JP5358142B2 - ガスレーザ用光学素子及びそれを用いたガスレーザ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ガスレーザ用光学素子及びそれを用いたガスレーザ装置に関し、特に、エキシマレーザやフッ素分子レーザ等の半導体露光装置で使用される紫外線ガスレーザ用光学素子及びそれを用いたガスレーザ装置に関するものである。
(露光用光源)
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、半導体露光装置においては解像力の向上が要請されている。このため、露光用光源から放出される光の短波長化が進められており、露光用光源には、従来の水銀ランプに代わってガスレーザ装置が用いられている。現在の露光用ガスレーザ装置としては、波長248nmの深紫外光を放出するKrFエキシマレーザ装置、並びに、波長193nmの真空紫外光を放出するArFエキシマレーザ装置が用いられている。次世代の露光技術として、露光用レンズとウエハー間を液体で満たして屈折率を変えることによって、露光光源の見かけの波長を短波長化する液浸技術をArFエキシマレーザ露光に適用しようとしている。ArFエキシマレーザ液浸では、純水を液浸液にした場合134nmの波長になる。また、次々世代の露光用光源として、波長157nmの真空紫外光を放出するF2 (フッ素分子)レーザ装置によるF2 レーザ液浸露光が採用される可能性もある。F2 レーザ液浸では、115nmの波長になると言われている。
(露光用光学素子と色収差)
多くの半導体露光装置の光学系には、投影光学系が採用されている。投影光学系では、異なる屈折率を有するレンズ等の光学素子が組み合わされて色収差補正が行われる。現在、露光用光源であるレーザ波長の248nm〜157nmの波長(紫外線)域では、投影光学系のレンズ材料として使用に適する光学材料は、合成石英とCaF2 以外にはない。このため、KrFエキシマレーザ用の投影レンズとしては、合成石英のみで構成された全屈折タイプの単色レンズが採用され、ArFエキシマレーザ用の投影レンズとしては、合成石英とCaF2 で構成された全屈折タイプの部分色消しレンズが採用されている。ところが、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザの自然発振スペクトル線幅は約350〜400pmと広いために、これらの投影レンズを使用すると、色収差が発生して解像力が低下する。そこで、色収差が無視できるまでに、これらのガスレーザ装置から放出されるレーザ光のスペクトル線幅を狭帯域化する必要がある。このため、これらのガスレーザ装置には狭帯域化素子(エタロンやグレーティング等)を有する狭帯域化モジュールがレーザ共振器内に設けられ、スペクトル線幅の狭帯域化が実現されている。
(液浸リソグラフィーと偏光照明)
上記したように、ArFエキシマレーザ液浸リソグラフィーの場合、媒体としてH2 Oを使用したとき、屈折率が1.44になるため、屈折率に比例するレンズ開口数NAは原理的に従来の開口数に対して1.44倍に増やすことができる。NAが高くなるにつれ、光源であるレーザ光の偏光純度の影響が大きくなる。偏光の向きがマスクパターンの方向に平行であるTE偏光の場合は影響がないが、それが直交するTM偏光の場合は、像のコントラストが低くなってしまう。これは、後者の場合、ウエハー上の焦点における電界のベクトルが異なる方向であるため、ウエハーへの入射角が大きくなるに従い、電界のベクトルが同一である前者に比べ、強度が弱くなってしまうためである。この影響はNAが1.0に近づくか超える場合に強くなり、ArFエキシマレーザ液浸はこの場合に該当する。そのため、以上のように露光装置の照明系では、所望の偏光状態を制御する必要がある。この偏光照明の制御には、露光装置の照明系に入力されるレーザの偏光状態が直線偏光
であることが要求されている。偏光純度は、直線偏光と非直線偏光の割合であり、レーザの偏光は、偏光純度が高く維持されることが要求されている。
(偏光純度を高めるための従来技術)
レーザ光の偏光純度を高めるための技術として、これまでに特許文献1と特許文献2に記載の技術がある。
特許文献1に記載のものは、ビームエキスパンダプリズムやフロントミラー等のレーザに使用する光学素子のフッ化カルシウム結晶の劈開面(111)に垂直にレーザ光が透過するようにして、光学素子内部を光が通過するときに受ける複屈折による偏光純度の悪化を防ぐ方法である。
特許文献2に記載のものは、レーザに使用する光学素子のフッ化カルシウム結晶の(100)面に垂直にレーザ光の光軸が透過するようにして、光学素子内部を光が通過するときに受ける真性複屈折による偏光純度の悪化を防ぐ方法である。
しかしながら、上記の従来技術には、次に述べるような問題がある。
特許文献1に記載のものでは、実際に光学素子としてウィンドウの(111)面に光軸が垂直に通過し、かつ、その表面がブリュースタ角になるようにするための具体的手段の記載がなく、両者を達成するためには、フッ化カルシウム結晶をウィンドウにカットする面は表面がある程度硬い結晶方位面でなくなるため、表面粗さが小さな高精度研磨ができなくなる。表面粗さが小さな研磨ができない場合には、研磨表面からサブミクロン以内の領域に潜傷と呼ばれる傷が残る。この潜傷は、レーザ照射によりレーザ光を吸収して、結晶の表面を損傷させたり、フッ素が抜ける欠陥が発生して、実際にレーザチャンバのウィンドウとして使用することができないという問題点がある。
