JP5273309B1 - 車両の制御装置 - Google Patents

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Abstract

エンジンと、手動変速機と、エンジンと手動変速機との間に設けられたクラッチと、クラッチの状態をドライバが操作するためのクラッチ操作部とを備える車両の制御装置である。車両の制御装置は、アクセルオフでの発進時において、クラッチ操作部が操作されることによりクラッチが切断状態から継合状態に切り替えられるときに、エンジン回転数を上昇させるエンジン回転数上昇制御を所定の開始タイミングで開始し、エンジン回転数上昇制御の開始前後の所定期間に、エンジン回転数の低下傾向が大きい場合に、次回のアクセルオフでの発進時におけるエンジン回転数上昇制御の開始タイミングを早くする。

Description

本発明は、手動変速機を備える車両の制御装置に関する。
従来、エンジンと、手動変速機と、エンジンと手動変速機との間に設けられたクラッチとを備える車両が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
特許文献1には、クラッチの状態をドライバが操作するためのクラッチペダルが設けられた車両が開示されている。この特許文献1の車両は、アクセルオフでの発進時において、クラッチペダルが操作されることによりクラッチが切断状態から継合状態に切り替えられるときに、クラッチのストローク位置およびストローク速度に基づいてエンジン回転数を上昇させるように構成されている。これにより、クラッチペダルを備えた車両であっても、発進時にアクセルペダルの操作を省略するとともに、円滑な発進を行うことが可能である。
また、特許文献2には、クラッチペダルが設けられておらず、アクセルペダルの操作量などに基づいてクラッチの状態を自動的に制御するように構成された車両が開示されている。この特許文献2の車両では、クラッチを切断状態から継合状態に切り替えるときに、継合完了までの時間を短縮するためにクラッチを第1の移動速度で移動させた後に、エンジンストールなどを防止するためにクラッチを第1の移動速度よりも小さい第2の移動速度で移動させている。そして、特許文献2の車両は、アクセルオンでの発進時において、エンジン回転数の低下量が所定の閾値以上である場合に、クラッチの移動速度の切替位置を切断側に補正するように構成されている。これにより、クラッチ継合時の衝撃の防止および発進性を向上させることが可能である。
特開2008−157184号公報 特開2010−276117号公報
しかしながら、特許文献1に開示された従来の車両では、クラッチの接触位置(タッチ点)が一定であることを前提としているため、例えば、製造ばらつき(個体ばらつき)によりクラッチの接触位置が異なる場合や、経年変化によりクラッチの接触位置が変化する場合には、エンジン回転数を適切に上昇させることが困難であるという問題点がある。
なお、特許文献2には、クラッチの状態をドライバの操作によらず自動的に制御する車両において、クラッチの移動速度の切替位置を補正する構成が開示されているが、クラッチペダルを備える車両では、クラッチの状態がドライバの操作に依存するので、クラッチペダルを備える車両に特許文献2に記載された構成を適用することは困難である。また、クラッチペダルを備える車両では、発進操作時にクラッチの係合点学習を行うことが難しく、その必要性も薄かったため、係合点学習をどのように行うかについては十分に検討されてこなかった。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、クラッチ操作部を備える車両におけるアクセルオフでの発進時において、エンジン回転数を適切に上昇させることが可能な車両の制御装置を提供することである。
本発明は、エンジンと、手動変速機と、エンジンと手動変速機との間に設けられたクラッチと、クラッチの状態をドライバが操作するためのクラッチ操作部とを備える車両に適用される制御装置である。具体的には、本発明による車両の制御装置は、アクセルオフでの発進時において、クラッチ操作部が操作されることによりクラッチが切断状態から継合状態に切り替えられるときに、エンジン回転数を上昇させるエンジン回転数上昇制御を所定の開始タイミングで開始するように構成されている。また、車両の制御装置は、エンジン回転数上昇制御の開始前後の所定期間に、エンジン回転数の低下傾向が大きい場合に、次回のアクセルオフでの発進時におけるエンジン回転数上昇制御の開始タイミングを早くするように構成されている。なお、エンジン回転数上昇制御の開始前後の所定期間は、エンジン回転数上昇制御の開始タイミングを含む期間であって、エンジン回転数上昇制御の開始前から開始後までの予め設定された期間である。
このように構成することによって、エンジン回転数上昇制御の開始タイミングを補正することにより、アクセルオフでの発進時におけるエンジン回転数上昇制御の開始タイミングが遅くなりすぎるのを抑制することができるので、エンジン回転数が必要以上に低下するのを抑制することができる。これにより、アクセルオフでの発進時にエンジン回転数を適切に上昇させることができる。
上記車両の制御装置において、エンジン回転数の低下傾向が大きい場合には、エンジン回転数が第1閾値よりも低下した場合が含まれていてもよい。なお、第1閾値は、例えば、アイドル回転数よりも低い予め設定された回転数である。
上記車両の制御装置において、エンジン回転数上昇制御の開始前後の所定期間に、エンジン回転数の低下傾向が大きくない場合に、次回のアクセルオフでの発進時におけるエンジン回転数上昇制御の開始タイミングを遅くするように構成されていてもよい。なお、エンジン回転数の低下傾向が大きくない場合には、エンジン回転数が上昇傾向である場合が含まれる。
このように構成すれば、エンジン回転数上昇制御の開始タイミングを補正することにより、アクセルオフでの発進時におけるエンジン回転数上昇制御の開始タイミングが早くなりすぎるのを抑制することができるので、エンジン回転数が必要以上に噴き上がるのを抑制することができる。これにより、アクセルオフでの発進時にエンジン回転数をより適切に上昇させることができる。
この場合において、エンジン回転数の低下傾向が大きくない場合には、エンジン回転数が第2閾値よりも上昇した場合が含まれていてもよい。なお、第2閾値は、例えば、アイドル回転数よりも高い予め設定された回転数である。
