以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明に係る液体吐出装置の一例として示す第1実施形態のプリンタ3を備えた複合機1の斜視図である。図1に示すように、複合機1は、プリンタ機能やスキャナ機能やコピー機能やファクシミリ機能を有するものであり、複合機1の本体外形をなす略直方体状の筐体2を備える。筐体2の下部にインクジェット方式による印刷を行うプリンタ(液体吐出装置)3が備えられ、筐体2の上部にスキャナ4が備えられる。筐体2の正面には開口5が形成されており、この開口5には、それぞれ被記録媒体としての記録用紙を収容可能な給紙トレイ6及び排紙トレイ7が上下に重ねられて設けられている。筐体2の正面側右下部には、扉8が開閉自在に取り付けられており、この扉8の内側にはカートリッジ装着部9(図2及び図3参照)が設けられている。扉8が開かれると、カートリッジ装着部9が正面側に露出して、インク(第1の液体)を貯留しているインクカートリッジ(液体タンク)10(図2及び図3参照)を着脱することができるようになる。筐体2の正面側上部には、オペレータが複合機1を操作するための操作パネル11が設けられている。
図2は、第1実施形態のプリンタ3の概要構成を側面視で示す模式図である。図2に示すように、筐体2の内部において、給紙トレイ6の上方にはプラテン12が設けられており、プラテン12の上方には画像記録ユニット13が設けられている。
画像記録ユニット13は、キャリッジ14にインクを吐出する吐出ヘッド15等が搭載されて構成される。吐出ヘッド15は、内部のインク流路(図示せず)及び該インク流路の下流端開口をなすノズル孔を有したキャビティユニット16と、該インク流路内のインクに吐出圧を付与する圧電アクチュエータ17とを有してなる。吐出ヘッド15は、キャリッジ14の外底面に取り付けられており、キャビティユニット16におけるノズル孔の開口面が下方に向けられている。圧電アクチュエータ17が作動すると、インク流路内のインクに吐出圧が付与され、該吐出圧及びインクの粘度に応じた量のインクがノズル孔から吐出される。
更にキャリッジ14には、圧電アクチュエータ17を駆動制御するための回路を内蔵したICチップ18と、インクを貯留可能であってキャビティユニット16のインク流路の上流端開口と連通するインクサブタンク19とが搭載されている。
給紙トレイ6の直上には、給紙トレイ6内の記録用紙20を搬送路21へ供給する給紙ローラ22が設けられている。搬送路21は、給紙トレイ6の背面側から上方へ向かった後に正面側へ向けてUターンし、プラテン12及び画像記録ユニット13の間を通って排紙トレイ7(図1参照)に繋がっている。プラテン12の背面側には、搬送路21を流れる記録用紙20を狭持してプラテン12上へ搬送する搬送ローラ対23が設けられており、画像記録ユニット13の正面側には、印刷済みの記録用紙20を狭持して排紙トレイ7へ搬送する排紙ローラ対24が設けられている。
図3は、第1実施形態のプリンタ3の概要構成を平面視で示す模式図である。図3に示すように、プラテン12の上方には、左右に平行に延びる前後一対のガイドレール25,25が設けられている。画像記録ユニット13のキャリッジ14は、これらガイドレール25に左右(走査方向)に往復移動可能に支持されている。画像記録ユニット13は、一対のプーリー26,26に巻き掛けられたタイミングベルト27に接合されており、タイミングベルト27はガイドレール25の延在方向と平行に配設されている。一方のプーリー26には正逆回転駆動するモータ(図示せず)が設けられており、そのプーリー26が正逆回転駆動されることでタイミングベルト27が往復移動し、画像記録ユニット13がガイドレール25に沿って走査される。
プラテン12の右側にはカートリッジ装着部9が配置されており、インクカートリッジ10は、このカートリッジ装着部9に着脱交換自在に装着される。本プリンタ3は、4色のカラーインク(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)を使用してフルカラー印刷を行うことができ、カートリッジ装着部9には、各色のインクを貯留した4つのインクカートリッジ10が左右に並ぶようにして装着される。キャリッジ14には、インクカートリッジ10に対応する個数のインクサブタンク19が設けられている。
