本発明は、集電体の一方の面に正極活物質層が形成されかつ他方の面に負極活物質層が形成されてなる双極型電極が電解質層を介して積層されてなる双極型二次電池であって、前記正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも一方の端部上に絶縁材料部を有する、双極型二次電池を提供する。
本発明の双極型二次電池は、正極活物質層および/または負極活物質層の端部上に絶縁材料部を形成することを特徴とする。一般的に、双極型二次電池は、集電体の各面に正極活物質層及び負極活物質層が形成された双極型電極が電解質層を挟んで積層した構造を有する。ここで、電解質層に液体電解質やゲル電解質が使用される場合には、液が漏れ出して他の双極型電極と液絡してしまう。そこで従来の技術では各層をシール部材でシールし、液漏れによる短絡を防いでいる。一方で、このようなシール部材を有する双極型二次電池では、集電体上で活物質層周辺部に活物質層が形成されていない、活物質未塗布部が存在する。したがって、、双極型二次電池を製造するにあたって、集電体上に正極活物質層や負極活物質層を形成する時、この正極活物質層や負極活物質層は、面方向全体にわたって平滑面を形成することは困難である。即ち、活物質層の端部の厚みがやや大きくなり、盛り上がりがしばしばこれら活物質層の端部に生じる。このような不均一な部分(特に盛り上がり)が端部に存在した状態で電池を使用し続けると、長期的な運転中の振動や熱により端部に力が加わり、正極及び負極活物質層が電解質層やセパレータを突き破って接触し、内部短絡を起こすことが判明した。
これに対して、本発明の双極型二次電池では、絶縁材料部が正極活物質層や負極活物質層の端部の間に存在する。このため、活物質層の端部に盛り上がりのある状態で長期的に電池を運転して当該端部に振動や熱を付加しても、絶縁材料部の存在により活物質層(特に端部)同士の接触を低減できる、即ち内部短絡を抑制・防止できる。ここで、絶縁材料部を構成する絶縁材料は、双極型二次電池に通常使用される電解質層を構成する電解質、セパレータ、高分子(ポリマー)とは異なる材料を意味する。また、絶縁材料部を形成する絶縁材料としてヤング率E1が電解質層(特に以下に詳述するセパレータ)のヤング率E2よりも大きい絶縁材料を選択すると、内部短絡をより有効に抑制・防止できる。
本発明の双極型二次電池は、正極活物質層および/または負極活物質層(以下、一括して「活物質層」とも称する)の端部上に絶縁材料部を有する。ここで、「活物質層の端部上に絶縁材料部を有する」とは、正極及び負極活物質層の接触を防止するように、絶縁材料部が正極及び負極活物質層の端部間に配置されることを意味する。また、絶縁材料部は、活物質層の端部(周縁部)の少なくとも一部を被覆するように形成される。しかし、正極及び負極活物質層の接触の抑制・防止の観点から、絶縁材料部が活物質層の全周縁部にわたって額縁状に形成されることが好ましい。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1〜3は、本発明の実施の形態に係る双極型二次電池を説明するための図である。なお、下記では、図1の双極型二次電池について詳細に説明するが、特記しない限り、図2〜4の番号は、図1の番号の説明と同様であるため、説明を省略する。
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る双極型二次電池を説明するための断面図である。図1に示されるように、本実施形態の双極型二次電池10の電池要素21は、集電体11の一方の面に正極活物質層13が形成され他方の面に負極活物質層15が形成された複数の双極型電極を有する。各双極型電極は、電解質層17を介して積層されて電池要素21を形成する。この際、一の双極型電極の正極活物質層13と前記一の双極型電極に隣接する他の双極型電極の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極および電解質層17が積層されている。
また、図1において、隣接する正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。従って、双極型二次電池10は、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、単電池層19の外周には、隣接する集電体11間を絶縁するためのシール部31が設けられている。なお、電池要素21の最外層に位置する集電体(最外層集電体)(11a、11b)には、片面のみに、正極活物質層13(正極側最外層集電体11a)または負極活物質層15(負極側最外層集電体11b)のいずれか一方が形成されている。
さらに、図1に示す双極型二次電池10では、正極側最外層集電体11aが延長されて正極タブ25とされ、外装であるラミネートシート29から導出している。一方、負極側最外層集電体11bが延長されて負極タブ27とされ、同様にラミネートシート29から導出している。
本発明では、絶縁材料部が正極活物質層13及び負極活物質層15の少なくとも一方の端部上に配置される。ここで、絶縁材料部の配置方法は、活物質層(特に端部)同士の接触(内部短絡)を抑制・防止できれば特に制限されない。具体的な配置方法を図1〜3を参照しながら説明する。なお、本発明に係る絶縁材料部の配置方法は、下記に制限されるものではない。
第一の例としては、図1に示されるように、一の絶縁材料部16が、正極活物質層13及び負極活物質層15の端部に、活物質層13,15の端部と接するように設けられている。上記形態において、絶縁材料部16の厚みは、特に制限されないが、電解質層17と実質的に同等の厚みであることが好ましい。
第二の例としては、図2に示されるように、電解質層17が、セパレータ20と、セパレータ20の周縁部が露出するようにセパレータ20の両面に形成される電解質膜17’、17”と、を有し、上記露出した周縁部に絶縁材料部16’、16”が形成される。すなわち、電解質層17は、セパレータ20と、セパレータ両面に形成された電解質膜17’、17”からなる。ここで、電解質膜17’、17”は、絶縁材料部16’、16”を配置するために、セパレータ20の面積より小さくなるようにセパレータ20の両面に形成される。また、セパレータ20は、少なくとも電極反応が起こる部分(即ち、電極の厚み方向において、活物質層及び電解質膜が存在する部分)に電解質が含浸されてなる。このため、セパレータ20でその表面に電解質膜17’、17”が形成されている部分には、電解質、好ましくは電解質膜を形成するときに使用されるのと同じ電解質が含浸されている。当該形態では、絶縁材料部16’、16”は、セパレータ20の電解質膜17’、17”が形成されていない周縁部に配置されうる。なお、上記形態では、正極活物質層13及び負極活物質層15双方の端部に絶縁材料部16’、16”が形成されてなる。しかし、絶縁材料部16’、16”の一方のみが正極活物質層13または負極活物質層15の端部に形成されていてもよい。このように一方の絶縁材料部のみが存在する場合であっても、活物質層の端部同士の接触(内部短絡)を十分抑制・防止できる。例えば、絶縁材料部16’のみが存在し絶縁材料部16”が存在しない場合には、電解質膜17”が、負極活物質層15全面を被覆するように(絶縁材料部16”まで)セパレータ20表面に形成される。上記形態において、絶縁材料部16’、16”の厚みは、特に制限されないが、電解質膜17’、17”と実質的に同等の厚みであることが好ましい。具体的には、絶縁材料部及び電解質膜の厚みは、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.1〜10μmである。また、セパレータの厚みもまた、特に制限されないが、好ましくは5〜100μm、より好ましくは5〜20μmである。
