本発明の請求項1記載の発明は、同じ衣類の風が当たった状態と風が当たっていない状態との表面温度差から前記衣類の乾燥度合いを判断し、前記衣類を加熱する加熱時間が短くなるように前記衣類の乾燥度合いにもとづいて前記衣類の加熱の開始時間を決定し使用者が希望する時間内に前記衣類を乾燥させることを特徴とする衣類乾燥機の制御方法であり、衣類が濡れている場合には風を当てると気化熱により温度が低下する現象から、衣類の表面温度を風が当たっているときと当たっていないときに測定し、両者の表面温度差が大きいときには衣類に含まれている水分が多く、逆に表面温度差が小さいときは衣類に含まれている水分が少ないと判断することができるため、濡れている衣類の乾燥度合いを正確に判断するという作用を有する。またこの作用を利用することにより、衣類の乾燥終了時間を正確に予測する衣類乾燥機と、使用者が希望する時間内に省エネで衣類を乾燥させる衣類乾燥機を提供することができる。
また、本発明の請求項2記載の発明は、加熱の開始時間の決定は、衣類の乾燥度合いにもとづいて予測される加熱を開始した場合の衣類の乾燥終了時間と、予め設定された目標終了時間を比較して行う衣類乾燥の制御方法であり、加熱をしない状態で目標終了時間までに衣類が乾かない場合は、いつ加熱を開始すれば短時間の加熱で目標終了時間までに衣類が乾燥するかを判断することができるという作用を有し、使用者が希望した時間内に省エネで衣類を乾燥させる衣類乾燥機を提供することができる。
また、本発明の請求項3記載の発明は、衣類に風を送る送風手段と、衣類の表面温度を検知する表面温度検知手段と、衣類に熱を与える加熱手段と、衣類周辺の空気の絶対湿度を検知する絶対湿度検知手段と、前記送風手段と前記加熱手段を制御する制御手段と、前記表面温度検知手段及び前記絶対湿度検知手段から送られる情報を受けて衣類の乾燥に必要な時間を予測する乾燥予測手段と、使用者が衣類の乾燥が終了する目標時間である目標終了時間を入力する時間入力手段と、前記加熱手段を使用するタイミングを指示する加熱指示手段と、時間を測定するタイマーを備え、前記制御手段が前記送風手段を用いて同じ衣類の風が当たった状態と風が当たっていない状態をつくり、前記乾燥予測手段が衣類に対する風の有無についての情報と、前記表面温度検知手段が検知した衣類の表面温度と、前記湿度検知手段が検知した衣類周辺の絶対湿度から、同じ衣類の風が当たった状態と風が当たっていない状態との表面温度差を衣類の乾燥度合いとして断続的に算出し、衣類の乾燥度合いにもとづいて、その時点から加熱を開始した場合の衣類の乾燥終了時間を予測し、前記加熱指示手段が前記乾燥終了時間と前記目標終了時間とを比較し、前記乾燥終了時間が前記目標終了時間と同じかまたは前記目標終了時間よりも遅い場合には前記加熱手段を使用するように前記制御手段に指示する衣類乾燥機であり、衣類が濡れている場合には風を当てると気化熱により温度が低下する現象からその時々の衣類の乾燥度合いを正確に判断することで、加熱時間が短くなるように加熱の開始時間を決定するため、使用者が希望する時間内に省エネで衣類を乾燥させる衣類乾燥機を提供することができる。
また、本発明の請求項4記載の発明は、衣類周囲の空気温度を検知する温度検知手段を備え、乾燥予測手段は加熱を開始した場合に予測される衣類の乾燥終了時間を、前記温度検知手段の検知した温度によって変化させる衣類乾燥機であり、衣類周囲の空気温度に応じて、使用者が希望する時間内に省エネで衣類を乾燥させる衣類乾燥機を提供することができる。
また、本発明の請求項5記載の発明は、加熱指示手段によって加熱手段の使用が指示された場合、目標終了時間まで加熱を継続し、目標終了時間に到達したら加熱を停止する衣類乾燥機であり、まとまった時間内で一気に加熱を行うため、エネルギーロスの少ない衣類乾燥機を提供することができる。
また、本発明の請求項6記載の発明は、乾燥予測手段は加熱手段が停止した後に、表面温度検知手段の検知した風が当たった状態と当たっていない状態の表面温度差から衣類の乾燥が終了したかどうかを判断し、制御手段は衣類の乾燥が終了していなければ前記加熱手段と送風手段を用いて衣類を再度一定時間加熱し、衣類の乾燥が終了した場合は衣類乾燥機の運転を停止する衣類乾燥機であり、風が当たった状態と当たっていない状態とで衣類の表面温度差が小さいときに衣類が乾燥したと判断できるが、衣類が加熱されている場合は表面温度差に誤差が生じる場合があり、加熱を停止してから乾燥が終了したかどうかを確認することで、まだ乾いていない場合は再度衣類の乾燥を実施することができ、乾き残しのない衣類乾燥機を提供することができる。
また、本発明の請求項7記載の発明は、衣類の乾燥が終了する毎に、使用者が入力した目標終了時間とタイマーによって測定された実際の乾燥に要した時間を記憶する記憶手段を備え、目標終了時間までに衣類の乾燥が終了しなかった場合、乾燥予測手段に対して乾燥終了時間を前回よりも遅めに予測するフィードバックを行い、また目標時間までに乾燥が終了した場合、乾燥予測手段に対して乾燥終了時間を前回よりも早めに予測するフィードバックを行う衣類乾燥機であり、衣類の乾燥終了時間の予測時間は衣類乾燥機の設置された環境に応じて実際に乾燥が終了した時間と誤差が生じる場合があり、予測した目標終了時間で実際の乾燥が終了しない場合は予測時間が実際に近づくように調節するというフィードバックを繰り返すことで、衣類乾燥機の設置された環境に応じて精度を上げていく衣類乾燥機を提供することができる。
また、本発明の請求項8記載の発明は、加熱手段を使用せずに衣類の乾燥が終了した場合、制御手段は衣類の乾燥が終了した後に前記加熱手段と送風手段を用いて衣類を一定時間加熱する衣類乾燥機であり、加熱せずに衣類を乾燥させた場合、衣類は周囲の空気と平衡になった状態であるが、乾燥後に加熱をすることにより、加熱停止後も周囲の空気と平衡になった状態よりもさらに乾燥した状態に衣類を保つ衣類乾燥機を提供することができる。