上記エンジン回転数の低下傾向が大きくない場合に、次回のアクセルオフでの発進時におけるエンジン回転数上昇制御の開始タイミングを遅くする車両の制御装置において、エンジン回転数上昇制御の開始タイミングを早くする第1補正量は、エンジン回転数上昇制御の開始タイミングを遅くする第2補正量よりも大きくてもよい。
これは、エンジン回転数の低下傾向が大きい場合には、エンジン回転数上昇制御の開始タイミングが遅いと判断することが可能であるが、エンジン回転数の低下傾向が大きくない場合には、エンジン回転数上昇制御の開始タイミングが早いか理想的であるかを判断することが困難であるため、このように構成すれば、エンジン回転数上昇制御の開始タイミングを適正な範囲内に収めることができる。
上記車両の制御装置において、エンジン回転数上昇制御の開始前に、エンジン回転数の低下傾向が大きい場合に、エンジン回転数上昇制御を開始するように構成されていてもよい。
このように構成すれば、エンジン回転数上昇制御の開始タイミングが遅かった場合に、すぐにエンジン回転数上昇制御を開始することにより、エンジン回転数が必要以上に低下するのを抑制することができる。
上記車両の制御装置において、エンジン回転数上昇制御の開始タイミングは、クラッチのストローク位置に基づいて判断されるようにしてもよい。
本発明の車両の制御装置によれば、クラッチ操作部を備える車両におけるアクセルオフでの発進時において、エンジン回転数を適切に上昇させることができる。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の概略構成を示す図である。 図2は、図1の車両に搭載されるエンジンの概略構成を示す図である。 図3は、図1の車両に搭載される手動変速機の概略構成を示すスケルトン図である。 図4は、図1の車両に搭載される手動変速機のシフトパターンの概略を示す図である。 図5は、図1の車両に搭載されるクラッチ装置の概略構成を示す図である。 図6は、図1の車両に搭載されるECU等の制御系の構成を示すブロック図である。 図7は、図1の車両のアクセルオフでの発進時において、アイドルアップ制御の開始タイミングが理想的である場合を示すタイムチャートである。 図8は、図1の車両のアクセルオフでの発進時において、アイドルアップ制御の開始タイミングが遅い場合を示すタイムチャートである。 図9は、図1の車両のアクセルオフでの発進時において、アイドルアップ制御の開始タイミングが早い場合を示すタイムチャートである。 図10は、図6のECUが実行するアイドルアップ処理の一例を示すフローチャートである。 図11は、図6のECUが実行するアイドルアップ制御の開始タイミングの補正処理の一例を示すフローチャートである。 図12は、アクセルオフでの発進回数と、アイドルアップ制御の開始タイミングとの関係を示すグラフである。 図13は、変形例による車両のアクセルオフでの発進時において、アイドルアップ制御の開始タイミングが遅い場合を示すタイムチャートである。
本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の概略構成を示す図である。
図1に示す車両は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)方式の車両であって、走行用動力源であるエンジン1、手動変速機2、クラッチ装置3、シフト装置5、アクセルペダル6、クラッチペダル7等を備えている。この車両では、エンジン1で発生した駆動力(駆動トルク)が、エンジン1の出力軸であるクランクシャフト15から、クラッチ装置3を介して手動変速機2に入力される。手動変速機2に入力されたトルクは、手動変速機2により適宜の変速比で変速され、出力軸22(図3参照)から出力される。そして、出力軸22から出力されたトルクは、プロペラシャフト41、デファレンシャルギヤ42、車軸43,43を介して左右の後輪(駆動輪)44,44に伝達される。以下、車両の各部についてそれぞれ説明する。
−エンジン−
図2は、図1の車両に搭載されるエンジン1の概略構成を示す図である。
エンジン(内燃機関)1は、例えば多気筒ガソリンエンジンであって、図2に示すように、燃焼室1aを形成するピストン1b、および、出力軸であるクランクシャフト15を備えている。ピストン1bは、コネクティングロッド16を介してクランクシャフト15に連結されている。ピストン1bの往復運動は、コネクティングロッド16によってクランクシャフト15の回転運動に変換される。
クランクシャフト15には、シグナルロータ17が配設されている。シグナルロータ17の外周面には、複数の突起17aが等間隔で形成されている。シグナルロータ17の側方近傍には、エンジン回転数センサ124が配置されている。エンジン回転数センサ124は、例えば電磁ピックアップであって、クランクシャフト15が回転する際に、エンジン回転数センサ124に対向する位置を通過する突起17aの個数分のパルス状信号(出力パルス)を発生する。また、エンジン1のシリンダブロック1cには、エンジン水温(冷却水の水温)を検出する水温センサ121が配設されている。
エンジン1の燃焼室1aには、点火プラグ103が配設されている。点火プラグ103の点火タイミングは、イグナイタ104によって調整される。イグナイタ104は、ECU8によって制御される。
燃焼室1aには、吸気通路11および排気通路12が接続されている。吸気通路11と燃焼室1aとの間には、吸気バルブ13が設けられている。吸気バルブ13を開閉駆動することによって、吸気通路11と燃焼室1aとが連通または遮断される。また、排気通路12と燃焼室1aとの間には、排気バルブ14が設けられている。排気バルブ14を開閉駆動することによって、排気通路12と燃焼室1aとが連通または遮断される。これら吸気バルブ13および排気バルブ14の開閉駆動は、クランクシャフト15の回転が伝達される吸気カムシャフトおよび排気カムシャフト(図示略)のそれぞれの回転によって行われる。
吸気通路11には、エアクリーナ107、エアフローメータ122、吸気温センサ123、エンジン1の吸入空気量を調整するための電子制御式のスロットルバルブ105等が配設されている。排気通路12には、排気ガス中の酸素濃度を検出するO2センサ126、三元触媒108等が配設されている。
