以下に、本発明の高出力ガスレーザ装置を、露光用2ステージレーザ装置の増幅段レーザを例にとって説明する。ただし、本発明の高出力ガスレーザ装置は、増幅段レーザを含まないエキシマレーザ装置や炭酸ガスレーザ装置等にも適用できることは、その原理から明らかである。
本発明を適用する露光用2ステージレーザ装置の基本構成の概略を図1に示す。この露光用2ステージレーザ装置は、MOPO(Master Oscillator,Power Oscillator)システムであり、発振段レーザ(MO:Master Oscillator )50と、発振段レーザ50で発振されたseed光を入力して増幅してレーザ光を出力する増幅段レーザ(PO:Power Oscillator)60とからなる。そして、増幅段レーザ60は入力側ミラー(リア側ミラー)1と出力側ミラー(フロント側ミラー)2とからなるファブリペローエタロン型共振器を備えており、その間にレーザガスが充填されたチャンバー3が配置されている。さらには、チャンバー3内のレーザガスを励起して利得領域を形成する放電電極4、5、チャンバー3の光軸延長上両端に設置されたウィンドー部材17等を備えている。
また、発振段レーザ50は、典型的には、例えば拡大プリズムとグレーティング(回折格子)によって構成されてなる狭帯域化モジュール51内の光学素子が兼ねるリア側ミラーとフロントミラー52とで構成されるレーザ共振器内にレーザガスが充填されたチャンバー53を備え、チャンバー53内のレーザガスを励起して利得領域を形成する放電電極54、55、チャンバー53の光軸延長上両端に設置されたウィンドー部材57等を備えて構成される。
また、発振段レーザ50と増幅段レーザ60の間には、必須のものではないが、発振段レーザ50から増幅段レーザ60へ入力(入射)するseed光のビーム断面積を縮小したり、発振段レーザ50からのseed光の発散角を変換する変換光学系70(図2)が配置されて構成される。
ここで、この高出力レーザシステムにおいては、増幅段レーザ60の入力側ミラー1と出力側ミラー2とからなる共振器を安定共振器で構成するか、発振段レーザ50で発振され増幅段レーザ60に入力されるレーザ光(seed光)の光軸と、増幅段レーザ60のリア側ミラー1とフロント側ミラー2とからなる共振器の光軸とが角度をなすように設定するか、又は、増幅段レーザ60の共振器のリア側ミラー1及び出力側ミラー2の反射面を平面とし、リア側ミラー1及び出力側ミラー2の法線が発振段レーザ50で発振され増幅段レーザ60に入力されるレーザ光(seed光)の光軸に対して角度をなすように、かつ、相互に角度をなすように設定し、発振段レーザ50で発振されたレーザ光(seed光)を両方のミラー1、2間の距離がより長い側から共振器内に入力するようにすることにより、発振段レーザと同等の空間コヒーレンスの低コヒーレンス化を達成するものである(PCT/JP2004/005490)。
次に、以上のような基本構成を備えた露光用2ステージレーザ装置の1つの構成例を図2の全体構成図を参照にして説明する。
このMOPOシステムがフッ素分子(F2 )レーザ装置のとき、発振段レーザ50、増幅段レーザ60共にそれぞれのチャンバー53、3は、フッ素(F2 )ガスと、ヘリウム(He)やネオン(Ne)等からなるバッファーガスとからなるレーザガスが充填される。このMOPOシステムがKrFエキシマレーザ装置のときには、発振段レーザ50、増幅段レーザ60共にそれぞれのチャンバー53、3は、クリプトン(Kr)ガス、フッ素(F2 )ガスと、ヘリウム(He)やネオン(Ne)等からなるバッファーガスとからなるレーザガスが充填され、このMOPOシステムがArFエキシマレーザ装置のときには、発振段レーザ50、増幅段レーザ60共にそれぞれのチャンバー53、3は、アルゴン(Ar)ガス、フッ素(F2 )ガスと、ヘリウム(He)やネオン(Ne)等からなるバッファーガスとからなるレーザガスが充填される。発振段レーザ50、増幅段レーザ60共に、レーザチャンバー53、3は内部にそれぞれ一対の放電電極54と55、4と5からなる放電部を有している。これら放電部は紙面と平行方向に上下に設置されている一対のカソード電極55、5、アノード電極54、4からなる。これらの一対の電極54と55、4と5にそれぞれ電源56、16から高電圧パルスが印加されることにより、これら電極間で放電が発生する。
発振段レーザ50と増幅段レーザ60共にチャンバー53、3内に設置された一対の電極54と55、4と5の光軸延長上両端に、CaF2 等のレーザ発振光に対して透過性がある材料によって作られたウィンドー部材57、17がそれぞれ設置されている。ここでは、両ウィンドー部材57、17のチャンバー53、3内とは反対側の露出面は互いに平行に、そして、レーザ光に対して反射損失を低減するためにブリュースタ角で設置されている。また、レーザ光のP偏光成分が水平方向になるよう、ウィンドー部材57、17は設置されている。
また、図2には図示されていないクロスフローファンがチャンバー53、3内に設置されており、レーザガスをチャンバー53、3内で循環させ、放電部にレーザガスを送り込んでいる。また、発振段レーザ50、増幅段レーザ60共に、チャンバー53、3へF2 ガス、バッファーガスを供給するF2 ガス供給系、バッファーガス供給系、及び、チャンバー53、3内のレーザガスを排気するガス排気系が本装置に備わっている。図2では、これらをまとめて、ガス供給排気用制御バルブ58、及び、ガス供給排気用制御バルブ18として図示してある。なお、KrFレーザ装置、ArFレーザ装置の場合は、各々Krガス供給系、Arガス供給系も備える。チャンバー53、3内ガス圧力はそれぞれ圧力センサーP1、P2によってモニタされ、それらガス圧力情報はユーティリティコントローラ81へ送られる。そして、ユーティリティコントローラ81がガス供給配給制御バルブ58、18を制御し、発振段チャンバー53並びに増幅段チャンバー3内ガス組成、ガス圧力がそれぞれ制御される。
レーザ出力はガス温度によって変化する。そのために、ガス温調制御が行われている。ガス温度は、それぞれのチャンバー53、3に設置された温度センサーT1、T2によってモニタされ、それら温度信号はユーティリティコントローラ81へ送られる。そして、ユーティリティコントローラ81は、それぞれ冷却水流量制御バルブ59、19によって冷却水流量を制御する。その結果、チャンバー53、3内のそれぞれ熱交換器34、44の排熱量がそれぞれ制御され、そして温度が制御される。
発振段レーザ50は、拡大プリズムとグレーティング(回折格子)によって構成された狭帯域化モジュール(LNM)51を有し、この狭帯域化モジュール51内の光学素子とフロントミラー52とでレーザ共振器を構成している。又は、図示していないが、拡大プリズム、グレーティングの代わりに、エタロンと全反射ミラーを用いた狭帯域化モジュールを用いてもよい。
発振段レーザ50、増幅段レーザ60から放出されたレーザ光の一部は、図示されていないビームスプリッタによって分岐され、それぞれモニタモジュール35、45に導光される。モニタモジュール35、45はそれぞれ発振段レーザ50、増幅段レーザ60の出力、線幅そして中心波長等のレーザ光特性をモニタする。図2では、発振段レーザ50と増幅段レーザ60の両方にモニタモジュール35、45が設置されているが、どちらか一方のみの設置でもよい。
モニタモジュール35、45からの中心波長の信号は、波長コントローラ82に送られる。そして、波長コントローラ82は、ドライバ83により狭帯域化モジュール51内の光学素子を駆動させて波長を選択して、発振段レーザ50の中心波長が所望の波長になるよう波長制御する。なお、上記した波長制御を、増幅段レーザ60から放出されるレーザ光の一部が導光されるモニタモジュール45からの波長情報に基き、発振段レーザ50から放出されるレーザ光の波長が所定の波長となるように、波長コントローラ82からドライバ83に指令を出して行うことも可能である。
モニタモジュール35、45からのレーザ出力信号は、エネルギコントローラ84へ送られる。そして、同期コントローラ85を経由し、印加電圧が制御され、発振段レーザ50、増幅段レーザ60のエネルギが所望の値になるよう制御される。モニタモジュール45の出力信号を図の(1)のようにエネルギコントローラ84に送ってもよいが、(1)の代りに、露光装置100側に図示されていない出力モニタを設け、そこでの出力を(2)のようにエネルギコントローラ84に送ってもよい。
発振段レーザ50からのレーザ光(seed光)はモニタモジュール35を通過した後、反射ミラー等を含むビームステアリングユニット86を通過し、変換光学系70を通過した後、増幅段レーザ60へ導かれ、注入される。変換光学系70は所定の発散角で発振段レーザ光(seed光)が増幅段レーザ60へ注入されるよう、発振段レーザ50の発散角を所定の値に制御する前記のような機構を有している。このMOPO方式では、小入力でも増幅できるように、増幅段レーザ60には、入力側ミラー(リア側ミラー)1と出力側ミラー(フロント側ミラー)2とで構成された上記のような共振器が採用される。入力側ミラー1を通過したレーザ光が図2の矢印のように反射して放電部を有効に通過し、レーザ光のパワーが増大する。そして、出力側ミラー2よりレーザが出射される。
発振段レーザ50、増幅段レーザ60の各々一対の放電電極54と55、4と5には、それぞれ、充電器31/スイッチ32/MPC(磁気パルス圧縮回路)33によって構成された電源56、そして、充電器41/スイッチ42/MPC(磁気パルス圧縮回路)43によって構成された電源16より、高電圧パルスが印加され、上記電極54と55、4と5間で放電が生じる。この放電により、それぞれレーザチャンバー53、3内に充填されたレーザガスが励起される。
それぞれの電源56、16において、充電器31、41によりコンデンサが充電される。コンデンサに充電されたエネルギは、スイッチ32、42がON状態になると、電圧パルスとして磁気パルス圧縮回路33、43に転送され、パルス圧縮され、上記した一対の電極54と55、4と5に印加される。図示を省略したが、電源56、16は昇圧トランスをさらに備え、電圧パルスを昇圧する場合もある。
