以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明に係る液体吐出装置の一例として示す第1実施形態のプリンタ部3を備えた複合機1の外観構成を示す斜視図である。図1に示すように、複合機1は、プリンタ機能やスキャナ機能やコピー機能やファクシミリ機能を有した多機能装置であり、該装置の本体の一部をなす略直方体状の筐体2を備える。筐体2の下部には、インクジェット方式による印刷を行うプリンタ部3(液体吐出装置)が備えられ、筐体2の上部には、スキャナ部4が備えられている。筐体2の正面側下部には開口5が形成されており、この開口5には、それぞれ記録用紙(被記録媒体)を収容可能な給紙トレイ6及び排紙トレイ7が、上下に重ねられるようにして設けられている。筐体2の正面側右下部には、扉8が開閉自在に取り付けられており、筐体2の内部であってこの扉8の奥側には、カートリッジ装着部9(図2参照)が設けられている。扉8が開かれると、カートリッジ装着部9が正面側に露出して、インク(液体)を貯留しているインクカートリッジ(液体メインタンク)10(図2参照)を着脱することができるようになる。筐体2の正面側上部には、複合機1を操作するための操作パネル11が設けられている。また、複合機1は、パーソナルコンピュータ等の外部情報機器12(図6参照)と接続可能に構成されている。複合機1のプリンタ部3は、操作パネル11や外部情報機器12やスキャナ部4から送信されたデータ等に基づいて、記録用紙に画像や文字を印刷するように構成されている。
図2は、プリンタ部3の構成を示す模式的断面図である。図2に示すように、筐体2の内部においては、前述した給紙トレイ6の上方にプラテン13が設けられており、プラテン13の上方に画像記録ユニット14が設けられている。画像記録ユニット14は、インクカートリッジ10から供給されたインクを貯留可能なインクサブタンク15や、該インクサブタンク15を介してインクカートリッジ10から供給されたインクを吐出する吐出ヘッド16等がキャリッジ17に搭載されて構成される。
給紙トレイ6の奥側部分からは、記録用紙を搬送するための用紙搬送経路18が延設されている。用紙搬送経路18は、給紙トレイ6の奥側部分から上方へ向かいつつ正面側へ向かうように湾曲し、続いて前方へ向かって水平に延び、プラテン13及び画像記録ユニット14の間を通って排紙トレイ7に繋がる。給紙トレイ6の直上には、給紙トレイ6内の記録用紙を用紙搬送経路18へ供給する給紙ローラ19が設けられている。プラテン13の後側には、一対の搬送ローラ対20が用紙搬送経路18を上下から挟むようにして設けられ、プラテン13の前側には、一対の排紙ローラ対21が用紙搬送経路18を上下から挟むようにして設けられている。従って、給紙トレイ6内の記録用紙は、給紙ローラ19により用紙搬送経路18へ供給され、続いて搬送ローラ対20によりプラテン13及び画像記録ユニット14の間を通過するようにして前方に向けて送られ、排紙ローラ対21により用紙搬送経路18から排紙トレイ7に送られる。
図3は、プリンタ部3の構成を示す模式的平面図である。図3に示すように、プラテン13の上方には、左右に長寸の形状をなしてプリンタ部3の各構成要素を支持するフレームの一部となる前後一対のガイドレール22,23が設けられている。画像記録ユニット14のキャリッジ17は、これらガイドレール22,23に支持されており、プラテン13の上方にてガイドレール22,23の延設方向(左右方向)に往復して摺動可能になっている。ガイドレール23の上面には、ベルト駆動機構24が設けられている。ベルト駆動機構24は、ガイドレール23の左右両端付近にそれぞれ設けられた駆動プーリ25と従動プーリ26との間に、内側に歯が設けられた無端環状のタイミングベルト27が巻き掛けられて構成されている。駆動プーリ25の軸にはキャリッジモータ28が連結されており、該キャリッジモータ28から駆動力が入力されることで駆動プーリ25が回転される。この回転を受けて、タイミングベルト27が駆動プーリ25と従動プーリ26との間で周回運動する。キャリッジ17は、その底部においてタイミングベルト27に固着されているため、タイミングベルト27の周回運動に従ってガイドレール22,23上を左右へ往復移動する。
キャリッジ17の走査範囲のうちプラテン13の上方領域は、インク吐出位置(液体吐出位置)となっている。このプリンタ部3のインク吐出位置は、少なくとも記録用紙の幅寸法に相当する所定範囲を有しており、キャリッジ17はこの範囲内で往復移動可能になっている。キャリッジ17がこのインク吐出位置にあるときには、用紙搬送経路18(図2参照)に沿ってプラテン13の上面に送られてきた記録用紙に向けてインクを吐出し、記録用紙に画像を印刷することができる。
プラテン13の左側にはメンテナンス機構29が配設されており、キャリッジ17の走査範囲のうちインク吐出位置の左側は、メンテナンス位置となっている。キャリッジ17がこのメンテナンス位置にあるときには、吐出ヘッド16がメンテナンス機構29の上方に位置し、メンテナンス機構29により吐出ヘッド16内のインクを負圧吸引して、吐出ヘッド16内のインク流路のメンテナンスを行うことができる。メンテナンス機構29には、ポリウレタン等の吸湿性を有した材料からなる廃液フォーム30が備えられている。負圧吸引されたインクは、この廃液フォーム30に導かれ吸収されるようになっている。
キャリッジ17の走査範囲のうちインク吐出位置の右側は、インク補充位置(液体補充位置)となっている。プラテン13の右側には、カートリッジ装着部9に装着されたインクカートリッジ10が配置されている。本プリンタ部3は、4色のカラーインク(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)を使用してフルカラー印刷を行うことができ、カートリッジ装着部9には、各色のインクを貯留した4つのインクカートリッジ10が左右に並ぶようにして装着されている。また、キャリッジ17には、各色インクに対応する4つのインクサブタンク15が搭載される。このプリンタ部3には、各インクカートリッジ10を対応するインクサブタンク15と連通させ、インクサブタンク15内にインクを補充するインク補充部(液体補充部)31が備えられている。
また、本プリンタ部3は、吐出ヘッド16の周辺を水冷することができるようになっており、水冷に利用する冷却液を貯留する冷却液メインタンク32がカートリッジ装着部9に隣接して設けられている。キャリッジ17には、冷却液を貯留可能な冷却液サブタンク33が搭載されている。プリンタ部3には、冷却液メインタンク32を冷却液サブタンク33と連通させ、冷却液サブタンク33内の冷却液を冷却液メインタンク32内の冷却液と入れ替える冷却液入替部34が備えられている。
キャリッジ17がこのインク補充位置にあるときには、インク補充部31を作動させることで、インクカートリッジ10とインクサブタンク15とを連通させ、インクサブタンク15内にインクを補充することができる。また、冷却液入替部34を作動させることで、冷却液メインタンク32と冷却液サブタンク33とを連通させ、冷却液サブタンク33内の冷却液を入れ替えることができる。
この冷却液は、特に限定されないが例えば水を主成分としており、これにパラベン等の防腐剤や、蒸発防止を目的としてグリセリン等の高沸点の液体を含んでいる。さらに、吐出ヘッド16の周辺の環境温度以上(例えば60〜80度)で固液相変化を行う相変化材料を封入した微粒カプセルをこの冷却液に混入させてもよい。冷却条件に適合する相変化材料を選択することにより、吐出ヘッド16の周辺の熱を相変化材料の溶解潜熱として消費することができ、これにより冷却液の実質的な熱容量が増加して冷却効率が向上する。従って、冷却液サブタンク33の容量を小さくしても十分な冷却を行うことができるようになり、キャリッジ17の重量化や大型化を避けることができる。
図4は、画像記録ユニット14及びインク補充部31の構成を示す断面図であって、キャリッジ17がインク補充位置にあるときを示している。なお、4つのインクカートリッジ10及びインクサブタンク15は互いに同様の構成となっており、図4はそのうちの1つを例示している。
