JP5202843B2 - ゴム強化ビニル芳香族ポリマー - Google Patents

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Description

発明の詳細な説明
本発明は、ゴム強化ビニル芳香族ポリマーに関する。
特に、本発明は、ビニル芳香族ポリマー又はコポリマーからなる硬質マトリックス及び上記マトリックス内に粒子の形態で分散されたゴム相を含み、厳密に二峰性(bimodal)分散又は形態を有する組成物に関する。本発明の明細書及び特許請求の範囲で使用される「厳密に二峰性の分布又は形態」の用語は、上記硬質ポリマーマトリックス内に無作為に分散される一連のゴム粒子を意味し、そのゴム粒子は、0.15〜0.25μmの平均体積寸法のカプセル又は「コア-シェル」構造を有する第一群の粒子(主要なモード群)及び1〜5μmの平均体積寸法のいわゆる「サラミ」構造を有する第二群の粒子(準主要(subvalent)なモード群)によって排他的に表される二峰性形態を有し、上記二群の間の中間的な構造又は寸法を有する粒子を完全に有さないことをいう。
ゴム、特に高衝撃ポリスチレン(HIPS)で強化されたビニル芳香族ポリマーの物理化学特性及び機械特性は、いくつかの因子によって決まり、その内、ポリマーマトリックス上にグラフト化されかつ架橋されたゴム粒子の寸法間があげられることは周知である。
耐衝撃性及び光沢、特にHIPSのような特定の特性は、一定のゴム濃度において、ゴム粒子の平均寸法及び直径分布によって逆の方法で、影響されることも既知である。特に、「大」粒子は、材料の耐衝撃性を光沢の損害に対して増加させるのに対し、「小」粒子は、靭性を減少させるが、材料を極めて光沢性とする。
ゴム強化ビニル芳香族ポリマーを得るための方法は、文献において、例えば、良好な耐衝撃性と同時に組み合わされた良好な光沢を有するゴム強化ポリスチレンを提案する。これらの方法の一つは、例えば、すでに存在する「小」ゴム粒子の大部分に限定的な数の「大」粒子のポリマーマトリックスを添加することを考える。得られた製品は、一般的に、二峰性粒径分布を有する高衝撃ビニル芳香族ポリマーとして定義される。
HIPSの場合において、この組み合わせは、優れた光沢と組み合わされた耐衝撃性を相乗的に有する製品に導く。
米国特許第4,153,645号明細書は、例えば、小ゴム粒子を含む50〜85質量%の高衝撃ポリスチレン(平均直径が約0.2〜0.9μm)と、大ゴム粒子を含む15〜50質量%の高衝撃ポリスチレン(平均直径が約2〜5μm)とを機械的に混合する(メルトブレンド)ことによって得られる、高特性バランスの高いHIPSを記載する。この特許によれば、2種のHIPSの混合によって得られた最終製品は、ブレンド法則を適用することにより予想されるよりも、他の物性のいかなる減少なしに、大きな衝撃及び曲げ耐性値を有する。
同一のタイプの方法(メルト-ブレンド)を使用して、米国特許第4,493,922号明細書は、60〜95質量%の直径が0.2〜0.6μmの「カプセル」粒子及び40〜50質量%の直径が2
8μmの「セル」及び/又は「コイル」形態を有する粒子から成る二峰性形態を有するHIPSを記載する。
米国特許第4,221,883号明細書、同第4,334,039号明細書、欧州特許第96,447号明細書、米国特許第4,254,236号明細書、欧州特許第15,752号明細書及び国際特許出願WO98/52985及びWO99/09080は、二峰性形態を有するHIPSを製造するためのいわゆる「スプリット-フィード重合」方法を記載し、光沢/衝撃平衡の改良を可能にする。この方法に従えば、小粒子の主要なモード群が、好適な組成を有する低粘度ポリブタジエンゴム又はブロックコポリマーのスチレン溶液を供給することにより、プレポリマー化(pre-polymerization)反応の反応器の2/3で製造される。高粘度ポリブタジエンゴムの第二スチレン溶液は、残りの1/3の反応器内に供給される。高粘度ポリブタジエンは、あらかじめ形成したプレポリマーと接触すると、迅速に相転移し、大粒子を形成し、不完全にグラフト化され、これは、寸法に関する範囲では容易に調節され得ない。
米国特許第5,240,993号明細書は、平行に配置された2つのプラグフロー反応器を使用する連続的な大量方法(mass process)に従い、ゴム相の二峰性分布を特徴とする、耐衝撃性ビニル芳香族ポリマーの調製のための方法(「平行重合」)を記載する。小粒子のゴム相を含む第一のプレポリマーは、二つの反応器の一方で調製されるが、大粒子のゴム相を含む第二のプレポリマーは、他の反応器で調製される。ポリマー流は、二つの反応器の出口で混合され、重合は、再びプラグフロー型のいわゆる仕上げ反応器の第三の反応器で完了する。
