JP5245505B2 - 糖衣チューインガム組成物及び糖衣チューインガムの製造方法、並びに糖衣チューインガム組成物におけるラクトフェリンの安定化方法 - Google Patents

糖衣チューインガム組成物及び糖衣チューインガムの製造方法、並びに糖衣チューインガム組成物におけるラクトフェリンの安定化方法 Download PDF

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Description

本発明は、ラクトフェリンの咀嚼放出速度が速く、口中への溶出性に優れ、長期保存安定性も良好で、歯周病菌毒素不活化に優れた糖衣チューインガム組成物及び糖衣チューインガムの製造方法に関する。
従来、ガムベースを含有するチューインガムの主体表面を糖衣で被覆した糖衣チューインガムは公知である。
通常、糖衣の材料は、食用ガム質の水溶液に、砂糖、水飴等の甘味剤を、場合によっては更に色素、酸味料、ビタミン、香料等を混入してなるシロップである。これを使用してチューインガム主体表面を糖衣するには、回転パンを回転させて、回転パン内に投入したチューインガム主体を転動させ、これに上記シロップを振りかけ、万遍なくシロップでチューインガム主体の表面を湿らせる。次に、回転中の回転パンに温風を吹き込み、チューインガム主体の表面に付着したシロップの水分を取り除き、チューインガム主体の表面をシロップ固形分で被覆する。更にシロップを振りかけ、上記と同様の工程を繰り返すことによってシロップ固形分による皮膜を適度の厚さまで成長させて糖衣チューインガムが出来上がる。糖衣の目的は、表面を艶出しして製品の外観を向上させたり、表面を硬化させて内容物の崩壊を防ぎ、あるいは製品相互の粘着を防止したりすることによって、その取り扱いを便利にする点にあり、製品中に配合されている有効成分の安定化に寄与しているといった報告はない。
一方、ラクトフェリンは、歯周病菌毒素の中和・内毒素の中和作用などを有することから、口腔用組成物への配合成分として有効であることが知られており、ラクトフェリンを配合したチューインガム組成物(特許文献1;特開平03−220130号公報、特許文献2;特開平05−255109号公報)などが提案されている。
しかし、上記チューインガム組成物は、チューインガム主体中にラクトフェリンを配合するもので、チューインガム主体の表面を糖衣で被覆、硬化すると、口中で咀嚼してもラクトフェリンが放出されるのに時間を要したり、咀嚼しても十分な量のラクトフェリンが溶出されない等の問題があり、このためラクトフェリン由来の効果の発現に劣るという課題があった。
更に、ラクトフェリンの効果については、感染防御、免疫賦活等の薬理作用(特許文献3;特許第3819441号公報)や歯周病菌毒素の中和・内毒素の中和(特許文献4;特開2005−306890号公報)などが知られているが、特許文献1,2のチューインガムは、ラクトフェリン由来の上記効果の発現に劣り、特に板状チューインガムにラクトフェリンを配合した場合は、ガムベース内にラクトフェリンが取り込まれるため、ラクトフェリン由来の高い効果が満足に発揮されないという欠点もあった。
また、ラクトフェリンはタンパク質であり、高温で構造が崩れ、不安定であることから製剤中での保存安定性に劣り、特に長期に亘って製剤中に安定配合することは難しい。ラクトフェリンを錠剤に配合する技術(特許文献5;特開2004−346020号公報)や、ラクトフェリンをリポソーム化して安定化させる技術(特許文献6;特開2004−359647号公報)は提案されているが、これらの技術でも、ラクトフェリンを製剤中で長期に亘って安定化させることは難しい。とりわけチューインガムにおいては、ガムベース中にラクトフェリンが取り込まれたり、製造時に高温で不安定化するという問題があり、ラクトフェリンの安定配合が困難であった。
従って、口中で咀嚼されることにより、ラクトフェリンが口中に速やかに放出され、ラクトフェリンの溶出性に優れる上、長期保存安定性にも優れ、ラクトフェリン由来の優れた効果が発揮される糖衣チューインガム組成物及び糖衣チューインガムの製造方法の開発が望まれる。