第三の例としては、図3に示されるように、セパレータ20は、本体部20’及び前記本体部の外周から外方に伸びかつ前記本体部の厚みより薄い延長部20”を有し、また、セパレータ20には電解質が含浸されて、電解質層17となる。ここで、上記第二の例で記載したように、セパレータ20は、少なくとも電極反応が起こる部分(即ち、電極の厚み方向において、活物質層は存在するが、絶縁材料部が存在しない部分)に電解質が含浸されてなる。このため、本実施形態における「セパレータには電解質が含浸される」あるいは「電解質が含浸されたセパレータ」とは、セパレータ20の本体部20’に少なくとも電解質が含浸された状態を意味し、延長部20”には電解質が含浸されてもあるいは含浸されていなくてもよい。また、絶縁材料部16’、16”が前記セパレータ20の延長部20”に形成される。なお、上記形態では、延長部20”は、正極活物質層13及び負極活物質層15双方の端部に絶縁材料部16’、16”が形成されるように、正極・負極活物質層13,15双方の端部に形成される。しかし、絶縁材料部16’、16”の一方のみが正極活物質層13または負極活物質層15の端部に形成されていてもよい。このように一方の絶縁材料部のみが存在する場合であっても、活物質層の端部同士の接触(内部短絡)を十分抑制・防止できる。また、延長部20”の長さは、絶縁材料部16’、16”及びシール部31が十分形成される長さであれば特に制限されず、適宜選択されうる。上記形態において、絶縁材料部16’、16”の厚みは、特に制限されないが、セパレータの本体部20’と延長部20”との段差の厚みと実質的に同等であることが好ましい。具体的には、絶縁材料部の厚みは、好ましくは2〜80μm、より好ましくは2〜15μmである。また、セパレータの本体部の厚みもまた、特に制限されないが、好ましくは5〜100μm、より好ましくは5〜20μmである。さらに、セパレータの延長部の厚みもまた、特に制限されないが、好ましくは3〜90μm、より好ましくは3〜15μmである。
第四の例としては、図4に示されるように、絶縁材料部16’、16”を、活物質層13、15の端部面に形成するのに加えて、活物質層13、15とシール部31との間に「L」字状に配置する。なお、上記形態では、絶縁材料部16’、16”が活物質層13、15の双方の端部に形成される。しかし、絶縁材料部16’、16”の一方のみが正極活物質層13または負極活物質層15の端部に形成されていてもよい。このように一方の絶縁材料部のみが存在する場合であっても、活物質層の端部同士の接触(内部短絡)を十分抑制・防止できる。例えば、絶縁材料部16’のみが存在し絶縁材料部16”が存在しない場合には、電解質膜17”が、負極活物質層15全面を被覆するようにセパレータ20表面に形成される。上記形態において、絶縁材料部16’、16”の厚みは、特に制限されないが、電解質膜17’、17”と実質的に同等の厚みであることが好ましい。また、絶縁材料部16’、16”の厚みは、セパレータ20と接している部分と、シール部31と接している部分と、で、実質的に同等であってもあるいは異なるものであってもよい。好ましくは、絶縁材料部16’、16”の厚みは、セパレータ20と接している部分と、シール部31と接している部分と、で、実質的に同等である。具体的な絶縁材料部及び電解質膜の厚みは、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.1〜10μmである。また、セパレータの厚みもまた、特に制限されないが、好ましくは5〜100μm、より好ましくは5〜20μmである。
なお、図4は、図2の絶縁材料部の配置に関する実施形態に対応するものである。このため、図3に対応する場合においても、図4と同様の配置をとりうる。しかし、図4が図3の絶縁材料部の配置に対応する場合の説明はここでは省略する。
上記4例のうち、単電池層19や電池要素21の製造のしやすさなどを考慮すると、セパレータが存在することが好ましい。このため、図2〜4に示されるような形態が本発明では好ましく使用される。すなわち、本発明では、電解質層は、セパレータと電解質膜からなり、ここで、前記電解質膜は、前記セパレータの周縁部が露出するようにセパレータ両面に形成されてなり、かつ前記露出した周縁部に絶縁材料部が形成されることが好ましい。または、電解質層が本体部及び前記本体部の外周から外方に伸びかつ前記本体部の厚みより薄い延長部を有するセパレータに電解質が含浸されてなり、かつ前記延長部に絶縁材料部が形成されることが好ましい。
本発明では、絶縁材料部は、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも一方の端部に形成される。上述したように、集電体上に形成された正極活物質層や負極活物質層は、面方向全体が平滑になることはなく、図5に示されるように、活物質層の端部に、他の活物質層の厚みより厚い盛り上がりが生じる。この盛り上がりは、長期間使用中振動や熱により端部に力が加わることにより、正極活物質層と負極活物質層との接触(およびこれに伴う内部短絡)を誘発する要因の一つとなる。このため、少なくともこの盛り上がりに絶縁材料部を設けるあるいは盛り上がりに対応する位置の対向する活物質層の位置に絶縁材料部を設けることが好ましい。このような構造によって、正極活物質層と負極活物質層との接触が起こりやすい部分に絶縁材料部が配置されるため、内部短絡をより有効に抑制・防止できる。特に、この盛り上がりにのみまたは盛り上がりに対応する位置の対向する活物質層の位置にのみ絶縁材料部を設けると、電極(活物質層)反応面積を最大限に確保できる点で好ましい。なお、本明細書中、「活物質層の盛り上がり」とは、活物質層の端部に生じる平滑な活物質層部分の厚みより厚い部分を指す。また、この部分の盛り上がり程度(盛り上がりの高さ)(図5中の「Y」または「Y’」)は、特に制限されない。また、活物質層の盛り上がりの場所もまた特に制限されない。例えば、図5において、活物質層が一番盛り上がっている箇所が、通常、活物質層の外周端から、5mm以内であり、ほとんどの場合は2mm以内である。
また、本発明において、絶縁材料部を形成する絶縁材料の材質は、双極型二次電池に通常使用される電解質層を構成する電解質、セパレータ、高分子(ポリマー)とは異なり、絶縁性を有するものであれば特に制限されない。絶縁材料部を形成する絶縁材料のヤング率(E1)は、少なくとも絶縁材料部が形成される部分の電解質層またはセパレータのヤング率(E2)よりも大きいことが好ましい。より好ましくは、例えば、図1に示される形態では、絶縁材料部を形成する絶縁材料のヤング率(E1)が電解質層のヤング率(E2)よりも大きい材料であることが好ましい。また、図2〜4に示される形態の場合には、絶縁材料部を形成する絶縁材料のヤング率(E1)が、セパレータのヤング率(E2)よりも大きいことがより好ましい。このような材料を絶縁材料部に使用することによって、正極活物質層及び負極活物質層の端部同士の接触(内部短絡)をより効率よく抑制・防止できるからである。ここで、絶縁材料のヤング率(E1)と電解質層/セパレータのヤング率(E2)との大小関係は、E1>E2であればよい。電解質層/セパレータのヤング率(E2)に対する絶縁材料のヤング率(E1)の比(E1/E2)は、好ましくは1.1〜1000、より好ましくは3〜1000、特に好ましくは10〜1000である。このような比率の絶縁材料を用いて絶縁材料部を形成すれば、正極活物質層及び負極活物質層の端部同士の接触(即ち、内部短絡)を有効に抑制・防止できる。なお、絶縁材料が複数種の材料からなる場合には、絶縁材料のヤング率(E1)は、絶縁材料のヤング率の中で一番高いヤング率を意味する。同様にして、電解質層やセパレータが複数種の材料からなる場合には、電解質層やセパレータのヤング率(E2)は、電解質層/セパレータを構成する材料(電解質、ポリマー、セパレータなど)の中で一番高いヤング率を意味する。
また、絶縁材料部の配置場所もまた、正極活物質層または負極活物質層の端部であれば特に制限されない。好ましくは、絶縁材料部が、正極活物質層または負極活物質層の外周端から0mm超5mm以下の幅、より好ましくは0mm超2mm以下の幅で額縁状に正極活物質層または負極活物質層上に形成される。このような構成とすることにより、電極反応面を最大限無駄にすることなく、かつ運転中の振動や熱により端部に力が加わっても活物質層の端部同士の接触による内部短絡を効率よく防ぐことができる。ここで、「活物質層の外周端からXmmの幅で額縁状に活物質層上に形成される」とは、図2に示されるように、活物質層の外周縁部に、幅Xmmの額縁状の絶縁材料部を形成することを意味する。