スロットルバルブ105は、スロットルモータ106によって駆動される。これにより、スロットルバルブ105の開度(スロットル開度)が調整され、スロットル開度に応じてエンジン1の吸入空気量が調整される。スロットル開度は、スロットル開度センサ125によって検出される。スロットルモータ106は、ECU8によって駆動制御される。
また、吸気通路11には、インジェクタ(燃料噴射弁)102が配設されている。インジェクタ102には、図示しない燃料タンクから燃料ポンプによって所定圧力の燃料が供給され、インジェクタ102によって吸気通路11に燃料が噴射される。インジェクタ102により噴射された燃料は、吸入空気と混合されて混合気となって、エンジン1の燃焼室1aに導入される。燃焼室1aに導入された混合気(燃料+空気)は、点火プラグ103によって点火されて燃焼、爆発する。混合気が燃焼室1a内で燃焼、爆発することによって、ピストン1bが往復運動して、クランクシャフト15が回転駆動される。
−手動変速機−
図3は、図1の車両に搭載される手動変速機2の概略構成を示すスケルトン図である。
手動変速機2は、一般に知られている公知の同期噛み合い式のマニュアルトランスミッション(例えば前進6段、後進1段)であって、図3に示すように、入力軸21がクラッチ装置3を介してエンジン1のクランクシャフト15に連結されている。また、出力軸22がプロペラシャフト41(図1参照)に連結されている。この手動変速機2によりエンジン1からの駆動トルクを所定の変速比で変速した後に後輪44,44側に伝達するようになっている。
手動変速機2は、変速比(ギヤ比)の異なる6組の前進用ギヤ段201〜206、1組の後進用ギヤ段207、1−2変速用シンクロメッシュ機構24A、3−4変速用シンクロメッシュ機構24B、5−6変速用シンクロメッシュ機構24Cなどを備えている。
前進用ギヤ段201〜206は、それぞれ、入力軸21側に外装されるドライブギヤ211〜216と、出力軸22側に外装されるドリブンギヤ221〜226とを組み合わせた構成である。ドライブギヤ211〜216は、それぞれ、ドリブンギヤ221〜226に噛み合わされる。
1速および2速のドライブギヤ211,212は、入力軸21と一体として回転するように取り付けられている。一方、3速〜6速のドライブギヤ213〜216は、入力軸21にベアリング(例えば、ケージアンドローラ)を介して相対回転可能に取り付けられている。また、1速および2速のドリブンギヤ221,222は、出力軸22にベアリング(例えば、ケージアンドローラ)を介して相対回転可能に取り付けられている。一方、3速〜6速のドリブンギヤ223〜226は、出力軸22と一体として回転するように取り付けられている。後進用ギヤ段207は、リバースドライブギヤ217、リバースドリブンギヤ227、リバースアイドラギヤ237などを備えている。
シンクロメッシュ機構24A,24B,24Cは、公知の構成であるため、詳細な説明については省略する。シンクロメッシュ機構24A,24B,24Cは、略同一の構成であって、詳細には図示しないが、スリーブ241、シンクロナイザリング、クラッチハブなどを備えている。スリーブ241は、手動変速機2のシフトフォーク(図示略)によって軸方向にスライドされる。シフトフォークは、シフト装置5のシフトレバー501(図1参照)で選択操作されるシフトポジションに対応する変速段を成立するように作動される。シフトレバー501とシフトフォークとは、ケーブルや、リンク等によって機械的に連結されている。シフトレバー501で選択されたシフトポジションは、手動変速機2に設けられたシフトポジションセンサ502(図1参照)によって検出される。なお、シフトポジションセンサ502をシフトレバー501の近傍に設ける構成としてもよい。
ここで、車室内のフロアに配設され、シフト装置5のシフトレバー501の移動をガイドするシフトゲートのシフトパターン(シフトゲート形状)について説明する。
図4は、前進6段、後進1段の変速段を有する手動変速機2のシフトパターンの概略を示している。この実施形態では、シフトレバー501は、図4に矢印Xで示す方向のセレクト操作と、このセレクト操作方向に直交する矢印Yで示す方向のシフト操作とを実行可能な構成とされている。
セレクト操作方向には、1速−2速セレクト位置P1、3速−4速セレクト位置P2、5速−6速セレクト位置P3、およびリバースセレクト位置P4が一列に並んでいる。
1速−2速セレクト位置P1でのシフト操作(矢印Y方向の操作)により、シフトレバー501を1速位置1stまたは2速位置2ndに動かすことができる。シフトレバー501が1速位置1stに操作された場合、手動変速機2の1−2変速用シンクロメッシュ機構24Aのスリーブ241が1速成立側(図3では右方側)に作動して第1速段が成立する。また、シフトレバー501が2速位置2ndに操作された場合、1−2変速用シンクロメッシュ機構24Aのスリーブ241が2速成立側(図3では左方側)に作動して第2速段が成立する。
同様に、3速−4速セレクト位置P2でのシフト操作により、シフトレバー501を3速位置3rdまたは4速位置4thに動かすことができる。シフトレバー501が3速位置3rdに操作された場合、手動変速機2の3−4変速用シンクロメッシュ機構24Bのスリーブ241が3速成立側(図3では右方側)に作動して第3速段が成立する。また、シフトレバー501が4速位置4thに操作された場合、3−4変速用シンクロメッシュ機構24Bのスリーブ241が4速成立側(図3では左方側)に作動して第4速段が成立する。
また、5速−6速セレクト位置P3でのシフト操作により、シフトレバー501を5速位置5thまたは6速位置6thに動かすことができる。シフトレバー501が5速位置5thに操作された場合、手動変速機2の5−6変速用シンクロメッシュ機構24Cのスリーブ241が5速成立側(図3では右方側)に作動して第5速段が成立する。また、シフトレバー501が6速位置6thに操作された場合、5−6変速用シンクロメッシュ機構24Cのスリーブ241が6速成立側(図3では左方側)に作動して第6速段が成立する。
さらに、リバースセレクト位置P4でのシフト操作により、シフトレバー501をリバース位置REVに動かすことができる。このリバース位置REVにシフトレバー501が操作された場合、手動変速機2のシンクロメッシュ機構24A,24B,24Cがそれぞれニュートラル状態(中立状態)となるとともに、手動変速機2のリバースアイドラギヤ237が作動することにより後進段が成立する。