筐体2の内部における各インクカートリッジ10とキャリッジ14との間には、インクカートリッジ10内のインクをキャリッジ14に搭載されている吐出ヘッド15に供給するためのインク供給チューブ28(液体供給管)が配設されている。図2に示すように、該インク供給チューブ28は、インクサブタンク19に接続され、インクカートリッジ10をインクサブタンク19と連通させる。
キャリッジ14の走査範囲のうちプラテン12の上方領域は、インク吐出位置となっている。本プリンタ3のインク吐出位置は、少なくとも記録用紙の幅寸法に相当する所定の範囲を有したものとなっており、キャリッジ14はこの範囲内で往復移動可能になっている。キャリッジ14がこのインク吐出位置にあるときには、搬送路21(図2参照)に沿って正面側へ向けて(すなわち、キャリッジ14の走査方向と直交する方向に)搬送されてプラテン12上に到達した記録用紙に向けて吐出ヘッド15のノズル孔よりキャリッジ14が走査されている間の適宜のタイミングでインクを吐出し、記録用紙に画像や文字を印刷する印刷動作を実施することができる。
なお、キャリッジ14の走査範囲のうちインク吐出位置の右側は、メンテナンス位置となっている。キャリッジ14がこのメンテナンス位置にあるときには、プラテン12の右側に設けられたメンテナンス部29を利用して、吐出ヘッド15のノズル孔の開口面を拭き取るワイピング動作や、ワイピング後のノズル孔の開口面を整えるためにインクを吐出するフラッシング動作や、ノズル孔から乾燥したインクや異物等を負圧吸引するパージ動作を実施することができる。
印刷動作やフラッシング動作やパージ動作により吐出ヘッド15内のインクが消費されると、インクサブタンク19内のインクが吐出ヘッド15のインク流路に供給され、インクカートリッジ10内のインクがインク供給チューブ28を介してインクサブタンク19内に供給される。このようにインク供給チューブ28は、常にインクで満たされた状態となっている。
図4は、図3のIV−IV矢視図であり、第1実施形態のインクカートリッジ10の内部構成を示す断面図である。インクカートリッジ10は、合成樹脂材から成形される直方体状のケーシング31を有し、このケーシング31の内部には、インクが貯留されるインク貯留室32(第1の液体貯留室)を形成するインクパック34(仕切壁)が収容されている。ケーシング31には、このインク貯留室32を外部と連通させるインク供給孔33が設けられており、このインク供給孔33には、カートリッジ310がカートリッジ装着部9に装着されると、カートリッジ側インク供給チューブ28aの端部と接続されるようになっている。インクカートリッジ310のインク供給孔333の内部には、普段は閉じていてインク供給チューブ28aの端部と接続されたときに開くバルブ機構(不図示)が設けられている。
なお、インクパック34は、例えばポリスチレンフィルムやウレタンフィルムやポリオレフィンフィルム等の透湿性を有したフィルムにより構成されている。また、本プリンタ3のインクは、水性インクであって溶媒が水となっている。インクに含まれる固相成分はインクに粘性を与える。従って、吐出ヘッド15の吐出動作に影響を及ぼす因子の一つであるインクの粘度は、インクの濃度が大きくなるとこれに伴って大きくなるように変化する。
ケーシング31の内部には、インクパック34の外側の空間領域に水貯留室35(第2の液体貯留室)が形成されており、この水貯留室35には、インクと同じく水を溶媒とする水溶液(第2の液体)が貯留される。この水溶液には、例えばパラベン等の防腐剤が溶解しており、長期に亘って水溶液が変質しないようにしている。
このように、インクカートリッジ10は、インクパック34の内面に囲まれたインク貯留室32と、インクパック34の外面とケーシング31の内面とに囲まれた水貯留室35とを有しており、両室32,35がインクパック34を構成する透湿性のフィルムにより仕切られている。
ここで、水貯留室35内に貯留される水溶液のモル濃度は、インク貯留室32内にインクのモル濃度よりも小さくなるように設定されており、水溶液とインクとの間にはこの濃度差に応じて浸透圧が発生する。従って、点線矢印Wで示すように、水貯留室35内に貯留されている水溶液の溶媒である水が、インクパック34を介してインク貯留室32内に透過可能になる。
この浸透圧を決める水溶液とインクの濃度差と、浸透圧に応じた単位時間当たり単位面積当たりの水透過量を決めるインクパック34の材料及び厚さΔ1(図4参照)と、インクパック34のうちインク貯留室32及び水貯留室35を仕切っている領域の面積(本実施形態ではインクパック34の全表面積に相当)とにより、水貯留室35内の水溶液の溶媒である水が、インクパック34を介してインク貯留室32内に単位時間当たりに透過する量(透過速度)が決まる。なお、インクパック34の厚さΔ1と、浸透圧に応じた単位時間当たり単位面積当たりの水透過量とは、概ね反比例の関係にある。このように水溶液の水が単位時間当たりに透過する量は、適宜変更可能な水溶液とインクの濃度差と、インクパック34の仕様とにより決まる。
