JP4152591B2 - 糖衣錠 - Google Patents

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Description

【0001】
技術分野
本発明は、種々の生理効果を有するラクチュロース及びラフィノースの混合物を糖衣基剤として使用し、中心錠を被覆してなる糖衣錠である医薬品製剤に関する。
本明細書において中心錠は、薬効を呈する組成物を打錠した錠剤を意味し、糖衣基剤は、中心錠を被覆(コーティング)するための組成物を意味する。
【0002】
背景技術
現在、医薬品製剤の被覆は、薬剤の味又は臭気をマスクして服用を容易にすること、薬塵の発生を防止して調剤者の安全性を確保すること、光、水、酸素から薬剤を保護して薬剤の安定性を向上させること、及び腸溶化、徐放化により薬剤の有効性、安全性を向上させること、を目的として実施されている。また、医薬品製剤の被覆方法は、ゼラチン・コーティング、ドライ・コーティング、糖衣、フィルム・コーティング及び粉末コーティングが知られているが、ゼラチン・コーティング及びドライ・コーティングは、単にコーティングのみの目的にはほとんど使用されておらず、粉末コーティングは、検討課題が多くあって今後の技術といわれており、現時点では糖衣及びフィルム・コーティングが主流となっている。
【0003】
従来の糖衣基剤は、白糖の水溶液(シロップ)であり、白糖の結晶の緻密なブロック状構造を形成させることにより、滑らかな表面及び気密性に優れた錠剤が得られるといわれている。糖衣基剤として白糖以外に、乳酸カルシウムが知られており、その他糖衣用散布剤としてタルク、糖衣用懸濁剤として沈降炭酸カルシウム、糖衣用結合剤としてゼラチン、アラビアゴム及びプルラン、糖衣用光沢化剤としてカルナウバロウが知られている(以上、一番ケ瀬尚、上釜兼人、及び小田切優樹編、「医薬品の開発12巻 製剤素材I」、廣川書店、平成2年/1990)。
また、食品を被覆する素材としては、糖アルコール(特開平9−313109号公報/1997)、腸溶性複粒造粒物の被覆する素材としては、グラニュー糖及びコーンスターチ(特開平5−186337号公報/1993)等が開示されている。
【0004】
一方、ラクチュロースは、ガラクトース及びフラクトースからなる二糖類(4−O−β−D−galactopyranosyl−α−D−fructose)の一種であり、乳糖にロブリー・ドブリュイン転位を行って製造される。ラクチュロースは、ビフィズス菌の増殖因子(診断と新薬、第10巻、第5号、第75ページ、1973年)として知られており、調製粉乳、離乳期用粉乳等に使用されている。また、ラクチュロースは、肝性脳症及び肝性昏睡の症状を軽減する作用を有することも知られており、既にこれらの疾患の治療に使用されている(精神医学、第15巻、第10号、第1101ページ、1973年)。しかしながら、ラクチュロース単独で糖衣基剤として使用する場合、粘性が高すぎて中心錠に均一なコーティングをすることが不可能である。
【0005】
更に、ラフィノースはD−グルコース及びD−フルクトースからなる三糖類の一種であり、ビート糖蜜からクロマトグラフィーによって分離して製造される。ラフィノースは、整腸作用を有する機能性オリゴ糖として、既に日本健康・栄養食品協会より、特定保健用食品素材としての総合評価書を得ている。また、ラフィノースを2%(重量。以下特に断りのない限り同じ。)以下の極めて低濃度で含有する蔗糖シロップをコーティングに使用する糖衣の製法が開示されている(特公昭58−50968号公報/1983)。
しかしながら、前記従来の技術から明らかなとおり、各種生理作用を有するラクチュロースに、ラフィノースを少なくとも等量混合した混合物を有効成分とする糖衣基剤により被覆した糖衣錠は知られておらず、文献も皆無である。
【0006】
発明の要約
本発明は、蔗糖を一切使用せず、抗う蝕性があり、種々の生理効果を有するラクチュロース及びラフィノースからなる混合物を糖衣基剤とした糖衣錠である医薬品製剤を提供する。