WO97/39040は、この方法の簡易化版を記載し、これによれば、大粒子は、良好なグラフト化効率及び精密な寸法制御を保証するような条件下で、高粘度ゴムの好適なスチレン溶液を供給することによってプレポリマー化反応器の最初の半分で製造される。大粒子プレポリマーは、予め第一反応器と直列に配置された反応器で製造された小粒子を有する第二プレポリマーとを同一反応器の後半で、好適な割合で混合される。
上記方法の欠点の一つは、以下を要求することである。
1.「メルトブレンド」の場合、混合工程が必要となりその結果、生成コストが増大するか又はそのようなものとして容易に販売され得ないHIPS成分の調製物を増加させる。
2.「パラレル重合」又は「スプリット-フィード重合」の場合、従来のHIPSを製造するために使用される一連の重合反応器を備える標準的なプラントと比較して、更に複雑な構成(並列な反応器プレ重合反応器ゴムの溶解の遅延した供給、仕切られたセプタムを有する反応器)を有しかつより一層洗練された制御システムを備えた工業プラントの開発及び構築が必要となる。
予備成形された製品を混合する間、強化ゴム粒子の二峰性分散を有するHIPSの調製のためのシステムに加えて、別の「化学的」方法が提供され、それは、反応供給物の配合について実施し、従来のHIPSに採用される同一の製造形態を使用することによってこれらの特定の形態が得られることを可能にする。
欧州特許第418,042号明細書は、例えば、強化ゴムビニル芳香族ポリマーの製造方法であって、粒子が、小(0.1-0.8μm)主要なモード群及び大(2-6μm)準モード群に加えて、さらに中間体寸法(0.8-2.0μm)を有する第三の粒子群を含む、「一般的な二峰性」分布又は広域分布を有する方法を記載する。二峰性分布の分子量を特徴とし、ASAPRENE 760Aの商標名の下で販売される中間シスポリブタジエンを有する分布が得られる。
欧州特許第731,016号明細書は、同様に、反応器の従来の配置において、中間シスかつ低粘度ポリブタジエンかつ高シスかつ高粘度ポリブタジエンから成るエラストマー相(スチレンに溶解された)を使用する二峰性形態を有するHIPSの製品を記載する。
欧州特許第726,280号明細書は、従来の反応器の配置及び高シスポリブタジエンゴムを伴うHIPS重合工程の間、好適な濃度の安定なニトロキシル基を導入することによって二峰性形態を有するHIPSの製造を記載する。
国際特許出願WO03/033559は、同様に、適当な濃度の官能化ナノ-複合性材料を従来の反応器配置を有するHIPS重合に導入することによって得られ得る擬二峰性形態を有するHIPSを記載する。ナノ複合性材料の機能は、大ゴム粒子の一部を小ゴム粒子に変換することである。
しかし、これらのすべての特許に提案される方法は、少なくともゴム粒子の「厳密に二峰性」形態でなく、「一般的に二峰性」又は単に「広がった」を提供するという欠点を有する。
最後に、欧州特許第620,236号明細書は、「厳密に二峰性の」形態のHIPSを得る方法を提案する。この方法によれば、大粒子を有する少量のHIPSを、小粒子の主要なモード群を製造するのに必要なポリブタジエンゴム又はスチレン-ブタジエンブロックコポリマーとともにスチレンに溶解する。得られる溶液は、従来のプラント構成によって重合される。全体的な重合の間、予備成形されたHIPSの架橋ゴム粒子は、逆転化を受けず、その構造と寸法を維持するのに対し、ポリブタジエンゴム又はスチレンブタジエンコポリマーは、対応する構造及び寸法の小粒子を形成する。
本件特許出願に提案される技術的な解決の基本的制限は、ゴムとともにスチレンに溶解され得る予備形成されたHIPS(5%未満)の最高割合によって示される。
出願人は、今や、ゴム粒子の厳密な二峰性分布を有する新規なゴム強化ビニル芳香族ポリマーを見出し、これは、既知の技術の製品の典型的な欠点を有さず、標準的な製産構成で得られ、また主に光沢及び耐衝撃性の点で、優れた物理機械特性を有する。