画像記録ユニット14の吐出ヘッド16は、内部にインク流路を有したキャビティユニット(図示略)と、逆圧電効果を発揮してインク流路の容積を変動させ、流路内のインクに吐出圧を付与する圧電アクチュエータ(図示略)とを備え、インク流路の下流側開口をノズル孔としてここから吐出圧が付与されたインクを吐出するように構成されている。図4に示すように、吐出ヘッド16は、キャリッジ17の外底面に取り付けられており、キャビティユニットにおけるノズル孔が形成される面が下方に向けられている。更に、キャリッジ17には、圧電アクチュエータを駆動するための吐出ヘッド駆動回路97(図6参照)を内蔵したICチップ35(図2及び図5参照)と、ICチップ35を実装した配線基板36(図5参照)とが搭載されている。
インクサブタンク15は、側面視で前後に長寸の直方体形状をなしており、内部に所定容量のサブインク室15Aと、サブインク室15Aの前側部分に形成された第1連通孔41と、後側部分に形成された第2連通孔42とを有している。サブインク室15Aの底面43の前後方向中央部からは、左右方向へ延びる立設部44が突出している。
インクサブタンク15の前部には、インクサブタンク15の内部をサブインク室15Aとリフィル室15Bとに仕切る仕切板45が設けられている。第1連通孔41は、この仕切板45の端部と、底面43のうち立設部44の前側部分(第1底面43aとも称する)との隙間によって形成されている。リフィル室15Bの下部には、外部と連通するリフィルポート46が形成されており、リフィル室15B内には、インク補充時にサブインク室15Aを外部のインクカートリッジ10のメインインク室10Aに連通させるためのリフィルポート弁47が収容されている。リフィルポート弁47は、リフィルポート46に挿通されて上下動可能な弁体48と、弁体48を下方に付勢するコイルスプリング49とを備えてなる。弁体48に外力が働かない状態ではコイルスプリング49の付勢力によりリフィルポート46が閉ざされ、弁体48に上向きの外力が働いてコイルスプリング49の付勢力に抗して弁体48が下方へ移動すると、リフィルポート46が開放されてサブインク室15Aが外部に連通される。
第2連通孔42は、底面43のうち立設部44の後側部分(第2底面43bとも称する)に開口しており、この開口から下方に向けて延設されて吐出ヘッド16のインク流路の上流側開口に連通している。このため、サブインク室15A内のインクは、第2連通孔42を介して吐出ヘッド16に供給される。立設部44と第2底面43bとサブインク室15Aの側面とによりインク残存部(液体残存部)50が形成されている。このインク残存部50を利用して、インクサブタンク15内のインク残量が減少した場合でも、第2連通孔42及びその近傍にインクを残存させることができる。なお、図4の符号40は、サブインク室15Aの内圧を調整する圧力調整部である。
インクカートリッジ10は、内部にメインインク室10Aを有し、底部且つ後部にメインインク室10Aを外部に連通させるインク供給孔51が設けられ、メインインク室10Aの上部にはリリーフ弁52とポンプ53(液体ポンプ手段)とが設けられている。リリーフ弁52は、弁体54と、弁体54を付勢するコイルスプリング55とを備えてなる。リリーフ弁52の弁体54の端面からは、プッシュロッド56が後方へ向かってポンプ53側へ延設されている。ポンプ53は、シリンダ57と、該シリンダ57内に収容されたピストン58と、該ピストン58を駆動するピニオンギヤ59とを備えてなる。ピストン58は、シリンダ57の内面に嵌め合わされたピストンクラウン58aと、ピストンクラウン58aから後方に延び、ピニオンギヤ59と噛合するラックギヤ58bとを有する。ピニオンギヤ59が回転されると、ピストン58がシリンダ57内を前後方向へ往復動する。その際、ピストンクラウン58aはシリンダ57の内面に気密的に摺接するようになっており、メインインク室10Aの容積が変更される。また、シリンダ57の一端側の壁部には小径の孔が形成されており、プッシュロッド56はこの孔を貫通してシリンダ57内まで延びている。従って、ピストン58が前方へ移動すると、ピストンクラウン58aがプッシュロッド56を介してリリーフ弁52の弁体54を前方へ押動し、リリーフ弁52が開放される。
インク供給孔51には、インクカートリッジ10外に配設されたインクチューブ60を介し、ジョイント弁61が接続されている。このジョイント弁61は、上下動可能な弁体62と、弁体62を上方へ付勢するコイルスプリング63とを備えてなる。ジョイント弁61は、弁体62に外力が働かない状態ではコイルスプリング63の付勢力により閉じられ、弁体62に下向きの外力が働いてコイルスプリング63の付勢力に抗して弁体62が下方へ移動すると、インクチューブ60及びジョイント弁61を通じてメインインク室10Aを外部と連通させる。ジョイント弁61は、昇降機構64により上下動される。従って、画像記録ユニット14がインク補充位置にあるときに、この昇降機構64によりジョイント弁61を上昇させると、ジョイント弁61の弁体62とリフィルポート弁47の弁体48とが互いに押し合い、昇降機構64の駆動力が両弁47,61のコイルスプリング49,63の付勢力に打ち勝つと両弁47,61が共に開放される。その結果、インクカートリッジ10のメインインク室10Aとインクサブタンク15のサブインク室15Aとが互いに連通する。
本実施形態では、前述した構成のうち、メインインク室10A及びポンプ53等を備えるインクカートリッジ10、インクチューブ60、ジョイント弁61、昇降機構64、及びピニオンギヤ59を駆動するためのピニオンギヤ駆動回路99(図6参照)等により、インク補充部31が構成されている。このように、本プリンタ部3は、インクカートリッジから吐出ヘッド16にインクを供給する方式として所謂ステーション供給方式を適用しており、インクチューブ60がキャリッジ17と常時接続されるような引き回しを考慮する必要が無く、プリンタ部3全体が比較的コンパクトになっている。
図5は、画像記録ユニット14及び冷却液入替部34の構成を示す断面図であって、キャリッジ17がインク補充位置にあるときを示している。図5に示すように、冷却液サブタンク33は、前後に長寸の直方体形状をなしている。キャリッジ17の内側には、前述したようにICチップ35が配線基板36に実装された状態で搭載されており、冷却液サブタンク33は、このICチップ35の直上を前後に延びるようにして配置されている(図3も参照)。
冷却液サブタンク33の前部には、冷却液サブタンク33の内部をサブ冷却液室33Aとリフィル室33Bとに仕切る仕切板71が設けられており、この仕切板71の端部と、サブ冷却液室32Aの底面72との隙間によって、両室33A,33Bを連通させる連通孔73が形成されている。リフィル室33Bの下部には、外部と連通するリフィルポート74が形成されており、リフィル室33B内には、冷却液入替時にサブ冷却液室33Aを冷却液メインタンク32のメイン冷却液室32Aに連通させるためのリフィルポート弁75が収容されている。リフィルポート弁75は、前述したリフィルポート弁46と同様構成の弁体76及びコイルスプリング77を備えてなり、弁体76に外力が働かない状態ではリフィルポート74が閉ざされ、弁体76に上向きの外力が働いてコイルスプリング77の付勢力に抗して弁体76が移動すると、リフィルポート74が開放されてサブ冷却液室33Aが外部に連通する。
冷却液メインタンク32は、内部にメイン冷却液室32Aを有し、底部且つ後部に冷却液インク室32Aを外部に連通させる冷却液供給孔81が設けられ、メイン冷却液室32Aの上部にリリーフ弁82とポンプ83(冷却液ポンプ手段)とが設けられている。リリーフ弁82は、インク補充部31のリリーフ弁52と同様構成の弁体84及びコイルスプリング85を備えてなる。ポンプ83は、インク補充部31のポンプ53と同様構成のシリンダ87と、ピストンクラウン88a及びラックギヤ88bからなるピストン88と、ピニオンギヤ89とを備えてなる。ピニオンギヤ89の回転に伴ってピストン88がシリンダ86内で往復動することによりメイン冷却液室32Aの容積が変更される。ピストン88が前方へ移動すると、ピストンクラウン88aがインク補充部31のプッシュロッド56と同様のプッシュロッド86を介してリリーフ弁82の弁体84が前方へ押動され、リリーフ弁82が開放される。