特許文献2に記載のものでは、光学素子の(100)面に垂直にレーザ光が通過するように配置することによって、真性複屈折による偏光純度の悪化を防いでいるが、応力を与えたときに発生する応力複屈折は、(100)面に垂直な[100]方向が最も大きく、チャンバウィンドウとして使用する場合、ウィンドウのホールド時の応力やチャンバ内の数気圧のガスによる圧力、また、レーザ照射による発熱応力等によって応力複屈折が発生する可能性がある問題があった。また、カット面は(111)面と17.58°または26.76°をなす角度でカットして、このカット面をチャンバウィンドウの両面としているため以下の2つの課題が発生していた。一つは、このカット面を表面荒さが小さな高精度研磨ができないため、レーザ照射による表面損傷の閾値が低くなっていた。二つ目は、レーザチャンバウィンドウとして使用する場合、約4000hPaのガス圧力がかかるため、例えば、壁界しやすい(111)面で、破損する可能性があった。さらに、カット面を(111)面と17.58°でカットした場合には、チャンバウィンドウと光軸とのなす角度は、70°となり、P偏光とS偏光のフレネル反射がそれぞれ4.2%と30.0%なり、このウィンドウを透過することにより、P偏光成分は選択されるが、P偏光のフレネル反射が大きいため、レーザの出力を確保することができないという問題があった。
そこで、特許文献4のように、2つの平面を備えて紫外線がその1つの平面2から入射し、他の平面から射出するフッ化カルシウム結晶からなるウィンドウ等の紫外線ガスレーザ用光学素子において、少なくとも一方の平面がフッ化カルシウム結晶の(110)結晶面に平行である紫外線ガスレーザ用光学素子により、真性複屈折及び応力複屈折による偏光純度の悪化を防止すると共に、カット面を平滑にしてレーザ照射により割れや欠陥の発生を防止する技術が開示されている。
特開平11−177173号公報 米国特許出願公開第2003/219056号明細書 特開2002−353545号公報 特開2006−73921号公報
しかしながら、特許文献4に示す技術では、真性複屈折及び応力複屈折による偏光純度の悪化を防止すると共に、フッ化カルシウム結晶のカット面を(110)面することにより、ある程度の表面粗さの小さな高精度研磨を行うことにより、レーザ照射によるフッ化カルシウム結晶の表面損傷をある程度防止していた。
本発明は従来技術のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、もっとも硬い結晶面(111)面でフッ化カルシウム結晶をカットし、この結晶面を表面粗さの小さな高精度研磨を行うことにより、潜傷を少なくし、レーザ照射によるフッ化カルシウム結晶の表面損傷を防止する。そして、P偏光のフレネル反射率を小さくし、偏光純度を高くすると共に、強い紫外線(特にArF)レーザ光照射による劣化を抑制するフッ化カルシウム結晶を用いたブリュースタウィンドウやビームエキスパンダプリズム等のガスレーザ用光学素子及びそれを用いたガスレーザ装置を提供することである。
本発明のガスレーザ装置は、レーザチャンバと、前記レーザチャンバの一方の側とその反対側に設置された光共振器と、前記レーザチャンバ内部に封入されたレーザガスと、前記レーザガスを励起する励起部と、前記光共振器の光軸上に配置されるフッ化カルシウム結晶からなる光学素子と、を備え、前記光学素子は、少なくとも入射平面と射出平面のどちらか一方の平面がフッ化カルシウム結晶の(111)結晶面に平行であり、[111]軸を中心として[001]軸を回転させた軌跡内の第1の方位軸の[001]軸からの回転角度、[111]軸を中心として[010]軸を回転させた軌跡内の第2の方位軸の[010]軸からの回転角度、又は、[111]軸を中心として[100]軸を回転させた軌跡内の第3の方位軸の[100]軸からの回転角度は、それぞれ34度以上36度以下または−3度以上−3度以下であり、レーザ光の前記入射平面への入射角度は、24.9°から68.73°の角度範囲内であり、前記入射平面から入射したレーザ光は、[111]軸と、前記第1の方位軸との間で、且つ、[111]軸と、前記第1の方位軸とを含む面内、[111]軸と、前記第2の方位軸との間で、且つ、[111]軸と、前記第2の方位軸とを含む面内、又は、[111]軸と、前記第3の方位軸との間で、且つ、[111]軸と、前記第3の方位軸とを含む面内、において伝播し、前記射出平面から射出される。
また、前記光学素子は、レーザチャンバに設けられた2つのウィンドウである。
また、前記光学素子は、前記レーザ光を分割するビームスプリッタである。
また、前記光学素子は、前記レーザ光を拡大するビーム拡大光学系のウェッジ基板である。
本発明のガスレーザ用光学素子は、結晶表面を(111)面とすることにより、表面粗さが小さな高精度研磨が可能となり、潜傷によるレーザ照射により光の吸収を防ぎ表面損傷を防止することができる。そして、結晶を、P偏光によるフレネル反射を小さくするように配置することにより、偏光純度を高くできる。さらに、結晶を、高強度紫外線レーザ光による結晶内部の劣化を抑制するようなレーザ光軸と結晶軸との関係になるように配置することにより、レーザの運転ショット数による経時的な出力レーザ光の偏光純度の悪化を抑制することができる。
以下、本発明に係る実施形態の紫外線ガスレーザ用光学素子及び紫外線ガスレーザ装置について説明する。
図1は、CaF2 の結晶格子を示す。本実施形態では、CaF2 の結晶は、結晶方位に合わせて(111)面でカットされる。CaF2 結晶は、図1に示すような、面心立方格子で構成されている。
図2に示すように、CaF2 結晶の軸[001]、[100]に対する光の進行方向Lの角度θとφを定義すると、図2のφ=45°、θ=54.74°の方向が[111]軸