従って、本発明の目的は、厳密に二峰性形態を有するゴム強化ビニル芳香族(コ)ポリマーであって、55〜90質量%の硬質ポリマーマトリックスと、上記硬質ポリマーマトリックス中にグラフト化されかつ吸蔵された粒子の形態で分散された10〜45質量%のゴム相とからなり、上記ゴム粒子が、カプセル又は「コアシェル」形態を有する60〜99質量%、好ましくは70〜95質量%の粒子と、「サラミ」形態を有する1〜40質量%、好ましくは5〜30質量%の粒子とからなり、上記割合は上記ゴム粒子の質量のみに基づき測定されることを特徴とする(コ)ポリマーに関する。
本発明の明細書及び特許請求の範囲に使用される「ビニル芳香族(コ)ポリマー」の用語は、本質的に、下式
Figure 0005202843
(式中、Rは、水素又はメチル基を示し、nは、0又は1〜5の整数であり、及びYは、塩素又は臭素のようなハロゲン、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル又はアルコキシル基を表す。)
を有する少なくとも1つのモノマーの重合から得られる生成物を意味する。
上記式を有するビニル芳香族モノマーの例としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ブチルスチレン、ジメチルスチレン、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-及びペンタ-クロロスチレン、ブロモスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、等が挙げられる。スチレン及びα-メチルスチレンが、好ましいビニル芳香族モノマーである。
一般式(I)を有するビニル芳香族モノマーが、単独で又はコポリマー化し得る他のモノマーとともに配合されて使用され得る。コポリマー化し得るモノマーの量は、モノマーの混合物の合計に対し、40質量%まで、一般的に15〜35%であり得る。前記モノマーの例は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のC1-C4アルキルエステル、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、(メタ)アクリル酸のアミド及びニトリル、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、エチレン、ジビニルベンゼン、無水マレイン酸等である。コポリマー化し得る好ましいモノマーは、アクリロニトリル又はメチルメタクリレートである。
本発明に従って、コア-シェル粒子は、0.10〜0.30μm、好ましくは、0.15〜0.25μmの平均直径を有し、一方で、「サラミ」構造の粒子は、1〜5μm、好ましくは、2〜4μmの平均直径を有する。この粒子の直径(Dv)を以下の式
Dv=ΣNi(Di)4/ΣNi(Di)3
(式中、Ni及びDiは、直径Diを有する粒子の数Niを表す。)
によって評価した。
カプセル又は「コア-シェル」形態を有する、硬質ポリマーマトリックス内にグラフト化されかつ吸蔵された粒子の形態で分散されたゴム相を供給することが可能なエラストマー製品は、40〜100質量%の1,3-アルカジエンモノマー、例えば1,3-ブタジエン、及び0〜60質量%のスチレン、アクリロニトリル、α-メチルスチレン、メチルメタクリレート、エチルアクリレートから選択される1種以上のモノエチレン性不飽和モノマーを含む1,3-アルカジエンのホモポリマー及びコポリマーから選択される。
1,3-アルカジエンコポリマーの例は、スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、例えばS-B型の直鎖ジブロックゴムであり、ここで、Sは、平均分子量Mwが、5,000〜80,000のポリスチレンブロックを表し、Bは、平均分子量Mwが、2,000〜250,000のポリブタジエンブロックを表す。これらのゴムにおいて、Sブロックの量は、S-Bゴムの全体に対し10〜50質量%の範囲である。好ましい製品は、スチレン含有量が40質量%であり及び5質量%のスチレン溶液中23℃で測定した粘度が0.035〜0.05Pa・s(35〜50cP)であるスチレン-ブタジエンブロックコポリマーである。