また、本発明の請求項9記載の発明は、衣類周辺の相対湿度を検知する相対湿度検知手段を備え、制御手段は前記相対湿度検知手段が検知した相対湿度が高い場合のみ、衣類の乾燥が終了した後に衣類を加熱する衣類乾燥機であり、衣類が乾燥しても高湿度の状態で加熱をせずに乾燥が終了した場合には衣類が湿気を含んだ状態になるため、乾燥後に加熱をすることにより、加熱停止後も周囲の空気と平衡になった状態よりもさらに乾燥した状態に衣類を保つ衣類乾燥機を提供することができる。
また、本発明の請求項10記載の発明は、表面温度検知手段の検知方向を変更する検知方向変更手段と、送風手段から吹出す風の風向を変更する風向変更手段と、濡れた衣類の存在する方向を検出する方向検出手段を備え、前記検知方向変更手段と前記風向変更手段と前記方向検出手段は制御手段によって制御される構成とし、前記制御手段は予め衣類を複数の範囲にゾーニングし、各範囲の衣類について前記検知方向変更手段を用いて衣類の乾燥度合いを検知し、前記方向検出手段を用いて濡れた衣類の存在する方向を検出し、前記風向変更手段を用いて濡れた衣類の存在する方向に向けて送風する衣類乾燥機であり、広範囲の衣類の乾燥度合いを検知するため、衣類の乾燥時間をより正確に判断でき、また濡れた衣類に向けて送風するため、衣類の乾燥むらを抑制して衣類全体の乾燥時間を短縮する衣類乾燥機を提供することができる。
また、本発明の請求項11記載の発明は、表面温度検知手段が風が当たっていない状態の衣類の表面温度を検知する際、制御手段は前記風向変更手段を制御して前記表面温度検知手段が検知していない衣類に向けて送風する衣類乾燥機であり、衣類の乾燥度合いを検知する間も常に衣類に向けて送風することで、衣類の乾燥時間を短縮する衣類乾燥機を提供することができる。
また、本発明の請求項12記載の発明は、制御手段が前記風向変更手段を用いて衣類に断続的に送風し、その間乾燥予測手段は表面温度検知手段が連続的に検知した同じ衣類の表面温度の最高値と最低値との差を、同じ衣類の風が当たった状態と風が当たっていない状態との表面温度差として衣類の乾燥終了時間を予測する衣類乾燥機であり、衣類の乾燥度合いを検知する際に、風向について特別な制御をせず往復動作をさせるだけで衣類の乾燥度合いを検知することができ、風向制御方法の簡単な衣類乾燥機を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1の衣類乾燥機について、図1〜図12を参照しながら説明する。
衣類乾燥機は天井裏に設置され、室内には衣類を吊るすための竿が少なくとも1本あるものとする。衣類乾燥機は竿に吊るされた衣類を乾かすためのものである。衣類乾燥機が設置される室としては主に浴室を想定しているが、他にも脱衣室、サウナ室、衣類乾燥専用室、あるいは空き部屋等の居室や廊下としてもよい。いずれの室においても天井に衣類乾燥機が存在し、衣類乾燥機の約25〜30cm下方に竿が存在し、竿にハンガー等の干し具を介して複数の衣類が吊るされている状況を想定している。なお衣類は衣類乾燥機から吹出した風が届く範囲(一例として約1m以内)に吊るされているものとする。
まずは衣類乾燥機の構成について図1を参照しながら説明する。図1は衣類乾燥機の断面図である。なお図1では竿が図の手前から奥に向かって設置されている状態を示している。
衣類乾燥機は、送風手段としての送風ファン1、及びモーター2(図示せず)、及び室内から空気を吸い込む吸込み口3、及び室内に空気を吹出す吹出し口4を備える。
送風ファン1は、広範囲に送風できるようクロスフローファンとするが、シロッコファンを用いてもよい。いずれの場合にも金属製とする。送風ファン1をクロスフローファンとする場合、その回転軸が竿の軸方向と一致する向きになるように衣類乾燥機を設置するものとする。送風ファン1及びモーター2の選定に当たっては、風量が一例として100〜400[m3/h]程度得られるようにするが、短時間で省エネルギーに衣類を乾燥させるためには、騒音が問題にならない範囲においてできる限り大きい風量が得られるとよい。モーター2はDCモーターとし、送風ファン1の回転数を自由に変えられるものとする。
また衣類乾燥機は、吹出し口4に風向変更手段としてのルーバー5及びモーター6(図示せず)およびアーム7(図2で説明)を備える。ルーバー5は竿の軸方向と同じ向きに風向を変えられるようにする。モーター6はステッピングモーターとする。
ルーバー5の動作について図2を参照しながら説明する。図2はルーバー5の動作を示す断面構成図である。図2(a)は風向が変更されず、風が真下に吹出す状態を示している。ルーバー5は、アーム7を介して竿の軸方向と同じ向きに回転するモーター6に接続され、モーター6が回転すると図2(b)のようにルーバー5が同じ方向に傾くようになっている。これにより風向が変更され、複数の衣類にそれぞれ風が当たるようになる。
また衣類乾燥機は、加熱手段としてのヒーター8を送風ファン1の送風経路内に備える。ヒーター8は一例として加熱量1000〜2000[W]程度のPTCヒーターとするが、ガス給湯による温水管を配管してもよい。
また衣類乾燥機は、表面温度検知手段としての赤外線センサー9と、検知方向変更手段および検知対象の方向を検出する方向検出手段としてのモーター10と、アーム11(図3で説明)を備える。赤外線センサー9は一例として静止物体の表面温度検知に適したサーモパイルとし、狭い範囲の放射温度が取れるように、視野角の小さいもの(例えば3°程度)を使用する。赤外線センサー9はサーミスタにより温度も検知する方式とし、このサーミスタは温度検知手段として動作するものとする。赤外線センサー9を複眼にすると一度に複数の領域を検知できるため、乾いていない衣類を精度よく検知できるようになるが、ここでは安価な単眼のサーモパイルを使用するものとする。モーター10は一例としてステッピングモーターとする。