本発明は、ラクチュロース及びラフィノースの混合物を有効成分として含有する糖衣基剤により中心錠を被覆してなる糖衣錠である医薬品製剤に関する。
本発明により、摂取時の口腔内への付着、舌への違和感がなく、風味(食感)が良好であり、嗜好性にも優れた糖衣錠である医薬品製剤を提供することができる。
【0007】
発明の開示
本発明者らは、前記従来技術に鑑みて、各種生理効果を有するラクチュロースを糖衣基剤として使用することを創出し、ラクチュロース単独、ラクチュロースと蔗糖、オリゴ糖、糖アルコール等の糖類との混合物からなる糖衣基剤により糖衣錠の製造を試みたが、ラクチュロース単独とラクチュロース主体の糖衣基剤を使用した場合、粘性が高く、中心錠を均一にコーティングすることができず、糖衣錠としては不十分な品質であった。
本発明者らは、前記問題を解決するために鋭意研究を行った結果、糖衣基剤としてラクチュロース1部(重量)に対してラフィノースを少なくとも1部(重量)混合することにより、混合物水溶液の粘性が著しく低下し、中心錠を均一にコーティングした糖衣錠である医薬品製剤が得られることを見い出し、本発明を完成した。
本発明は、従来の糖衣基剤で主に使用されている蔗糖を一切使用せず、ラクチュロース及びラフィノースを使用しているので抗う蝕性があり、種々の生理効果を有するラクチュロース及びラフィノースからなる混合物を糖衣基剤とした糖衣錠である医薬品製剤を提供することを目的としている。
【0008】
前記課題を解決する本発明は、ラクチュロース及びラフィノースの混合物を有効成分として含有する糖衣基剤により中心錠を被覆してなる糖衣錠、であり、前記糖衣基剤が、ラクチュロース1部(重量)に対してラフィノースを少なくとも1部(重量。以下特に断りのない限り同じ。)の割合からなる混合物を含有する糖衣錠である医薬品製剤であり、更に中心錠が、次のa)、b);
a)ビフィドバクテリウム属に属する微生物、ラクトバシラス属に属する微生物、ストレプトコッカス属に属する微生物、ペディオコッカス属に属する微生物及びリュウコノストック属に属する微生物からなる群より選択される微生物の1種又は2種以上の微生物(以下、これらの微生物を一括して乳酸菌類と記載することがある。)菌末、
b)ラクトフェリン、ペプチド、及びラクチュロースからなる群より選択される物質の1種又は2種以上、
のいずれか一方又は双方を有効成分として含有すること、を望ましい態様としてもいる。
【0009】
次に本発明の糖衣錠である医薬品製剤(以下、単に糖衣錠と記載することがある。)について説明する。
本発明において糖衣基材に使用するラクチュロース及びラフィノースは、市販品であり、また公知の方法により製造することもできる。例えば、ラクチュロースは、特開平3−169888号公報/1991及び特開平6−228179号公報/1994に開示された方法により、次のとおり製造することができる。市販乳糖の10%水溶液に、水酸化ナトリウムを添加し、該混合液を70℃の温度で30分間加熱し、冷却し、のち冷却した溶液をイオン交換樹脂により精製し、濃縮し、冷却し、結晶化し、未反応の乳糖を除去し、固形分含量約68%(固形分中ラクチュロースを約79%含有する。)のラクチュロース水溶液を得る。この水溶液を強酸性イオン交換樹脂カラムに通液し、ラクチュロースを含む画分を採取し、濃縮し、固形分含量約68%(固形分中ラクチュロース約86%を含有する。)の精製ラクチュロース水溶液を得る(特開平3−169888号公報/1991記載の方法)。
【0010】
更に、前記の方法により得たラクチュロース水溶液(シロップ)を固形分含量約72%に濃縮し、この濃縮液を15℃に冷却し、ラクチュロース三水和物結晶を種晶として添加し、撹拌しながら7日間を要して5℃まで徐々に冷却し、結晶を生成させ、10日後に上澄液の固形分含量が約61%に低下した結晶を含む液から濾布式遠心分離器により結晶を分離し、5℃の冷水で洗浄し、乾燥させ、純度95%以上のラクチュロースの結晶を得ることができる(特開平6−228179号公報/1994記載の方法)。本発明に使用するラクチュロースは、可及的に高純度であることが望ましく、特に95%以上の純度であることが望ましい。
