JP5302820B2 - 紙送りローラ - Google Patents
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Description
また紙送りローラは、紙に対する摩擦係数を大きくして良好な紙送りを実現するため、紙と接触する外周面を粗面化したり、ローレット加工したり、シボ面としたりする場合もある。しかし、これらの加工をした外周面は摩耗しやすく、紙と繰り返し接触するうちに摩耗によって前記摩擦係数が低下して、比較的早期に紙の搬送不良を生じる場合がある。
一口にウレタンエラストマといってもその範囲は広く、液状のものを型に流し込み、架橋反応により固化させて所定の形状に形成される「注型タイプ」、一般のゴムと同様に固形のものを混凍りし、所定の形状に形成したのち架橋させる「ミラブルタイプ」、そして「熱可塑性タイプ」の3つに大別される。
しかしながらTPUの主材料であるウレタン系熱可塑性エラストマは、熱可塑性を持たせるために材料選択の幅が狭められており、特に硬さに代表される物性に制約があった。ウレタン系熱可塑性エラストマの硬さを低下させることは、耐摩耗性などの機械的強度の低下や、あるいは溶融成形後の冷却時の固化速度の低下など成形加工性の大幅な低下を伴うため、一般的に使用可能なウレタン系熱可塑性エラストマの硬さは、例えば高分子計器(株)製のマイクロゴム硬度計「MD−1型」を用いて、温度23±1℃、相対湿度55±1%の環境下で測定されるマイクロゴム硬さ(タイプA)で表して60が下限とされてきた。
すなわち、紙送りローラの紙に対する摩擦係数を左右する重要な因子の一つに、所定の圧力で紙に圧接されてたわみ変形した紙送りローラと紙との間の、紙の送り方向の接触長さ(ニップ幅)が大きいことが挙げられる。前記接触長さを大きくするほど、前記送り方向と直交する紙の幅との積で表される両者間の接触面積を大きくして、前記摩擦係数を増加できる。しかし従来の硬いウレタン系熱可塑性エラストマを含むTPUでは、前記接触長さを十分に大きくできないのである。
(1) ジイソシアネートとマクロポリオールと鎖伸長剤との付加重合物であり、前記付加重合物のもとになる各成分の配合比が式(1):
30≦(x+z)/(x+y+z)×100≦40 (1)
(式中xはジイソシアネート、yはマクロポリオール、zは鎖伸長剤の配合量を示す。)
を満足するとともに、マイクロゴム硬さ(タイプA)が80以上、95以下であるエステル型ウレタン系熱可塑性エラストマ〈E〉と、エーテルエステル系可塑剤、およびフタル酸エステル系可塑剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の可塑剤〈P〉とを、質量比E/P=95/5〜70/30の割合で含む熱可塑性エラストマ組成物、または
(2) ジイソシアネートとマクロポリオールと鎖伸長剤との付加重合物であり、前記付加重合物のもとになる各成分の配合比が前記式(1)を満足するとともに、マイクロゴム硬さ(タイプA)が80以上、95以下であるエーテル型ウレタン系熱可塑性エラストマ〈E〉と、エーテルエステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、およびリン酸系可塑剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の可塑剤〈P〉とを、質量比E/P=95/5〜70/30の割合で含む熱可塑性エラストマ組成物、
からなることを特徴とする紙送りローラである。
しかもTPUは、前記ウレタン系熱可塑性エラストマに特定の可塑剤を所定量加えることで、前記ウレタン系熱可塑性エラストマの持つ良好な耐摩耗性が維持されているため、前記TPUを用いて形成した紙送りローラは耐摩耗性にも優れ、短期間で紙に対する摩擦係数が大きく低下したり、外径変化などによって紙送りの精度が低下したりするおそれがない。
ウレタン系熱可塑性エラストマとして、ソフトセグメントがポリエステル構造であるエステル型のものを用いる場合、可塑剤としては、前記エーテルエステル系可塑剤の中でも特にモノ以上のオキシアルキレングリコールジエステル、およびフタル酸エステル系可塑剤の中でも特にオキシアルキレン骨格を有するフタル酸ジエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種を用いるのが好ましい。