放射温度検知方向を変更する動作について図3を参照しながら説明する。図3は赤外線センサー9の回転動作を示す立面構成図である。図3(a)は赤外線センサー9が真下を検知する状態を示している。赤外線センサー9はアーム11を介して竿の軸方向と同じ向きに回転するモーター10に一体となって回転するように固定されている。図3(b)はモーター10が回転して赤外線センサー9が斜め下を検知する状態を示している。これにより赤外線センサー9は竿の軸方向と同じ向きに回転し、複数の衣類の表面温度を検知することができる。
なお赤外線センサーは高湿度の環境に曝されると寿命が短くなるため、入浴中の湿気が赤外線センサー9に接触することを防ぐための蓋等を備えた方が望ましいが、ここでは省略する。
また衣類乾燥機は図1に示すように、室内の空気を屋外に排出する換気ファン12、モーター13、室内から空気を吸込む吸込み口14、空気を屋外に排出する排出口15を備える。換気ファン12は、空気を吸込むときに圧力が必要な場合にも風量が確保できるようにシロッコファンとする。なお他に十分湿気を排出する能力のある換気手段が室内にあれば換気ファン12、モーター13、吸込み口14、排出口15は具備しなくてもよい。
また衣類乾燥機は、制御手段としてのコントローラー16を備える。コントローラー16はモーター2、6、10、13及びヒーター8と接続され、それらの動作を制御する。
また衣類乾燥機は、乾燥予測手段及び加熱指示手段及び記憶手段及びタイマーとしてのマイクロコンピューター17(以下、マイコン17と略す)を備える。マイコン17はコントローラー16に様々な指示を出し、赤外線センサー9から受け取った情報をもとに乾燥終了時間を予測したり、ヒーター8の通電開始時間を指示したり、衣類の乾燥が終了したかどうかを判断したり、衣類の乾燥に要した時間を記憶したりする。マイコン17による計算や判断の詳細なフローは後述する。
また衣類乾燥機は、相対湿度検知手段としての湿度センサー18を備える。湿度センサー18は衣類乾燥機の換気経路内に設置し、排気空気の湿度を衣類周辺の空気の湿度として検知するものである。湿度センサー18はマイコン17に接続され、検知した湿度についての情報を送る。湿度センサー18は測定範囲が0〜100%までと広く、かつ応答性のよい高分子膜湿度センサーとする。マイコン17は赤外線センサー9から送られた温度についての情報と、湿度センサー18から送られた相対湿度についての情報から絶対湿度を算出する回路を持ち、絶対湿度検知手段として機能する。
また衣類乾燥機は、使用者が衣類乾燥機を操作するための操作板19を備える。操作板19について図4を参照しながら説明する。図4は操作板19を示す配置図である。
操作板19は時間入力手段としての時間入力ボタン20、時間表示板21、電源スイッチ22、運転スイッチ23、モード選択スイッチ24、情報表示板25及び表示切替えスイッチ26を有する。時間入力ボタン20は使用者が希望する乾燥終了時間を目標終了時間として入力するためのボタンであり、入力された目標終了時間は時間入力ボタン20に隣接する時間表示板21によって表示される。情報表示板25は電力量表示手段、CO2排出量表示手段、ランニングコスト表示手段として機能し、表示切替えスイッチ26によって電力量とCO2排出量とランニングコストの表示を切替えられるようにする。
操作板19はマイコン17と接続され、時間入力ボタン20、電源スイッチ22、運転スイッチ23、モード選択スイッチ24の情報はマイコン17に送られ、また情報表示板25は電力量とCO2排出量とランニングコストについての情報をマイコン17から受け取る。
また衣類乾燥機は、電力量測定手段としての電力量計27を備える。電力量計27はマイコン17に接続され、測定した電力量についての情報をマイコン17に送る。マイコン17は電力量をCO2排出量及びランニングコストに換算する換算機能を有し、CO2排出量換算手段及びランニングコスト換算手段として機能する。
また衣類乾燥機は、金属製のまたは樹脂製の筐体28及び樹脂製の化粧パネル29を備える。筐体28は天井裏に設置される。
ここで、各構成要素の関係を図5に示す。図5は各構成要素間の情報の流れを示すブロック図である。各種の情報はマイコン17に集約され、マイコン17はコントローラー16を通して衣類乾燥機の動作の指示を出すという流れになっている。
次に、衣類乾燥機の動作の概要について図6を参照しながら説明する。図6は衣類乾燥モードが選択された場合の動作の概要を示すフロー図である。なお衣類乾燥機には衣類乾燥モード以外にも暖房モード、換気モード、送風モード等の運転モードを有し、使用者がモード選択スイッチ24によって必要なモードを選択できるようになっているが、暖房モード、換気モード、送風モード等についての動作は浴室換気乾燥機に一般的な動作を想定しているため、ここでの説明は省略する。
はじめに使用者が電源を入れて衣類乾燥モードを選択した後、目標終了時間を入力する(S01)と、マイコン17がその情報を受け取ってまず換気と電力量測定を開始し(S02)、続いて衣類の表面温度の検知(S03)を始める。次に衣類の乾燥が終了したかどうかを判断する(S04)。乾燥が終了した場合は加熱が必要かどうかを判断し(S09)、必要な場合は加熱をして(S10)から換気を停止し(S15)、運転を終了する(S16)。乾燥が終了していない場合は濡れた衣類が存在する位置を特定して送風範囲を決定し(S05)、その後S03の結果から乾いていない衣類の乾燥度合いを把握する(S06)。次に、衣類の乾燥状況と入力された目標終了時間から加熱が必要かどうかを判断する(S07)。加熱が必要ない場合、所定の時間送風のみの乾燥運転を継続し(S08)、その後再び衣類の表面温度を検知する(S03)。加熱が必要な場合、目標終了時間まで加熱と送風による乾燥運転を行う(S11)。目標終了時間に達したら衣類の乾燥が終了したかどうかを判断し(S11)、乾燥が終了していない場合は所定の時間追加的に加熱と送風による乾燥運転を行う(S13)。乾燥が終了した場合は乾燥の実績からフィードバックを行った(S14)後、換気と電力量測定を終了し(S15)、運転を終了する(S16)。