方向となる。(111)面の表面は他の結晶軸表面よりも、一番硬いため、表面粗さが小さく、潜傷が少ない研磨が可能となる。
図3は、本実施形態によるCaF2 (フッ化カルシウム)を用いたウィンドウ1を示す。図3(a)は、ウィンドウ1の上面図、図3(b)は、ウィンドウ1の断面図である。
図3(a)はCaF2結晶を[111]軸の真上から見た図であり、CaF2結晶の各面方位軸を放射状に示している。CaF2結晶は、図1に示したような面心立方格子である
ため、結晶方位の軸は[111]軸を対称軸とすると3回対称となる。したがって、CaF2結晶ウィンドウの[111]軸の真上から見て、[001]軸を基準軸とし、時計回
りの角度を正とし、反時計回りの角度を負とすると、[001]軸と[011]軸とのなす角度60度、[001]軸と[010]軸となす角度は120度、[001]軸と[110]軸とのなす角度は180度、[001]軸と[101]軸とのなす角度は−60度、[001]軸と[100]軸とのなす角度は−120度となる。
ここで、[111]軸を中心として、[001]軸を、角度γだけ時計回りに回転した方位軸を第1の方位軸としての回転指定方位軸、角度γを回転指定方位角度と定義する。ただし、CaF2結晶は前述しているように、面心立方格子であるため、[001]軸の
代わりに基準軸を[011]軸又は[101]軸にとってもよい。その場合の回転指定方位軸をそれぞれ第2の方位軸又は第3の方位軸とする。
図3(b)は、CaF2結晶を回転指定方位軸と[111]軸とを含む断面で見た図で
ある。
CaF2 結晶からなるウィンドウ1は、(111)面に対して、平行な面の表面2及び2‘で研磨されている。例えば、本実施形態では、回転指定方位軸と[111]軸を含む面内で、略ブリュースタ角度56.34°の入射角度αでCaF2 結晶基板に対してP偏光でレーザビームがウィンドウの中央に入射する。すると、表面2において、光がスネルの法則にしたがって、33.65°の屈折角度βで屈折する。この時、CaF2 内部の屈折光軸がCaF2 結晶の[111]軸と回転指定方位軸を含む面内で、且つ、[111]軸と回転指定方位軸のなす角度の間(0°<β<54.74°)を透過するように、CaF2 結晶を配置する。そして、CaF2 結晶内を透過して、面2’で再び、面2と同様にスネルの法則にしたがって、レーザ光は屈折して、レーザ光の偏光面は、回転指定方位軸と[111]軸を含む面に対して平行となってウィンドウに対してP偏光の直線偏光で出射し、再びガス中に光が伝播する。
ここで、回転指定方位角度γは−10°から−50°または+10°から+50°の範囲とすることにより、レーザの運転ショット数による経時的な出力レーザ光の偏光純度の悪化を抑制防止することができる。ただし、入射レーザ光の入射角度は、後述するが、ウィンドウの表面反射を抑制するために、斜入射(0よりも大きい角度)で入射する。
なお、回転指定方位角度γは−30°から−40°または+30°から+40°の範囲とするとさらに好ましい。また、回転指定方位角度γを−34°から−36°または+34°から+36°の範囲とするとより好ましい。
次に、ブリュースタ角と偏光の関係について説明する。一般的に、ガスレーザ共振器内に使用されるチャンバウィンドウは、光軸に対してブリュースタ角の角度で配置されることが多い。これは、ブリュースタ角にすることによって、ウィンドウに入射する光のP偏光成分のウィンドウ表面におけるフレネル反射が零になり、結晶の内部吸収は非常に小さく、略100%透過するため、ウィンドウ通過におけるレーザ光の損失がなくなり、出力エネルギが減少しなくなるためである。
レーザ光は共振器内を数〜十数回往復して出力されるため、所謂偏光素子であるブリュースタウィンドウを数回通過する間に、S偏光成分はフレネル反射を受け減衰するのに対し、P偏光成分は減衰されることなく透過し、レーザ媒質内を通過することによって増幅
されていく。これによりレーザ光は、概ねP偏光方向の直線偏光で出力される。
狭帯域化レーザでは、スペクトル線幅を狭帯域化するために、プリズムでビームを拡大し波長分散素子であるグレーティングに入射させている。拡大プリズムはビームの拡大率を大きくするために、プリズムの入射角度を大きくして、複数個使用することにより、トータルの拡大率を大きくしている。この理由は、レーザのスペクトル線幅と拡大率はおおむね反比例の関係にあるからである。この拡大プリズムの斜面には、高い(ブリュースタ角よりも大きい)入射角度でも反射損失が小さくなるようにP偏光に対して反射防止膜がコートされている。この反射防止膜はS偏光に対しては反射率が高い膜であるために、結果としてレーザ発振することによりP偏光成分が生き残り出力レーザ光の偏光純度は非常に高くなる。そして、レーザチャンバのウィンドウはこのプリズムにより選択されたP偏光成分の反射損失が小さくなるように、傾けて設置される。ブリュースタ角で設置した場合は、前述のようにウィンドウでのP偏光の反射損失が0%となるので、十分なレーザ出力が得られる。ArFエキシマレーザ(波長193.368nm)では、20℃においてフッ化カルシウムの屈折率nが1.501958となるため、ブリュースタ角度は、56.336°になる。また、F2 レーザ(波長157.63nm)では、20℃においてフッ化カルシウムの屈折率nが1.559261となるため、ブリュースタ角度は、57.3°になる。