スイッチ32、42のON、OFFは、同期コントローラ85からの動作指令(トリガ信号)によってなされる。
同期コントローラ85は、発振段レーザ50から放出されるレーザ光が増幅段レーザ60に注入されるタイミングで、増幅段レーザ60において放電が発生するように、充電器31/スイッチ32/MPC(磁気パルス圧縮回路)33によって構成された電源56、そして、充電器41/スイッチ42/MPC(磁気パルス圧縮回路)43によって構成された電源16にトリガ信号を送出する。発振段レーザ50、増幅段レーザ60の放電のタイミングがずれると、発振段レーザ50から放出されるレーザ光は効率良く増幅されない。同期コントローラ85は、それぞれ放電検出器36、46からの発振段レーザ50及び増幅段レーザ60の放電開始の情報、そして、エネルギコントローラ84からのレーザ出力情報を得、発振段レーザ50の電源56に送出するトリガ信号と増幅段レーザ60の電源16に送出するトリガ信号との間の遅延時間を設定する。
ユーティリティコントローラ81、エネルギコントローラ84、そして、波長コントローラ82はメインコントローラ80と接続されている。また、メインコントローラ80は露光装置100と接続している。メインコントローラ80は露光装置100から指令に従い、各コントローラ81、84、82に制御分担を振り分け、その指令によって各コントローラ81、84、82は分担する制御を行う。
また、発振段レーザ50から放出されたレーザ光は、増幅段レーザ60の放電領域を通過するように、ミラー2枚からなるビームステアリングユニット86によってアライメントされる。ビームステアリングユニット86を構成する2枚のミラーは、ドライバ87により駆動されて角度制御され、発振段レーザ50から放出されるレーザ光の進行方向を制御する。
このビームステアリングユニット86の具体的な制御は、次のようになる。例えば、発振段レーザ50から放出されたレーザ光の進行方向が、増幅段レーザ60の放電領域を通過するようにアライメントされていないとする。その場合、発振段レーザ50から放出されたレーザ光の一部若しくは全てが、例えば増幅段レーザ60の放電電極4、5によって遮光されたり、所望でない方向に反射されたりして、増幅段レーザ60からレーザ光が放出されなかったり、レーザパワーが所望の値より小さくなる。そこで、増幅段レーザ60から放出されるレーザ光の出力をモニタモジュール45でモニタしながら、この出力が最大となるようにビームステアリングユニット86を制御する。すなわち、図2においては、モニタモジュール45でモニタされた結果が波長コントローラ82に送られる。波長コントローラ82は、モニタモジュール45から受け取ったレーザビームの出力結果に基づき、その出力が最大となるようにドライバ87に指令して、ビームステアリングユニット86を駆動制御して、発振段レーザ50から放出されるレーザ光の進行方向を制御する。
例えばこのような構成の露光用2ステージレーザ装置において、本発明に基づいて、リア側ミラー1とフロント側ミラー2とからなる共振器内部におけるレーザ光のエネルギが非常に高くなる増幅段レーザ60の、チャンバー3とリア側ミラー1との間、及び、チャンバー3とフロント側ミラー2の間に、それぞれビーム拡大光学系を介在させて、チャンバー3側からリア側ミラー1及びフロント側ミラー2に入射するレーザビームの径を拡大させ、その結果、それぞれのミラー1、2に入射する単位面積当たりのレーザ光のエネルギを減らすようにすることにより、リア側ミラー1及びフロント側ミラー2の耐久性を向上させるようにするのが、本発明の原理である。もちろん、前記したように、増幅段レーザを含まないエキシマレーザ装置や炭酸ガスレーザ装置等の高出力ガスレーザ装置においては、発振段レーザを同様に構成することにより、発振段レーザのリア側ミラーとフロント側ミラーの耐久性を同様の原理で向上させることができる。
図3にこのような構成の増幅段レーザ60の1例の概要を示す。図3は、図1のような配置の露光用2ステージレーザ装置の増幅段レーザ60の構成のみを示す上面図であり、一対の放電電極4と5が紙面に垂直方向に配置されていて、放電領域22は紙面に対し垂直に生じており、そのため、レーザ利得領域は放電領域22と略等しくなっている。以後、レーザ利得領域も符号22で示す。レーザチャンバー3の両端に設けられたウィンドー部材17、17とリア側ミラー1及びフロント側ミラー2との間にそれぞれビーム拡大光学系61、61’が配置され、レーザチャンバー3内のレーザ利得領域22を通過したレーザビームの少なくとも1次元方向の幅を広げて、フロント側ミラー2及びレーザ利得領域22を挟んで反対側に位置するリア側ミラー1にレーザ光(seed光)を入射させる。
このような配置の結果、増幅段レーザ60からの出力レーザ光は、ビーム拡大光学系61、61’挿入前と挿入後で強度が同じ場合、挿入後のレーザビームの径は拡大率分大きくなり、またその拡大率がAの場合、共振器のミラー1、2に照射されるレーザ光のエネルギ密度は約1/Aとなり、ミラー1、2へのエネルギ密度負荷が低減する。したがって、リア側ミラー1及びフロント側ミラー2の耐久性が向上する。
ここで、ビーム拡大光学系61、61’としては、焦点距離の異なる2群のレンズ系を共焦点で配置してなるレンズ系や、後記の例のような拡大プリズムで構成することもできる。
また、レーザチャンバー3の両端に設けられたウィンドー部材17、17は、図3ではレーザ光に対して垂直に取り付けられているが、その取り付け角度は特に限定されず、図4等の実施例のように、ブリュースタ角やその他の角度で取り付けるようにしてもよい。
図4に、図1のような配置の露光用2ステージレーザ装置に用いられる増幅段レーザ60の1実施例の要部を示す図であり、その(a)は上面図であり、一対の放電電極4と5が紙面に垂直方向に配置されていて、放電領域22は紙面に対し垂直に生じている。その(b)は、図4(a)のA−A’断面を矢印方向から観察することにより、フロント側ミラー2をリア側ミラー1位置から見たときの図である。
この実施例は、発振段レーザ50で発振されたseed光23の光軸と増幅段レーザ60のリア側ミラー1とフロント側ミラー2とからなる共振器の光軸とが角度をなすように設定されている場合の例の1つであり、一対の放電電極4、5間の放電方向に対して垂直な方向からseed光23を増幅段レーザ60へ注入する自由度が高いので、この放電方向に対して垂直な方向からseed光23を入射させる実施例である。しかし、seed光23の注入は、この垂直な方向に限ったものではなく、どの方向(角度)から増幅段レーザ60の光軸に対して注入するようにしてもよい。
この実施例において、リア側ミラー1のチャンバー3側のseed光23が入射する位置より光軸側に高反射率(全反射)ミラーコーティング8が施してあり、フロント側ミラー2のチャンバー3側には部分反射ミラーコーティング10が、また、その反対側には反射防止コーティング9が施してある。なお、フロント側ミラー2の部分反射ミラーコーティング10は、チャンバー側でなく、レーザ光出力側に設けてもよい。なお、以下の実施例では、高反射率(全反射)ミラーコーティング8、反射防止コーティング9、部分反射ミラーコーティング10の図示は省くが、この実施例と同様である。
なお、フロント側ミラー2は、部分反射ミラーコーティング10、反射防止コーティング9が施されていない透明基板で構成してもよい。例えば、発振段レーザが自然発振している場合において、レーザ光の波長がArFエキシマレーザ光の波長193nmの場合、透明基板(螢石(CaF2 ))の表面反射率は4%程度であり、基板表面の表裏の反射を用いると約8%の反射率を持つ波長193nm用出力側ミラー(フロント側ミラー)2を、コーティングなしで実現することが可能である。ただし、発振段レーザが狭帯域レーザの場合、上記フロントミラー2の基板表面の表裏の反射によって光が干渉し、増幅されるレーザ光のスペクトルが分裂する。このような場合は露光装置用レーザとしては使用することはできない。この原理に関しては、後述する(図11)。
上記のようなフロント側ミラー2の部分反射ミラーコーティング10、反射防止コーティング9には破壊閾値があり、これを上回るレーザ光が部分反射ミラーコーティング10と反射防止コーティング9に照射されると、これらのコーティングが破壊されてしまう。また、フロント側ミラー2に上記のようなコーティングが施されれないで構成されていても、レーザ光のエネルギ密度が高い場合は、その透明基板表面及びその内部の破壊が生じる。本実施例は、フロント側ミラー2への照射エネルギ密度を低減する実施例であり、レーザチャンバー3とフロント側ミラー2の間に、1個以上の三角プリズム62、63から構成され、三角プリズム62の斜面にレーザチャンバー3側から斜めに入射し、反対側の面から略直角に射出して1次元方向にビーム径が拡大されて射出し、そのビーム径が拡大されたビームが別の三角プリズム63の斜面に斜めに入射し、反対側の面から略直角に射出して1次元方向にさらにビーム径が拡大されて射出するビーム拡大光学系(ビームエキスパンダープリズム系)61’が配置されて構成されている。そのため、フロント側ミラー2に照射されるレーザ光のエネルギ密度は、ビーム拡大光学系(ビームエキスパンダープリズム系)61’が設置されていない場合と比較して低減し、フロント側ミラー2のさらなる長寿命化、また、高出力レーザ発振が可能となる。
図4(b)は、図4(a)においてリア側ミラー1位置からフロント側ミラー2側を見たときの図であり、放電電極4、5、放電領域22、フロント側ミラー2、そして、フロント側ミラー2から射出する出力レーザビームの断面の関係を図示してある。ビーム拡大光学系(ビームエキスパンダープリズム系)61’が共振器内に設定されていない場合は、破線aで囲まれた大きさになり、ビーム断面の大きさは放電領域22断面と同等又はそれ以下の大きさになるが、ビーム拡大光学系(ビームエキスパンダープリズム系)61’を設けた場合は、破線bで囲まれた大きさになり、出力レーザ光はその拡大率の分拡大される。