「サラミ」形態を有し、硬質ポリマーマトリックス内にグラフト化されかつ吸蔵された粒子の形態で分散されたゴム相を提供することができるエラストマー製品は、カプセルゴム相を産生するエラストマー製品に非相溶性のオレフィン又は1,3-アルカジエンのホモポリマー又はコポリマーから選択される。上記非相溶性エラストマーを選択する基準は、「カプセル」ゴム粒子を生成するエラストマーのヒルデブラントの溶解パラメーター(δ)と、「サラミ」ゴム粒子を生成するエラストマーのヒルデブラントの溶解パラメーターとの差が0.5以上であることである。溶解パラメータに関する情報は、”CRC Handbook of Polymer-Liquid Interaction Parameters and Solubility Parameters” Allan F.M. Barton CRC Press Boca Raton, Bostonに見出され得る。
従って、40/60スチレン-ブタジエンコポリマー(δ=8.7)が、「カプセル」粒子を得るために使用される場合、「サラミ」ゴム粒子を得るために好適なエラストマーは、ポリイソブテン(δ=7.9)、ポリイソプレン-コ-イソブテン又はブチルゴム(δ=7.8)、ポリイソプレン(δ=8.2)、EPDMゴム(δ=8.05)である。好ましい製品は、上記のように測定される溶液粘度が0.1〜1Pa・s(100〜1000cP)であるポリイソプレンである。
従来の添加剤、一般的に従来のビニル芳香族(コ)ポリマー、例えば顔料、安定剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤などが、本発明の対象であるゴム強化(コ)ポリマーに添加され得る。
本発明のさらなる目的は、厳密に二峰性形態を有するゴム強化ビニル芳香族(コ)ポリマーの調製のための大量(mass)連続方法であって、55〜90質量%の硬質ポリマーマトリックス及び前記硬質ポリマーマトリックス内でグラフト化されかつ吸蔵された粒子の形態で、分散された10〜45質量%のゴム相とからなり、上記ゴム粒子が、60〜99質量%のカプセル又は「コア-シェル」形態の粒子と、1〜40質量%、好ましくは5〜30質量%の「サラミ」形態の粒子とから成り、上記方法が、以下の工程、
(i)溶解パラメーター(δ1)を有し、40〜100質量%の1,3-アルカジエンモノマー及び0〜60質量%の1種以上のモノ-エチレン性不飽和モノマーを含む1,3-アルカジエンのホモポリマー及びコポリマーから選択される3〜20質量%のゴムをと、δ12≧0.5の、溶解パラメーター(δ2)を有し、オレフィン又は1,3-アルカジエンのホモポリマー及びコポリマーから選択され、前記ゴムと非相溶性の0.05〜8.0質量%のゴムとを、本質的に少なくとも1種のビニル芳香族モノマーから成る液体中で溶解する工程、
(ii)任意に重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の存在下において、得られた溶液を50〜250℃で重合する工程、及び
(iii)得られたビニル芳香族(コ)ポリマーを回収する工程、
を含むことを特徴とする方法に関する。
本発明の目的の方法は、従来のゴム強化ビニル芳香族(コ)ポリマーの調製に通常使用される装置、例えば、操作条件が米国特許第2,727,884号明細書又は同第3,903,202号明細書などに記載されているPFRプラグフロー反応器又はCFSTR反応器を使用して連続的に実施し得る。
可能であれば、全体に対して5〜20質量%の量の不活性溶媒の存在下、前記ゴムをモノマーに溶解する。本発明の目的の方法に使用され得る不活性溶媒の例としては、重合温度で液体である芳香族炭化水素、例えば、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、又はその混合物が挙げられる。モノマー及び可能であれば溶媒の混合物におけるゴムの溶解が、100℃以下の温度で維持されるミキサーで実施される。
重合反応の間、この反応器は、この成分が、蒸発する圧力より高い圧力で維持される。
圧力は、通常、500〜5000hPa(0.5〜5バール)の範囲である一方で、温度は、好ましくは70〜150℃である。PFR反応器が使用される場合、温度は、異なる温度で加熱された2種以上のゾーンを有するように分配される。
使用される開始剤は、スチレンの重合に採用される従来の型、例えば、有機ペルオキシラジカル開始剤である。上記開始剤の例としては、過酸化ジベンゾイル、t-ブチルペロクトエート、t-ブチルペルベンゾエート、ジ-t-ブチルペルオキシド、1,1'-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1'-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキサン等が挙げられる。これらの開始剤は、モノマーに対して0.005〜0.5質量%の範囲の量で添加される。
