以下、本発明の第1実施形態であるビルトインコンロ1について、図面を参照して説明する。図1は、ビルトインコンロ1の斜視図である。図2は、受け皿60を引き出した状態のビルトインコンロ1の斜視図である。図3は、受け皿60をレール機構30から取り外した状態のビルトインコンロ1の斜視図である。図4は、図2に示すI−I線矢視方向断面図である。図5は、図1に示すII−II線矢視方向断面図である。なお、図1に示すビルトインコンロ1が本発明の「ガス調理器具」に相当する。
はじめに、ビルトインコンロ1の全体構造について概略的に説明する。図1に示すように、ビルトインコンロ1は、略直方体状の筐体2を備えている。筐体2の天面にはトッププレート4が設けられている。トッププレート4の左右両側には、ガスバーナ5,7が各々設けられ、それらガスバーナ5,7に挟まれる中央奥側には、とろ火用のガスバーナ6が設けられている。これらガスバーナ5,6,7の各中心部には、調理容器の底部に当接して、その底部温度を検知するための温度センサ5a,6a,7aが各々設けられている。ガスバーナ5,6,7の各上部周囲には、調理容器を載置するための五徳9,10,11が各々設けられている。
トッププレート4の後端側には、後述するグリル庫45(図4参照)に連通する排気口13が設けられている。排気口13には、複数の孔を有し、グリル庫45内からの炎のあふれを抑制するための一対の安全網14a,14bが設置されている。
筐体2の幅方向中央の内側には、筐体2の前後方向に長手を有し、被調理物を庫内で加熱するためのグリル庫45(図5参照)が組み込まれている。図2,図3に示すように、グリル庫45の前面には開口部8が形成され、該開口部8は、筐体2の正面中央に形成された矩形状の開口12の内側に配置されている。開口部8の上端部にはグリル庫45の左右方向に延びる支軸48が設けられ、その支軸48に対して開閉扉15が回動可能に軸支されている。これにより、開口部8は開閉扉15によって開閉される。開閉扉15の下方には、受け皿60をグリル庫45から引き出すための取手部材16が設けられている。なお、図4に示すグリル庫45が本発明の「調理庫」に相当する。
図2に示すように、受け皿60は、グリル庫45(図3参照)内に設けられたレール機構30によって、グリル庫45の内側と外側との間をスライド可能に支持されている。よって、取手部材16を手前に引くと、その取手部材16の裏側に連結された受け皿60が庫外にスライドして引き出されるようになっている。この受け皿60には焼き網27が載置されている。よって、受け皿60を庫外に引き出した状態において、焼き網27上に被調理物を載せたり、焼き網27上に載せられた被調理物を取り出すことができる。さらに、本実施形態では、図3に示すように、受け皿60はレール機構30に対して着脱可能である。よって、加熱調理後に、受け皿60をレール機構30から取り外すことによって、受け皿60に載せられた被調理物を所望の場所にそのまま運ぶことができる。
また、グリル庫45には、レール機構30による受け皿60のスライド動作に連動して、開閉扉15を開閉させるための扉連動機構50(図4参照)が設けられている。この扉連動機構50によれば、図4,図5に示すように、受け皿60を庫内に収納することで開閉扉15は自動的に閉じられ、その反対に、受け皿60を庫外に引き出すことで開閉扉15が自動的に開かれる。なお、レール機構30の構造、レール機構30に対する受け皿60の着脱構造、および扉連動機構50の構造については後述する。
ところで、図1,図2に示すように、筐体2の正面左側には、ガスバーナ5を点火するための点火スイッチ17が設けられている。その点火スイッチ17の右隣りには、ガスバーナ6を点火するための点火スイッチ18が設けられている。さらに、グリル庫45の開閉扉15を挟んで、筐体2の正面右側には、ガスバーナ7を点火するための点火スイッチ20が設けられている。その点火スイッチ20の左隣りには、グリル庫45の内側に設けられたグリルバーナ(図示外)を点火するための点火スイッチ19が設けられている。さらに、各点火スイッチ17〜20の上側には、対応する各バーナの火力をそれぞれ調節するための火力調節レバー21〜24が各々設けられている。
