JP5361753B2 - 二次電池電極用バインダー、電極および二次電池 - Google Patents
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Description
しかしながら、PVDFを用いた溶液を二次電池電極用バインダーとして使用した場合、活物質間や導電材との接着性に劣り、また、活物質及び導電材と金属集電体との界面の接着性にも劣るため、極板の裁断工程や捲回工程等の製造工程時に活物質や導電材の一部が金属集電体から剥離・脱落し、微少短絡や電池容量のばらつきを生じる原因となっていた。
また、PVDFを溶解させる溶媒として用いられているNMPは、電極ペーストを金属集電体上に塗布・乾燥する際に蒸発するため、これを安全に回収する必要がある。また昨今の環境関連の法規制によって、加工場によっては環境に影響を及ぼす可能性のある有機溶媒を使用できないところも多くなっている。
特許文献3では、界面活性剤を含まない自己乳化性ポリオレフィンエマルジョンを電極用バインダーとして使用することが記載されている。特許文献3で開示されている自己乳化性ポリオレフィンエマルジョンとは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン骨格にカルボキシル基を導入し、アンモニア、アルカノールアミン、苛性ソーダ等のアルカリで水溶化するものであり、該水溶化の際には、高度分散してエマルジョン化した水溶液である。
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体からなる二次電池電極用バインダーであって、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体が、酸変性ポリオレフィン樹脂、塩基性化合物および水性媒体を含有し、酸変性ポリオレフィン樹脂が、不飽和カルボン酸成分とオレフィン成分とを含有し、酸変性ポリオレフィン樹脂におけるオレフィン成分の100モル%がプロピレンであり、酸変性ポリオレフィン樹脂の酸価が10〜70mgKOH/g、酸変性ポリオレフィン樹脂の質量平均分子量が20,000〜100,000であることを特徴とする二次電池電極用バインダー。
(2)不揮発性水性分散化助剤を含有しないことを特徴とする(1)の二次電池電極用バインダー。
(3)酸変性ポリオレフィン樹脂の数平均粒子径が0.01〜1μmであることを特徴とする(1)または(2)の二次電池電極用バインダー。
(4)酸変性ポリオレフィン樹脂における不飽和カルボン酸成分が、無水マレイン酸であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの二次電池電極用バインダー。
(5)酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体に水溶性ポリマーを添加したことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの二次電池電極用バインダー。
(6)水溶性ポリマーが、セルロース系ポリマーであることを特徴とする(5)の二次電池電極用バインダー。
(7)(1)〜(6)のいずれかの二次電池電極用バインダーを用いて形成された二次電池電極。
(8)(7)の二次電池電極を用いて形成された二次電池。
本発明の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体(「水性分散体」と称する場合がある)は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、塩基性化合物(B)と、水性媒体とを含有する水性分散体である。前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、不飽和カルボン酸成分(A1)とオレフィン成分(A2)とを含有する。
さらに、上記のようなオレフィン成分(A2)とした場合、接着性、耐溶剤性の観点から本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、不飽和カルボン酸成分(A1)とオレフィン成分(A2)以外のモノマー単位を有していないことが好ましい。
