JP3990314B2 - ポリプロピレン系水性分散体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分散安定性に優れ、且つポリオレフィン基材に対する密着性と耐水性に優れた塗膜を形成できるポリプロピレン系水性分散体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリプロピレン等のポリオレフィンからなる成型品については、その表面に塗装を施したり、他の樹脂層を形成したりして、その付加価値を高めることがしばしば行われている。しかし、一般にポリオレフィンは、分子中に極性基を有しないために極性に乏しく、塗料や他の樹脂との密着性に劣っている。その為、従来は、予め成型品の表面をプライマーで処理して、塗料の付着性及び密着性を改善してから、塗装を行うことが一般的であった。しかしながら、従来のプライマーや塗料は有機溶媒を含有又は有機溶媒に溶解して使用するものが大半である為、製造及び使用時の作業環境を悪化させる原因となる等の問題があった。
【0003】
このような背景の下、近年環境及び安全上の利点から、ポリオレフィンの成型品のプライマーや塗料用の樹脂として、ポリオレフィン系の水性分散体が種々検討され、提案されている。
例えば、熱可塑性樹脂とカルボン酸又はその塩を含有する熱可塑性樹脂、ノニオン系界面活性剤及び水からなる水性分散体[特公平7−35479公報]、酸変性非晶質ポリオレフィンと界面活性剤とを必須成分とし、塗布乾燥後に粘接着性皮膜形成能を有する乳化物[特開平8−176374公報]、変性ポリオレフィン樹脂、ブロックイソシアネ−ト化合物及び界面活性剤を含む水性樹脂組成物[特許公報第2622804号]、ポリオレフィン及び/又は変性ポリオレフィン、特定の溶解度パラメ−タ−を有するポリアルキレンオキサイド構造の界面活性剤、塩基性物質及び水からなる水性ポリオレフィン樹脂組成物[特許第2769958号公報]等が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の方法では、得られた水性分散体の分散粒子の粒子径が大きい為、実際上の使用に耐えられる程度の十分な分散安定性が得られず、ひいてはその塗膜の平滑性やポリオレフィン基材に対する密着性も低下するという問題点があった。
本発明は、原料のプロピレン系重合体及び/又は変性ポリオレフィン(以下、本明細書では、総称してプロピレン系重合体ということもある。)として、適度な結晶性、溶解性をもつ重合体を使用することにより、水性分散体中の該重合体に基づく分散粒子の粒子径が小さく、十分な分散安定性を有しており、その分散体から形成される塗膜の平滑性やポリオレフィン基材に対する密着性も良好で、更には耐水性の良好な塗膜も形成できるポリプロピレン系水性分散体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決する為に種々検討した結果、プロピレン系重合体、界面活性剤、水、及び、必要に応じて、プロピレン系重合体及び変性プロピレン系重合体以外の他の重合体、及び塩基性物質、を特定配合で乳化して得られたポリオレフィン系水性分散体が、上記問題点を解決することを見出し本発明に到達した。
即ち、本発明は、以下の1〜10を要旨とするものである。
1.下記(a)〜()成分を含有する水性分散体であって、(a)成分はその主鎖が下記(1)及び(2)の特性を有し、かつ分散体中の分散粒子の平均粒径が0.5μm以下であることを特徴とするポリプロピレン系水性分散体に存する。
(a)オレフィン系重合体及び/又は変性オレフィン系重合体 100重量部
(b)界面活性剤 1〜100重量部
(c)水 100〜1000重量部
(d)アミン類 0.01〜10重量部
(1)13C−NMRにて、頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部のメチル基の炭素原子に由来するピークを観測し、mmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークのピークトップのケミカルシフトを21.8ppmとした際に、19.8ppmから22.1ppmに現れるピークの総面積Sに対する、21.8ppmをピークトップとするピークの面積S の比率(S /S)が10%以上、60%以下であり、かつ21.5〜21.6ppmをピークトップとするピーク(mmmr)の面積をS としたとき、4+2S /S >5を満足する、
(2)プロピレン単位(A):他のオレフィン単位(B)の含有割合(モル比)が、100:0〜90:10。
2.(b)成分の界面活性剤がアニオン系界面活性剤、及び/又はノニオン系界面活性剤である、上記1に記載の分散体。
3.(b)成分の界面活性剤がノニオン系界面活性剤である、上記1に記載の分散体。
4.(b)成分の界面活性剤が、異なったHLB値を有する少なくとも2種の界面活性剤を含有するものである、上記1〜3のいずれか1項に記載の分散体。
.他のオレフィン単位(B)がエチレン単位及び/又はブテン単位である、上記1〜のいずれか1項に記載の分散体。
.(a)成分のプロピレン系重合体及び/又は変性プロピレン系重合体の、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)が10,000以上、300,000以下である、上記1〜のいずれか1項に記載の分散体。
.(a)成分の変性プロピレン系重合体は、プロピレン系重合体に炭素原子数3〜25の不飽和カルボン酸、その酸無水物及びそのエステルから選ばれる不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフトすることにより変性されたものである、上記1〜のいずれか1項に記載の分散体。
8.(a)成分の変性プロピレン系重合体の、不飽和カルボン酸或いは不飽和カルボン酸誘導体の付加率が0.01〜20重量%である上記1〜7のいずれか1項に記載のポリプロピレン系水性分散体。
.(b)成分の界面活性剤が、少なくとも親水疎水バランス(HLB)値が13.5以上、14.5以下の範囲のノニオン界面活性剤(b1)と、HLB値が16.0以上17.0以下の範囲のノニオン界面活性剤(b2)とを含み、かつその配合比(b1/b2)は1/9〜9/1である、上記3〜のいずれか1項に記載の分散体。
10.上記1〜のいずれか1項に記載のポリプロピレン系水性分散体を含有するコーティング剤、塗料、インキ、又は接着剤。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の水性分散体における(a)成分のプロピレン系重合体としては、プロピレン単量体を主成分としたプロピレン系重合体が好ましい。プロピレン単量体を主成分としたプロピレン系重合体とは、プロピレン含有量が90〜100(モル)%の重合体である。プロピレン含有量が90(モル)%より低い重合体ではポリオレフィン基材への密着性に劣る。
【0007】
本発明のプロピレン系重合体が含有し得る他の共重合体成分のオレフィン単位としては、例えば、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセン、ブタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、スチレン、及びこれらの誘導体の中から好適なオレフィン性二重結合を有するモノマー単位を選択することができる。これらのうち、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン等のモノオレフィン単位が好ましく、エチレン又はブテンが更に好ましい。
また、プロピレン系重合体が、プロピレンと他のオレフィン単量体との共重合体である場合、プロピレン単位(A):他のオレフィン単位(B)の含有割合(モル比)が、100:0〜90:10、好ましくは 100:0〜95:5となるような範囲で選ばれる。
【0008】
本発明で好適に使用されるプロピレン系重合体は、好ましくはシングルサイト触媒によって製造されるが、更にGPC(Gel Permeation Chromatography)で測定した重量平均分子量Mwが、好ましくは5,000〜500,000、特に好ましくは10,000〜300,000である。Mwが5,000未満であると、塗膜の造膜性が不良で、且つべたつきが発生し、500,000を超えると、水系化が困難になり、得られた水性分散体の分散粒子の粒子径が大きく分散安定性が不良となる。
なお、GPCによる分子量の測定は、オルトジクロロベンゼンなどを溶媒とし、ポリスチレンを標準試料として、市販の装置を用いて従来公知の方法で行うことができる。
該プロピレン系重合体の分子量分布については、特に制限はないが、過度に広すぎる分子量分布は、低分子量成分の含有量が必然的に多いことを意味するので避けた方が良い。分子量分布の指標として重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比、Mw/Mnを用いた場合、好ましくはMw/Mn<20、更に好ましくはMw/Mn<10、最も好ましくはMw/Mn<5のものが好適に使用される。
【0009】
上記プロピレン系重合体は、13C−NMRスペクトルによって以下のように規定される特性を有することが必要とされる。この特性は、プロピレン重合体が主鎖中に結晶性の高いブロックと非晶性の高いブロックがバランス良く共存し、かつ、結晶性の高いブロックがアイソタクティック性に富む構造となっていることを表す。つまり、重合体中に結晶性の高いブロックが多すぎると溶媒への溶解性が悪化するので、結晶性の高いブロックと非晶性の高いブロックのバランスが重要であり、このバランスを表す指標の一部として、13C−NMRスペクトルによって規定される要件が適用されるのである。
【0010】
本発明における13C−NMRスペクトルの測定方法は、下記の通りである。試料350〜500mgを、10mmφのNMR用サンプル管中で、約2.2mlのオルトジクロロベンゼンを用いて完全に溶解させる。次いで、ロック溶媒として約0.2mlの重水素化ベンゼンを加え、均一化させた後、130℃でプロトン完全デカップリング法により測定を行う。測定条件は、フリップアングル90°、パルス間隔5T1以上(T1は、メチル基のスピン−格子緩和時間のうち最長の値)とする。プロピレン重合体において、メチレン基及びメチン基のスピン−格子緩和時間はメチル基のそれよりも短いので、この測定条件では、すべての炭素の磁化の回復は99%以上である。なお、定量精度を上げるため、13C核の共鳴周波数として125MHz以上のNMR装置を使用し、20時間以上の積算を行うのが好ましい。
【0011】
ケミカルシフトは、頭−尾(head to tail)結合からなるプロピレン単位連鎖部の10種類のペンタッド(mmmm,mmmr,rmmr,mmrr,mmrm,rmrr,rmrm,rrrr,rrrm,mrrm)のうち、メチル分岐の絶対配置がすべて同一である、すなわち、mmmmで表されるプロピレン単位5連鎖の第3単位目のメチル基にもとづくピークのケミカルシフトを21.8ppmとして設定し、これを基準として他の炭素ピークのケミカルシフトを決定する。この基準では、例えば、その他のプロピレン単位5連鎖の場合、第3単位目のメチル基にもとづくピークのケミカルシフトはおおむね次のようになる。すなわち、mmmr:21.5〜21.7ppm、rmmr:21.3〜21.5ppm、mmrr:21.0〜21.1ppm、mmrm及びrmrr:20.8〜21.0ppm、rmrm:20.6〜20.8ppm、rrrr:20.3〜20.5ppm、rrrm:20.1〜20.3ppm、mrrm:19.9〜20.1ppmである。なお、これらのペンタッドに由来するピークのケミカルシフトは、NMRの測定条件によって多少の変動があること、及び、ピークは必ずしも単一ピーク(single peak)ではなく、微細構造にもとづく複雑な分裂パターン(split pattern)を示すことが多い点に注意して帰属を行う必要がある。
【0012】
本発明で使用されるプロピレン系重合体は、上記mmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークのピークトップのケミカルシフトを21.8ppmとした際に、19.8ppmから22.2ppmの範囲に現れる上記のペンタッド、すなわち、mmmm,mmmr,rmmr,mmrr,mmrm+rmrr,rmrm,rrrr,rrrm,mrrmのすべてのペンタッドに属するピークの総面積Sに対する、21.8ppmをピークトップとするピークの面積S1の比率(S1/S)が10%以上、60%以下であり、かつ21.5〜21.6ppmをピークトップとするピーク(mmmr)の面積をS2としたとき、4+2S1 /S2>5を満足することが必要である。