これに対し、インク供給チューブ28は、前述したとおり常にインクで満たされていると共に、少なくともその一部が筐体2の内部で外気に接している。インク供給チューブ28は、例えばポリプロピレン等の透湿性の小さい合成樹脂材から成形されるものの、経時的にはインクの溶媒である水がチューブ外に蒸発する。
インク供給チューブ28の透湿性を決めるインク供給チューブ28の材料と、インクの溶媒である水が単位時間当たり単位面積当たりに蒸発する量を決めるインク供給チューブ28の厚さΔ2(図2参照)と、インク供給チューブ28が筐体2の内部で外気と接している部分の表面積とに応じて、インク供給チューブ28内のインクの水がチューブ外に単位時間当たりに蒸発する量(蒸発速度)が決まる。なお、インク供給チューブ28の厚さΔ2と、インクの水が単位時間当たり及び単位面積当たりに蒸発する量とは、概ね反比例の関係にある。また、インク供給チューブ28が筐体2の内部で外気と接している部分の表面積は、該チューブ28が外気と接している部分の長さL(図2参照)と、チューブ28の径φ(図2参照)とから得られる。このようにインクの水が単位時間当たりに蒸発する量は、インク供給チューブ28の仕様により決まる。
従って、水溶液の溶媒である水の単位時間当たりの透過量を決める各パラメータと、インクの溶媒である水の単位時間当たりの蒸発量を決める各パラメータとを考慮することにより、これら透過量と蒸発量とが等しくなるように設定することができる。
このように構成されるプリンタ3においては、インク供給チューブ28内のインクの水が蒸発しても、その蒸発量と等しい量の水がインク貯留室32内に透過するようになる。これによりインクの濃度を長期に亘って一定に保つことができるようになり、インクの粘度も長期に亘って一定に保つことができるようになる。
なお、インクの溶媒が水であると共に、水貯留室35内に貯留されている液体の溶媒がインクと同じく水であるため、水貯留室35内の液体の溶媒がフィルム34を介してインク貯留室32に透過しても、インクの濃度に影響を及ぼすだけであって、インクの組成を変化させることはない。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対し、インクカートリッジの内部構成が異なる。なお、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を簡略にする。
図5は、第2実施形態のインクカートリッジ210の内部構成を示す断面図であり、(a)は、インクカートリッジ210がカートリッジ装着部9に装着される前の状態を示しており、(b)は、インクカートリッジ210がカートリッジ装着部9に装着されている状態を示している。図5に示すように、インクカートリッジ210のケーシング31の内部には、水貯留室35と初期水貯留室237(初期液体貯留室)とを仕切る仕切壁236が設けられている。このようにしてケーシング31の内部が二分されるが、インクパック34は水貯留室35に内蔵されており、初期水貯留室237は、インクパック34とは隔離された空間をなしている。この初期水貯留室237は、仕切壁236を貫通してなる小孔238を介して水貯留室35と連通しており、ケーシング31に形成された大気連通孔239を介して大気と連通している。また、第1実施形態と同様に、ケーシング331には、このインク貯留室32を外部と連通させるインク供給孔33が設けられており、そのインク供給孔33にはバルブ機構(不図示)が設けられている。
インクカートリッジ210の製造時には、水性インクがインク貯留室32に封入されると共に、図5(a)に示すように初期水貯留室237内に前述した水溶液が封入された状態とされ、水貯留室35及び初期水貯留室237の内圧が大気圧に対して負圧となるように減圧される。更にケーシング31の外面には、シール240が容易に取り外し可能に接着され、このシール240により大気連通孔239が封止され、水貯留室35及び初期水貯留室237が減圧された状態で維持される。小孔238は、初期水貯留室237内に封入された水溶液が表面張力によってメニスカスを形成するために十分小さく形成されており、シール240が接着されている状態では初期水貯留室237内の水溶液が水貯留室35内に流入しないようになっている。
