以下に、本発明の圧電発振子について添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は本発明の圧電発振子の実施の形態の一例を示す外観斜視図であり、図2は図1の圧電発振子10のA−A’線断面図である。
これらの図に示す圧電発振子10は、基本的な構成として、容量基板2上に搭載された圧電素子1が、容量基板2と圧電素子1を覆うように容量基板2に取着されたケース3で封止されたものとなっている。
圧電素子1は、例えば、第1圧電基板1cの上下面に第1振動電極1aおよび第2振動電極1bが被着されて構成されている。第1圧電基板1cは、例えば、長さが0.4mm〜4mm程度、幅が0.2mm〜3mm程度、厚みが40μm〜1mm程度の四角形状の平板として形成され、厚み方向、幅方向もしくは長さ方向に分極処理されたものである。第1圧電基板1cの材料としては、例えば、チタン酸鉛,チタン酸ジルコン酸鉛,ニオブ酸ナトリウム,ニオブ酸カリウム,ビスマス層状化合物等を基材とする圧電セラミックスや、水晶,タンタル酸リチウム,ニオブ酸リチウム等の圧電単結晶を用いて形成することができる。
第1振動電極1aは、この例では第1圧電基板1cの上面の中央部分から一方の端部にわたる領域に形成されたものであり、第2振動電極1bは、この例では第1圧電基板1cの下面の中央部分から他方の端部にわたる領域に形成されたものである。第1振動電極1aおよび第2振動電極1bの材料としては、例えば、金,銀,銅,アルミニウム等の金属を用いることができ、それぞれ第1圧電基板1cの表面に0.1μm〜3μm程度の厚みに被着される。このような圧電素子1は、両端部から第1振動電極1aおよび第2振動電極1b間に電圧を印加したとき、第1振動電極1aと第2振動電極1bとが対向する領域において、特定の周波数で厚み縦振動もしくは厚みすべり振動の圧電振動を発生させる。
ケース3は、容量基板2とともに形成した空間に収納している圧電素子1を外部からの物理的な影響や化学的な影響から保護する機能と、容量基板2とともに形成した空間内への水等の異物の浸入を防ぐための気密封止機能を有している。このようなケース3の材料としては、例えば、樹脂,ガラス,セラミックス等を用いることができる。本発明の圧電発振子10においては、ケース3にはエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂材料を用いており、さらに、無機フィラーを25〜80質量%の割合で含有させて容量基板2との熱膨張係数の差を小さくして、温度変化によってケース3と容量基板2との間に生じる熱膨張・熱収縮の差を小さくすることにより、信頼性を向上させている。
次に、図3(a)は図1の圧電発振子10のケース3を下方から見た外観斜視図であり、図3(b)は図1の圧電発振子10からケース3を取り除いた状態の外観斜視図である。図2および図3(b)に示すように、本例の圧電発振子10においては、前述の圧電素子1が、両方の端部に形成された導電性接続材7a,7bを用いて容量基板2の上面に形成された第1容量電極2aおよび第2容量電極2bと電気的に接続され、かつ固定されたものとなっている。
導電性接続材7a,7bは、容量基板2と圧電素子1との間に介在することによって、容量基板2の上面と圧電素子1との間に所定の空間(間隙)を確保する機能も有している。このような導電性接続材7a,7bとしては、例えば半田や導電性接着剤等が用いられ、例えば、半田であれば、銅,錫,銀からなる鉛を含まない半田材料等を用いる。また導電性接着剤であれば、銀,銅,ニッケル等の導電性粒子を75〜95質量%含有したエポキシ系の導電性樹脂等を用いる。また、弾性に優れる点から、シリコーン系の樹脂からなる導電性樹脂等も好適に用いられる。
容量基板2は、第2圧電基板2cの一方の主面(本例では上面)に第1容量電極2aおよび第2容量電極2bがそれぞれ被着され、第2圧電基板2cの他方の主面(本例では下面)に、第1容量電極2aと第2容量電極2bとにまたがって対向するグランド電極6が被着された構造となっている。
本例のように第1容量電極2aおよび第2容量電極2bとグランド電極6とが第2圧電基板2cを介して対向する場合は、第1容量電極2aおよびグランド電極6が対向する領域と第2容量電極2bおよびグランド電極6が対向する領域とは、面積が等しくなるように設定されることにより、それぞれの対向する領域で得られる静電容量が等しくなる。また、第1容量電極2aおよび第2容量電極2bとグランド電極6とが第2圧電基板2cを介して対向する場合は、第1容量電極2aおよびグランド電極6が対向する領域と第2容量電極2bおよびグランド電極6が対向する領域とを大きくできるので、容量を大きく形成することができる。なお、それぞれの対向する領域で得られる静電容量は、圧電発振子10が接続されてともに発振回路を構成する増幅回路素子の特性によって定められる。
第1容量電極2aおよび第2容量電極2bには、第1容量電極2aおよび第2容量電極2bの中央側の側辺部から容量基板2の中央部に向かって伸びる容量形成部2eが設けられており、この容量形成部2eが容量基板2の下面中央に形成されたグランド電位のグランド電極6との間で静電容量を得られるように構成されている。なお、このグランド電位のグランド電極6は、第2圧電基板2cの側面に到達して厚み方向に伸びるように容量基板2の側部に形成された側部グランド電極6aと電気的に接続されている。