【0011】
本発明において糖衣基材に使用するラフィノースは市販品であり、一般に市販製品は、ビート糖蜜から次の方法により製造される。ビート糖蜜をクロマトグラフィーに通液してラフィノースを含む画分を採取し、濃縮し、粗結晶化する。この粗結晶を溶解し、濾過し、精製した結晶を取得し、精製結晶を乾燥し、製品とする(食品新素材有効利用技術シリーズNo.6、「ラフィノース」、第2ページ、社団法人菓子総合技術センター、1996年)。
【0012】
本発明においては、以上のようにして製造されたラクチュロース1部に対してラフィノースを少なくとも1部、望ましくは1.5〜10部、の割合の混合物を有効成分とする糖衣基剤を使用する。
本発明の糖衣錠の中心錠は、公知の各種医薬品錠剤の有効成分を含有する中心錠のいずれでもよく、また、各種薬効を呈する医薬品組成物を打錠したものであってもよい。
本発明の糖衣錠の中心錠として特に望ましいのは、乳酸菌類の菌末を含有するものであり、この乳酸菌類の菌末は、生菌末又は死菌末のいずれであってもよいが、生体内で整腸作用を有することから、生菌末が望ましい。乳酸菌類の菌末は、市販品又は公知の方法(例えば、特開平1−221319号公報/1989に記載の方法等)により調製することができるが、その一例を示せば、次のとおりである。
【0013】
ビフィドバクテリウム属に属する微生物、ラクトバシラス属に属する微生物、ストレプトコッカス属に属する微生物、ペディオコッカス属に属する微生物及びリュウコノストック属に属する微生物からなる群より選択される微生物の1種又は2種以上の微生物の前培養を常法により大量培養し、培養液から分離した菌に必要に応じて各種の糖類、アミノ酸、デンプン、ゼラチン、脱脂粉乳等の保護作用を有する分散媒を添加し、凍結乾燥することにより、乾燥菌体を調製することができる。尚、乳酸菌類の菌末のより詳細な調製方法については、後記する参考例1乃至参考例4のとおりである。
【0014】
また、中心錠に使用するラクチュロースは、前記のとおり糖衣基材に使用するものと同一のものである。
また、中心錠に使用するラクトフェリンは、市販品又は公知の方法により製造されてものであり、例えば、特公平6−13560号公報/1994に開示された方法により、次のとおり製造することができる。
【0015】
イオン交換基としてカルボキシメチル基を有し、ヘモグロビン吸着能力が3.9g/100ml、体積変化が3.0のCM−セファデックスC−50(ファルマシア製)を水に膨潤し、Na形のイオン交換体とする。これを生の脱脂乳に投入し、4℃で16時間撹拌、接触させた後、イオン交換体を取り出し、カラムに充填し、水を通液してイオン交換体に付着した脱脂乳分を除去した後、1.6%の塩化ナトリウム溶液をカラムに通液し、イオン交換体に吸着した第1の画分(ラクトフェリン以外のタンパク質)を脱離・除去する。その後、5%の塩化ナトリウム溶液をカラムに通液し、回収液を得る。この回収液を分画分子量2万の限外濾過膜(DDS社製)を用いて塩化ナトリウムを除去し、得られた濃縮液を凍結乾燥することにより、純度98%以上のラクトフェリンを得ることができる。
【0016】
更に、中心錠に使用するペプチドは、市販品又は公知の方法により製造した食用蛋白質の加水分解物であり、例えば、カゼイン又は乳清蛋白質を酵素分解して得たペプチドであり(特公昭54−36235号公報/1979、特開平7−303455号公報/1995、特開平8−112063号公報/1996、特開平8−2286692号公報/1996等)、その分解率の大小により、分子量分布を適宜変更したペプチドを得ることができる。
【0017】