【0013】
更に、上記Sに対するS1の比率(S1/S)の要件は、本発明のプロピレン系重合体では、主鎖中に結晶性の高いブロックと非晶性の高いブロックが共存し、かつ、結晶性の高いブロックがアイソタクチック性に富む構造となっていることと関係している。なお、Sに対するS1の比率が10%未満である場合には、結晶性が低すぎ、十分な接着性が得られず、更に、べたつきなどの問題も起こりやすいために好ましくない。一方、Sに対するS1の比率が60%を越える場合には、逆に結晶性が高すぎ、溶媒への溶解性が低下するため、これも好ましくない。本発明で規定するSに対するS1の比率の範囲は、10%以上、60%以下であるが、好ましくは20%以上、50%以下、更に好ましくは25%以上、45%以下である。
【0014】
本発明で使用するプロピレン系重合体は、上記の如く4+2S1/S2>5という関係を満足することが好ましい。この関係式は、Waymouthらによりアイソタクチックブロックインデックス(BI)と名づけられた指数(特表平9−510745号:参照)と密接な関連がある。BIは、重合体のステレオブロック性を表す指標であり、BI=4+2[mmmm]/[mmmr]で定義される。より具体的には、BIは、4個以上のプロピレン単位を有するアイソタクチックブロックの平均連鎖長を表すJ.W.Collete et al., Macromol.,22,3858(1989) ;J.C.Randall,J.Polym.Sci.Polym.Phys.Ed.,14,2083(1976))。 統計的に完全なアタクチックポリプロピレンの場合、BI=5となる。したがって、BI=4+2[mmmm]/[mmmr]>5は、重合体中に含まれるアイソタクチックブロックの平均連鎖長が、アタクチックポリプロピレンのそれよりも長いことを意味する。
【0015】
上記プロピレン系重合体が要件とする、4+2S1/S2は、上述のBIと完全には同一でないものの、おおむね対応していることから、4+2S1/S2>5という要件は、プロピレン系重合体が、アタクチックポリプロピレンとは異なり、結晶化可能な連鎖長のアイソタクチックブロックを含有することを意味する。また、アイソタクチックブロックが存在するということは、言い換えれば、立体特異性(stereospecificity)が乱れたシークエンスからなるブロックも同時に主鎖に存在することを意味する。このように、該プロピレン系重合体においては、前述の如く主鎖中に結晶性を有するブロックと非晶性のブロックとが共存し、かつ、結晶性を有するブロックが、比較的長い平均連鎖長を有するアイソタクチックブロックから形成され、アイソタクチック性に富む構造になっているという特異な構造である。
本発明においては、5<4+2S1/S2であれば良いが、好ましくは、5<4+2S1/S2<25、更に好ましくは、7<4+2S1/S2<10である。
【0016】
上記プロピレン系重合体は、シングルサイト触媒により重合する方法によって得られるものが好ましい。これは、一般にシングルサイト触媒が、リガンドのデザインによりミクロタクティシティを制御できること、比較的分子量の低い重合体を容易に製造できること、そして特に重合体の分子量分布や立体規則性分布がシャープであることなどが挙げられる。分子量分布や立体規則性分布が不規則であると溶解性に差ができ、部分的に不溶なものができる可能性がある。またシングルサイト触媒のなかでも、メタロセン触媒がミクロタクティシティを精密に制御できる点で好適に用いられる。
プロピレン系重合体の製造用のシングルサイト触媒としては、メタロセン化合物[α]成分)と共触媒([β]成分)を必須成分とするメタロセン系触媒が好ましく用いられる。
【0017】
メタロセン化合物([α]成分)としては、遷移金属含有の架橋基を有するC1−対称性アンサ−メタロセン(ansa-metallocene)が好ましい。非架橋のメタロセンも本発明のプロピレン重合体の製造に適用可能であるが、一般に、架橋基を有するアンサ−メタロセンの方が熱安定性などに優れているため、特に工業的な見地から好ましい。
本発明に用いられる遷移金属含有の架橋基を有するアンサ−メタロセンは、共役5員環配位子を有する架橋された4族遷移金属化合物のC1−対称性を有するメタロセンである。このような遷移金属化合物は公知であり、それをα−オレフィン重合用触媒成分として使用することも知られている。
プロピレン重合体の製造に好ましく用いられる[α]成分のメタロセンは、下記一般式(I)で表され、かつ、C1−対称性を有する化合物である。また、該一般式で表される複数のメタロセンを混合して用いてもよい。
Q(C54-a2 a)(C54-b3 b)MXY (I)
【0018】
以下、一般式(I)を有するメタロセンについて、詳しく説明する。
一般式(I)において、Qは2つの共役5員環配位子を架橋する結合性基を、Mは周期律表4族遷移金属を、X及びYは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基又は炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基を示す。R2及びR3はそれぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ケイ素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基又はホウ素含有炭化水素基を示す。また、隣接する2個のR2及び/又はR3がそれぞれ結合して4〜10員環を形成していてもよい。a及びbは、それぞれ独立して、0≦a≦4、0≦b≦4を満足する整数である。
【0019】
2個の共役5員環配位子の間を架橋する結合性基Qとしては、具体的には下記のようなものが挙げられる。すなわち、メチレン基、エチレン基のようなアルキレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、フェニルメチリデン基、ジフェニルメチリデン基のようなアルキリデン基、ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジプロピルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルエチルシリレン基、メチルフェニルシリレン基、メチル−t−ブチルシリレン基、ジシリレン基、テトラメチルジシリレン基のようなケイ素含有架橋基、ジメチルゲルミレン基、ジエチルゲルミレン基、ジフェニルゲルミレン基、メチルフェニルゲルミレン基のようなゲルマニウム含有架橋基、アルキルフォスフィン、アミン等である。これらのうち、アルキレン基、アルキリデン基、ケイ素含有架橋基、ゲルマニウム含有架橋基が特に好ましく用いられる。
【0020】
上記一般式において、R2及びR3としては、具体的にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、t−ブチルフェニル基、ナフチル基等の置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、フルオロメチル基、フルオロエチル基、フルオロフェニル基、フルオロナフチル基、フルオロビフェニル基、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロフェニル基、クロロナフチル基、クロロビフェニル基等のハロゲンを含有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ペンタメチルフェノキシ基等のアリールオキシ基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基等のケイ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基である。R2が複数個存在するときは、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0021】
また、2個のR2がシクロペンタジエニル環の隣接する炭素原子に存在する場合は、相互に結合して4〜10員環を形成し、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、オクタヒドロフルオレニル基、アズレニル基、ヘキサヒドロアズレニル基等となってもよい。同様に、R3が複数個存在するときは、それらは同一でも異なっていてもよい。また、2個のR3がシクロペンタジエニル環の隣接する炭素原子に存在する場合は、相互に結合して4〜10員環を形成し、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、オクタヒドロフルオレニル基、アズレニル基、ヘキサヒドロアズレニル基等となってもよい。
本発明においては、上記一般式(I)で表されるメタロセンがC1−対称性を有していればよいので、C1−対称性が保持されるかぎり、R2とR3は同じであっても良いし、異なっていてもよい。
【0022】
Mは、周期律表4族遷移金属であり、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウムであり、好ましくは、ジルコニウム、ハフニウムである。
X及びYは、それぞれ水素、ハロゲン、炭素数1〜20、好ましくは1〜10の炭化水素基、炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルコキシ基、アルキルアミド基、炭素数1〜20、好ましくは1〜12のリン含有炭化水素基、炭素数1〜20、好ましくは1〜12のケイ素含有炭化水素基等である。XとYは同一でも異なっていてもよい。これらのうちハロゲン、炭化水素基及びアルキルアミド基が好ましい。
本発明の特性(1)及び(2)を有するプロピレン系重合体の製造には、上記一般式(I)で表されるメタロセンの中でも、特にジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウムが最も好ましく、更にはジクロロ[ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウムやジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−1−インデニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウムも好適な触媒である。
【0023】
なお、[α]成分メタロセン化合物については、複数の異なる構造を有する化合物の混合物を用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。更に、公知の三塩化チタンを主成分とする固体触媒やマグネシウム、チタン、ハロゲンを必須成分として含有する担体担持型触媒を補助的に用いることもできる。また、重合の第1段階終了時や第2段階の重合開始前に、新たに[α]成分を追加して用いてもよい。
【0024】
本発明において[α]成分メタロセン化合物の共触媒([β]成分)として用いられる助触媒としては、必須成分として(1)有機アルミニウムオキシ化合物、(2)[α]成分の遷移金属と反応して[α]成分をカチオンに交換することが可能なイオン性化合物、(3)ルイス酸、及び(4)ケイ酸塩を除くイオン交換性層状化合物又は無機ケイ酸塩、からなる群より選択される一種以上の物質を用いる。
(1)有機アルミニウムオキシ化合物:
この化合物としては、具体的には、次の一般式(II)、(III)、(IV)で表される化合物が挙げられる。
各一般式中、R4は、水素原子又は炭化水素残基、好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは、炭素数1〜6の炭化水素残基を示す。また、複数のR4はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。またpは0〜40、好ましくは2〜30の整数を示す。
【0025】
【化1】
Figure 0003990314
【0026】