なお、反射防止コーティングと部分反射コーティングの紫外線レーザ光に対する耐性を比較すると、反射防止膜コートの方がコーティングの層数が少ないために、耐久性は高い。したがって、増幅段レーザ60でのレーザ出力の低下を防ぐために、ビームエキスパンダープリズム系61’を構成する三角プリズム62、63のレーザ光透過面に反射防止コーティングを施してもよい。また、増幅段レーザ60での出力低下が問題にならないレベルであれば、そのようなコーティングを省いてもよい。
なお、発振段レーザ50が狭帯域レーザの場合は、各プリズム62、63の各面は、フロント側ミラー2及びリア側ミラー1の反射面との間で多重干渉を起こさないような角度に設置するようにすることが望ましい。この理由に関しては後述する(図11)。
また、図4では、ビームエキスパンダープリズム系61’が放電方向(図4(a)面方向)に対して垂直方向に拡大するように設置されているので、出力レーザ光の断面は図4(b)の横方向に拡大されている。この場合、レーザビームが狭い方向の一方向のみのビームを拡大して、レーザビームを正方形に近い形状にすることが可能となるので、大きなフロント側ミラー2は必要とせず、コストメリットは大きくなる。さらに、ウィンドー部材17をブリュースタ角で設置して、ウインドー部材17に対してP偏光成分と拡大プリズムの斜面のP偏光成分が一致するように配置することにより、プリズム増幅段レーザの効率も高くなる。また、原理的には、縦方向のみ、又は、縦横共に出力レーザ光の断面を拡大するようにすることも可能である。また、球面レンズ、円筒レンズを三角プリズムの代りに用いて、又は、三角プリズムと組み合わせて用いることにより、出力レーザ光の断面を自由に縦横拡大するようにすることも可能である。
図5に、図1のような配置の露光用2ステージレーザ装置に用いられる増幅段レーザ60の別の実施例の上面図を示す。この実施例は、図4の実施例におけるフロント側ミラー2の機能をビームエキスパンダープリズム系61’の最も外側の三角プリズム、図4、図5では2個で構成するので三角プリズム63の射出側の面に部分反射ミラーコーティング10を直接施して兼ね備えさせ、フロント側ミラー2を省いた例である。このような構成により、共振器の構成部品であるフロント側ミラーを省くことが可能となり、レーザ装置のコスト低減が可能となる。
この例の場合も、反射防止コーティングと部分反射コーティングの紫外線レーザ光に対する耐性を比較すると、、反射防止膜コートの方がコーティングの層数が少ないために、耐久性は高い。したがって、増幅段レーザ60でのレーザ出力の低下を防ぐために、ビームエキスパンダープリズム系61’を構成する三角プリズム62、63の部分反射ミラーコーティング10を施した面以外のレーザ光透過面には、反射防止コーティングを施してもよい。また、増幅段レーザ60での出力低下が問題にならないレベルであれば、そのようなコーティングを省いてもよい。
また、発振段レーザ50が狭帯域レーザの場合は、各プリズム62、63の部分反射ミラーコーティング10を施した面以外の各面は、リア側ミラー1の反射面及びその部分反射ミラーコーティング10を施した面との間で多重干渉を起こさないような角度に設置するようにすることが望ましい。この理由に関しては後述する(図11)。
図6に、図1のような配置の露光用2ステージレーザ装置に用いられる増幅段レーザ60のさらに別の実施例の上面図を示す。この実施例は、図4の実施例において、さらに、リア側ミラー1への照射エネルギ密度も低減させるために、ビームエキスパンダープリズム系61’と同様の構成のビームエキスパンダープリズム系61をレーザチャンバー3とリア側ミラー1の間に配置し、リア側ミラー1に照射されるレーザ光のエネルギ密度を、ビームエキスパンダープリズム系61が設置されていない場合と比較して低減し、リア側ミラー1のさらなる長寿命化、また、高出力レーザ発振が可能となるようにしたものである。
この場合も、反射防止コーティングと部分反射コーティングの紫外線レーザ光に対する耐性を比較すると、反射防止膜コートの方がコーティングの層数が少ないために、耐久性は高い。したがって、増幅段レーザ60でのレーザ出力の低下を防ぐために、ビームエキスパンダープリズム系61、61’を構成する三角プリズム62、63のレーザ光透過面には、反射防止コーティングを施してもよい。また、増幅段レーザ60での出力低下が問題にならないレベルであれば、そのようなコーティングを省いてもよい。また、発振段レーザ50が狭帯域レーザの場合は、各プリズム62、63の各面は、フロント側ミラー2及びリア側ミラー1の反射面との間で多重干渉を起こさないような角度に設置するようにすることが望ましい。この理由に関しては後述する(図11)。
図7に、図6の増幅段レーザ60の変形例を示す。この実施例においは、リア側ミラー1の機能をビームエキスパンダープリズム系61の最も外側の三角プリズム、図6では2個で構成するので三角プリズム63のseed光23入射側の面の、seed光23が入射する位置より光軸側に高反射率(全反射)ミラーコーティング8を直接施して兼ね備えさせ、リア側ミラー1を省いた例である。このような構成により、共振器の構成部品であるリア側ミラーを省くことが可能となり、レーザ装置のコスト低減が可能となる。
この場合も、反射防止コーティングと部分反射コーティングの紫外線レーザ光に対する耐性を比較すると、反射防止膜コートの方がコーティングの層数が少ないために、耐久性は高い。したがって、増幅段レーザ60でのレーザ出力の低下を防ぐために、ビームエキスパンダープリズム系61、61’を構成する三角プリズム62、63のレーザ光透過面には、反射防止コーティングを施してもよい。また、増幅段レーザ60での出力低下が問題にならないレベルであれば、そのようなコーティングを省いてもよい。また、発振段レーザ50が狭帯域レーザの場合は、各プリズム62、63の各面は、フロント側ミラー2及びリア側ミラー1の反射面との間で多重干渉を起こさないような角度に設置するようにすることが望ましい。この理由に関しては後述する(図11)。
図8に、図7の増幅段レーザ60の変形例を示す。この実施例においは、フロント側ミラー2の機能も、図5の実施例と同様に、ビームエキスパンダープリズム系61’の最も外側の三角プリズム、図7では2個で構成するので三角プリズム63の射出側の面に部分反射ミラーコーティング10を直接施して兼ね備えさせ、フロント側ミラー2を省いた例である。このような構成により、共振器の構成部品であるリア側ミラー、フロント側ミラーを省くことが可能となり、搭載光学部品の削減及びレーザ装置のコスト低減が可能となる。
図9に、図5や図8の実施例に用いるフロント側ミラーと兼用したビームエキスパンダープリズム系61’に用いる三角プリズム62、63の数値例を示す。それぞれの三角プリズム62、63、63’は螢石(CaF2 )で構成され、波長193.4nmのArFエキシマレーザ光に適用されるものとする。この波長におけるCaF2 の屈折率は、1.50196である。例えば、図9(a)は、1個の三角プリズム62でビームエキスパンダープリズム系61’を構成する場合で、三角プリズム62の射出側の面に部分反射ミラーコーティング10を直接施してビームエキスパンダープリズム系61’を構成し、部分反射ミラーコーティング10を透過して出力されるレーザ光を偏向して三角プリズム62に入射するレーザ光と平行にするために、三角プリズム62の出力側に同様の構成の三角プリズム63’を頂角が反対側に向くように配置している。ここで、三角プリズム62と63’頂角をそれぞれα1とα2とすると、α1=38.1°、α2=40.0°とし、三角プリズム62の斜面の入射角度θを67.9°とすることにより、三角プリズム62の部分反射面10の光の射出角度は0°となり、増幅段レーザ60のフロント側ミラー2としての機能を果たす。ここでのビーム拡大率は2.09倍となる。そして、三角プリズム63’の斜面への入射角度は、66.0°とて、三角プリズム62と三角プリズム63’を頂角が反対側に向くように配置している。三角プリズム63’の倍率は1.95倍となる。合計すると4.07倍となる。この方式のメリットは、1個のプリズム(三角プリズム62)によりフロントミラーを構成することによって、透過する面数が一か所となり、増幅段レーザ60の共振器内の損失を小さくできることと、2個のプリズム間の光の干渉を防ぐことができること。さらに、もう1個のプリズム63’により、ビームの射出方向を同じ方向に補正することができ、かつ、ビームを拡大することができため、増幅段レーザ60後の光学素子への損傷を防ぐことができることである。
図9(b)は、2個の多少異なる三角プリズム62、63でビームエキスパンダープリズム系61’を構成する場合で、三角プリズム62と三角プリズム63を頂角が反対側に向くように配置し、最も外側の三角プリズム63の射出側の面に部分反射ミラーコーティング10を直接施してビームエキスパンダープリズム系61’を構成している。ここで、三角プリズム62と63の頂角をそれぞれα1とα2とすると、α1=40.0°、α2=38.1°とし、三角プリズム62の斜面の入射角度を66.0°とすることにより、三角プリズム62の部分反射面10の光の出射角度は3.79°となる。ここでのビーム拡大率は1.95倍となる。そして、三角プリズム63の斜面への入射角度は、67.9°として、三角プリズム62と三角プリズム63を頂角が反対側に向くように配置すると、このプリズムの部分反射コート面10の射出角度は0°となり、出力側ミラーとしての機能を果たす。三角プリズム63の倍率は2.09倍となる。合計すると4.07倍となる。この実施例のメリットは、拡大率を約4倍にすることができるため、エネルギ密度が従来の場合の1/4以下となるので、部分反射コーティングの耐久性が図9(a)の実施例に比べて延びることである。この実施例では、三角プリズム62と63の垂直面が光軸に対して一致しないように設計している。この理由は、発振段レーザ50が狭帯域レーザの場合、上記2つの垂直面で光が干渉し、増幅されるレーザ光のスペクトルが分裂するためである。この実施例では、三角プリズム62及び63の頂角の多少異なるものを採用することによって、光の干渉を防いでいる。また、三角プリズム62の斜面と射出面と三角プリズム63の斜面には、反射防止コーティングを施すことにより、増幅段レーザ60の発振効率を高くすることができる。増幅段レーザ60の出力低下が問題にならないレベルであれば、一部又は上記全ての面において反射防止コーティングを施さなくてもよい。