また、水性分散体における酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の固形分濃度は、1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることが特に好ましい。固形分濃度が50質量%を超えると分散体の著しい粘度増加が発現したり、固化により取扱い性が低下したりする傾向がある。一方、固形分濃度が1質量%未満では、塗工により塗膜を形成させることが困難となりやすく、分散体の著しい粘度低下により取扱性も低下する傾向がある。
ここで、不揮発性水性分散化助剤とは、水性分散化において、水性分散化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物を指す。不揮発性水性分散化助剤は、塗膜形成後にも残存し、塗膜を可塑化することにより、樹脂の特性、例えば耐水性等を悪化させる場合がある。なお、不揮発性とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは、常圧で高沸点(300℃以上)であることを指す。
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
本発明の二次電池電極用バインダーにおける酸変性ポリオレフィン樹脂(A)において、オレフィン成分(A2)の100モル%は、活物質と導電材、さらにこれらと金属集電体との接着性や電解液に対する耐膨潤性を向上させるために、プロピレンであることが必要である。
さらに、上記のようなオレフィン成分(A2)とした場合、接着性や耐膨潤性の観点から、本発明の二次電池電極用バインダーにおける酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、不飽和カルボン酸成分(A1)とオレフィン成分(A2)以外のモノマー単位を有していないことが好ましい。
(1)水性分散体、または二次電池電極用バインダー中の酸変性ポリオレフィン樹脂(A)粒子の数平均粒子径
日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340、動的光散乱法)を用い、数平均粒子径を求めた。なお、樹脂の屈折率は1.50とした。
(2)接着性評価
無延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製、品目SC)(厚み50μm)に、得られた水性分散体を、マイヤーバーを用いて塗布した後、90℃で2分間乾燥させ、厚さ1μmの乾燥塗膜を、無延伸ポリプロピレンフィルム上に形成した。得られた積層体を室温で24時間放置後、乾燥塗膜表面に、カッターナイフで1mm間隔の切れ目を入れ(切れ目は無延伸ポリプロピレンフィルムに達するように入れる)100升の碁盤目を作製した。その碁盤目上に、セロハンテープ(ニチバン社製「TF−12」)を貼り付け、テープを一気に剥がした場合の、100升中の剥離がなかった升目で評価した。
(3)耐水性評価
無延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製、品目SC)(厚み50μm)に、得られた水性分散体を、マイヤーバーを用いて塗布した後、90℃で2分間乾燥させ、厚さ1μmの乾燥塗膜を、無延伸ポリプロピレンフィルム上に形成した。得られた積層体を室温で24時間放置後、乾燥塗膜表面に、カッターナイフで1mm間隔の切れ目を入れ(切れ目は無延伸ポリプロピレンフィルムに達するように入れる)100升の碁盤目を作製した。その碁盤目の入った積層体を40℃の水道水に48時間浸漬した。浸漬後に積層体を取り出し、速やかに塗膜表面を乾いたウエスで軽く拭取り、表面の碁盤目上にセロハンテープ(ニチバン社製、「TF−12」)を貼り付け、テープを一気に剥がした場合の、100升中の剥離がなかった升目で評価した。
(4)二次電池電極用バインダー(水性分散体)の電解液膨潤性
得られた二次電池電極用バインダーをテフロン(登録商標)製の皿に入れた後、65℃で2時間乾燥し、さらに75℃減圧下で15時間乾燥した。固化した樹脂を約1.5g計り取り、正確な質量を測定したのち、電解液(四フッ化ホウ酸リチウムをエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶媒(質量比1/1)に1モル/リットルの濃度で溶解させたもの)に50℃雰囲気下で24時間浸漬した。その後、樹脂の表面に付着した電解液を拭き取り、電解液浸漬後の樹脂の質量を測定し、その増加分を電解液膨張率とした。以下の基準で評価した。
◎:電解液膨張率が10%未満である。
○:電解液膨張率が10%以上15%未満である。
△:電解液膨張率が15%以上25%未満である。
×:電解液膨張率が25%以上である。