一般式(II)及び(III)で表される化合物は、アルミノキサンとも呼ばれる化合物であって、一種類のトリアルキルアルミニウム又は二種類以上のトリアルキルアルミニウムと水との反応により得られる。具体的には、(a)一種類のトリアルキルアルミニウムと水とから得られる、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、プロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、(b)二種類のトリアルキルアルミニウムと水とから得られる、メチルエチルアルミノキサン、メチルブチルアルミノキサン、メチルイソブチルアルミノキサン等が挙げられる。これらの中では、メチルアルミノキサン、メチルイソブチルアルミノキサンが好ましい。上記のアルミノキサンは、複数種併用することも可能である。そして、上記のアルミノキサンは、公知の様々な条件下に調製することができる。
【0027】
一般式(IV)で表される化合物は、一種類のトリアルキルアルミニウム、又は二種類以上のトリアルキルアルミニウムと次の一般式(V)で表されるアルキルボロン酸との10:1〜1:1(モル比)の反応により得ることができる。一般式(V)中、R5は、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素残基又はハロゲン化炭化水素基を示す。
5−B(OH)2 (V)
【0028】
具体的には、以下の様な反応生成物、すなわち、(a)トリメチルアルミニウムとメチルボロン酸の2:1反応物、(b)トリイソブチルアルミニウムとメチルボロン酸の2:1反応物、(c)トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとメチルボロン酸の1:1:1反応物、(d)トリメチルアルミニウムとエチルボロン酸の2:1反応物、(e)トリエチルアルミニウムとブチルボロン酸の2:1反応物などを挙げることができる。
【0029】
(2)[α]成分の遷移金属と反応して[α]成分をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物:
この化合物としては、一般式(VI)で表される化合物が挙げられる。
[K]n+[Z]n- (VI)
一般式(VI)中、Kはカチオン成分であって、例えば、カルボニウムカチオン、トロピリウムカチオン、アンモニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等が挙げられる。また、それ自身が還元されやすい金属のカチオンや有機金属のカチオン等も挙げられる。
【0030】
上記のカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウム、ジフェニルカルボニウム、シクロヘプタトリエニウム、インデニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、ジプロピルアンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、トリフェニルホスホニウム、トリメチルホスホニウム、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウム、トリス(メチルフェニル)ホスホニウム、トリフェニルスルホニウム、トリフェニルスルホニウム、トリフェニルオキソニウム、トリエチルオキソニウム、ピリリウム、銀イオン、金イオン、白金イオン、銅イオン、パラジウムイオン、水銀イオン、フェロセニウムイオン等が挙げられる。
【0031】
上記一般式(VI)中、Zは、アニオン成分であり、[α]成分の遷移金属が変換されたカチオン種に対して対アニオンとなる成分(一般には非配位の成分)である。Zとしては、例えば、有機ホウ素化合物アニオン、有機アルミニウム化合物アニオン、有機ガリウム化合物アニオン、有機ヒ素化合物アニオン、有機アンチモン化合物アニオン等が挙げられ、具体的には次の化合物が挙げられる。すなわち、(a)テトラフェニルホウ素、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ホウ素、テトラキス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ホウ素、テトラキス{3,5−ジ(t−ブチル)フェニル}ホウ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素等、(b)テトラフェニルアルミニウム、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミニウム、テトラキス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}アルミニウム、テトラキス{3,5−ジ(t−ブチル)フェニル}アルミニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム等が挙げられる。
【0032】
他の具体的化合物として、(c)テトラフェニルガリウム、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ガリウム、テトラキス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ガリウム、テトラキス{3,5−ジ(t−ブチル)フェニル}ガリウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム等、(d)テトラフェニルリン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)リン等、(e)テトラフェニルヒ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ヒ素等、(f)テトラフェニルアンチモン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アンチモン等、(g)デカボレート、ウンデカボレート、カルバドデカボレート、デカクロロデカボレート等が挙げられる。
【0033】
(3)ルイス酸:
特に、[α]成分の遷移金属をカチオンに変換可能なルイス酸としては、種々の有機ホウ素化合物、金属ハロゲン化合物、固体酸などが例示され、その具体例としては次の化合物が挙げられる。すなわち、(a)トリフェニルホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素等の有機ホウ素化合物、(b)塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化臭化マグネシウム、塩化ヨウ化マグネシウム、臭化ヨウ化マグネシウム、塩化マグネシウムハイドライド、塩化マグネシウムハイドロオキシド、臭化マグネシウムハイドロオキシド、塩化マグネシウムアルコキシド、臭化マグネシウムアルコキシド等の金属ハロゲン化合物、(c)アルミナ、シリカ・アルミナ等の固体酸などを挙げることができる。
【0034】
(4)ケイ酸塩を除くイオン交換性層状化合物又は無機ケイ酸塩:
ここで、ケイ酸塩を除くイオン交換性層状化合物とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる化合物であり、含有するイオンが交換可能なものを言う。
ケイ酸塩を除くイオン交換性層状化合物は、六方最密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物等を例示することができる。具体的には、α−Zr(HAsO42・H2O、α−Zr(HPO42、α−Zr(KPO42・3H2O、α−Ti(HPO42、α−Ti(HAsO42・H2O、α−Sn(HPO42・H2O、γ−Zr(HPO42、γ−Ti(HPO42、γ−Ti(NH4PO42・H2O等の多価金属の結晶性酸性塩があげられる。
【0035】
また、無機ケイ酸塩としては、粘土、粘土鉱物、ゼオライト、珪藻土等が挙げられる。これらは、合成品を用いてもよいし、天然に産出する鉱物を用いてもよい。
粘土、粘土鉱物の具体例としては、アロフェン等のアロフェン族、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト等のカオリン族、メタハロイサイト、ハロイサイト等のハロイサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母鉱物、アタパルジャイト、セピオライト、パイゴルスカイト、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、ヒシンゲル石、パイロフィライト、リョクデイ石群等が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
人工合成物としては、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライト等が挙げられる。
【0036】
これら具体例のうち好ましくは、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト等のカオリン族、メタハロサイト、ハロサイト等のハロサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが挙げられ、特に好ましくはモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが挙げられる。
【0037】
これら、ケイ酸塩を除くイオン交換性層状化合物、又は無機ケイ酸塩は、そのまま用いてもよいが、塩酸、硝酸、硫酸等による酸処理及び/又は、Li、NaCl、KCl、CaCl2、MgCl2、Li2SO4、MgSO4、ZnSO4、Ti(SO4)2、Zr(SO4)2、Al2(SO4)3等の塩類処理を行ったほうが好ましい。なお、処理にあたり、対応する酸と塩基を混合して反応系内で塩を生成させて処理を行ってもよい。また、粉砕や造粒等の形状制御を行ってもよく、粒子流動性に優れた固体触媒成分を得るためには、造粒することが好ましい。また、上記成分は、通常脱水乾燥してから用いる。これら[β]成分の必須成分としては、重合活性等の触媒性能の面で、(4)のケイ酸塩を除くイオン交換性層状化合物、又は無機ケイ酸塩を用いることが好ましい。
【0038】
本発明で使用されるプロピレン系重合体の製造で、共触媒[β]成分の他に任意成分[γ]として有機アルミニウム化合物を用いてもよい。このような有機アルミニウム化合物は、一般式、AlR1 m3-m(式中、R1は、炭素数1〜20の炭化水素基、Zは、水素、ハロゲン、アルコキシ基若しくはアリールオキシ基、mは0<m≦3の数)で示される化合物である。具体的にはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、又はジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムエトキシド等のハロゲン若しくはアルコキシ含有アルキルアルミニウム、又は、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素含有有機アルミニウム化合物である。またこの他、メチルアルミノキサン等のアルミノキサン等も使用できる。これらのうち、特に好ましいのはトリアルキルアルミニウムである。これら任意成分は2種以上組み合わせて用いてもよい。また、重合開始後等に、新たに任意成分[γ]を追加してもよい。
【0039】
プロピレン重合用の触媒は、[α]成分、[β]成分、任意の[γ]成分の接触によって得られるが、その接触方法については特に限定がない。この接触は、触媒調製時だけでなく、プロピレンの予備重合時又は重合時に行ってもよい。触媒各成分の接触時、又は接触後にプロピレン重合体、シリカ、アルミナ等の無機酸化物の固体を共存させるか、若しくは接触させてもよい。
接触は窒素等の不活性ガス中で行ってもよいし、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素溶媒中で行ってもよい。これらの溶媒は、水や硫黄化合物などの被毒物質を除去する操作を施したものを使用するのが好ましい。接触温度は、−20℃乃至使用する溶媒の沸点の間で行い、特には、室温から使用する溶媒の沸点の間で行うのが好ましい。
【0040】