特開平03−220130号公報 特開平05−255109号公報 特許第3819441号公報 特開2005−306890号公報 特開2004−346020号公報 特開2004−359647号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、口中で咀嚼した際のラクトフェリンの放出速度が速く、溶出性に優れ、かつ長期保存安定性にも優れ、口中で咀嚼時にラクトフェリン由来の優れた効果が安定かつ効果的に発揮され、歯周病予防に有効な糖衣チューインガム組成物及び糖衣チューインガムの製造方法、並びに糖衣チューインガム組成物におけるラクトフェリンの安定化方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、ガムベースを含有するチューインガム主体と、該チューインガム主体表面を被覆する糖衣層とからなる糖衣チューインガムの糖衣層を形成する糖衣成分としてマルチトールとラクトフェリンとを配合し、前記糖衣成分でチューインガム主体の表面を被覆することにより、ラクトフェリンの口腔中への放出速度が速く、溶出性に優れ、かつ長期保存安定性に優れ、高い歯周病菌毒素不活化効果を有して歯周病予防に有効な糖衣チューインガムが得られることを見出した。そして、マルチトール含有の糖衣成分にラクトフェリンを配合したものでチューインガム主体表面を被覆して糖衣層を形成し、糖衣チューインガムを調製することにより、口中で咀嚼した際のラクトフェリンの放出速度が速く、溶出性に優れ、しかも、ラクトフェリンがガムベース中に取り込まれたり、製造時に高温で不安定化することがなく、長期保存安定性に優れ、口中で咀嚼時にラクトフェリン由来の優れた効果が安定かつ効果的に発揮され、歯周病予防に有効であることを知見し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、下記の糖衣チューインガム組成物、糖衣チューインガムの製造方法、ラクトフェリンの安定化方法を提供する。
〔1〕チューインガム主体と、該チューインガム主体表面を被覆する糖衣層とからなり、糖衣層を形成する糖衣成分がマルチトールとラクトフェリンとを含有し、かつ前記マルチトールの含有量が糖衣成分全体の50〜99.5質量%であると共に組成物全体の20〜34質量%であることを特徴とする糖衣チューインガム組成物。
〔2〕チューインガム主体を形成した後、該チューインガム主体表面をマルチトールとラクトフェリンとを含有する糖衣成分で被覆し、前記マルチトールの含有量が糖衣成分全体の50〜99.5質量%であると共に組成物全体の20〜34質量%であるラクトフェリン含有糖衣層を形成することを特徴とする糖衣チューインガムの製造方法。
〔3〕チューインガム主体と、該チューインガム主体表面を被覆する糖衣層とからなり、糖衣層を形成する糖衣成分にマルチトールとラクトフェリンとを配合し、前記マルチトールの含有量を糖衣層の成分全体の50〜99.5質量%とすると共に組成物全体の20〜34質量%とする、前記糖衣チューインガム組成物におけるラクトフェリンの安定化方法。
本発明の糖衣チューインガム組成物は、マルチトールとラクトフェリンとを糖衣層に含有することによって、ラクトフェリンの口中での咀嚼放出速度が速く、溶出性に優れる上、長期保存安定性に優れ、歯周病菌毒素の不活化効果に優れる。本発明の製造方法によれば、上記優れた特性を有する糖衣チューインガムを工業的に有利に得ることができる。
以下、本発明を更に詳しく説明する。本発明の糖衣チューインガム組成物は、チューインガム主体と、該チューインガム主体を被覆する糖衣層とからなり、糖衣層を形成するための原料である糖衣成分としてマルチトールとラクトフェリンとを含有するものであり、チューインガム主体表面が糖衣層で被覆された糖衣チューインガムとして調製される。
ここで、チューインガム主体はガムベースに、甘味剤、香料、有効成分、着色料等が配合され、糖衣層はその主成分がマルチトールであり、かつ有効成分としてラクトフェリンを含有し、更に食用ガム質等の結合剤、他の有効成分や甘味剤、色素、酸味料、香料等が配合される。