また、筐体2の正面左下であって、点火スイッチ17,18の下側には、ビルトインコンロ1を操作するための操作パネル25が回動可能に設けられている。未使用時には筐体2の内側に収納され、使用時には収納状態の操作パネル25を押下することで、筐体2の外側に回動されて操作可能となる。一方、筐体2の正面右下であって、点火スイッチ19,20の下側には、ビルトインコンロ1の電源を供給する乾電池を格納するための電池ボックス26が設けられている。
次に、レール機構30の構造について説明する。図4に示すように、レール機構30は、グリル庫45の左右の両側壁の各内面の下端部に沿って各々固定された一対の固定レール31と、該一対の固定レール31の内側に沿ってグリル庫45の前後方向にスライド可能に支持された一対の第1可動レール32と、該一対の第1可動レール32の内側に沿ってグリル庫45の前後方向にスライド可能に支持された一対の第2可動レール33とからなる。なお、図4では、一対の各レールのうち、右側の各レールについてのみ図示している。
そして、固定レール31と第1可動レール32とが互いにすれ違う間には、複数の小型ローラが並列してなるローラユニット(図示外)が配設されている。第1可動レール32と第2可動レール33とが互いにすれ違う間にも、同様のローラユニット(図示外)が配設されている。さらに、固定レール31の前端側には、第1ストッパ(図示外)が設けられている。第1可動レール32の後端側には、第1可動レール32が引き出された際に、第1ストッパに係止する第1係止部(図示外)が設けられている。これらにより、固定レール31から第1可動レール32が抜けるのを防止できる。
また、第1可動レール32の前端側には、第2ストッパ(図示外)が設けられている。第2可動レール33の後端側には、第2可動レール32が引き出された際に、第2ストッパに係止する第2係止部(図示外)が設けられている。これにより、第1可動レール32から第2可動レール33が抜けるのを防止できる。このような構成からなるレール機構30において、一対の第2可動レール32の前側には、受け皿60を着脱可能に保持するための正面視矩形状の保持枠40が組み付けられている。
ここで、保持枠40の構造について説明する。図3に示すように、保持枠40は、右側の第2可動レール32に固定された長尺状の右枠部41と、左側の第2可動レール32に固定された長尺状の左枠部42と、右枠部41の前端部と左枠部42の前端部との間に渡設された長尺状の前方枠部43と、右枠部41の後端部と左枠部42の後端部との間に渡設された長尺状の後方枠部44とからなる。これら右枠部41、左枠部42、前方枠部43、後方枠部44は、何れも長手方向に直交する断面が略L字状に形成されている。
そして、右枠部41及び左枠部42は、一対の第2可動レール32の上面を覆いつつ、第2可動レール32の内面に沿って略直角に屈曲されている。右枠部41について、前方枠部43の上面を覆う部分の外側の一端部であってグリル庫45の前方側には、扉連動機構50の後述する連結アーム53の一端部に軸支されたローラ55に当接して、グリル庫45の奥側に付勢するための当接部36が設けられている。
さらに、前方枠部43の左右方向中央の外側面には、取手部材16の裏面に設けられた後述する係止バネ90(図16,図17参照)に係止させるために、保持枠40の前方に突出する側面視コの字型に形成された係止部材120(図3,図16参照)が複数の固定ネジ106(図16参照)で固定されている。また、係止部材120の幅方向両側の上部には、上方に突出する位置決め片131,132(図3参照)が設けられている。これら位置決め片131,132は、受け皿60の後述する連結部材70に形成された後述する差込孔141,142に差し込まれるものである。
このような構成からなる保持枠40の内側に対して、受け皿60の底部が嵌ると共に、右枠部41及び左枠部42に対して、受け皿60の左右両縁部が載置されることによって、保持枠40に受け皿60が保持される。
このように、受け皿60は保持枠40に保持された状態で、レール機構30によってスライド移動するので、グリル庫45に対して受け皿60は接触しない。よって、受け皿60をグリル庫45に対して滑らかに出し入れできる。さらに、受け皿60がグリル庫45に擦れることで生じる摩擦音を生じないので、受け皿60の出し入れを静音化できる。また、受け皿60は、第1,第2可動レール32,33を介して固定レール31に沿って移動するので、グリル庫45内におけるスライド経路が決まっている。これにより、グリル庫45内で受け皿60がガタつくことが無く、スライド動作に不具合を生じないので、受け皿60の出し入れを滑らかにかつ安定して行うことができる。
