本発明の請求項1記載の発明は、所定の時間乾燥運転継続後、同じ衣類の風が当たった状態と風が当たっていない状態の表面温度を検知し、風が当たった状態の表面温度が、風が当たっていない状態の表面温度よりも低い場合は、前記衣類が濡れていると判断する衣類の乾燥判断方法であり、乾いていない衣類に風を当てることでその表面温度が低下する特性を利用することで、乾いていない衣類が輻射熱を受けている場合でも濡れている衣類の存在を正確に判断することにより、乾いた衣類に風を送らず、無駄なエネルギーを消費しない衣類乾燥機を提供することができる。
また本発明の請求項2記載の発明は、衣類の表面温度が安定した状態で前記衣類の表面温度を検知する衣類の乾燥判断方法であり、濡れている衣類の水分が気化して低くなった表面温度を正確に測定することができる。
また本発明の請求項3記載の発明は、衣類に風を送る送風手段と、前記送風手段の風向を変更する風向変更手段と、前記衣類の表面温度を検知する表面温度検知手段と、前記表面温度検知手段の検知方向を変更する表面温度検知方向変更手段と、前記表面温度検知方向変更手段の検知対象の方向を検出する方向検出手段を備え、前記風向変更手段と表面温度検知方向変更手段を制御する制御手段を備え、前記制御手段は前記風向変更手段により前記送風手段の風向を変更して送風を行い、所定の時間乾燥運転継続後、同じ衣類の風が当たった状態と風が当たっていない状態の表面温度を前記表面温度検知手段と前記表面温度検知方向変更手段を用いて検知し、風が当たった状態の表面温度が風が当たっていない状態の表面温度よりも低い場合は、前記衣類が濡れていると判断して、前記方向検出手段により濡れている衣類の方向を検出して、前記風向変更手段により濡れている衣類に向けて送風する衣類乾燥機であり、複数の衣類の乾燥むらを低減させ、衣類全体の乾燥時間を短縮することにより、無駄なエネルギーを消費しない衣類乾燥機を提供することができる。
また本発明の請求項4記載の発明は、制御手段は、表面温度検知手段により風が当たっていない衣類の表面温度を検知する際、前記表面温度検知手段が検知していない衣類に向けて送風するように風向変更手段を制御する衣類乾燥機であり、表面温度検知手段が検知していない衣類が濡れている場合、その衣類に送風することになり衣類の乾燥時間を短縮できる。
また本発明の請求項5記載の発明は、制御手段は、表面温度検知手段により風が当たった衣類の表面温度を検知する際、風が当たった衣類の表面温度の時間変動が大きい場合には、衣類に当てる風を弱くして検知をやり直す制御を行う衣類乾燥機であり、衣類が大きく揺動した場合には衣類の揺動を抑制して、風が当たった状態の衣類の表面温度を正確に検知する衣類乾燥機を提供することができる。
また本発明の請求項6記載の発明は、制御手段は、衣類に定期的に送風されるように風向変更手段を制御し、表面温度検知手段を用いて連続的に同じ衣類の表面温度を検知し、前記衣類の表面の温度差がある場合は濡れている衣類があると判断する衣類乾燥機であり、風を当てることによって乾いていない衣類の表面温度が下がるという効果が得られ、かつ風を当てることによって衣類を大きく揺動させることがないため、風が当たった状態の衣類の表面温度を適切に検知する衣類乾燥機を提供することができる。
また本発明の請求項7記載の発明は、制御手段は、表面温度検知方向変更手段を制御して、表面温度検知手段により衣類の表面温度を検知し、濡れている衣類がないと判断した場合に衣類乾燥機の運転を停止する衣類乾燥機であり、衣類が乾いたら自動で運転を停止することにより、無駄なエネルギーを消費しない衣類乾燥機を提供することができる。
また本発明の請求項8記載の発明は、複数の表面温度検知手段を備え、複数の前記表面温度検知手段は離れた位置に設置され、複数の前記表面温度検知手段を用いて衣類の表面温度を検知する衣類乾燥機であり、異なる角度から衣類の表面温度を検知することにより、竿や干し具があっても衣類の表面温度を正確に検知する衣類乾燥機を提供することができる。
また本発明の請求項9記載の発明は、表面温度検知手段を移動させる表面温度検知位置移動手段を備え、制御手段が表面温度検知位置移動手段を制御し、前記表面温度検知手段が複数の点から衣類の表面温度を検知する衣類乾燥機であり、異なる角度から衣類の表面温度を検知することにより、竿や干し具があっても衣類の表面温度を正確に検知する衣類乾燥機を提供することができる。
また本発明の請求項10記載の発明は、衣類に熱を与える加熱手段を備え、制御手段が前記加熱手段を制御し、風が当たった衣類の表面温度を検知する際には前記加熱手段を停止する衣類乾燥機であり、検知する際に加熱されていない風を当てることにより、風が当たった状態の衣類の表面温度を正確に検知する衣類乾燥機を提供することができる。