本発明の糖衣錠の中心錠においては、これらのラクトフェリン、ペプチド及びラクチュロースを、単独又は任意に組合わせて使用することができる。例えば、ラクトフェリン1部に対してペプチド0.5部及びラクチュロース2部の割合で混合した混合物等である。
また、本発明の糖衣錠の中心錠においては、前記乳酸菌類の菌末、並びに前記ラクトフェリン、ペプチド及びラクチュロースを任意に組合わせて使用することもできる。
また、本発明の糖衣錠の中心錠において、その他の成分として医薬品製造に使用する公知の成分、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の滑沢剤、風味及び食感を改善するために糖類、甘味料、香料、増粘剤、乳化剤等を所用量添加し、中心錠の原料を調製する。また、糖衣用素材として、公知のセラック等の防水剤、タルク、粉末白糖等の散布剤・懸濁剤、アラビアゴム、ゼラチン等の結合剤、着色料、カルナウバロウ、ミツロウ等の光沢化剤(一番ケ瀬尚、上釜兼人、小田切優樹編、「医薬品の開発12巻 製剤素材I」、第205ページ、廣川書店、平成2年)等を使用することもできる。
【0018】
本発明の糖衣錠においては、前記中心錠の原料を、公知の粉砕機[例えば、回転型ピンミル(ホソカワミクロン社製)等]により粉砕することも可能であり、打錠の前に予め押出し造粒機[例えば、エクストルード・オー・ミックス(ホソカワミクロン社製)等]、流動層造粒機[例えば、グラッド流動造粒乾燥機(大川原製作所製)等]等の公知の造粒装置を用いて造粒して顆粒となし、打錠することもできる。しかしながら、滑沢剤、香料、前記乳酸菌類の生菌末等は、造粒しないことが望ましい。
【0019】
本発明の糖衣錠においては、以上のとおり調製した中心錠の原料を公知の方法及び装置により打錠し、中心剤を製造する。打錠に使用する機械は、粉粒体圧縮式の打錠機であり、公知のロータリー型打錠機、エキセントリック型打錠機等のいずれも使用することもできるが、工業的規模での生産用としてはロータリー型打錠機を用いることが望ましい。具体的には、例えば、前記のとおり調製した中心錠の原料をロータリー型打錠機[例えば、HT−PA型小型高速打錠機(畑鐵工所製)等]に供給し、所望の錠形を有する上下の杵の間で圧縮し、成形することにより錠剤を得ることができる。打錠時の圧縮圧力は、錠剤原料の組成、錠形、打錠速度、打錠機の種類等により異なるが、通常1トン以上、5トン以下の範囲である。また、本打錠の直前に、錠剤の原料を1トン程度の圧力で予備圧縮することもできる。
【0020】
本発明の糖衣錠の錠形については、極端な異形の場合、強度が若干低下することもあるが、一般に錠形として用いられている丸型、三角形、多角形、フットボール形、バッカル形、花形、ハート形等に打錠することができる。
【0021】
本発明の糖衣錠は、公知のpanコーティング法[例えば、回転型糖衣パン(富士薬品機械社製)等]、流動層装置によるコーティング法により製造することができる。panコーティングでは、panに中心錠を入れて回転させながら、手作業又は自動操作によってコーティング液を錠剤の流動表面に注加又は噴霧し、必要ならば散布剤を散布し、次にpanの前面から送風用ダクトを通して、錠剤の表面に熱風を送り溶媒を除去乾燥し、所定回数この操作を反復し、糖衣錠を製造(仲井由宣編、医薬品の開発11巻、「製剤の単位操作と機械」、第94ページ、廣川書店、平成元年)することができる。より具体的には、次のとおりである。
【0022】