冷却液供給孔81は、冷却液メインタンク32外に配設された冷却液チューブ(冷却液経路)90を介し、ジョイント弁91に接続されている。このジョイント弁91も、インク補充部31のジョイント弁61と同様の弁体92及びコイルスプリング93を備えてなり、弁体92に外力が働かない状態では閉じられ、弁体92に下向きの外力が働いてコイルスプリング93の付勢力に抗して弁体92が下方へ移動すると、メイン冷却液室32Aが冷却液チューブ90及びジョイント弁91を通じて外部と連通する。
図3に示すように、ジョイント弁91と、インク補充部31の4つのジョイント弁61とは、前述した単一の昇降機構64によって上下動される。従って、画像記録ユニット14がインク補充位置にあるときに、インクの補充に伴って昇降機構64が作動すると、ジョイント弁91が上昇し、ジョイント弁91の弁体92とリフィルポート弁75の弁体76とが互いに押し合い、両弁75,91が共に開放される。その結果、冷却液メインタンク32のメイン冷却液室32Aと冷却液サブタンク33のサブ冷却液室33Aとが互いに連通する。
本実施形態では、前述した構成のうち、メイン冷却液室32A及びポンプ83等を備える冷却液メインタンク32、冷却液チューブ90、ジョイント弁91、昇降機構64、ピニオンギヤ89を駆動するためのピニオンギヤ駆動回路99(図6参照)等により、冷却液入替部34が構成されている。
また、冷却液メインタンク32の周囲に接触して、アルミニウム等の熱伝導性の高い材料からなるヒートシンク95が設けられている。このため、冷却液メインタンク32内の冷却液は、ヒートシンク95からの放熱によって冷却されるようになっており、冷却液メインタンク32は、ラジエータとしての機能を有している。このように冷却液入替部34は、冷却液を冷却するための専用の構成を省略しており、コンパクトに構成されている。
図6は、複合機1の制御部96(キャリッジ移動制御部、液体補充制御部、冷却液入替制御部)の構成を示すブロック図である。この制御部96は、前述したプリンタ部3に係る動作の制御を統括して行うことができるようになっており、例えばキャリッジ17の移動制御、インクの吐出制御、インク補充部31及び冷却液入替部34の作動制御、記録用紙の搬送制御、メンテナンス機構29の作動制御等を行う。
図6に示すように、制御部96は、CPU、RAM、ROM及び入出力インタフェース等から構成されており、操作パネル11に接続されてユーザからの指令が入力され、外部情報機器12やスキャナ部4と接続されて画像データが入力されるようになっている。また、制御部96には、吐出ヘッド駆動回路97、キャリッジ駆動回路98、昇降機構64、ピニオンギヤ駆動回路99が接続されている。
吐出ヘッド駆動回路97は、制御部96からの信号に基づいて決定されるインク量及び吐出タイミングで、吐出ヘッド16から記録用紙へ向けてインクを吐出させる。また、制御部96は、吐出ヘッド駆動回路97へ出力した指示信号に基づいて、インクサブタンク15のインク残量をソフトカウントする。即ち、各色のインクの吐出量の累積値(吐出されたインクの総量)を算出し、インクサブタンク15に収容できるインクの満タン量からこの値を差し引くことにより、インクサブタンク15の各色のインク残量を個別に算出する。キャリッジ駆動回路98は、キャリッジモータ28に接続されており、該キャリッジモータ28を回転させることによってキャリッジ17を移動させる。昇降機構64は、制御部96からの信号に基づいて駆動し、ジョイント弁61,91を昇降動させる。また、ピニオンギヤ駆動回路99は、図示しないモータを駆動して該モータの出力軸に接続されたピニオンギヤ59,89を回転させ、ポンプ53,83を駆動してメインインク室10A及びメイン冷却液室32Aの容積を変更する。
図7は、制御部96により実行されるインク補充処理及び冷却液入替処理に係る複合機1(プリンタ部3)の動作を説明するフローチャートである。図8は、冷却液入替処理中の画像記録ユニット14及び冷却液入替部34の状態変化を示す模式図であり、(a)は冷却液入替前の冷却液メインタンク32と冷却液サブタンク33とが連通した状態、(b)は冷却液サブタンク33から冷却液を一旦回収した状態、(c)は冷却液サブタンク33へインクを供給した状態を示している。なお、既に示した図5は、冷却液入替前であって冷却液メインタンク32と冷却液サブタンク33とを連通させていない状態を示している。
図7に示すように、複合機1(プリンタ部3)は、記録用紙の搬送制御と、キャリッジ17をインク吐出位置にて左右に往復移動させる制御と、インクの吐出制御とを組み合わせることにより記録用紙への画像の記録を行い(ステップS1)、1枚分の記録が完了すると(ステップS2)、前述したソフトカウントの結果に基づいてインクサブタンク15内のインク残量が所定の閾値以下になったか否かを判断する(ステップS3)。なお、図3に示す位置関係から明らかなように、キャリッジ17がインク吐出位置にあるときには、インクカートリッジ10とインクサブタンク15とは連通されず、冷却液メインタンク32と冷却液サブタンク33とは連通されない。画像を記録する際には、インクの吐出制御に伴って吐出ヘッド駆動回路97の内部抵抗からジュール熱が発生するが、ICチップ35の熱は、その直上に設けられた冷却液サブタンク33内に貯留されている冷却液に吸収される。このため、吐出ヘッド16の周辺の温度上昇を抑えることができる。
インク残量が閾値を超える値であると判断した場合には、ステップS1に戻って次の記録用紙への記録を行い、インク残量が閾値以下であると判断した場合には、キャリッジモータ28(図3参照)を駆動してキャリッジ17をインク補充位置に移動させる(ステップS4)。このときインクカートリッジ10とインクサブタンク15とは、図4に示す位置関係となっており、冷却液メインタンク32と冷却液サブタンク32とは、図5に示す位置関係となっている。
次に、インク補充部31を駆動してインクカートリッジ10とインクサブタンク15とをジョイントすると共に、冷却液入替部34を駆動して冷却液メインタンク32と冷却液サブタンク33とをジョイントする(ステップS5)。すなわち、昇降機構64を駆動することにより、ジョイント弁61,91を上昇させ、ジョイント弁61及びリフィルポート弁47を介してサブインク室15Aとメインインク室10Aとを連通させると共に、図8(a)に示すように、ジョイント弁91及びリフィルポート弁75を介してサブ冷却液室33Aとメイン冷却液室32Aとを連通させる。
両インク室10A,15Aが連通し、且つ両冷却液室32A,33Aが連通すると、ピニオンギヤ59,89を回転させてピストン58,88を後方へ移動させ、メインインク室10A内及びメイン冷却液室32Aを負圧にする。これにより、サブインク室15A内の残留インクがメインインク室10Aへ一旦回収されると共に、図8(b)に示すようにサブ冷却液室33A内でICチップ35との熱交換により温度上昇した冷却液がメイン冷却液室10Aへ一旦回収される(ステップS6)。
回収処理の完了後、ピニオンギヤ59,89を逆回転させてピストン58,88を前方へ移動させ、メインインク室10A内及びメイン冷却液室32A内を正圧にする。これにより、メインインク室10Aからサブインク室15Aへインクが補充されると共に、図8(c)に示すようにメイン冷却液室32Aからサブ冷却液室33Aへ冷却液が供給される(ステップS7)。なお、冷却液メインタンク32内の冷却液は、キャリッジ17がインク吐出位置にある間に、ヒートシンク95からの放熱によって冷却されている。ステップS7では、温度上昇された冷却液の混入があるものの、このようにして冷却された冷却液メインタンク32内の冷却液が冷却液サブタンク33に供給される。インクの補充及び冷却液の入替が完了すると、ステップS1に戻って次の記録用紙への記録を再開する。