次に、開閉扉15の開閉構造について、図6を参照して説明する。図6は、支軸48に軸支される開閉扉15の斜視図である。開閉扉15は、矩形状の本体枠95を備えている。本体枠95の略中央には矩形状の開口であるガラス窓部96が形成されている。本体枠95の左右両端部には、本体枠95の裏面に対して略直角に延設された側面視L字型の支持部97,98が設けられている。これら支持部97,98において、開閉扉15を上下方向に立てた状態の各上部には、支軸48が挿通される支軸挿通孔99が各々設けられている。それら支軸挿通孔99の各下方には、後述する連結アーム53の一端部を回動可能に軸支するための連結孔100が各々設けられている。そして、本体枠95に対して、その裏側からガラス窓部96を覆うようにして一枚のガラス板110が固定されている。
このような構成からなる開閉扉15において、支持部97,98の一対の支軸挿通孔99,99に対して支軸48が挿通される。そして、その支軸48の長手方向中央部が、グリル庫45の開口部8を形成する開口端の上端部に固定され、支軸48の長手方向両端部が、筐体2の開口12を形成する各内面に固定される。これにより、開閉扉15は支軸48に対して独立して回動する。
さらに、支軸48において、本体枠95の内側に相当する部分の左右両側には、コイル状のトルクバネ58が各々外挿されている。トルクバネ58の一端部に形成されたループ状の固定部58aは、本体枠59の支持部97,98の各内面に固定される。他方、トルクバネ58の他端部は支軸48に固定される。そして、固定部58aが略水平とした状態で、トルクバネ58の他端部が支軸48に対して固定される。つまり、開閉扉15が開いた状態が、トルクバネ58にトルクがかけられていない状態となる。そのため、開閉扉15の自重によって下方に回動しようとしても、トルクバネ58の付勢によって、開閉扉15の開かれた状態が保持される。そして、開閉扉15を閉じることによって、トルクバネ58にトルクがかかるようになっている。なお、図6に示すトルクバネ58が本発明の「付勢手段」に相当する。
次に、扉連動機構50の構造について説明する。図4に示すように、扉連動機構50は、開閉扉15の支持部97,98に各々設けられた連結孔100に一端側が回動可能に連結された連結アーム53と、該連結アーム53の他端部に設けられ、グリル庫45に向かって略直角に延設された長孔軸54と、該長孔軸54に軸支されたローラ55と、グリル庫45の左右の側壁46の下側にかつグリル庫45の前後方向に延設され、前記ローラ55をガイドするための長孔51とからなる。
連結アーム53はグリル庫45の前方に向かって膨出するように2カ所で曲げられている。長孔51は、連結アーム53の他端部をグリル庫45の奥側にガイドするために、グリル庫45の前側から奥側に向かって略水平に延設されている。さらにその奥側で上方に屈曲させることによって、開閉扉15の閉塞時における連結アーム53の他端部の移動を規制している。
次に、扉連動機構50の動作について説明する。図4に示すように、まず、受け皿60が庫外に引き出された状態では、開閉扉15はトルクバネ58の付勢によって開いた状態に保持されている。つまり、開閉扉15は上方に跳ね上がっているので、連結アーム53の他端部に軸支されたローラ55は、グリル庫45の側壁46に設けられた長孔51の前側まで引き戻された状態となっている。次いで、受け皿60をグリル庫45内に収納するために、取手部材16を筐体2に向かって押すことによって、受け皿60をグリル庫45の内側に向かってスライドさせる。すると、保持枠40に設けられた当接部36が、グリル庫45の長孔51に遊挿されたローラ55に当接する。
さらに、取手部材16を押し込むことによって、当接部36がローラ55をグリル庫45の奥側に付勢するので、ローラ55は長孔51の内縁に沿って転動する。そして、ローラ55がグリル庫45の奥側に移動することによって、連結アーム53の他端部がグリル庫45の奥側に引っ張られる。これに伴い、トルクバネ58の付勢に抗して、開閉扉15が引っ張られて下方に回動する。そして、受け皿60がグリル庫45内に収納され、取手部材16がグリル庫45の前方の開口端に当接した状態で開閉扉15は完全に閉じた状態(図5参照)となる。このとき、保持枠40の後方枠部44に固定された突起部38(図15参照)が、グリル庫45の背壁の内面下部に固定された保持ユニット(図示外)によって、左右両側から挟まれて挟持される。これにより保持枠40がグリル庫45内に固定される。