図4は本例の圧電発振子10の等価回路図である。図4に示すように、本例の圧電発振子10は、圧電素子1(圧電共振子)の両端に容量基板2においてグランドとの間で静電容量が形成された容量素子が接続されて圧電共振回路が構成されており、例えば、通信機器や電子機器に用いられるマイクロコンピュータのクロック源に用いる発振部品とすることができる。
本例の圧電発振子10においては、容量基板2を構成する第2圧電基板2cは、例えば、長さが0.6mm〜5mm程度、幅が0.5mm〜4mm程度、厚みが0.05mm〜1mm程度の四角形状の平板として形成された、誘電率が高い基板である。第2圧電基板2cの材料には、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛,ニオブ酸ナトリウム,ニオブ酸カリウム,ビスマス層状化合物等を基材として分極処理を行なった圧電セラミックスを用いることができる。
本例の圧電発振子10においては、第1容量電極2a、第2容量電極2bおよびグランド電極6は、グランド電極6が、第2圧電基板2cの他方の主面に第1容量電極2aと第2容量電極2bとにまたがって対向して被着されている。このように第1容量電極2a,第2容量電極2bおよびグランド電極6を形成することにより、第1容量電極2aおよび第2容量電極2bとグランド電極6との間で必要な容量を形成しながら、第2圧電基板2cの他方の主面(下面)に比較的広い面積で形成されるグランド電極6を実装用の電極として用いることができ、十分な強度で強固に実装することが容易な圧電発振子10になる。
また、第1容量電極2a,第2容量電極2b,グランド電極6の材料としては、金,銀,銅,アルミニウム等の金属粉末を樹脂中に分散させてなる導電性樹脂や、それら金属粉末にガラス等の添加物を加えて焼き付けた厚膜導体等を用いることができる。例えば、導電性フィラーとして金,銀,銅,ニッケル等の金属粉末をエポキシ樹脂中に分散させた導電性樹脂ペーストを準備しておいて、この導電性樹脂ペーストを第2圧電基板2cに対して上下面の所定の部位に、例えばスクリーン印刷法やローラー転写法等を用いて塗布した後に、加熱や紫外線照射により樹脂を硬化させることによって形成することができる。
本例の圧電発振子10によれば、第1圧電基板1cの表面に第1圧電基板1cを挟んで互いに対向する第1振動電極1aおよび第2振動電極1bが被着されてなる圧電素子1と、第2圧電基板2cの一方の主面に第1容量電極2aおよび第2容量電極2bがそれぞれ被着され、他方の主面に、第1容量電極2aおよび第2容量電極2bとの間で容量を形成するためのグランド電極6が被着された容量基板2とを備え、容量基板2に圧電素子1が導電性接続材7a,7bを介して搭載されることによって容量基板2に対して圧電素子1がその周囲に振動のための空間を確保して配置され、第1容量電極2aと第1振動電極1aとが導電性接続材7aを介して、および第2容量電極2bと第2振動電極1bとが導電性接続材7bを介してそれぞれ電気的に接続されていることから、圧電素子1の入力側の端子(例えば第1振動電極1a)と出力側の端子(例えば第2振動電極1b)とを同電位に保ちつつ、容量基板2の第1容量電極2aおよび第2容量電極2bとグランド電極6との間に電位差が発生するように電圧を印加できるので、圧電素子1の第1圧電基板1cの圧電材料の分極度に影響を与えることなく容量基板2中の第1容量電極2aおよび第2容量電極2bとグランド電極6とが容量を形成する容量形成部2eのみの第2圧電基板2cの圧電材料に分極度を変化させることが可能となるため、容量形成部2eの分極度を変化させることによって誘電率を変化させて容量値を変化させることができ、それにより圧電素子1の特性を変化させることなく圧電発振子10の発振周波数を調整することができる。
また、本例の圧電発振子10によれば、圧電素子1が容量基板2の一方の主面に導電性接続材7a,7bを介して搭載されるときには、容量基板2と圧電素子1とを導電性接続材7a,7bを介して微小な間隙を有して振動のための空間を確保した状態で積み重ねて一体化できるので、圧電素子1の搭載面積を小さくすることができ、効率的な小型化が可能である。
なお、本例の圧電発振子10においては、導電性接続材7a,7bを介さずに圧電素子1と容量基板2とを電気的に接続する構造としては、例えば第2振動電極1bが第1圧電基板1cの端部の上面に回りこんで形成されたものとし、第1圧電基板1cの下面の両端部を容量基板2の上面と絶縁性の接合部材で固定して、第1圧電基板1cの上面の第1振動電極1aおよび第2振動電極1bを第1容量電極2aおよび第2容量電極2bとワイヤボンディングにより接続する構造がある。
また、本例の圧電発振子10によれば、第1圧電基板1cおよび第2圧電基板2cが同じ強誘電体材料からなるときには、第1圧電基板1cと第2圧電基板2cとの熱膨張係数が等しいものとなり、第1圧電基板1cおよび第2圧電基板2cに加わる熱量の変化によって第1圧電基板1cおよび第2圧電基板2cが膨張・収縮しても両圧電基板1c・2c間の膨張量・収縮量が等しくなり、第1圧電基板1cおよび第2圧電基板2c間の応力を小さく抑えることができるので、第1圧電基板1cと第2圧電基板2cとに異なる強誘電体材料を用いた場合に比べて、熱履歴による破損が少なく信頼性の高い圧電発振子10となる。
このように第1圧電基板1cおよび第2圧電基板2cの材料を同じ強誘電体材料(圧電材料)とし、第1圧電基板1cと第2圧電基板2cとの熱膨張係数を等しくすることで、信頼性が高く、かつ高周波領域の共振特性を重視する場合には、第1圧電基板1cは高周波領域の共振特性に優れるチタン酸鉛(PT)が好適であり、第2圧電基板2cにもチタン酸鉛(PT)を用いる。第1圧電基板1cと第2圧電基板2cとに同じ強誘電体材料を用いることにより、第1圧電基板1cと第2圧電基板2cとの間に熱履歴によって発生する応力を小さく抑えることができる。