また本発明の請求項11記載の発明は、送風手段の送風経路が2つに分かれ、2つの前記送風経路はそれぞれ個別に動作する風向変更手段を備え、2つの前期送風経路のうち一方のみに加熱手段が設置され、風が当たった衣類の表面温度を検知する際、前記加熱手段が設置された方の前記送風経路を通った風を表面温度を検知していない衣類に向けて送る衣類乾燥機であり、検知する際に加熱されていない風を当てることにより、風が当たった状態の衣類の表面温度を正確に検知する衣類乾燥機を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
衣類乾燥機1について、図1〜図6を参照しながら説明する。
衣類乾燥機1は天井裏に設置され、室内には衣類Cを吊るすための竿Pが少なくとも1本あるものとする。衣類乾燥機1は竿Pに吊るされた衣類Cを乾かすためのものである。衣類乾燥機が設置される室としては主に浴室を想定しているが、他にも脱衣室、サウナ室、衣類乾燥専用室、あるいは空き部屋等の居室や廊下としてもよい。いずれの室においても天井に衣類乾燥機1が存在し、衣類乾燥機1の約25〜30cm下方に竿Pが存在し、竿Pにハンガー等の干し具Hを介して複数の衣類Cが吊るされている状況を想定している。なお衣類Cは衣類乾燥機1から吹出した風が届く範囲(一例として約1m以内)に吊るされているものとする。
まずは衣類乾燥機1の構成について図1を参照しながら説明する。図1は衣類乾燥機1の断面図である。なお図1では竿Pが図の手前から奥に向かって設置されている状態を示している。
衣類乾燥機1は、送風手段としての送風ファン2、及びモーター3(図示せず)、及び室内から空気を吸い込む吸込み口4、及び室内に空気を吹出す吹出し口5を備える。
送風ファン2は、なるべく広範囲に送風できるようクロスフローファンとするが、シロッコファンを用いてもよい。いずれの場合にも金属製とする。送風ファン2をクロスフローファンとする場合、その回転軸が竿Pの軸方向と一致する向きになるように衣類乾燥機1を設置するものとする。送風ファン2及びモーター3の選定に当たっては、風量が一例として100〜400[m3/h]程度得られるようにするが、短時間で省エネルギーに衣類Cを乾燥させるためには、騒音が問題にならない範囲においてできる限り大きい風量が得られるとよい。モーター3はDCモーターとし、送風ファン2の回転数を自由に変えられるものとする。
また衣類乾燥機1は、吹出し口5に風向変更手段としてのルーバー6及びモーター7(図示せず)およびアーム8(図示せず)を備える。ルーバー6は竿Pの軸方向と同じ向きに風向を変えられるようにする。モーター7はステッピングモーターとする。
ルーバー6の動作について図2を参照しながら説明する。図2はルーバー6の動作を示す断面構成図である。図2(a)は風向が変更されず、風が真下に吹出す状態を示している。ルーバー6は、アーム8を介して竿Pの軸方向と同じ向きに回転するモーター7に接続され、モーター7が回転すると図2(b)のようにルーバー6が同じ方向に傾くようになっている。これにより風向が変更され、複数の衣類Cにそれぞれ風が当たるようになる。
また衣類乾燥機1は、加熱手段としてのヒーター9を送風ファン2の送風経路内に備える。ヒーター9は一例として加熱量1000〜2000[W]程度のPTCヒーターとするが、ガス給湯による温水管を配管してもよい。
また衣類乾燥機1は、放射温度検知手段としての赤外線センサー10a及び10bと、放射温度検知方向変更手段および検知対象の方向を検出する方向検出手段としてのモーター11a及び11bと、アーム12a及び12bを備える。赤外線センサー10a及び10bは一例として静止物体の表面温度検知に適したサーモパイルとし、なるべく狭い範囲の放射温度が取れるように、視野角の小さいもの(例えば3°程度)を使用する。赤外線センサー10a及び10bを複眼にすると一度に複数の領域を検知できるため、乾いていない衣類Cを精度よく検知できるようになるが、ここでは安価な単眼のサーモパイルを使用するものとする。モーター11aは一例としてステッピングモーターとする。
放射温度検知方向を変更する動作について図3を参照しながら説明する。図3は赤外線センサー10aの回転動作を示す立面構成図である。図3(a)は赤外線センサー10aが真下を検知する状態を示している。赤外線センサー10aはアーム12aを介して竿Pの軸方向と同じ向きに回転するモーター11aに一体となって回転するように固定されている。図3(b)はモーター11aが回転して赤外線センサー10aが斜め下を検知する状態を示している。これにより赤外線センサー10aは竿Pの軸方向と同じ向きに回転し、複数の衣類Cの表面温度を検知することができる。
なお赤外線センサー10b、モーター11b、アーム12bも赤外線センサー10a、モーター11a、アーム12aと全く同様の構成とするが、竿Pの軸方向に沿って互いに所定の距離(例えば20[cm])以上離れた位置に設置されるものとする。