また、図9(b)において、入射角度がブリュースタ角に近いプリズムを使用することにより、さらに効率の高い増幅段レーザ60の共振器を構成することができる。三角プリズム62と63の頂角をそれぞれα1=29.00°、α2=31.63°とし、三角プリズム62の斜面の入射角度をプリュースタ角の56.30°とすることにより、三角プリズム62の部分反射面10から光の射出角度は−0.122°となる。ここでのビーム拡大率は1.49倍となる。そして、三角プリズム63の斜面への入射角度は、51.94°として、三角プリズム62と三角プリズム63を頂角が反対側に向くように配置すると、このプリズムの部分反射コート面10の出射角度は0°となり、出力側ミラーとしての機能を果たす。三角プリズム63の倍率は1.38倍となる。合計すると2.06倍となる。この実施例では、三角プリズム62と63の垂直面が光軸に対して一致しないように設計する。この理由は、発振段レーザ50が狭帯域レーザの場合、上記2つの垂直面で光が干渉し、増幅されるレーザ光のスペクトルが分裂するためである。この実施例では、三角プリズム62及び63の頂角の多少異なるものを採用することによって、光の干渉を防いでいる。さらに、この実施例のメリットは、三角プリズム62及び63の斜面の入射角度は略ブリュースタの角度なので、コーティングを施さなくても反射ロスはほとんどなく、増幅段レーザ60の発振効率は高い状態で維持することができる。
図10に、入力側ミラー1の裏面からseed光23を注入した場合における増幅段レーザ60の共振器の上面図を示す。この実施例において、一対の放電電極4と5が紙面に垂直方向に配置されていて、放電領域22は紙面に対し垂直に生じている。図5の実施例に対して異なっている点は、入力側ミラー1の表面には、例えば反射率約90%の高い反射率の部分反射ミラーコーティング101が施されている。seed光23は入力側ミラー1の裏面から入力され、部分反射ミラーコーティング101によって10%透過し、ブリュースタ角で配置されたリア側ウインドー部材17を透過し、放電電極4及び5で形成される放電領域22を透過し、光増幅される。そして、フロント側ウインドー部材17を透過して、三角プリズム62を透過して、ビームが拡大され、三角プリズム63の斜面から入射し、垂直面に施された部分反射ミラーコーティング10によって一部透過し、レーザ出力光として出力され、残りの光は反射され、再び三角プリズム63及び62を透過して、フロント側ウインドー部材17に入射する。フロント側ウインドー部材17を透過した光は、レーザの放電領域22を透過することにより光が増幅される。リア側ウインドー部材17を透過した光は、再び入力側ミラー1の部分反射ミラーコーティング101により90%反射されて、再びレーザチャンバー3に戻される。このようにして、seed光23を増幅段レーザ60の共振器に注入することにより、MOPO動作が可能となる。この実施例では、ビーム拡大光学系をフロント側のビーム拡大光学系61’として設置した場合の例を示したが、これに限定されることなく、図6の実施例と同様、リア側にビーム拡大光学系61を配置してもよい。これにより、入力側ミラー1の部分反射ミラーコーティング101の耐久性を向上させることができる。
図11に、増幅段レーザ60の共振器内の面で光の干渉が発生した場合のスペクトルの形状の悪化と出力変動の原理図を示す。図11(a)は、図10の実施例に対して、出力側ミラー2として、コーティングを施していないCaF2 の平行平面基板を出力側ミラー2とした場合の増幅段レーザ60の例である。この場合の出力側ミラー2の反射率は光の干渉のため、波長依存性を示す。図11(b)には、この出力側ミラー2の反射率の波長依存性を細線で示す。例として、厚さdのCaF2 平行平面基板の反射率は、波長に対して周期的に0〜約18%の間で変化する。この周期フリースペクトラルレンジ(FSR)は、基板の厚みdと基板の屈折率nと波長λとから計算することができる。すなわち、FSR=λ2 /(2nd)。ここで、波長λ=193nm、基板厚みd=14mm、CaF2 の屈折率n=1.50196とすると、フリースペクトラルレンジは0.89pmとなる。図11(b)の破線と太実線は、それぞれ、出力側ミラー2の表面に部分反射ミラーコーティング10を施した場合のスペクトルプロファイルと、ノーコート平行平面基板の場合のスペクトルプロファイルを示す。出力側ミラー2がノーコート平行基板の場合(太実線)は、スペクトルプロファイルが分裂した形となる。この原因を以下に説明する。
出力側ミラー2の反射率が0になると、この増幅段レーザ60は単にseed光23を増幅するのみの機能となり、1パスのMOPAの出力となる。この場合、単なる増幅としての機能となるので、レーザ出力は低下する。一方、出力側ミラー2の反射率が増加するにつれて、seed光23が増幅段レーザ60において光共振して出力するMOPO動作となり、増幅段レーザ60の出力は増加する。このように、波長によって、MOPA動作とMOPO動作が起きるため、スペクトル形状は大きく変化し、レーザ出力も大きく変動する。この例では、出力ミラー2の両面で光の干渉をした場合を示したが、例えば、三角プリズム62及び63の垂直面が増幅段レーザ60の光共振器の光軸と一致すると、同様な光の干渉が発生するため、光共振器との光軸を外す必要がある。
ところで、以上のように1個以上の三角プリズム62、63から構成され、一方の斜面に斜めに入射させ、他方の面から略直角に射出させるビームエキスパンダープリズム系61、61’を、レーザチャンバー3と出力側ミラー2の間、及び、レーザチャンバー3とリア側ミラー1の間に配置してレーザビームの径を拡大することによって、ミラー1、2に照射されるエネルギ密度を損傷閾値以下に落とす場合、波長によりプリズムの屈折率が変化するため、図4の場合と例にとると、レーザチャンバー3側から進行してくる光が出力側ミラー2の部分反射ミラーコーティング10へ入射する角度が波長により相違することになってしまう。したがって、その入射角度がある波長では垂直であったとしても、他の波長へ変更すると、部分反射ミラーコーティング10への入射角度が垂直ではなくなるため、部分反射ミラーコーティング10で反射した光は入射光軸とは相違する軸に沿ってレーザチャンバー3方向へ戻る。その反射光がプリズム62、63内部を透過すると、軸ずれは一層大きくなって放電領域22内へ戻る率も低下し、レーザ出力が減少してしまうという問題点がある。図12に、ビームエキスパンダープリズム系(ビーム拡大光学系)61’を使用した場合の出力の波長依存性を示す。中心波長が100pm変化すると、出力が半減することが分かる。また、三角プリズム62、63の垂直面では、ビームサイズの拡大率が小さいため、照射エネルギ密度が高く、この表面が損傷してしまうという問題点があることも分かった。
以下、本発明の別のビーム拡大光学系による出力の波長依存性を減少させる構成の原理と実施例について説明する。また、三角プリズムの垂直面の損傷リスクを減らすために、その面における照射エネルギ密度を下げる実施例についても説明する。
前記したように、ガスレーザ装置は、レーザ媒質(レーザガス)を励起する電極や電源、レーザ媒質となる数種類のガス、光を増幅させるための共振器からなる。一般的に、電極が配置されているレーザチャンバーの両端に共振器となるミラーを配置する。レーザ媒質となるガス(ArFエキシマレーザの場合は、F2 ガス、Arガス、希釈ガスとしてNeやHeガス)をチャンバー内に封入して、その中に対向して取り付けられた放電電極間に高電界を印加し、そこで放電させる。放電によってガスは励起され、レーザ媒質(ArFエキシマレーザの場合は、ArF* エキシマ分子)が生成される。放電電極は細長い形状をしているため、利得(ゲイン)領域はその電極長手方向に長い形状をしている。一般的に、幅は数mm、高さは数〜十数mm、長さは数百mmのサイズである。レーザ媒質から自然放出された光は、この細長いゲイン領域を数〜十数回往復して増幅されることによって、レーザ発振する。光を往復させるために、両端に共振器であるミラーが配置されている。このミラーによって、同一軸上を光が往復してレーザ出力される。このレーザ光が増幅されるために、光が往復する同一軸上をレーザ光軸と呼び、ゲイン分布を発生させる電極の長手方向の軸上にある。
光学素子において、素子内部を通過する光の波長によってその屈折率が変化する。例えば、ArFエキシマレーザやF2 レーザでは、光学素子としてCaF2 を用いるが、CaF2 の屈折率n(λ)は、
n(λ)=1.7865829 −1.949727×10-3λ+2.4708935 ×10-6λ2
で表せることが知られている。