また、この実施形態では、3速−4速セレクト位置P2がニュートラル位置となっている。このニュートラル位置P2にシフトレバー501が操作された場合、手動変速機2のシンクロメッシュ機構24A,24B,24Cがそれぞれニュートラル状態となり、手動変速機2が入力軸21と出力軸22との間でトルク伝達を行わないニュートラル状態となる。
−クラッチ装置−
図5は、図1の車両に搭載されるクラッチ装置3の概略構成を示す図である。
クラッチ装置3は、図5に示すように、クラッチ機構30(単に「クラッチ30」ともいう)、および、クラッチペダル7の踏み込み操作に応じてクラッチ30を作動させるクラッチ作動装置300を備えている。
クラッチ30は、乾式単板式の摩擦クラッチとして構成されており、クランクシャフト15と、手動変速機2の入力軸21との間に介在されるように設けられている。なお、クラッチ30の構成として、乾式単板式以外の構成を採用してもよい。
具体的に、クラッチ30は、フライホイール31、クラッチディスク32、プレッシャプレート33、ダイヤフラムスプリング34、および、クラッチカバー35を備えている。クラッチ30の入力軸であるクランクシャフト15には、フライホイール31とクラッチカバー35とが一体回転可能に取り付けられている。クラッチ30の出力軸である手動変速機2の入力軸21には、クラッチディスク32がスプライン嵌合されている。このため、クラッチディスク32は、入力軸21と一体回転しつつ、軸方向(図5の左右方向)に沿ってスライド可能となっている。クラッチディスク32とクラッチカバー35との間には、プレッシャプレート33が配設されている。プレッシャプレート33は、ダイヤフラムスプリング34の外周部によってフライホイール31側へ付勢されている。
クラッチ作動装置300は、レリーズベアリング301、レリーズフォーク302、クラッチレリーズシリンダ303、クラッチマスタシリンダ304等を備えている。レリーズベアリング301は、入力軸21の軸方向に沿ってスライド可能に装着されている。レリーズベアリング301の近傍には、レリーズフォーク302が軸302aにより回動可能に支持されており、その一端部(図5の下端部)がレリーズベアリング301に当接している。レリーズフォーク302の他端部(図5の上端部)には、クラッチレリーズシリンダ303のロッド303aの一端部(図5の右端部)が連結されている。
クラッチレリーズシリンダ303は、シリンダボディ303bの内部にピストン303cなどが組み込まれた構成となっている。ピストン303cには、ロッド303aの他端部(図5の左端部)が連結されている。クラッチレリーズシリンダ303は、油圧配管305を介してクラッチマスタシリンダ304に接続されている。
クラッチマスタシリンダ304は、クラッチレリーズシリンダ303と同様に、シリンダボディ304bの内部にピストン304cなどが組み込まれた構成となっている。ピストン304cには、ロッド304aの一端部(図5の左端部)が連結されている。ロッド304aの他端部(図5の右端部)は、クラッチペダル7のペダルレバー71の中間部に接続されている。シリンダボディ304bの上部には、このシリンダボディ304b内へ動作流体であるクラッチフルード(オイル)を供給するリザーブタンク304dが設けられている。
クラッチマスタシリンダ304は、ドライバによるクラッチペダル7の踏み込み操作による操作力を受けることで、シリンダボディ304b内でピストン304cが移動することにより油圧を発生するようになっている。クラッチマスタシリンダ304によって発生する油圧は、油圧配管305内のオイルによってクラッチレリーズシリンダ303に伝達される。
クラッチ装置3では、クラッチレリーズシリンダ303内の油圧に応じてレリーズフォーク302が作動されることによって、クラッチ30の継合・解放動作が行われるようになっている。
具体的には、図5に示す状態(クラッチ継合状態)から、クラッチペダル7の踏み込み量が大きくなると、クラッチマスタシリンダ304からクラッチレリーズシリンダ303へオイルが供給されて、クラッチレリーズシリンダ303内の油圧が高くなる。すると、ピストン303cおよびロッド303aが図5の右方向へ移動され、レリーズフォーク302が軸302aを中心に回動(図5では、時計周り方向に回動)されて、レリーズベアリング301がフライホイール31側へ押される。そして、同方向へのレリーズベアリング301の移動により、ダイヤフラムスプリング34の中央部分が同方向へ弾性変形する。これにともない、ダイヤフラムスプリング34によるプレッシャプレート33への付勢力が弱まる。このため、プレッシャプレート33、クラッチディスク32、および、フライホイール31が滑りながら継合される半クラッチ状態となる。
この半クラッチ状態から、レリーズベアリング301がフライホイール31側へさらに移動し、ダイヤフラムスプリング34によるプレッシャプレート33への付勢力がさらに弱まると、プレッシャプレート33、クラッチディスク32、および、フライホイール31が離間されて、クラッチ30が切断(解放)された状態になる(クラッチ切断状態)。このクラッチ切断状態では、エンジン1から手動変速機2へのトルク伝達が遮断される。
一方、クラッチ切断状態から、クラッチペダル7の踏み込みが解除されてクラッチペダル7の踏み込み量が小さくなると、クラッチレリーズシリンダ303からクラッチマスタシリンダ304へオイルが戻されて、クラッチレリーズシリンダ303内の油圧が低くなる。すると、ピストン303cおよびロッド303aが図5の左方向へ移動され、レリーズフォーク302が軸302aを中心に回動(図5では、反時計周り方向に回動)されて、レリーズベアリング301がフライホイール31から離間される側へ移動される。これにともない、ダイヤフラムスプリング34の外周部によるプレッシャプレート33への付勢力が増大していく。これにより、プレッシャプレート33とクラッチディスク32との間、および、クラッチディスク32とフライホイール31との間でそれぞれ摩擦力が増大し、半クラッチ状態を介してクラッチ継合状態になる。このクラッチ継合状態では、プレッシャプレート33、クラッチディスク32、および、フライホイール31が一体となって回転する。そして、クランクシャフト15と入力軸21とが一体となって回転し、エンジン1と手動変速機2との間でトルクが伝達される。