本発明において、糖衣成分として用いるマルチトールは、ラクトフェリンの歯周病菌毒素不活性化効果や長期保存後の溶出率の低下を抑制する安定化剤として、また甘味剤として配合される。マルチトールは、還元麦芽糖で、でんぷんを麦芽酵素により糖化して得られる高純度の麦芽糖を水素添加して得られ、グルコースとソルビトールが結合した糖アルコールであり、ショ糖の1/2のカロリーで80〜90%の甘味を示す。消化管でゆっくり加水分解され、摂取後の血糖上昇が緩やかなため、低エネルギー甘味料として利用されている。
糖衣成分としてのマルチトールの配合量は、全組成物中20〜34%(質量%、以下同様。)、特に24〜34%が好ましい。配合量が20%に満たないとラクトフェリンの歯周病菌毒素不活性化効果が十分に発揮されなかったり、甘味度が減少し、使用感に問題を生じる場合がある。34%を超えると、ラクトフェリンの長期保存後の溶出率が低下したり、甘味度の増強によって香味に影響をきたす場合がある。
また、糖衣層中のマルチトールは、糖衣層の全成分の50〜99.5%、特に60〜95%の範囲で配合することが望ましい。
なお、糖衣層には、マルチトール以外の糖アルコール等の甘味剤を配合しないことが望ましい。
ラクトフェリンは、動物の体内で広く分布しているものであり、ラクトフェリンの生物学的機能としては、抗菌作用、抗ウィルス作用、生態防御作用及び内毒素中和作用を有し、ムチン産生促進剤(特開平09−12473号公報)、新規医薬組成物(特開平8−217693号公報)等が提案されている。ラクトフェリンは、1本のポリペプチド鎖にガラクトース、マンノース、シアル酸などからなる糖鎖が結合した分子量83100の鉄結合性の糖タンパク質である。市販のラクトフェリンは、哺乳類(例えば人、牛、羊、山羊、馬等)の初乳、移行乳、常乳、末期乳等、又はこれらの乳の処理物である脱脂乳、ホエ−等から常法(例えば、イオン交換クロマトグラフィー等)により分離したラクトフェリン、植物(トマト、イネ、タバコ)から生産されたラクトフェリンである。本発明では、ラクトフェリンとして市販品を使用しても、或いは公知の方法により調製したものを使用してもよいが、特にウシ由来のものが好ましい。ウシ由来の市販ラクトフェリンとしては、森永乳業(株)から発売されている「森永ラクトフェリン(MLF−1)、DMVジャパン社から発売されている「ラクトフェリン」などがあり、これらを好適に使用できる。
ラクトフェリンの配合量は、歯周組織破壊を効果的に改善するために、組成物全体に対して0.01〜10%(固形分換算。以下、同様。)、特に0.1〜5%が好ましい。配合量が0.01%に満たないと、満足な歯周病菌毒素不活化効果が得られない場合があり、10%を超えると、ラクトフェリンの歯周病菌毒素不活性化効果は飽和に達し、また、口中へのラクトフェリンの溶出性が低下する場合がある。
なお、糖衣成分中のマルチトールに対するラクトフェリンの配合割合は、マルチトール配合量の0.005〜70%、特に0.01〜60%、とりわけ0.03〜25%が好ましい。
本発明の糖衣チューインガム組成物には、糖衣成分として、更にその被覆性を向上させるために結合剤を配合することが好ましく、結合剤を配合することによりチューインガム主体表面を糖衣でより満足に被覆することができる。結合剤としては、例えばアラビアガム等の食用ガム、でんぷんなどが好適に使用されるが、特に糖衣しやすいことからアラビアガムが好適である。
結合剤を配合する場合、その配合量は、糖衣チューインガム組成物全体の0.1〜10%、とりわけ0.5〜5%が好ましく、0.1%未満では十分糖衣がなされない場合があり、10%を超えると変色などの外観安定性やラクトフェリンの溶出性などに影響をきたす場合がある。
更に、結合剤の配合量は、糖衣成分中のマルチトールに対して0.1〜40%、とりわけ1〜30%が好ましい。