本発明において、絶縁材料は、活物質層の端部同士接触時の内部短絡を防ぐのに有効であれば特に制限されず、公知の絶縁材料が使用できる。具体的には、絶縁材料としては、シリコン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、パラフィンワックス樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シアノアクリレート樹脂およびユリア樹脂などが挙げられる。これらのうち、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。なお、上記絶縁材料は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。なお、以下に詳述するが、各単電池層19の周囲にはシール部31が配置される。ここで、絶縁材料と、シール部に使用されるシール材とが同じ材料である場合には、絶縁材料部及びシール部を一体的に製造してもよい。このように絶縁材料部とシール材とを一体的に製造すると、絶縁材料部とシール材との間に空隙を生じることがないため、液漏れによる短絡をより有効に抑制・防止できる。また、このような場合は、使用する材料数や製造工程数などを減らすことができ、工業的に好ましい。
本発明では、上述したように、絶縁材料のヤング率(E1)が電解質層/セパレータのヤング率(E2)より大きいことが好ましい。この点を考慮すると、絶縁性材料のヤング率(E1)は、好ましくは0.5〜1000GPa、より好ましくは0.8〜1000GPa、特に好ましくは2〜1000GPaである。
または、絶縁材料部は、絶縁テープを用いて形成されてもよい。これにより、活物質層端部同士の接触(内部短絡)を有効に抑制・防止できる。また、絶縁テープを用いる場合の絶縁テープの活物質層の端部への配置方法は、特に制限されず、図1〜4に示されるような配置が同様にして適用できる。しかし、特に図4に示されるように、絶縁材料部16’、16”を活物質層13、15の端部に「L」字状に配置する場合に好適に適用できる。このような構造により、絶縁材料部とシール材との間に空隙を有効に抑制・防止できるため、液漏れによる短絡をより有効に抑制・防止できる。また、絶縁テープは、テープの基材と、粘着剤としての耐溶剤性のある素材を含む粘着層を有することが望ましい。このように絶縁テープが接着性のある粘着層を有すると、粘着層を介して活物質層の端部に容易に固定でき、また、絶縁材料部と活物質層端部との密着性にも優れる。
絶縁テープの材質としては、絶縁性を有するものであれば特に制限されない。例えば、テープの基材としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリイミド、ナイロンなどの樹脂が使用できる。また、粘着層を構成する粘着剤としては、合成ゴム、ブチルゴム、合成樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。このような構成とすることにより、電池に悪影響を与えずかつ確実な絶縁が可能となる。
本発明において、絶縁材料部の形成方法は、特に制限されない。例えば、図1に示される絶縁材料部の形成方法は、以下のとおりである。ただし、下記方法に制限されるものではない。まず、集電体11の両面に、それぞれ、正極及び負極活物質層13、15を形成する。ここで、活物質層は、通常、集電体の面積より小さい面積で形成される、即ち、集電体上に活物質層の非形成部分が存在する。次に、このようにして形成された活物質層上に、絶縁材料部形成用の額縁状のシートをおき、その上に電解質を含むインク(電解質材料)を塗布するなどにより、電解質層形成する。この操作を、正極及び負極活物質層それぞれについて行なう。これにより、活物質層がおよそ等倍縮小された形状の電解質塗布部または膜(以下、一括して「電解質塗布部」と称する)が各活物質層上に電解質層として形成される。なお、電解質層がセパレータを含む場合には、電解質を含浸させたセパレータを電解質層として使用してもよい。
次に、額縁状のシートを剥がして、シートが配置されていた部分に、絶縁材料を塗布して、絶縁材料部を活物質層の端部に形成する。これにより、集電体の一方の面に、正極活物質層、ならびに電解質層及び絶縁材料部が順次形成され、かつ他方の面に負極活物質層、ならびに電解質層及び絶縁材料部が順次形成される。ここで、絶縁材料部形成用の額縁状のシートの額縁部分の幅は、絶縁材料部の形成幅によって適宜選択され、上述したように、0mm超5mm以下の幅、より好ましくは0mm超2mm以下である。また、額縁状のシートの大きさは、特に制限されないが、塗布工程を考慮すると、使用される集電体の大きさとほぼ同じかあるいは若干大きいくらいの大きさであることが好ましい。このようにすることにより、絶縁材料部を正確な位置に活物質層の端部に配置できる。また、絶縁材料の塗布方法は、スクリーン印刷法、沈積法、スプレー法、パターンコーティング法、ディスペンサを用いた方法など、公知の方法が使用できる。また、絶縁材料部の形成条件は、使用される絶縁材料の種類によって適宜選択され、例えば、熱可塑性樹脂を使用する場合には加熱によって絶縁材料部が形成できる。また、UV硬化樹脂を絶縁材料として使用する場合には適当な強度の紫外線を照射することによって絶縁材料部が形成できる。
または、下記方法によって、図1に示される絶縁材料部が形成されてもよい。上記と同様にして活物質層がおよそ等倍縮小された形状の電解質塗布部を各活物質層上に形成する。次に、上記集電体上にある活物質層の非形成部分に、絶縁材料を塗布する。ここで、絶縁材料は、上記より多目に塗布する。次に、このようにして得られた活物質層/電解質塗布部と絶縁材料とが配置された集電体を所定の枚数重ねる。さらにこの積層体を、厚み方向にプレスし、さらに絶縁材料を硬化する。このような操作により、塗布された絶縁材料の一部が活物質端部に入り込んで絶縁材料部が形成され、残りの絶縁材料はシール材となる。換言すると、上記方法によると、絶縁材料部とシール材とが一体的に形成できる。
また、図2に示される絶縁材料部の形成方法の好ましい実施の形態を下記に記載する。ただし、下記方法に制限されるものではない。例えば、上記図1に記載したのと同様にして、集電体の一方の面に、正極活物質層、ならびに電解質塗布部及び絶縁材料部を順次形成し、かつ他方の面に負極活物質層、ならびに電解質塗布部及び絶縁材料部を順次形成して、積層体を作製する。次に、この積層体の両面にセパレータを集電体全体を覆うように設置する。これにより、集電体の一方の面に、正極活物質層、電解質塗布部及び絶縁材料部、ならびにセパレータが順次形成され、かつ他方の面に負極活物質層、電解質塗布部及び絶縁材料部、ならびにセパレータが順次形成される。このとき、セパレータのうち電解質塗布部と接する部分は、電解質塗布部から電解質が含浸され電解質層を形成する。なお、この形態において、図1の第二の方法と同様にして、絶縁材料を多目に塗布した後、これらを所定の枚数重ね、厚み方向のプレスにより、絶縁材料を硬化させて、絶縁材料部とシール材とを一体的に形成してもよい。
または、セパレータ上に、電解質層を形成する。ここで、セパレータのうち電解質層と接する部分は電解質層から電解質が含浸される、あるいは予めセパレータのうち電解質層と接する部分に電解質を含浸する。また、電解質層は、セパレータがおよそ等倍縮小された形状でセパレータ上に形成される、即ち、セパレータ上に電解質層の非形成部分が存在する。次に、このセパレータ上にある電解質層の非形成部分に、絶縁材料を塗布して、絶縁材料部を形成する。これにより、セパレータ上に、電解質層およびこの電解質層の周辺部に額縁状に形成された絶縁材料部が配置された電解質層/絶縁材料部形成セパレータが作製される。さらに、電解質層/絶縁材料部形成セパレータの両面に、それぞれ、正極及び負極活物質層を形成した後、集電体を載置する。ここで、電解質層と絶縁材料部との合計面積と、活物質層の面積は、ほぼ同じである。これにより、セパレータの一方の面に、電解質層及び絶縁材料部、正極活物質層ならびに集電体が順次形成され、かつ他方の面に、電解質層及び絶縁材料部、負極活物質層ならびに集電体が順次形成される。なお、この形態においても、図1の第二の方法と同様にして、絶縁材料を多目に塗布した後、これらを所定の枚数重ね、厚み方向のプレスにより、絶縁材料を硬化させて、絶縁材料部とシール材とが一体的に形成してもよい。