このように、レーザ光の波長が変化すると、それに応じて光学素子の屈折率も変化する。図13に、三角プリズムPrにおいて、波長によりビーム光路がずれる様子を示す。図13の中央のレーザ光路bをレーザ光軸とする。いま、このレーザ光軸上から光が三角プリズムPrに入射した後、ミラーMiで反射して戻ってくる場合を想定する。この図では、λ0 の波長に対してビーム拡大光学系が設計されており、λ0 の波長に対しては、反射光のビーム光路は、入射光の光路と同一のレーザ光軸上に戻ってくる。このような設計のとき、λ0 より短波長の光(λ0 −dλ)が、光路bからプリズムPrに入射すると、プリズムPrの屈折率がn(λ0 −dλ)>n(λ0 )となるので、図中のaの光路上に返ってくる。レーザ媒質のゲイン領域(電極の長手方向)は、bのレーザ光軸上にあるため、反射光がレーザ光軸bから外れると、その光は増幅されず、減衰して出力が低下することになる。そのため、aの光路上に戻る波長λ0 −dλの光は、減衰する。同様に、λ0 より長波長の光(λ0 +dλ)が、光路bからプリズムPrに入射すると、プリズムPrの屈折率がn(λ0 +dλ)<n(λ0 )となるので、図中のcの光路上に返ってくる。この場合も、レーザ光軸bから外れているため、波長λ0 +dλは、減衰する。
この出射角のずれ量は、プリズムPrの頂角の大きさに依存する。頂角が小さいと、角度ずれ量は小さく、頂角が大きいと、角度ずれ量も大きい。
上述の通り、レーザ光は、通常、数〜十数回共振器内を往復してレーザ媒質内で誘導放出により光が増幅されて出力される。そのため、レーザ光として取り出すためには、途中でレーザ媒質のあるゲイン領域から外れてはならない。レーザゲイン領域には、電極幅分の幅があるから、その幅からレーザ光路が外れなければよいが、図13のように大きな角度ずれが発生すると、共振器内部を光が往復する回数の増加と共にゲイン領域から外れてしまう。これが、以上のような一方の斜面に斜めに入射させ、他方の面から略直角に射出させる三角プリズム62、63からなるビームエキスパンダープリズム系61、61’を用いたときに、出力の波長依存性が発生する原因である。
出力の波長依存性が発生しないようにするためには、上述の角度ずれを補正すればよい。そこで、図14に示すように、共振器の反対側にその角度ずれを補正するものを配置してやればよい。その方法としては、図13のミラーMiを出力側とすると、出力側に配置した三角プリズムPrとミラーMiの構成をそのまま、左右上下反転させてリア側に配置する方法がある。同じ構成・形状、同じ材質、同じ入射角なので、角度ずれの大きさは同じある。かつ、反転しているので、角度ずれの方向が逆転する。結果として、リア側から反射して戻ってきた光の光路は、レーザ光軸bと平行になっている。ゲイン領域内をビームが通過する位置は若干ずれるが、角度ずれが補正されるため、補正前に比べてゲイン領域から光が外れ難くなる。
もう1つの方法として、ウェッジ基板をビーム拡大光学系の素子として使用すると、ビーム拡大光学系を光が通過することによる角度ずれを小さくすることができる。図15に、ウェッジ基板Weを用いた場合のビーム拡大光学系の様子を示す。これは、三角プリズムPrの頂角を小さくし、両斜面に斜めに入射させる場合に相当する。ウェッジ角αとしては数〜十数°であり、そのため、反射して返ってきた光の角度ずれ量は小さい。ウェッジ角が0°のときは、角度ずれは0°になり、入射光軸上に戻ってくる。ただし、ウェッジ角が小さいと、必要なビーム拡大率が得られ難くなるため、ビーム入射角を三角プリズムの場合に比べて大きくする必要がある。
図16に、ビーム拡大光学系におけるレーザ光路の入射角、頂角、偏角の関係を示す。図示するように、レーザ光がレーザ光軸上からウェッジ基板Weに入射角θ1 で入射すると、ウェッジ基板Weの屈折率n(λ)の値に依存して図示するような角度θ2 、θ3 、θ4 で屈折してウェッジ基板Weから出射される。ウェッジ基板Weから出射されるビームの方向は、ウェッジ基板Weに入射する前のレーザ光軸とは角度β°だけずれている。
いま、ウェッジ基板Weの頂角(ウェッジ角)をα、光学素子の屈折率をn(λ)、ウェッジ基板Weが置かれている雰囲気ガスの屈折率をn’(空気の場合は、n’=1、一般的にパージガスとして使用される窒素ガスの場合は、n’=1.00032178)、レーザの中心波長をλ0 とすると、
n’sinθ1 =n(λ0 )sinθ2 ・・・(1)
n(λ0 )sinθ3 =n’sinθ4 ・・・(2)
θ3 =θ2 −α ・・・(3)
β=θ1 −θ2 +θ3 −θ4 ・・・(4)
の関係式で書き表すことができる。ここでの(1)、(2)式はスネルの法則に基づくものである。
いま、波長λ0 の場合に、ビーム拡大光学系に入射するレーザ光軸とミラーMiとがなす角度は、90−β°となる。
また、このとき、ビーム拡大率M(上記ではAを使用したが、ここではMを使用する。)は、
M=(cosθ2 ・cosθ4 )/(cosθ1 ・cosθ3 ) ・・・(5)
の式で書き表すことができる。
レーザ波長がλ0 であれば、ミラーMiで反射したレーザ光は、ビーム拡大光学系に入射する前のレーザ光軸上に戻される。しかし、レーザ波長がλに変化した場合は、前述したように、ウェッジ基板Weの屈折率が波長依存性を持つため、その出射角が変化する。ウェッジ基板Weから出射されるビームの方向が、ウェッジ基板Weに入射する前のレーザ光軸と角度β’°になるとすると、ミラーMiへの入射角は垂直ではなくなり、β’−β°になる。このため、ミラーMiで反射した光はレーザ光軸から外れ、図示するように、ウェッジ基板Weへの入射光軸と偏角γ°で出射される。このとき、ミラーMiで反射してビーム拡大光学系に再入射するときの角度を、図示するように、θ1'、θ2'、θ3'、θ4'とすると、
n’sinθ4'=n(λ)sinθ3' ・・・(6)
n(λ)sinθ2'=n’sinθ1' ・・・(7)
θ4'=θ4 +β’−β ・・・(8)
θ2'=θ3'+α ・・・(9)
γ=θ1'−θ1 ・・・(10)
の関係式で書き表すことができる。以上の関係式を用いて、偏角γの頂角α依存性を計算すると、図17に示す結果となる。ここでは、中心波長λ0 =193.368nm、入射角θ1 =52.35°、頂角α°の条件でミラーMiで反射したレーザ光が入射光軸上に戻るように配置したとき、波長をλ=193nm及びλ=193.7nmに変化させた場合に偏角γがどうなるかを計算している。なお、図中に示された直角プリズムは、図13の三角プリズムPrの場合を示している。
この結果、波長がずれた場合、頂角αが小さくなるに従って、偏角γが小さくなっていくことが分かる。頂角α=0°のとき、偏角γは0°になる。入射角が52.35°のときに、直角プリズムPrになるための頂角の値は、α=θ2 であるから、α=31.82°になる。このときの偏角γは0.035°程度あるが、頂角を5°以下にすることによって、偏角を0.01°以下に減少させることができる。
同条件のモデルにおいて、拡大率を計算した結果を図18に示す。頂角を小さくすると偏角が小さくなるが、図18に示すように、拡大率も小さくなることが分かる。そのため、同じ拡大率にするために、頂角を小さくする場合には、入射角を大きくする必要がある。なお、拡大率の頂角依存性には、レーザ波長の影響が小さいことも分かる(図18では、3つの波長λ0 =193.368nm、λ=193nm及びλ=193.7nmの曲線が重なっている。)。
図19には、拡大倍率Mの入射角θ1 依存性を示す。図中には、直角プリズム(各入射角に対して、直角プリズムになるように、各頂角もα=θ2 として各々計算した。)と、小頂角の代表として頂角α=4.45°の場合について示している。前述と同じ入射角θ1 =52.35°の場合、直角プリズムでは、拡大率Mは1.37倍になる。頂角を小さくしたときに、この倍率を同じ倍率にするために、例えば、頂角を4.45°にする場合には、入射角を67.1°にしてやればよい。ここで、頂角を4.45°で計算しているが、頂角が4.45°よりさらに小さくした場合では、必要な入射角は67.1°以上になるし、頂角が4.45°より大きくてもよい場合では、入射角は67.1°以下にできる。
ここで、入射角を大きくしているが、偏角は入射角を大きくすることによって多少大きくなる。図20には、偏角γの入射角θ1 依存性を示す。図19と同様に、直角プリズムの場合と頂角4.45°の場合について図示してある。波長は、λ=193.0nmとλ=193.7nmの場合について、それぞれ示す。偏角は、入射角が大きくなると大きくなるが、頂角が小さい場合は、その影響は小さく、ほとんど変化しない。そのため、入射角を大きくしたとしても、頂角を小さくすることによる偏角の減少効果の方が大きくなる。図20で示すように、拡大倍率1.37倍のとき、直角プリズムの場合の偏角は0.036°に対して、頂角4.45°の場合は0.01°と小さくなる。ここでは、ウェッジ基板Weの代表として、頂角(ウェッジ角)4.45°の場合について示したが、異なる頂角であっても、直角プリズムの頂角より小さければ、その効果は同じであり、同拡大率において、偏角を小さく、つまり、出力の波長依存性を小さくすることができる。
また他の方法として、波長が変化したら、それに合わせてビーム拡大光学系へのビーム入射角を変えて、ビーム光路がずれないように制御する方法がある。図21にその方法を示す。図21(a)が、波長がdλだけ長波長に変化したときの制御で、図21(b)が、波長がdλだけ短波長に変化したときの制御である。波長λ0 に対して設計されている三角プリズム式ビーム拡大光学系(図13)において、波長がλ0 +dλに変化したとする。この場合、図21(a)中に実線で表した光路に沿って角度がずれる。そのときのプリズムPr内での角度ずれをθとする。この角度変化θがなくなるように、入射角をθ変化させてやれば、点線で表した光路上に変化する。入射角を変化させるために、プリズムPrの位置を回転させてやる。このときの回転の中心は、ビームの入射点とする。波長がλ0 −dλの短波長に変化した場合(図21(b))も同様で、今度は逆方向にプリズムPrをθだけ回転させてやれば、角度ずれを補正して、レーザ光軸b上に戻してやることができる。
また、波長が変化したら、それに合わせて、出力側ミラーMiあるいはリア側ミラーMiのあおり(角度)を、ビーム光路がずれないように制御する方法もある。原理は図21の場合と同様で、中心波長が変化することによって、ミラーMiに到達する光の進行方向がミラーMiに垂直でなくなるので、これが垂直になるようにミラーMiのあおり角を調整してやることによって、ミラーMiでの反射光をレーザ光軸上に戻してやることができる。