本発明において、チューインガム主体に配合されるガムベースとしては、チューインガム組成物に通常用いられるものを使用でき、例えば平均重合度100〜1000のポリ酢酸ビニル樹脂、天然樹脂類(チクル、ジェルトン、ソルバ等)、ポリイソブチレン、ポリブデン、エステルガム等のガムベース用樹脂(基礎剤)、乳化剤、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、タルク等の充填剤、ラノリン、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、グリセリルトリアセテート、グリセリン等の可塑剤又は軟化剤、更には天然ワックス、石油ワックス、パラフィン等を配合した市販のガムベースを使用でき、具体的には、ナチュラルベース(株)製のガムベース、ユース(株)製のガムベース等が好適である。なお、上記ガムベースは、クチナシ、ベニバナ、ベニコウジ等の天然色素や二酸化チタン等の着色剤を含有していてもよい。
ガムベースの配合量は、組成物全体の10〜50%、特に15〜30%であることが好ましい。
本発明の組成物においては、上記チューインガム主体又は糖衣層を形成する成分に、有効成分としてデキストラナーゼを配合することが好ましく、デキストラナーゼを配合することにより、歯垢形成抑制効果を付与することができる。特に、糖衣層を形成する糖衣成分にデキストラナーゼを配合することにより、チューインガム主体に含有する場合と比較して歯垢形成抑制効果の向上が期待できるので有効である。
従来、デキストラナーゼは歯垢抑制効果を有することが知られており、これを配合した口腔用組成物が数多く提案されている(特許第782154号公報など)。本発明で使用するデキストラナーゼとしては、公知のもの、即ち、種々のデキストラナーゼ産生菌から産生したものを使用することができる。例えば、ペニシリウム属、アスペルギルス属、ケトミウム属、ストレプトマイセス属、スポロチチャム属、バチルス属等のデキストラナーゼ産生菌由来のものを使用することができるが、デキストラン分解能の点から糸状ケトミウム属由来のものを使用することが最も好ましい。
デキストラナーゼとしては、ケトミウム属に属する公知のデキストラナーゼ生産菌より公知の方法により得られるデキストラナーゼを好適に使用することができ、市販品としてはMFCライフテック(株)製のものなどを用いることができる。
デキストラナーゼの配合量は、12,000単位品を基準とした場合、組成物1g当たり0.01〜5%が好ましく、特に0.032〜3%が好ましい。0.01%より少ないと、歯垢除去効果が満足に得られない場合があり、5%を超えると、変色などの為害作用が出る可能性がある。なお、デキストラナーゼ1単位とは、デキストランを基質として反応を行った場合に、1分間当たりにグルコース1μmolに相当する遊離還元糖を生じるデキストラナーゼの量である。
本発明の糖衣チューインガム組成物では、チューインガム主体に甘味を付与するために、マルチトール以外の糖アルコール等の甘味剤を、チューインガム主体に配合することができる。この甘味剤としては、通常用いられる甘味料、例えばスクロース、グルコース、デキストロース、転化糖、フラクトース等の糖類、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、パラチノース、パラチニット、トレハロース、オリゴ糖、還元水飴、ステビア、スクラロース、サッカリン、アスパルテームから選ばれる少なくとも1種を含有するのが好ましく、特に風味の点でスクラロース、キシリトール、パラチニット、エリスリトールを含有するのが好ましい。甘味剤をチューインガム主体に配合する場合、その配合量は、組成物全体の0.001〜70%、特に0.01〜65%であることが望ましい。
更に、本発明では、チューインガム主体に、必要により甘味増強の目的でマルチトールを甘味剤として配合してもよい。この場合、チューインガム主体に配合されるマルチトールの配合量は、組成物全体の1〜50%、特に5〜40%が好ましい。
また、本発明組成物には、香料を配合することができる。なお、香料は、糖衣に香味を付与する目的で糖衣成分に配合しても、あるいはチューインガム主体に香味を付与するためにガムベースと共に配合してもよく、糖衣成分及びチューインガム主体の両方に配合してもよい。