なお赤外線センサーは高湿度の環境に曝されると寿命が短くなるため、入浴中の湿気が赤外線センサー10a及び10bに接触することを防ぐための蓋等を備えた方が望ましいが、ここでは省略する。
また衣類乾燥機1は、室内の空気を屋外に排出する換気ファン13、モーター14、室内から空気を吸込む吸込み口15、空気を屋外に排出する排出口16を備える。換気ファン13は、空気を吸込むときに圧力が必要な場合にも風量が確保できるようにシロッコファンとする。なお他に十分湿気を排出する能力のある換気手段が室内にあれば換気ファン13、モーター14、吸込み口15、排出口16は具備しなくてもよい。
また衣類乾燥機1は、制御手段としてのコントローラー17を備える。コントローラー17は赤外線センサー10a及び10bと接続されその検知情報を受け取り、またモーター3、7、11a、11b、14及びヒーター9と接続され、それらの動作を制御する。制御の詳細については後述する。またコントローラー17にはタイマー機能およびメモリー機能が搭載され、時間を計測したり情報を記録したりすることができるものとする。
また衣類乾燥機1は、金属製のまたは樹脂製の筐体18及び樹脂製の化粧パネル19を備える。筐体18は天井裏に設置される。
また衣類乾燥機1はコントローラー17に接続されたスイッチ20を備える。スイッチ20には電源ボタン(図示せず)があり、使用者が電源ボタンを操作することで運転が開始されるようにする。なお衣類乾燥機1に、衣類の乾燥以外に暖房や換気を目的として使用する運転モードを設けてもよい。その場合はスイッチ20に運転モード選択ボタン(図示せず)を備え、使用者が運転モードを選択できるようにする。
次に、衣類乾燥機1の動作の概要について図4を参照しながら説明する。図4は衣類乾燥機1の動作の概要を示すフロー図である。
はじめに使用者がスイッチ20を操作して電源を入れる(S01)と、コントローラー17がその情報を受け取ってまず換気を開始し(S02)、続いて衣類Cの表面温度の検知(S03)を始める。次にS03の結果から乾いていない衣類Cの存在の有無を判断する(S04)。乾いていない衣類Cが存在する場合、乾いていない衣類Cが存在する位置を特定し、送風範囲を決定する(S05)。その後、所定の時間(例えば30分間)乾燥運転を継続する(S06)。所定の時間経過後、再び乾いていない衣類Cの存在の有無を判断する(S04)という形で衣類Cが乾燥するまでS04〜S06を繰り返す。乾いていない衣類Cが存在しなくなった場合、室内の湿気を排出するために所定の時間(例えば30分間)換気して(S07)から、電源が自動的に切られる(S08)。
衣類乾燥機1は以上のように衣類Cが乾いたら自動的に運転が終了するので、タイマーで運転が終了する時間を設定する場合と異なり、衣類が乾いていないということがなく、また衣類が乾き過ぎて無駄なエネルギーを消費するということもない。
ここで乾いていない衣類とは、濡れている衣類のことであり、濡れている衣類とは周囲の雰囲気になじんでいない衣類を示している。
つまり、乾燥しているとは、その衣類が周囲の雰囲気に置かれた場合の平衡含水率に到達していると定義され、濡れているとは、その逆を意味している。
以下、各フローの詳細な内容について説明する。
はじめに換気(S02)について説明する。コントローラー17はモーター14を操作して換気ファン13を運転させ、それによって室内の空気を屋外に排出する。このときの換気量は浴室程度の容量の室内で一例として100〜200[m3/h]程度とする。なお室が大きい場合は換気量も大きくする必要がある。S02以降、常に換気を継続するものとする。
次に衣類Cの表面温度の検知(S03)について図5を参照しながら説明する。図5は衣類Cの表面温度の検知(S03)の制御を示すフロー図である。
S03が開始されると、まずコントローラー17が検知対象の領域を決定する(S03a)。これは衣類Cのうち乾いていないものがどの方向にあるかを検知してその方向に向かって送風するためのものであるので、衣類Cが存在すると予想される竿P周辺の空間領域を竿Pの軸方向に沿っていくつかに分割して検知するように決定する。
具体的な領域の分割について、図6を参照しながら説明する。図6は検知領域の分割方法を示した概念図である。衣類乾燥機1と衣類Cとの位置関係は、図6に示すように、衣類乾燥機1の下方25〜30[cm]程度の位置に竿Pがあり、竿Pに干し具Hを介して複数の衣類Cが吊るされているという状態を想定している。
竿Pの長さについては特に限定はしないが、検知領域の範囲としては衣類乾燥機1から所定の距離(例えば1[m]程度)以内の範囲に吊るされた衣類の表面温度を検知できる範囲とする。これは、その範囲であれば衣類乾燥機1から吹出した風が届くという意図である。