(5)二次電池電極用バインダー(水性分散体)の造膜性
得られた二次電池電極用バインダーを銅箔に乾燥後の接着層の厚みが3μmになるようにマイヤーバーでコートし、160℃で90秒間乾燥させ、外観を目視で観察した。以下の基準で評価した。
○:乾燥後の塗布面が均一に造膜できた。
×:乾燥後の塗布面が均一でなく、あるいは造膜できなかった。
実施例4〜9、参考例5〜8、比較例3〜4で得られた銅箔上に形成した二次電池負極電極をカッターナイフで切り出し、切り出した際に脱落した電極の有無により、以下の基準で評価した。なお、電極層の脱落割合は、下記の基準に基づいて算出した。
電極の脱落率(%)=(脱落した電極長さ/切り出した電極長さ)×100
○:切り出した電極に脱落部分がなかった。
△:切り出した電極に脱落部分があり、電極の脱落率が10%未満であった。
×:切り出した電極に脱落部分があり、電極の脱落率が10%以上であった。
(7)負極電極の剥離強度
実施例4〜9、参考例5〜8、比較例3〜4で得られた銅箔上に形成した二次電池負極電極を幅2.5cm、長さ10cmに切り出し、測定サンプルとし、銅箔側を十分な厚みを有する鋼板に両面テープで貼り合わせた。測定サンプルの活物質層にセロハンテープ(ニチバン社製、CT−18、18mm幅)を貼り付け、その一辺から180度の方向に50mm/分の速度で引き剥がしたときの応力を測定した(180度剥離試験を行い測定した)。なお測定は各サンプル3回実施し、その平均値を剥離強度とした。
(8)負極電極の初期充放電効率
実施例4〜9、参考例5〜8、比較例3〜4で得られた銅箔上に形成した二次電池負極電極を、面積が2cm2の円形になるように切断し、集電体上の塗膜をプレスにて電極密度が1.15g/cm3となるように成形し、コバルト酸リチウム電極(宝泉社製)と組み合わせるとともに両極の間にセパレーターを挟んでコイン型電池を作製し、充放電試験を行った。25℃環境下、0.2C−4.1V定電流定電圧充電後、0.2C−2.5V定電流放電を行い、初期充放電特性の評価を行った。初期充放電効率を下記の基準に基づいて算出した。
初期充放電効率(%)=(0.2C放電容量/0.2C充電容量)×100
(9)初期充放電試験後の負極電極接着性
(8)の方法で初期充放電試験を行った後、電池を解体して負極電極を取り出した。電極表面に付着した電解液を拭き取り、活物質層にセロハンテープ(ニチバン社製、CT−18、18mm幅)を貼り付け、その一辺から180度の方向に50mm/分の速度で引き剥がした。その後、電極表面に、あらかじめ2mm幅で100升の碁盤目線を引いていた無延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製、品目SC)(厚み50μm)をのせ、100升中の剥離がなかった升目を数えることにより活物質層の剥離割合を求め、以下の基準で評価した。
○:全く活物質層の剥離がなかった。
△:わずかに(10%未満の)活物質層の剥離があった。
×:10%以上の活物質層の剥離があった。
実施例10〜15、参考例9〜12、比較例5〜6で得られたアルミ箔上に形成した電極をカッターナイフで切り出し、切り出した際に脱落した電極の有無により、以下の基準で評価した。なお、電極層の脱落割合は、下記の基準に基づいて算出した。
電極の脱落率(%)=(脱落した電極長さ/切り出した電極長さ)×100
○:切り出した電極に脱落部分がなかった。
△:切り出した電極に脱落部分があり、電極の脱落率が10%未満であった。
×:切り出した電極に脱落部分があり、電極の脱落率が10%以上であった。
(11)正極電極の剥離強度
実施例10〜15、参考例9〜12、比較例5〜6で得られたアルミ箔上に形成した電極を幅2.5cm、長さ10cmに切り出し、測定サンプルとし、アルミ箔側を十分な厚みを有する鋼板に両面テープで貼り合わせた。測定サンプルの活物質層にセロハンテープ(ニチバン社製、CT−18、18mm幅)を貼り付け、その一辺から180度の方向に50mm/分の速度で引き剥がしたときの応力を測定した(180度剥離試験を行い測定した)。なお測定は各サンプル3回実施し、その平均値を剥離強度とした。
(12)正極電極の初期充放電効率
実施例10〜15、参考例9〜12、比較例5〜6で得られたアルミ箔上に形成した二次電池正極電極を用い、面積が2cm2の円形になるように切断し、集電体上の塗膜をプレスにて電極密度が2.30g/cm3となるように成形し、黒鉛電極(宝泉社製)と組み合わせるとともに両極の間にセパレーターを挟んでコイン型電池を作製し、充放電試験を行った。25℃環境下、0.2C−4.1V定電流定電圧充電後、0.2C−2.5V定電流放電を行い、初期充放電特性の評価を行った。初期充放電効率を下記の基準に基づいて算出した。