香料としては、天然香料、合成香料などの油脂香料や粉末香料を1種又は2種以上使用できる。例えば天然香料として、マスティック油、パセリ油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、メントール油、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、コリアンダー油、オレンジ油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローレル油、カモミール油、カルダモン油、キャラウェイ油、ベイ油、レモングラス油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー、シトラス油、ミックスフルーツ油、ストロベリー油、シナモン油、クローブ油、グレープ油等が挙げられる。
単品香料としては、カルボン、アネトール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルアンスラニレート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチノンアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルフェイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルリオアセテート等が挙げられる。単品香料及び/又は天然香料も含む調合香料として、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、ヨーグルトフレーバー、フルーツミックスフレーバー、ハーブミントフレーバー等が挙げられる。また、香料の形態は、精油、抽出物、固形物、又はこれらを噴霧乾燥した粉体でも構わない。
香料の総配合量は、組成物全体の0.001〜20%、特に0.001〜5%とすることが好ましく、配合量が0.001%に満たないと満足な効果が発揮されない場合があり、20%を超えると組成物の香味やテクスチャーを損なう場合がある。
更に、本発明の組成物には、糖衣層やチューインガム主体への配合成分として、必要に応じて、その他の添加剤、例えば酸味料、光沢剤、増粘剤、乳化剤、pH調整剤、保存料等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜添加してもよい。
本発明の糖衣チューインガム組成物で糖衣チューインガムを製造するには、ガムベースに各種成分を添加して混練し、適宜形状に成形してチューインガム主体を調製した後、このチューインガム主体表面にマルチトール及びラクトフェリンを含有する糖衣成分を被覆して糖衣層を形成させることにより調製できる。
例えば、まず、ガムベース用樹脂を主成分とし、ワックス、乳化剤、充填剤、軟化剤等からなるガムベースに、必要により所定量のデキストラナーゼ、甘味剤、香料、着色料、矯味物質等の添加剤を加え、50℃前後にてニーダーを用いて均一に混練する。次いで、板状、ブロック状などの適宜な形状に切断し、チューインガム主体(チューインガム層)を得る。この際、チューインガム主体の質量が約1〜2gになるようにすることが好ましい。このチューインガム主体表面に糖衣層を形成させるには、糖衣パン或いは回転釜を使用して行うことができる。
なお、糖衣工程は、糖衣パン或いは回転釜を用いて通常の方法で行うことができ、マルチトールと食用ガム質等を配合し水溶液としたシロップを使用するいわゆるハード糖衣方法と、粉糖等からなる微細粉末原料と上記マルチトールシロップとを交互にかけるいわゆるソフト糖衣方法のいずれの方法を採用してもよい。この場合、ラクトフェリンはそのまま使用して直接投入しても、マルチトールシロップ及び/又はマルチトール微細粉末原料に予め混入させてから投入してもよい。