検知領域を分割する方法としては、竿の軸方向に沿って所定の数(例えば5)分割するものとする。図6には検知領域を5分割した状態を示している。検知領域はR1〜R5まであり、それぞれの領域に対して乾いていない衣類Cが存在するかどうかを判断する。
コントローラー17がR1〜R5のうちから検知対象の領域を決定(S03a)すると、次にモーター11a及び11bを操作して赤外線センサー10a及び10bを回転させ、検知対象の領域の表面温度を検知できるようにする(S03b)。
赤外線センサー10a及び10bは図6に示すように竿Pの軸方向に所定の距離(例えば20cm)以上離れた状態で衣類乾燥機1の内部に設置されているので、同じ領域を検知する場合でも、互いに異なる角度から検知することになる。これにより、一方の赤外線センサーからは干し具Hが邪魔になって衣類Cの表面温度をうまく検知できない状況であっても、他方の赤外線センサーからは干し具Hが邪魔にならないという可能性が高い。つまりどちらか一方の赤外線センサーが衣類Cの表面温度を検知できればよく、結果として赤外線センサーをひとつだけ備えた場合よりも衣類Cの表面温度をより正確に検知することが可能となる。
コントローラー17は赤外線センサー10a及び10bを回転させる(S03b)と、次に検知対象領域以外の衣類Cのある方向に向けて送風を開始する(S03c)。S03bとS03cは順番が逆でも同時でも構わない。
検知対象領域の衣類Cに対して風が当たっていない状態の表面温度を測定する際、他の衣類Cに向かって送風することにより、検知する間も送風を中断することなく、衣類の乾燥を継続して行うことができ、衣類の乾燥時間をさらに短縮することができる。このときの送風方向は、衣類Cが存在すると予想される領域のうち検知対象領域からなるべく離れた領域がよい。例えば図6のように検知領域を5分割した場合、R1を検知するときにはR4に送風し、R2を検知するときにはR5に送風し、R3を検知するときにはR1またはR5に送風するといった方法が考えられる。
コントローラー17は次に所定の時間(例えば1分)経過後、風が当たっていない状態の衣類Cの表面温度を検知する(S03d)。
所定の時間が経過してから検知するのは、衣類Cの温度が安定するのを待つためである。検知する前に検知対象の衣類Cに向かって送風が行われていた場合、衣類Cは風が当たった状態の低い温度になっている。送風を停止すると衣類Cの温度は風が当たっていない状態の温度に近づくが、衣類Cに熱容量があるため、すぐに温度が上がるわけではない。そのため、検知の前に検知対象の衣類Cに風が当たっていない状態を所定の時間(例えば1分)保った上で検知することにより、風が当たっていない状態の衣類Cの表面温度を精度よく検知することが可能となる。以上のことは、風があたった状態についても同様である。
コントローラー17は赤外線センサー10a及び10bの検知結果を所定の時間(例えば1秒)ごとに記録してゆき、所定の時間(例えば20秒)が経過したら記録を停止する。コントローラーはこの検知結果から、赤外線センサー10a及び10bそれぞれの表面温度の時間変動と平均値を算出する。時間変動を評価する方法としていくつかの方法が考えられるが、ここでは式1に示す変動係数を算出し、変動計数の値によって評価する方法とする。変動係数は標準偏差を平均値で割るため、室内の温度が異なる場合でも時間変動を同様に評価できる利点がある。
以上のようにコントローラー17は1回の検知で衣類Cの表面温度の変動係数と平均値を記録するが、その際検知対象領域の位置情報及び風の有無についての条件も同時に記録しておくものとする。
コントローラー17はその後検知対象の衣類Cに向けて送風し(S03e)、風が当たった状態の衣類Cの表面温度をS03dと同様の方法で検知する(S03f)。
検知対象の衣類Cに向けて送風する際には、コントローラー17がモーター7を操作してルーバー6を検知対象の方向に向ける。赤外線センサー10a及び10bの検知対象領域とルーバー6の送風方向が連動するように、モーター11a及び11b及び7の回転角度を予め調節しておき、コントローラー17に記憶させておく必要がある。
このとき、送風が弱すぎると風によって表面温度が低下する効果が十分に得られない可能性がある。また送風が強すぎると検知対象領域に存在する衣類Cが風によって大きく揺動してしまい、衣類Cの表面温度を正確に測れない可能性がある。よって表面温度を検知するときに衣類Cに当てる風は、衣類Cの検知する部分の表面で0.5〜2.0[m/s]になるようにする。これにより、風が当たった状態の衣類の表面温度を適切に検知することができる。検知する部分というのは、赤外線センサー10a及び10bの視野に入る、衣類Cの主に上部の部分のことを指す。また、吹出し口5から比較的近い衣類Cには風が強く当たり、吹出し口5から比較的遠い衣類Cには風が弱く当たることになるので、検知対象領域が吹出し口5から近いか遠いかで送風の強さを変えられるようにするとなお良い。例えばモーター3に3段階程度のノッチを設定し、検知対象領域が図6のR3のときは弱ノッチ、R2とR4のときは中ノッチ、R1とR5のときは強ノッチにする方法が考えられる。