なお、クラッチマスタシリンダ304には、ピストン304c(クラッチ30)のストローク位置(クラッチ位置)を検出するためのストロークセンサ304eが配設されている。
−制御系−
上記構成の車両において、エンジン1等の各種制御は、ECU8によって行われる。ECU8は、図6に示すように、CPU81、ROM82、RAM83、バックアップRAM84、入力インターフェース85、出力インターフェース86等を備えている。
ROM82には、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU81は、ROM82に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。RAM83は、CPU81での演算結果や、各種センサ、各種スイッチ等から入力されたデータを一時的に記憶するメモリである。バックアップRAM84は、エンジン1の停止時に保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。これらCPU81、ROM82、RAM83、およびバックアップRAM84は、バス87を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース85および出力インターフェース86に接続されている。
入力インターフェース85には、ストロークセンサ304e、水温センサ121、エアフローメータ122、吸気温センサ123、エンジン回転数センサ124、スロットル開度センサ125、O2センサ126などが接続されている。また、入力インターフェース85には、アクセルペダル6(図1参照)に近接して設けられ、ドライバによるアクセルペダル6の踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ61や、車軸43(図1参照)に近接して設けられ、車両の速度を検出する車輪速センサ431、シフト装置5のシフトレバー501(図1参照)により選択されたシフトポジションを検出するシフトポジションセンサ502などが接続されている。
出力インターフェース86には、インジェクタ102、点火プラグ103のイグナイタ104、スロットルバルブ105のスロットルモータ106などが接続されている。ECU8は、上記した各種センサ、各種スイッチの出力に基づいて、インジェクタ102の駆動制御(燃料噴射制御)、点火プラグ103の点火時期制御、スロットルバルブ105のスロットルモータ106の駆動制御などを含む車両の各種制御を実行する。
また、ECU8は、アクセルオフでの発進時において、クラッチペダル7が操作されることによりクラッチ30が切断状態から継合状態に切り替えられるときに、エンジン回転数(エンジン回転速度)を上昇させるエンジン回転数上昇制御(アイドルアップ制御)を所定の開始タイミングで開始するように構成されている。これにより、発進時にアクセルペダル6の操作を省略するとともに、円滑な発進(走行開始)を行うことが可能である。アクセルオフでの発進動作について、以下詳細に説明する。
−アクセルオフでの発進動作−
本実施形態によるECU8は、アクセルオフでの発進時に、クラッチ30のストローク位置がアイドルアップ制御開始位置Psを通過した(超えた)場合にアイドルアップ制御を行う。また、ECU8は、アクセルオフでの発進時において、アイドルアップ制御の開始前後の所定期間に、エンジン回転数が第1閾値Th1よりも低下した場合に、次回のアクセルオフでの発進時におけるアイドルアップ制御の開始タイミングを早くし、エンジン回転数が第2閾値Th2よりも上昇した場合に、次回のアクセルオフでの発進時におけるアイドルアップ制御の開始タイミングを遅くする。なお、第1閾値Th1および第2閾値Th2は予め設定された回転数であり、第1閾値Th1はアイドル回転数よりも低い回転数であり、第2閾値Th2はアイドル回転数よりも高い回転数である。また、所定期間は、アイドルアップ制御の開始タイミングを含む期間であって、アイドルアップ制御の開始前から開始後までの予め設定された期間である。
図7〜図9は、アクセルオフでの発進時のタイムチャートである。具体的には、図7は、アイドルアップ制御の開始タイミングが理想的である場合を示し、図8は、アイドルアップ制御の開始タイミングが遅い場合を示し、図9は、アイドルアップ制御の開始タイミングが早い場合を示す。次に、図7〜図9を参照して、アクセルオフでの発進動作について説明する。なお、図7〜図9は、横方向が時間軸であり、左側から右側に向かって時間が進む。また、アイドルアップ制御の開始タイミングが遅い場合とは、アイドルアップ制御の開始タイミングが理想的な場合に比べて遅い場合であり、アイドルアップ制御の開始タイミングが早い場合とは、アイドルアップ制御の開始タイミングが理想的な場合に比べて早い場合である。
[開始タイミングが理想的である場合(図7参照)]
まず、アクセルオフでの発進動作の前には、ドライバによりクラッチペダル7が踏み込まれており、クラッチ30が切断状態にされている。また、エンジン1がアイドル回転数(例えば、600rpm)で運転されている。なお、この発進動作では、アクセルペダル6は踏み込まれていない状態のまま維持される。そして、ドライバによりクラッチペダル7の踏み込みが徐々に解除されると、クラッチ30が継合側に移動される。なお、このクラッチ30の継合側への移動が検出された場合には、ECU8がエンジン回転数の監視を開始する。
そして、クラッチ30のストローク位置がアイドルアップ制御開始位置Psを通過した場合に、アイドルアップ制御要求フラグがオンにされる。そして、アイドルアップ制御要求フラグがオンにされると、アイドルアップ制御が開始される。このアイドルアップ制御では、エンジン回転数の目標値がアイドル回転数よりも高い回転数(例えば、800rpm)にされる。なお、アイドルアップ制御の開始タイミングが理想的な場合には、クラッチ30が接触していない状態(切断状態)でアイドルアップ制御が開始される。
そして、アイドルアップ制御によりエンジン回転数が第2閾値Th2よりも上昇する。その後、アイドルアップ制御の開始タイミングが理想的な場合には、エンジン回転数が目標値になった直後にクラッチ30が接触する。そして、クラッチ30が半クラッチ状態になることにより、エンジン回転数が後輪44,44側に引きずられて低下する。なお、このとき、例えば、エンジン回転数が650rpmになる。また、クラッチ30が継合側に移動されることにより、クラッチ30の伝達トルクが上昇する。これにより、エンジン1の回転が後輪44,44側に伝達されることにより車両が発進する。