このように、所謂ステーション供給方式が適用された本プリンタ部3においては、筐体2側の冷却液メインタンク32とキャリッジ17側の冷却液サブタンク33との間で冷却液を循環させる経路が、キャリッジ17がインク吐出位置にあるときには連通されず、インク補充位置にあるときのみ連通されており、冷却液を循環させるための経路を引き回すためのスペースを確保する必要がない。従って、装置全体がコンパクトになるというステーション供給方式の利点を損なうことなく、キャリッジ17の周辺を水冷するための構成を設けることができる。
本実施形態のインク補充処理は、サブインク室15A内の残留インクを一旦回収する方式となっている。メインインク室10Aからインクを補充するときには、サブインク室15A内の空き容量が常に略一定となる。従って、インクサブタンク15にインク量を検出するためのセンサを設けなくても、サブインク室15Aの最大容量まで精度よくインクを補充することができる。また、ステップS6でサブインク室15A内の残留インクがメインインク室10Aに回収されたとき、インクサブタンク15内では、インク残存部50に所定量のインクが残存した状態となる。従って、第2連通孔42の周辺でのインクの乾燥を抑制でき、また、第2連通孔42から吐出ヘッド16へのエアの侵入を防止できるようになっている。
冷却液入替処理についても、このインク補充処理と同様の方式が適用されており、サブ冷却液室内33Aの冷却液を一旦回収した後に、冷却液メインタンク32から供給するようになっている。インクの補充に必要な動作と冷却液の入替に必要な動作とが同一であるため、昇降機構64などの装置を単一のものとして共用することができ、インク補充部31及び冷却液入替部34をコンパクトに構成することができる。また、ジョイント弁61,91やポンプ53,83等の部品が共通化され、冷却液入替部34の低コスト化につながる。更に、冷却液の回収が完了した後に冷却液の供給が行われるため、冷却液メインタンク32と冷却液サブタンク33とを連通させて冷却液を流通させるための経路(冷却液チューブ90)を1系統とすることができ、冷却液入替部34をコンパクトに構成することができる。
次に、図1に示す複合機1に装備可能な第2実施形態のプリンタ部103について説明する。なお、第1実施形態のプリンタ部3と同様の構成については、同一の符号を付して重複説明を簡略化する。
図9は、プリンタ部103の構成を示す模式的平面図である。図9に示すように、メンテナンス機構129及び廃液フォーム130は、プラテン13の右側に配設されてカートリッジ装着部9に近接している。なお、カートリッジ装着部9には4つのインクカートリッジ110が左右に並んだ状態で装着され、略直方体状の形状をなした冷却液メインタンク132は、4つのインクカートリッジ110の前方であって廃液フォーム130の上方を左右に延びるようにして設けられている。この結果、画像記録ユニット114のキャリッジ17の走査範囲のうちメンテナンス位置はインク吐出位置の右側に設定され、インク補充位置は走査範囲の右端限界に設定されている。このキャリッジ17には略矩形箱状のヘッドホルダ137が搭載され、このヘッドホルダ137には、各色インクに対応した4つのインクサブタンク115と、冷却液サブタンク133とが取り付けられている。4つのインクサブタンク115は、前後に並ぶようにして設けられている。
図10は、図9のXa−Xa矢視図、Xb矢視図及びXc−Xc矢視図を併せて示すものであって、画像記録ユニット114、インク補充部131及び冷却液入替部134の構成を示す模式図である。図11は、図9のXI−XI矢視図であって、画像記録ユニット114の構成を示す断面図である。
図10に示すように、インクサブタンク115の内部には、正面視で左右に長寸の略三角形状をなすサブインク室115Aが形成されている。サブインク室115Aの底面は水平に延びており、上面は左方に向かうに連れて高くなるように形成されている。インクサブタンク115の上部且つ右部には、サブインク室115Aを外部に連通させるサブ連通孔141が設けられている。サブインク連通孔141には、サブインクタンク115外を右方に延びるサブ側インクチューブ143が接続されている。
インクサブタンク115の後端部には、サブインク室115Aに連通するインク残存部145が下方に突出して形成されている。このインク残存部145の下面から下方に円筒状に延びる突出部146が形成されており、突出部146は、ヘッドホルダ137の底壁部を上下に貫通するようにして挿入される。従って、サブインク室115Aは、インク残存部145と突出部146の内面により囲まれて形成される連通孔147とを介し、ヘッドホルダ137の外底面に取り付けられている吐出ヘッド16のインク流路の上流端開口に連通する。
図10及び図11に示すように、ヘッドホルダ137の内部においてヘッドホルダ137の内底面148とインクサブタンク115の下面149との間には、インク残存部145の上下高さ(深さ)に応じた容積のスペース150が形成される。このスペース150には、ヘッドホルダ137の内底面148に載置された配線基板136に実装された2つのICチップ35が収容されている。2つのICチップ35は、このスペース150内において、互いに前後に離れて配置されている。更にこのスペース150には、冷却液サブタンク133が2つのICチップ35の上面に載置されるようにして収容されている。このように、冷却液サブタンク133が、インク残存部145の形成により生じるスペースを有効活用して配置されており、キャリッジ全体がコンパクトに組み立てられている。
冷却液サブタンク133は、内部にサブ冷却液室133Aを有しており、冷却液サブタンク133の後部には、サブ冷却液室133Aを外部に連通させるサブ冷却液供給孔153が設けられている。この冷却液サブタンク133の後部は、前述したスペース155から後方に突出しており、サブ冷却液供給孔153には、この突出部分から上方に延びてサブ側インク供給チューブ143と同一高さを右方に延びるサブ側冷却液チューブ155が接続されている。
図10に示すように、インクカートリッジ110の内部には、インクを貯留するメインインク室110A(液体貯留室)と、冷却液を貯留可能な補充用冷却液室110B(冷却液貯留室)とが形成され、これら2つの室110A,110Bが仕切壁157により仕切られている。インクカートリッジ110の後部かつ底部には、メインインク室110Aを外部に連通させるメインインク供給孔158が設けられており、メインインク供給孔158には、メイン側インクチューブ160が接続されている。メイン側インクチューブ160は、後方に延びて右側に屈曲し、更に後方に延びてガイドレール23の右側を迂回した後に左方に屈曲しており、両ガイドレール22,23の右端部の前後間にて左方に開口端を向けている(図9参照)。
冷却液メインタンク132の内部には、メイン冷却液室132Aが形成されている。冷却液メインタンク132の左部且つ底部には、メイン冷却液室132Aを外部に連通させるメイン冷却液供給孔163が設けられており、このメイン冷却液流出孔163には、メイン側冷却液チューブ166が接続されている。メイン側冷却液チューブ166は、後方に延びて右側に屈曲し、更に後方に延びてガイドレール23の右側を迂回した後に左方に屈曲しており、両ガイドレール22,23の右端部の前後間にて左方に開口端を向けている(図9参照)。
また、インクカートリッジ110の前部には、補充用冷却液室110Bを外部に連通させる補充用冷却液流出孔168が形成されており、この孔168には、冷却液メインタンク132のメイン冷却液室132Aに連通する補充用冷却液チューブ169が接続されている。
図9及び図11に示すように、サブ側インクチューブ143及びサブ側冷却液チューブ154は、前後に略等間隔をおいて設けられている。これに対し、図9及び図10に示すように、メイン側インクチューブ160及びメイン側冷却液チューブ166の開口端も、前後に略等間隔をおいて並んで設けられている。一点鎖線Aに示すように、メイン側のチューブの端部とサブ側のチューブの端部とは、キャリッジ17の走査方向である左右方向に対向するようにして配置されている。
また、メイン側の各チューブ160,166の開口端には、円錐状に形成されて先細りのニードル部170が設けられている。サブ側の各チューブ143,155の端部には、ゴム材等の弾性を有した材料から成形されてリング状のシール171が圧入されており、シール171は部分的にチューブ143,155の端部から突出している。