または、上記図1に記載したのと同様にして、集電体の一方の面に正極活物質層を、および他方の面に負極活物質層を、それぞれ形成して、活物質層形成集電体を作製する。別途、セパレータ上に、電解質層を形成する。ここで、セパレータのうち電解質層と接する部分は電解質層から電解質が含浸される、あるいは予めセパレータのうち電解質層と接する部分に電解質を含浸する。また、電解質層は、活物質層やセパレータがおよそ等倍縮小された形状でセパレータ上に形成される、即ち、セパレータ上に電解質層の非形成部分が存在する。次に、このセパレータ上にある電解質層の非形成部分に、絶縁材料を塗布して、絶縁材料部を形成する。これにより、セパレータ上に、電解質層およびこの電解質層の周辺部に額縁状に形成された絶縁材料部が配置された電解質層/絶縁材料部形成セパレータが作製される。さらに、活物質層と電解質層とが合わさるように、活物質層形成集電体の両面に電解質層/絶縁材料部形成セパレータを2枚配置する。これにより、図2に示されるように、集電体の一方の面に、正極活物質層、電解質層及び絶縁材料部、ならびにセパレータが順次形成され、かつ他方の面に負極活物質層、電解質層及び絶縁材料部、ならびにセパレータが順次形成される。なお、この形態においても、図1の第二の方法と同様にして、絶縁材料を多目に塗布した後、これらを所定の枚数重ね、厚み方向のプレスにより、絶縁材料を硬化させて、絶縁材料部とシール材とを一体的に形成してもよい。
さらに、図3に示される絶縁材料部の形成方法の好ましい実施の形態を下記に記載する。ただし、下記方法に制限されるものではない。例えば、上記図3に示される形状を有するセパレータの本体部に電解質を含浸させる。次に、このセパレータの延長部に、絶縁材料を塗布して、絶縁材料部を形成して、絶縁材料部形成セパレータを作製する。これを、上記図2における場合と同様にして、別途作製した活物質層形成集電体と、活物質層とセパレータの本体部とが合わさるように、活物質層形成集電体の両面に絶縁材料部形成セパレータを2枚配置する。これにより、図3に示されるように、集電体の一方の面に、正極活物質層、セパレータ及び絶縁材料部が順次形成され、かつ他方の面に負極活物質層、セパレータ及び絶縁材料部が順次形成される。
または、延長部をもたないフィルム状のセパレータの所定の位置に、絶縁材料部を形成する。この操作をセパレータの両面に行う。次に、絶縁材料部が形成されたセパレータの両面に、上記と同様にして、活物質層の端部が絶縁材料部と合わさるように、活物質層形成集電体を2枚載置する。この積層体を所定の枚数重ねて、厚み方向にプレスする。これにより、全体が均一な厚みになるように、凸部となっていた絶縁材料部が形成されたセパレータ部分が圧縮されて、図3に示されるような延長部となる。また、セパレータ上で絶縁材料が塗布されてはいるが活物質層が配置されていない部分は、上記プレスにより、シール部31となる。ゆえに、この方法によると、絶縁材料部及びシール部が一体的に形成される。本実施形態において、セパレータのうち電解質層と接する部分は電解質層から電解質が含浸される、あるいは予めセパレータのうち電解質層と接する部分に電解質を含浸する。
さらに、図4に示される絶縁材料部の形成方法の好ましい実施の形態を下記に記載する。ただし、下記方法に制限されるものではない。上記図1に記載したのと同様にして、集電体の一方の面に正極活物質層を、および他方の面に負極活物質層を、それぞれ形成して、活物質層形成集電体を作製する。次に、絶縁テープを活物質層の端部に「L」字上に貼り合わせる。さらに、絶縁テープが貼られた活物質層上に、電解質層を形成し、セパレータを載置する。または上記と同様にして、セパレータ上に電解質層を形成したものを2枚、絶縁テープが貼られた活物質層と合わさるように、活物質層形成集電体の両面に配置してもよい。これにより、図4に示されるように、集電体の一方の面に、正極活物質層、電解質層及び絶縁材料部、ならびにセパレータが順次形成され、かつ他方の面に負極活物質層、電解質層及び絶縁材料部、ならびにセパレータが順次形成される。本実施形態において、セパレータのうち電解質層と接する部分は電解質層から電解質が含浸される、あるいは予めセパレータのうち電解質層と接する部分に電解質を含浸する。
本発明において、集電体11の材質は、特に限定されないが、具体的な例としては、例えば、鉄、クロム、ニッケル、マンガン、チタン、モリブデン、バナジウム、ニオブ、アルミニウム、銅、銀、金、白金およびカーボンよりなる群から選ばれてなる少なくとも1種類の集電体材料、より好ましくはアルミニウム、チタン、銅、ニッケル、銀、またはステンレス(SUS)よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種類の集電体材料などが好ましく挙げられ、これらは単層構造(例えば、箔の形態)で用いてもよいし、異なる種類の層で構成された多層構造で用いてもよいし、これらで被覆されたクラッド材(例えば、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材)を用いてもよい。あるいは、これらの集電体材料の組み合わせのめっき材なども好ましく使える。また、上記集電体材料である金属(アルミニウムを除く)表面に、他の集電体材料であるアルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。また、場合によっては、2つ以上の上記集電体材料である金属箔を張り合わせた集電体を用いてもよい。上述の材質は、耐食性、導電性、または加工性などに優れる。集電体の一般的な厚さは、5〜50μmである。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。大型の電池に用いられる大型の電極を作製するのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。小型の電極を作製するのであれば、面積の小さな集電体が用いられる。
集電体上に形成される活物質層13、15は、充放電反応の中心を担う活物質を含む層である。本発明においては、正極活物質層13もしくは負極活物質層15のいずれか一方または双方において、活物質の平均粒子径および空隙率が上述した所定の値を満足する。活物質層13、15は、活物質を含む。本発明の電極が正極として用いられる場合には、活物質層は正極活物質を含む。一方、本発明の電極が負極として用いられる場合には、活物質層は負極活物質を含む。