以上のように衣類乾燥機は衣類が乾いたら自動的に運転が終了するので、タイマーで運転が終了する時間を設定する場合と異なり、衣類が乾いていないということがなく、また衣類が乾き過ぎて無駄なエネルギーを消費するということもない。また使用者が希望した時間内に省エネで衣類を乾燥させることにより、使用者はエネルギーの無駄を気にすることなく個々の生活スタイルに合わせて衣類を乾燥させることができ、かつ環境負荷を抑えることができる。
ここで、濡れている衣類とは周囲の雰囲気になじんでいない衣類を示している。つまり、乾燥しているとは、その衣類が周囲の雰囲気に置かれた場合の平衡含湿率に到達している状態と定義され、濡れているとは、そうでない状態を意味している。
以下、各フローの詳細な内容について説明する。
はじめに換気と電力量測定の開始(S02)について説明する。
モード選択スイッチ24によって衣類乾燥モードが選択されたという情報をマイコン17が受け取ると、マイコン17はコントローラー16に換気開始を指示する。コントローラー16はモーター13を操作して換気ファン12を運転させ、それによって室内の空気を屋外に排出する。このときの換気量は浴室程度の容量の室内で一例として100〜200[m3/h]程度とする。なお部屋が大きい場合は換気量も大きくする必要がある。S02以降、S14まで常に換気を継続するものとする。
またこのとき、マイコン17は電力量計27を用いて電力量の測定を始める。
次に衣類の表面温度の検知(S03)について図7を参照しながら説明する。図7は衣類の表面温度の検知(S03)の制御を示すフロー図である。
S03が開始されると、まずマイコン17が検知対象の領域を決定する(S03a)。ここで、検知を行う領域全体を検知領域と言い、検知領域を分割した領域を分割領域と言い、そのときどきにおいて検知対象にする分割領域を検知対象領域と言うことにする。検知領域を分割するのは竿に吊るされた複数の衣類について、広範囲の衣類の乾燥度合いを把握するためであるので、衣類が存在すると予想される竿周辺の空間領域を竿の軸方向に沿って複数に分割して、その分割領域を予めマイコン17に記憶させておくものとする。マイコン17は予め記憶した複数の分割領域のうちから、そのとき検知対象とする領域を検知対象領域として順に選択する。
具体的な検知領域の分割について、図8を参照しながら説明する。図8は検知領域の分割方法を示した概念図である。衣類乾燥機と衣類との位置関係としては、図8に示すように、衣類乾燥機の下方25〜30[cm]程度の位置に竿があり、竿に干し具を介して複数の衣類が吊るされているという状態を想定している。
竿の長さについては特に限定はしないが、検知領域の範囲は衣類乾燥機から所定の距離(例えば1[m]程度)以内の範囲に吊るされた衣類の表面温度を検知できる範囲とする。これは、その範囲であれば衣類乾燥機から吹出した風が届くということを意図している。
検知領域を分割する方法としては、竿の軸方向に沿って所定の数(例えば5)分割するものとする。図8には検知領域を5分割した状態を示している。分割領域はR1〜R5まであり、それぞれの領域に対して衣類の乾燥度合いを判断する。
マイコン17はR1〜R5のうちから検知対象領域を決定(S03a)すると、次にコントローラー16にモーター10を回転させるよう指示して赤外線センサー9を回転させ、赤外線センサー9が検知対象領域にある衣類の表面温度を検知できるようにする(S03b)。
マイコン17は次にコントローラー16にモーター6を回転させるよう指示して、検知対象領域以外の分割領域に向けて送風を開始する(S03c)。S03bとS03cは順番が逆でも同時でも構わない。その後マイコン17は所定の時間(例えば1分)経過後、赤外線センサー9の検知している温度を風が当たっていない状態の衣類の表面温度として一時的に記憶する(S03d)。
検知対象領域の衣類に対して風が当たっていない状態の表面温度を測定する際、他の衣類に向かって送風することにより、検知する間も送風を中断することなく、衣類の乾燥を継続して行うことができ、衣類の乾燥時間をさらに短縮することができる。このときの送風方向は、衣類が存在すると予想される領域のうち検知対象領域から離れた領域がよい。例えば図8のように検知領域を5分割した場合、R1を検知するときにはR4に送風し、R2を検知するときにはR5に送風し、R3を検知するときにはR1またはR5に送風するといった方法が考えられる。
また検知対象領域を決定してから所定の時間経過後の表面温度を記憶するのは、衣類の温度が安定するのを待つためである。検知する前に検知対象の衣類に向かって送風が行われていた場合、衣類は風が当たった状態の低い温度になっている。送風を停止すると衣類の温度は風が当たっていない状態の温度に近づくが、衣類に熱容量があるため、すぐに温度が上昇するわけではない。そのため、検知の前に検知対象の衣類に風が当たっていない状態を所定の時間(例えば1分)保った上で検知することにより、風が当たっていない状態の衣類の表面温度を精度よく検知することが可能となる。以上のことは、風があたった状態についても同様である。