本発明の糖衣錠の製造において、糖衣液の注加によってpan中を流動する錠剤が濡れた場合にも錠剤表面の大きな粘性の増加は認められず、全体及び個々の錠剤は適当な流動状態を示し、ほぼ均一に糖衣液と接触するため、糖衣液の付与は注加、又は噴霧のいずれの方法も採用し得る。このとき層の形成、乾燥速度は、個々の錠剤の回転数に依存するので、pan中にバッフル又はフロートを配設してこの回転を補助することもできる。糖衣各層のラクチュロース及びラフィノース混合物と添加剤(タルク、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、色素等)との組成比は、サブコーティング層で1:0.5〜2.0、スムーシング層で1:0.5〜1.2、カラーリング層ではラクチュロース及びラフィノース混合物のみを使用し、外層に向かうほどラクチュロース及びラフィノース混合物比を多くする。層の結合のために糖衣液に添加する結合剤として、古くはゼラチン、アラビアゴム、現在ではこのほかポリビニルピロリドンや多糖類の一種であるプルラン等も使用できる。ただし、アラビアゴムの添加はサブコーティング、スムーシング両層に限定し、他の結合剤は外層に向かうほど低濃度として全層に使用する。また、着色のための色素は主としてカラーリングに添加する。
更に、製品化のために、表面にラクチュロース及びラフィノース混合物からなるフィニシング層を薄く形成して光沢を出し、この上層にカルナウバロウ、ミツロウ等をポリシングすることもできる。
【0023】
また、被覆中の乾燥効率改善のため、転動混合床の内部を加熱空気が一様に通過する通気式乾燥コーティング装置[例えば、回転型コーター(フロイント産業社製)等]も、本発明の糖衣錠の製造に使用可能であり、この装置では円柱状のpanを二重構造とし、内側にパンチング孔をもうけ、panの内側から外側へ、転動混合床を構成する錠剤間隙をぬって乾燥空気を流通させるため、通常のpanに比較して、乾燥効率は約1.5倍から2倍に増大する。また、乾燥空気を内側だけでなく、外側からも切り替えて流通させるリバース式の装置も、本発明の糖衣錠の製造に使用することができる。
以上のようにして製造された本発明の糖衣錠は、ラクチュロース単独では中心錠にコーティングすることが困難であるにもかかわらず、ラフィノースを所定量混合することによって糖衣基剤を中心錠に、均一にコーティングが可能となり、外観が良好となるとともに、生理効果も、風味(食感)も非常に優れており、従来の製品にない特徴を有している。
【0024】
次に、試験例を示して本発明を説明する。
試験例1
この試験は、本発明の糖衣錠の製錠に与えるラフィノースの効果を、他の糖類であるオリゴ糖のラクトスクロース、パラチノース、糖アルコールのマルチトール、エリスリトールとラクチュロースのそれとを比較するために行った。
1)試料の調製
ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)M−8201(微工研研寄第6548号)の菌体粉末(生菌数:100×10/g。森永乳業社製)1部に対してラクチュロース粉末(森永乳業社製)を1部の割合で配合した混合物97部に、滑沢剤としてグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン社製)3部を添加し、均一に混合し、中心錠の原料を調製した。この中心錠の原料を直径5mmの丸型錠剤用杵を装着した回転テーブル型打錠機(畑鐵工所製)により、打錠圧力1トンでこの原料を打錠し、直径5mm、重量0.2gの丸型錠剤1万錠を調製した。
糖衣基剤としてラクチュロース粉末(森永乳業社製)1部に対してラフィノース粉末(日本甜菜製糖社製)3部の割合で配合した混合物を70℃の水で溶解し、50%の水溶液を調製した(試料1)。
【0025】
これとは別に、糖衣基剤としてラクチュロース粉末(森永乳業社製)1部に対してラクトスクロース粉末(塩水港精糖社製。試料2)、パラチノース粉末(三井製糖社製。試料3)、エリスリトール粉末(日研化学社製。試料4)及びマルチトール粉末(東和化成工業社製。試料5)を各3部の割合で配合した混合物を70℃の水に溶解し、50%の水溶液を調製した。
【0026】
次に、pan糖衣機(富士薬品機械社製。300φ)に前記中心錠1kg(約5000錠)を投入し、pan回転数30rpm、送風温度50℃、送風量0.1mの条件で前記試料1の糖衣基剤を少量ずつ散布して被覆を行い、約0.4g/錠の糖衣錠を調製した。尚、前記試料2乃至試料5についても、前記と同一の方法により、それぞれ糖衣錠を調製した。