そして、受け皿60を庫外に引き出す場合は、上記説明した流れと逆である。図5に示すように、まず、取手部材16を手前に徐々に引き出すと、ローラ55に対する当接部36の付勢が無くなるので、当接部36が前側に移動するのに伴ってローラ55が前方に移動する。これは、トルクバネ58の付勢が支配的となるので、開閉扉15が押し上げられ、これに伴って連結アーム53の他端部に軸支されたローラ55がグリル庫45の前方に引っ張られるからである。こうして、図4に示すように、ローラ55から当接部36が離間して、受け皿60が庫外に引き出された状態では、開閉扉15は跳ね上げられ、グリル庫45の開口部8を完全に露呈した状態とすることができる。
また、本実施形態のビルトインコンロ1では、受け皿60をグリル庫45内にスライドさせるレール機構30を備えるのみならず、そのレール機構30から受け皿60が自由に取り外せる点についても特徴がある。そこで、受け皿60の具体的な形状と、その受け皿60をレール機構30に対して保持させる構造について以下説明する。
まず、受け皿60について、図7乃至図10を参照して説明する。図7は、取手部材16が連結された受け皿60の右側面図である。図8は、取手部材16が連結された受け皿60の平面図である。図9は、受け皿60の平面図である。図10は、受け皿60の正面図である。図7,図8に示すように、受け皿60は、焼き網27(図2参照)上に載せられた被調理物から落下する油、水、焦げ等を受けるものである。そして、その前側部分には取手部材16が着脱可能に連結されるようになっている。
図9に示すように、受け皿60は平面視長方形状に形成されている。その底部には、上方に隆起する平面視帯状の一対のリブ67,68が受け皿60の前後方向に設けられている。受け皿60の幅方向左右両端部には、外方に向かって略水平に延設され、受け皿60を保持する保持枠40の右枠部41及び左枠部42に対して、引っ掛けるための右方縁部61及び左方縁部62が各々設けられている。受け皿60の前後方向の前端側には、前方に向かって略水平に延設された前方縁部63が設けられ、後端側には、後方に向かって略水平に延設された後方縁部64が設けられている。前方縁部63には、焼き網27の脚部(図示外)を差し込んで位置決めるするための差込孔63aが設けられている。後方縁部64にも同様の差込孔64a,64bが各々設けられている。さらに、前方縁部63には、取手部材16を連結するための連結部材70が設けられている。
ここで、連結部材70の形状について説明する。図9,図10に示すように、連結部材70は、受け皿60の前方縁部63の裏面(下面)の左右両側に固定され、側面視略L字状に形成された一対の板状の支持部71,72と、該支持部71,72間に渡設され、直立して配置された正面視矩形状の本体部73と、該本体部73の下端部から受け皿60側に向かって斜め下方に延設されると共に、先端部が受け皿60の前方縁部63の下面に固定され、受け皿60から飛散する油等を受けるための傾斜部74とからなる。
図10に示すように、本体部73の上端部の略中央には、矩形状に形成された切り欠き部79が設けられている。これにより切り欠き部79の左右両側の部分は、上方に矩形状に突出する板状に形成され、それら各上端部には、さらに上方に向かって矩形状に突出する係止部77,78が各々設けられている。これら係止部77,78は、取手部材16の取手裏板81の裏面に設けられた後述する係止孔84,85(図13参照)に各々差し込んで係止させるものである。図9,図10に示すように、傾斜部74の幅方向略中央には、取手裏板81の裏面に固定された後述する係止バネ87を係止させるための矩形状の係止開口部75が設けられている。
また、図9,図10に示すように、傾斜部74の本体部73に連接する一端部近傍の左右両側には、一対の差込孔141,142が設けられている。これら差込孔141,142には、保持枠40の前方枠部43に固定された係止部材120の位置決め片131,132(図3参照)が下側から差し込まれるようになっている。