次に、複屈折による偏光の変化を説明する。一般に、結晶内を伝播する光は、互いに直交する2つの直線偏波状態の波の線形結合であり、それぞれの位相速度と振幅の大きさで、偏光状態と偏光方向が決まる。結晶内に複屈折が発生すると、結晶中を伝播する光ビームの位相速度がその偏波方向に依存してずれていく。これにより、直線偏光であった光ビームは、複屈折物質を通過することによって、互いに直交する2つの波の位相がずれ、直線偏光でなくなる(概ね楕円偏光になる)。このため、結晶内に複屈折が発生すると、P偏光で入射した光は結晶内部を透過することにより、P偏光純度が悪くなり、P偏光成分の光強度が減少する。偏光純度を高め、悪化を抑制するためには、高強度紫外線レーザ光にする結晶内部の劣化を抑制するようなレーザ光軸と結晶軸との関係になるように配置することが必要となる。
ここで、CaF2 の結晶方位による複屈折の大きさの分布を説明する。結晶における複屈折には、外乱のない理想的な結晶にも本来的に存在する真性複屈折(intrinsic birefringence )と、外部から力学的・熱的な力が加わって生じる応力複屈折(stress birefringence)の2つがある。最近になって、等軸結晶であるフッ化カルシウムでも、真性複屈折が生じることが分かってきた。真性複屈折は、結晶を構成する原子間隔に光の波長が近づくと、その影響が大きくなる。よって、ArFエキシマレーザやF2 レーザの短波長領域で使用する場合、真性複屈折の影響が大きくなり、無視できなくなってきた。真性複屈折及び応力複屈折の両者共、レーザ光軸と結晶方位によって複屈折の大きさの違いがあり、計算によって求められている。
図4に、結晶方位によるCaF2 の真性複屈折の大きさの分布を示す。CaF2 結晶の軸[001]、[100]に対する光の進行方向Lの角度θとφを図2のように定義すると、真性複屈折は図4(a)、(b)のようになる。図4(a)の実線は、φを45°に保ったまま進行方向Lの軸[001]に対する角度θを0°から90°の間で変化させた場合であり、図4(a)の点線は、φを0°に保ったまま進行方向Lの軸[001]に対する角度θを0°から90°の間で変化させた場合であり、また、図4(b)の実線は、θを90°に保ったまま進行方向Lの軸[100]に対する角度φを0°から90°の間で変化させた場合である。図4(a)、(b)から明らかなように、結晶方位[111]、[100]、[010]、[001]の方向では、真性複屈折は零になり、逆に、[110]、[011]、[101]の結晶方位の方向では、最大となることが分かる。
図5は、レーザ発振ショット数と出力レーザ光の偏光純度の関係を示したグラフである。
具体的には、このグラフは、(111)面と平行な面を表面としたCaF2結晶を製作し、真性複屈折が最小となるような回転方位角度γ=−6°([001]軸近傍)、真性複屈折が最大となる回転方位角度γ=−60°([101]軸近傍)、及び、[001]軸と[101]軸の中間付近の回転方位角度γ=−34°と−35°、に配置したブリュースタウィンドウを、後述する2ステージレーザシステムの増幅段のレーザチャンバに搭載して、ArFレーザ出力40W、繰返し周波数4000Hzで耐久運転を実施したときのレーザ発振ショット数と出力レーザ光の偏光純度の関係を示したものである。
回転方位角度γ=−6°の(略[001]の方向から入射)場合は、出力レーザ光の初期の偏光純度は99.7%であり、約10billion ショットで偏光純度が97%となった。
また、回転指定方位角度γ=−34°と−36°の場合は、出力レーザ光の偏光純度の初期は約99.5%であり、レーザの発振ショット数が30billionショットで偏光純度
が約97.5%であった。
さらに、回転指定方位角度γ=−60°の(略[101]の方向から入射)場合は、出力レーザ光の偏光純度は約96%であった。
このように、[111]軸を中心として[001]軸を回転させた回転指定方位軸とレーザ光軸を合わせることにより、偏光純度を高めることができる。
さらに、回転指定方位角度を上記両軸(たとえば、[001]軸と[010]軸、[001]軸と[011]軸、[010]軸と[011]軸、[010]軸と[110]軸、または[100]軸と[010]軸、[100]軸と[101]軸)の中間領域γ=−10°から−50°または+10°から+50°、好ましくはγ=−30°から−40°または+30°から+40°、さらに好ましくはγ=−34°から−36°または+34°から+36°でレーザ光軸を合わせることにより、偏光純度の経時劣化を抑制できることを耐久試験により示した。
次に、CaF2 結晶表面に入射する角度とP偏光の反射率の関係について説明する。図6は、CaF2 結晶表面に入射する角度とP偏光の反射率の関係を示す。
空気中から屈折率nの透明媒質に入射角φで光が入射するときのP偏光の反射率Rp
S偏光の反射率Rsは式(1)のフレネル式で求められる。
Figure 0005358142
ここで、sinφ = n・sinχ(Snell's law:スネルの法則)である。
図7に示すように、例えば、193nmの波長でCaF2 結晶の屈折率を1.501958とす
ると、P偏光成分の光のフレネル反射率は、入射角度0度(垂直入射)では、4.02%であり、P偏光のフレネル反射が3%となる入射角度は、24.90度となる。その後、入射角度がブリュースタ角(56.34度)までは、フレネル反射率は単調に減少する。そして、このブリュースタ角度では、P偏光の反射率は0%となる。続いて、入射角度がブリュースタ角度よりも大きくなるとフレネル反射は単調に増加する。P偏光のフレネル反射が3%となる入射角度は68.73度である。
例えば、レーザチャンバにウィンドウの両面でフレネル反射するCaF2結晶のウィンドウを装着する場合、もっともレーザ共振器のロスが小さくなるのが、P偏光の反射率が0となるブリュースタ角度(56.34°)で設置した場合である。