また、容量基板2で高い静電容量を必要とするのであれば、例えば第1圧電基板1cには高周波領域での共振特性に優れる材料であるチタン酸鉛(PT)を用い、第2圧電基板2cには比誘電率の高いチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの強誘電体材料を用いるのが適当である。
本例の圧電発振子10においては、第2圧電基板2cの上面に形成された第1容量電極2aおよび第2容量電極2bには、それぞれ第2圧電基板2cの側面へ最短距離で到達する延出部2dが設けられ、延出部2dが容量基板2の側面に形成された入出力端子電極2fと電気的に接続されている。これにより、第2圧電基板2cの上面に形成された第1容量電極2aは、延出部2dおよび入出力端子電極2fを介して、第2圧電基板2cの下面に形成された第1実装電極4と最短距離で接続され、第2圧電基板2cの上面に形成された第2容量電極2bは、延出部2dおよび入出力端子電極2fを介して、第2圧電基板2cの下面に形成された第2実装電極5と最短距離で接続されるため、第1容量電極2aと第1実装電極4とを、および第2容量電極2bと第2実装電極5とをそれぞれ低インダクタンスかつ低抵抗で接続することができる。また、上述のように構成した圧電発振子10を実装する際には、ワイヤボンディング等を用いることなく第1実装電極4および第2実装電極5によって表面実装することができるので、圧電発振子10を実装する電子回路や回路モジュール等の製造工程を簡略化することができる。
また、容量基板2の下面には、第2圧電基板2cを間に挟んで第1容量電極2aの延出部2dと略対向する領域に位置して第1実装電極4が被着されており、容量基板2の厚み方向に伸びるように容量基板2の側面に形成された入出力端子電極2fおよび延出部2dを介して、第1容量電極2aと電気的に接続されている。
また、容量基板2の下面には、第2圧電基板2cを間に挟んで第2容量電極2bの延出部2dと略対向する領域に位置して第2実装電極5が被着されており、容量基板2の厚み方向に伸びるように容量基板2の側面に形成された入出力端子電極2fおよび延出部2dを介して、第2容量電極2bと電気的に接続されている。
本例の圧電発振子10によれば、このように第2圧電基板2cの他方の主面(下面)に、第1容量電極2aに電気的に接続された第1実装電極4および第2容量電極2bに電気的に接続された第2実装電極5が被着されていることから、圧電発振子10を回路基板等の実装基板に実装する際に、実装基板等との電気的接続のためにワイヤボンディング等を用いることなく第1実装電極4および第2実装電極5によって表面実装できるので、この圧電発振子10を実装する電子回路や回路モジュール等の製造工程を簡略化することができる。また、第2圧電基板2cの他方の主面(下面)に形成されている第1実装電極4および第2実装電極5とグランド電極6とによって実装基板上に表面実装される場合には、実装基板上に強固に固定されることとなるので、これにより、第2圧電基板2cに圧電材料を用いたことにより生じる圧電振動を小さく抑えることができる。これにより、圧電素子1に生じている圧電振動に、容量基板2で生じる圧電振動が重なる場合でも、圧電発振子10の異常発振を抑制することができる。
なお、容量基板2(第2圧電基板2c)の下面に形成された第1実装電極4および第2実装電極5ならびにグランド電極6は、特に導電性樹脂を用いて形成されているときには、外部回路を構成する回路基板等から容量基板2に加わる応力をこれら電極によって緩和して容量基板2を不測の破壊等から保護する機能を持たせることができるので、信頼性の点で好ましいものとなる。
以上のような本発明の圧電発振子は、例えば、以下のような方法により製造することができる。
最初の工程では、圧電素子1および容量基板2を準備する。
第1圧電基板1cおよび第2圧電基板2cは、例えば、原料粉末にバインダを加えてプレスする方法、あるいは原料粉末を水や分散剤と共にボールミルを用いて混合した後に乾燥し、バインダ,溶剤,可塑剤等を加えてドクターブレードを用いて成型する方法等によってグリーンシート状として、これを1100℃〜1400℃程度のピーク温度で焼成して基板を形成した後に、25℃〜200℃程度の温度にて厚み方向に1kV/mm〜6kV/mm程度の電圧をかけて分極処理を施すことによって形成する。
第1圧電基板1cの上下面に形成される第1振動電極1aおよび第2振動電極1bは、例えば、真空蒸着法,PVD法,スパッタリング法等を用いて第1圧電基板1cの上下面に金属膜を被着し、厚みが1μm〜10μm程度のフォトレジスト膜をそれぞれの金属膜上にスピンコート法等を用いて形成した後に、フォトエッチングによってパターニングすることによって、第1圧電基板1cの上下面に形成する。これにより圧電素子1を作製し準備する。
第1容量電極2aおよび第2容量電極2b,第1実装電極4および第2実装電極5,グランド電極6は、導電性樹脂を用いる場合であれば、例えば、導電性フィラーとして銀,銅,ニッケル等の金属粉末を75〜95質量%程度の量でエポキシ樹脂中に分散させた導電性樹脂ペーストを準備しておいて、この導電性樹脂ペーストを第2圧電基板2cに対して上下面の所定の部位に、例えばスクリーン印刷法やローラー転写法等を用いて塗布した後に加熱や紫外線照射により樹脂を硬化させることによって形成することができる。これらの電極の厚みは、例えば10μm〜60μm程度とすればよい。また、半田付け性向上のために、これら電極の表面に銅,ニッケル,錫,金等を用いてメッキ膜を被着してもよい。以上のようにして容量基板2を作製し準備する。