なお、本発明においてウレタン系熱可塑性エラストマのゴム硬さ、および前記ウレタン系熱可塑性エラストマを含むTPUを用いて形成される本発明の紙送りローラのゴム硬さを、いずれもマイクロゴム硬さ(タイプA)によって規定しているのは、特に紙送りローラにおいて、ゴム厚みが小さ過ぎて通常のスプリング式ゴム硬度計ではゴム硬さを測定できない場合があるためである。
マイクロゴム硬さ(タイプA)は、先に説明したように高分子計器(株)製のマイクロゴム硬度計「MD−1型」を用いて、温度23±1℃、相対湿度55±1%の環境下で測定した値でもって表すこととする。
本発明の紙送りローラのもとになる熱可塑性エラストマ組成物(TPU)は、マイクロゴム硬さ(タイプA)が80以上、95以下であるエステル型ウレタン系熱可塑性エラストマまたはエーテル型ウレタン系熱可塑性エラストマ〈E〉と、可塑剤〈P〉とを、質量比E/P=95/5〜70/30の割合で含んでいる。
また、本発明においてウレタン系熱可塑性エラストマ〈E〉と可塑剤〈P〉との質量比E/Pが95/5〜70/30に限定されるのは、下記の理由による。すなわち、前記範囲より可塑剤が多い場合には、紙送りローラの耐摩耗性が低下して、長期間に亘って前記の良好な摩擦係数を維持できなくなったり、余剰の可塑剤が紙送りローラからブリード(浸出)して紙等を汚染したりするという問題を生じる。
これに対し、ウレタン系熱可塑性エラストマ〈E〉と可塑剤〈P〉との質量比E/Pが95/5〜70/30であれば、前記の問題を生じることなしに、良好な特性を有する紙送りローラを形成できる。なお、より一層良好な特性を有する紙送りローラを形成することを考慮すると、質量比E/Pは前記範囲内でも90/10〜80/20であるのが好ましい。
このうちジイソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,8−ジイソシアネートメチルオクタン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI:HMDI)等の1種または2種以上が挙げられる。中でも4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が好ましい。
2価の有機酸としては、例えば炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、および脂環式ジカルボン酸(ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等)が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしてはポリ(テトラメチレンアジペート−co−ヘキサメチレンアジペート)グリコールが好ましい。
一方、ポリエーテルポリオールとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルをそれぞれ重合させて得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールや、あるいは前記環状エーテルの2種以上を共重合させて得られるコポリエーテル等の1種または2種以上が挙げられる。中でもポリテトラメチレングリコールが好ましい。
このうち脂肪族ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール等の1種または2種以上が挙げられる。
さらに芳香族ポリオールとしては、例えば1,4−ジメチロールベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、もしくはビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等の1種または2種以上が挙げられる。
鎖伸長剤としては1,4−ブタンジオールが好ましい。
前記各成分を用いてウレタン系熱可塑性エラストマを合成する方法は従来同様でよい。例えばワンショット法では、あらかじめ減圧下で加熱する等して脱水処理したマクロポリオールに鎖伸長剤を混合し、加熱下でかく拌しながら別に加温しておいたジイソシアネートを加えてさらに加熱下で一定時間かく拌を続けることにより、前記各成分が付加重合反応してウレタン系熱可塑性エラストマが合成される。合成されたウレタン系熱可塑性エラストマは、例えば所定の温度に加熱してアニールし、粉砕したのちペレット化してTPUの原材料として用いることができる。
30≦(x+z)/(x+y+z)×100≦40 (1)
(式中xはジイソシアネート、yはマクロポリオール、zは鎖伸長剤の配合量を示す。)
を満足する範囲内である必要がある。配合比をかかる範囲内とすることで、生成されるウレタン系熱可塑性エラストマのマイクロゴム硬さ(タイプA)を前記範囲内に調整できる。