触媒各成分の使用量に特に制限はないが、[β]成分として、ケイ酸塩を除くイオン交換性層状化合物、又は無機ケイ酸塩を用いる場合は、[β]成分1gあたり[α]成分が0.0001〜10mmol、好ましくは0.001〜5mmolであり、[γ]成分が0〜10,000mmol、好ましくは0.01〜100mmolである。また、[α]成分中の遷移金属と[γ]成分中のアルミニウムの原子比が1:0〜1,000,000、好ましくは、1:0.1〜100,000となるように制御することが、重合活性などの点で好ましい。
このようにして得られた触媒は、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素溶媒で洗浄して使用してもよいし、洗浄せずに用いてもよい。
洗浄の際に、必要に応じて新たに[γ]成分を組合せて用いてもよい。この際に用いられる[γ]成分の量は、[α]成分中の遷移金属に対する[γ]成分中のアルミニウムの原子比で1:0〜10,000になるようにするのが好ましい。
【0041】
触媒として、プロピレンを予備的に重合し、必要に応じて洗浄したものを使用することもできる。この予備重合は窒素等の不活性ガス中、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素溶媒中で行ってもよい。プロピレンの重合反応は、プロパン、n−ブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の不活性炭化水素や液化プロピレンの液体の存在下或いは不在下に行われる。これらのうち、上述の不活性炭化水素存在下で重合を行うのが好ましい。
具体的には、[α]成分と[β]成分、又は[α]成分と[β]成分と[γ]成分との存在下に、プロピレン重合体を製造する。重合温度、重合圧力、及び重合時間に特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。すなわち、重合温度は、通常20から150℃、好ましくは0から100℃、重合圧力は、0.1MPaから100MPa、好ましくは、0.3MPaから10MPa、更に好ましくは、0.5MPaから4MPa、重合時間は、0.1時間から10時間、好ましくは、0.3時間から7時間、更に好ましくは0.5時間から6時間の範囲から選ばれる。
【0042】
本発明で使用するプロピレン系重合体においては、前記したように、重合体の重量平均分子量Mwを5000〜500,000の範囲にするのが好ましい。このために、重合体の分子量調節には、従来公知の方法を使用することができる。すなわち、重合温度を制御して分子量を調節する方法、モノマー濃度を制御して分子量を調節する方法、連鎖移動剤を使用して分子量を制御する方法が挙げられる。連鎖移動剤を使用する場合には、水素が好ましい。
【0043】
また、本発明で使用されるプロピレン系重合体に対して要求される13C−NMRに関する要件(1)の特性を付与するためのプロピレン系重合体の立体選択性の制御方法については特に制限はない。一般的には、触媒の構造で制御する方法、重合条件を制御して制御する方法が挙げられる。重合条件を制御して立体選択性を制御する場合には、重合温度やモノマー濃度を制御することにより、そして、場合により、上述の触媒の構造制御ともあわせて、所望とする立体規則性を有するプロピレン重合体を得ることができる。
【0044】
本発明のプロピレン系重合体は、溶媒に溶解させることができる。溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン等の脂肪族系炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の脂環式脂肪族系炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロルエチレン、クロルベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、n−エチルアセテート、n−ブチルアセテート等のエステル類、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒類などが挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素若しくはハロゲン化炭化水素が好ましく、特にトルエン、キシレン、クロルベンゼンが好ましい。
【0045】
本発明の水性分散体における(a)成分の変性プロピレン系重合体は、プロピレン系重合体に炭素原子数が好ましくは3〜25の不飽和カルボン酸、その酸無水物及びそのエステルから選ばれる不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフトすることにより変性されたプロピレン系重合体である。変性プロピレン系重合体は、前記プロピレン系重合体に該不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を、常法によりラジカル付加したものである。
上記グラフトさせる不飽和カルボン酸、その酸無水物としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、シトラコン酸、クロトン酸、アリルコハク酸、メサコン酸、アコニット酸、又はこれらの無水物等が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、及びこれらの無水物等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」の表現は「アクリル又はメタクリル」の意味である。
【0046】
不飽和カルボン酸誘導体としては、上記不飽和カルボン酸のカルボキシル基或いは酸無水物基の1つがエステル化された不飽和モノカルボン酸モノエステルや不飽和ジカルボン酸モノエステルが挙げられる。不飽和モノカルボン酸モノエステルとしては、(メタ)アクリル酸のエステル類が挙げられ、具体的には、;炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、ヘキシル(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等;炭素数6〜12のアリール基又はアリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルのモノマー、例えば(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
【0047】
更に、他の(メタ)アクリル酸誘導体としては、ヘテロ原子を含有する炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルのモノマー、例えば(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸エチレンオキサイドの付加物等;フッ素原子を含有する炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルのモノマー、例えば(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パ−フルオロエチルエチル等;(メタ)アクリルアミド系モノマー、例えば(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジメチルアミド等が挙げられる。
【0048】
不飽和ジカルボン酸モノエステルとしては、前記酸無水物にアルキルアルコールをエステル化したものであり、そのアルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソプロピル基等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸モノエステルのエステル化率(完全エステル化率を200%とする)は、45〜100%であるのが好ましく、80〜100%であるのがより好ましい。エステル化率が前記範囲であると、得られた水性分散体の分散安定性及び塗膜の耐水性が良好である。
【0049】
本発明の変性プロピレン系重合体の不飽和カルボン酸或いは不飽和カルボン酸誘導体の付加率は0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。付加率が0.01重量%未満であると、得られた水性分散体の分散粒子の粒子径が大きく分散安定性が不良となり、20重量%を超えると、塗膜の耐水性が不良となる。この付加率は、赤外分光スペクトル分析法により、カルボニル基の吸収強度を、含有量既知のサンプルに基づく検量線と対比することで測定できる。
【0050】
不飽和カルボン酸或いは不飽和カルボン酸誘導体をラジカル付加する方法としては、例えば、ポリプロピレンを有機溶媒に溶解し、不飽和カルボン酸或いは不飽和カルボン酸誘導体及びラジカル重合開始剤を添加して加熱攪拌することによりラジカル付加を行う方法;各成分を押出機に供給して加熱混練しながらラジカル付加を行う方法;ポリプロピレンのパウダーに、不飽和カルボン酸或いは不飽和カルボン酸誘導体及びラジカル重合開始剤を有機溶媒に溶解した溶液を含浸させた後、パウダーが溶解しない温度まで加熱し、ラジカル付加を行う方法等が挙げられる。
使用されるラジカル重合開始剤と不飽和カルボン酸或いは不飽和カルボン酸誘導体とのモル比[ラジカル重合開始剤/不飽和カルボン酸或いは不飽和カルボン酸誘導体]は、通常1/100〜3/5、好ましくは1/20〜1/2である。反応温度については、特に制限はないが、通常50℃以上、好ましくは80〜200℃である。また、反応時間は、通常2〜10時間である。
【0051】
また、本発明においては、(a)成分の変性プロピレン系重合体は、上記プロピレン系重合体又はこれに不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフトすることにより得られた変性プロピレン系重合体を、塩素化したものを用いてもよい。この時の好ましい塩素含有率は5〜40重量%であり、これによって低温時の溶液流動性を改良することができる。塩素化の方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば上記のプロピレン系重合体又はこれに不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフトすることにより得られた変性プロピレン系重合体を、クロロホルム、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン等の塩素系溶媒に溶解して、無触媒又はラジカル発生剤(後述のラジカル重合開始剤と同様のものが使用可能)の存在下で、50〜130℃の温度で塩素と接触させることにより行なうことができる。
これらの塩素化されたプロピレン系重合体のなかでも、上記プロピレン系重合体に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフトすることにより得られた変性プロピレン系重合体を更に塩素化したものが、塗膜との密着性が良好で好ましい。
【0052】
ラジカル付加反応に用いられるラジカル重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤から適宜選択して使用することが出来、有機過酸化物、アゾニトリル等が挙げられる。有機過酸化物としては、ジイソプロピルパーオキシド、ジ(t−ブチル)パーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、クミルヒドロパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカルボナート、ジシクロヘキシルパーオキシカルボナート等が挙げられる。アゾニトリルとしては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピルニトリル等が挙げられる。これらの中でも、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシドが好ましい。
【0053】