これに対し、図5(b)に示すように、シール240が取り外されると、初期水貯留室237が大気連通孔239を介して大気と連通し、初期水貯留室237が水貯留室35に対して正圧となる。これにより、小孔238に形成されていたメニスカスが破壊され、初期水貯留室内237の水が小孔238を通って水貯留室35内へと流入する。
本実施形態のインクカートリッジ210によると、シール240が接着している状態では、インク貯留室32とは独立した初期水貯留室237内に水が貯留されており、インク貯留室32内に水が透過しないようになっている。シール240が取り外されると初めて、水貯留室35内に水溶液が流入し、図5(b)に点線矢印Wで示すように、流入した水溶液の溶媒である水がインクパック34を介してインク貯留室32内に透過可能になっている。従って、シール240をインクカートリッジ210の着脱交換直前まで取り外さないようにすれば、製造時からカートリッジ装着部9に装着されるまでの期間で水溶液の水がインク貯留室32内に透過するのを防ぐことができる。このようにシール240を正しく取り扱うことにより、インクカートリッジ210を実際に使用するまでの間、インク貯留室32内に貯留されているインクの濃度を適正な状態に保つことができるようになる。
ところで、水貯留室35に貯留されている水溶液の濃度にはゼロという下限値があり、インクと水溶液の濃度差を大きくするには限界がある。また、インクパック34におけるインク貯留室32及び水貯留室35を仕切っている領域の面積は、インク供給チューブ28が外気に接している部分の表面積と比べ、インクカートリッジ10,210の構造上の制約のために大きく確保することが難しい。
以下では、このような事情に鑑みた本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態は、前述した実施形態に対し、水貯留室35内の水溶液に別途液圧を付与するための液圧付与部341を備えている点で異なる。ここでは、第3実施形態を便宜的に第2実施形態の変更形態とするが、該液圧付与部341は第1実施形態にも適用可能である。なお、前述した実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を簡略にする。
図6は、第3実施形態のインクカートリッジ310の内部構成と液圧付与部341の構成を示す模式図であり、シール240が一旦取り外されて水溶液が水貯留室35内に流入させた後に、再度シール240により大気連通孔239を封止した状態となったインクカートリッジ310がカートリッジ装着部9に装着されている状態を示している。図6に示すように、液圧付与部341は、インクカートリッジ310の水貯留室35に対して上方に設けられた上方水タンク(上方水貯留部)342と、上方水タンク342を水貯留室35と連通させる水供給チューブ343とを備える。上方水タンク342は、筐体2の内面における扉8よりも上方の部位から水平に延びるフレーム344に取り付けられており、水貯留室35に対して所定の高さhだけ上方に配置されている。この上方水タンク342は、内部に前述の水溶液を貯留可能となっており、該内部空間は大気連通孔345を介して大気と連通している。水供給チューブ343は、上方水タンク342の内部空間を外部と連通させる水供給孔346と、インクカートリッジ310の水貯留室35を外部と連通させる水流入孔347との間を接続している。また、水貯留室35はシール240により大気から遮断されている。従って水貯留室35内の水溶液には、高さhに応じて定まる水頭圧が作用する。なお、水供給チューブ343の水流入孔547と接続される端部は図示しない支持機構により支持されてその配置が固定されており、インクカートリッジ310がカートリッジ側装着部9に装着されると自動的に水流入孔347と接続される。そして、その水供給チューブ343端部の内部には、普段は閉じていて水流入孔347の端部と接続されたときに開くバルブ機構(不図示)が設けられている。これにより、インクカートリッジ310がカートリッジ装着部9に装着されていないときに、上方水タンク342の水溶液が水供給チューブ343から漏出することは防止される。また、インクカートリッジ310の水流入孔347内部には、普段は閉じていて水供給チューブ343の端部と接続されたときに開くバルブ機構(不図示)が設けられている。