糖衣パン或いは回転釜は、駆動モータに接続され、垂直線に対して、例えば10〜60°傾斜させて配置された回転駆動軸に取り付けられた上方開口型の有底容器であるのが好ましい。例えば、富士薬品機械社製のFY−TS−220を用いることができる。ソフト糖衣方法を採用する場合は、例えば糖衣パン或いは回転釜中に適宜形状に成形されたチューインガム主体を投入し、糖衣パン又は回転釜を5〜30回転/分で回転させながら糖衣原料のアラビアガム等の結合剤含有マルチトールシロップを添加してチューインガム主体表面にかけ、この結合剤含有マルチトールシロップによりチューインガム主体の表面全体が被覆されたところで、マルチトールやラクトフェリンなどの粉体成分やオイル香料などの液体成分を予め混合して投入し、送風により乾燥させて、糖衣層を形成させる。乾燥は、例えば、粉体成分を供給して被覆物全体に行き渡らせることにより行うことができ、あるいは、粉体成分での処理後に送風することにより行うこともできる。送風を行う場合、風量は3〜30m2/分とするのが好ましく、例えば水分含量が1〜3%となるように乾燥を行うのが好ましい。この工程を、糖衣層の割合が製剤(チューインガム主体が糖衣層で被覆された糖衣チューインガム)全体の20〜45%、特に30〜40%になるまで繰り返して糖衣層を形成することが好ましい。
また、糖衣層を形成した後は、艶出しなどの更なる工程を採用してもよく、例えば、艶出し工程は、回転釜内に艶出しワックスを供給し、回転釜を回転させながら、糖衣チューインガムの糖衣層の表面にワックスをコーティングすることにより行うこともできる。この場合、ワックスにはカルナウバワックスやキャンデリラワックス等を用いてもよい。
本発明の糖衣チューインガム組成物は、丸状、四角状等の各種形状の糖衣チューインガムに調製されるが、特に四角の形状に調製されることが、傷などにも強く、外観安定性の点から好適である。
以下、実験例、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、各例中の%は特に断らない限りいずれも質量%であり、配合量は水分を除いたドライアップ後の純分換算したものである。
〔実験例〕
表1〜3に示す組成の糖衣チューインガムを下記方法で調製し、下記方法で評価を行った。結果を表1〜3に示す。
糖衣チューインガムの調製:
表1〜3に示す組成に従い、ガムベース(ナチュラルベース(株)製)、キシリトール(三菱商事フードテック(株)製)、マルチトール(三菱商事フードテック(株)製)、パラチニット(三井製糖(株)製)、エリスリトール(日研化成(株)製)、還元水飴(日研化成(株)製)、還元麦芽糖水飴(日研化成(株)製)、デキストラナーゼ(12,000単位、MFCライフテック(株)製)、スクラロース(三栄源エフエフアイ(株)製)、粉末香料、オイル香料を加え、50℃前後にて1L容量ニーダー((株)トーシン製)を用いて均一に混練した。この混練物をブロック状に切断し、チューインガム主体(チューインガム層)を得た。この際、チューインガム主体の質量が約1gになるようにした。その後、糖衣パン中に上記の成形されたチューインガム主体を投入し、糖衣パンを15回転/分で回転させながらアラビアガム含有のマルチトール又はソルビトールシロップをチューインガム表面にかけ、このアラビアガム含有マルチトール又はソルビトールシロップでチューインガムの表面全体が被覆されたところで、結晶化されたマルチトールやラクトフェリンなどの粉体成分、次いでオイル香料などの液体成分を投入し、送風により乾燥させて、チューインガム主体表面に糖衣層を形成させた。この工程を、糖衣層の割合が製剤全体の30〜40%になるまで繰り返し、糖衣チューインガムを製造した。更に、糖衣パン内にカルナウバワックスを供給し、糖衣パンを回転させながら糖衣チューインガムの糖衣層表面をコーティングした。
また、各例において、ラクトフェリンとしては、DMVジャパン社製のラクトフェリン(食品グレード)を使用した(以下、同様)。
糖衣層からのラクトフェリンの抽出方法:
表1,3に示す組成、表2中の比較例6に示す組成の糖衣チューインガム1粒を100mLビーカーに移し、60℃に保温した3%の塩化ナトリウム水溶液80mLに30分間溶解させた後、ビーカー壁を3%塩化ナトリウム水溶液で洗いながら、100mLにメスアップし、5分間超音波処理し、孔径0.45μm、膜径25mmのフィルター(クラボウ社製)でろ過した。これをガム抽出液サンプルとして、液体クロマトグラフィーにより実験1の条件でラクトフェリンの定量を行った。
チューインガム主体からのラクトフェリンの抽出方法:
表2に示す比較例1〜5,7の組成の糖衣チューインガム1粒を乳鉢に入れ、3%塩化ナトリウム水溶液80mL中で乳棒で抽出した後、乳鉢を3%塩化ナトリウム水溶液で洗いながら、100mLにメスアップし、その後、5分間超音波処理し、孔径0.45μm、膜径25mmのフィルター(クラボウ社製)でろ過した。これをガム抽出液サンプルとして、液体クロマトグラフィーにより実験1の条件でラクトフェリンの定量を行った。
実験1:糖衣チューインガム中のラクトフェリンの溶出量確認試験
液体クロマトグラフィーの設定条件は以下のとおりである。
液体クロマトグラフィー:島津サイエンス社製 高速液体クロマトグラフィー
カラム:
Shodex Asahipak C4P−50 4D
長さ150mm×内径4.6mm
移動相:
A液 アセトニトリル:0.5mol/L塩化ナトリウム水溶液=10(vol%):90(vol%)
B液 アセトニトリル:0.5mol/L塩化ナトリウム水溶液=50(vol%):50(vol%)
A液及びB液それぞれに0.03%(vol%)トリフルオロ酢酸を入れた。なお、アセトニトリル、塩化ナトリウム、トリフルオロ酢酸は和光純薬工業(株)製を使用した。
グラジエント条件:
A液、B液を50:50(vol%比)でスタートさせ、25分後にA:B=0:100(vol%比)になるように直線的にB液の濃度を上げた。次に25分後にA:B=50:50(vol%比)になるように移動相の条件をもどし、その条件で35分まで保持した。
流速:0.8mL/min
温度:30℃
検出器:紫外分光検出器(280nm)
サンプル量:25μL
0.025%ラクトフェリン標準溶液(質量%)の示すピーク面積から、ガム抽出液中のラクトフェリン量を求め、下記式によりラクトフェリン溶出率を算出した。
ラクトフェリン溶出率(%)=
〔(ガム抽出液中ラクトフェリン量(mg))/(配合ラクトフェリン量(mg))〕×100
実験2:糖衣チューインガムからのラクトフェリンの咀嚼放出試験
全て健常歯である10人を被験者として、1分間安静時の唾液を採取し、表1〜3に示す組成の糖衣チューインガム2粒を10分間咀嚼させ、1分毎に唾液を採取した。10分後に糖衣チューインガムを吐き出し、その後1分間安静時の唾液を採取した。採取した唾液それぞれを3%塩化ナトリウム水溶液で5倍希釈し、フィルターでろ過後、これを実験サンプルとし、実験1と同じ方法でHPLC(高速液体クロマトグラフィー)でラクトフェリンを定量した。下記(i)、(ii)の式により、5分後、10分後のラクトフェリン放出率を算出して唾液中放出速度を下記基準で評価した。10名の結果を平均した。
(i)5分後のラクトフェリン放出率(%)=
〔(5分間の唾液中のラクトフェリン量(mg)の合算×5)/(配合ラクトフェリン量(mg))〕×100
(ii)10分後のラクトフェリン放出率(%)=
〔(10分間の唾液中のラクトフェリン量(mg)の合算×5)/(配合ラクトフェリン量(mg))〕×100
ラクトフェリンの唾液中放出速度の評価基準(10名の平均)
5分以内に90%以上溶出 ◎
10分以内に90%以上溶出 ○
10分を超えても溶出量が90%未満 ×
実験3:糖衣チューインガムの長期高温保存後におけるラクトフェリンの溶出率試験
表1〜3に示す組成の糖衣チューインガムを凸版印刷(株)製200mLボトル容器に入れ、蓋をして、35℃の恒温槽(ヤマト科学(株)製インキュベーターIG420)に放置し、3ヶ月後にチューインガムから上記と同様の方法でラクトフェリンを抽出し、実験1と同様の方法で定量した。糖衣チューインガムの高温保存(35℃)後のラクトフェリン溶出率を上記式により求めた。
実験4:糖衣チューインガムのインビトロ歯周病菌毒素活性抑制試験
<サンプル調製>
表1,3に示す組成、表2中の比較例6に示す組成の糖衣チューインガム1粒を100mLビーカーに移し、60℃に保温した3%塩化ナトリウム水溶液80mLに30分間溶解させた後、ビーカー壁を3%塩化ナトリウム水溶液で洗いながら、100mLにメスアップし、5分間超音波処理し、孔径0.45μm、膜径25mmのフィルター(クラボウ社製)でろ過したものをサンプル液とした。
また、表2に示す比較例1〜5,7の組成の糖衣チューインガム1粒と3%塩化ナトリウム水溶液80mLを乳鉢に注入し、乳棒で抽出した後、乳鉢を3%塩化ナトリウム水溶液で洗いながら、100mLにメスアップし、5分間超音波処理し、孔径0.45μm、膜径25mmのフィルター(クラボウ社製)でろ過したものを、比較サンプル液とした。