ラジカル付加反応に用いられる有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素;トリクロロエチレン、パークロルエチレン、クロルベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。なかでも、芳香族系炭化水素及びハロゲン化炭化水素が好ましく、特にトルエン、キシレン、クロルベンゼンが好ましい。
特に不飽和ジカルボン酸モノエステルを変性剤として有する変性ポリオレフィンの製造法としては、不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステルをポリオレフィンに前記のようにラジカル付加させる方法、或いは不飽和ジカルボン酸若しくはこれらの無水物を、ポリオレフィンにラジカル付加させた後、アルキルアルコールによりカルボキシル基の1つをエステル化する方法によって製造することもできる。
【0054】
本発明のポリプロピレン系水性分散体における(b)成分としての界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、及び両性系界面活性剤の群から選ばれる少なくとも1種が使用される。ここで、アニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物等が挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩である、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテートや、第四級アンモニウム塩である、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。両性系界面活性剤としては、例えばラウリルベタインやステアリルべタイン等が挙げられる。
【0055】
本発明では、なかでもノニオン系界面活性剤の使用が好ましい。ノニオン系界面活性剤を使用した場合には、特に低HLBのものの低水溶性による耐水性向上等の利点が得られる。また、(b)成分の界面活性剤としては、エマルジョン粒子の粒径を小さくしつつ、耐水性や耐溶剤性等の塗膜性能を向上させる効果を両立させるため、少なくとも2種の界面活性剤を含有するものが好ましい。少なくとも2種の界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、及び両性系界面活性剤から任意に選ぶことができる。なかでも、本発明では、ノニオン系界面活性剤を含有する少なくとも2種の界面活性剤の使用が好ましい。ノニオン系界面活性剤とともに使用されうる界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤又は両性界面活性剤のいずれも用いることができるが、得られた水性分散体の分散粒子の粒子径及び塗膜の耐水性の観点から、アニオン系界面活性剤を用いるのが好ましい。更に、本発明では、得られた水性分散体の分散粒子の粒子径及び塗膜の耐水性の観点から、少なくとも2種のノニオン系界面活性剤、特に異なったHLB値を有する2種のノニオン系界面活性剤の使用が好ましい。
【0056】
ノニオン系界面活性剤の2種以上を併用する場合のノニオン系界面活性剤の組合せとしては、特にHLB値が13.5以上14.5以下の範囲のノニオン系界面活性剤(b1)と、HLB値が16.0以上17.0以下の範囲のノニオン系界面活性剤(b2)のそれぞれから少なくとも1種選ぶのが好ましい。2種以上のノニオン系界面活性剤の配合割合としては、配合比が(b1)/(b2)=1/9〜9/1範囲となるようにすることが、得られた水性分散体の分散粒子の粒子径及び塗膜の耐水性の観点からとりわけ好ましい。
【0057】
ノニオン系界面活性剤成分のHLB値が13.5以上14.5以下の範囲のノニオン系界面活性剤(b1)としては、HLB値が13.5以上14.5以下の範囲のポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの中から選んだ1種類又は2種類の混合物が挙げられる。特に、ポリオキシエチレンセチルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数:10〜14モルの範囲)、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数:11〜14モルの範囲)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数:10〜14モルの範囲)の中から選んだ1種類又は2種以上の混合物が好ましく、より好ましくはポリオキシエチレンセチルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数:10〜14モルの範囲)が挙げられる。
【0058】
ノニオン系界面活性剤成分のHLB値が16.0以上17.0以下の範囲のノニオン系界面活性剤(b2)としては、HLB値が16.0以上17.0以下の範囲のポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテルの中から選んだ1種類又は2種類の混合物が挙げられる。特に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数:18〜22モルの範囲)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数:33〜39モルの範囲)、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数:12〜19モルの範囲及びプロピレンオキサイド付加モル数:1〜5モルの範囲)中から選んだ1種類又は2種類以上の混合物が好ましく、より好ましくはポリオキシエチレンラウリルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数:18〜22モルの範囲)が挙げられる。
【0059】
本発明における界面活性剤成分のHLB値の算出式としてはGriffinによるHLB値−数方式を用いる。
(1)多価アルコール脂肪酸エステルの場合
HLB値=20(1−S/A)
S:エステル鹸化価 A:脂肪酸の中和価
(2)トール油、松脂、密蝋、ラウリン多価アルコール誘導体の場合
HLB値=(E+P)/5
E:オキシエチレン含量(%) P:多価アルコール含量(%)
(3)親水基がオキシエチレン基のみである場合
HLB値=E/5
【0060】
本発明で少なくとも2種の界面活性剤b1及びb2を使用する場合、その配合比(b1)/(b2)は、好ましくは1/9〜9/1、特に好ましくは3/7〜7/3である。配合比が1/9未満であると、塗膜の耐水性が若干不良となり、9/1を超えると、得られた水性分散体の分散粒子の粒子径が若干大きく分散安定性が若干不良となる。
【0061】
本発明のポリプロピレン系水性分散体における(d)成分としてのアミン類は、これを水系溶媒中に含有させることにより、前記(a)成分の分散安定性を向上させるものである。アミン類としては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン等のアルキルアミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール等のアルカノールアミン類;モルホリン等が挙げられ、好ましくは2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールが挙げられる。
本発明のポリプロピレン系水性分散体においては、追加成分としてプロピレン系重合体及び変性プロピレン系重合体以外の他の重合体、例えば、(メタ)アクリル系重合体、ウレタン系重合体、又はエポキシ系重合体などを用いてもよい。なかでも、耐候性、耐熱性、及び耐水性向上の理由からして、(メタ)アクリル系重合体やウレタン系重合体などの使用が好ましい。
【0062】
本発明の水性分散体においては、(a)成分のプロピレン系重合体及び/又は変性プロピレン系重合体100重量部に対し、(b)成分の界面活性剤1〜100重量部、好ましくは51〜100重量部、(c)成分の水100〜1000重量部、好ましくは200〜800重量部、(d)成分のアミン類0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部からなるものである。界面活性剤成分が、1重量部未満であると、得られた水性分散体の分散粒子の粒子径が大きく分散安定性が不良となり、100重量部を超えると、塗膜の耐水性が不良となる。水成分が、100重量部未満であると、得られた水性分散体の固形分濃度が高くなりすぎて分散安定性が不良となり、1000重量部を超えると、得られた水性分散体の有効成分濃度が低すぎて実用上問題がある。
アミン類が、0.01重量部未満であると、分散安定性の改良効果が不十分となり、10重量部を超えると、分散安定性の改良効果が飽和に達するので、それを超えて添加しても分散安定性の向上は期待できない。
更に、塗膜強度や耐候性の向上の為に、上記の他の重合体を用いる場合には、(a)成分100重量部に対し、該重合体を好ましくは1〜5,000重量部、特に好ましくは50〜1000重量部である。他の重合体成分が、1重量部未満であると、塗膜強度等の塗膜性能の改良効果が得られなくなり、5,000重量部を超えると、ポリオレフィン系基材への接着性が低下する。
【0063】
本発明におけるポリプロピレン系水性分散体は、前記プロピレン系重合体を、必要に応じて用いられる塩基性物質を含有する水系溶媒に分散させることによって調製できる。分散方法については、特に制限はなく、例えば、プロピレン系重合体を、界面活性剤及び水と共に水中に投入して分散させる粉砕法;有機溶媒に溶解したプロピレン系重合体を、界面活性剤及び水と混合した後、有機溶媒を除去する方法;ホモミキサーを用いて分散を行うホモミキサー法;内部せん断力により乳化を行うミキサーを用いる方法;転相法等いずれの方法を利用しても良く、分散するプロピレン系重合体の物性等に応じて適宜選択される。特に、内部せん断力により乳化を行うミキサーを用いる方法が、プロピレン系重合体をより微細分散させることが出来、分散安定性を改良できるという面で好ましく用いられる。
本発明におけるポリプロピレン系水性分散体中の分散粒子の平均粒径は0.5μm以下であるので、平滑性やポリオレフィン基材に対する密着性に優れているが、更に層分離を起こし難く、貯蔵安定性がより改善されるので好ましい。平均粒径の下限値については特に制限はないが、一般的には0.01μm以上である。
【0064】
本発明のポリプロピレン系水性分散体に、これをプライマーや塗料の用途に使用した場合、乾燥速度を上げたり或いは仕上がり感の良好な表面を得る目的で、水以外の親水性有機溶媒を配合することができる。親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル類等が挙げられる。
【0065】
本発明のポリプロピレン系水性分散体に、必要により他の水性樹脂、例えば水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂、水性エポキシ樹脂、水性アルキド樹脂、水性フェノ−ル樹脂、水性アミノ樹脂、水性ポリブタジエン樹脂、水性シリコン樹脂等を配合して用いられる。その他、増粘剤、消泡剤、酸化防止剤、耐候安定剤、耐熱防止剤等の各種安定剤、酸化チタン、有機顔料等の着色剤、カーボンブラック、フェライト等の導電性付与剤、防腐剤、防かび剤、防錆剤等の各種添加剤も配合使用してもよい。更に塗布される基材との濡れ性を改善するために、必要に応じて少量の有機溶媒を添加しても良い。
【0066】
増粘剤としては、例えばアルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸系増粘剤;ベントナイトクレー等の鉱物性増粘剤;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、アクリルエマルジョンコポリマー、架橋アクリルエマルジョンコポリマー等のアクリル酸系増粘剤;カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維誘導体;等を挙げることができる。
【0067】