ここで、正極活物質は、放電時にイオンを吸蔵し、充電時にイオンを放出する組成を有する。好ましい一例としては、遷移金属とリチウムとの複合酸化物であるリチウム−遷移金属複合酸化物が挙げられる。具体的には、LiCoO2などのLi・Co系複合酸化物、LiNiO2などのLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMn2O4などのLi・Mn系複合酸化物、LiFeO2などのLi・Fe系複合酸化物およびこれらの遷移金属の一部を他の元素により置換したものなどが使用できる。これらリチウム−遷移金属複合酸化物は、反応性、サイクル特性に優れ、低コストな材料である。そのためこれらの材料を電極に用いることにより、出力特性に優れた電池を形成することが可能である。この他、前記正極活物質としては、LiFePO4などの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物;V2O5、MnO2、TiS2、MoS2、MoO3などの遷移金属酸化物や硫化物;PbO2、AgO、NiOOHなど、を用いることもできる。上記正極活物質は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。正極活物質の平均粒子径は、特に制限されないが、正極活物質の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。このような範囲であれば、二次電池は、高出力条件下での充放電時における電池の内部抵抗の増大が抑制され、充分な電流を取り出しうる。なお、正極活物質が2次粒子である場合には該2次粒子を構成する1次粒子の平均粒子径が10nm〜1μmの範囲であるのが望ましいといえるが、本発明では、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。ただし、製造方法にもよるが、正極活物質が凝集、塊状などにより2次粒子化したものでなくても良いことはいうまでもない。かかる正極活物質の粒径および1次粒子の粒径は、レーザー回折法を用いて得られたメディアン径使用できる。なお、正極活物質の形状は、その種類や製造方法等によって取り得る形状が異なり、例えば、球状(粉末状)、板状、針状、柱状、角状などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、いずれの形状であれ問題なく使用できる。好ましくは、充放電特性などの電池特性を向上し得る最適の形状を適宜選択するのが望ましい。
また、負極活物質は、放電時にイオンを放出し、充電時にイオンを吸蔵できる組成を有する。負極活物質の例としては、SiやSnなどの金属、或いはTiO、Ti2O3、TiO2、もしくはSiO2、SiO、SnO2などの金属酸化物、Li4/3Ti5/3O4もしくはLi7MnNなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物、Li−Pb系合金、Li−Al系合金、Li、または天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、もしくはハードカーボンなどの炭素材料が好ましく挙げられる。上記負極活物質は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。負極活物質の平均粒子径は、特に制限されないが、負極活物質の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。このような範囲であれば、二次電池は、高出力条件下での充放電時における電池の内部抵抗の増大が抑制され、充分な電流を取り出しうる。なお、負極活物質が2次粒子である場合には該2次粒子を構成する1次粒子の平均粒子径が10nm〜1μmの範囲であるのが望ましいといえるが、本発明では、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。ただし、製造方法にもよるが、負極活物質が凝集、塊状などにより2次粒子化したものでなくても良いことはいうまでもない。かかる負極活物質の粒径および1次粒子の粒径は、レーザー回折法を用いて得られたメディアン径使用できる。なお、負極活物質の形状は、その種類や製造方法等によって取り得る形状が異なり、例えば、球状(粉末状)、板状、針状、柱状、角状などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、いずれの形状であれ問題なく使用できる。好ましくは、充放電特性などの電池特性を向上し得る最適の形状を適宜選択するのが望ましい。
活物質層13、15には、必要であれば、その他の物質が含まれてもよい。例えば、導電助剤、バインダ、支持塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が含まれうる。
また、イオン伝導性ポリマーが含まれる場合には、前記ポリマーを重合させるための重合開始剤が含まれてもよい。
導電助剤とは、活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト等のカーボン粉末や、気相成長炭素繊維(VGCF;登録商標)等の種々の炭素繊維、膨張黒鉛などが挙げられる。しかし、導電助剤がこれらに限定されないことは言うまでもない。
支持塩(リチウム塩)としては、特に限定されないが、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);Li(C2F5SO2)2Nとも記載)、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3またはこれらの混合物などが挙げられる。しかし、支持塩(リチウム塩)がこれらに限定されないことは言うまでもない。
バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリイミド、PTFE、SBR、合成ゴム系バインダ等が挙げられる。しかし、バインダがこれらに限定されないことは言うまでもない。
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。ここで、前記ポリマーは、本発明の電極が採用される電池の電解質層において用いられるイオン伝導性ポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
重合開始剤は、イオン伝導性ポリマーの架橋性基に作用して、架橋反応を進行させるために配合される。開始剤として作用させるための外的要因に応じて、光重合開始剤、熱重合開始剤などに分類される。重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や、光重合開始剤であるベンジルジメチルケタール(BDK)等が挙げられる。
活物質層13、15に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
活物質層13、15の厚さについても特に制限はなく、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、活物質層13、15の厚さは、好ましくは10〜100μm程度であり、より好ましくは20〜50μmである。活物質層13、15が10μm程度以上であれば、電池容量が充分に確保されうる。一方、活物質層13、15が100μm程度以下であれば、電極深部(集電体側)にリチウムイオンが拡散しにくくなることに伴う内部抵抗の増大という問題の発生が抑制されうる。
本発明の電極は、例えば、溶媒に、活物質を添加することにより、活物質スラリーを調製し(活物質スラリー調製工程)、この活物質スラリーを集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより塗膜を形成する(塗膜形成工程)。次に、この塗膜上に、電解質層を形成する(電解質層形成工程)。前記電解質層形成工程を経て作製された積層体を積層方向にプレスする(プレス工程)。活物質スラリーにイオン伝導性ポリマーが添加され、当該イオン伝導性ポリマーを架橋させる目的で重合開始剤がさらに添加される場合には、塗膜形成工程における乾燥と同時に、または当該乾燥の前もしくは後に、重合処理を施してもよい(重合工程)。
上記活物質スラリー調製工程において、集電体表面上への正極層(または負極層)の形成方法は、特に制限されず、公知の方法が同様にして使用できる。例えば、上記したように、正極活物質(または負極活物質)、および必要に応じて他の成分(例えば、導電助剤、バインダ、イオン伝導性ポリマー、支持塩(リチウム塩)、重合開始剤など)を、溶媒中で混合して、活物質スラリーを調製する。
溶媒の種類や混合手段は特に制限されず、電極製造について従来公知の知見が適宜参照されうる。溶媒の一例を挙げると、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミドなどが用いられうる。バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を採用する場合には、NMPを溶媒として用いるとよい。