初期充放電効率(%)=(0.2C放電容量/0.2C充電容量)×100
(13)初期充放電試験後の正極電極接着性
(12)の方法で初期充放電試験を行った後、電池を解体して正極電極を取り出した。電極表面に付着した電解液を拭き取り、活物質層にセロハンテープ(ニチバン社製、CT−18、18mm幅)を貼り付け、その一辺から180度の方向に50mm/分の速度で引き剥がした際の電極の状態を観察した。以下の基準で評価した。なお、活物質層の剥離割合は、上記(9)と同様の方法により求めた。
○:全く活物質層の剥離がなかった。
△:わずかに(10%未満の)活物質層の剥離があった。
×:10%以上の活物質の剥離があった。
高分子量ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、ノバテックPP、BC3H)を窒素ガス通気下、常圧において、360℃×80分の熱減成処理を施して得られたプロピレン樹脂80部を冷却管付き三ツ口フラスコに入れ、窒素置換し、180℃まで加熱昇温し溶融させた後、無水マレイン酸10部を加え、均一に混合した。そこに、ジクミルパーオキサイド0.5部を溶解させたキシレン10部を滴下し、180℃で3時間撹拌を続けた。その後、減圧下でキシレンを留去し、樹脂をアセトンで数回洗浄することにより未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、酸変性ポリオレフィン樹脂(プロピレンと無水マレイン酸のみからなる酸変性ポリオレフィン樹脂)「P−1」を得た。
調製例2〜4
ポリプロピレン樹脂の種類、無水マレイン酸の添加量、および熱減成処理条件を変更した以外は調製例1と同様の方法で酸変性ポリオレフィン樹脂(プロピレンと無水マレイン酸のみからなる酸変性ポリオレフィン樹脂)「P−2」、酸変性ポリオレフィン樹脂(プロピレンと無水マレイン酸のみからなる酸変性ポリオレフィン樹脂)「P−4」を得た。またポリプロピレン樹脂の代わりに、高分子量ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD、LC522)を用い、無水マレイン酸の添加量、および熱減成処理条件を変更した以外は調製例1と同様の方法で酸変性ポリオレフィン樹脂(エチレンと無水マレイン酸のみからなる酸変性ポリオレフィン樹脂)「P−3」を得た。
調製例5
プロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体(ヒュルスジャパン社製、ベストプラスト708、プロピレン/ブテン/エチレン=64.8/23.9/11.3質量%)280gを、4つ口フラスコ中において、窒素雰囲気下で加熱溶融させた。その後、系内温度を170℃に保って、撹拌下、不飽和カルボン酸としての無水マレイン酸32.0gとジクミルパーオキサイド6.0gとをそれぞれ1時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、酸変性ポリオレフィン樹脂(プロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体と無水マレイン酸のみからなる酸変性ポリオレフィン樹脂)「P−5」を得た。
攪拌機とヒーターを備えた密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)として、調製例1で得られた「P−1」を100g、塩基性化合物としてトリエチルアミンを12g、有機溶剤としてイソプロパノールを100g、蒸留水を288g仕込み、密閉した後、200rpmで攪拌翼しながら、160℃(内温)まで加熱した。攪拌下、160℃で1時間保持した後、ヒーターの電源を切り室温まで攪拌下で自然冷却した。冷却後、300メッシュのスレンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)したところ、やや黄色で半透明の均一な「P−1」の水性分散体(固形分濃度20質量%)を得た。濾過後、フィルター上に残った未分散物の樹脂はなかった。よって、水性分散化の収率は100%であった。また、水性分散体中の酸変性ポリオレフィン樹脂(A)粒子の数平均粒子径は0.050μmであった。