消泡剤としては、例えばヒマシ油、大豆油、アマニ油等の植物油;スピンドル油、流動パラフィン等の鉱物油;ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸;オレイルアルコール、ポリオキシアルキレングリコール、オクチルアルコール等のアルコール類;エチレングリコールジステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等の脂肪酸エステル;トリブチルホスフェート、ナトリウムオクチルホスフェート等のリン酸エステル;ポリオキシアルキレンアミド類のアミド類;ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸;ジメチルシリコン、ポリエーテル変性シリコン等のシリコン類;ジメチルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン等のアミン類;等が挙げられる。
【0068】
安定剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、メタオクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン等のフェノール系安定剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系安定剤;トリデシルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト等のリン系安定剤等を挙げることができる。また、用いられる紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、パラオクチルフェニルサリチレート等を挙げることができる。
【0069】
本発明のポリプロピレン系水性分散体は、基材の主たる成分としてα−オレフィン(共)重合体やその他の重合体からなる成型品の表面に塗布し、その表面へのインク及び塗料の付着性や耐水性及び耐ガソリン性といった塗膜性能を改善するためのプライマー等として用いることができる。特に、本発明のポリオレフィン系水性分散体は、例えば高圧法ポリエチレン、中低圧法ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリ−1−ブテン、ポリスチレン等のα−オレフィン重合体;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、プロピレン・ブテン共重合体等のα−オレフィン共重合体等からなる成型品に好適に用いることができる。
また、本発明のポリオレフィン系水性分散体が適用される成型品は、上記の各種重合体が、射出成型、圧縮成型、中空成形、押出成形、回転成形等の公知の成型法のいずれかの方法によって成型されたものであってもよい。
【0070】
本発明のポリプロピレン系水性分散体を成型品の表面に適用する方法としては、噴霧塗布が好適であり、例えばスプレーガンにて成型品の表面に吹き付けられる。成型品への塗布は常温で行えばよく、塗布した後、自然乾燥や加熱強制乾燥等、適宜の方法によって乾燥され塗膜を形成することができる。
以上のように、成型品の表面に本発明の水性分散体を塗布し、乾燥させた後、該成型品の表面には、静電塗装、吹き付け塗装、刷毛塗り等の方法によって、塗料を塗布することができる。塗料の塗布は、下塗りした後、上塗りする方法で行ってもよい。塗料を塗布した後、電熱線、赤外線、高周波等によって加熱する通常の方法に従って塗膜を硬化させて、所望の塗膜を表面に有する成型品を得ることができる。塗膜を硬化させる方法は、成型品の材質、形状、使用する塗料の性状等によって適宜選ばれる。
また、本発明のポリプロピレン系水性分散体は、付着性、剥離強度及び耐水性に優れる特徴を生かして、上記のプライマーとしての用途以外にも、広範囲の用途に適用可能なものであり、例えば、ポリオレフィンを基材とする各種成型品、フィルム及びシ−ト用のインク、塗料、接着剤用樹脂として利用される。
【0071】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0072】
【実施例】
<実施例1>
1.ポリプロピレンの合成
[製造例1]
(1) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウムの合成
(1)−1 配位子合成
2−メチルアズレン(4.01g)をテトラヒドロフラン(56ml)に溶解し、アイスバスにて0℃に冷却した後、同温度でメチルリチウムのジエチルエーテル溶液(1.14mol/l)24.8mlを滴下した。滴下終了後、アイスバスを外して2時間攪拌した。この溶液を、アイスバスにて0℃に冷却したジメチルシリルジクロリド(34.0ml,0.280mol)のテトラヒドロフラン溶液(140ml)にゆっくり滴下した。滴下終了後、アイスバスを外して3時間攪拌した後、減圧下に溶媒及び未反応のジメチルシリルジクロリドを留去した。テトラヒドロフラン(80ml)を加えて0℃まで冷却し、シクロペンタジエニルナトリウム(2.1mol/l,26.9ml,56.5mmol)を徐々に滴下し、滴下終了後、室温で12時間撹拌した。攪拌終了後、水を加え、ジエチルエーテルで目的とする化合物を抽出した。抽出溶液を硫酸マグネシウムで脱水した後、乾固することにより目的配位子の未精製品を得た。n−ヘキサンを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで、該未精製品を精製することにより、目的の配位子(6.29g)を収率79%で得た。
【0073】
(1)−2 錯体合成
(1)−1で得られた配位子(6.29g)をテトラヒドロフラン(100ml)に溶解し、アイスバスにて0℃に冷却した。ここに同温度で、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.56mol/l,28.4ml)を、ゆっくり滴下した。滴下終了後、アイスバスをはずして3時間攪拌し、減圧下に溶媒を留去した。留去後得られた残渣にトルエン(60ml)を加えた後、−78℃に冷却した。ここに、−78℃に冷却したハフニウムテトラクロリド(7.17g)のトルエン(140ml)懸濁液をゆっくり添加した。その後、冷却浴をはずして終夜攪拌した。攪拌終了後、反応液をG3フリットを用いて濾過した。フリット上の固体を更にトルエンで洗浄し、濾液を濃縮することにより、褐色の粉末が得られた。この褐色の粉末から、ホットn−ヘキサン(180ml×3回)で目的錯体を抽出した。抽出溶液を乾固させた後、得られた固体をn−ヘキサン(20ml×5回)で懸濁洗浄した後、減圧下で乾燥させることにより、目的とするジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル]ハフニウム(2.90g)を得た(収率25%)。
得られた錯体の1H-NMRデータは以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3):δ0.85(s,3H),0.86(s,3H),1.47 (d,J = 7.1 Hz, 3H), 2.25 (s,3H), 3.42-3.52 (m,1H), 5.42 (dd,J = 4.7, 10.1 Hz,1H), 5.80-5.85 (m,2H), 5.90-5.95 (m, 1H), 6.16-6.20 (m,2H), 6.65 (d,J = 11.4H), 6.80-6.85 (m,1H), 6.98-7.02 (m,1H)。
【0074】
(2) 粘土鉱物の化学処理
1,000ml丸底フラスコに、脱塩水(110ml)、硫酸マグネシウム・7水和物(22.2g)及び硫酸(18.2g)を採取し、攪拌下に溶解させた。この溶液に、市販の造粒モンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL,16.7g)を分散させ、2時間かけて100℃まで昇温し、100℃で2時間攪拌を行った。その後、1時間かけて室温まで冷却し、得られたスラリーを濾過してウェットケーキを回収した。回収したケーキを1,000ml丸底フラスコにて、脱塩水(500ml)にて再度スラリー化し、濾過を行った。この操作を2回繰り返した。最終的に得られたケーキを、窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥し、化学処理モンモリロナイト(13.3g)を得た。
【0075】
(3) 重合
製造例1(2)で得られた化学処理モンモリロナイト(0.44g)に、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.4mmol/ml,2.0ml)を加え、室温で1時間攪拌した。この懸濁液にトルエン(8ml)を加え、攪拌後、上澄みを除いた。この操作を2回繰り返した後、トルエンを加えて、粘土スラリー(スラリー濃度=99mg粘土/ml)を得た。
別のフラスコに、トリイソブチルアルミニウム(0.114mmol、東ソー・アクゾ社製)を採取し、ここで得られた粘土スラリー(3.8ml)及び製造例1(1)−2で得られた錯体(6.02mg,11.4μmol)のトルエン希釈液を加え、室温で10分間撹拌し、触媒スラリーを得た。
【0076】
次いで、内容積2リットルの誘導攪拌式オートクレーブ内に、トルエン(11.25リットル)、トリイソブチルアルミニウム(28.5mmol)及び液体プロピレン(2.7リットル)を導入した。室温で、上記触媒スラリーを全量導入し、60℃まで昇温し重合時の全圧を0.7MPaで一定に保持しながら、同温度で1時間攪拌を継続した。攪拌終了後、未反応プロピレンをパージして重合を停止した。オートクレーブを開放してポリマーのトルエン溶液を全量回収し、溶媒ならびに粘土残渣を除去したところ、348.0gのプロピレン重合体が得られた。
得られた重合体を分析したところ、以下の結果が得られた。GPCによるMw: 160,000。13C-NMRによるhead to tail結合からなるプロピレン単位連鎖部のメチル基の炭素原子に由来するピークを観測し、mmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークトップのケミカルシフトを21.8ppmとした際に、19.8ppmから22.1ppmに現れるピークの総面積Sに対する、21.8ppmをピークトップとする面積S1の比率(S1/S)は42.1%であり、21.5〜21.6ppmをピークトップとする面積S2(mmmm)のSに対する比率(S2/S)は16.0%であった。従って4+2(S1/S2)=9.26となった。DSCを測定したところ、明確な融点ピークは観測されなかった。
【0077】
2.水性分散体の製造
温度計、冷却管、攪拌機及び滴下漏斗を備えたガラスフラスコ中に、上記製造例1で合成したポリプロピレン300g及びトルエン900gを仕込み、窒素雰囲気下、系内温度を85℃に昇温し溶解した。続いて、トルエン300gに無水マレイン酸15g及びベンゾイルパーオキサイド5gを溶解した溶液を、同温度で1時間かけて滴下した後、5時間熟成反応を行った。反応終了後、室温付近まで冷却し、反応液を4.5kgのアセトン中に投入し、析出した無水マレイン酸変性ポリプロピレンを濾別した。再度この変性樹脂を4.5kgのアセトン中に投入して精製した後、濾別し真空乾燥した。得られた白色粉末状の変性樹脂の赤外線吸収スペクトル測定を行った結果、無水マレイン酸基の含有量は0.5重量%であった。
【0078】
温度計、冷却管及び攪拌機を備えたガラスフラスコ中に、上記の無水マレイン酸変性ポリプロピレン100gとトルエン400gとを加え、100℃に昇温し溶解した後、70℃まで冷却した。更にこの溶液の中に、ノニオン系界面活性剤(b1)としてポリオキシエチレンセチルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数:13モルの範囲)[エマルゲン220:花王社製;HLB=14.2]30g及びノニオン系界面活性剤(b2)としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数:19モルの範囲)[エマルゲン147:花王社製;HLB=16.3]30gを添加し溶解した後、室温付近まで冷却した。これをビーカーに移し替え、水700gを少量ずつ添加して十分攪拌混合した後、内部せん断型の乳化機[クレアミックスCLM−0.8S:エム・テクニック社製]を用い、21000rpmで15分間乳化を行った。続いて、系内に塩基性物質として2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールを水で10重量%に希釈した水溶液を2.1g添加してPH8に調整した。この粗乳化物をエバ