次に、取手部材16の構造について、図11乃至図14を参照して説明する。図11は、取手部材16の正面図である。図12は、取手部材16の右側面図である。図13は、取手部材16の背面図である。図14は、取手部材16の平面図である。図11に示すように、取手部材16は、正面視横長の長方形状に形成された板状の取手裏板81を備えている。取手裏板81の表面の中段には、略水平に延設されると共に、前方に向かって突出する取手部82が設けられている。その取手部82の下側には、取手部82の裏側に手を差し込むための凹部81aが形成されている。
図13に示すように、取手裏板81の裏面の幅方向両側の各上部には、上述した連結部材70の係止部77,78を差し込んで係止させるための係止孔84,85が各々設けられている。これら係止孔84,85の各下側には、係止部77,78を摺動させて下側から係止孔84,85にガイドするための凹部84a,85aが各々設けられている。他方、係止孔84,85の各上側には、係止孔84,85周囲の剛性を向上するためのリブ121,122が各々形成されている。さらに、これら係止孔84,85に挟まれる中央には、側面視略三角形状に隆起する隆起部86(図12参照)が設けられている。隆起部86の下側の傾斜面86aには、板バネで構成された係止バネ87が固定ネジ105(図17参照)で固定されている。
図12,図13に示すように、係止バネ87は側面視略L字型に形成されている。係止バネ87は、隆起部86の傾斜面に固定された矩形状の固定片88と、該固定片88の下端部から略直角に屈曲して斜め下方に延設されたバネ片89とからなる。バネ片89には、その先端側が一段高くなって形成された段部89aが形成されている。このような構成からなる係止バネ87では、バネ片89の弾性復帰力を利用して、受け皿60の連結部材70の傾斜部74に設けられた係止開口部75の縁部に対して段部89aを当ててロックさせるものである。
また、図13に示すように、係止バネ87の下方には、板バネで構成された係止バネ90が設けられている。係止バネ90は、取手裏板81の裏面に固定された固定片91と、該固定片91の下端部から受け皿60側に向かって側面視V字型sに屈曲するバネ片92とからなる。このような構成からなる係止バネ90では、バネ片92に対して、保持枠40の前方枠部43の外側面に固定された係止部材120(図16参照)が上側から当接して押し下げるようになっている。このときの係止バネ90に生じる弾性復帰力によって係止部材120がロックされる。
次に、上記構造からなる取手部材16を受け皿60に連結する方法について説明する。図4,図5に示すように、まず、取手裏板81の裏面に対して、受け皿60の前方縁部63に設けられた連結部材70を向けて、側面から見た状態が互いにハの字になるように位置させる。次いで、取手裏板81の裏面に形成された一対の凹部84a,85a(図13参照)に対して、連結部材70に形成された一対の係止部77,78(図10参照)を当てながら係止孔84,85(図13参照)に滑り込ませるように差し込んで係止させる。この状態で、受け皿60の後端側を下方に回動させる。すると、連結部材70の係止開口部75の内側に、取手裏板81の裏面に形成された隆起部86が位置する。さらに、係止開口部75の内縁部が、係止バネ87の段部89aに当接して外方に押し広げた状態で嵌る。このときに生じる弾性復帰力によって、係止開口部75の内縁部が、係止バネ87の段部89aに係止した状態となる。こうして、取手裏板81が受け皿60の連結部材70に確実に連結される。
なお、取手部材16を受け皿60から取り外す場合は、係止開口部75の内縁部に係止する係止バネ87の先端部を押し下げる。すると、バネ片89がしなると共に、段部89aが係止開口部75の内縁部から離脱する。この状態で、受け皿60の後端側を上方に回動させ、取手裏板81の係止孔84,85から、連結部材70に形成された一対の係止部77,78を引き抜く。このようにして、取手部材16を受け皿60の連結部材70から容易に取り外すことができる。
次に、取手部材16を連結させた受け皿60をレール機構30に固定する方法について説明する。図15は、保持枠40に受け皿60が保持された状態を示す図である。図16は、図15に示すIII−III線矢視方向断面図である。図17は、図16に示すIV−IV線矢視方向断面図である。