なお、衣類Cの検知する部分の表面で0.5〜2.0[m/s]になるように送風をしても、衣類Cがもともと軽い素材であったり、また乾燥が進んで軽くなったりするために揺動してしまう可能性がある。検知対象領域の衣類Cが揺動しているかどうかは表面温度の変動係数が所定の値以上であるかどうかで判断する。変動係数が大きいということは、衣類Cの温度をとったり衣類Cでない壁の温度をとったりしているためと考えられる。よって2つの変動係数のうちいずれか一方が所定の値(例えば5[%])以上であるときはモーター3のノッチを落として検知をやり直すものとする。これにより風が当たった状態の衣類の表面温度を正確に検知することができる。
また風が当たった状態の衣類Cの表面温度を検知する段階(S03f)では、コントローラー17がヒーター9への通電を停止し、加熱されていない空気を衣類Cに当てるようにする。これはヒーター9を作動させると、検知対象の衣類Cに風を当てたときに衣類Cが加熱されてしまうためである。このようにすることで、風が当たった状態の衣類の表面温度を正確に検知することができる。
コントローラー17は最後に赤外線センサー10a及び10bの検知結果を受けて、検知対象領域に乾いていない衣類Cの存在の有無を判断する(S03g)。
風が当たった状態と風が当たっていない状態の表面温度の差によって乾いていない衣類Cの存在の有無を判断しうる根拠について説明する。物体の乾いた表面と濡れた表面で温度が異なるのは、物体表面に存在する水が蒸発潜熱を奪って気化するためである。濡れた表面からは風が当たっていない状態でも水が蒸発しているが、風を当てることによってさらに水の蒸発が促進され、その分表面温度が低下する。物体が乾いている場合には、風を当ててもその風が物体の温度より低くない限り、表面温度が低下することはない。以上の違いにより、風が当たった状態と風が当たっていない状態の表面温度の差によって、濡れている物体があるか否かを判断することができる。
風が当たった状態と風が当たっていない状態の表面温度の差によって乾いていない衣類Cの存在の有無を判断した場合、衣類Cが輻射熱を受けた場合にも誤判断をすることがない。例えば、乾いていない衣類Cに日射が当たった場合、衣類Cの表面温度は乾いた衣類と同程度あるいはそれ以上の高い温度になる可能性がある。この場合、衣類Cの表面温度と室温とを比較すると、衣類Cは乾いたという判断になってしまう可能性が高い。しかし風が当たった状態と風が当たっていない状態の表面温度の差によって乾いていない衣類Cの存在の有無を判断した場合、輻射熱を受けていても衣類Cに風を当てれば温度は低下するので、その領域に乾いていない衣類Cが存在すると正しく判断することができる。
また赤外線センサー10a及び10bで表面温度を検知する場合、赤外線センサー10a及び10bだけでは衣類Cが存在するかどうかは判断できない。例えば、検知対象領域に衣類Cが存在しなかった場合、赤外線センサー10a及び10bは衣類Cが存在するはずの領域を通りこしてその背後にある壁や床の表面温度を検知することになる。この場合、ヒーター9の使用等により室内に温度分布があると、比較的低温の壁や床の表面温度と室温とを比較して、(その領域に存在するはずの)衣類Cは乾いていないという判断になってしまう可能性が高い。しかし風が当たった状態と風が当たっていない状態の表面温度の差によって乾いていない衣類Cの存在の有無を判断した場合、(その領域に存在するはずの)衣類Cに風を当てても温度は低下しないので、その領域に乾いていない衣類Cが存在しないと正しく判断することができる。
以上のように衣類Cの風が当たった状態の表面温度が、風が当たっていない状態の表面温度よりも所定の値以上低温である場合に、前記衣類が乾いていないと判断することにより、乾いていない衣類Cが輻射熱を受けている場合や衣類Cが存在する可能性のある位置に衣類Cが存在しない場合でも、乾いていない衣類Cの存在を正確に判断することができる。これにより衣類C全体の乾燥時間を短縮し、結果として衣類乾燥機1は衣類Cを乾燥させるために無駄なエネルギーを消費することがない。
なお室内の環境が水が蒸発しない状況(例えば相対湿度が100[%RH])では物体の乾いた表面と濡れた表面で温度が同等となるが、通常換気及び加熱をしながら衣類を乾燥させる状況では相対湿度は最大でも90[%RH]程度までしか上昇しないので、常に物体の乾いた表面と濡れた表面で温度が異なるものと考える。