<評価>
エンドスペシー法(生化学工業(株)製)を変法して、下記方法でインビトロ歯周病菌毒素活性抑制試験を行った。
歯周病の原因菌の一つであるポルフィロモナス・ジンジバリス 381の内毒素(以下、Pg・LPSと略す。)50μg/mLを100μLと、注射用蒸留水(下記Aの場合)又は上記方法で得たサンプル液もしくは比較サンプル液(下記Bの場合)100μLとを混合した。各サンプル液を37℃、30分インキュベーション後、更に注射用蒸留水で100、1,000、3,000、6,000倍に段階希釈し、3,000倍希釈サンプルについて、エンドスペシー法による歯周病菌毒素活性抑制率を測定し、毒素活性抑制率を下記式により算出した。
毒素活性抑制率(%)=〔(A−B)/A〕×100
A=(Pg・LPSのABS*)−(注射用蒸留水のABS*
B=((サンプル液又は比較サンプル液+Pg・LPS)のABS*)−(注射用蒸
留水のABS*
*ABS:545nmの吸光度
実験5:糖衣チューインガムの歯垢形成抑制効果
表3に示す糖衣チューインガム2粒を、0.01%アルブミンリン酸バッファー30mLで抽出し、サンプルとした。このサンプル1mLを1%ショ糖(和光純薬工業(株)製)添加TSB(BD社製トリプチック ソイ ブロス(Tryptic Soy Broth))培地4mLに溶解し、これを試験管に入れるとともに、予め嫌気培養したストレプトコッカス・ミュータンス菌を接種後、傾斜培地で18時間嫌気培養し、試験管壁に付着した菌量を測定した。コントロールとして、サンプルを添加しない培地を用いて同様の実験を行い、そのときの付着菌量(X0)とサンプルを用いた付着菌量(Xs)より、歯垢形成抑制率を次式より求めた。
歯垢形成抑制率(%)=〔(X0−Xs)/X0〕×100
0:サンプルを添加しない培地を用いた付着菌量
s:サンプルを用いた付着菌量
Figure 0005245505
Figure 0005245505
Figure 0005245505

Claims (8)

  1. チューインガム主体と、該チューインガム主体表面を被覆する糖衣層とからなり、糖衣層を形成する糖衣成分がマルチトールとラクトフェリンとを含有し、かつ前記マルチトールの含有量が糖衣成分全体の50〜99.5質量%であると共に組成物全体の20〜34質量%であることを特徴とする糖衣チューインガム組成物。
  2. チューインガム主体にラクトフェリンは配合されない請求項1記載の糖衣チューインガム組成物。
  3. 糖衣成分中のマルチトールに対するラクトフェリンの配合割合が、マルチトール量の0.005〜70質量%である請求項1又は2記載の糖衣チューインガム組成物。
  4. 更に、チューインガム主体又は糖衣層がデキストラナーゼを含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の糖衣チューインガム組成物。
  5. チューインガム主体を形成した後、該チューインガム主体表面をマルチトールとラクトフェリンとを含有する糖衣成分で被覆し、前記マルチトールの含有量が糖衣成分全体の50〜99.5質量%であると共に組成物全体の20〜34質量%であるラクトフェリン含有糖衣層を形成することを特徴とする糖衣チューインガムの製造方法。
  6. 糖衣成分中のマルチトールに対するラクトフェリンの配合割合が、マルチトール量の0.005〜70質量%である請求項5記載の糖衣チューインガムの製造方法。
  7. 更に、チューインガム主体又は糖衣層にデキストラナーゼを含有する請求項5又は6記載の製造方法。
  8. チューインガム主体と、該チューインガム主体表面を被覆する糖衣層とからなり、糖衣層を形成する糖衣成分にマルチトールとラクトフェリンとを配合し、前記マルチトールの含有量を糖衣層の成分全体の50〜99.5質量%とすると共に組成物全体の20〜34質量%とする、前記糖衣チューインガム組成物におけるラクトフェリンの安定化方法。
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