両ガイドレール22,23の右端部の間には、チューブポンプ172が設けられている。このチューブポンプ172は、ガイドレール22に支持されたポンプモータ173により回転駆動される円筒状のドラム部174と、ドラム部174の外周縁に設けられた圧子175とを備えてなり、メイン側の各チューブ160,166の上方に配置されている。ドラム部174が回転駆動されると、圧子175がメイン側の各チューブ160,166を押し潰しながら周回し、該チューブ内の圧力変動が生じてチューブ内でインクや冷却液が圧送される。
また、図9に示すように、画像記録ユニット114のキャリッジ17の右側にはカバー176が取り付けられている。このカバー176は、キャリッジ17の右上端部を前後に延びる軸を中心にして、実線で示すように揺動軸から下方に垂れた封止位置と、二点鎖線で示すように揺動軸から水平に延びる開放位置との間で揺動自在になっている。カバー176が封止位置にあるときには、図10に示すように、キャリッジ17の右端面がこのカバー176により覆われ、各サブ側のチューブ143,155の端部に取り付けられたシール171がカバー176の左側面に密着し、各サブ側のチューブ143,155が封止される。これにより、インクサブタンク115内のインク及び冷却液サブタンク133内の冷却液の蒸発が抑えられる。一方、カバー176が開放位置にあるときには、各サブ側のチューブ143,155の端部が開放され、チューブ143,155の開口が右方に露出する。
キャリッジ17がインク吐出位置やメンテナンス位置にある場合には、カバー176は自重により封止位置にある。そして、このプリンタ部103には、キャリッジ17がインク補充位置にある場合に、カバー176を封止位置から開放位置まで揺動させる開放機構が設けられている。例えば開放機構は、図9及び図10に示すように、ガイドレール22に設けられたカム板177と、カバー176における揺動軸から離隔した側の端部に取り付けられたカムフォロア178とを備えてなる。カムフォロア178は、カム板177のカム面上を摺動可能になっており、例えば球状に形成される。カム板177のカム面は、図10に示すように、カバー176の端部の揺動軌跡に応じて形成され、具体的には正面視にて揺動軸を中心とした円弧状であって、インク補充位置に近くなる右方に向かうに連れて面位置が高くなるように形成されている(なお、図10のカム板177は、該開放機構の動作説明の容易化のために想像線で示されたものであり、画像記録ユニット114等との間の位置関係を示したものではない)。従って、キャリッジ17が左方からインク補充位置に移動する過程において、カムフォロア178がカム板177のカム面に当接すると該カム面上を摺動して上方に移動し、カムフォロア178を連結しているカバー178が封止位置から開放位置に向けて揺動する。このように、カバー176の揺動はキャリッジ17の移動に伴い機械的に行なわれる。
本実施形態のインク補充部131は、前述した構成のうち、メインインク室110Aを有するインクカートリッジ110、メイン側及びサブ側のインクチューブ160,143、チューブポンプ172、及び該チューブポンプ172を駆動するチューブポンプ駆動回路199(図12参照)等により構成される。また、冷却液入替部134は、前述した構成のうち、メイン冷却液室132Aを有する冷却液メインタンク132、メイン側及びサブ側の冷却液チューブ166,155、補充用冷却液室110Bを有するインクカートリッジ110、補充用冷却液チューブ169、チューブポンプ172、及びチューブポンプ駆動回路199等により構成される。
ここで、本実施形態のインクは水性インクであり、冷却液は、水性インクの溶媒である水を主成分としており、前述した相変化材料を封入した微粒カプセルやグリセリンや防腐剤が含まれている。冷却液のモル濃度は、この水性インクのモル濃度よりも低濃度に設定されていると共に、図10に示す補充用冷却室110Bとメインインク室110Aとを仕切る仕切壁157が透水性を有した材料から形成されている。従って、インクカートリッジ110の内部においては、図10に点線矢印Wで示すように、補充用冷却液室110Bに貯留されている冷却液の溶媒である水が、この濃度差に応じて発生する浸透圧により仕切壁157を介してメインインク室110A内に透過可能になっている。
メイン側インクチューブ160の材料、長さ、厚さ及び径が設計されると、該チューブ160内のインクが単位時間当たりで外部に蒸発する量が予測可能となる。このため、仕切壁174の材料、表面積及び厚さと、インクと冷却液の濃度差とを考慮して、補充用冷却液室110B内の水がメインインク室110Aに単位時間当たりで透過(浸透)する量と、前述の予測された蒸発量とを等しくすることができる。透過量と蒸発量とを等しくすることにより、インクの蒸発が生じても、インクの濃度を長期に亘って略一定に保つことができるようになり、インクの粘度を長期に亘って略一定に保つことができる。
図12は、プリンタ部103を備えた複合機1の制御部196の構成を示すブロック図である。この制御部196には、スキャナ部4、操作パネル11、外部通信機器12、ICチップ35に内蔵された吐出ヘッド駆動回路97、キャリッジ駆動回路98及びポンプ駆動回路199が接続されている。ポンプ駆動回路199は、ポンプモータ173を駆動し、該ポンプモータ173の出力軸に接続されたチューブポンプ172のドラム部174を回転させる。
この制御部196により実行されるインク補充処理及び冷却液入替処理に係る複合機1(プリンタ部103)の動作は、図7に示す流れと同様のものとなる。図13は、キャリッジ17がインク補充位置にあるときのメイン側及びサブ側のチューブの端部の状態を示す断面図である。
図7に示すように、プリンタ部103は、記録用紙への画像の記録を行い(ステップS1)、1枚分の記録が完了すると(ステップS2)、インクサブタンク115内のインク残量が所定の閾値以下になったか否かを判断する(ステップS3)。ステップS1乃至S3では、キャリッジ17はインク吐出位置にある。
図9から明らかなように、キャリッジ17がインク吐出位置にあるときには、インクカートリッジ110とインクサブタンク115とは連通されず、冷却液メインタンク132と冷却液サブタンク133とは連通されない。ただし、カバー176が封止位置にあるため、サブ側の各チューブ143,155は封止されていると共に、メイン側の各チューブ160,166は、チューブポンプ172の圧子175により押し潰された状態となっている。このため、メイン側及びサブ側のチューブのいずれの開口からも、インクや冷却液が筐体2内部にリークすることはない。また、画像を記録する際にICチップ35が発生する熱は、ICチップ35の直上に設けられた冷却液サブタンク133内に貯留されている冷却液に吸収される。このため、吐出ヘッド16の周辺の温度上昇を抑えることができる。
ステップS3において、インク残量が閾値を超える値であると判断した場合には、ステップS1に戻って次の記録用紙への記録を行い、インク残量が閾値以下であると判断した場合には、キャリッジモータ28(図9参照)を駆動してキャリッジ17をインク補充位置に移動させる(ステップS4)。このキャリッジ17をインク吐出位置からインク補充位置に移動させる過程において、キャリッジ17に取り付けられたカムフォロア178がガイドレール22に取り付けられたカム板177のカム面上を摺動してカバー176が右上方に揺動し、サブ側の各チューブ143,155の開口が右方に開放される。この状態でキャリッジ17がインク補充位置まで移動すると、図13に示すように、メイン側の各チューブ160,166の端部に取り付けられたニードル部170が、対応するサブ側のチューブ143,155のシール171の内部に挿入され、ニードル部170がシール171の内周面に密着した状態となる。これにより、メインインク室110Aとサブインク室115Aとは、インクチューブ160,143を介して連通され、メイン冷却液室132Aとサブ冷却液室133Aとは、冷却液チューブ166,155を介して連通される(ステップS5)。このように、本実施形態のインク補充部131及び冷却液入替部134は、キャリッジ17をインク補充位置に移動させる制御を行うだけで、自動的にメイン側とサブ側とが連通されるように構成されている。