ここで、本実施形態では、アイドルアップ制御の開始前にエンジン回転数が第2閾値Th2よりも上昇した場合には、次回のアクセルオフでの発進動作のときに、アイドルアップ制御の開始タイミングが今回に比べて遅くされる。具体的には、アイドルアップ制御開始位置Psが継合側に第2補正量C2分だけ補正される。なお、アイドルアップ制御の開始タイミングが理想的である場合に、アイドルアップ制御の開始タイミングを補正するのは、エンジン回転数に基づいてアイドルアップ制御の開始タイミングが早い場合と区別することが困難であるからである。
[開始タイミングが遅い場合(図8参照)]
アクセルオフでの発進動作の前には、ドライバによりクラッチペダル7が踏み込まれており、クラッチ30が切断状態にされている。また、エンジン1がアイドル回転数(例えば、600rpm)で運転されている。なお、この発進動作では、アクセルペダル6は踏み込まれていない状態のまま維持される。そして、ドライバによりクラッチペダル7の踏み込みが徐々に解除されると、クラッチ30が継合側に移動される。なお、このクラッチ30の継合側への移動が検出された場合には、ECU8がエンジン回転数の監視を開始する。
そして、アイドルアップ制御の開始タイミングが遅い場合には、アイドルアップ制御が開始される前にクラッチ30が接触する。これにより、クラッチ30が半クラッチ状態になるので、エンジン回転数が後輪44,44側に引きずられて第1閾値Th1よりも低下する。
その後、クラッチ30のストローク位置がアイドルアップ制御開始位置Psを通過した場合に、アイドルアップ制御要求フラグがオンにされる。そして、アイドルアップ制御要求フラグがオンにされると、アイドルアップ制御が開始される。このアイドルアップ制御では、エンジン回転数の目標値がアイドル回転数よりも高い回転数(例えば、800rpm)にされる。なお、エンジン回転数は、後輪44,44側に引きずられることにより、例えば、650rpmになる。また、クラッチ30が継合側に移動されることにより、クラッチ30の伝達トルクが上昇する。これにより、エンジン1の回転が後輪44,44側に伝達されることにより車両が発進する。なお、アイドルアップ制御の開始タイミングが遅い場合とは、アイドルアップ制御の開始タイミングが理想的な場合に比べて、アイドルアップ制御開始位置Psに対して接触位置が切断側にずれている場合である。
ここで、本実施形態では、アイドルアップ制御の開始前にエンジン回転数が第1閾値Th1よりも低下した場合には、次回のアクセルオフでの発進動作のときに、アイドルアップ制御の開始タイミングが今回に比べて早くされる。具体的には、アイドルアップ制御開始位置Psが切断側に第1補正量C1分だけ補正される。なお、第1補正量C1は、第2補正量C2よりも大きくなるように設定されている。
[開始タイミングが早い場合(図9参照)]
アクセルオフでの発進動作の前には、ドライバによりクラッチペダル7が踏み込まれており、クラッチ30が切断状態にされている。また、エンジン1がアイドル回転数(例えば、600rpm)で運転されている。なお、この発進動作では、アクセルペダル6は踏み込まれていない状態のまま維持される。そして、ドライバによりクラッチペダル7の踏み込みが徐々に解除されると、クラッチ30が継合側に移動される。なお、このクラッチ30の継合側への移動が検出された場合には、ECU8がエンジン回転数の監視を開始する。
そして、クラッチ30のストローク位置がアイドルアップ制御開始位置Psを通過した場合に、アイドルアップ制御要求フラグがオンにされる。そして、アイドルアップ制御要求フラグがオンにされると、アイドルアップ制御が開始される。このアイドルアップ制御では、エンジン回転数の目標値がアイドル回転数よりも高い回転数(例えば、800rpm)にされる。なお、アイドルアップ制御の開始タイミングが早い場合には、クラッチ30が接触していない状態(切断状態)でアイドルアップ制御が開始される。
そして、アイドルアップ制御によりエンジン回転数が第2閾値Th2よりも上昇する。その後、アイドルアップ制御の開始タイミングが早い場合には、エンジン回転数が目標値になった状態が維持された後にクラッチ30が接触する。そして、クラッチ30が半クラッチ状態になることにより、エンジン回転数が後輪44,44側に引きずられて低下する。なお、このとき、例えば、エンジン回転数が650rpmになる。また、クラッチ30が継合側に移動されることにより、クラッチ30の伝達トルクが上昇する。これにより、エンジン1の回転が後輪44,44側に伝達されることにより車両が発進する。なお、アイドルアップ制御の開始タイミングが早い場合とは、アイドルアップ制御の開始タイミングが理想的な場合に比べて、アイドルアップ制御開始位置Psに対して接触位置が継合側にずれている場合である。
ここで、本実施形態では、アイドルアップ制御の開始前にエンジン回転数が第2閾値Th2よりも上昇した場合には、次回のアクセルオフでの発進動作のときに、アイドルアップ制御の開始タイミングが今回に比べて遅くされる。具体的には、アイドルアップ制御開始位置Psが継合側に第2補正量C2分だけ補正される。
図10および図11は、アクセルオフでの発進動作の際におけるECU8の処理手順を説明するためのフローチャートである。次に、図10および図11を参照して、アクセルオフでの発進動作の際におけるECU8の処理手順について説明する。
本実施形態によるECU8は、アクセルオフでの発進時に、アイドルアップ制御を含むアイドルアップ処理と、アイドルアップ制御の開始タイミングの補正処理とを並行して行う。すなわち、アクセルオフでの発進動作には、アイドルアップ処理と補正処理とが含まれる。
[アイドルアップ処理]
次に、図10を参照して、ECU8が実行するアイドルアップ処理について説明する。なお、以下の一連の動作は、繰り返し行われる。
まず、図10のステップS1において、車速がゼロである(車両が停車している)か否かが判断される。そして、車速がゼロであると判断された場合には、ステップS2に移る。その一方、車速がゼロではないと判断された場合には、ステップS1が繰り返し行われる。なお、車速がゼロであるか否かは、例えば、車輪速センサ431の検出結果に基づいて判断される。