なお赤外線センサー9が検知する衣類の表面温度は変動する値であると考えられるので、マイコン17は所定の時間(例えば10秒間)の検知結果を時間平均した値を衣類の表面温度として記憶する。また衣類の表面温度を記録する際、モーター10の回転角度として得られる検知対象領域の位置情報と、モーター6と10の回転角度の差として得られる風の有無についての条件も同時に記憶しておくものとする。
マイコン17はその後検知対象領域の衣類に向けて送風し(S03e)、風が当たった状態の衣類の表面温度をS03dと同様の方法で検知する(S03f)。
なお検知対象領域の衣類に向けて送風する際には、マイコン17がコントローラー16にモーター6を回転するように指示を出し、ルーバー5を検知対象の方向に向ける。赤外線センサー9の検知対象領域と送風ファン1の送風方向が連動するように、モーター10及び6の回転角度を予め調節しておき、マイコン17に記憶させておく必要がある。
このとき、送風が弱すぎると風によって表面温度が低下する効果が十分に得られない可能性がある。また送風が強すぎると検知対象領域に存在する衣類が風によって大きく揺動してしまい、衣類の表面温度を正確に測れない可能性がある。よって表面温度を検知するときに衣類に当てる風は、衣類の最も衣類乾燥機に近い部位の表面で0.5〜2.0[m/s]程度になるようにする。これにより、風が当たった状態の衣類の表面温度を適切に検知することができる。
また、吹出し口4から比較的近い衣類には風が強く当たり、吹出し口4から比較的遠い衣類には風が弱く当たることになるので、検知対象領域が吹出し口4から近いか遠いかで送風の強さを変えられるようにし、一定の強さの風が衣類に当たるようにする。
最後にマイコン17は全ての分割領域において衣類の表面温度検知が終了したかどうかを判断し(S03h)、終了していない場合は次の検知対象領域を設定するS03aに戻り、終了した場合はS03を終了する。
続いてS04を説明する前に、まず風が当たった状態と風が当たっていない状態の表面温度の差によって衣類の乾燥終了を判断しうる根拠について説明する。
物体の乾いた表面と濡れた表面で温度が異なるのは、物体表面に存在する水が蒸発潜熱を奪って気化するためである。濡れた表面からは風が当たっていない状態でも水が蒸発しているが、風を当てることによってさらに水の蒸発が促進され、その分表面温度が低下する。物体が乾いている場合には、風を当ててもその風が物体の温度より低くない限り、表面温度が低下することはない。以上の違いにより、風が当たった状態と風が当たっていない状態の表面温度の差がない場合は、衣類が乾いていると判断することができる。
乾燥が終了したかどうかの判断(S04)について説明する。
マイコン17はS03において、全ての分割領域について風が当たった状態と当たっていない状態の衣類の表面温度を記憶した。その結果いずれの分割領域においても濡れた衣類が存在しない場合、衣類の乾燥が終了したと判断する。このときの判断基準は上記のように風が当たった状態と風が当たっていない状態の表面温度差の有無である。この表面温度差が所定の温度(例えば0.2[K])以内であった場合に、その分割領域ある衣類の乾燥が終了したと判断するように、予めマイコン17にプログラムを入力しておく。
衣類の乾燥が終了した場合はS14に移行し、衣類の乾燥が終了していない場合は濡れた衣類の存在する分割領域を記憶し、S05に移行する。S14以降のステップについては後述する。
次に送風範囲の決定(S05)について説明する。
S05は、濡れた衣類の存在する分割領域に向けて風を吹出すように、送風の範囲を決定する制御である。濡れた衣類の乾燥を促進することで乾燥むらを抑制し、結果的に衣類全体の乾燥時間を短縮することができる。乾燥時間を短縮することで衣類を速く乾かしたいという使用者のニーズに応えるのはもちろんのこと、無駄なエネルギー消費を抑制して環境への負荷を低減させることができる。
送風範囲は濡れた衣類の存在する分割領域の一端から他端までとして決定する。例えば図8のように分割領域をR1〜R5とし、そのうちR1とR3に濡れた衣類が存在すると判明した場合は、R1〜R3が送風範囲として決定される。
続いてS06を説明する前に、まず風が当たった状態と風が当たっていない状態の表面温度の差によって衣類の乾燥度合いを判断しうる根拠について説明する。
衣類の乾燥段階にはある一定量の水分が蒸発し続ける恒率乾燥期と、蒸発する水分の量が減っていく減率乾燥期が存在することが一般的に知られている。衣類表面の水分の状態について図9を参照しながら説明する。図9は衣類表面の水分の状態を示す概念図である。図9(a)は恒率乾燥期における衣類表面の水分の状態を示している。恒率乾燥期には衣類の表面に水膜上の水分が存在している。図9(b)は減率乾燥期における衣類表面の水分の状態を示している。減率乾燥期では衣類の表面に水分が分散した状態で存在する状態である。
水分の蒸発量は式1によって表される。湿気伝達率は風速によって変化する変数であり、同じように風を当てた場合は衣類の表面で同等の風速が発生すると考えられ、風が当たった状態、あるいは風が当たっていない状態では衣類の濡れ状況に関わらず同じ値になる。雰囲気の絶対湿度は状況によって変化する値である。雰囲気の絶対湿度は、乾燥の初期段階では高く、乾燥が進むにつれて低くなり、最後には部屋に供給される空気の絶対湿度と同等になる。衣類表面の絶対湿度は、ここでは衣類表面で相対湿度100%とした場合の絶対湿度とする。また水分の蒸発面積は図9に示したように、恒率乾燥期では一定であるが、減率乾燥期では水分の蒸発に従って減っていき、最後には乾燥して0[m2]になる。よってこの水分の蒸発面積を算出することにより、乾燥度合いを把握することができる。