攪拌機とヒーターを備えた密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)として、調製例2で得られた「P−2」を75g、塩基性化合物として2−ジメチルアミノエタノールを5g、有機溶剤としてテトラヒドロフランを200g、蒸留水を220g仕込み、密閉した後、200rpmで攪拌翼しながら、130℃(内温)まで加熱した。攪拌下、130℃で1時間保持した後、ヒーターの電源を切り60℃まで自然冷却した。冷却後60℃に保持し、攪拌および減圧下で脱溶剤を行い、必要に応じて水を添加し、媒体を水に置換した。次に、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)したところ、やや黄色がかった乳白色の均一な「P−2」の水性分散体(固形分濃度35質量%)を得た。濾過後、フィルター上に残った未分散物の樹脂はなかった。よって、水性分散化の収率は100%であった。また、水性分散体中の酸変性ポリオレフィン樹脂(A)粒子の数平均粒子径は0.10μmであった。
得られた水性分散体について、接着性、耐水性の評価を実施し、これらの評価結果を表2に示した。
撹拌機とヒーターを備えた密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)として、調製例1で得られた「P−1」を120g、塩基性化合物(B)としてN,N−ジメチルエタノールアミンを12.6g、有機溶剤としてイソプロパノールを120g、蒸留水を347g仕込み、密閉した後、300rpmで撹拌しながら160℃(内温)まで加熱した。撹拌下、160℃で1時間保持した後、ヒーターの電源を切り室温まで撹拌下で自然冷却し、やや黄色で半透明の均一な水性分散体(固形分濃度20質量%)を得た。
得られた二次電池電極用バインダーについて、接着性、耐水性の評価を実施し、さらに、電解液膨潤性、造膜性の評価を実施し、これらの評価結果を表2に示した。
撹拌機とヒーターを備えた密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)として、調製例2で得られた「P−2」を90g、塩基性化合物(B)としてN,N−ジメチルエタノールアミンを8g、有機溶剤としてテトラヒドロフランを240g、蒸留水を260g仕込み、密閉した後、300rpmで撹拌しながら130℃(内温)まで加熱した。撹拌下、130℃で1時間保持した後、ヒーターの電源を切り60℃まで自然冷却し、乳白色の均一な分散体(固形分濃度15質量%)を得た。
得られた二次電池電極用バインダーについて、接着性、耐水性の評価を実施し、さらに、電解液膨潤性、造膜性の評価を実施し、これらの評価結果を表2に示した。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)として、調製例3で得られた「P−3」を用いた以外は、実施例2と同様の方法で、乳白色の均一な水性分散体(固形分濃度25質量%)からなる二次電池電極用バインダー「E−3」を得た。二次電池電極用バインダー中の酸変性ポリオレフィン樹脂(A)粒子の数平均粒子径は0.15μmであった。
得られた二次電池電極用バインダーについて、接着性、耐水性の評価を実施し、さらに、電解液膨潤性、造膜性の評価を実施し、これらの評価結果を表2に示した。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)として、調製例5で得られた「P−5」を用いた以外は、実施例2と同様の方法で、乳白色の均一な水性分散体(固形分濃度25質量%)からなる二次電池電極用バインダー「E−4」を得た。水性分散体中の酸変性ポリオレフィン樹脂(A)粒子の数平均粒子径は0.15μmであった。
得られた二次電池電極用バインダーについて、接着性、耐水性の評価を実施し、さらに、電解液膨潤性、造膜性の評価を実施し、これらの評価結果を表2に示した。
撹拌機とヒーターを備えた密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)として、調製例2で得られた「P−2」を90g、塩基性化合物(B)としてN,N−ジメチルエタノールアミンを8g、有機溶剤としてテトラヒドロフランを240g、蒸留水を260g仕込み、密閉した後、300rpmで撹拌しながら130℃(内温)まで加熱した。撹拌下、130℃で1時間保持した後、ヒーターの電源を切り60℃まで自然冷却し、乳白色の均一な分散体(固形分濃度15質量%)を得た。
得られた水性分散体について、接着性、耐水性の評価を実施し、これらの評価結果を表2に示した。