本製造方法では、この活物質スラリー調製工程において調製される活物質スラリー中の固形分と溶媒との配合比を調整することにより、製造される電極の活物質層の空隙率を制御することも可能である。具体的には、形成される活物質層の空隙率を減少させたい場合には、活物質スラリー中の固形分の配合量を増加させるとよい。一方、形成される活物質層の空隙率を増加させたい場合には、活物質スラリー中の固形分の配合量を減少させるとよい。ただし、後述する塗布工程やプレス工程において、活物質層の空隙率を制御してもよい。
次に、上記塗膜形成工程では、集電体を準備し、上記で調製した活物質スラリーを当該集電体の表面に塗布し、乾燥させる。これにより、集電体の表面に活物質スラリーからなる塗膜が形成される。この塗膜は、後述するプレス工程を経て、活物質層となる。
活物質スラリーを塗布するための塗布手段も特に限定されない。例えば、自走型コータなどの一般的に用いられている手段が採用されうる。ただし、塗布手段として、インクジェット方式を用いると、より精密な調節が可能となる結果、より簡便に活物質層の空隙率が制御されうるため、好ましい。
塗膜は、製造される電極における集電体と活物質層との所望の配置形態に応じて、形成される。例えば、製造される電極が双極型電極の場合、集電体の一方の面には正極活物質を含む塗膜が形成され、他方の面には負極活物質を含む塗膜が形成される。これに対し、双極型でない電極を製造する場合には、正極活物質または負極活物質のいずれか一方を含む塗膜が1枚の集電体の両面に形成される。
その後、集電体の表面に形成された塗膜を乾燥させる。これにより、塗膜中の溶媒が除去される。
塗膜を乾燥させるための乾燥手段も特に制限されず、電極製造について従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、加熱処理が例示される。乾燥条件(乾燥時間、乾燥温度など)は、活物質スラリーの塗布量やスラリーの溶媒の揮発速度に応じて適宜設定されうる。
塗膜が重合開始剤を含む場合には、さらに重合工程を行うことで、塗膜中のイオン伝導性ポリマーが架橋性基によって架橋される。
重合工程における重合処理も特に制限されることはなく、従来公知の知見を適宜参照すればよい。例えば、塗膜が熱重合開始剤(AIBNなど)を含む場合には、塗膜に熱処理を施す。また、塗膜が光重合開始剤(BDKなど)を含む場合には、紫外光などの光を照射する。なお、熱重合のための熱処理は、上記の乾燥工程と同時に行われてもよいし、当該乾燥工程の前または後に行われてもよい。
さらに、電解質層形成工程では、上記塗膜(活物質層)上に、電解質層が形成される。ここで、電解質層を構成する電解質としては、液体電解質またはポリマー電解質が用いられうる。
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられうる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート類が例示される。また、支持塩(リチウム塩)としては、LiBETI、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiBOB、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3またはこれらの混合物等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない真性ポリマー電解質に分類される。これらのうち、ゲル電解質が好ましく使用される。ゲル電解質を使用することにより、電解質の流動性が低くなるので、集電体や活物質層への電解質の流出を抑えて、各層間のイオン伝導性を遮断することが可能になる。
ゲル電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。マトリックスポリマーとして用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体等、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、およびポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)などが挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系高分子には、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。また、可塑剤としては通常リチウムイオン電池に用いられる電解液を用いることが可能である。
また、電解質層にセパレータが使用される場合のセパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
真性ポリマー電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。従って、電解質層が真性ポリマー電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
ゲル電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
続いて、プレス工程において、前記電解質層形成工程を経て作製された積層体を積層方向にプレスする。これにより、本発明の電池用電極が完成する。この際、プレス条件を調節することにより、活物質層の空隙率が制御されうる。
プレス処理の具体的な手段やプレス条件は特に制限されず、プレス処理後の活物質層の空隙率が所望の値となるように、適宜調節されうる。プレス処理の具体的な形態としては、例えば、ホットプレス機やカレンダーロールプレス機などが挙げられる。また、プレス条件(温度、圧力など)も特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。
なお、上述したように、双極型二次電池10においては、通常、各単電池層19の周囲にシール部31が設けられる。このシール部31は、電池内で隣り合う集電体11同士が接触したり、電池要素21における単電池層19の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起きたりするのを防止する目的で設けられる。かようなシール部31の設置により、長期間の信頼性および安全性が確保され、高品質の双極型二次電池10が提供されうる。
シール部31としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよく、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴムなどが用いられうる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点から、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。ここで、上記絶縁材料部とシール部で同じ材料を使用する場合には、絶縁材料部及びシール部を、別々に作製してもあるいは一体的に作製してもよい。
また、双極型二次電池10においては、電池外部に電流を取り出す目的で、最外層集電体(11a、11b)に電気的に接続されたタブ(正極タブ25および負極タブ27)が外装の外部に取り出される。具体的には、正極用最外層集電体11aに電気的に接続された正極タブ25と、負極用最外層集電体11bに電気的に接続された負極タブ27とが、外装の外部に取り出される。
タブ(正極タブ25および負極タブ27)の材質は、特に制限されず、双極型二次電池用のタブとして従来用いられている公知の材質が用いられうる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等が例示される。なお、正極タブ25と負極タブ27とでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。なお、本実施形態のように、最外層集電体(11a、11b)を延長することによりタブ(25、27)としてもよいし、別途準備したタブを最外層集電体に接続してもよい。