次に、ステップS2において、アクセルオフであるか否かが判断される。そして、アクセルオフであると判断された場合には、ステップS3に移る。その一方、アクセルオフではないと判断された場合には、ステップS1に戻る。なお、アクセルオフであるか否かは、例えば、アクセル開度センサ61の検出結果、すなわち、アクセルペダル6の操作量に基づいて判断され、アクセルペダル6が踏み込まれていない(操作されていない)場合にステップS3に移る。
次に、ステップS3において、クラッチ30が継合側に移動されたか否かが判断される。そして、クラッチ30が継合側に移動されたと判断された場合には、ステップS4に移る。その一方、クラッチ30が継合側に移動されていないと判断された場合には、ステップS1に戻る。なお、クラッチ30が継合側に移動されたか否かは、例えば、ストロークセンサ304eの検出結果から算出されるクラッチ30の移動速度が予め設定された値を超えたか否かにより判断される。
次に、ステップS4において、ストロークセンサ304eにより検出されるクラッチ30のストローク位置がアイドルアップ制御開始位置Psを通過したか否かが判断される。そして、ストローク位置がアイドルアップ制御開始位置Psを通過したと判断された場合には、ステップS5に移る。その一方、ストローク位置がアイドルアップ制御開始位置Psを通過していないと判断された場合には、ステップS4が繰り返し行われる。すなわち、ストローク位置がアイドルアップ制御開始位置Psを通過するまで待機する。
次に、ステップS5において、アイドルアップ制御が行われる。例えば、アイドル回転数が600rpmであった場合には、エンジン回転数の目標値が800rpmにされる。その後、アイドルアップ処理が終了される。
[アイドルアップ制御の開始タイミングの補正処理]
次に、図11を参照して、ECU8が実行するアイドルアップ制御の開始タイミングの補正処理について説明する。なお、以下の一連の動作は、繰り返し行われる。また、ステップS11〜S13は、上記したステップS1〜S3と同様であるので、説明を省略する。
そして、図11のステップS14において、エンジン回転数の監視が開始される。なお、エンジン回転数は、エンジン回転数センサ124の検出結果に基づいて算出される。
次に、ステップS15において、エンジン回転数が第1閾値Th1よりも低下したか否かが判断される。そして、エンジン回転数が第1閾値Th1よりも低下したと判断された場合には、ステップS17に移る。その一方、エンジン回転数が第1閾値Th1よりも低下していないと判断された場合には、ステップS16に移る。
次に、ステップS16において、エンジン回転数が第2閾値Th2よりも上昇したか否かが判断される。そして、エンジン回転数が第2閾値Th2よりも上昇したと判断された場合には、ステップS18に移る。その一方、エンジン回転数が第2閾値Th2よりも上昇していないと判断された場合には、ステップS15に戻る。
そして、エンジン回転数が第1閾値Th1よりも低下した場合(ステップS15:Yes)には、アイドルアップ制御の開始タイミングが遅いと判断されることから、ステップS17において、アイドルアップ制御開始位置Psが切断側に第1補正量C1分だけ補正される。その後、アイドルアップ制御の開始タイミングの補正処理が終了される。なお、この補正は、次回のアクセルオフでの発進時に適用される。これにより、次回のアクセルオフでの発進時におけるアイドルアップ制御の開始タイミングを早くすることが可能である。
その一方、エンジン回転数が第2閾値Th2よりも上昇した場合(ステップS16:Yes)には、アイドルアップ制御の開始タイミングが理想的または早いと判断されることから、ステップS18において、アイドルアップ制御開始位置Psが継合側に第2補正量C2分だけ補正される。その後、アイドルアップ制御の開始タイミングの補正処理が終了される。なお、第2補正量C2は、第1補正量C1よりも小さくなるように設定されている。また、この補正は、次回のアクセルオフでの発進時に適用される。これにより、次回のアクセルオフでの発進時におけるアイドルアップ制御の開始タイミングを遅くすることが可能である。
−効果−
本実施形態では、上記のように、アイドルアップ制御の開始タイミングが遅い場合には、次回のアイドルアップ制御の開始タイミングを早くすることによって、アクセルオフでの発進時におけるアイドルアップ制御の開始タイミングが遅くなりすぎるのを抑制することができる。これにより、エンジン回転数が必要以上に低下するのを抑制することができるので、アクセルオフでの発進時にエンジン回転数を適切に上昇させることができる。
また、本実施形態では、アイドルアップ制御の開始タイミングが理想的および早い場合には、次回のアイドルアップ制御の開始タイミングを遅くすることによって、アクセルオフでの発進時におけるアイドルアップ制御の開始タイミングが早くなりすぎるのを抑制することができる。これにより、エンジン回転数が必要以上に噴き上がるのを抑制することができるので、アクセルオフでの発進時にエンジン回転数を適切に上昇させることができる。
したがって、本実施形態では、製造ばらつき(個体ばらつき)によりクラッチ30の接触位置が異なる場合や、経年変化によりクラッチ30の接触位置が変化する場合であっても、アイドルアップ制御の開始タイミングを補正することにより、エンジン回転数を適切に上昇させることができるので、アクセルオフでの発進を円滑に行うことができる。また、ドライバ毎にクラッチペダル7の操作態様が異なる場合であっても、各ドライバに応じたアイドルアップ制御の開始タイミングに補正していくことができる。すなわち、本実施形態では、クラッチペダル7を備える車両であっても、クラッチ30の接触位置(タッチ点)の補正(学習)を適切に行うことができる。
また、本実施形態では、エンジン回転数の変化に基づいてアイドルアップ制御の開始タイミングを判別することにより、開始タイミングが早いか理想的であるかを判断することが困難であることから、第2補正量C2を第1補正量C1よりも小さくすることによって、図12に示すように、開始タイミングを適正な範囲内に収めることができる。
−他の実施形態−
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、本実施形態では、FR方式の車両のECU8に本発明を適用する例を示したが、これに限らず、4WD方式またはFF方式の車両の制御装置に本発明を適用してもよい。