ウレタン系熱可塑性エラストマがエステル型であるとき、可塑剤としてはエーテルエステル系可塑剤、およびフタル酸エステル系可塑剤からなる群より選ばれた少なくとも1種が選択的に用いられる。一方、ウレタン系熱可塑性エラストマがエーテル型であるとき、可塑剤としては、エーテルエステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、およびリン酸系可塑剤からなる群より選ばれた少なくとも1種が選択的に用いられる。
例えば加水分解防止剤はエステル型のウレタン系熱可塑性エラストマが加水分解反応により劣化するのを防止するためのもので、先に説明したジイソシアネートとマクロポリオールと鎖伸長剤とを付加重合反応させる反応系にあらかじめ添加しておくことができる。
〈紙送りローラ〉
図1は、本発明の紙送りローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
このうち射出成形法では、先に説明したペレット状等に形成されたTPUを、さらに必要に応じて任意の添加剤等と共に射出成形機を用いて混練しながら加熱して溶融させた状態で、前記ローラ本体2の円筒状に対応する型内に注入し、冷却して固化させたのち型から取り出してローラ本体2を形成する。
次いで、形成したローラ本体2の通孔3に軸4を圧入する。またその前後の任意の時点で、必要に応じてさらにその外周面5を所定の表面粗さになるように研磨したり、前記外周面5をローレット加工、シボ加工等したり、あるいはローラ本体2の軸方向の長さ、すなわち紙送りローラ1の幅が所定値となるようにローラ本体2の両端をカットしたりする。これにより図1に示す紙送りローラ1が製造される。
また紙送りローラ1の用途によっては、通孔3はローラ本体2の中心から偏心した位置に設けてもよい。またローラ本体2は円筒状でなく異形形状、例えば外周面5の一部が平面状に切り欠かれた形状等であってもよい。かかる異形形状を有するローラ本体2を形成するには、射出成形法、押出成形法等によって、ローラ本体2を前記異形形状に直接に成形してもよいし、円筒状に形成したローラ本体2の外周面5を後加工して前記異形形状としてもよい。
本発明の紙送りローラ1は、例えば静電式複写機、レーザービームプリンタ、普通紙ファクシミリ装置、インクジェットプリンタ、自動現金預払機(ATM)等の機器類における紙送り機構に組み込まれる、給紙ローラ、搬送ローラ、プラテンローラ、排紙ローラ等の種々の紙送りローラとして用いることができる。
また、ローラ本体2のマイクロゴム硬さ(タイプA)は、先に説明した問題を生じることなしに良好な特性を有する紙送りローラ1を形成することを考慮すると、前記範囲内でも70以上、75以下であるのがさらに好ましい。
ポリエステルポリオールとしてのポリ(テトラメチレンアジペート−co−ヘキサメチレンアジペート)グリコール〔数平均分子量Mn=2000〕を5hPaの減圧下で110℃に加熱して1時間、脱水処理した。
次いで前記ポリ(テトラメチレンアジペート−co−ヘキサメチレンアジペート)グリコール2000質量部に、鎖伸長剤としての1,4−ブタンジオール160.6質量部を混合し、80℃の加熱下でかく拌下しながら、別に50℃に加温しておいた、ジイソシアネートとしての4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート696.5質量部、加水分解防止剤としての登録商標スタバクゾール(Stabaxol)I〔ライン ヘミー ライナウ社製〕13質量部を加えてさらにかく拌を続けた。
前記ペレットを用いて厚み2mmのシートを形成し、温度23±1℃、相対湿度55±1%の環境下、前記シートを4枚重ねた表面上の5箇所の位置で、マイクロゴム硬度計〔高分子計器(株)製のMD−1〕の押針をシートの厚み方向に押し込んで測定したゴム硬さの平均値をウレタン系熱可塑性エラストマのマイクロゴム硬さ(タイプA)として求めたところ80であった。また、前記式(1)で求められる各成分の配合比は30.0であった。
1,4−ブタンジオールの量を256質量部、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの量を960質量部としたこと以外は合成例1と同様にしてエステル型のウレタン系熱可塑性エラストマのペレットを作製した。前記ウレタン系熱可塑性エラストマのマイクロゴム硬さ(タイプA)を同様にして求めたところ90であった。また、前記式(1)で求められる各成分の配合比は37.8であった。
