン/エチレン=65/24/11質量%)100g、トルエン500gを、攪拌機、冷却管、滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を110℃に保って攪拌下、ラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド1.0gのヘプタン20g溶液を1時間かけて加えた後、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸7.0g、アクリル酸ラウリル9.0g、ジクミルパーオキサイド0.5gのヘプタン10g溶液をそれぞれ1時間かけて滴下し、その後30分間反応させた。反応終了後、室温まで冷却した後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応物を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥してポリオレフィン樹脂P−1を得た。P−1のMFRは3g/10分、無水マレイン酸含有量4質量%、アクリル酸ラウリルの樹脂中の含有量は6質量%であった。
その他のポリオレフィン樹脂は市販のものを使用した。以下の水性分散体の製造において使用したポリオレフィン樹脂の組成を表1に示す。
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂〔ボンダインHX−8290、住友化学工業社製〕、60.0gのイソプロパノール(和光純薬社製)、2.5gのトリエチルアミン(和光純薬社製)および177.5gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−2の製造)
ポリオレフィン樹脂としてボンダインTX−8030(イ)(住友化学工業社製)を用いた以外はポリオレフィン樹脂水性分散体E−1の製造に準じた操作でポリオレフィン樹脂水性分散体E−2を得た。
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂(P−1)、90.0gのn−プロパノール(和光純薬社製)、5.5gのN,N−ジメチルエタノールアミン(和光純薬社製)及び144.5gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白黄色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E−3を得た。
(ポリオレフィン樹脂水性分散体H−1の製造)
ポリオレフィン樹脂としてエチレン−アクリル酸共重合体樹脂(プリマコール5980I、アクリル酸20質量%共重合体、ダウケミカル製)を用いた。ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのエチレン−アクリル酸共重合体樹脂(プリマコール5980I(エ)、ダウケミカル社製)、16.8gのトリエチルアミン、および223.2gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに40分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の水性分散体H−1を得た。
(変性ポリブタジエン水性分散体T−1の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの無水マレイン酸変性ポリブタジエン〔polyvest OC800S、degussa社製、数平均分子量2400、酸価140〜180mgKOH/g〕、60.0gのイソプロパノール(和光純薬社製)、15gのトリエチルアミン(和光純薬社製)および165gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ系は乳白色になった。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を80℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリブタジエン水性分散体T−1を得た。
各種水性分散体の特性を表2に示す。
(実施例1)
水性分散体E−1と水性分散体T−1とを、固形分でポリオレフィン100質量部に対し変性ポリブタジエン35質量部になるように室温で混合、攪拌して水性分散体M−1を得た。
(実施例2、3)
T−1の割合を、それぞれ10質量部(実施例2)、60質量部(実施例3)とした以外は実施例1と同様の操作で水性分散体M−2、M−3を得た。
(実施例4、5)
水性分散体E−1に代えて、E−2(実施例4)、E−3(実施例5)を用い、それ以外は実施例1と同様の操作を行って、それぞれ水性分散体M−4、M−5を得た。
(比較例1〜4)
E−1、E−2、E−3およびH−1の各水性分散体をそれぞれ単独で用いた。
(比較例5)
水性分散体H−1に、実施例1と同様にしてT−1を添加し、水性分散体HT−1を得た。
(比較例6)
E−1中の固形分100質量部に対しT−1中の固形分濃度が100質量部になるように、E−1とT−1とを室温で混合、攪拌して水性分散体ET−1を得た。
実施例1〜5および比較例1〜6で得られた結果を表3に示す。
(実施例6〜10)
実施例1〜5で得られた水性分散体に顔料を添加して水性塗料を調製した。
すなわち、水性分散体M−1〜5の固形分100質量部に対して、水50質量部と、顔料としての酸化チタン(石原産業社製、タイペークCR−50)を80質量部と、ガラスビーズ250質量部とを添加し、ペイントシェーカーで1時間振とう分散させた後、ガラスビーズを取り除いて水性塗料を得た。水性塗料の密着性評価結果を表4に示す。
実施例1〜5から、ポリオレフィン樹脂と変性ポリブタジエンを特定範囲で混合することで、ゴム系材料に対する密着性や非コロナ処理のPPフィルムのヒートシール性が飛躍的に向上することが判った。また、これらの水性分散体は、室温付近でも造膜でき、塗膜の耐水性、透明性に優れていた。変性ポリブタジエンを含有しない場合(比較例1〜3)では、ゴム系材料に対する密着性や非コロナ処理のPPフィルムのヒートシール性に劣っていた。また、本発明の範囲外のポリオレフィン樹脂を用いた場合(比較例4、5)では、PPやゴム材料に対する密着性、ヒートシール性は悪かった。変性ポリブタジエンの量が本発明の範囲外になると(比較例6)、塗膜の耐水性、透明性が悪化し、PPやゴム材料に対する密着性、ヒートシール性も大きく低下した。
また、本発明の水性分散体を用いて作製した塗料は、PPやゴム材料に対する密着性も良好であった。

Claims (7)

  1. 不飽和カルボン酸成分を0.1〜10質量%含有するポリオレフィン樹脂(A)、不飽和カルボン酸成分で変性されたポリブタジエン(B)および水性媒体を含有し、(A)および(B)の不飽和カルボン酸成分の一部はそれぞれ塩基性化合物で中和されており、(A)100質量部に対して(B)3〜90質量部を含むことを特徴とする水性分散体。
  2. 塩基性化合物が揮発性であることを特徴とする請求項1記載の水性分散体。
  3. (A)および(B)の数平均粒子径が0.5μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の水性分散体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の水性分散体を含有するプライマー、接着剤または塗料。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の水性分散体から水性媒体を除去して得られる塗膜。
  6. 請求項5記載の塗膜を基材上に形成させた積層体。
  7. 基材の材質がポリオレフィン樹脂またはゴムである請求項6記載の積層体。
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