具体的な制御としては、コントローラー17が赤外線センサー10a及び10bそれぞれの検知結果について、風が当たった状態の衣類Cの表面温度の平均値が、風が当たっていない状態の衣類Cの表面温度の平均値よりも所定の値(例えば2[K])以上低温であるか否かについて計算する。赤外線センサー10a及び10bの検知結果のどちらか一方でも上記の条件に該当する場合は、その領域に乾いていない衣類Cが存在すると判断するものとする。
S03bからS03gまでで、ひとつの検知対象領域について乾いていない衣類Cが存在するかどうかが判断できたことになる。その後コントローラー17は全ての検知対象領域について検知が終了したかどうかを判断し(S03h)、検知が終了していなければ次の検知対象領域を決定し(S03a)、検知が終了していればS03は終了となる。
次に乾燥が終了したかどうかの判断(S04)について説明する。
コントローラー17はS03において乾燥していない衣類Cが存在する領域を判断するが、その結果いずれの検知対象領域においても乾燥していない衣類Cが存在しない場合、全て領域において衣類Cの乾燥が終了したと判断する。全ての領域において衣類Cの乾燥が終了した場合は所定の時間(例えば30分)換気を行い(S07)、電源を切る(S08)。衣類Cの乾燥が終了していない場合は送風範囲を決定する(S05)。
次に送風範囲の決定(S05)について説明する。
S05は、S03において乾いていない衣類Cの存在する領域が明らかになったので、その領域に向けて温風を吹出すべく送風の範囲を決定する制御である。このように乾いていない衣類Cの乾燥を促進することで乾燥むらを抑制し、結果的に衣類C全体の乾燥時間を短縮することができる。乾燥時間を短縮することで衣類を速く乾かしたいという使用者のニーズに応えるのはもちろんのこと、無駄なエネルギーを消費しないで衣類Cを乾燥させることができる。
送風範囲は乾いていない衣類Cの存在する領域の一端から他端までとして決定する。例えば図6のように検知対象領域をR1〜R5の5つに分け、そのうちR1とR3に乾いていない衣類Cが存在すると判明した場合は、R1〜R3が送風範囲として決定される。
なおこのとき、使用者は衣類Cのうち乾きの遅いものを、最も乾きやすい吹出し口5から近い領域(例えば図6のR3)に吊るすとよい。このようにすることで乾きの遅い衣類Cの表面温度を真上から精度よく検知することができ、また衣類C全体の乾燥時間が短縮される。
最後に乾燥運転(S06)について説明する。
S06は乾いていない衣類Cを乾かすための運転である。コントローラー17はS05で決定した領域に送風をしながらヒーター9を通電させ、乾いていない衣類Cに温風を当てるようにする。このときコントローラー17はモーター7を操作してルーバー6の動きを一定の時間間隔(例えば1[s/°])でスイングするように制御するものとする。乾燥運転は所定の時間(例えば30分)継続するものとし、所定の時間経過後は再び衣類Cの表面温度検知(S03)を行う。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、実施の形態1と同一部分については同一番号を付し、詳細な説明は省略する。
衣類乾燥機21について説明する。
衣類乾燥機21(図示せず)の構造は実施の形態1に記載した衣類乾燥機1と同様であり、各構成要素についてはここでの説明を省略するとともに、衣類乾燥機1と同じ記号を使用するものとする。また衣類乾燥機21の制御は衣類Cの表面温度検知(S03)のみ衣類乾燥機1と異なるため、S03以外の制御の各フローについても説明を省略するとともに、衣類乾燥機1と同じ記号を使用するものとする。
衣類乾燥機21の衣類Cの表面温度検知(S03)について図7を参照しながら説明する。図7は衣類乾燥機21の表面温度検知(S03)の制御を示すフロー図である。
S03が開始されると、はじめにコントローラー17は衣類Cに向けて送風を開始する(S03i)。この送風は乾燥運転(S06)の場合の送風と同様のものである。衣類乾燥機21の運転を開始してからはじめてS03になる場合には、モーター3及び7を制御して検知対象領域全体に向けてスイング送風するようにする。また、S03になるのが2回目以降の場合はそれまでに送風範囲を決定して(S05)乾燥運転(S06)をしていることになるので、乾燥運転(S06)の送風をそのまま継続し、ヒーター9については通電を停止するようにする。いずれの場合にもコントローラー17はモーター7を操作してルーバー6の動きを一定の時間間隔(例えば1[s/°])でスイングするように制御する。
次にコントローラー17は検知対象領域を決定する(S03j)。S03になるのが2回目以降の場合は、乾いていない衣類Cが存在する領域にのみ送風しているので、前回の表面温度検知(S03k)で乾いていない衣類Cが存在すると判断した領域のみを検知対象領域にするものとする。それ以外の方法については衣類乾燥機1の検知対象領域の決定(S03a)と同様である。