このレーザの出力が維持できる共振器ロスの許容範囲のP偏光のレーザウィンドウの1面当たりのフレネル反射を3%と仮定するとCaF2 ウィンドウへの入射角度は24.9°から68.73°の間が好ましいこととなる。
図6は、CaF2 ウィンドウへの入射角度を24.9°及び68.73°とした時の光軸とCaF2 結晶の軸の関係を示す。CaF2 結晶1は(111)面に対して、平行な面の表面2及び2‘で研磨されている。(111)面の表面は他の結晶軸表面よりも、一番硬いため、表面粗さが小さく、潜傷が少ない研磨が可能となる。
図7(a)は入射角度を24.90°とした場合を示す。CaF2 結晶の光学素子に24.90°の入射角度αでP偏光のレーザビームが入射すると、表面2において光がスネルの法則にしたがって、屈折角度β=16.28°でCaF2 結晶内部で屈折する。この時、このCaF2 内部の屈折光軸は、CaF2 結晶の[111]軸と指定回転方位軸を含む面内で透過するように、CaF2 結晶が配置されている。そして、レーザ光は、CaF2 結晶内を透過して、面2’で再び、面2と同様にスネルの法則にしたがって、屈折して、再びガス中に伝播する。
図7(b)は入射角度を68.73°とした場合を示す。CaF2 結晶の光学素子に68.73°の入射角度αでP偏光のレーザビームが入射すると、表面2において光がスネルの法則にしたがって、屈折角度β=38.24°でCaF2 結晶内部で屈折する。この時、このCaF2 内部の屈折光軸は、CaF2 結晶の[111]軸と指定回転方位軸を含む面内で透過するように、CaF2 結晶が配置されている。そして、レーザ光は、CaF2 結晶内を透過して、面2’で再び、面2と同様にスネルの法則にしたがって、屈折して、再びガス中に伝播する。
ウィンドウ1を取り付ける前に、X線回折分析を行い、結晶方位を予め計測しておくよ
うにしてもよい。ウィンドウ1の[001]または[100]または[010]軸方向の側面に第1の印を付けておき、その印に対して回転させて回転指定方位軸にさらに第2の印をつけて、この第2の印に従って取り付けるようにすると効率が良い。
以上のように、CaF2 結晶の(111)面をウィンドウの表面とし、P偏光のフレネル反射が小さくなるようにCaF2 結晶の入射角度24.90°から68.73°の角度範囲でCaF2 結晶に入射させ、[111]軸でCaF2 結晶を回転させることにより、偏光純度の高いレーザの出力光を得ることができる。また、回転指定方位角度を限定してCaF2 結晶を設置することにより、高強度紫外線レーザ光による結晶内部の劣化を抑制することができる。その結果、出力レーザ光の偏光純度の経時劣化を抑制できる。
以上、本実施形態の紫外線ガスレーザ用光学素子をウィンドウとして使用する場合について説明したが、これは、レーザ装置の他の部位で使用することもできる。その例を説明
するために、図8に、2ステージレーザシステムの主として光学系の概略の構成と、その中での本発明による紫外線ガスレーザ用光学素子の配置例を示す。
2ステージレーザシステムは、発振用レーザ10とその発振用レーザ10から発振されたレーザ光(シード光)を入射させて増幅する増幅用レーザ20とからなるもので、特に狭帯域で40W以上の高出力が必要な露光用のArFエキシマレーザ装置やF2レーザ装
置に期待されているものである。
発振用レーザ10にはレーザガスが封入されるレーザチャンバ11と、共振器を構成する狭帯域化モジュール14及び出力鏡としての部分反射ミラー15とが含まれ、さらに、図示していないレーザガス励起システムや制御系、さらには、冷却系、ガス交換システム等が含まれる。
レーザチャンバ11には、前記のように、光軸上に2つのウィンドウ12と13が取り付けてある。また、狭帯域化モジュール14には、ビーム拡大光学系を構成する単数あるいは複数のビーム拡大プリズム16(図では2個)と、狭帯域化素子としてのグレーティング17(又はエタロン)が含まれる。
増幅用レーザ20も、レーザガスが封入されるレーザチャンバ21と、共振器を構成する部分反射ミラー24、25とが含まれ、さらに、図示していないレーザガス励起システムや制御系、さらには、冷却系、ガス交換システム等が含まれる。
レーザチャンバ21には、光軸上に2つのウィンドウ22と23が取り付けてある。なお、図8においては、発振用レーザ10から発振されたレーザ光は、ミラー18と19でそれぞれ反射されて増幅用レーザ20に入射するように構成されている。レーザウィンドウは発振段及び増幅段レーザの共振器内に配置されているので、レーザ光が多数往復する。
したがって、CaF2 結晶の表面を(111)面で研磨し、かつ、[111]軸でCaF2 結晶を回転させることにより、偏光純度の高いレーザの出力光を得ることができる。回転指定方位角度を限定してCaF2 結晶を設置することにより、高強度紫外線レーザ光による結晶内部の劣化を抑制することができる。その結果、出力レーザ光の偏光純度の経時劣化を抑制できる。
そして、レーザチャンバ11、21に取り付けるウィンドウ12、13、22、23を本発明による紫外線ガスレーザ用光学素子で構成することが望ましいのは上記の通りである。
また、発振用レーザ10の共振器を構成する部分反射ミラー15、増幅用レーザ20の部分反射ミラー24、25は、複屈折を最小にすべく、(111)面に沿ってカットして、CaF2 結晶内部を透過するレーザ光の光軸が(111)面に垂直となるようにすることが望ましい。
また、増幅用レーザ20の部分反射ミラー24、25を取り外したMOPA(Master Oscillator Power Amplifier )システムに本発明を適用しても同様の効果がある。