撹拌機とヒーターを備えた密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)として、調製例4で得られた「P−4」を45g、塩基性化合物(B)としてN,N−ジメチルエタノールアミンを5g、有機溶剤としてテトラヒドロフランを135g、蒸留水を115g仕込み、密閉した後、300rpmで撹拌翼しながら130℃(内温)まで加熱した。撹拌下、140℃で1時間保持した後、ヒーターの電源を切り60℃まで自然冷却したが、固形分濃度が15質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と水性媒体の混合物となり、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が水性媒体中に分散した水性分散体は得られなかった。
比較例2
比較例1で得られた酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と水性媒体の混合物290g、蒸留水60gを1Lのナスフラスコに入れ、エバポレーターに設置し、60℃で減圧することにより水性媒体を留去した。約180gの水性媒体を留去したところで、加熱を終了し、常圧に戻して室温まで冷却した。冷却後、フラスコ内の液状成分は増粘したため、水で希釈して固形分濃度を4質量%とした後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な水性分散体からなる二次電池電極用バインダー「E−5」を得た。二次電池電極用バインダー中の酸変性ポリオレフィン樹脂(A)粒子の数平均粒子径は0.065μmであった。
得られた二次電池電極用バインダーについて、接着性、耐水性の評価を実施し、さらに、電解液膨潤性、造膜性の評価を実施し、これらの評価結果を表2に示した。
実施例4
負極活物質として黒鉛粉末(日本黒鉛工業社製、CGC−20)と、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)と、二次電池電極用バインダー「E−11」とを、それぞれの固形分の質量が表3に記載の質量%になるようにまた、それぞれの電極バインダーの固形分濃度が45質量%になるように配合し、十分に混練することにより二次電池電極用ペーストを得た。
負極活物質として黒鉛粉末と、導電材としてアセチレンブラックと、二次電池電極用バインダー「E−11」とを、それぞれの固形分の質量が表3に記載の質量%になるように変更した以外は、実施例4と同様にして二次電池負極電極を得た。
得られた負極電極についての造膜性、剥離強度、初期充放電効率、電池特性試験後の負極電極接着性の評価や測定を実施し、これらの結果を表3に示した。
実施例1で得られた二次電池電極用バインダー「E−1」にカルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬社製、セロゲンBSH−6)水溶液を添加して、二次電池電極用バインダー「E−6」を得た。二次電池電極用バインダー「E−6」中のCMCの固形分濃度は1.6質量%であった。
得られた負極電極についての造膜性、剥離強度、初期充放電効率、電池特性試験後の負極電極接着性の評価や測定を実施し、これらの結果を表3に示した。
負極活物質として黒鉛粉末と、導電材としてアセチレンブラックと、二次電池電極用バインダー「E−6」とを、それぞれの固形分の質量が表3に記載の質量%になるように変更した以外は、実施例4と同様にして二次電池負極電極を得た。
得られた負極電極についての造膜性、剥離強度、初期充放電効率、電池特性試験後の負極電極接着性の評価や測定を実施し、これらの結果を表3に示した。
実施例2で得られた二次電池電極用バインダー「E−2」にカルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬社製、セロゲンBSH−6)水溶液を添加して、二次電池電極用バインダー「E−7」を得た。二次電池電極用バインダー「E−7」中のCMCの固形分濃度は1.6質量%であった。
得られた負極電極についての造膜性、剥離強度、初期充放電効率、電池特性試験後の負極電極接着性の評価や測定を実施し、これらの結果を表3に示した。
負極活物質として黒鉛粉末と、導電材としてアセチレンブラックと、二次電池電極用バインダー「E−7」とを、それぞれの固形分の質量が表3に記載の質量%になるように変更した以外は、実施例4と同様にして二次電池負極電極を得た。
得られた負極電極についての造膜性、剥離強度、初期充放電効率、電池特性試験後の負極電極接着性の評価や測定を実施し、これらの結果を表3に示した。