1,4−ブタンジオールの量を105質量部、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの量を542質量部としたこと以外は合成例1と同様にしてエステル型のウレタン系熱可塑性エラストマのペレットを作製した。前記ウレタン系熱可塑性エラストマのマイクロゴム硬さ(タイプA)を同様にして求めたところ70であった。また、前記式(1)で求められる各成分の配合比は24.4であった。
1,4−ブタンジオールの量を323.4質量部、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの量を1149質量部としたこと以外は合成例1と同様にしてエステル型のウレタン系熱可塑性エラストマのペレットを作製した。前記ウレタン系熱可塑性エラストマのマイクロゴム硬さ(タイプA)を同様にして求めたところ98であった。また、前記式(1)で求められる各成分の配合比は42.4であった。
前記合成例1で作製したウレタン系熱可塑性エラストマのペレット80質量部と、モノ以上のオキシアルキレングリコールジエステルとしてのジイソプロピレングリコールジベンゾエート〔ベルシコル ケミカル社製の登録商標ベンゾフレックス(Benzoflex)988〕20質量部とをペール缶に入れ、80℃のオーブン中で15時間加熱してペレットに可塑剤を含浸させた後、ペール缶の内容物の全量を2軸押出機〔スクリュー径30mm、L/D 36D、回転数10〜300rpm〕に供給し、前記2軸押出機を用いて混練しながら連続的に押し出したのち、再度ペレット化してTPUのペレットを製造した。押出条件はスクリューの回転数120rpm、樹脂温度180℃とした。ウレタン系熱可塑性エラストマと可塑剤の質量比E/P=80/20であった。
次いで前記ローラ本体2の通孔3に直径8mmの仮の軸を圧入した状態で、軸方向の長さを25mmにカットし、前記通孔3に直径8mmのステンレス鋼製の軸4を圧入しなおした。そしてローラ本体2の外周面5を、外径が12.7mmになるまで研磨して紙送りローラ1を形成した。ローラ本体のゴム厚みは2.35mmであった。
ウレタン系熱可塑性エラストマのペレットとして、それぞれ合成例2(実施例2)、および合成例4(比較例1)で作製したものを用いると共に、前記ペレットの量を90質量部、エーテルエステル系可塑剤としてのジイソプロピレングリコールジベンゾエートの量を10質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてTPUのペレットを製造した。ウレタン系熱可塑性エラストマと可塑剤の質量比E/P=90/10であった。
ウレタン系熱可塑性エラストマのペレットとして、合成例3で作製したものを用いたこと以外は実施例1と同様にしてTPUのペレットを製造した。ウレタン系熱可塑性エラストマと可塑剤の質量比E/P=80/20であった。
前記各実施例、比較例で製造したTPUのペレット、および紙送りローラ1について下記の各試験を行なってその特性を評価した。なお各試験は、いずれも23±1℃、相対湿度55±1%の環境下で実施した。
前記各実施例、比較例で製造したTPUを、前出の射出成形機に供給し、前記射出成形機を用いて混練しながら加熱して溶融させた状態で型内に注入し、冷却して固化させたのち型から取り出して、日本工業規格JIS K 6262:2006「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム―常温,高温及び低温における圧縮永久ひずみの求め方」において規定された圧縮玉を形成し、所定の形状を有する前記圧縮玉を、変形等を生じることなしに型から取り出せるようになるまでに要した冷却時間を測定した。測定条件は、樹脂温度190℃、金型温度15℃とした。そして下記の基準で成形性を評価した。
△:冷却時間は180秒以上、600秒未満であった。成形性実用範囲内。
×:冷却時間600秒以上でも十分に固化せず、脱型時に変形を生じて、所定の形状を有する圧縮玉を型から取り出すことはできなかった。成形性不良。
〈硬さ測定〉
前記各実施例、比較例で形成した紙送りローラ1の、ローラ本体2の外周面5上の5箇所の位置で、マイクロゴム硬度計〔高分子計器(株)製のMD−1〕の押針を紙送りローラ1の径方向に押し込んで測定したゴム硬さの平均値を求めて、前記ローラ本体2のマイクロゴム硬さ(タイプA)とした。