次の工程では、容量基板2上に、導電性接着剤からなる導電性接続材7a,7bを用いて圧電素子1を搭載する。
導電性接続材7a,7bは、金属粉末を樹脂中に分散させてなる接着剤を用いて、この導電性接着剤をディスペンサ等を用いて第1容量電極2aおよび第2容量電極2b上に塗布しておいて、この上に、第1容量電極2a上の導電性接続材7aに第1振動電極1aを、第2容量電極2b上の導電性接続材7bに第2振動電極1bをそれぞれ接続するように圧電素子1を載せ、加熱または紫外線照射により導電性接着剤の樹脂を硬化させる。このとき、導電性接着剤が硬化する前の状態で、導電性接続材7a,7bが圧電素子1のそれぞれの端部において第1圧電基板1cの下面側から上面側へと回り込むようにしておくことにより、導電性接続材7aが第1振動電極1aに電気的に接続し、導電性接続材7bが第2振動電極1bに確実に電気的に接続することができる。
次の工程では、圧電素子1を覆うようにして、ケース3の下側の凹部3aの開口周縁面3bを容量基板2の上面に接合する。
ケース3は、無機フィラーを樹脂中に分散させて成る熱硬化性樹脂の射出成形により予め作製して準備しておく。準備しておいたケース3の下側の開口周縁面3bに熱硬化性の絶縁性接着剤を塗布し、圧電素子1が凹部3aの内側に位置するようにしてケース3を容量基板2の上面に載せる。しかる後に、ケース3または容量基板2を加熱することにより絶縁性接着剤を100〜150℃に温度上昇させて硬化させ、ケース3を容量基板2の上面に接合する。これにより、基本的に圧電発振子10が作製される。
そして、次の工程では、圧電発振子10の側面に、入出力端子電極2fおよび側部グランド電極6aを形成する。
入出力端子電極2fおよび側部グランド電極6aは、金属粉末を樹脂中に分散させた導電性樹脂ペーストを準備しておいて、この導電性樹脂ペーストを圧電発振子10の側面(容量基板2の側面およびケース3の側面)に、例えばスクリーン印刷法やローラー転写法等を用いて塗布し、しかる後に、加熱や紫外線照射により樹脂を硬化させることによって形成することができる。また、入出力端子電極2fの形成においては、第1容量電極2aおよび第2容量電極2bの延出部2dが第2圧電基板2cの側面に達した露出部と、第1実装電極4および第2実装電極5が第2圧電基板2cの側面に達した端部とを覆うように、第2圧電基板2cの側面からケース3の側面にかけて導電性樹脂ペーストを塗布し、側部グランド電極6aの形成においては、グランド電極6が第2圧電基板2cの側面に達した端部を覆うように、第2圧電基板2cの側面からケース3の側面にかけて導電性ペーストを塗布する。
なお、ケース3の下側の凹部3aの開口周縁面3bの外周を、容量基板2の上面の外周よりも内側に位置するようにしておけば、第1容量電極2aおよび第2容量電極2bの延出部2dの露出部を大きく確保することができるので、入出力端子電極2fと第1容量電極2aの延出部2dとの電気的な接続および第2容量電極2bの延出部2dとの電気的な接続を安定して行なうことができる。
このようにして得られた圧電発振子10について、前述の方法により製造した本例の圧電発振子10の第1振動電極1aと第2振動電極1bとが同電位となるように第1容量電極2aと第2容量電極2bに同電位の電圧を印加し、圧電素子1に印加される電圧によって第1振動電極1aと第2振動電極1bとの間に電位差が生じないように、第1容量電極2aおよび第2容量電極2bとグランド電極6との間にのみ電位差を発生させ、第2圧電基板2cの圧電材料の分極度を変化させて誘電率を変化させる。また、容量基板2中の第1容量電極2aおよび第2容量電極2bとグランド電極6との間に分極処理の際に印加した電圧と逆向きの電圧を印加することで、一旦、分極処理を行なった圧電基板の分極度を小さくすることもできる。このように本発明の圧電発振子によれば、組立工程の後に、圧電素子1の特性に影響を与えずに容量基板2の容量を調整して、圧電発振子10の発振周波数を精密に調整することができる。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や改良等が可能である。
例えば、前述の本発明の圧電発振子の一例において、容量基板2に形成される第1容量電極2aおよび第2容量電極2b,第1実装電極4,第2実装電極5,グランド電極6,入出力端子電極2fおよび側部グランド電極6aは、同じ組成の導電性樹脂を用いて形成しても構わない。この場合には、容量基板2の一方の主面および他方の主面に形成されている各電極の熱膨張係数が同じであるため、容量基板2の一方の主面および他方の主面の各電極の熱膨張・熱収縮の差は少なくなり、容量基板2の変形を小さくして熱履歴による破損を防ぐことができる。
また、前述の本発明の圧電発振子の一例において、ケース3と容量基板2とは絶縁性接着剤を用いて接合しているが、接着剤を用いない方法で接合することも可能である。例えば、ケース3の材料として接着性を有する樹脂を用いることにより、ケース3の開口周縁面3bを溶解させることが可能な溶剤を開口周縁面3b全体に滴下してケース3の開口周縁面3bを溶解させておいて、この溶解した樹脂によりケース3を容量基板2と接合することができる。この場合には、接合部分でのケース3と容量基板2との熱膨張・熱収縮の差が接着剤を用いて接合した場合に比べて小さくなり、ケース3が容量基板2から取れにくくなる。