また、このレーザシステムのビームをサンプルするための、ビームスプリッタに適用できる。このビームスプリッタの表面には、片面ARコート、片面部分反射コートが施されたり、フレネル反射を利用して、サンプルする場合は、ノーコートのCaF2 結晶基板を使用する。
この例では、発振段レーザパワーモニタ30のビームサンプル用の第1ビームスプリッタ31と、増幅後のレーザのエネルギ及びスペクトルを計測するためのモニターモジュール40のビームサンプル用の第2ビームスプリッタ41に適用している。
さらに、光学パルスストレッチャ50に使用される第3ビームスプリッタ51に本発明を適用できる。片面ARコート、片面部分反射コート(約R=60%)を施こされている。
これらビームスプリッタの場合は、通常入射角度α=45°入射なので、CaF2結晶内での屈折角度β=28.09°となる。
図9は、2枚のウェッジ基板の組み合わせによるビーム拡大光学系91、91'を増幅
段レーザの共振器内に配置した例を示す。図9(a)は、出力側のみにビーム拡大光学系91'を配置した例、図9(b)は、リア側及び出力側にビーム拡大光学系91、91'を配置した例である。
増幅段レーザの共振器中に、ビーム拡大光学系91、91'を配置する場合は、何回も
レーザ発振により光が往復するので、ビーム拡大光学系91、91'のCaF2 結晶の表
面を(111)面で研磨し、かつ、[111]軸でCaF2 結晶を回転させることにより、偏光純度の高いレーザの出力光を得ることができる。回転指定方位角度を限定してCaF2 結晶を設置することにより、高強度紫外線レーザ光による結晶内部の劣化を抑制することができる。その結果、出力レーザ光の偏光純度の経時劣化を抑制できる。
図10は、各ビーム拡大光学系91、91'中に2枚のウェッジ基板92、93を使用
して構成した場合の配置例である。2枚目のウェッジ基板93は1枚目のウェッジ基板92に対して上下反転させて「ハ」の字型に配置して、ビーム入射角が同一になるように配置している。このように配置することによって、ビーム拡大光学系91、91'出射後の
レーザ光軸をビーム拡大光学系91、91'入射前のレーザ光軸と平行にする(偏角β=0
°)ことができる。この原理を、図10を用いて説明する。図10は、2枚のウェッジ
基板92、93にレーザ光が入射した場合のレーザ光路を示している。2枚目のウェッジ基板93上のビーム光路の角度は、図示するように、θ5 、θ6 、θ7 、θ8 とし、1個目のウェッジ基板92からの出射光のビーム偏角をβ1 、2個目のウェッジ基板93からの出射光のビーム偏角をβ2 とすると、
β1 =θ1 −θ2 +θ3 −θ4 ・・・(11)
β2 =θ1 −θ5 +θ6 −θ7 +θ8 ・・・(12)
となる。いま、2個目のウェッジ基板93は1個目のウェッジ基板92と形状が同じで、上下反転させて入射角を同じ(θ5 =θ1 )という条件にすると、
θ5 =θ1 ・・・(13)
θ6 =θ2 ・・・(14)
θ7 =θ3 ・・・(15)
θ8 =θ4 ・・・(16)
α1 =α2 ・・・(17)
が成り立つ。これらの(13)〜(17)式を(12)式に代入してやると、
β2 =0 ・・・(18)
となる。
つまり、上述の条件にすれば、偏角を0にして、出射されるレーザ光の光軸をチャンバ3内のレーザ光軸と平行にすることができる。このような2枚のウェッジ基板の組み合わせによるビームエキスパンダは、波長変化によるレーザビームの出射角度の依存性が小さ
く、増幅段レーザの共振器内や増幅後のビームを広げるためのビームエキスパンダとして使用される。
このウェッジ基板92、93の入射角は、そのP偏光反射率が0になるブリュースタ角(ArFレーザ波長193.368nmの場合は、56.34°よりも大きくなることが多い。この場合は、その入射角においてP偏光反射率が無視できる程度にする反射防止膜を表面に付けることが必要である。
例えば、ビーム拡大率2.0倍のビーム拡大光学系を設計した場合、入射角68.7°、ウェッジ角4.4°となる。また、ウェッジ基板裏面の入射角は60.0°となる。60.0°の入射角のフレネル反射のP偏光反射率は0.2%なので、この面は反射防止膜を付ける必要はないが、第1面は68.7°であるので、反射防止膜を付ける必要がある。
図10(a)では、このウェッジ基板の入射側の面の方位を(111)面と平行に製作し、入射角度68.7°で入射したレーザ光は、スネルの法則により、CaF2 結晶内で38.34°で屈折し、出射側の面で屈折する。この光軸は、面方位[111]軸と指定回転方位軸を含む面内で、かつ、これらの結晶軸のなす角度の間になるようにウェッジ基板を設置している。そして、このウェッジ基板の出射面において屈折角度60.0度で出射する。
さらに、第2のウェッジ基板においても同様に、光軸と結晶軸との関係が同様になるように配置している。このように、CaF2 結晶の表面を(111)面で研磨し、かつ、[111]軸でCaF2 結晶を回転させることにより、偏光純度の高いレーザの出力光を得ることができる。回転指定方位角度を限定してCaF2 結晶を設置することにより、高強度紫外線レーザ光による結晶内部の劣化を抑制することができる。その結果、出力レーザ光の偏光純度の経時劣化を抑制できる。さらに、入射面を(111)面と平行となるように研磨しているので、表面荒さが小さく、潜傷の少ない表面が得られるため、反射防止膜のレーザ照射による損傷閾値が向上する。
図10(b)では、ウェッジ基板の出射側の面方位を(111)面と平行に製作し、CaF2 内部を通過する光軸が、面方位[111] 軸と指定回転方位軸を含む面において、
両軸のなす角の間になるようにウェッジ基板を設置している。