衣類の重量と水分の蒸発面積の関係について図10を参照しながら説明する。図10は衣類の重量と水分の蒸発面積の時間変化を示す概念図である。衣類ははじめ恒率乾燥期にあり、水分の蒸発面積が一定で重量減少も一定割合であるが、その後減率乾燥期に入ると水分の蒸発面積が徐々に減少していき、そのため重量減少の割合も小さくなっていく。最後には水分の蒸発面積がなくなり、重量はそのときの空気と平衡の状態になって一定となる。
風が当たった状態と風が当たっていない状態の表面温度の差によって衣類の乾燥度合いを判断した場合、衣類が輻射熱を受けた場合にも誤判断をすることがない。例えば、乾いていない衣類に日射が当たった場合、衣類の表面温度は乾いた衣類と同程度あるいはそれ以上の高い温度になる可能性がある。この場合、衣類の表面温度と室温とを比較すると、衣類は乾いたという判断になってしまう可能性が高い。しかし風が当たった状態と風が当たっていない状態の表面温度の差によって衣類の乾燥度合いを判断した場合、輻射熱を受けていても衣類に風を当てれば乾燥度合いに応じて温度が低下するので、衣類の乾燥度合いを正しく判断することができる。
衣類の乾燥度合いの把握(S06)について説明する。乾燥度合いの把握のためには、上記のように水分の蒸発面積を把握する必要がある。
まず、ある時間tでの水分の蒸発面積S(t)を求める方法について説明する。風が当たっていない状態の水分の蒸発面積S(t)は式2によって求められる。
湿気伝達率αc´には予め所定の値(例えば5.8[g/m2・s(kg/kg´)])をマイコン17に記憶させておく。雰囲気の絶対湿度Xr(t)は、赤外線センサー9のサーミスタが検知した温度と湿度センサー18が検知した相対湿度からマイコン17が算出する。また衣類表面の絶対湿度Xclo、c(t)は、赤外線センサー9が検知した衣類の表面温度で、相対湿度が100%である場合の絶対湿度としてマイコン17が算出する。水分の蒸発量Qc(t)は衣類の表面温度に関係する値であるが、この時点ではまだ未知数である。
次に、風が当たった状態の水分の蒸発面積Sw(t)は式3によって求められる。
湿気伝達率αw´には予め所定の値(例えば風速1.0[m/s]で9.7[g/m2・s(kg/kg´)])をマイコン17に記憶させておく。雰囲気の絶対湿度Xr(t)と衣類表面の絶対湿度Xclo、w(t)については風が当たっていない状態と同様に算出する。
ここで、マイコン17は風が当たった状態と風が当たっていないの状態の水分の蒸発量の差を、式4から算出する。kはここでは値を定めない。式4は、風が当たった状態と風が当たっていないの状態の水分の蒸発量の差は、風が当たった状態と風が当たっていないの状態の表面温度差に比例するという考えを示している。これは水分が蒸発すればした分だけ蒸発潜熱が奪われて表面温度が低下するためである。
Tw(t)とTc(t)は赤外線センサー9が検知した衣類の表面温度として得ることができる。最終的に、マイコン17は式5からある時間tでの水分の蒸発面積S(t)を求める。
マイコン17は最初に水分の蒸発面積S(0)を求めた後、分割領域ごとにS(0)を記憶しておき、2回目以降に水分の蒸発面積S(t)を求めた場合、各分割領域それぞれについてS(0)に対するS(t)の比率として衣類の乾燥度合いを求める。
次に加熱が必要かどうかの判断(S07)について説明する。
省エネで衣類を乾燥させる場合にはヒーター8を使用せずに乾燥させるのが良い。しかし使用者が急いで衣類を乾燥させたい場合にはヒーター8を使用した方が良い。使用者が目標とする乾燥終了時間(目標終了時間)内にどれくらいの時間ヒーター8を使用したら最も省エネで衣類を乾燥させられるのか、使用者自身が経験的に予測することは可能であるが、誤差が大きいと考えられる。そこで衣類乾燥機が衣類の乾燥度合いを見ながらヒーター8を使用するべきか否かを判断することで、希望した時間内に衣類を乾かしたいという使用者のニーズに応えながらできるかぎり省エネで衣類を乾燥させることができる。
マイコン17は加熱が必要かどうかを、その時点からヒーター8を使用した場合に予測される乾燥終了時間と目標終了時間との比較によって判断する。
乾燥終了時間の予測について図11を参照しながら説明する。S06においてその時間tでの水分の蒸発面積S(t)を衣類の乾燥度合いとして把握したので、その時間tからヒーター8を用いて衣類を加熱した場合の予測曲線を引き、水分の蒸発面積が0[m2]になる時点を乾燥終了時間として予測する。この予測曲線は、ヒーター8を使用した場合の水分の蒸発面積と時間との関係から予め実験的に求め、マイコン17に記憶させておくものとする。この曲線はヒーター8の加熱量や送風の仕方によって変わる。
図11(a)は乾燥終了時間が目標終了時間より早い場合を示す概念図である。このようになる場合は、加熱を開始しなくても目標終了時間までに衣類の乾燥が終了する可能性があるので、マイコン17はその時点ではまだ加熱が必要でないと判断する。
一方、図11(b)は乾燥終了時間が目標終了時間と同程度の場合を示す概念図である。この場合、加熱を開始しないと目標終了時間までに衣類の乾燥が終了しないことになってしまうため、マイコン17は加熱が必要であると判断する。
なお図11(c)は複数の予測曲線を示す概念図である。加熱を開始してから衣類が乾燥するまでの時間は、室内の湿度状態によって異なる。加熱を開始した場合、衣類の温風が当たった部分が温まるとともに、室内の絶対湿度が下がり直接温風が当たっていない部分の乾燥も促進されるためである。室内の絶対湿度が下がるのは室内の温度が上がり、それまでと同じ換気量でも排出する空気に含まれる水分量が大きくなるためであるが、室内の温度上昇ははじめの温度状況に影響されると考えられる。つまりはじめから温度がある程度高い夏期には、加熱を開始して少し室温が上昇しただけで空気中に含みうる水分量(飽和水分量)は一気に大きくなるが、はじめの温度が低い冬期には、加熱を開始して多少室温が上昇しても飽和水分量はあまり大きくならない。