また、容量基板2は、第2圧電基板2cの一方の主面に第1容量電極2aと第2容量電極2bとが並べて被着され、同一主面上に第2グランド電極6bが第1容量電極2aおよび第2容量電極2bとのギャップ間で容量を形成するように並べて被着されている構造としてもよい。このような構造とした場合には、圧電素子1とグランド電極6とが容量基板2上で重ならないため、圧電素子1の第1振動電極1aまたは第2振動電極1bとグランド電極6との間で容量が形成されることがなくなるので、圧電素子1と容量基板2とが互いに影響を及ぼしにくくなるため、精度の高い周波数調整ができる圧電発振子10となる。
また、本例の圧電発振子10における圧電素子1と容量基板2の接続方法としては、圧電素子1が容量基板2上に導電性接続材7a,7bを介して積み重ねられて電気的に接続されているが、圧電素子1と容量基板2とが実装基板上の離れた位置に配置されて、配線を用いて接続されていてもよい。このように配置した場合には、圧電素子1とグランド電極6との間に微小な容量が形成されることがなくなるので、圧電素子1と容量基板2との間で互いに及ぼし合う影響が小さくなるため、精度の高い周波数調整ができる圧電発振子10となる。
また、前述の本発明の圧電発振子の一例において、第2圧電基板2cは、集合基板の段階で厚み方向、幅方向もしくは長さ方向に分極処理された圧電基板を用いているが、第1容量電極2a,第2容量電極2bおよびグランド電極6が被着された後で、第1容量電極2aおよび第2容量電極2bを同電位に保ちつつ、第1容量電極2aおよび第2容量電極2bとグランド電極6との間に電位差が発生するように電圧を印加して第1容量電極2aと第2容量電極2bとの間のみに部分的に分極処理を施してもよい。
また、前述の本発明の圧電発振子の一例において、第2圧電基板2cは、集合基板の段階で厚み方向、幅方向もしくは長さ方向に分極処理された圧電基板を用いているが、容量基板2上に圧電素子1を実装した後で、容量基板2の第1容量電極2aおよび第2容量電極2bとグランド電極6との間に電位差が発生するように電圧を印加して第1容量電極2aと第2容量電極2bとの間のみに部分的に分極処理を施してもよい。
また、図9は本発明の圧電発振子の実施の形態の他の例を示す断面図である。本例においては前述した圧電発振子の実施の形態の一例と異なる点のみについて説明し、同様の構成要素については同一の符号を用いて重複する説明を省略する。
図9に示す例の圧電発振子20の容量基板22は、第2圧電基板2cの一方の主面に第1容量電極2a,グランド電極6b,第2容量電極2bが並べて被着されており、第1容量電極2aおよびグランド電極6bの間で形成される容量はそれぞれの電極間に存在している第2圧電基板2cの一方の主面付近で形成され、第2容量電極2bおよびグランド電極6bの間で形成される容量はそれぞれの電極間に存在している第2圧電基板2cの一方の主面付近で形成されている。グランド電極6bは、側部グランド電極6aと接続されて、第2圧電基板2cの他方の主面に形成されているグランド電極6と接続されている。
このような図9に示す例の圧電発振子20によれば、第1容量電極2a,第2容量電極2bおよびグランド電極6bを同じ製造工程で同時に被着できるため、第1容量電極2aおよび第2容量電極2bとグランド電極6との間の位置にずれが生じないため、精度の高い周波数調整ができる圧電発振子20となる。
また、このような図9に示す例の圧電発振子20によれば、第2圧電基板2cの一方の主面に被着された第1容量電極2a,第2容量電極2bおよびグランド電極6bと第2圧電基板2cの他方の主面に被着された第1実装電極4,第2実装電極5およびグランド電極6との位置にずれが生じたとしても、第1容量電極2aおよびグランド電極6間に形成される容量と第1実装電極4,グランド電極6b間に形成される容量との合計と、第2容量電極2b,グランド電極6間に形成される容量と第2実装電極5,グランド電極6b間に形成される容量との合計との比は常に一定であり、容量を比較的調整しやすいので、精度の高い周波数調整ができる圧電発振子20となる。
また、図10は本発明の圧電発振子の実施の形態のさらに他の例を示す断面図である。本例においては、前述した圧電発振子の実施の形態の一例と異なる点のみについて説明し、同様の構成要素については同一の符号を用いて重複する説明を省略する。
図10に示す例の圧電発振子30は、第2圧電基板32cが2層の圧電体層32f,32gが積層されてなり、一方の主面に被着された第1容量電極2aと他方の主面に被着されたグランド電極6との対向領域S1、および一方の主面に被着された第2容量電極2bと他方の主面に被着されたグランド電極6との対向領域S2において、圧電体層間32f−32gに他の電極2a,2b,6とは電気的に隔離された内部電極32hが配置されているとともに、この内部電極32hを境に上下の圧電体層32f,32gにおける分極方向が圧電体層32f,32gの厚み方向の上下に逆向きとなっている。例えば、圧電体層32fが圧電体32fの厚み方向の上向きに分極されているときには、圧電体層32gが圧電体層32gの厚み方向の下向きに分極されている。