参考例3で得られた二次電池電極用バインダー「E−3」にカルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬社製、セロゲンBSH−6)水溶液を添加して、二次電池電極用バインダー「E−8」を得た。二次電池電極用バインダー「E−8」中のCMCの固形分濃度は1.6質量%であった。
得られた負極電極についての造膜性、剥離強度、初期充放電効率、電池特性試験後の負極電極接着性の評価や測定を実施し、これらの結果を表3に示した。
負極活物質として黒鉛粉末と、導電材としてアセチレンブラックと、二次電池電極用バインダー「E−8」とを、それぞれの固形分の質量が表3に記載の質量%になるように変更した以外は、実施例4と同様にして二次電池負極電極を得た。
得られた負極電極についての造膜性、剥離強度、初期充放電効率、電池特性試験後の負極電極接着性の評価や測定を実施し、これらの結果を表3に示した。
参考例4で得られた二次電池電極用バインダー「E−4」にカルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬社製、セロゲンBSH−6)水溶液を添加して、二次電池電極用バインダー「E−9」を得た。二次電池電極用バインダー「E−9」中のCMCの固形分濃度は1.6質量%であった。
得られた負極電極についての造膜性、剥離強度、初期充放電効率、電池特性試験後の負極電極接着性の評価や測定を実施し、これらの結果を表3に示した。
負極活物質として黒鉛粉末と、導電材としてアセチレンブラックと、二次電池電極用バインダー「E−9」とを、それぞれの固形分の質量が表3に記載の質量%になるように変更した以外は、実施例4と同様にして二次電池負極電極を得た。
得られた負極電極についての造膜性、剥離強度、初期充放電効率、電池特性試験後の負極電極接着性の評価や測定を実施し、これらの結果を表3に示した。
比較例2で得られた二次電池電極用バインダー「E−5」にカルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬社製、セロゲンBSH−6)水溶液を添加して、二次電池電極用バインダー「E−10」を得た。二次電池電極用バインダー「E−10」中のCMCの固形分濃度は0.8質量%であった。
得られた負極電極についての造膜性、剥離強度、初期充放電効率、電池特性試験後の負極電極接着性の評価や測定を実施し、これらの結果を表3に示した。
負極活物質として黒鉛粉末と、導電材としてアセチレンブラックと、二次電池電極用バインダー「E−10」とを、それぞれの固形分の質量が表3に記載の質量%になるように変更した以外は、実施例4と同様にして二次電池負極電極を得た。
得られた負極電極についての造膜性、剥離強度、初期充放電効率、電池特性試験後の負極電極接着性の評価や測定を実施し、これらの結果を表3に示した。
正極活物質としてコバルト酸リチウム(日本化学工業社製、セルシード C−10N)と、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)と、実施例3で得られた二次電池電極用バインダー「E−11」とを、それぞれの固形分の質量が表4に記載の質量%になるように、また、それぞれ電極ペーストの固形分濃度が50質量%になるように配合し、十分に混練することにより二次電池電極用ペーストを得た。
正極活物質としてコバルト酸リチウムと、導電材としてアセチレンブラックと、二次電池電極用バインダー「E−11」とを、それぞれの固形分の質量が表4に記載の質量%になるように変更した以外は、実施例10と同様にして二次電池正極電極を得た。
得られた正極電極についての造膜性、剥離強度、初期充放電効率、電池特性試験後の負極電極接着性の評価や測定を実施し、これらの結果を表4に示した。
正極活物質としてコバルト酸リチウム(日本化学工業社製、セルシード C−10N)と、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)と、実施例6で得られた二次電池電極用バインダー「E−6」とを、それぞれの固形分の質量が表4に記載の質量%になるように、また、それぞれ電極ペーストの固形分濃度が50質量%になるように配合し、十分に混練することにより二次電池電極用ペーストを得た。
得られた正極電極についての造膜性、剥離強度、初期充放電効率、電池特性試験後の負極電極接着性の評価や測定を実施し、これらの結果を表4に示した。