また、図13に示す変形例のように、エンジン回転数が第1閾値Th1まで低下した場合(エンジン回転数が第1閾値Th1に到達した場合)に、クラッチ30のストローク位置がアイドルアップ制御開始位置Psを通過するのを待つことなく、すぐにアイドルアップ制御を開始するようにしてもよい。このように構成すれば、エンジン回転数が必要以上に低下するのを抑制することができる。なお、すぐにアイドルアップ制御を開始するか否かを判断するための閾値と、次回のアクセルオフでの発進時におけるアイドルアップ制御の開始タイミングを早くするか否かを判断するための閾値とが異なっていてもよい。
また、本実施形態において、手動変速機2で第1速段が成立している場合にのみ、アクセルオフでの発進動作を行うようにしてもよい。
また、本実施形態では、エンジン回転数が第2閾値Th2よりも上昇した場合に、次回のアクセルオフでの発進時におけるアイドルアップ制御の開始タイミングを遅くする例を示したが、これに限らず、エンジン回転数が第2閾値Th2よりも上昇した場合に、次回のアクセルオフでの発進時におけるアイドルアップ制御の開始タイミングを変更しない(維持する)ようにしてもよい。
また、本実施形態では、エンジン回転数が第1閾値Th1よりも低下した場合に、次回のアクセルオフでの発進時におけるアイドルアップ制御の開始タイミングを早くし、エンジン回転数が第2閾値Th2よりも上昇した場合に、次回のアクセルオフでの発進時におけるアイドルアップ制御の開始タイミングを遅くする例を示したが、これに限らず、エンジン回転数の低下傾向が大きい場合に、次回のアクセルオフでの発進時におけるアイドルアップ制御の開始タイミングを早くし、エンジン回転数の低下傾向が大きくない(上昇傾向である場合を含む)場合に、次回のアクセルオフでの発進時におけるアイドルアップ制御の開始タイミングを遅くするようにしてもよい。すなわち、エンジン回転数の低下傾向が大きい場合には、エンジン回転数が第1閾値Th1よりも低下した場合が含まれ、エンジン回転数の低下傾向が大きくない場合には、エンジン回転数が第2閾値Th2よりも上昇した場合が含まれる。なお、エンジン回転数の低下傾向が大きい場合には、エンジン回転数の低下率(変化率)が所定の閾値を下回った場合(低下率を絶対値とすると、低下率が所定の閾値を超えた場合)が含まれ、エンジン回転数の低下傾向が大きくない場合には、エンジン回転数の上昇率(変化率)が所定の閾値を超えた場合が含まれる。
また、本実施形態において、アイドルアップ制御要求フラグおよびアイドルアップ制御開始位置PsがECU8のバックアップRAM84に記憶され、第1閾値Th1、第2閾値Th2、第1補正量C1および第2補正量C2がECU8のROM82に記憶されていてもよい。
また、本実施形態のステップS1およびS11では、車速がゼロであるか否かを判断する例を示したが、これに限らず、車速が実質的にゼロであるか否かを判断するようにしてもよい。
また、本実施形態では、エンジン回転数が第1閾値Th1よりも低下した場合に、アイドルアップ制御の開始タイミングが遅いと判断する例を示したが、これに限らず、ISC(Idle Speed Control)フィードバック制御が作動した場合に、アイドルアップ制御の開始タイミングが遅いと判断するようにしてもよい。すなわち、エンジン回転数の低下傾向が大きい場合には、ISCフィードバック制御が作動した場合が含まれる。なお、ISCフィードバック制御が作動したか否かは、例えば、インジェクタ102の燃料噴射量、点火プラグ103の点火時期、スロットルバルブ105のスロットルモータ106の駆動量などに基づいて判断可能である。
1 エンジン
2 手動変速機
7 クラッチペダル(クラッチ操作部)
8 ECU(車両の制御装置)
30 クラッチ機構(クラッチ)

Claims (7)

  1. エンジンと、手動変速機と、前記エンジンと前記手動変速機との間に設けられたクラッチと、前記クラッチの状態をドライバが操作するためのクラッチ操作部とを備える車両の制御装置であって、
    アクセルオフでの発進時において、前記クラッチ操作部が操作されることにより前記クラッチが切断状態から継合状態に切り替えられるときに、エンジン回転数を上昇させるエンジン回転数上昇制御を所定の開始タイミングで開始するように構成されており、
    エンジン回転数上昇制御の開始前後の所定期間に、エンジン回転数の低下傾向が大きい場合に、次回のアクセルオフでの発進時におけるエンジン回転数上昇制御の開始タイミングを早くするように構成されていることを特徴とする車両の制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両の制御装置において、
    前記エンジン回転数の低下傾向が大きい場合には、エンジン回転数が第1閾値よりも低下した場合が含まれることを特徴とする車両の制御装置。
  3. 請求項1または2に記載の車両の制御装置において、
    エンジン回転数上昇制御の開始前後の所定期間に、エンジン回転数の低下傾向が大きくない場合に、次回のアクセルオフでの発進時におけるエンジン回転数上昇制御の開始タイミングを遅くするように構成されていることを特徴とする車両の制御装置。
  4. 請求項3に記載の車両の制御装置において、
    前記エンジン回転数の低下傾向が大きくない場合には、エンジン回転数が第2閾値よりも上昇した場合が含まれることを特徴とする車両の制御装置。
  5. 請求項3または4に記載の車両の制御装置において、
    エンジン回転数上昇制御の開始タイミングを早くする第1補正量は、エンジン回転数上昇制御の開始タイミングを遅くする第2補正量よりも大きいことを特徴とする車両の制御装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
    エンジン回転数上昇制御の開始前に、エンジン回転数の低下傾向が大きい場合に、エンジン回転数上昇制御を開始するように構成されていることを特徴とする車両の制御装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
    エンジン回転数上昇制御の開始タイミングは、前記クラッチのストローク位置に基づいて判断されることを特徴とする車両の制御装置。
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