さらに、双極型二次電池10においては、使用時の外部からの衝撃や環境劣化を防止するために、電池要素21は、好ましくはラミネートシート29などの外装内に収容される。外装としては特に制限されず、従来公知の外装が用いられうる。自動車の熱源から効率よく熱を伝え、電池内部を迅速に電池動作温度まで加熱しうる点で、好ましくは、熱伝導性に優れた高分子−金属複合ラミネートシート等が用いられうる。
このようにして作製された本発明の双極型二次電池は、正極及び負極活物質層の端部に盛り上がりがあっても、絶縁材料部の存在により、これらの層同士の接触を有意に抑制・防止できる。このため、本発明の双極型二次電池は、長期的に運転されて当該端部に振動や熱が付加されても、各活物質層(特に端部)同士の接触を低減でき、内部短絡を抑制・防止できる。
ゆえに、本発明の双極型二次電池を用いた組電池もまた本発明に包含される。この際、双極型二次電池を複数個、並列および/または直列に接続して、組電池を構成する。
図6は、本発明に係る組電池の代表的な実施形態の外観図であって、図6Aは組電池の平面図であり、図6Bは組電池の正面図であり、図6Cは組電池の側面図である。
図6に示すように、本発明に係る組電池300は、本発明のリチウムイオン二次電池が複数、直列に又は並列に接続して装脱着可能な小型の組電池250を形成する。ここで、この装脱着可能な小型の組電池250をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池300を形成することもできる。図6Aは、組電池の平面図、図6Aは正面図、図6Cは側面図を示しているが、作成した装脱着可能な小型の組電池250は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、この組電池250は接続治具310を用いて複数段積層される。何個の非双極型ないし双極型のリチウムイオン二次電池を接続して組電池250を作製するか、また、何段の組電池250を積層して組電池300を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
本実施形態の組電池300によれば、組電池300を構成する個々の双極型二次電池10が出力特性に優れることから、容量・出力特性に優れる組電池が提供されうる。
本発明の車両は、本発明のリチウムイオン電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を搭載したことを特徴とするものである。本発明の高容量正極を用いると高エネルギー密度の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。言い換えれば、本発明のリチウムイオン電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池は、車両の駆動用電源として用いられうる。本発明のリチウムイオン電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ここで、車両としては、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)が挙げられる。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
したがって、本発明の双極型二次電池、または上記本発明の組電池をモータ駆動用電源として搭載した車両もまた本発明に包含される。図7は、本発明の組電池を搭載した車両の概念図である。
図7に示したように、組電池300を電気自動車400のような車両に搭載するには、電気自動車400の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池300を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。以上のような組電池300を用いた電気自動車400は高い耐久性を有し、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。さらに、燃費、走行性能に優れた電気自動車、ハイブリッド自動車を提供できる。双極型二次電池10または組電池300をモータ用電源として用いる車両としては、例えば、ガソリンを用いない完全電気自動車、シリーズハイブリッド自動車やパラレルハイブリッド自動車などのハイブリッド自動車、および燃料電池自動車などの、車輪をモータによって駆動する自動車が挙げられる。自動車400に搭載される双極型二次電池10または組電池300は、上記で説明したような特性を有する。このため、双極型二次電池10または組電池300を搭載する自動車400は、容量・出力特性に優れ、高出力条件下においても充分な出力を提供しうる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
実施例1
1.正極活物質層の作製
以下の材料を所定の比で混合して正極スラリーを作製した。正極活物質としてLiMn2O4(85wt%)、導電助剤としてアセチレンブラック(5wt%)、及びバインダとしてPVdF(10wt%)を用い、スラリー粘度調整溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を塗布工程に最適な粘度になるまで添加し、正極スラリーを作製した。
ステンレス集電体(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、乾燥させて、厚みが40μmの正極活物質層を集電体上に形成した。このとき、正極活物質層は200mm×300mmとし、パターンコーティングを行った。
2.負極活物質層の作製
以下の材料を所定の比で混合して負極スラリーを作製した:負極活物質としてハードカーボン(90wt%)及びバインダとしてPVdF(10wt%)を用い、スラリー粘度調整溶媒としてNMPを塗布工程に最適な粘度になるまで添加し、負極スラリーを作製した。
前記1.で正極活物質層を塗布した集電体の反対面に、上記負極スラリーを塗布し、乾燥させて、厚みが40μmの負極活物質層を集電体の反対面に形成した。このとき、負極活物質層は裏面の正極活物質層と同位置に200mm×300mmとして、パターンコーティングを行った。ステンレス集電体の両面に正極活物質層と負極活物質層がそれぞれ形成されることにより、双極型電極が形成された。
3.双極型電極の作製
上記2.で作製された双極型電極を240×340(mm)に切り取り、正極活物質層及び負極活物質層の外周部に、幅20mmの集電体表面を露出させた。これにより、活物質層の大きさが200×300(mm)であり、外周部に20mmの集電体の露出した双極型電極を作製した。
4.電解質層の形成
以下の材料を所定の比で混合して電解質材料を作製した:電解液としてPC−EC 1MLiPF6(90wt%)及びホストポリマーとしてHFP(ヘキサフルオロプロピレン)を10wt%含むPVdF−HFP(10wt%)コポリマーを用い、粘度調整溶媒としてジメチルカーボネート(DMC)を塗布工程に最適な粘度になるまで添加し、プレゲル電解質を作製した。
このプレゲル電解質を、それぞれ、上記3.で得られた正極活物質層、負極活物質層に、190mm×290mmとなるように、塗布し、DMCを乾燥させることで、厚みが10μmの電解質層を正極活物質層、負極活物質層に形成し、双極型電極を完成させた。これにより、各活物質層の外周端から5mm内側までの範囲に電解質未塗布部が生じた。ただし、正極末端電極には正極側のみ、負極末端電極には負極側のみに、プレゲル電解質を塗布した。
5.シール部前駆体の形成
上記4.で作製された双極型電極の正極活物質層の外周部の活物質層の非形成部分(集電体露出部)に、ディスペンサを用い、シール前駆体(1液性未硬化エポキシ樹脂)を塗布した。
次に、250×350(mm)のセパレータ(ポリエチレンセパレータ:12μm)を正極活物質層側に集電体であるSUS箔すべてを覆うように設置した。
6.積層工程
上記5.で作製されたシール部前駆体が塗布された双極型電極を13枚重ねることによって単電池が12積層された双極型電池構造体を作製した。
7.双極型電池のプレス