次に、以上のような出力の波長依存性が発生しないようにする方法を利用した実施例を以下に説明する。
図22(a)、(b)に、図6、図7に対応する実施例であって、図14の方法を利用した実施例の上面図を示す。この実施例は、チャンバー3の両端のリア側と出力側ビーム拡大光学系(BEX)61、61’に三角プリズム式ビーム拡大光学系を配置した実施例である。前記したように、出力の波長依存性を無視できる程度に小さくするため、リア側ビーム拡大光学系61の三角プリズム62、63の組の配置を出力側ビーム拡大光学系61’の三角プリズム62、63の組の配置に対して上下左右反転させている。このような配置により、波長が変化しても、出力側ビーム拡大光学系61’を通過した後に変化したビームのレーザ光軸からの角度ずれは、リア側ビーム拡大光学系61を透過することによってなくす(相殺する)ことができる。これによって、出力の波長依存性が緩和される。なお、図22(a)、(b)のそれ以外の構成部品は以上の説明から明らかであるので説明は省く。
図23には、出力側のみに三角プリズム式ビーム拡大光学系61’を配置したときと、リア側にも180°回転対称な三角プリズム式ビーム拡大光学系61を配置したときの、出力の波長依存性を示す。これで、例えば、±100pm波長が変化した場合、片側ビーム拡大光学系配置では出力が半減してしまうが、両側ビーム拡大光学系配置では、出力は数%の減少ですむことが分かる。この程度の出力減少であれば、放電電極4と5への印加電圧やチャンバー3のガス圧力を増加させることで、一定出力に制御することが可能となる。
図22(b)は、出力側のビーム拡大光学系61’の2個目(外側)の三角プリズム63の垂直面に部分反射ミラーコーティング10を成膜して、出力側ミラーの代わりにしている。また、リア側のビーム拡大光学系61の2個目(外側)三角プリズム63の垂直面には、90%付近の反射率を持つ部分反射ミラーコーティング10を成膜して、リア側ミラーの代わりにしている。部分反射ミラーコーティング10に照射するレーザ光の単位面積当たりのピークエネルギ(照射ピークフルエンス; mJ/cm2 )が損傷閾値及び歪みの閾値を超えないように、ビーム拡大光学系61、61’の拡大率を設定している。この場合、ビーム拡大光学系の拡大率は、出力側及びリア側のビーム拡大光学系61、61’で同じなので、どちらか照射フルエンスの高い方の拡大率に合わせている。ここで、使用する部分反射ミラーコーティング10、反射防止コーティング9は、MgF2 、GdF3 、LaF3 、Al2 O3 、AlF3 といった薄膜を多層又は単層に成膜して製作される。成膜方法としては、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法(EB)、イオンビームスパッタリング法(IBS)等がある。
なお、この方式は、三角プリズム式のビーム拡大光学系61、61’以外でも有効であり、ウェッジ基板式のビーム拡大光学系でも使用できる。
次に、図24に、図4、図6に対応する実施例であって、図16のウェッジ基板を使用した方法を利用した実施例(a)と図16と図14を組み合わせた実施例(b)の上面図を示す。
ウェッジ基板92を使用することにより、出力の波長依存性を小さくすることができる。図24(a)は、レーザチャンバー3とフロント側ミラー2の間に、1個のウェッジ基板92からなるビーム拡大光学系91’を配置した場合であり、図24(b)は、レーザチャンバー3とリア側ミラー1の間にも1個のウェッジ基板92からなるビーム拡大光学系91を配置した両側ビーム拡大光学系配置の場合である。図24(b)の場合、リア側ビーム拡大光学系91のウェッジ基板92の配置を出力側ビーム拡大光学系91’のウェッジ基板92の配置に対して上下左右反転させている。片側にウェッジ基板を使用したビーム拡大光学系91’を配置するだけ(図(a))でも出力の波長依存性は小さくできるが、両側にウェッジ基板を使用したビーム拡大光学系91、91’を配置することによって、さらに出力の波長依存性を小さくすることが可能である。この構成では、ウェッジ基板が1枚なので、構造がシンプルで、ビーム拡大光学系91、91’を挿入することによる共振器長の増加も小さくできるメリットがある(共振器長が増加すると、レーザ出力が減少することは知られている。)。しかし、図24(a)、(b)に図示するように、出力側ミラー2から出力されるレーザ光は、レーザチャンバー3内のレーザ光軸から図16における偏角β°だけ傾いている。このため、この偏角を補正するために、出力側ミラー2の後に補正用の光学系が必要になるというデメリットがある。
図25(a)、(b)は、各ビーム拡大光学系91、91’中に2枚のウェッジ基板92、93を使用して構成した図24(a),(b)に対応する実施例である。それぞれのビーム拡大光学系91、91’中の2枚のウェッジ基板92、93は同一のものであり、2枚目のウェッジ基板93は1枚目のウェッジ基板92に対して上下反転させて「ハ」の字型に配置して、ビーム入射角が同一になるように配置している。このように配置することによって、ビーム拡大光学系91、91’出射後のレーザ光軸をビーム拡大光学系91、91’入射前のレーザ光軸と平行にする(偏角β=0 °)ことができる。この原理を図26を用いて説明する。図26は、2 枚のウェッジ基板92、93にレーザ光が入射した場合のレーザ光路を示している。2個目のウェッジ基板93上のビーム光路の角度は、図示するように、θ5 、θ6 、θ7 、θ8 とし、1個目のウェッジ基板92からの出射光のビーム偏角をβ1 、2個目のウェッジ基板93からの出射光のビーム偏角をβ2 とすると、
β1 =θ1 −θ2 +θ3 −θ4 ・・・(11)
β2 =θ1 −θ5 +θ6 −θ7 +θ8 ・・・(12)
となる。いま、2個目のウェッジ基板93は1個目のウェッジ基板92と形状が同じで、上下反転させて入射角を同じ(θ5 =θ1 )という条件にすると、
θ5 =θ1 ・・・(13)
θ6 =θ2 ・・・(14)
θ7 =θ3 ・・・(15)
θ8 =θ4 ・・・(16)
α1 =α2 ・・・(17)
が成り立つ。これらの(13)〜(17)式を(12)式に代入してやると、
β2 =0 ・・・(18)
となる。つまり、上述の条件にすれば、偏角を0にして、出射されるレーザ光の光軸をチャンバー3内のレーザ光軸と平行にすることができる。
ビーム拡大光学系91、91’中にウェッジ基板92、93を2個使用することの他のメリットとして、1枚で得られる拡大率を2倍にすることができるということがあげられる。また、波長分散の方向が2枚で逆向きなので、分散の影響を弱める配置である。ただし、枚数が増加すると、共振器長が増加して出力が減少する可能性もあることから、このビーム拡大光学系91、91’は小さく作ることが必要である。
図24、図25のようなビーム拡大系91、91’により、出力側ミラー2の反射防止コーティング9及び部分反射ミラーコーティング10に照射されるピークフルエンスを損傷閾値以下に低減させることができる上、波長の角度分散の小さい構成であることから、出力の波長依存性を無視することができる。
図27は、ウェッジ基板を使用したウェッジ基板式ビーム拡大光学系と三角プリズムを使用した三角プリズム式ビーム拡大光学系の出力の波長依存性を示す図であり、ビーム拡大光学系は両者共出力側のみに配置した場合であり、ビーム拡大光学系による拡大率は両者共1.87倍である。三角プリズム式の場合、入射角が52.35°、頂角が31.82°である。ウェッジ基板式の場合は、入射角が67.1°、ウェッジ角が4.45°である。ウェッジ基板式の方が拡大率をかせぐために入射角が大きくなっている。図27より、同じ拡大率であっても、ウェッジ基板式の方が出力の波長依存性が小さいことが分かる。この場合、例えば、±100pm波長が変化した場合、片側にビーム拡大光学系を配置する場合では、出力が半減してしまうが、両側にビーム拡大光学系を配置する場合は、出力は数%の減少ですむことが分かる。
また、図25(b)は、このウェッジ基板式ビーム拡大光学系91をリア側にも、フロント側のビーム拡大光学系91’に対して上下左右反転して配置した場合の例を示す。この系では、両側ビーム拡大光学系とウェッジ基板式を組み合わせていることによって、さらに出力の波長依存性を小さくすることができる。この方式では、リア側ミラー1の高反射率の部分反射ミラーコーティング10に照射するピークフルエンスが損傷閾値以上である場合にも、照射ピークフルエンスを拡大率分だけ減少させることが可能であるため、有効である。この配置の場合の、出力の波長依存性を図28に示す。図28より分かるように、193nm〜193.7nmの範囲で波長依存性がなくなっている。この方式は、波長を大きく変化させる場合に有効であることが分かる。
このウェッジ基板92、93の入射角は、そのP偏光反射率が0になるブリュースタ角角(ArFレーザ波長193.368nmの場合は、56.34°、F2 レーザ波長157.63nmの場合は57.32°)よりも大きくなることが多い。この場合は、その入射角においてP偏光反射率が無視できる程度にする反射防止膜を表面に付けることが必要である。例えば、ビーム拡大率2.0倍のビーム拡大光学系を設計した場合、入射角68.7°、ウェッジ角4.4°となる。また、ウェッジ基板裏面の入射角は60.0°となる。60.0°の入射角のP偏光反射率は0.2%なので、この面は反射防止膜を付ける必要はないが、第1面は68.7°であるので、反射防止膜を付ける必要がある。