次にコントローラー17は衣類Cの表面温度を検知する(S03k)。このとき、コントローラー17はまずモーター11a及び11bを操作して赤外線センサー10a及び10bを検知対象領域に向ける。その後コントローラー17は赤外線センサー10a及び10bの検知結果を所定の時間(例えば1秒)ごとに記録してゆき、所定の時間(ルーバー6が少なくとも一往復する時間とし、例えば2分間)が経過したら記録を停止する。このように赤外線センサー10a及び10bの検知結果をルーバー6が少なくとも一往復する時間連続的に記録することにより、検知対象領域に風が当たったときと風が当たっていないときの両方の状態を含んだ表面温度を得ることができる。
次にコントローラー17は検知対象領域において乾いていない衣類Cが存在するか否かを判断する(S03l)。判断の方法としては、S03kで記録された赤外線センサー10a及び10bそれぞれの検知結果の最高温度と最低温度の差を計算し、少なくとも一方の差が所定の値(例えば2[K])以上であった場合に、その検知対象領域に乾いていない衣類Cがあると判断するようにする。これは検知対象領域の衣類Cに風が当たっていない状態を最高温度として考え、風が当たった状態を最低温度として考えると、最高温度と最低温度の差が衣類Cに風が当たっていない状態の表面温度と風が当たった状態の表面温度の差と見なすことができるためである。
以上のような方法で検知対象領域において乾いていない衣類Cが存在するか否かを判断することにより、表面温度の検知(S03)においても乾燥運転(S06)においてもモーター7の制御が同じになる。つまり送風に関しては、常に乾いていない衣類Cが存在する領域に向けてスイング送風を続けていればよいという簡単な制御になり、衣類乾燥機1のように検知のために送風方向を変更するといった複雑な制御が不要になる。
最後にコントローラー17は全ての領域において検知が終了したかどうかを判断し(S03m)、検知が終了していなければ次の検知対象領域を決定し(S03j)、検知が終了していればS03は終了となる。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3は、実施の形態1および実施の形態2と同一部分については同一番号を付し、詳細な説明は省略する。
衣類乾燥機31について説明する。
衣類乾燥機31(図示せず)の構造は赤外線センサー10a及び10b、モーター11a及び11b、アーム12a及び12b以外は実施の形態1に記載した衣類乾燥機1と同様であり、衣類乾燥機1と同様の各構成要素についてはここでの説明を省略するとともに、衣類乾燥機1と同じ記号を使用するものとする。また衣類乾燥機31の制御は衣類乾燥機1と概ね同様であるため、制御の各フローについても説明を省略するとともに、衣類乾燥機1と同じ記号を使用するものとする。
衣類乾燥機31は表面温度検知手段としての赤外線センサー32及びモーター33及びアーム34を備える。赤外線センサー32及びモーター33及びアーム34は、衣類乾燥機1の赤外線センサー10a及びモーター11a及びアーム12aと同様の構成とし、コントローラー17がモーター33を竿Pの軸方向と同じ向きに回転させることによって赤外線センサー32も同じ方向に回転するようにする。
赤外線センサー32を移動させる機構及び動作について図8を参照しながら説明する。図8(a)は赤外線センサー32を移動させる機構を示す平面構成図である。図8(b)は赤外線センサー32を移動させる機構を示す立面構成図である。図8(c)は赤外線センサー32を移動させた状態を示す立面構成図である。
衣類乾燥機31は放射温度検知位置移動手段としてのモーター35、及び支持滑車36a及び36b、及び支持具37、及びベルト38、及びガイド39a及び39bを備える。
モーター35はコントローラー17に接続され、コントローラー17の指示によって回転する。支持滑車36aは軸を介してモーター35に固定され、モーター35が回転すると同じ方向に回転する。支持滑車36a及び36bはその外周に歯車(図示せず)状の溝を有する。ベルト38はその内周表面に歯車状の歯38aを有し、支持滑車の溝と歯38aが噛み合う形で支持滑車36a及び36bに支持されている。よって歯車の機構により支持滑車36aが回転するとベルト38が動き、ベルト38が動くと指示滑車36bも回転することとなる。このとき、ベルト38が同じ水平面内を動くような向きにモーター35及び支持滑車36a及び36bを設置する。