このため、加熱が必要かどうかをより正確に判断するためには、予測曲線を温度によって複数(例えば図11(c)に示したように3種類)用意するのが良い。マイコン17はS07で予測を行う際、赤外線センサー9のサーミスタを用いて温度を測定し、その温度に対応する予測曲線を用いるものとする。これらの予測曲線は、当然のことながら室内が低温の場合には乾燥終了時間が遅くなり、室温が高温の場合には乾燥時間が早くなるようにする。
S07でマイコン17が加熱はまだ必要でないと判断した場合、次に送風乾燥運転(S08)を開始する。送風乾燥運転とは送風と換気のみで衣類を乾燥させる運転である。マイコン17はコントローラー16に指示を出し、S05で決定した送風範囲に送風をして濡れた衣類に風を当てるようにモーター6を回転させる。このときモーター6を一定の時間間隔(例えば0.1[s/°])で回転させるように制御し、ルーバー5がスイングするようにする。なお衣類を速く乾燥させるためには、このときの送風量が大きいほど良い。送風乾燥運転は所定の時間(例えば20分)継続するものとし、所定の時間経過後は再び衣類の表面温度検知(S03)を行う。
加熱を行わないまま乾燥が終了した場合、加熱が必要かどうかの判断を行う(S09)。S09では、マイコン17が衣類の乾燥が終了した時点の相対湿度を、湿度センサー18によって測定し、相対湿度が所定の値(例えば70[%RH])を超えている場合には加熱が必要と判断する。加熱が必要な場合には仕上げ加熱(S10)として、所定の時間(例えば10分間)加熱及び送風を行う。
そもそも衣類の平衡状態には2種類の状態が存在する。相対湿度と衣類の平衡含湿率の関係を、図12を参照しながら説明する。図12は平衡含湿率曲線の概念図である。衣類が空気と平衡状態になったときに含む水分量を表す平衡含湿率は、吸湿過程と放湿過程で異なることが一般的に知られ、この現象はヒステリシスと呼ばれる。これは衣類内部の毛細管に水分が出入りする際、物理的な抵抗が生じるためと考えられる。
加熱せずに衣類を乾燥させた場合、平衡含湿率は放湿過程での平衡含湿率になっている。特に高湿度の状態で加熱をせずに衣類の乾燥が終了した場合、衣類は高湿度の空気と放湿過程での平衡状態になっており、この状態では人が衣類を触ったときに湿っていると感じる可能性が高い。
この状態から衣類を加熱することで衣類周辺の相対湿度を下げることができ、加熱停止後に相対湿度が元に戻っても、衣類は吸湿過程での平衡含湿率になる。
以上のように加熱せずに衣類の乾燥が終了した後、必要に応じて仕上げ乾燥(S10)をすることによりそのまま放置した状態よりもさらに乾燥した状態に衣類を保つことができ、使用者に衣類がしっかり乾いたという満足感を与えることができる。
S07でマイコン17が加熱が必要と判断した場合、次に加熱乾燥運転(S11)を開始する。加熱乾燥運転とは送風と換気に加えて加熱をしながら衣類を乾燥させる運転である。S11に入ると、マイコン17はコントローラー16に指示を出し、ヒーター8への通電を開始する。送風方法はS08と同様である。加熱乾燥運転は目標終了時間まで継続し、目標終了時間になったらマイコン17がコントローラー16に指示を出し、ヒーター8への通電を停止させる。
衣類を加熱しながら乾燥させる際、乾燥の初期に加熱をさせるよりも後半から最後の段階にかけて加熱をさせた方が効率がよい。これは、乾燥の初期には送風だけでも比較的多くの水分が蒸発するためである。そして加熱をする際にはまとまった時間内に一気に加熱するのが良い。これは加熱をした場合に換気によって温まった空気が逃げていくため、加熱時間が長くなるとそれだけエネルギーロスが大きくなるからである。よってS07のように加熱が必要かどうかを判断し、S08のように加熱が必要と判断された時点から最後まで一気に加熱を行うことで、加熱をする場合にも可能な限りエネルギーロスの少ない、効率の良い形で衣類を乾燥させることができ、環境に対する負荷を低減させることができる。
次に、乾燥が終了したかどうかの判断(S12)について説明する。
これは基本的にS03及びS04と同様の動作である。しかしそれまで衣類には温風が当たっていたことになるので、周囲の空気温度に馴染んでいない可能性があり、乾燥が終了したかどうかの判断に誤差が生じることが考えられる。また室内の温度も上昇していると考えられることから、加熱を停止してから所定の時間(例えば1分)衣類全体に向けて送風を行ってから表面温度を検知した方がよい。また乾燥終了の判断基準となる表面温度差は、S04よりも大きい値(例えば0.5[K])に設定した方がよい。
S12においてまだ乾いていない衣類があるとわかった場合、追加乾燥運転(S13)を行う。S13では乾いていない衣類のある分割領域に対して送風を行いながら、所定の時間(例えば5分)加熱乾燥運転を行い、その後再び乾燥が終了したかどうかの判断(S11)を行う。衣類の乾燥が終了した場合は、マイコン17はその時間を記憶する。
以上のように一旦加熱を停止してから乾燥が終了したかどうかの判断(S12)をすることにより、加熱の影響を少なくして判断の精度を高めることができる。さらに衣類が乾いていない場合には追加乾燥運転(S13)を行うことにより、確実に乾き残しをなくすことができる。
次に、フィードバック(S14)について説明する。
マイコン17は使用者が入力した目標終了時間と実際に乾燥が終了した時間とを比較する。この時間が同程度であった場合、加熱が必要かどうかの判断がうまくいっていることになるが、そうでない場合は判断に不具合があることになり、予測曲線を修正する必要がある。不具合の原因としては部屋の広さや構造などが考えられる。つまり部屋が想定した広さよりも広い場合や熱が逃げやすい構造であった場合には、加熱を開始してからの乾燥速度が遅くなってしまう。部屋が狭い場合や断熱性の高い場合には逆のことが言える。