まず、上記したように、取手部材16を連結させた受け皿60(図8参照)を、保持枠40の内側に嵌め込む。このとき、図15に示すように、受け皿60の底部が嵌ると共に、右枠部41及び左枠部42に対して、受け皿60の左右両縁部が係止される。さらに、図15に示すように、保持枠40の係止部材120の位置決め片131,132に対して、連結部材70の傾斜部74に設けられた一対の差込孔141,142が差し込まれる。こうして、保持枠40に対して受け皿60が位置決めされて前後左右にずれることなく保持される。さらに、図15,図16に示すように、保持枠40の前方枠部43の外側面に固定され係止部材120の下側の略水平に突出する一端部に対して、取手裏板81の裏面に固定された係止バネ90の屈曲するバネ片92が上側から当接する。
さらに、係止バネ90が押し下げられることによってバネ片92がしなる。そして、バネ片92がしなった状態で係止部材120の一端部を通過することによって、バネ片92の弾性復帰力が生じ、図17に示すように、係止部材120を下側から上方に付勢する。即ち、係止部材120が係止バネ90によってロックされるのである。これにより、受け皿60を保持枠40に保持させることに加え、取手裏板81を保持枠40に対してロックさせることができるので、受け皿60をレール機構30に対して確実に保持させることができる。なお、受け皿60を取り外す際は、取手部材16を上方に引き上げれば、係止バネ90のバネ片92がしなるので、係止部材120から容易に離脱させることができる。
なお、以上の説明において、係止バネ90が本発明の「係合部」に相当し、係止部材120が本発明の「被係合部」に相当する。
以上説明したように、第1実施形態のビルトインコンロ1によれば、第1の特徴として、受け皿60はグリル庫45に設けられたレール機構30によって、グリル庫45の内外をスライド可能に支持されている。レール機構30は、グリル庫45の両側壁に固定された固定レール31と、固定レール31に沿ってスライドする第1可動レール32と、第1可動レール32に沿ってスライドする第2可動レール33とからなる。受け皿60は第2可動レール33に保持されている。よって、取手部材16を手前に引けば受け皿60が庫外に滑らかにスライドするので、受け皿60の出し入れ時に生じる音を軽減でき、かつ使い勝手が向上する。
第2の特徴として、受け皿60は、レール機構30の第2可動レール32に固定された保持枠40に対して、受け皿60が着脱可能に保持されている。これにより、例えば、加熱が済んだ後で、受け皿60を保持枠40から取り外すことによって、被調理物を受け皿60に載せたままの状態でテーブル等に運搬することができる。さらに、加熱調理器具とは異なる場所で、被調理物を受け皿に載せ、その受け皿をレール機構30にセットすることもできる。また、受け皿60と取手部材16とを一体に保持枠40から取り外すことができるので、熱い状態のままで取り外すことが可能である。さらに、受け皿が熱い状態のままで洗浄できるので清掃が容易である。
第3の特徴として、受け皿60の前端部には取手部材16が着脱可能に連結されている。これにより、例えば、加熱調理後に、受け皿60を庫外に引き出した状態で、取手部材16を取り外すことによって、焼き網27上に載せられた被調理物を容易に取り出すことができる。また、受け皿60を保持枠40から取り外し、テーブル等に運搬した後で取手部材16を取り外せば、受け皿60を食器としてそのまま利用することができる。
第4の特徴として、グリル庫45には受け皿60のスライド移動に連動して、開閉扉15を開閉させる扉連動機構50が設けられている。これにより、受け皿60を庫内に収納すれば開閉扉15は閉じられ、庫外に引き出せば自動的に開かれるので、さらに使い勝手が向上する。庫外に引き出せば自動的に
第5の特徴として、開閉扉15を開く方向に付勢するトルクバネ58が支軸48に外挿されている。トルクバネ58が発生する力の方向と、開閉扉15の回転方向とをほぼ同じにすることができるので、開閉扉15を開いた状態に保持することができる。また、トルクバネ58は、支軸48に外挿された状態でトルクを発生できるので、他部品に接触せず、開閉扉15の開閉について静音化することができる。