【0027】
2)試験方法
得られた各試料から無作為に100錠を採取し、panコーティング法による製造状態、外観(コーティングの均一性)、風味(食感)の比較試験を次の方法により実施した。
(1)panコーティング法による製造状態
製造時、回転pan内の糖衣錠の動く状態を観察し、糖衣錠相互の粘着、付着状態を定期的にpan回転を止めて手指により確認し、評価した。
(2)外観(コーティングの均一性)
各試料から採取した糖衣錠100錠の表面及び裏面の状態を肉眼で観察し、市販の糖衣錠と比較し、同等であれば良好、それ以下をやや良好、やや不良、不良の4段階で評価した。
(3)風味(食感)
採取した100錠から適当に2〜3錠を口の中に入れ、舌ざわりを確認し、これを4〜5回反復して、風味(食感)を良好、やや良好、やや不良、不良の4段階で評価した。
【0028】
3)試験結果
この試験の結果は表1に示すとおりである。表1から明らかなとおり、糖衣基剤としてラクチュロースにラクトスクロース及びパラチノースを混合した糖衣錠(試料2及び試料3)は混合水溶液の粘度が高く、製造時に錠剤が付着して塊状となり、糖衣錠のコーティングが均一であり、風味(食感)も不良であった。また、エリスリトールを混合した糖衣錠(試料4)は、混合水溶液の粘度は他の試料に比較して低いが、製造時に錠剤相互の粘着が生じ、マルチトールを混合した糖衣錠(試料5)は混合水溶液の粘度が高く、製造時に錠剤が相互に付着して塊状となり、糖衣錠のコーティングが不均一であり、風味(食感)も不良であった。これに対して、ラクチュロースにラフィノースを混合した糖衣錠(試料1)は、混合水溶液の粘度が低く、製造時に錠剤の付着が無く、糖衣錠のコーティングが均一であり、風味(食感)も良好であった。
【0029】
【表1】
Figure 0004152591
【0030】
試験例2
この試験は、製錠に適したラクチュロースとラフィノースとの混合割合を調べるために行った。
1)試料の調製
中心錠にコーティングする糖衣基剤としてラクチュロース粉末(森永乳業社製)1部に対して、表2に示すとおりラフィノース粉末(日本甜菜製糖社製)0〜19部の割合で混合した混合物を70℃の水に溶解し、50%水溶液を調製して用いたことを除き、試験例1と同一の方法により、1錠あたり約0.4gの丸型糖衣錠を調製した。
【0031】
2)試験方法
前記試験例1と同一の方法により外観及び風味(食感)試験を行った。
【0032】
3)試験結果
この試験の結果は表2に示すとおりである。表2から明らかなとおり、ラフィノースの混合割合の増加に従って、混合物水溶液の粘度が低下し、製造時の錠剤相互の付着が少なくなる傾向が認められ、得られた糖衣錠のコーティングが均一であり、風味(食感)も良好であった。従って、ラクチュロース1部及び1部のラフィノースからなる混合物の水溶液が、panコーティング法による糖衣製造状態及び得られた糖衣錠の状態を良好に維持し得る下限であることが判明した。
また、表2から明らかなとおり、ラクチュロース1部及びラフィノース10部からなる混合物の水溶液が、panコーティング法による糖衣製造においてラフィノース結晶粉末の発生が開始する限界であり、本発明の糖衣錠における糖衣基材としてのラクチュロース及びラフィノース混合物の望ましい上限であることが認められた。しかしながら、この上限は望ましい範囲であり、ラフィノース結晶粉末が発生しても、糖衣錠を製造できないことはないのである。
【0033】
【表2】
Figure 0004152591
【0034】
参考例1
グルコースを添加したABCM培地(栄研化学社製)を用いてビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)M−8201(微工研研寄第6548号)を、10代継代培養しのちグルコース、酵母エキス、ペプトン及びリン酸塩からなる合成倍地501に接種し、37℃の温度で14時間培養した。得られた培養物を遠心分離して集菌し、得られた菌液11にグルタミン酸(和光純薬社製)100g及び蔗糖50を水に溶解した分散媒500mlを添加し、凍結乾燥した。