両インク室110A,115Aが連通し、且つ両冷却液室132A,133Aが連通すると、チューブポンプ172が駆動される。このとき、まず、図13に矢印R1で示すように、チューブポンプ172のドラム部174を正面視で反時計回り方向に回転駆動する。これにより、インクチューブ160,143内ではサブインク室115Aからメインインク室110Aに向けてインクが流れ、冷却液供給チューブ166,155内ではサブ冷却液室133Aからメイン冷却液室132Aに向けて冷却液が流れるようになる。これにより、サブインク室115A内のインクがメインインク室110Aに一旦回収される共に、サブ冷却液室133A内で温度上昇された冷却液がメイン冷却液室132Aに一旦回収される(ステップS6)。
なお、図9及び図10に示すように、冷却液メインタンク132の下方には廃液フォーム130が配置されている。従って、温度上昇された冷却液サブタンク133内の冷却液が冷却液メインタンク132内に回収された後、冷却液メインタンク132内の冷却液の熱が廃液フォーム130に吸収されたインクの蒸発潜熱として消費される。このため、冷却液メインタンク132内の冷却液が効率よく冷却され、冷却液メインタンク132がラジエータとして機能する。また、廃液フォーム130に吸収されたインクの蒸発が促進されるため、廃液フォーム130の吸収容量を小さくすることができる。更に、インクの蒸発に伴って、インクカートリッジ110及び冷却液メインタンク132の周辺の湿度が高くなるため、各チューブ内のインクや冷却液の蒸発が抑えられる。なお、冷却液メインタンク132のラジエータとしての機能を高めるために、図10に二点鎖線で示すように、冷却液メインタンク132にアルミニウム等の熱容量の高い材料からなるヒートシンク179を接触させてもよい。
また、たとえ冷却液の蒸発が生じても、チューブポンプ172の駆動に応じて、補充用冷却液室110Bに貯留されている冷却液が補充用冷却液チューブ169を介してメイン冷却液室132Aに適宜補充されるようになっている。これにより、メイン冷却液室132Aやサブ冷却液室133Aが常に満たされた状態になる。
次に、図13に矢印R2で示すように、チューブポンプ172のドラム部174を正面視で時計回り方向に回転駆動する。これにより、インクチューブ160,143内ではメインインク室110Aからサブインク室115Aに向けてインクが流れ、冷却液供給チューブ166,155内ではメイン冷却液室132Aからサブ冷却液室133Aに向けて冷却液が流れるようになる。これにより、メインインク室110A内のインクがサブインク室115Aに補充されると共に、メイン冷却液室132A内で冷却されている冷却液がサブ冷却液室133Aへと供給される(ステップS7)。インクの補充及び冷却液の入替が完了すると、ステップS1に戻って次の記録用紙への記録を再開する。
本プリンタ部103においても、冷却液を循環させる経路が、キャリッジ17がインク吐出位置にあるときには連通されず、インク補充位置にあるときのみ連通されるようになっている。このため、装置全体がコンパクトになるというステーション供給方式の利点を損なうことなく、キャリッジ17の周辺を水冷するための構成を設けることができる。
また、第1実施形態では、この連通及び遮断を行うために専用の装置として昇降装置64が設けられており、この昇降装置64は、インク補充部31に冷却液入替部34が付加されたことから、計10個の弁のコイルスプリングの付勢力に抗して駆動されなければならず、昇降装置64の負荷が大きくなる可能性がある。本プリンタ部103は、このような付勢力によって閉弁状態を維持する構成のバルブが省略されており、メイン側とサブ側の連通及び遮断が、キャリッジ17の移動に伴うニードル部170とシール171の機械的な抜き差しにより自動的に行われている。このように、シャトルタイプのプリンタには元々備えられているキャリッジモータ28の駆動力を利用してメイン側とサブ側の連通及び遮断が行われており、また、この連通及び遮断のために必要なキャリッジモータ28の駆動力も上記の昇降装置64と比べて小さくしてもよくなるため、冷却液入替部134及びインク補充部131をコンパクトに構成することができる。また、揺動自在に取り付けられたカバー176により、キャリッジ17がインク補充位置から離れていてインク補充や冷却液の入替を行わないときには、サブ側のチューブの開口端が封止されており、チューブポンプ172を適用したことによりメイン側のチューブは押し潰された状態となる。このため、バルブを省略した構成であっても、バルブを設けた場合と同様にしてインクや冷却液のリークや蒸発を防止できる。なお、サブ側のチューブには弾性を有した材料からなるシール171が部分的に突出しているため、封止位置にあるカバー176をこのシール171に密着させてサブ側のチューブが封止されている状態をより確実に維持することができる。
次に、図1に示す複合機1に装備可能な第3実施形態のプリンタ部203について説明する。第1及び第2実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明を簡略化する。
図14は、プリンタ部203の構成を示す模式的平面図である。図15は、図14のXVa−XVa矢視図、XVb矢視図及びXVc−XVc矢視図を併せて示すものであって、画像記録ユニット214、インク補充部231及び冷却液入替部234の構成を示す図である。図16は、図14のXVI−XVI矢視図であって、画像記録ユニット214の構成を示す断面図である。これら図14乃至図16は、第2実施形態を示した図9乃至図11と対応する。
図14に示すように、プラテン13、メンテナンス機構129、廃液フォーム130及びカートリッジ装着部9の位置関係や、インク吐出位置、メンテナンス位置及びインク補充位置の位置関係は、図9に示す第2実施形態と同様になっている。
図14乃至図16に示すように、画像記録ユニット214のヘッドホルダ137には、前後に並ぶ4つのインクサブタンク215と、冷却液サブタンク233と、ICチップ35と、吐出ヘッド16とが、第2実施形態と同様にして搭載される。冷却液サブタンク233は、インク補充部145の形成によって生じたスペース150を有効活用して配置されている。インクサブタンク215及び冷却液サブタンク233の外形形状と、サブインク室215Aの形状は、第2実施形態と同様になっている。
図15に示すように、インクサブタンク215の上部且つ右部には、サブインク室215Aを外部に連通させるサブインク流入孔241が設けられており、インクサブタンク215の上部且つ左部には、サブインク室215Aを外部に連通させるサブインク流出孔242が設けられている。サブインク流入孔241には、インクサブタンク215外を右方に延びるサブ側インク供給チューブ243が接続され、サブインク流出孔242には、サブ側インク供給チューブ242の上方を右方に延びるサブ側インク回収チューブ244が接続されている。
図17は、図16のXVII−XVII矢視図であって、冷却液サブタンク233の断面図である。なお、ICチップ35の冷却液サブタンク233に対する平面視の位置関係を二点鎖線で示している。図17に示すように、冷却液サブタンク233は、内部にラビリンス構造のサブ冷却液室233Aを有している。サブ冷却液室233Aの始端251は、冷却液サブタンク233の後部且つ右部に形成されており、終端252は、冷却液サブタンク233の後部且つ左部に形成されている。冷却液サブタンク233は、このサブ冷却液室233Aの始端251に開口して外部に連通するサブ冷却液流入孔253と、サブ冷却液室233Aの終端252に開口して外部に連通するサブ冷却液流出孔254とが設けられている。