次に、本発明の第2実施形態であるビルトインコンロ150について、図18乃至図22を参照して説明する。図18に示すビルトインコンロ150は、第1実施形態の変形例であり、保持枠140に対して受け皿60を間違いなく取り付けることができる案内構造を、保持枠140(図19参照)に備えたものである。なお、本実施例では、保持枠140に設けた案内構造についてのみ説明し、第1実施形態と構造が同じ部分については同符号を付して説明する。
上述したように、第1実施形態のビルトインコンロ1は、受け皿60の出し入れに応じて、開閉扉15を開閉させる扉連動機構50(図4参照)を備えたものであるが、図18に示すように、ビルトインコンロ150は、取手部材16に開閉扉15を固定した一般的なものである。
ビルトインコンロ150では、第1実施形態と同構造のレール機構30の一対の第2可動レール33,33(図20参照)に、保持枠140を取り付けている。保持枠140には、受け皿60が保持され、その受け皿60上に焼き網27が載置されている。
図19に示すように、保持枠140は、右側の第2可動レール(図示外)を上方、右方、左方から取り囲む右カバー部143と、左側の第2可動レール33を同様に取り囲む左カバー部144(図21参照)と、右カバー部143の前端部及び左カバー部144の前端部の間に渡設した前方枠部145と、右カバー部143の後端部及び左カバー部144の後端部の間に渡設した後方枠部146とから構成されている。
なお、図21に示すように、右カバー部143(図19参照)及び左カバー部144は、レール機構30が収縮した状態では、固定レール31、第1可動レール32及び第2可動レール33の全てを内側に格納できるようになっている。これにより、加熱状態では、焼き網27上の被調理物から出る油等がレール機構30にかかるのを防止できる。これら右カバー部143及び左カバー部144が本発明の「覆い部」に相当する。
図22に示すように、右カバー部143の上面の前側及び後ろ側には、略半球状に突出する支持突起151が各々形成されている。左カバー部144の前側及び後ろ側にも、同形状の支持突起151が各々形成されている。これら4つの支持突起151に受け皿60の縁部の下面が当接して受け皿60が支持されることによって、グリル庫45内における上下方向の位置決めができる。さらに、受け皿60の縁部の下面が、右カバー部143の上面及び左カバー部144の上面に密着しないので、受け皿60の放熱効果を得ることもできる。
また、図22に示すように、右カバー部143の内側の面(左側面)の後方側には、保持枠140の内側に向けて突出する略半球状の突起152が設けられている。左カバー部144の内側の面(右側面)の後方側にも、保持枠140の内側に向けて突出する略半球状の突起152が設けられている。これら突起152,152は、受け皿60の左右両側面に各々当接することにより、受け皿60の左右方向のずれを無くすことができる。
また、図19に示すように、板状の前方枠部145は垂直に取り付けられ、その上端部の左右両側に一対の位置決め片155,155を備えている。位置決め片155,155は、第1実施形態の位置決め片131,132(図3参照)と同じものである。これら位置決め片155,155は、取手部材16に設けた連結部材70の傾斜部74(図8参照)に設けた差込孔141,142に差し込まれる。これにより、保持枠140に対して受け皿60が位置決めされて前後左右にずれることなく保持される。なお、差込孔141,142は、連結部材70ではなく、受け皿60の前方縁部63に設けてもよく、両方に各々設けてもよい。
また、図22に示すように、後方枠部146は、前方が開口する断面略Uの字型(図20参照)に形成されている。後方枠部146の上面を構成する板部材の前端部には、後方に向かって一段窪んだ後方規制部148が形成されている。後方規制部148には、受け皿60の後方の面が当接するようになっている。これにより、保持枠140における受け皿60の後方位置を規制することができる。
こうして、上記した支持突起151、突起152、位置決め片155、後方規制部148を有する案内構造によって、保持枠140に対して受け皿60を間違いなく確実に取り付けることができる。
なお、本発明に係るガス調理器具は、上記第1,第2実施形態に限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々変形してもよい。例えば、保持枠40に対する受け皿60の保持構造については上記実施形態に限定されない。