得られた粉末菌体275gに、乳糖(和光純薬社製)2kg及び乾燥コーンスターチ(松谷化学工業社製)2.5kgを添加し、混合して分散し、ビフィドバクテリウム・ロンガムの粉末菌体約4.7kg(生菌数:110×10/g)を得た。
【0035】
参考例2
ストレプトコッカス・フェカーリス(Streptococcus faecalis)ATCC−19433を用いたことを除き、参考例1と同様の方法により、ストレプトコッカス・フェカリスの粉末菌体約4.0kg(生菌数:230×10/g)を得た。
【0036】
参考例3
ラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)ATCC−4356を用いたことを除き、参考例1と同様の方法により、ラクトバシラス・アシドフィラスの粉末菌体約4.5kg(生菌数:340×10/g)を得た。
【0037】
参考例4
リュウコノストック・クレモリス(Leuconostoc cremoris)ATCC−19254を用いたことを除き、参考例1と同様の方法により、リュウコノストック・クレモリスの粉末菌体約3.5kg(生菌数:50×10/g)を得た。
【0038】
発明を実施するための最良の形態
次に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1
参考例1と同一の方法により製造したビフィドバクテリウム・ロンガムの生菌末50kg、ラクチュロース(森永乳業社製)25kg、マルチトール(東和化成工業社製)21.6kg、グリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン社製)3kg及びヨーグルトフレーバー(長谷川香料社製)0.4kgを均一に混合し、回転テーブル型打錠機(畑鐵工所製)により打錠圧1トンで打錠し、1錠あたり約0.2gの三角形の中心錠49万錠を得た。
得られ中心錠をpan糖衣機(富士薬品機械社製。1500φ)に投入し、pan回転数6rpm、送風温度60℃、送風量10m/分、排風量15m/分の条件で、ラクチュロース1部及びラフィノース1.5部からなる混合物の50%水溶液を糖衣基剤としてpan内に導入し、糖衣処理を実施し、錠剤相互の付着が無く、約0.4gの三角形糖衣錠を得た。
得られた糖衣錠を試験例1と同一の方法により試験した結果、コーティングが均一であり、風味(食感)も良好であり、生菌数は25×10/gであった。
【0040】
実施例2
参考例2及び参考例3と同一の方法により製造した乳酸菌類菌末各25kg、ペプチド(森永乳業社製。CU2500)20kg、ラクチュロース(森永乳業社製)10kg、マルチトール(東和化成工業社製)17kg、シュガーエステル(第一工業製薬社製)3kgを均一に混合し、回転テーブル型打錠機(畑鐵工所製)により打錠圧1.5トンで打錠したこと、及びラクチュロース1部及びラフィノース1部からなる混合物の50%水溶液を糖衣基材として使用したことを除き、実施例1と同一の方法により1錠あたり約0.2gの三角形の糖衣錠48.8万錠を得た。
得られた糖衣錠を試験例1と同一の方法により試験した結果、コーティングが均一であり、風味(食感)も良好であり、生菌数は70×10/gであった。
【0041】
実施例3
参考例1及び参考例4と同一の方法により製造した乳酸菌類菌末各25kg、ラクトフェリン(森永乳業社製)10kg、ペプチド(森永乳業社製。CU2500)10kg、マルチトール(東和化成工業社製)27kg、グリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン社製)3kgを均一に混合し、回転テーブル型打錠機(畑鐵工所製)により打錠圧2トンで打錠したこと、及びラクチュロース1部及びラフィノース4部からなる混合物の50%水溶液を糖衣基材として使用したことを除き、実施例1と同一の方法により1錠あたり約0.2gの三角形の糖衣錠49.2万錠を得た。