前記各実施例、比較例で形成した紙送りローラ1の軸方向中央の箇所を、(株)キーエンス製の外径測定器〔LS−3100〕を用いて外径測定後、モノクロ複合機〔富士ゼロックス(株)製のヴィヴァーチェ(Vivace)455〕にセットして普通コピー紙〔天津市海尼斯文化用品有限公司製の商品名FLYING〕を50000枚通紙した。そして通紙後に再び同様にして紙送りローラ1の外径を測定して、摩耗による通紙前後の外径減量を求め、下記の基準で耐摩耗性を評価した。
×:外径減量は0.05mmを超えていた。耐摩耗性不良。
〈摩擦係数の測定〉
表面が水平になるようにセットしたテフロン製の平板の前記表面に、前記各実施例、比較例で形成した紙送りローラ1のローラ本体2を、鉛直方向上方から0.98Nの鉛直荷重をかけて圧接させた状態で、前記紙送りローラ1と平板との間に、紙送り方向の長さが210mm、前記紙送り方向と直行する方向の幅が60mmの矩形状の測定紙をセットした。測定紙としてはキヤノン(株)製のコピー用紙BF500を前記サイズにカットしたものを用いた。
ローラ本体2の表面に可塑剤がブリードすると摩擦係数μが低下することから、前記各実施例、比較例で形成した紙送りローラに対して日本工業規格JIS K6257:2003「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−熱老化特性の求め方」に規定された空気加熱老化試験、促進老化試験A−1法(試験温度70±1℃)を実施する前後に、それぞれ前記と同条件で摩擦係数μを求めて、下記の基準でブリードが生じたか否かを評価した。
×:初期の摩擦係数μが0.6未満であるか、または老化試験後の摩擦係数μの変化率が10%以上であった。ブリードあり。
以上の結果を表1に示す。
これに対し実施例1、2の結果より、マイクロゴム硬さ(タイプA)が80以上、95以下であるウレタン系熱可塑性エラストマと可塑剤とを配合したTPUは、いずれも成形性が良好である上、前記TPUを用いて形成した紙送りローラ1のローラ本体2はマイクロゴム硬さ(タイプA)が90以下であって柔軟であるため良好な摩擦係数を有し、かつ耐摩耗性に優れるため長期の使用が可能であり、しかも可塑剤のブリードも生じないことが確認された。
可塑剤として、モノ以上のオキシアルキレングリコールジエステルであるポリエチレングリコールジエステル〔三洋化成工業(株)製のサンフレックス(登録商標)EB300〕(実施例3)、およびオキシアルキレン構造を有するフタル酸であるフタル酸ビス(2−メトキシエチル)(DMEP、実施例4)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてTPUのペレットを製造し、紙送りローラ1を形成した。ウレタン系熱可塑性エラストマと可塑剤の質量比E/P=80/20であった。
可塑剤として、いずれもエーテルエステル系でもフタル酸エステル系でもないジイソデシルアジペート(DIDA、脂肪族二塩基酸系、比較例3)、およびカーボネート系合成油〔松村石油(株)製のバーレルプロセス油M18〕(比較例4)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてTPUのペレットを製造し、紙送りローラ1を形成した。ウレタン系熱可塑性エラストマと可塑剤の質量比E/P=80/20であった。
合成例1で作製したウレタン系熱可塑性エラストマのペレットと、エーテルエステル系可塑剤としてのジイソプロピレングリコールジベンゾエートとの質量比E/Pを98/2(比較例5)、90/10(実施例5)、70/30(実施例6)、および50/50(比較例6)としたこと以外は実施例1と同様にしてTPUのペレットを製造し、紙送りローラ1を形成した。
これに対し実施例1、5、6の結果より、質量比E/P=95/5〜70/30であるTPUは、いずれも成形性が良好である上、前記TPUを用いて形成した紙送りローラ1のローラ本体2は柔軟であるため良好な摩擦係数を有し、かつ耐摩耗性に優れるため長期の使用が可能であり、しかも可塑剤のブリードも生じないことが確認された。
ポリエーテルポリオールとしてのポリテトラメチレングリコール〔数平均分子量Mn=2000〕を5hPaの減圧下で110℃に加熱して1時間、脱水処理した。
次いで前記ポリテトラメチレングリコール2000質量部に、鎖伸長剤としての1,4−ブタンジオール160.6質量部を混合し、80℃の加熱下でかく拌下しながら、別に50℃に加温しておいた、ジイソシアネートとしての4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート696.5質量部、酸化防止剤としての登録商標イルガノックス(Irganox)1010〔チバ スペシャルティ ケミカルズ社製〕15.6質量部を加えてさらにかく拌を続けた。