図10に示す例の圧電発振子30によれば、それぞれの対向領域S1,S2において、第1容量電極2aとグランド電極6との間、および第2容量電極2bとグランド電極6との間のそれぞれに、圧電体層32f,32gを誘電体層とする2つのコンデンサが直列接続された構成となっており、それら直列接続された2つのコンデンサにおける電界の向きは、圧電体層32f,32gの厚み方向の上向きまたは下向きであり、2つのコンデンサにおいて同じである。その上で、対向領域S1,S2における圧電体層32f,32gの分極方向を内部電極32hを境にして上下で厚み方向の上下に逆向きにしているので、対向領域S1,S2において第1容量電極2aとグランド電極6との間および第2容量電極2bとグランド電極6との間に電圧を印加すると、内部電極32hを境にした上下の圧電体層32f,32gのうち一方が伸びて他方が縮むことになる。例えば、圧電体層32fが圧電体層32fの厚み方向に伸びて、圧電体層32gが圧電体層32gの厚み方向に縮むことになる。すなわち、第1容量電極2aとグランド電極6との間、および第2容量電極2bとグランド電極6との間に電圧を印加したときの第2圧電基板32cは、第2圧電基板32cの2層の圧電体層32f,32gのうちの一方がその厚み方向に伸びるときには他方がその厚み方向に縮むことになり、2層の圧電体層32f,32gのそれぞれの厚みの変化量が相殺されて全体的には厚みの変化が小さくなるので、第2圧電基板32cの厚み方向に振動するような圧電振動を小さく抑えることができる。したがって、第2圧電基板32cの圧電振動による、周波数−インピーダンス特性における所望の周波数以外での不要なピークの発生を抑制することができるものとなる。
また、本例の圧電発振子30においては、グランド電極6の位置が、第2圧電基板32cを厚み方向に見て、第1容量電極2aと第2容量電極2bとの間隙領域と重なる構造になっている。このため、実装上の理由などからグランド電極6の面積を大きくすることができないときには、対向領域S1,S2の面積を大きくすることが困難である。本例の圧電発振子30によれば、配置場所に制約が無い内部電極32hを圧電体層間32f−32gに配置することにより、第1容量電極2aと内部電極32hとが対向する面積、第2容量電極2bと内部電極32hが対向する面積およびグランド電極6と内部電極32hとが対向する面積を十分に確保することができるので、大きな容量を得ることができるようになって容量の選択範囲が広くなり、発振周波数を設定しやすい圧電発振子30とすることが可能となる。
なお、本例の圧電発振子30においては、少なくとも対向領域S1,S2において内部電極32hを境に上下の圧電体層32f,32gの分極方向が逆向きとなっている必要があるというものであり、第2圧電基板32c全体において圧電体層間32f−32gを境に上下の圧電体層32f,32gの分極方向が逆向きとなるようにしてもよい。また、内部電極32hは、図10に示す構造においては対向領域S1とS2とにわたって一体的に、かつ対向領域S1,S2よりも広めに形成されているが、対向領域S1,S2のそれぞれに分離させて独立したものを配置する構成としてもよい。
このような第2圧電基板32cは、例えば、前述した第1圧電基板1cおよび第2圧電基板2cを作製する方法により、圧電体層32fとしての上側基板およびこの上側基板とは分極方向が逆向きの圧電体層32gとしての下側基板を作製しておいて、上側基板の上面に第1容量電極2aおよび第2容量電極2bを被着するとともに、下側基板の上面に内部電極32hを、下面にグランド電極6,第1実装電極4および第2実装電極5を被着して、これら上側基板および下側基板をプリプレグを介して貼り合わせ、加熱してこのプリプレグを硬化させて圧電体層32fと32gとを一体化させることにより作製することができる。
また、図11は本発明の圧電発振子の実施の形態のさらに他の例を示す断面図である。本例においては、前述した圧電発振子の実施の形態の一例と異なる点のみについて説明し、同様の構成要素については同一の符号を用いて重複する説明を省略する。
図11に示す例の圧電発振子40は、グランド電極6bが、第2圧電基板2cの一方の主面の第1容量電極2aと第2容量電極2bとの間に被着されており、第2圧電基板2cの分極方向が、第1容量電極2aおよびグランド電極6bの間の容量形成領域S3と第2容量電極2bおよびグランド電極6bの間の容量形成領域S4とで第2圧電基板2cの主面に平行な方向において逆向きとなっている。例えば、容量形成領域S3では、第2圧電基板2cの主面に平行にグランド電極6b側から第1容量電極2a側に向かう方向に分極され、容量形成領域S4では主面に平行にグランド電極6b側から第2容量電極2b側に向かう方向に分極されている。
図11に示す例の圧電発振子40によれば、第1容量電極2aおよびグランド電極6bの間と第2容量電極2bおよびグランド電極6bの間それぞれにおける電界の向きはいずれも同じである。例えば、第2圧電基板2cの主面に平行に第1容量電極2aから第2容量電極2bに向かう方向に電界がかかっている。その上で、容量形成領域S3,S4における第2圧電基板2cの分極方向を第2圧電基板2cの主面に平行な方向で逆向きにしているので、容量形成領域S3,S4において第1容量電極2aと第2容量電極2bとの間に電位差が発生すると、容量形成領域S3,S4のうち一方が伸びて他方が縮むことになる。例えば、容量形成領域S3の分極方向と電界の向きとが同じになり、容量形成領域S4の分極方向と電界の向きとが互いに逆向きになるときには、容量形成領域S3が第2圧電基板2cの主面に平行な方向に伸びて、容量形成領域S4が第2圧電基板2cの主面に平行な方向に縮むことになる。すなわち、第1容量電極2aと第2容量電極2bとの間に電圧を印加したときの第2圧電基板2cは、上述したように、容量形成領域S3と容量形成領域S4のうち分極方向と電界の向きとが同じ方向になる側では第2圧電基板2cの主面に平行な方向に伸びて、分極方向と電界の向きとが逆方向になる側では第2圧電基板2cの主面に平行な方向に縮むこととなり、それぞれの分極方向の変化量が相殺されて全体的には変化が小さくなるので、第2圧電基板2cの主面に平行な向きの圧電振動を小さく抑えることができる。したがって、第2圧電基板2cの圧電振動による、周波数−インピーダンス特性における所望の周波数以外での不要なピークの発生を抑制することができるものとなる。