よって、目標終了時間と実際に乾燥が終了した時間との差が所定の時間(例えば10分)以上であった場合には、マイコン17は予測曲線を修正するフィードバックを行うものとする。例えば実際に乾燥が終了した時間が目標終了時間よりも所定の時間以上遅かった場合は乾燥終了時間が数分程度遅くなるように予測曲線を修正し、実際に乾燥が終了した時間が目標終了時間よりも所定の時間以上早かった場合は乾燥終了時間が数分程度遅くなるように予測曲線を修正する。
このように予測した乾燥終了時間が目標終了時間に近づくようにフィードバックを行うことにより、衣類乾燥機の設置された環境に応じて予測の精度を向上させていくことができる。
次に、換気及び電力量測定終了(S15)について説明する。
S15では衣類の乾燥が終了したと判断されたあと、所定の時間(例えば10分)換気を継続した後に換気を停止する。換気を継続するのは、衣類の乾燥が終了した後に室内に湿気が残っていた場合、一旦乾いた衣類が再び湿気るのを防ぐためである。
換気を停止した際、マイコン17は電力量計27での測定を終了し、測定を開始してからの積算の電力量を記憶する。またマイコン17は電力量をCO2排出量及びランニングコストに換算し、その値も記憶しておく。換算する係数(例えばCO2排出量で0.41[kg/kWh]、ランニングコストで22[円/kWh])は予めマイコン17に設定しておくものとするが、これらの係数を使用者が設定できるようにしてもよい。
記憶された電力量とCO2排出量とランニングコストは、使用者が表示切替えスイッチ26を押すことにより情報表示板25に表示され、表示中に表示切替えスイッチ26を押すことにより表示する情報を3種類の中から切替えられるようにする。この操作は衣類乾燥機の電源が入っている間はいつでもできるものとし、表示される情報は前回の衣類乾燥が終了した時点での情報とする。
このように電力量とCO2排出量とランニングコストを使用者に対して表示することにより、使用者は衣類乾燥に要したエネルギーについて具体的に知ることができ、結果的に使用者の省エネ意識を向上させることができる。
最後にマイコン17は衣類乾燥機の電源を切って運転を終了させる(S16)。
(実施の形態2)
実施の形態2における衣類乾燥機について説明する。
実施の形態2における衣類乾燥機の構造は実施の形態1に記載の衣類乾燥機と同様であり、各構成要素については説明を省略するとともに、実施の形態1に記載の衣類乾燥機と同じ記号を使用する。また実施の形態2における衣類乾燥機の制御は衣類の表面温度検知(S03)以外のフローについては実施の形態1に記載の衣類乾燥機と同様のめ、説明を省略するとともに実施の形態1に記載の衣類乾燥機と同じ記号を使用するものとする。
衣類乾燥機の衣類の表面温度検知(S03)について図13を参照しながら説明する。図13は表面温度検知(S03)の制御を示すフロー図である。
S03が開始されると、はじめにコントローラー16は衣類に向けて送風を開始する(S03i)。このときの送風方法は送風乾燥運転(S08)の送風方法と同様である。衣類乾燥機の運転を開始してからはじめてS03になる場合には、検知領域全体に向けてスイング送風するようにする。また、S03になるのが2回目以降の場合はそれまでに送風範囲を決定して(S05)送風乾燥運転をしている(S08)ことになるので、送風乾燥運転(S08)の送風をそのまま継続する。いずれの場合にもコントローラー16はモーター6を操作してルーバー5の動きを一定の時間間隔(例えば0.1[s/°])でスイングするように制御する。
次にマイコン17が検知対象領域を決定する(S03j)。S03になるのが2回目以降の場合は、濡れた衣類が存在する領域にのみ送風しているので、前回の表面温度検知で濡れた衣類が存在すると判断した領域のみについて検知するものとする。それ以外の方法については実施の形態1に記載の衣類乾燥機の検知対象領域の決定(S03a)と同様である。
次にマイコン17は衣類の表面温度を検知する(S03k)。このとき、マイコン17はまずコントローラー16に指示してモーター10を操作し、赤外線センサー9を検知対象領域に向ける。その後マイコン17は赤外線センサー9の検知結果を所定の時間(例えば1秒)ごとに記憶してゆき、所定の時間(ルーバー5が少なくとも一往復する時間とし、例えば30秒間)が経過したら記憶を停止する。このように赤外線センサー9の検知結果をルーバー5が少なくとも一往復する間連続的に記憶することにより、検知対象領域に風が当たったときと風が当たっていないときの両方の状態を含んだ表面温度を得ることができる。
この検知結果から、検知対象領域の衣類に風が当たっていない状態を最高温度として考え、風が当たった状態を最低温度として考えると、最高温度と最低温度の差として衣類に風が当たっていない状態と風が当たった状態の表面温度差を得ることができる。
以上のような方法で風が当たっていない状態と風が当たった状態の表面温度差を得ることにより、表面温度の検知(S03)においても送風乾燥運転(S08)においてもモーター6の制御が同じになる。つまり送風に関しては、常に濡れた衣類が存在する領域に向けてスイング送風を続けていればよいという簡単な制御になり、実施の形態1に記載の衣類乾燥機のように検知のために送風方向を変更するといった複雑な制御が不要になる。風向の制御方法を簡単にすることにより、制御基板やプログラム搭載にかかるコストを低減することができる。
最後にマイコン17は全ての領域において検知が終了したかどうかを判断し(S03l)、検知が終了していなければ次の検知対象領域を決定し(S03j)、検知が終了していればS03は終了となる。