図16に示すように、サブ冷却液流入孔253及び流出孔254が形成された冷却液サブタンク233の後部は、前述したスペース150から後方に突出している。サブ冷却液流入孔253には、サブ側インク供給チューブ243と同一高さを右方に延びるサブ側冷却液供給チューブ255が接続され(図15及び図16の二点鎖線参照)、サブ冷却液流出孔254には、サブ側冷却液供給チューブ255の上方において、サブ側インク供給チューブ244と同一高さを右方に延びるサブ側冷却液回収チューブ256が接続されている(図14及び図16の実線、図15の二点鎖線参照)。
図15に示すように、インクカートリッジ210の内部には、インクを貯留するメインインク室210A(液体貯留室)と、冷却液を貯留可能な補充用冷却液室110B(冷却液貯留室)とが形成されており、これら2つの室210A,110Bが透水性を有した材料からなる仕切壁157により仕切られている。インクカートリッジ110の後部かつ底部には、メインインク室210Aを外部に連通させるメインインク流出孔258が設けられ、インクカートリッジ210の後部且つ上部には、メインインク室210Aを外部に連通させるメインインク流入孔259が設けられている。メインインク流出孔258には、メイン側インク供給チューブ260が接続され、メインインク流入孔259には、メイン側インク回収チューブ261が接続されている。
図14に示すように、メイン側インク供給チューブ260及びメイン側インク回収チューブ261は、平面視で重なるようにして上下に並ぶようにして引き回されている。両チューブ260,261は、第2実施形態の後方に延びて右側に屈曲し、更に後方に延びてガイドレール23の右側を迂回した後に左方に屈曲しており、両ガイドレール22,23の右端部の前後間にて左方に開口端を向けている。
図18は、図15のXVIII−XVIII矢視図であって、冷却液メインタンク232の断面図である。図18に示すように、冷却液メインタンク232の内部には、ラビリンス構造のメイン冷却液室232Aが形成されている。冷却液メインタンク232の左部且つ底部には、メイン冷却液室232Aの一端部262を外部に連通させるメイン冷却液流出孔263が設けられており、冷却液メインタンク232の左部且つ上部には、メイン冷却液室232Aの他端部264を外部に連通させるメイン側冷却液流入孔265が設けられている。メイン冷却液流出孔263には、メイン側冷却液供給チューブ266が接続され、メイン冷却液流入孔265には、メイン側冷却液回収チューブ267が接続されている。図14に示すように、メイン側冷却液供給チューブ266及びメイン側冷却液回収チューブ267は、平面視で重なるようにして上下に並ぶようにして引き回されている。すなわち、両チューブ266,267は、後方に延びて右側に屈曲し、更に後方に延びてガイドレール23の右側を迂回した後に左方に屈曲しており、両ガイドレール22,23の右端部の前後間にて左方に開口端を向けている。
また、図15及び図18に示すように、インクカートリッジ210の前部には、補充用冷却液室110Bを外部に連通させる補充用冷却液流出孔168が形成されており、この孔168には、冷却液メインタンク232のメイン冷却液室232Aに連通する補充用冷却液チューブ169が接続されている。
図16に示すように、合計5本となるサブ側インク供給チューブ243及びサブ側冷却液供給チューブ254は、前後に略等間隔をおいて設けられ、サブ側インク供給チューブ245及びサブ側冷却液供給チューブ254も、前後に略等間隔をおいて設けられている。これに対し、図14及び図15に示すように、メイン側インク供給チューブ260及びメイン側冷却液供給チューブ266の開口端も、前後に略等間隔をおいて並んで設けられ、メイン側インク回収チューブとメイン側冷却液回収チューブの開口端についても、前後に略等間隔をおいて並んで設けられている。一点鎖線Aで示すように、メイン側のチューブの端部とサブ側のチューブの端部とは、キャリッジ17の走査方向である左右方向に対向するようにして配置されている。
メイン側の各チューブ260,261,266,267の端部には、円錐状に形成されて先細りのニードル部170が設けられている。サブ側の各チューブ243,244,255,256の端部には、ゴム材等の弾性を有した材料から成形されてリング状のシール171が圧入されている。
両ガイドレール22,23の右端部の間には、チューブポンプ172が設けられている。このチューブポンプ172は、メイン側の各供給チューブ260,266とメイン側の各回収チューブ261,267との上下間に配置されており、ドラム部174が回転駆動されると、圧子175がメイン側の各チューブ260,261,266,267を押し潰しながら周回し、該チューブ内の圧力変動が生じてチューブ内でインクや冷却液が圧送される。
また、画像記録ユニット214のキャリッジ17の右側にはカバー176が揺動自在に取り付けられている。カバー176が実線で示すように自重により下方に垂れた封止位置にあるときには、各サブ側のチューブ243,244,255,256の端部に取り付けられたシール171がカバー176の左側面に密着し、各サブ側のチューブ243,244,255,256が封止される。また、このカバー176は、前述したカム板176及びカムフォロア176を備えてなる開放機構により、インク吐出位置に移動されるときに封止位置から開放位置に向けて揺動されるようになっている。
本実施形態のインク補充部231は、前述した構成のうち、メインインク室210Aを有するインクカートリッジ210、メイン側及びサブ側のインク供給チューブ260,243と、メイン側及びサブ側のインク回収チューブ261,244と、チューブポンプ172と、チューブポンプ駆動回路199(図12参照)とにより構成される。冷却液入替部234は、前述した構成のうち、メイン冷却液室232Aを有する冷却液メインタンク232と、メイン側及びサブ側の冷却液供給チューブ266,255と、メイン側及びサブ側の冷却液回収チューブ267,256と、補充用冷却液室110Bを有するインクカートリッジ210と、補充用冷却液チューブ169と、チューブポンプ172と、チューブポンプ駆動回路199とにより構成される。
なお、本実施形態でも、図15に点線矢印Wで示すように、補充用冷却液室110Bに貯留されている冷却液の溶媒である水が、インクとの濃度差に応じて発生する浸透圧により仕切壁157を介してメインインク室210A内に透過可能になっており、インクの粘度を長期に亘って略一定に保つことができるようになっている。
本プリンタ部203を備えた複合機1の制御部296は、図13に示す第2実施形態の制御部196と同様にして構成されている。図19は、制御部296により実行されるインク補充処理及び冷却液入替処理に係る複合機1(プリンタ部103)の動作を説明するフローチャートである。図20は、キャリッジ17がインク補充位置にあるときの各チューブの端部の状態を示す断面図である。
図19に示すように、プリンタ部203は、記録用紙への画像の記録を行い(ステップS1)、1枚分の記録が完了すると(ステップS2)、ソフトカウントの結果に基づいてインクサブタンク15内のインク残量が所定の閾値以下になったか否かを判断する(ステップS3)。
なお、キャリッジ17がインク吐出位置にあるときには、インクカートリッジ210とインクサブタンク215とは連通されず、冷却液メインタンク232と冷却液サブタンク233とは連通されないが、サブ側の各チューブ243,244,255,256は、カバー176により封止され、メイン側の各チューブ260,261,266,267は、チューブポンプ172の圧子175により押し潰されているため、メイン側及びサブ側のチューブのいずれの開口からも、インクや冷却液が筐体2内部にリークすることはない。
また、画像を記録する際にICチップ35が発生する熱は、その直上に設けられた冷却液サブタンク233内に貯留されている冷却液に吸収されるため、吐出ヘッド16の周辺の温度上昇を抑えることができる。冷却液メインタンク232においては、冷却液が蓄えている熱が廃液フォーム130の蒸発潜熱として消費されるため、冷却液メインタンク132内の冷却液が効率よく冷却される。
ステップS3において、インク残量が閾値を超える値であると判断した場合には、ステップS1に戻って次の記録用紙への記録を行い、インク残量が閾値以下であると判断した場合には、キャリッジモータ28を駆動してキャリッジ17をインク補充位置に移動させる(ステップS4)。