連鎖移動剤は、さらにスチレン重合反応においても従来から使用される試薬であり、例えば、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン(TDM)、ラウリルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、シクロへキシルメルカプタン等のようなメルカプタンから選択される。これらの連鎖移動剤は、モノマーに対して、0.005〜0.5質量%の範囲の量を添加する。
一旦重合が終了すると、所望の変換度(65-95%)に到達した後、存在し得る溶媒及び未反応のモノマーを真空及び高温下(200-260℃)で除去し、一方で、得られたポリマーを押出し、冷却し、所望の直径のペレットに切断する。除去されたガス生成物を濃縮し又可能であれば再利用する。
上記とは別に、本発明の目的の方法を、大量懸濁(mass-suspension)方法のバッチ方法によって、バッチ-反応器型の攪拌されたオートクレーブを使用して、完全に等価な様式で実施し得る。
従って、さらなる本発明の目的は、厳密に二峰性形態を有するゴム強化ビニル芳香族(コ)ポリマーの調製のための大量懸濁方法であって、該(コ)ポリマーが、55〜90質量%の硬質ポリマーマトリックスと、前記硬質ポリマーマトリックス内でグラフト化されかつ吸蔵された粒子の形態で、分散された10〜45質量%のゴム相とからなり、前記ゴム粒子が、60〜99質量%のカプセル又は「コア-シェル」形態の粒子と、1〜40質量%、好ましくは5〜30質量%の「サラミ」形態の粒子から成り、上記方法が、以下の工程、
(i)溶解パラメーター(δ1)を有し、40〜100質量%の1,3-アルカジエンモノマー及び0〜60質量%の1種以上のモノ-エチレン性不飽和モノマーを含む1,3-アルカジエンのホモポリマー及びコポリマーから選択される3〜20質量%のゴムと、δ12≧0.5である、溶解パラメーター(δ2)を有し、オレフィン又は1,3-アルカジエンのホモポリマー及びコポリマーから選択され、前記ゴムと非相溶性の0.05〜8.0質量%のゴムとを、本質的に少なくとも1種のビニル芳香族モノマーから成る液体で溶解する工程、
(ii)可能であれば、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の存在下において、得られた溶液を、相変換が生じるまで、50〜250℃でプレポリマー化する工程、及び
(iii)懸濁剤の存在下、水相中の重合を完了する工程、
を含むことを特徴とする方法に関する。
この型の方法において、先述のものから選択されたゴムを可能であれば、不活性溶媒の存在下、全体に対して5〜20質量%の量で溶解される。
本発明の目的の方法に使用され得る不活性溶媒の例は、重合温度で液体である芳香族炭化水素、例えば、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、又はそれらの混合物である。モノマー混合物及び可能であれば溶媒におけるゴムの溶解を100℃以下の温度で維持された同一のプレポリマー化オートクレーブ(バッチ反応器)で実施される。
プレポリマー化反応の間、この反応器は、供給される成分が蒸発するよりも高い圧力で維持される。標準的に、圧力は、500〜5000hPa(0.5〜5バール)にわたり、一方で10〜100rpmの攪拌速度で、温度は、好ましくは70〜150℃である。使用される開始剤は、スチレンとスチレンとの重合に従来から採用されるもの、例えば前述の有機ペルオキシドラジカル開始剤である。これらの開始剤の例としては、ジベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオクトエート、t-ブチルペルベンゾエート、ジ-t-ブチルペルオキシド、1,1'-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1'-ジ-t-ブチル-ペルオキシシクロヘキサン等が挙げられる。これらの開始剤をモノマーに対して0.005〜0.5質量%の量で添加される。
連鎖移動剤は、さらに上記スチレンの重合において従来から使用されるものである。連鎖移動剤の例としては、例えばn-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン(TDM)、ラウリルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン等のようなメルカプタンから選択される。これらの連鎖移動剤は、モノマーに対して、0.005〜0.5質量%の範囲の量添加される。