ポレーターにてトルエンを留去し、無水マレイン酸変性ポリプロピレン系水性分散体を得た。得られた水性分散体の分散粒子の粒子径をレーザ回折式粒径分布計[マイクロトラックUPA:日機装社製]で測定したところ、平均粒径は0.25μmであった。
【0079】
3.水性分散体の分散安定性試験
上記2で得られた水性分散体を固形分20重量%になるように濃度調整した後、容量100mlの密閉容器に入れ、5℃及び40℃の恒温器中で3ヶ月間貯蔵し、粒子径の測定及びその分散状態を目視にて判定したところ、平均粒径は0.25μmで、分散状態も良好であった。
【0080】
4.水性分散体の密着性試験
試験片の作成
ポリプロピレン系共重合体(日本ポリケム社製)60重量部、エチレン・プロピレンランダム共重合体ゴム(JSR社製)30重量部、及びタルク(富士タルク社製)10重量部の配合物に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3'5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバガイギー社製 IRGANOX 1010)0.1重量部を配合して、ヘンシェルミキサーで5分間混合した。その後、神戸製鋼社製二軸混練機(KCM50)にて210℃の設定温度で混練造粒することにより熱可塑性樹脂組成物を得た。更に、この組成物を東芝機械社製射出成型機(東芝IS170)を用いて、成形温度220℃の設定で150mm×70mm×2mmから成る形状の試験片を成形した。
【0081】
密着性試験
上記試験片の表面をイソプロパノールで洗浄し、固形分20重量%になるように濃度調整した水性分散体を、塗布量3〜5g/m2になるように噴霧塗布した。次にこの塗布後の試験片(塗装板)を25℃にて1時間静置した後、セーフベンドライヤー中において100℃で30分間乾燥させた。これを更に25℃にて1時間静置した後、その塗膜の上に、所定量の硬化剤を配合し且つ専用シンナーで粘度調整を行ったアクリルポリオールウレタン塗料[レタン PG80III:関西ペイント社製]を、塗布量が50〜60g/m2になるように噴霧塗布し、セーフベンドライヤー中において100℃で30分間焼き付けた。続いて、25℃にて10日間静置した。
JIS K5400に記載されている碁盤目試験の方法に準じて、得られた塗装板に碁盤目を付けた試験片を作製し、セロテープ[商品名:ニチバン社製]を試験片の碁盤目上に貼り付けた後、これを速やかに90°の方向に引っ張って剥離させた。その結果、碁盤目100のうちで剥離されなかった碁盤目の数は100であった。
【0082】
5.水性分散体の耐水性試験
密着性試験の場合と同様に作製した塗装板を、40℃の温水中に10日間浸漬し、塗膜外観を目視判定したところ、異常は認められなかった。また、密着性試験の場合と同様に碁盤目剥離試験を行った結果、碁盤目100のうちで剥離されなかった碁盤目の数は100であった。
【0083】
6.水性分散体の耐ガソホール性試験
密着性試験の場合と同様に作製した塗装板を、20℃に保ったレギュラーガソリンとエタノールとの混合溶液(重量比:レギュラーガソリン/エタノール=9/1)中に浸漬して、塗膜に剥離が生じるまでの時間を測定した結果、110分間であった。
【0084】
<実施例2>
温度計、冷却管、攪拌機及び滴下漏斗を備えたガラスフラスコ中に、上記[製造例1]で合成したポリプロピレン300g、無水マレイン酸100g及びクロルベンゼン900gを仕込み、窒素雰囲気下、系内温度を130℃に昇温し溶解した。続いて、クロルベンゼン300gにジクミルパーオキサイド25gを溶解した溶液を、同温度で5時間かけて滴下した後、3時間熟成反応を行った。反応終了後、室温付近まで冷却し、反応液を4.5kgのアセトン中に投入し、析出した無水マレイン酸変性ポリプロピレンを濾別した。再度この変性樹脂を4.5kgのアセトン中に投入して精製した後、濾別し真空乾燥した。得られた白色粉末状の変性樹脂の赤外線吸収スペクトル測定を行った結果、無水マレイン酸基の含有量は4.1重量%であった。
【0085】
得られた無水マレイン酸変性ポリプロピレンを用い、実施例1と同様にして水性分散体を作製したところ、その分散粒子の平均粒径は0.10μmであった。
更に、得られた水性分散体を用い、実施例1と同様にして分散安定性試験、密着性試験、耐水性試験及び耐ガソホール性試験を行った。その結果を表1に示す。
【0086】
<実施例3>
1.ポリプロピレンの合成
[製造例2]
(1)粘土鉱物の化学処理
1,000ml丸底フラスコに、脱塩水(72ml)、硫酸リチウム・1水和物(11.1g)及び硫酸(17.1g)を採取し、攪拌下に溶解させた。この溶液に、市販の造粒モンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL,16.7g)を分散させ、2時間かけて100℃まで昇温し、100℃で5時間攪拌を行った。その後、1時間かけて室温まで冷却し、得られたスラリーを濾過してウェットケーキを回収した。回収したケーキを1,000ml丸底フラスコにて、脱塩水(500ml)にて再度スラリー化し、濾過を行った。この操作を2回繰り返した。最終的に得られたケーキを、200℃で1時間減圧乾燥し、化学処理モンモリロナイト(15.0g)を得た。
【0087】
(2)重合
製造例2(1)で得られた化学処理モンモリロナイト(1.0g)に、トリイソブチルアルミニウム(日本アルキルアルミ社製)のトルエン溶液(4.0mmol/ml,4.0ml)を加え、室温で0.5時間攪拌した。この懸濁液にトルエン(25ml)を加え、攪拌後、上澄みを除いた。この操作を2回繰り返した後、トルエンを加えて、粘土スラリー(スラリー濃度=99mg粘土/ml)を得た。
別のフラスコに、トリイソブチルアルミニウム(0.0060mmol)を採取し、ここで得られた粘土スラリー及び製造例1(1)−2で得られた錯体(15.6mg,0.0030mmol)のトルエン希釈液を加え、室温で0.5時間撹拌し、触媒スラリーを得た。
【0088】
次いで、内容積2リットルの誘導攪拌式オートクレーブ内に、トルエン(13.0リットル)、トリイソブチルアルミニウム(1.5mmol)及び液体プロピレン(3.2リットル)を導入した。室温で、上記触媒スラリーを全量導入し、50℃まで昇温した。液体プロピレンを随時導入することで重合時の全圧を0.65MPaで一定に保持しながら、同温度で2時間攪拌を継続した。攪拌終了後、未反応プロピレンをパージして重合を停止した。オートクレーブを開放してポリマーのトルエン溶液を全量回収し、溶媒ならびに粘土残渣を除去したところ、1354gのプロピレン重合体が得られた。
得られた重合体を分析したところ、以下の結果が得られた。GPCによるMw: 240,000、Mn:93,000。13C-NMRによるhead to tail結合からなるプロピレン単位連鎖部のメチル基の炭素原子に由来するピークについて、上記実施例1と同様にして測定したところ、S1/S=52.2%、S2/S=14.2%であった。従って、4+2(S1/S2)=11.35であった。DSCを測定したところ、明確な融点ピークは観測されなかった。
【0089】
2.水性分散体の製造及びその試験
製造例2で合成したポリプロピレンに変更した以外は、実施例1と同様にして各々水性分散体を作成した。
無水マレイン酸変性プロピレン重合体の無水マレイン酸基の含有量は0.4重量%であり、それを用いて作製した水性分散体の分散粒子の平均粒径は0.30μmであった。
【0090】
<実施例4>
1.プロピレン−エチレン共重合体の合成
[製造例3]
(1)重合
製造例2(1)で得られた化学処理モンモリロナイト(1.0g)に、トリイソブチルアルミニウム(日本アルキルアルミ社製)のトルエン溶液(2.0mmol/ml,4.0ml)を加え、室温で0.5時間攪拌した。この懸濁液にトルエン(25ml)を加え、攪拌後、上澄みを除いた。この操作を2回繰り返した後、トルエンを加えて、粘土スラリー(スラリー濃度=99mg粘土/ml)を得た。
別のフラスコに、トリイソブチルアルミニウム(1.5mmol)を採取し、ここで得られた粘土スラリー及び製造例1(1)−2で得られた錯体(15.6mg,0.0030mmol)のトルエン希釈液を加え、室温で0.5時間撹拌し、触媒スラリーを得た。
【0091】
次いで、内容積24リットルの誘導攪拌式オートクレーブ内に、トルエン(13リットル)、トリイソブチルアルミニウム(1.5mmol)、エチレンガス(0.05MPa)及び液体プロピレン(3.2リットル)を導入した。室温で、上記触媒スラリーを全量導入し、60℃まで昇温した。以後、リザーバータンクからエチレンガスを6.5mmol/分の割合で反応容器に逐次導入し、かつ液体プロピレンを随時導入することで重合時の全圧を0.75MPaで一定に保持しながら、同温度で2時間攪拌を継続した。攪拌終了後、未反応モノマーをパージして重合を停止した。オートクレーブを開放してポリマーのトルエン溶液を全量回収し、溶媒ならびに粘土残渣を除去したところ、1360gのエチレン/プロピレン共重合体が得られた。
得られた共重合体を分析したところ、以下の結果が得られた。GPCによるMw: 200,000、Mn:75,000。13C-NMRによるhead to tail結合からなるプロピレン単位連鎖部のメチル基の炭素原子に由来するピークについて、実施例1と同様にして測定したところ、S1/S=47.6%、S2/S=16.5%であった。従って、4+2(S1/S2)=9.77であった。エチレン含量1.49(mol%)。DSCを測定したところ、明確な融点ピークは観測されなかった。
【0092】
2.水性分散体の製造及びその試験
製造例3で合成したプロピレン−エチレン共重合体に変更したこと以外は、実施例1と同様にして各々水性分散体を作成した。
無水マレイン酸変性プロピレン重合体の無水マレイン酸基の含有量は0.5重量%であり、それを用いて作製した水性分散体の分散粒子の平均粒径は0.30μmであった。
【0093】
<実施例5>
ノニオン系界面活性剤(b1)をポリオキシエチレンステアリルエーテルに、ノニオン系界面活性剤(b2)をポリオキシエチレンオレイルエーテルに変更したこと以外は、実施例1と同様にして水性分散体を作製した。得られた水性分散体の分散粒子の平均粒径は0.25μmであった。
得られた水性分散体を用い、実施例1と同様にして分散安定性試験、密着性試験、耐水性試験及び耐ガソホール性試験を行った。結果を表1に示す。
【0094】
<実施例6>
ノニオン系界面活性剤(b1)であるポリオキシエチレンセチルエーテルの仕込重量を18gに、ノニオン系界面活性剤(b2)であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの仕込重量を42gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして水性分散体を作製した。得られた水性分散体の分散粒子の平均粒径は0.15μmであった。
得られた水性分散体を用い、実施例1と同様にして分散安定性試験、密着性試験、耐水性試験及び耐ガソホール性試験を行った。結果を表1に示す。
【0095】
<実施例7>
ノニオン系界面活性剤(b1)であるポリオキシエチレンセチルエーテルの仕込重量を42gに、ノニオン系界面活性剤(b2)であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの仕込重量を18gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして水性分散体を作製した。得られた水性分散体の分散粒子の平均粒径は0.35μmであった。
得られた水性分散体を用い、実施例1と同様にして分散安定性試験、密着性試験、耐水性試験及び耐ガソホール性試験を行った。結果を表1に示す。
【0096】
<実施例8>
ノニオン系界面活性剤(b1)であるポリオキシエチレンセチルエーテルの仕込重量を10gに、ノニオン系界面活性剤(b2)であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの仕込重量を10gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして水性分散体を作製した。得られた水性分散体の分散粒子の平均粒径は0.35μmであった。