このような図11に示す例の容量基板42として、第2圧電基板2cの長さを3.2mm、幅を1.2mm、厚みを0.3mmとし、グランド電極6bと第1容量電極2aとの間隔およびグランド電極6bと第2容量電極2bとの間隔をそれぞれ0.2mmとし、下面に形成したグランド電極6と第1実装電極4と第2実装電極5の間隔を0.8mmとした容量基板42を作製し測定を行なった。第1実装電極4と第2実装電極5をグランドとし、グランド電極6bに25℃で、0.75kVの直流電圧(分極電圧)を20秒印加し、分極を行なった。その後、インピーダンスアナライザーを用いて周波数−インピーダンス特性の測定を行なった。図12は、第2圧電基板2cのみのインピーダンス波形を示すグラフである。グラフの描くカーブは滑らかなものとなっており、共振に伴う不要なピークの発生が有効に抑えられていることが確認できた。
また、本例の圧電発振子40は、グランド電極6bが、第2圧電基板2cの一方の主面の第1容量電極2aと第2容量電極2bとの間に被着されていることから、グランド電極6bの面積を大きくすることにより、第1容量電極2aおよびグランド電極2bの間と第2容量電極2bおよびグランド電極6bの間とのそれぞれの間隔(ギャップ)を小さくすることができる。したがって、グランド電極6bの面積を大きくしたときには、第1容量電極2aおよびグランド電極6bの間の間隔(ギャップ)と第2容量電極2bおよびグランド電極6bの間の間隔(ギャップ)とを狭くすることができるので、大きな容量を得ることができるようになって、容量の選択範囲が広くなり、発振周波数を設定しやすい圧電発振子40とすることが可能となる。
また、上述した第1容量電極2aおよびグランド電極2bの間と第2容量電極2bおよびグランド電極6bの間とのそれぞれの間隔を樹脂で覆ったときには、第1容量電極2aおよびグランド電極2bの間と第2容量電極2bおよびグランド電極6bの間とのそれぞれでのショートを防止することができる。
このような第2圧電基板2cは、グランド電極6bを、第2圧電基板2cの一方の主面の第1容量電極2aと第2容量電極2bとの間に被着した後、第1容量電極2aと第2容量電極2bを同電位として、これらの電極とグランド電極6bとの間に電圧を印加することによって、第2圧電基板2cの分極方向が、第1容量電極2aおよびグランド電極6bの間の容量形成領域S3と第2容量電極2bおよびグランド電極6bの間の容量形成領域S4とで逆向きとなるよう分極を行なうことにより作製する。
本発明の圧電発振子として図1に示す例の圧電発振子10のサンプルを作製し、発振周波数の分極電圧に対する依存性を測定した。
圧電素子1としては、チタン酸鉛を主成分とし、長さが1.0mm、幅が0.2mm、厚みが40μmの直方体状の第1圧電基板1cの長辺方向に分極処理した、厚み滑り振動モードの基本波を使用するエネルギー閉じ込め型の圧電素子1を用いた。また、ケース3としては、エポキシ樹脂中に全体の80質量%を占める無機フィラーとしての二酸化珪素の粉末および全体の3質量%を占めるアルミナ珪酸ガラスの粉末を分散させてなる絶縁性樹脂を射出成形することにより、下側に複数の凹部3aを設けた集合ケース部材として加工した。
容量基板2としては、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする分極処理した長さが0.6mm、幅が0.5mm、厚みが0.05mmの四角形状の平板を多数個取りする集合基板を作製し、エポキシ樹脂中に全体の85質量%を占める銀粉末を分散させて成る導電性樹脂を用いて、上面に第1容量電極2aおよび第2容量電極2bを被着し、下面に第1実装電極4,第2実装電極5およびグランド電極6を被着した。また、容量基板2の上面の第1容量電極2aおよび第2容量電極2bの厚みは15μmを目標値として形成した。また、分極処理は1.5kV/mmの直流電圧を25℃,電圧印加時間30分間の条件で、第1容量電極2aと第2容量電極2bとを接地し、グランド電極6に分極電圧を印加することで、グランド電極6と第1容量電極2aとの間およびグランド電極6と第2容量電極2bとの間に電位差を発生させることにより行なった。以下では、分極電圧の印加方向はグランド電極6から第1容量電極2aおよび第2容量電極2bに向かう方向を順方向とし、第1容量電極2aおよび第2容量電極2bからグランド電極6に向かう方向を逆方向とする。
準備した容量基板2の上面のそれぞれの第1容量電極2aおよび第2容量電極2b上に、シリコーン樹脂中に全体の80質量%を占める銀粉末を分散させた導電性接続材7a,7bをディスペンサを使って塗布し、さらにこの上にそれぞれ圧電素子1を載せ、しかる後に導電性接続材7a,7bを硬化させることにより、容量基板2上に圧電素子1を搭載した。これによって、搭載される圧電素子1の振動が阻害されない程度の高さを導電性接続材7a,7bで確保した。次に、ケース3の下側の開口周縁面3bにエポキシ樹脂からなる絶縁性接着剤を塗布し、それぞれの圧電素子1が対応する凹部3aの内側に位置するようにしてケース3を容量基板2の集合体である集合容量基板の上面に載せ、しかる後に、160℃に加熱しながらケース3を下方に向かって0.2MPaで40分間加圧することにより、絶縁性接着剤を硬化させた。