ここで、入射側の面のエネルギ密度が高い場合は図10(b)に比べて図10(a)の配置の方が、エネルギ密度の高い面が(111)面となるため、膜のレーザ耐性が向上する。
次に、他の実施例について説明する。
図11は、CaF2 (フッ化カルシウム)を用いた回転前のウィンドウ1を示す断面図、図12は、回転後のウィンドウ1を示す上面図である。
図11は、CaF2結晶を[001]軸、[110]軸及び[111]軸を含む断面で
見た図である。CaF2 結晶からなるウィンドウ1は、(111)面に対して、平行な面の第1表面3a及び第2表面3bで研磨されている。例えば、本実施形態では、[001]軸、[110]軸及び[111]軸を含む面内で、入射角度α=55.7°でCaF2 結晶基板に対してレーザビームがウィンドウ1の中央に入射する。すると、第1表面2において、光がスネルの法則にしたがって、屈折角度β=33.4°で屈折する。この時、CaF2 内部の屈折光軸LがCaF2 結晶の[001]軸、[110]軸及び[111]
軸を含む面内で、且つ、[111]軸と[001]軸のなす角度の間(0°<γ<54.7°)を透過するように、CaF2 結晶を配置する。そして、CaF2 結晶内を透過して、第2表面3bで再び、第1表面3aと同様にスネルの法則にしたがって、レーザ光は、[001]軸、[110]軸及び[111]軸を含む面内で、出射角α=55.7°でウィンドウ1から出射する。
本実施形態では、この状態からウィンドウ1を、[111]軸を中心軸として反時計方向に30°回転した位置に設置する。
図12はCaF2 結晶を[111]軸の真上から見た図であり、CaF2 結晶の各面方位軸を放射状に示している。CaF2 結晶は、図1に示したような面心立方格子であるため、結晶方位の軸は[111]軸を対称軸とすると3回対称となる。したがって、CaF2 結晶ウィンドウの[111]軸の真上から見て、[001]軸を基準軸とし、時計回りの角度を負とし、反時計回りの角度を正とすると、[001]軸と[011]軸とのなす角度−60度、[001]軸と[010]軸となす角度は−120度、[001]軸と[110]軸とのなす角度は180度、[001]軸と[101]軸とのなす角度は60度、[001]軸と[100]軸とのなす角度は120度となる。
図12に示すように、ウィンドウ1は、結晶内に入射したレーザ光が[111]軸と[001]軸を含む面を通過する配置に対して、[111]軸を中心軸として反時計方向に30°回転した位置に設置される。
次に、チャンバで使用する光入射角に計測用ウィンドウ102を設置して、[111]軸を中心軸として回転させ、光の伝播方向の結晶方位を変化させて、その偏光状態の変化を観測した結果を示す。
図13は、偏光状態観測実験系を示す図である。使用したレーザ光は直線偏光の狭帯域ArFレーザ101(4kHz,10mJ)を用い、チャンバウィンドウで使用する場合を模擬で
きるように、計測用ウィンドウ102は、入射角α=55.7°で設置し、入射するレーザの偏光方向も、実際の装置と合わせて、図13に示すように紙面と平行方向で入射させた。計測用ウィンドウ102を通過したレーザ光は、偏光度計測器103に入れて、その直線偏光純度を計測した。偏光度計測器103では、光路を折り返すことによって、反射するレーザ光の偏光度が変化しない様に、2枚の折り返しウィンドウ104a,104bを使用している。ローションプリズム105を通過し、センサー106で出力を計測する。そして、ローションプリズム105を回転させて出力を計測し、直線偏光純度を計測した。図14に示すように、計測用ウィンドウ102は、(111)面カットのものを使用し、[111]軸を回転中心として、10°間隔で回転させながら、0〜360°の範囲にわたって、その直線偏光純度の変化を計測した。
図15は、回転角に対する偏光純度の計測結果を示すグラフである。θ=0は、光軸が[001]軸方向であることを示す。回転角度θの正方向は、計測用ウィンドウ102を反時計方向に回転させた場合である。
図15に示すグラフから、偏光純度が一番良い角度は、真性複屈折が最小となる[001]軸方向、[100]軸方向及び[010]軸方向ではなく、それぞれの位置から反時計方向にθ=30°回転させた位置であることがわかる。
図16及び図17は、本実施例によるCaF2 (フッ化カルシウム)のウィンドウを、図8に示した2ステージレーザシステム等のチャンバ21に用いた例を示す。図16は、チャンバ21を示す図、図17(a)は、第1ウィンドウ22をチャンバ内部の矢印Aか
ら見た図、図17(b)は、第2ウィンドウ23をチャンバ内部の矢印Bから見た図である。
チャンバ21には、前記のように、光軸L上に2つの第1ウィンドウ22及び第2ウィンドウ23が取り付けてある。図示しない発振用レーザから発振されたレーザ光は、チャンバ21に入射するように構成されている。レーザ光は、第1部分反射ミラー24及び第2部分反射ミラー25により第1及び第2ウィンドウ22,23を多数往復する。
本実施例では、レーザ光軸Lに対して傾けて設置されるウィンドウとして、CaF2 結晶を両面とも(111)面でカットした図11で示したような第1ウィンドウ22及び第2ウィンドウ23を用いる。そして、本実施形態では、図17(a)及び図17(b)に示すように、チャンバ21の内部から見て(図16の矢印A,B参照)、第1ウィンドウ22及び第2ウィンドウ23それぞれを、結晶内に入射したレーザ光が[111]軸と[001]軸を含む面を通過する配置から、[111]軸を中心軸として2枚とも同じ角度で反時計方向にθ=30°回転した位置に設置する。