また支持具37はベルト38に固定され、支持具37はベルト38の動きに沿って水平に移動する。支持具37にはモーター33が図8のように固定されており、支持具37を移動させることによって赤外線センサー32を移動させることができるようになっている。ガイド39a及び39bはベルト38及び支持具37の上下の動きを拘束するためのものである。ガイド39aはストッパー39c及び39dを有し、支持具37の可動範囲を規定する。このとき、支持具37が竿Pの軸方向と同じ方向に移動するような向きにモーター35、及び支持滑車36a及び36b、及び支持具37、及びベルト38、及びガイド39a及び39bを衣類乾燥機31に設置する。
以上の機構により、赤外線センサー32は図8(b)の状態から図8(c)の状態まで水平に移動することができる。このときの移動距離は所定の値(例えば20[cm])以上とする。
ある検知対象領域の表面温度を検知する際に(S03d及びS03f)、はじめはコントローラー17が赤外線センサー32を図8(b)の状態にして検知し、次にモーター33及び35を制御して赤外線センサー32を移動及び回転させ、図8(c)の状態にして検知を行うことにより、ひとつの赤外線センサーで複数の点から衣類Cの表面温度を検知することができる。これにより竿Pや干し具Hがあっても衣類の表面温度を正確に検知することができ、かつ衣類乾燥機1のように高価な赤外線センサーを2つも具備する必要がないので、比較的安価に製造することができる。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態3は、実施の形態1から実施の形態2と同一部分については同一番号を付し、詳細な説明は省略する。
衣類乾燥機41について図9を参照しながら説明する。図9は衣類乾燥機41を上から見た状態を示す断面構成図である。
衣類乾燥機41の構造は送風ファン2、モーター3、吸込み口4、吹出し口5、ルーバー6、モーター7、アーム8以外は実施の形態1に記載した衣類乾燥機1と概ね同様であり、衣類乾燥機1と同様の各構成要素についてはここでの説明を省略するとともに、衣類乾燥機1と同じ記号を使用するものとする。また衣類乾燥機41の制御はS03以外のフローについては衣類乾燥機1と概ね同様であるため、S03以外の各フローについても説明を省略する。なお制御については全てのフローについて衣類乾燥機1と同じ記号を使用するものとする。
衣類乾燥機41は送風手段としての送風ファン42、及びモーター43(図示せず)、及び吸込み口44、及び吹出し口45a及び45bを備える。送風ファン42は金属製のシロッコファン、モーター43はDCモーターとする。送風ファン42及びモーター43の選定に当たっては、風量が最低でも300[m3/h]程度得られるようにする。
衣類乾燥機41が衣類乾燥機1と最も異なる点は送風経路が2つに分かれ、吹出し口を2つ備えていることである。ヒーター9が吹出し口45aにつながる送風経路内部に設置され、吹出し口45aからは加熱された空気が、また吹出し口45bからは加熱されていない空気が吹出すようになっている。吹出し口45aは図8に示したように、竿Pに吊るされた衣類に広く風が当たるように細長い形状とする。
また衣類乾燥機41は、吹出し口45a及び45bにそれぞれ風向変更手段としてのルーバー46a及び46b、及びモーター47a及び47b、及びアーム48a及び48bを備える。モーター47a及び47bはコントローラー17に接続され、コントローラー17の指示により別々に動作する。
衣類乾燥機41の表面温度の検知(S03)について説明する。衣類乾燥機41の制御としては、検知対象領域の表面温度を検知する(S03)際に、ヒーター9に通電する点が衣類乾燥機1と最も大きく異なる点である。従って、表面温度を検知する際の送風方法も衣類乾燥機1とは異なる。
風が当たっていない状態の衣類Cの表面温度を検知する(S03d)とき、コントローラー17はモーター47a及び47bを制御し、吹出し口45aを通る加熱された空気と吹出し口45bを通る加熱されていない空気を、ともに衣類Cが存在すると予想される領域のうち検知対象領域からなるべく離れた領域に向けて吹出すようにする。
また、風が当たった状態の衣類Cの表面温度を検知する(S03f)とき、コントローラー17はモーター47aを制御し、吹出し口45aを通る加熱された空気は衣類Cが存在すると予想される領域のうち検知対象領域からなるべく離れた領域に向けて吹出すようにする。また同時にコントローラー17はモーター47bを制御し、吹出し口45bを通る加熱されていない空気を検知対象領域に向けて吹出すようにする。
衣類乾燥機41の衣類Cの表面温度検知(S03d及びS03f)以外の制御については衣類乾燥機1の制御内容と同様であるので、説明を省略する。
以上のように風が当たった状態の衣類Cの表面温度を検知する際にもヒーター9への通電を続け、加熱を中断しないようにすることにより、衣類の乾燥時間をさらに短縮することができる。