そして、接合された集合ケース部材および集合容量基板を圧電発振子10の境界に沿ってダイシングソーを使って個々の圧電発振子10に切断し、切断することにより露出した圧電発振子10の側面に入出力端子電極2fおよび側部グランド電極6aを形成することにより、本発明の圧電発振子のサンプルを作製した。
上記の方法により製造された本発明の圧電発振子のサンプルについて、完成品の状態で第1容量電極2aと第2容量電極2bとを接地しつつ、第1容量電極2aおよび第2容量電極2bとグランド電極6との間に、最初に−1.5kV/mm〜+2.5kV/mmの直流電圧を25℃,電圧印加時間各1秒間の条件で印加し、容量形成部2eの第2圧電基板2cに対して分極処理を行なったときの、容量基板2の分極電圧に対する容量値の変化,容量基板2の容量値に対する圧電発振子10の発振周波数の周波数変化率およびその結果としての容量基板2の分極電圧に対する圧電発振子10の発振周波数の周波数変化率を測定した結果を、それぞれ図6,図7および図8の線図に示す。なお、このとき第1振動電極1aおよび第2振動電極1bには同電位の分極電圧が印加されるため、圧電素子1の分極率に変化は見られなかった。
図6は、分極電圧の印加による容量基板2の容量値の変化を示す線図である。横軸は印加した分極電圧(単位:kV/mm)を、縦軸は容量基板2の容量値(単位:pF)を表し、特性曲線は分極電圧の印加に伴う容量基板2の容量値の変化の様子を示している。図6に示す結果から分かるように、分極電圧を変化させることにより、その電圧の大きさ(第1容量電極2aおよび第2容量電極2bとグランド電極6との間の電位差に相当)に応じて容量基板2の容量値が変化していることが分かる。
次に、図7は、容量基板2の容量値の変化と本実施例の圧電発振子10の周波数変化率(元の発振周波数に対する変化した発振周波数と元の発振周波数との差の比率)との関係を示す線図である。横軸は分極電圧を印加したことによって変化した容量基板2の容量値(単位:pF)を、縦軸は周波数変化率(単位:%)を表し、特性曲線は容量基板2の容量値の変化に伴う周波数変化率の変化の様子を示している。図7に示す結果から分かるように、分極電圧を変化させて容量基板2の容量値が変化することにより、圧電発振子10の周波数変化率が変化していることが分かる。
そして、図8は、分極電圧の印加による発振周波数の周波数変化率の変化を示す線図である。横軸は印加した分極電圧(単位:kV/mm)を、縦軸は圧電発振子10の発振周波数の周波数変化率(単位:%)を表し、特性曲線は分極電圧の印加に伴う周波数変化率の変化の様子を示している。図8に示す結果から分かるように、容量基板2に印加する分極電圧を変化させることにより、それに応じて周波数変化率が変化しており、圧電発振子10の発振周波数が変化していることが分かる。
以上をまとめると、本例の圧電発振子10は、分極処理を施した容量基板2上に圧電素子1を搭載していることから、負の分極電圧を印加して容量基板2の容量値を減少させて圧電発振子10の発振周波数を若干上昇させ、正の分極電圧を印加して容量基板2の容量値を増加させて圧電発振子10の発振周波数を若干減少させることが可能となっている。
すなわち完成品状態の圧電発振子10の容量基板2への分極電圧の印加により圧電発振子10の発振周波数を高くすることや低くすることが可能であり、完成品状態での圧電発振子10の発振周波数を微調整することが可能となる。
以上の結果より、本発明の圧電発振子10によれば、第1圧電基板1cの表面に第1圧電基板1cを挟んで互いに対向する第1振動電極1aおよび第2振動電極1bが被着されてなる圧電素子1と、第2圧電基板2cの一方の主面に第1容量電極2aおよび第2容量電極2bがそれぞれ被着され、他方の主面に、第1容量電極2aおよび第2容量電極2bとの間で容量を形成するためのグランド電極6が被着された容量基板2とを備え、容量基板2に対して圧電素子1がその周囲に振動のための空間を確保して配置され、第1容量電極2aと第1振動電極1aとが、および第2容量電極2bと第2振動電極1bとがそれぞれ電気的に接続されていることから、圧電素子1の入力側の端子(第1振動電極1a)と出力側の端子(第2振動電極1b)とを同電位に保ちつつ、容量基板2の第1容量電極2aおよび第2容量電極2bとグランド電極6との間に第2圧電基板2cの容量形成部2eについて分極率を変化させるための電圧を印加できるので、第1振動電極1aおよび第2振動電極1bの間には電位差を発生するような電圧が印加されず、圧電素子1の圧電材料の分極度に影響を与えることなく、容量基板2中の第1容量電極2aおよび第2容量電極2bとグランド電極6とが対向して容量を形成する容量形成部2eのみに電位差を発生させるように電圧を印加して、容量形成部2eの圧電材料の分極度を変化させることが可能となる。
また、圧電素子1と容量基板2とが別々の基板で構成されているため、圧電素子1には影響を及ぼさずに、容量基板2に電圧を印加して第2圧電基板2cの圧電材料の分極度を変化させることが可能である。
したがって、容量形成部2eの圧電材料の分極度を変化させることにより容量形成部2eの誘電率を変化させて容量値を変化させることができ、これによって、完成品の状態において精密な周波数調整ができることが確認できた。