ウレタン系熱可塑性エラストマのマイクロゴム硬さ(タイプA)を前記と同様にして求めたところ80であった。また、前記式(1)で求められる各成分の配合比は30.0であった。
1,4−ブタンジオールの量を255.5質量部、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの量を960.0質量部としたこと以外は合成例5と同様にしてエーテル型のウレタン系熱可塑性エラストマのペレットを作製した。前記ウレタン系熱可塑性エラストマのマイクロゴム硬さ(タイプA)を前記と同様にして求めたところ90であった。また、前記式(1)で求められる各成分の配合比は37.8であった。
1,4−ブタンジオールの量を104.6質量部、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの量を540.9質量部としたこと以外は合成例5と同様にしてエーテル型のウレタン系熱可塑性エラストマのペレットを作製した。前記ウレタン系熱可塑性エラストマのマイクロゴム硬さ(タイプA)を前記と同様にして求めたところ70であった。また、前記式(1)で求められる各成分の配合比は24.4であった。
1,4−ブタンジオールの量を323.4質量部、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの量を1148.8質量部としたこと以外は合成例5と同様にしてエーテル型のウレタン系熱可塑性エラストマのペレットを作製した。前記ウレタン系熱可塑性エラストマのマイクロゴム硬さ(タイプA)を前記と同様にして求めたところ98であった。また、前記式(1)で求められる各成分の配合比は42.4であった。
前記合成例5で作製したウレタン系熱可塑性エラストマのペレット80質量部と、可塑剤としてのジイソプロピレングリコールジベンゾエート(前出のベンゾフレックス988)20質量部とをペール缶に入れ、80℃のオーブン中で15時間加熱してペレットに可塑剤を含浸させた後、ペール缶の内容物の全量を2軸押出機〔スクリュー径30mm、L/D 36D、回転数10〜300rpm〕に供給し、前記2軸押出機を用いて混練しながら連続的に押し出したのち、再度ペレット化してTPUのペレットを製造した。ウレタン系熱可塑性エラストマと可塑剤の質量比E/P=80/20であった。
次いで前記ローラ本体2の通孔3に直径8mmの仮の軸を圧入した状態で、軸方向の長さを25mmにカットし、前記通孔3に直径8mmのステンレス鋼製の軸4を圧入しなおした。そしてローラ本体2の外周面5を、外径が12.7mmになるまで研磨して紙送りローラ1を形成した。ローラ本体のゴム厚みは2.35mmであった。
ウレタン系熱可塑性エラストマのペレットとして、それぞれ合成例6(実施例8)、および合成例8(比較例7)で作製したものを用いると共に、前記ペレットの量を90質量部、エーテルエステル系可塑剤としてのジイソプロピレングリコールジベンゾエートの量を10質量部としたこと以外は実施例7と同様にしてTPUのペレットを製造した。ウレタン系熱可塑性エラストマと可塑剤の質量比E/P=90/10であった。
ウレタン系熱可塑性エラストマのペレットとして、合成例7で作製したものを用いたこと以外は実施例7と同様にしてTPUのペレットを製造した。ウレタン系熱可塑性エラストマと可塑剤の質量比E/P=80/20であった。
前記各実施例、比較例で製造したTPUのペレット、および紙送りローラ1について前記の各試験を行なってその特性を評価した。結果を表4に示す。
これに対し実施例7、8の結果より、マイクロゴム硬さ(タイプA)が80以上、95以下であるウレタン系熱可塑性エラストマと可塑剤とを配合したTPUは、いずれも成形性が良好である上、前記TPUを用いて形成した紙送りローラ1のローラ本体2はマイクロゴム硬さ(タイプA)が90以下であって柔軟であるため良好な摩擦係数を有し、かつ耐摩耗性に優れるため長期の使用が可能であり、しかも可塑剤のブリードも生じないことが確認された。
可塑剤として、モノ以上のオキシアルキレングリコールジエステルであるポリエチレングリコールジエステル〔三洋化成工業(株)製のサンフレックス(登録商標)EB300〕(実施例9)、オキシアルキレン構造を有するフタル酸エステルであるフタル酸ビス(2−メトキシエチル)(DMEP、実施例10)、およびリン酸エステルであるトリブトキシエチルホスフェート(TBP、実施例11)を用いたこと以外は実施例7と同様にしてTPUのペレットを製造し、紙送りローラ1を形成した。ウレタン系熱可塑性エラストマと可塑剤の質量比E/P=80/20であった。