第2実施形態と同様に、このキャリッジ17をインク吐出位置からインク補充位置に移動させる過程において、カムフォロア178がカム板177のカム面上を摺動することによりカバー176が開放位置まで揺動し、サブ側の各チューブ243,244,255,256の開口が右方に露出した状態となる。この状態でキャリッジ17がインク補充位置まで移動すると、図20に示すように、メイン側の各チューブ260,261,266,267の端部に取り付けられたニードル部170が、対応するサブ側のチューブ243,244,255,256のシール171の内部に挿入され、ニードル部170がシール171の内周面に密着した状態となる。
これにより、メインインク室210Aとサブインク室215Aとは、インク供給チューブ260,243及びインク回収チューブ261,244の2系統の経路を介して連通され、メイン冷却液室232Aとサブ冷却液室233Aとは、冷却液供給チューブ266,255及び冷却液回収チューブ267,256の2系統の経路を介して連通される(ステップS5)。このように、本実施形態のインク補充部231及び冷却液入替部234においても、キャリッジ17をインク補充位置に移動させる制御を行うだけで、自動的にメイン側とサブ側とが連通されるように構成されている。
両インク室110A,115Aが連通し、且つ両冷却液室132A,133Aが連通すると、チューブポンプ172を駆動する。このとき、図20に矢印Rで示すように、チューブポンプ172のドラム部174が正面視で時計回り方向に回転駆動されることにより、インク供給チューブ260,243内ではメインインク室210Aからサブインク室215Aに向けてインクが流れ、インク回収チューブ261,244内ではサブインク室215Aからメインインク室210Aに向けてインクが流れるようになる。また、冷却液供給チューブ266,255内ではメイン冷却液室232Aからサブ冷却液室233Aに向けて冷却液が流れ、冷却液回収チューブ267,256内ではサブ冷却液室233Aからメイン冷却液室232Aに向けて冷却液が流れるようになる。(ステップS206)。
冷却液メインタンク232のメイン冷却液室232A内では、図18に点線矢印で示すように、メイン冷却液流入孔265から冷却液が流入して、他端部264から一端部262に向けて冷却液が流れていき、メイン冷却液流出孔263から冷却液が流出していく。また、冷却液サブタンク233のサブ冷却液室233A内では、図17に点線矢印で示すように、サブ冷却液流入孔253から冷却液が流入して、始端251から終端252に向けて冷却液が流れていき、サブ冷却液流出孔254から冷却液が流出していく。メイン冷却液室232A及びサブ冷却液室233Aには、予め冷却液がほぼフルに充填されており、本実施形態の冷却液入替部234は、チューブポンプ172が駆動されると、サブ冷却液室233A内で温度上昇された冷却液の回収と、メイン冷却液室232A内の冷却液の供給とを同時に行って、サブ冷却液室233A内の冷却液の入替を行うことができるようになっている。なお、たとえ冷却液の蒸発が生じても、チューブポンプ172の駆動に応じて補充用冷却液室210Bに貯留されている冷却液が補充用冷却液チューブ169を介してメイン冷却液室232Aに適宜補充され、メイン冷却液室232Aやサブ冷却液室233Aが常に冷却液で満たされた状態となる。
このため、チューブポンプ172を利用した冷却液入替部234による冷却液の入替により、サブ冷却液室233A内には、再び冷却された冷却液が充填された状態となる。
一方、図15に示すように、サブインク流出孔242がサブインク室215Aにおける最も高い位置に設けられており、サブインク流入孔241は、サブインク流出孔242よりも低い位置に設けられている。従って、チューブポンプ272が駆動されると、メインインク室210Aからのインクがサブインク流入孔241を通ってサブインク室215A内に供給され続けるが、サブインク室215A内がインクで満たされるまでは、サブインク室215A内のインクは回収されないようになっている。このため、インク残量の少なくなったサブインク室215Aは急速にインクで満たされる。なお、4つのサブインク室215A内に残留しているインクの量は常に均一になっているとは限らない。従って、あるサブインク室215Aのみが先立ってインクで満たされた場合には、そのサブインク室215Aではインクの供給とインクの回収とが同時に行われるようになり、インクで満たされている状態が維持される。一方、インクで満たされていない他のサブインク室215Aについては、継続してインクで満たされるまでインクの補充が行われる。
このように本実施形態のインク補充部231は、一旦インクの回収を行って残留インク量をコントロールする形態でなくても、単一のチューブポンプ172を利用することにより、残留インク量のばらつきを吸収して全てのサブインク室215Aにインクの補充を行うことができるようになっている。
インクの補充及び冷却液の入替が完了すると、ステップS1に戻って次の記録用紙への記録を再開する。
このように、第3実施形態のプリンタ部203においても、冷却液を循環させる経路が、キャリッジ17がインク吐出位置にあるときには連通されず、インク補充位置にあるときのみ連通されるようになっているため、装置全体を小型化することができるというステーション供給方式の利点を損なうことなくキャリッジ17の周辺を水冷するための構成を備えることができる。また、連通させるための駆動力にキャリッジ17の駆動力を利用すると共に、付勢力を利用して閉弁状態を維持する構成のバルブを省略して揺動自在に取り付けられたカバーとチューブポンプとを適用しているため、冷却液入替部234及びインク補充部231をコンパクトに構成することができる。
また、冷却液の供給と冷却液の回収とが同時に行われるため、冷却液サブタンク133内の冷却液の入替に要する時間を短縮することができる。また、冷却液の供給及び回収と、インクの供給及び回収の4つの動作が単一のチューブポンプ172で行われるように構成されており、冷却液入替部234及びインク補充部231をコンパクトに構成することができる。
本発明に係る液体吐出装置は、前述の実施形態の構成に限られず、適宜変更可能である。例えば、第1実施形態においては、昇降装置64が駆動されて5つのジョイント弁61,91が上昇されると、各ジョイント弁の弁体62,92が同時に対応するリフィルポート弁47,75の弁体48,76に当接し、5組のジョイント弁61,91及びリフィルポート弁47,75の開弁タイミングが同時になっている。このため、昇降装置64は、5つのリフィルポート弁と5つのジョイント弁のコイルスプリングが発揮する付勢力の合計に抗するだけの駆動力を出力しなければならない。ここで、ジョイント弁61,91の弁体62,92の上方突出量を不揃いにしておき、各弁体62,92が対応するリフィルポート弁47,75の弁体48,76に当接するタイミングをずらして開弁タイミングをずらし、インクカートリッジ10とインクサブタンク15とが連通するタイミングと、冷却液メインタンク32と冷却液サブタンク33とが連通するタイミングとをずらすようにしてもよい。これにより、昇降装置64は、リフィルポート弁及びジョイント弁を1組開くだけ駆動力を出力可能であれば、順次弁を開くことができるようになる。なお、昇降装置を複数個設けることによって連通タイミングをずらすようにしてもよい。
第2及び第3実施形態においても、第1実施形態と同様にして、メイン側の各チューブの端部の配置を左右にずらすことにより、メインインク室とサブインク室との連通タイミングと、メイン冷却液室とサブ冷却液室との連通タイミングとをずらすことができる。この場合には、キャリッジ17の駆動力を小さくしても各チューブ間の接続と遮断とを行うことができる。
また、前述の実施形態においては、インク残量が所定の閾値以下になったときに、インクの補充とともに冷却液の入替を行っていたが、これに限られることはなく、例えば、冷却液の入替から所定時間経過したときは、冷却液が自然乾燥で蒸発して減少していると推定されるため、インクの残量にかかわらず冷却液を入れ替えるように制御してもよい。