また、ビーム拡大光学系の設計においては、ビーム拡大光学系自身が損傷を受けないようにする必要がある。前述の三角プリズム式ビーム拡大光学系61、61’の場合は、その三角プリズムの垂直面のビーム照射エリアが斜面のそれより小さくなり、照射ピークフルエンスが高くなる。特に拡大率の低い第1プリズム62の垂直面の照射ピークフルエンスが高いため、三角プリズム式では、レーザ出力エネルギが高い場合、そこが損傷を受ける可能性がある。しかし、このウェッジ基板式の場合は、三角プリズム式と比べて、垂直面に相当する部分がウェッジ基板の斜面で光を受けているので、照射エリアが大きく、照射フルエンスを小さくすることが可能である。ビーム拡大光学系の設計においては、拡大率と共に、各ビーム拡大光学系の三角プリズム又はウェッジ基板の表面が損傷閾値以下になるように設計する必要がある。
次に、ウェッジ基板式ビーム拡大光学系91、91’中の一方のウェッジ基板92をチャンバー3の端部のウィンドー部材として兼用させる実施例を説明する。図29(a)、(b)は図25(a)、(b)に対応する実施例であり、図29(a)は、出力側のみビーム拡大光学系91’を配置する場合、図29(b)は、リア側にもビーム拡大光学系91を配置する場合である。何れも、ウェッジ基板式ビーム拡大光学系91、91’の一方のウェッジ基板92をウィンドー部材として使用してチャンバーウィンドー兼ウェッジ基板94とした例を示す。この方式では、実質チャンバー3のウィンドー部材17に使用してきた素子を1枚又は2枚減らすことができるため、光学素子における光の損失を1枚又は2枚分なくすことができ、また、光学素子1枚又は2枚分のコストを低下させることができる。また、共振器長も素子1枚又は2枚分短くすることができるため、出力が増加するメリットもある。
図30(a)、(b)は図29(a)、(b)に対応する実施例であり、図30(a)は、出力側のみビーム拡大光学系91’を配置する場合、図30(b)は、リア側にもビーム拡大光学系91を配置する場合である。この実施例は、ウェッジ基板式ビーム拡大光学系91、91’を全てチャンバー3内部に入れて、他方のウェッジ基板93をチャンバーウィンドー兼ウェッジ基板94として使用する場合の例である。このようにすることによって、外見上シンプルな構造にすることができる。また、ウェッジ基板式ビーム拡大光学系91、91’の素材として使用できるCaF2 は、レーザ照射によってその表面のF原子が脱離する。そのため、F2 ガス雰囲気中に曝しておくことによって、抜けたF原子の部分が補填され、損傷され難くなることが知られている(非特許文献1)。このため、ビーム拡大光学系91、91’をチャンバー3内部に入れることによって、ビーム拡大光学系91、91’自身の損傷閾値を向上させることができるというメリットがある。
以上の他に、出力の波長依存性を低減してレーザビームの径を拡大する構成として、負パワーと正パワーのシリンドリカルレンズあるいは回転対称レンズを相互に焦点が合うように配置して(望遠系となるように配置して)、ビーム径を拡大する方法がある。負パワーのレンズでビーム径又は幅を拡大し、負パワーのレンズの後に置かれた正パワーのレンズによって平行光に戻している。この配置では、波長は角度分散しないので、出力の波長依存性はない。ただし、レーザ光軸に対して垂直にレンズを配置した場合、レンズにおける照射フルエンスが高く、レンズ自身が損傷を受ける可能性もある。照射フルエンスを減少させるために、負パワーのレンズの代わりに凹面鏡を傾けて配置してもよいが、その場合には収差が大きくなるデメリットが生じる。
次に、図21の波長変化に応じてビーム拡大光学系へのビーム入射角を制御することで光路がずれないようにする実施例を説明する。
図31は、ビーム拡大光学系の入射角を制御して波長により角度ずれ自身が発生しないようにする方式の例である。この図31では、三角プリズム式ビーム拡大光学系61’を用いるものとしているが、ウェッジ基板式ビーム拡大光学系を用いる場合も同様に適用でき有効である。この制御を可能にするため、ビーム拡大光学系61’を構成する光学素子62、63は回転できる機構を設ける(図31では三角プリズム62、63を支持する回転ステージ111、112を設けている。)。メインコントローラ105で、波長の変化を感知したら、回転ステージコントローラ106に信号を送って、波長変化に相当する角度分三角プリズム62、63を回転させてやり、入射角を制御する。モニタモジュール107を出力側ミラー2の出力側に配置して、その中のエネルギセンサー又はスペクトロメータ108で出力レーザ光のエネルギ又はスペクトルを計測して、出力光の最大透過波長が目的の波長λになるように、入射角を微調整するフィードバック制御をしている。
このようにして、波長が変化したとしても、光軸を調整することにより、常にレーザビームはゲイン領域のあるレーザ光軸上を通過するようにして、出力低下を防ぐことができる。
図32は、共振器を構成するミラーのあおり(角度)を制御して波長により角度ずれ自身が発生しないようにする方式の例である。この図32では、三角プリズム式ビーム拡大光学系61’を用いるものとしているが、ウェッジ基板式ビーム拡大光学系を用いる場合も同様に適用でき有効である。この制御を可能にするため、出力側ミラー2にはあおり制御機構110を設ける。メインコントローラ105で、波長の変化を感知したら、出力側ミラーコントローラ109に信号を送って、あおり制御機構110を介して波長変化に相当するあおり量を制御する。モニタモジュール107を出力側ミラー2の出力側に配置して、その中のエネルギセンサー又はスペクトロメータ108で出力レーザ光のエネルギ又はスペクトルを計測して、出力光の最大透過波長が目的の波長λになるように、あおり量を微調整するフィードバック制御をしている。
このようにして、波長が変化したとしても、光軸を調整することにより、常にレーザビームはゲイン領域のあるレーザ光軸上を通過するようにして、出力低下を防ぐことができる。
なお、図32では、出力側ミラー2のあおり角度を制御する方式をとっているが、リア側ミラー1のあおり角度を制御しても同様の効果が得られる。
以下、図31、図32の方式における制御を説明する。図33には、その制御フローチャートのメインルーチンを示す。ステップST1で、露光装置100(図2)から、中心波長をλにする指令をレーザ装置が受信したら、発振段レーザ50のシード光の中心波長をλにするサブルーチンST2を実施する。図示しないが、波長変化の方法としては、狭帯域化モジュール51内の拡大プリズムの入射角やグレーティング(回折格子)の入射角、又は、フロントミラー52のあおり角を変化させる方法がある。この後、増幅段レーザ60の最大透過波長をλに合わせるサブルーチンST3を実施する。
図34〜図37にこれらサブルーチンST3の例を示す。以下、順に説明する。
図34は、ビーム拡大光学系61’の光学素子(三角プリズム62、63)の入射角を制御する場合のサブルーチンを示す。まず、ステップST11で、メインコントローラ105で波長λに対応する回転角θを計算する。θの値は、光学素子62、63の材料における屈折率の波長依存性の式とスネルの式とから求めることができる。そして、ビーム拡大光学系の回転ステージ111、112に角度θの値を指令する。次に、ステップST12で、この指令値に従って回転ステージ111、112をθ制御する。次に、レーザ出力が最大になるように角度θを微調整する。まず、ステップST13で、パラメータNを0にする。次に、ステップST14で、モニタモジュール107でレーザ出力を計測し、パラメータEの値を計測値E1とする。ここで、パラメータEは、微調整前のエネルギ値を意味する。次に、ステップST15で、回転ステージ111、112を微少量k・dθ回転させる。係数kの値は、予め最適値を設定しておく。kの値がマイナスの場合は、逆方向に回転することとする。次に、ステップST16で、モニタモジュール107でレーザ出力を再計測し、パラメータE’の値を計測値E2とする。ここで、パラメータE’は、微調整後のエネルギ値を意味する。次に、ステップST17で、E’>Eかどうかを判定する。E’>Eの場合は、微調整によってレーザ出力が増加する方向であるので、ステップST18で、パラメータEの値をE’にして、ステップST15に戻って再度回転ステージ111、112を微少量k・dθ回転させるルーチンを行う。ステップST17で、E’<Eと判定される場合は、エネルギが減少したことを意味するので、既に出力ピークの位置にあったか、制御方向が逆であったことを示す。ここで、ステップST19で、パラメータNを判定する。Nの値は、E’<Eとなった回数を示している。N=0の場合、つまり、初めて調整後にエネルギが減少したときである。この場合は、位置を元の状態に戻さなくてはいけないので、ステップST20で、回転方向を逆するするためkの符号を反転させる(k=k×(−1))。そして、パラメータNの値を1にして、パラメータEの値をE’にする。そして、ステップST15に戻って再度回転ステージ111、112を微少量k・dθ回転させるルーチンを行う。N=1の場合は、以前に、調整の方向を逆転させた履歴があることを意味する。元々微調整する前の段階で、出力ピークの位置にあった場合、1回微調整することで出力が減少し、そのため、調整方向を反転して、ピークに向かって調整していき、さらにピークを通りすぎたことによって、出力が2回目の減少を示したときを意味する。又は、最初の微調整の方向が逆で、出力が減少したため、調整方向を反転して、ピークに向かって調整していき、さらにピークを通りすぎたことによって、出力が2回目の減少を示したときを意味する。何れの場合も、ピークを1調整分オーバーした位置にあることになるため、最後に、ステップST21で、調整の方向を逆転(k=k×(−1))させ、ステップST22で、回転ステージ111、112をk・dθ回転させる。この位置でエネルギピークになっている。