一旦、相変換のプレポリマー化が実施されると、このポリマーを、バッチ型の第二オートクレーブに移動し、それを1種以上の懸濁剤、例えば塩化ナトリウム、ナフタレンナトリウムスルホネート及び/又はポリ-[(アクリル酸)-CO-(2-エチル-ヘキシル-アクリレート)]を含む水溶相(質量比1/1〜3/2の水/有機相)に懸濁し、可能であれば、ペルオキシ開始剤又はメルカプタン連鎖移動剤が添加され、モノマーからポリマーへの完全な変換が到達するまで100〜170℃の温度に加熱することによって、重合が完了する。最後に、ポリマーを従来の方法で回収する。
いくつかの実例となる例を本発明のより良い理解として以下に提供するが、決して本発明の範囲自体を制限するものでない。
(参考)
4.2kgのBUNA BL 6533 TC(バイエル社)スチレン-ブタジエン40/60コポリマー、0.90kgのPRIMOL 352(エッソ社)バセリン油及び24.9kgのスチレンモノマー中の30gのANOX PP 18 抗酸化剤を、50 リットルバッチオートクレーブ中において、アンカースターラーで85℃で5時間攪拌して溶解する。その後24gのTDM連鎖移動剤を添加し、プレポリマー化をグラフト化及び相転移しながら実施し、得られた溶液を5時間30分間、120℃で加熱及び攪拌する。120℃までの加熱の開始の後3時間〜5時間、プレポリマー化の間、TDMの3gの投与量を2回添加する。最後に、プレポリマーをヘリックススターラーで第二の100 リットルオートクレーブに移動し、NaCl(0.11質量%)、ナフタレンスルホネートナトリウム(0.31質量%)及びポリ-[(アクリル酸)-コ-(2-エチル-ヘキシル-アクリレート)](0.13質量%)を含む水性相(水/有機物比=1/1)に懸濁される。30gのジ-t-ブチルペルオキシドを添加し、攪拌しながら、1時間で120℃、2時間で140℃及び3時間で155℃で加熱することによって、ゴム相のモノマー及び架橋剤の全体の変換まで重合を実施する。最後にビーズの形態のポリマーを洗浄し、乾燥し及び押出機でペレット化する。透過型電子顕微鏡(TEM)によるポリマーの解析は、0.2μmの「カプセル」又は「コア-シェル」粒子を有するゴム相を示す(図1)。得られたポリマーのインジェクション試験サンプルの物理-機械特性が表1に示される。
BUNA BL 6533 TCコポリマー単独の代わりに、3.6kgのBUNA BL 6533 TCコポリマー及び0.6kgのポリイソプレンIR 2200L(日本ゼオン社製)からなるブレンドを使用するという差のみ有するが、実施例1を反復する。
透過型電子顕微鏡(TEM)を使用するポリマーの解析は、0.20μmの「カプセル」又は「コア-シェル」粒子及び2.0μmの「サラミ」粒子を含む「厳密に二峰性の」分布を有するゴム相を示す(図2)。得られるポリマーの注入試験サンプルにおける物理機械特性を表1に示す。
3.0kgのBUNA BL 6533 TCコポリマー及び1.2kgのポリイソプレンIR 2200L(日本ゼオン社製)からなるブレンドを使用することを除いて、実施例2を反復する。
透過型電子顕微鏡(TEM)を使用するポリマーの解析は、0.20μmの「カプセル」又は「コア-シェル」粒子及び2.2μmの「サラミ」粒子を含む「厳密に二峰性の」分布を有するゴム相を示す(図3)。得られるポリマーのインジェクション試験サンプルにおける物理機械特性を表1に示す。
Figure 0005202843
実施例1のポリマーの透過型電子顕微鏡(TEM)解析を示す。 実施例2のポリマーの透過型電子顕微鏡(TEM)解析を示す。 実施例3のポリマーの透過型電子顕微鏡(TEM)解析を示す。

Claims (11)

  1. 厳密に二峰性形態を有するゴム強化ビニル芳香族(コ)ポリマーの調製のための大量連続方法であって、55〜90質量%の硬質ポリマーマトリックス及び前記硬質ポリマーマトリックス内でグラフト化されかつ吸蔵された粒子の形態で、分散された10〜45質量%のゴム相とからなり、前記ゴム粒子が、60〜99質量%のカプセル又は「コア-シェル」形態の粒子と、1〜40質量%の「サラミ」形態の粒子とから成り、前記方法が、以下の工程、