可塑剤として、いずれもエーテルエステル系でもフタル酸エステル系でもリン酸系でもないジイソデシルアジペート(DIDA、脂肪族二塩基酸系、比較例9)、およびカーボネート系合成油〔松村石油(株)製のバーレルプロセス油M18〕(比較例10)を用いたこと以外は実施例7と同様にしてTPUのペレットを製造し、紙送りローラ1を形成した。ウレタン系熱可塑性エラストマと可塑剤の質量比E/P=80/20であった。
合成例5で作製したウレタン系熱可塑性エラストマのペレットと、エーテルエステル系可塑剤としてのジイソプロピレングリコールジベンゾエートとの質量比E/Pを98/2(比較例11)、90/10(実施例12)、70/30(実施例13)、および50/50(比較例12)としたこと以外は実施例7と同様にしてTPUのペレットを製造し、紙送りローラ1を形成した。
これに対し実施例7、12、13の結果より、質量比E/P=95/5〜70/30であるTPUは、いずれも成形性が良好である上、前記TPUを用いて形成した紙送りローラ1のローラ本体2はマイクロゴム硬さ(タイプA)が90以下であって柔軟であるため良好な摩擦係数を有し、かつ耐摩耗性に優れるため長期の使用が可能であり、しかも可塑剤のブリードも生じないことが確認された。
2 ローラ本体
3 通孔
4 軸
5 外周面
Claims (6)
- (1) ジイソシアネートとマクロポリオールと鎖伸長剤との付加重合物であり、前記付加重合物のもとになる各成分の配合比が式(1):
30≦(x+z)/(x+y+z)×100≦40 (1)
(式中xはジイソシアネート、yはマクロポリオール、zは鎖伸長剤の配合量を示す。)
を満足するとともに、マイクロゴム硬さ(タイプA)が80以上、95以下であるエステル型ウレタン系熱可塑性エラストマ〈E〉と、エーテルエステル系可塑剤、およびフタル酸エステル系可塑剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の可塑剤〈P〉とを、質量比E/P=95/5〜70/30の割合で含む熱可塑性エラストマ組成物、または
(2) ジイソシアネートとマクロポリオールと鎖伸長剤との付加重合物であり、前記付加重合物のもとになる各成分の配合比が前記式(1)を満足するとともに、マイクロゴム硬さ(タイプA)が80以上、95以下であるエーテル型ウレタン系熱可塑性エラストマ〈E〉と、エーテルエステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、およびリン酸系可塑剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の可塑剤〈P〉とを、質量比E/P=95/5〜70/30の割合で含む熱可塑性エラストマ組成物、
からなることを特徴とする紙送りローラ。 - ウレタン系熱可塑性エラストマがエステル型ウレタン系熱可塑性エラストマであり、かつ可塑剤が、モノ以上のオキシアルキレングリコールジエステル、およびオキシアルキレン骨格を有するフタル酸ジエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の紙送りローラ。
- モノ以上のオキシアルキレングリコールジエステルが、ジプロピレングリコールジベンゾエート、およびポリエチレングリコールジエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項2に記載の紙送りローラ。
- ウレタン系熱可塑性エラストマがエーテル型ウレタン系熱可塑性エラストマであり、かつ可塑剤が、モノ以上のオキシアルキレングリコールジエステル、オキシアルキレン骨格を有するフタル酸ジエステル、脂肪族二塩基酸ジエステル、およびリン酸エステルからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の紙送りローラ。
- モノ以上のオキシアルキレングリコールジエステルが、ジプロピレングリコールジベンゾエート、およびポリエチレングリコールジエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項4に記載の紙送りローラ。
- マイクロゴム硬さ(タイプA)が60以上、90以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の紙送りローラ。
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