図35は、共振器を構成するミラーのあおり角を制御する場合のサブルーチンを示す。まず、ステップST31で、メインコントローラ105で、波長λに対応するあおり量xを計算する。xの値は、光学素子62、63の材料における屈折率の波長依存性の式とスネルの式とから、ミラー(この場合は、出力側ミラー2)の垂直方向とレーザ光のミラーへの進行方向の角度差αを計算し、その角度α分のあおり量xを計算する。そして、出力側ミラーあおり調整機構110にあおり量xの値を指令する。次に、ステップST32で、この指令値に従って出力側ミラー2のあおり量をx制御する。次に、レーザ出力が最大になるようにあおり量xを微調整する。まず、ステップST33で、パラメータNを0にする。次に、ステップST34で、モニタモジュール107でレーザ出力を計測し、パラメータEの値を計測値E1とする。ここで、パラメータEは、微調整前のエネルギ値を意味する。ステップST35で、あおり制御機構110を微少量k・dx回転させる。係数kの値は、予め最適値を設定しておく。kの値がマイナスの場合は、逆方向に回転することとする。次に、ステップST36で、モニタモジュール107でレーザ出力を再計測し、パラメータE’の値を計測値E2とする。ここで、パラメータE’は、微調整後のエネルギ値を意味する。次に、ステップST37で、E’>Eかどうかを判定する。E’>Eの場合は、微調整によってレーザ出力が増加する方向であるので、ステップST38で、パラメータEの値をE’にして、ステップST35に戻って再度あおり調整機構110を微少量k・dx回転させるルーチンを行う。ステップST37で、E’<Eと判定される場合は、エネルギが減少したことを意味するので、既に出力ピークの位置にあったか、制御方向が逆であったことを示す。ここで、ステップST39で、パラメータNを判定する。Nの値は、E’<Eとなった回数を示している。N=0の場合、つまり、初めて調整後にエネルギが減少したときである。この場合は、位置を元の状態に戻さなくてはいけないので、ステップST40で、回転方向を逆するするためkの符号を反転させる(k=k×(−1))。そして、パラメータNの値を1にして、パラメータEの値をE’にする。そして、ステップST35に戻ってあおり調整機構110を微少量k・dx回転させるルーチンを行う。N=1の場合は、以前に、調整の方向を逆転させた履歴があることを意味する。元々微調整する前の段階で、出力ピークの位置にあった場合、1回微調整することで出力が減少し、そのため、調整方向を反転して、ピークに向かって調整していき、さらにピークを通りすぎたことによって、出力が2回目の減少を示したときを意味する。又は、最初の微調整の方向が逆で、出力が減少したため、調整方向を反転して、ピークに向かって調整していき、さらにピークを通りすぎたことによって、出力が2回目の減少を示したときを意味する。何れの場合も、ピークを1調整分オーバーした位置にあることになるため、最後に、ステップST41で、調整の方向を逆転(k=k×(−1))させ、ステップST42で、あおり調整機構110をk・dx回転させる。この位置でエネルギピークになっている。
なお、以上では、出力側ミラー2のあおり角度を制御する場合を説明したが、リア側ミラー1のあおり角度を制御しても同様の効果が得られる。
図36は、ビーム拡大光学系61’の光学素子(三角プリズム62、63)の入射角をスペクトルを計測して制御する場合のサブルーチンである。まず、ステップST51で、メインコントローラ105で波長λに対応する回転角θを計算する。θの値は、光学素子62、63の材料における屈折率の波長依存性の式とスネルの式とから求めることができる。そして、ビーム拡大光学系の回転ステージ111、112に角度θの値を指令する。次に、ステップST52で、この指令値に従って回転ステージ111、112をθ制御する。次に、最大透過波長がλになるように、モニタモジュール107でスペクトルを計測して、微調整するルーチンに入る。ステップST53で、スペクトル計測するために、発振段レーザ50の注入光(seed光)を遮断する。遮断する方法としては、光路上にシャッターを設け、これを閉じてやればよい。その後、増幅段レーザ60単体でレーザ発振させる。このときの出力光のスペクトル波形を、ステップST54で、増幅段レーザ60の光路の出射側にあるモニタモジュール107で計測する。計測した中心波長をλ1とする。次に、ステップST55で、ターゲットの波長λとの差dλ=λ1−λを計算する。次に、ステップST56で、dλが許容値以内かどうかを判定する。許容値は、予め最適値を決めておく。許容値以内であれば、ステップST57で、発振段レーザ50の注入光を導入してやり、サブルーチンは終了する。ステップST56で、dλが許容値オーバーであれば、微調整を実施する。そのために、ステップST58で、回転ステージ111、112をk・dθ回転させる。係数kの値は、予め最適値を設定しておく。kの値がマイナスの場合は、逆方向に回転することとする。次に、ステップST59で、再度スペクトルを計測する。このときの中心波長をλ2とする。そして、ステップST60で、ターゲットの波長λとの差dλ’=λ2−λを計算する。dλ’は、微調整後のターゲットとの差であり、dλは微調整前のターゲットとの差である。次に、ステップST61で、dλ’<dλかどうかを判定する。dλ’>dλの場合は、制御することによって、逆にターゲットとの差が開いたことを示すので、制御方向が逆である。そのため、ステップST62で、調整の方向を逆転(k=k×(−1))させ、dλの値をdλ’として、ステップST58に戻って再度回転ステージ111、112をk・dθ回転させるルーチンを行う。ステップST61で、dλ’<dλの場合は、制御によってターゲットに近づいたことを示す。ステップST63で、dλ’が許容値以内かどうかを判定する。ここで、許容値以内に入っていれば、ステップST57で、発振段レーザ50の注入光を導入してやり、サブルーチンは終了する。ステップST63で、許容値に入っていなければ、調整が足りないことを意味するので、ステップST64で、dλの値をdλ’として、ステップST58に戻って再度回転ステージ111、112をk・dθ回転させるルーチンを行う。
図37は、共振器を構成するミラーのあおり角をスペクトルを計測して制御する場合のサブルーチンを示す。まず、ステップST71で、メインコントローラ105で、波長λに対応するあおり量xを計算する。xの値は、光学素子62、63の材料における屈折率の波長依存性の式とスネルの式とから、ミラー(この場合は、出力側ミラー2)の垂直方向とレーザ光のミラーへの進行方向の角度差αを計算し、その角度α分のあおり量xを計算する。そして、そして、出力側ミラーあおり調整機構110にあおり量xの値を指令する。次に、ステップST72で、この指令値に従って出力側ミラー2のあおり量をx制御する。次に、最大透過波長がλになるように、モニタモジュール107でスペクトルを計測して、微調整するルーチンに入る。ステップST73で、スペクトル計測するために、発振段レーザ50の注入光(seed光)を遮断する。遮断する方法としては、光路上にシャッターを設け、これを閉じてやればよい。その後、増幅段レーザ60単体でレーザ発振させる。このときの出力光のスペクトル波形を、ステップST74で、増幅段レーザ60の光路の出射側にあるモニタモジュール107で計測する。計測した中心波長をλ1とする。次に、ステップST75で、ターゲットの波長λとの差dλ=λ1−λを計算する。次に、ステップST76で、dλが許容値以内かどうかを判定する。許容値は、予め最適値を決めておく。許容値以内であれば、ステップST77で、発振段レーザ50の注入光を導入してやり、サブルーチンは終了する。ステップST76で、dλが許容値オーバーであれば、微調整を実施する。そのために、ステップST78で、あおり制御機構110を微少量k・dx回転させる。係数kの値は、係数kの値は、予め最適値を設定しておく。kの値がマイナスの場合は、逆方向に回転することとする。次に、ステップST79で、再度スペクトルを計測する。このときの中心波長をλ2とする。そして、ステップST80で、ターゲットの波長λとの差dλ’=λ2−λを計算する。dλ’は、微調整後のターゲットとの差であり、dλは微調整前のターゲットとの差である。次に、ステップST81で、dλ’<dλかどうかを判定する。dλ’>dλの場合は、制御することによって、逆にターゲットとの差が開いたことを示すので、制御方向が逆である。そのため、ステップST82で、調整の方向を逆転(k=k×(−1))させ、dλの値をdλ’として、ステップST78に戻ってあおり調整機構110をk・dx回転させるさせるルーチンを行う。ステップST81で、dλ’<dλの場合は、制御によってターゲットに近づいたことを示す。ステップST83で、dλ’が許容値以内かどうかを判定する。ここで、許容値以内に入っていれば、ステップST77で、発振段レーザ50の注入光を導入してやり、サブルーチンは終了する。ステップST83で、許容値に入っていなければ、調整が足りないことを意味するので、ステップST84で、dλの値をdλ’として、ステップST78に戻って再度あおり制御機構110をk・dx回転させるルーチンを行う。
なお、以上では、出力側ミラー2のあおり角度を制御する場合を説明したが、リア側ミラー1のあおり角度を制御しても同様の効果が得られる。
以上、本発明の高出力ガスレーザ装置を露光用2ステージレーザ装置の増幅段レーザを例にとって説明したが、その他の多段ステージのガスレーザ装置の増幅段レーザや、増幅段レーザを用いないで発振段レーザのみからなるガスレーザ装置に本発明の原理を適用して、その共振器を構成する少なくとも1枚のミラーとレーザガスチャンバーとの間に、ミラー側のビームの径あるいは幅を広げるビーム拡大光学系を介在させるようにすることにより、共振器のミラーを構成する光学素子に入射するレーザエネルギ密度を低減させてその光学素子の表面損傷が発生しないようにすることにより耐久性を向上させ、長寿命化を実現することができる。また、共振器のミラーを構成する光学素子に入射するレーザエネルギ密度を低減させてその光学素子に歪みが発生しないようにすることができる。また、このとき、レーザの中心波長が変化したとしてもレーザ出力が減少しないようにすることができる。
以上、本発明の高出力ガスレーザ装置をその原理と実施例の説明に基づいて説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されず種々の変形が可能である。