得られた水性分散体を用い、実施例1と同様にして分散安定性試験、密着性試験、耐水性試験及び耐ガソホール性試験を行った。結果を表1に示す。
【0097】
<実施例9>
ノニオン系界面活性剤(b1)であるポリオキシエチレンセチルエーテルの仕込重量を45gに、ノニオン系界面活性剤(b2)であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの仕込重量を45gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして水性分散体を作製した。得られた水性分散体の分散粒子の平均粒径は0.10μmであった。
得られた水性分散体を用い、実施例1と同様にして分散安定性試験、密着性試験、耐水性試験及び耐ガソホール性試験を行った。結果を表1に示す。
【0098】
<実施例10>
実施例1の水性分散体の製造で、実施例1の無水マレイン酸をメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルに変更した他は実施例1と同様に反応を行ったところ、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル変性ポリプロピレン中のメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルの含有量は、0.6重量%であった。続いて実施例1と同様に水性分散体を作製したところ、得られた水性分散体の分散粒子の平均粒径は0.30μmであった。
得られた水性分散体を用い、実施例1と同様にして分散安定性試験、密着性試験、耐水性試験及び耐ガソホール性試験を行った。結果を表1に示す。
【0099】
<比較例1>
ノニオン系界面活性剤(b1)であるポリオキシエチレンセチルエーテルの仕込重量を60gに、ノニオン系界面活性剤(b2)を使用しないことに変更した以外は、実施例1と同様にして水性分散体を作製した。得られた水性分散体の分散粒子の平均粒径は1.1μmであり、一週間後層分離が発生した。
【0100】
<実施例11>
ノニオン系界面活性剤(b1)を使用せず、ノニオン系界面活性剤(b2)であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの仕込重量を60gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして水性分散体を作製した。得られた水性分散体の分散粒子の平均粒径は0.10μmであった。
得られた水性分散体を用い、実施例1と同様にして分散安定性試験、密着性試験及び耐水性試験を行った。結果を表1に示す。
【0101】
<比較例2>
1.ポリプロピレンの製造
[製造例4]
内容積50mLの誘導攪拌式ミクロオートクレーブ内に、高立体特異性アイソタクチックポリプロピレン(31.1g)、ヘプタン(180ml)、Pd/C(アルドリッチ社:10wt%Pd/C)(7.87g)を加えた後、系を密閉系にし、窒素置換を行った。その後、水素を8.0MPa導入し、275℃まで昇温して、6時間攪拌を継続した。冷却後、水素をパージして反応を停止した。オートクレーブを開放してポリマーのヘプタン溶液を全量回収し、溶媒ならびにPd/C残渣を除去したところ、30.6gのプロピレン重合体が得られた。
なお、使用した高立体特異性アイソタクチックポリプロピレンの物性は、次の通りである。
MFR:15,000(単位g/10min、測定条件230℃、21.18N荷重);
Tm(融点):154.9℃;
Mw:37,000;Mn:18,000;Mw/Mn:2.1;
[mmmm]:98.4%;[mmmr]:0.0%;[rmrm]:0.1%;[rrrr]:0.2%。
従って、実施例1と同様にして、S1/S=98.4%、S2/S=0.0%となり、計算上、4+2(S1/S2)は無限大となった。
【0102】
2.水性分散体の製造
製造例4で合成したポリプロピレンに変更したこと以外は、実施例1と同様にして水性分散体を作製した。
無水マレイン酸変性プロピレン重合体の無水マレイン酸基の含有量は0.6重量%であり、それを用いて作製した水性分散体の分散粒子の平均粒径は1.2μmであり、一週間後層分離が発生した。
【0103】
<比較例3>
実施例1において、使用するポリプロピレンを、非晶質ポリオレフィン(宇部レキセン(株)製、ウベタックUT-2115(軟化点152℃))に変更した以外は、全て実施例1と同様の操作を行ったところ、無水マレイン酸基の含有量は0.6重量%であった。更に、得られた同水性分散体の平均粒径は0.38μmであった。
得られた水性分散体を用い、実施例1と同様にして分散安定性試験、密着性試験、耐水性試験及び耐ガソホール性試験を行った。結果を表1に示す。
【0104】
<比較例4>
実施例1において、使用する乳化剤をノニオン系界面活性剤(b1)であるポリオキシエチレンセチルエーテル[エマルゲン220:花王社製;HLB=14.2]の使用量を90gに変更した以外は、全て実施例1と同様の操作を行ったところ、得られた同水性分散体の平均粒径は1.8μmであった。
得られた水性分散体を用い、実施例1と同様にして分散安定性試験、密着性試験、耐水性試験及び耐ガソホール性試験を行った。結果を表1に示す。
【0105】
<比較例5>
実施例1において、使用する無水マレイン化ポリプロピレンの代わりに、無水マレイン酸変性アタクチックポリプロピレン(軟化点82℃、重量平均分子量;5万、4+2S1/S2<5)に変更した以外は、全て実施例1と同様の操作を行ったところ、無水マレイン酸基の含有量は2.5重量%であった。更に、得られた同水性分散体の平均粒径は0.63μmであった。
得られた水性分散体を用い、実施例1と同様にして分散安定性試験、密着性試験、耐水性試験及び耐ガソホール性試験を行った。結果を表1に示す。
【0106】
<実施例12>
冷却管及び攪拌機を備えたガラスフラスコ中に、実施例1で得た無水マレイン酸変性ポリプロピレン100gとトルエン400gとを加え、100℃に昇温し溶解した後、モルホリン 9.6gを添加後、反応性ノ二オン系界面活性剤であるアルキルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体(アクアロンRN−20、第一工業製薬製)30gを添加し、100℃に降温し90℃の水を徐々に添加して水性反応液を調製した。そこへラジカル反応開始剤の過硫酸カリ10gを添加し、反応を攪拌しながら80℃で4時間行うことにより重合反応を行った。
反応後、2―メチルー2―アミノー1−プロパノール4gを加え水性化反応液(固形分25%)を得た。水性化反応液を分画分子量5000の限外ろ過膜で72時間処理した後、濃縮し固形分30%の水性分散体を得た。得られた同水性分散体の平均粒径は0.019μmであった。
得られた水性分散体を用い、実施例1と同様にして分散安定性試験、密着性試験、耐水性試験及び耐ガソホール性試験を行った。結果を表1に示す。
【0107】
<実施例13>
ノニオン性界面活性剤(b2)をアニオン系界面活性剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして水性分散体を作製した。得られた水性分散体の分散粒子の平均粒径は0.13μmであった。
得られた水性分散体を用い、実施例1と同様にして分散安定性試験、密着性試験、耐水性試験及び耐ガソホール性試験を行った。結果を表1に示す。
【0108】
<実施例14>
ノニオン性界面活性剤(b1)であるポリオキシエチレンセチルエーテルの代わりにアニオン性界面活性剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを、ノニオン性界面活性剤(b2)であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの代わりに同じくアニオン性界面活性剤であるジアルキルスルホコハク酸ナトリウムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして水性分散体を作製した。得られた水性分散体の分散粒子の平均粒径は0.11μmであった。
得られた水性分散体を用い、実施例1と同様にして分散安定性試験、密着性試験、耐水性試験及び耐ガソホール性試験を行った。結果を表1に示す。
【表1】
Figure 0003990314
【0109】
【発明の効果】
本発明によれば、分散粒子が小さい為に十分な分散安定性を有し、その塗膜の平滑性やポリオレフィン基材に対する密着性も良好で、且つ耐水性の良好な塗膜も形成できるポリプロピレン系水性分散体を提供することができる。

Claims (10)

  1. 下記(a)〜()成分を含有する水性分散体であって、(a)成分はその主鎖が下記(1)及び(2)の特性を有し、かつ分散体中の分散粒子の平均粒径が0.5μm以下であることを特徴とするポリプロピレン系水性分散体。
    (a)プロピレン系重合体及び/又は変性プロピレン系重合体: 100重量部、
    (b)界面活性剤: 1〜100重量部、
    (c)水: 100〜1000重量部、
    (d)アミン類: 0.01〜10重量部、
    (1)13C−NMRにて、頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部のメチル基の炭素原子に由来するピークを観測し、mmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークのピークトップのケミカルシフトを21.8ppmとした際に、19.8ppmから22.1ppmに現れるピークの総面積Sに対する、21.8ppmをピークトップとするピークの面積S の比率(S /S)が10%以上、60%以下であり、かつ21.5〜21.6ppmをピークトップとするピーク(mmmr)の面積をS としたとき、4+2S /S >5を満足する、
    (2)プロピレン単位():他のオレフィン単位()の含有割合(モル比)が、100:0〜90:10。
  2. (b)成分の界面活性剤がアニオン系界面活性剤、及び/又はノニオン系界面活性剤である請求項1に記載のポリプロピレン系水性分散体。
  3. (b)成分の界面活性剤がノニオン系界面活性剤である請求項1に記載のポリプロピレン系水性分散体。
  4. (b)成分の界面活性剤が、異なったHLB値を有する少なくとも2種の界面活性剤を含有するものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリプロピレン系水性分散体。
  5. 他のオレフィン単位(B)がエチレン単位及び/又はブテン単位である請求項1〜のいずれか1項に記載のポリプロピレン系水性分散体。
  6. (a)成分のプロピレン系重合体及び/又は変性プロピレン系重合体の、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)が10,000以上、300,000以下である請求項1〜のいずれか1項に記載のポリプロピレン系水性分散体。
  7. (a)成分の変性プロピレン系重合体は、プロピレン系重合体に炭素原子数3〜25の不飽和カルボン酸、その酸無水物及びそのエステルから選ばれる不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフトすることにより変性されたものである請求項1〜のいずれか1項に記載のポリプロピレン系水性分散体。
  8. (a)成分の変性プロピレン系重合体の、不飽和カルボン酸或いは不飽和カルボン酸誘導体の付加率が0.01〜20重量%である請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリプロピレン系水性分散体。
  9. (b)成分の界面活性剤が、少なくとも親水疎水バランス(HLB)値が13.5以上、14.5以下の範囲のノニオン界面活性剤(b1)と、HLB値が16.0以上17.0以下の範囲のノニオン界面活性剤(b2)とを含み、かつその配合比(b1/b2)は1/9〜9/1である請求項3〜のいずれか1項に記載のポリプロピレン系水性分散体。
  10. 請求項1〜のいずれか1項に記載のポリプロピレン系水性分散体を含有するコーティング剤、塗料、インキ、又は接着剤。
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