角度を決定する時は、事前にX線回折分析を行い、結晶方位[001]軸、[010]軸、[100]軸を計測しておくと良い。ウィンドウの[001]軸、[010]軸、[100]軸方向の側面に印を付けておき、その印に従って、反時計方向に角度θ=30°回転させて取り付けるようにすると効率が良い。
なお、図11〜図17に示した実施例では、反時計方向に角度θ=30°に設定して回転させたが、必ずしも30°丁度である必要はなく、30°±10°程度の範囲内であれば許容される。
したがって、本実施例のウィンドウ1は、レーザ光軸に対して傾けて設置されるチャンバウィンドウに対して、フッ化カルシウム結晶を両面とも(111)面でカットしたウィンドウを用い、チャンバ内部から見て、結晶内に入射したレーザ光が、[111]軸と[001]軸を含む面を通過する配置からウィンドウを[111]軸を中心軸として反時計方向に30°±10°回転させた配置、[111]軸と[010]軸を含む面を通過する配置からウィンドウを[111]軸を中心軸として反時計方向に30°±10°回転させた配置、または、[111]軸と[100]軸を含む面を通過する配置からウィンドウを[111]軸を中心軸として反時計方向に30°±10°回転させた配置にする。
以上、本発明の紫外線ガスレーザ用光学素子及び紫外線ガスレーザ装置を実施例に基づいて説明したが、本発明はこれら実施例に限定されず種々の変形が可能である。たとえば、レーザチャンバのウィンドウとしてだけでなく、偏光素子としてCaF2基板を採用し
、増幅段レーザの光共振器中に、本発明のようなレーザ光軸と結晶方位の関係となるよう偏光素子を配置してもよい。
CaF2 の結晶格子を示す図である。 CaF2 結晶の軸[001]、[100]に対する光の進行方向Lの角度θとφの定義を示す図である。 本発明によるCaF2 を用いたウィンドウの上面図と断面図である。 結晶方位によるCaF2 の真性複屈折の大きさの分布を示す図である。 出力レーザ光の偏光純度とレーザの発振ショット数との関係を示す図である。 CaF2 結晶表面に入射する角度とP偏光の反射率の関係を示す図である。 CaF2 ウィンドウへの入射角度を24.9°及び68.73°とした時の光軸とCaF2 結晶の軸の関係を示す図である。 本発明の紫外線ガスレーザ用光学素子をレーザシステムに適用する場合の断面図である。 2枚のウェッジ基板の組み合わせによるビーム拡大光学系を増幅段レーザの共振器内に配置した例を示す図である。 2枚のウェッジ基板にレーザ光が入射した場合のレーザ光路を示す図である。 回転前のウィンドウを示す断面図である。 回転後のウィンドウを示す上面図である。 偏光状態観測実験系を示す図である。 計測用ウィンドウを示す図である。 回転角に対する偏光純度の計測結果を示すグラフである。 本発明によるCaF2 を用いたウィンドウを示す図である。 図3のウィンドウをチャンバ内部から見た図である。
符号の説明
1…ウィンドウ
2、2’…表面(カット面)
3…レーザ光
4…射出光
10…発振用レーザ
11…レーザチャンバ
12、13…ウィンドウ
14…狭帯域化モジュール
15…出力鏡(部分反射ミラー)
16…ビーム拡大プリズム
17…グレーティング
18、19…ミラー1
20…増幅用レーザ
21…レーザチャンバ
22、23…ウィンドウ
24、25…部分反射ミラー
30…発振段レーザパワーモニタ
31…第1ビームスプリッタ
40…モニターモジュール
41…第2ビームスプリッタ
50…光学パルスストレッチャ
51…第3ビームスプリッタ
91、91'…ビーム拡大光学系
92、93…ウェッジ基板

Claims (4)

  1. レーザチャンバと、
    前記レーザチャンバの一方の側とその反対側に設置された光共振器と、
    前記レーザチャンバ内部に封入されたレーザガスと、
    前記レーザガスを励起する励起部と、
    前記光共振器の光軸上に配置されるフッ化カルシウム結晶からなる光学素子と、
    を備え、
    前記光学素子は、少なくとも入射平面と射出平面のどちらか一方の平面がフッ化カルシウム結晶の(111)結晶面に平行であり、
    [111]軸を中心として[001]軸を回転させた軌跡内の第1の方位軸の[001]軸からの回転角度、
    [111]軸を中心として[010]軸を回転させた軌跡内の第2の方位軸の[010]軸からの回転角度、
    又は、
    [111]軸を中心として[100]軸を回転させた軌跡内の第3の方位軸の[100]軸からの回転角度は、
    それぞれ34度以上36度以下または−3度以上−3度以下であり、
    レーザ光の前記入射平面への入射角度は、24.9°から68.73°の角度範囲内であり、
    前記入射平面から入射したレーザ光は、
    [111]軸と、前記第1の方位軸との間で、且つ、[111]軸と、前記第1の方位軸とを含む面内、
    [111]軸と、前記第2の方位軸との間で、且つ、[111]軸と、前記第2の方位軸とを含む面内、
    又は、
    [111]軸と、前記第3の方位軸との間で、且つ、[111]軸と、前記第3の方位軸とを含む面内、
    において伝播し、
    前記射出平面から射出される
    ガスレーザ装置。
  2. 前記光学素子は、レーザチャンバに設けられた2つのウィンドウである
    請求項1に記載のガスレーザ装置。
  3. 前記光学素子は、前記レーザ光を分割するビームスプリッタである
    請求項1に記載のガスレーザ装置。
  4. 前記光学素子は、前記レーザ光を拡大するビーム拡大光学系のウェッジ基板である
    請求項1に記載のガスレーザ装置。
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