正極活物質としてコバルト酸リチウムと、導電材としてアセチレンブラックと、二次電池電極用バインダー「E−6」とを、それぞれの固形分の質量が表4に記載の質量%になるように変更した以外は、実施例10と同様にして二次電池正極電極を得た。
得られた正極電極についての造膜性、剥離強度、初期充放電効率、電池特性試験後の負極電極接着性の評価や測定を実施し、これらの結果を表4に示した。
正極活物質としてコバルト酸リチウムと、導電材としてアセチレンブラックと、二次電池電極用バインダー「E−7」とを、それぞれの固形分の質量が表4に記載の質量%になるように変更した以外は実施例10と同様にして二次電池正極電極を得た。
得られた正極電極についての造膜性、剥離強度、初期充放電効率、電池特性試験後の正極電極接着性の評価や測定を実施し、これらの結果を表4に示した。
正極活物質としてコバルト酸リチウムと、導電材としてアセチレンブラックと、二次電池電極用バインダー「E−8」とを、それぞれの固形分の質量が表4に記載の質量%になるように変更した以外は実施例10と同様にして二次電池正極電極を得た。
得られた正極電極についての造膜性、剥離強度、初期充放電効率、電池特性試験後の正極電極接着性の評価や測定を実施し、これらの結果を表4に示した。
正極活物質としてコバルト酸リチウムと、導電材としてアセチレンブラックと、二次電池電極用バインダー「E−9」とを、それぞれの固形分の質量が表4に記載の質量%になるように変更した以外は実施例10と同様にして二次電池正極電極を得た。
得られた正極電極についての造膜性、剥離強度、初期充放電効率、電池特性試験後の正極電極接着性の評価や測定を実施し、これらの結果を表4に示した。
正極活物質としてコバルト酸リチウムと、導電材としてアセチレンブラックと、二次電池電極用バインダー「E−10」とを、それぞれの固形分の質量が表4に記載の質量%になるように変更した以外は実施例10と同様にして二次電池正極電極を得た。
得られた正極電極についての造膜性、剥離強度、初期充放電効率、電池特性試験後の正極電極接着性の評価や測定を実施し、これらの結果を表4に示した。
表2に示すように、実施例1〜2、参考例3〜4で得られた二次電池電極用バインダーは、製造性よく得ることができ、接着性、耐水性に優れており、酸変性ポリオレフィン樹脂の酸価、質量平均分子量が適切な範囲のものであったため、造膜性が良好であり、耐膨潤特性にも優れたものであった。
Claims (8)
- 酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体からなる二次電池電極用バインダーであって、
酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体が、酸変性ポリオレフィン樹脂、塩基性化合物および水性媒体を含有し、
酸変性ポリオレフィン樹脂が、不飽和カルボン酸成分とオレフィン成分とを含有し、
酸変性ポリオレフィン樹脂におけるオレフィン成分の100モル%がプロピレンであり、
酸変性ポリオレフィン樹脂の酸価が10〜70mgKOH/g、
酸変性ポリオレフィン樹脂の質量平均分子量が20,000〜100,000である
ことを特徴とする二次電池電極用バインダー。 - 不揮発性水性分散化助剤を含有しないことを特徴とする請求項1記載の二次電池電極用バインダー。
- 酸変性ポリオレフィン樹脂の数平均粒子径が0.01〜1μmであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の二次電池電極用バインダー。
- 酸変性ポリオレフィン樹脂における不飽和カルボン酸成分が、無水マレイン酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二次電池電極用バインダー。
- 酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体に水溶性ポリマーを添加したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の二次電池電極用バインダー。
- 水溶性ポリマーが、セルロース系ポリマーであることを特徴とする請求項5記載の二次電池電極用バインダー。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の二次電池電極用バインダーを用いて形成された二次電池電極。
- 請求項7記載の二次電池電極を用いて形成された二次電池。
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