得られた糖衣錠を試験例1と同一の方法により試験した結果、コーティングが均一であり、風味(食感)も良好であり、生菌数は20×10/gであった。
【0042】
実施例4
ラクトフェリン(森永乳業社製)80kg、マルチトール(東和化成工業社製)17kg、シュガーエステル(第一工業製薬社製)3kgを均一に混合し、回転テーブル型打錠機(畑鐵工所製)により打錠圧1トンで打錠したこと、及びラクチュロース1部及びラフィノース10部からなる混合物の50%水溶液を糖衣基材として使用したことを除き、実施例1と同一の方法により1錠あたり約0.2gの三角形の糖衣錠49.1万錠を得た。
得られた糖衣錠を試験例1と同一の方法により試験した結果、コーティングが均一であり、風味(食感)も良好であった。
【0043】
実施例5
ペプチド(森永乳業社製。CU2500)80kg、マルチトール(東和化成工業社製)17kg、グリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン社製)3kgを均一に混合し、回転テーブル型打錠機(畑鐵工所製)により打錠圧1.5トンで打錠したこと、及びラクチュロース1部及びラフィノース8部からなる混合物の50%水溶液を糖衣基材として使用したことを除き、実施例1と同一の方法により1錠あたり約0.2gの三角形の糖衣錠49.5万錠を得た。
得られた糖衣錠を試験例1と同一の方法により試験した結果、コーティングが均一であり、風味(食感)も良好であった。
【0044】
実施例6
ラクチュロース(森永乳業社製)97kg、グリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン社製)3kgを均一に混合し、回転テーブル型打錠機(畑鐵工所製)により打錠圧1トンで打錠したこと、及びラクチュロース1部及びラフィノース1.2部からなる混合物の50%水溶液を糖衣基材として使用したことを除き、実施例1と同一の方法により1錠あたり約0.2gの三角形の糖衣錠49.7万錠を得た。
得られた糖衣錠を試験例1と同一の方法により試験した結果、コーティングが均一であり、風味(食感)も良好であった。
【0045】
産業上の利用可能性
以上、詳記したとおり、本発明は、ラクチュロース及びラフィノースの混合物を有効成分として含有する糖衣基剤により中心錠を被覆してなる糖衣錠であり、本発明により奏せられる効果は、次のとおりである。
(1)従来糖衣基剤として用いられておらず、各種生理効果を有するラクチュロース及びラフィノースを使用した糖衣錠が提供される。
(2)ショ糖を使用した糖衣錠と同等の品質を有し、抗う蝕性の糖衣錠が提供される。
(3)摂取時の口腔内への付着、舌への違和感がなく、風味(食感)が良好であり、嗜好性にも優れた糖衣錠が提供される。

Claims (2)

  1. ラクチュロース及びラフィノースの混合物を有効成分として含有する糖衣基剤により中心錠を被覆してなる糖衣錠であり、前記糖衣基剤が、ラクチュロース1部(重量)及びラフィノース少なくとも1部(重量)の割合からなる混合物を含有する糖衣錠である医薬品製剤。
  2. 中心錠が、次のa)、b);
    a)ビフィドバクテリウム属に属する微生物、ラクトバシラス属に属する微生物、ストレプトコッカス属に属する微生物、ペディオコッカス属に属する微生物及びリュウコノストック属に属する微生物からなる群より選択される微生物の1種又は2種以上の微生物菌末、
    b)ラクトフェリン、ペプチド、及びラクチュロースからなる群より選択される物質の1種又は2種以上、
    のいずれか一方又は双方を有効成分として含有する請求項1に記載の糖衣錠である医薬品製剤
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