    (a)40〜100質量%の1,3-アルカジエンモノマー及び0〜60質量%の1種以上のモノ-エチレン性不飽和モノマーを含む1,3-アルカジエンのホモポリマー及びコポリマーであって、溶解パラメーター(δ1)を有するホモポリマー及びコポリマーから選択される3〜20質量%のゴムと、オレフィン又は1,3-アルカジエンのホモポリマー及びコポリマーから選択され、前記ゴムと非相溶性であり、δ12≧0.5である、溶解パラメーター(δ2)を有する0.05〜8.0質量%のゴムとを、本質的に少なくとも1種のビニル芳香族モノマーから成る液体に溶解する工程、
    (b)得られた溶液を50〜250℃で重合する工程、及び
    (c)得られたビニル芳香族(コ)ポリマーを回収する工程、
    を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記工程(b)において、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の存在下において、前記得られた溶液を重合する請求項1に記載の方法。
  3. 厳密に二峰性形態を有するゴム強化ビニル芳香族(コ)ポリマーの調製のための大量懸濁方法であって、該(コ)ポリマーが、55〜90質量%の硬質ポリマーマトリックスと、前記硬質ポリマーマトリックス内でグラフト化されかつ吸蔵された粒子の形態で分散された10〜45質量%のゴム相とからなり、前記ゴム粒子が、60〜99質量%のカプセル又は「コア-シェル」形態の粒子と、1〜40質量%の「サラミ」形態の粒子とから成り、前記方法が、以下の工程、
    (i)溶解パラメーター(δ1)を有する、40〜100質量%の1,3-アルカジエンモノマー及び0〜60質量%の1種以上のモノ-エチレン性不飽和モノマーを含む1,3-アルカジエンのホモポリマー及びコポリマーから選択される3〜20質量%のゴムと、前記ゴムと非相溶性であり、δ12≧0.5である溶解パラメーター(δ2)を有するオレフィン又は1,3-アルカジエンのホモポリマー及びコポリマーから選択され、0.05〜8.0質量%のゴムを、本質的に少なくとも1種のビニル芳香族モノマーから成る液体に、溶解する工程、
    (ii)得られた溶液を、相変換が生じるまで、50〜250℃で予め重合する工程、及び
    (iii)懸濁剤の存在下、水相中の重合を完了する工程、
    を含むことを特徴とする方法。
  4. 前記工程(ii)において、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の存在下において、前記得られた溶液を、予め重合する請求項3に記載の方法。
  5. 前記ビニル芳香族モノマーが、一般式(I)、
    Figure 0005202843
    (式中、Rは、水素又はメチル基、nは、0又は1〜5の範囲の整数であり、Yは、塩素又は臭素のようなハロゲン、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル又はアルコキシル基を表す。)
    を有するモノマーから選択される請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. ゴムが、全体に対して5〜20質量%で前記モノマーに溶解される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記ゴムが、不活性溶媒の存在下において、前記モノマーに溶解される請求項6に記載の方法。
  8. モノマーブレンドと、前記不活性溶媒とにおけるゴムの溶解が、100℃以下の温度に保たれたミキサー内で実施される請求項7に記載の方法。
  9. 溶液中での(前)重合化反応の間、反応器を500〜5000hPa(0.5〜5バール)の範囲の圧力及び70〜150℃の温度に維持し、一方、懸濁重合反応の間、温度範囲が100〜170℃である請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 開始剤が、前記モノマーに対し、0.005〜0.5質量%の範囲の量で添加される請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記連鎖移動剤が、前記モノマーに対し、0.005〜0.5質量%の範囲の量で添加される請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
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