上記6.で積層された双極型電池構造体を熱プレス機により面圧1kg/cm2、80℃で1時間熱プレスした。これにより、未硬化のシール部前駆体(エポキシ樹脂)の一部は、電解質未塗布部にまで入り込み、硬化することにより、幅5mmの絶縁材料部が各活物質層端部に形成された。また、残りのシール部前駆体は、集電体上の活物質層の非形成部分で硬化して、シール部を形成した。ここで、形成された絶縁材料部(硬化後)のヤング率は、2.7GPaであり、また、セパレータのヤング率は、0.76GPaであった。
これにより、12層積層された双極型電池要素が作製された。なお、このようにして作製された双極型電池要素の部分断面図を図8に示す。
実施例2
実施例1において、電解質の塗布面積が196mm×296mmとなるように、電解質を各活物質層上に塗布した以外は、実施例1と同様の操作を行ない、12層積層された双極型電池要素を作製した。なお、このようにして作製された双極型電池要素の部分断面図を図9に示す。これにより、幅2mmの絶縁材料部が各活物質層端部に形成された。また、形成された絶縁材料部(硬化後)のヤング率は、2.7GPaであり、また、セパレータのヤング率は、0.76GPaであった。
実施例3
実施例1 1.と同様の操作を繰り返し、集電体上に正極活物質層を形成した。このようにして形成された正極活物質層の表面形状を、3D解析装置を用いて測定したところ、正極活物質層外周端から2mmまでのところに2〜3μmの盛り上がりを認めた。
この正極活物質層を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行ない、12層積層された双極型電池要素を作製した。なお、このようにして作製された双極型電池要素の部分断面図を図10に示す。これにより、盛り上がった部分の上のみに絶縁材料部が形成されるように、幅2mmの絶縁材料部が各活物質層端部に形成された。また、形成された絶縁材料部(硬化後)のヤング率は、2.7GPaであり、また、セパレータのヤング率は、0.76GPaであった。
実施例4
実施例1 1.〜3.と同様の操作を繰り返し、大きさが240×340(mm)の双極型電極を作製した。この双極型電極は、活物質層の大きさが200×300(mm)であり、外周部に20mmの集電体の露出した部分を有する。
次に、カプトンテープ(基材:ポリイミド、粘着材:ブチルゴム、厚み:20μm)を、5mm幅で活物質層とカプトンテープが重なるように、各活物質層の端部に貼り付けた。次に、実施例1 4.と同様にして作製したプレゲル電解質を、カプトンテープにかからないように注意しながら、正極及び負極活物質層の両面に、190mm×290mmとなるように、塗布し、DMCを乾燥させた。これにより、厚みが20μmの電解質層を正極活物質層、負極活物質層に形成し、双極型電極を完成させた。これにより、各活物質層の外周端から5mm内側までの範囲に電解質未塗布部が生じた。
このようにして作製された双極型電極について、実施例1 5.〜7.と同様の操作を行ない、12層積層された双極型電池要素を作製した。なお、このようにして作製された双極型電池要素の部分断面図を図11に示す。これにより、幅5mmの絶縁材料部(カプトンテープ)が各活物質層端部にL字形に形成された。また、形成された絶縁材料部(カプトンテープ)のヤング率は、3.6GPaであり、また、セパレータのヤング率は、0.76GPaであった。
実施例5
硬化後の樹脂のヤング率が0.5GPaである、シール前駆体(1液性未硬化エポキシ樹脂)を使用する以外は、実施例1と同様の操作を行ない、12層積層された双極型電池要素を作製した。なお、このようにして作製された双極型電池要素の部分断面図を図12に示す。これにより、幅5mmの絶縁材料部が各活物質層端部に形成された。また、形成された絶縁材料部(硬化後)のヤング率は、0.5GPaであり、また、セパレータのヤング率は、0.76GPaであった。
比較例1
活物質層外周端とシール部との間に空隙が生じるように、シール前駆体(1液性未硬化エポキシ樹脂)を、正極及び負極活物質層の外周部の活物質層の非形成部分(集電体露出部)に、ディスペンサを用いて塗布した以外は、実施例1と同様の操作を行ない、12層積層された双極型電池要素を作製した。なお、このようにして作製された双極型電池要素の部分断面図を図13に示す。これにより、完成した双極型電池要素電池完成後の各単電池層において、活物質層外周端とシール部との間に空隙が存在した。また、形成されたシール部(硬化後)のヤング率は、2.7GPaであり、また、セパレータのヤング率は、0.76GPaであった。
(評価)
上記実施例1〜5及び比較例1で作製した双極型電池要素について、下記方法に従って、性能を評価した。
<内部短絡試験>
上記実施例1〜5で作製した双極型電池要素を、それぞれ初回充電を正極の塗布質量から概算された容量ベースで、50.4V−0.5Cで4時間行い、充電終了後1ヶ月後の電池の各層電圧を測定した。
結果を下記表1に示す。なお、表1の結果は、各電池における12層の単電池層中でショートが確認された単電池層の数(ショート数)を示す。また、本評価試験において、ショートとは、電圧が他の層と比較して0.5V以上低下したものを意味する。
表1の結果から、活物質層の端部に絶縁材料部が存在しない比較例1に対し、活物質層の端部に絶縁材料部が存在する実施例1〜5では、短絡(ショート)が全く認められないことがわかる。また、比較例1の電池を解体したところ、電池内部の正確な位置の特定は困難であったが、正極あるいは負極活物質層あるいは正極及び負極活物質層双方部分で熱がかかった履歴が確認され、端部がセパレータを突き破り、内部短絡(ショート)していることと推察された。これらの結果から、活物質層の端部に絶縁材料を設置することで、端部における内部短絡を防止することが可能であることがわかる。
<熱振動複合試験>
上記実施例1〜5及び比較例1で作製した双極型電池要素に、振動(入力加速度を24.5m/s2とし、10〜100Hzまでの振動を常に印加)及び熱サイクル(25℃で1時間→60℃で1時間を1サイクル)を2週間加えた。その後、放電を行って容量を確認した。加振前の容量を100%とし、加振後の放電容量(%)を下記表2に示す。放電は定電流(CC)放電により行い、放電末を30Vとした。
表2の結果のうち、実施例5と実施例1〜4とを比較すると、実施例5では放電容量が低下していた。この結果から、絶縁材料のヤング率(E1)がセパレータのヤング率(E2)よりも大きい方が、熱や振動などを加えた後の放電容量の低下を抑えることができることが考察される。なお、このような現象が起こる詳しいメカニズムは不明であるが、絶縁材料のヤング率が高いことで、電解質層端部における耐熱振動複合性能が向上する。また、容量低下の原因は端部における熱や振動による微小短絡が原因ではないかと考えられる。
また、実施例1、2、4と実施例3とを比較すると、放電容量に差はない。これから、絶縁材料部を、盛り上がり部位に選択的に形成することによっても、十分内部短絡を抑制・防止できると、考察される。よって、電極の塗工時の盛り上がりが微小短絡の主原因ではないかと考えられる。
さらに、実施例4と実施例1〜3を比較すると、放電容量に差はない。これから、絶縁材料部を活物質層の端部に形成する限り、絶縁材料部の形成方法によって効果に有意な差は認められないことがわかる。
なお、熱振動複合試験前の実施例3の放電容量を100%とした場合の、他の電池要素の放電容量(%)を下記表3に示す。
表3の結果のうち、実施例3と実施例1、2、4、5とを比較すると、実施例3の場合に一番放電容量が多いことがわかる。これは、実施例3では、端部の盛り上がりがある部分のみを覆っていることから、絶縁部を必要最小限に抑えて反応面積を最大限に確保したことにより、電池としての性能が一番高くなっているものと考えられる。
また、実施例2と実施例1、4、5とを比較すると、実施例2は実施例3には完全には及ばないものの、放電容量が比較的大きいことがわかる。これは、絶縁材量部の形成幅が2mmと、端部の絶縁材料部の設置部幅が狭いため、反応面積を可能な限り大きく確保したことになり、電池としての性能が比較的高くなっているものと考えられる。