このように、本実施形態においては、第1及び第2実施形態と比べ、水貯留室35内の水溶液が水頭圧を受けて液圧が大きくなるため、水貯留室35内の水溶液の水がインクパック34を介してインク貯留室32内に単位時間当たり単位面積当たりで透過する量を大きくすることができる。このように上方水タンク342の配置設定を通じて水頭圧の調整を行うことにより、インク供給チューブ28の仕様を蒸発量が多くなるように変更したり、インクパック34の仕様を透過量が少なくなるように変更しても、透過量と蒸発量とが等しくなるように設定することができるようになる。
また、透過によって水貯留室35内の水溶液が減少されることがあっても、上方水タンク342内の水溶液が水供給チューブ343を介して補充されるようになり、水貯留室35内の水溶液量を一定に保つことができる。
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態は、前述した実施形態に対し、吐出ヘッド15の周辺を冷却するための冷却部448を備えている点で異なる。ここでは、第4実施形態を便宜的に第2実施形態の変更形態としているが、該冷却部448は第1及び第3実施形態にも適用可能である。前述した実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を簡略にする。
図7は、第4実施形態のプリンタ403の概要構成を平面視で示す模式図である。このプリンタ403は、図1に示す筐体2の内部に設けられて複合機1を構成している。図7に示すように、カートリッジ装着部9にはフルカラー印刷を行うべく4つのインクカートリッジが装着されるが、そのうち3つは図5で示した第2実施形態のインクカートリッジ210と同一の構成となっており、残りの1つのインクカートリッジ410は、後述するように第2実施形態のインクカートリッジ210の構成が変更されたものとなっている。
まず、インクカートリッジ210,410とインクサブタンク19とを接続するための構成に関して説明すると、各インクカートリッジ210,410のインク供給孔33(図5,図11参照)には、カートリッジ側インク供給チューブ428aが接続され、該インク供給チューブ428aはその一部がチューブ保持部材449により保持されている。チューブ保持部材449は、カートリッジ装着部9の前方から筐体2の内側面に沿って後方に延び、左方に屈曲して画像記録ユニット413のキャリッジ14に向けて延びている。チューブ保持部材449の他端には、チューブ保持部材449に保持されたカートリッジ側インク供給チューブ428aと連通するキャリッジ側インク供給チューブ428bが接続されている。このキャリッジ側インク供給チューブ428bは、画像記録ユニット413のキャリッジ14に搭載されたインクサブタンク19に接続される(図12も参照)。
図8は、チューブ保持部材449の斜視図である。図9は、図7のIX−IX矢視図であり、チューブ保持部材449の断面図である。チューブ保持部材449は、例えばエラストマ等の弾性を有すると共に透湿性の小さい材料から成形されており、図8に示すように長手方向に延びる一対の側壁449a,449aと、両側壁449a,449aの一端縁を繋ぐ一端壁449bと、両側壁449a,449aの他端縁を繋ぐ他端壁449cと、該壁449a,449a,449b,449cに囲まれた矩形枠状の空間を2つの空間に仕切る中間壁449dとを有してなり、図9に示すように断面H字状に形成されている。チューブ保持部材449には、前述の2つの空間の開放面のそれぞれを覆うようにして透水性の小さいフィルム450,451が接着される。従って、両側壁449aの内面と中間壁449dの一方の面とフィルム450により囲まれた第1空間452と、両側壁449aの内面と中間壁449dの他方の面とフィルム451とにより囲まれた第2空間453とが形成される。
図8に示すように、各カートリッジ側インク供給チューブ428aは、チューブ保持部材449の一端壁449bに挿入されて第1空間452内を側壁の延在方向に沿って延び、チューブ保持部材449の他端壁449cの内面に圧入されている。この他端壁449cの外面にキャリッジ側インク供給チューブ428bの一端が接続されている。他端壁449cの内部には、両インク供給チューブ428a,428bを連通させるための内部流路(図示せず)が形成されている。なお、4本のカートリッジ側インク供給チューブ428aは、第1空間452内において、両側壁449a,449aの間にて略等間隔をおいて並ぶようにして長手方向に延在している。
図10は、第4実施形態の冷却部448の構成を説明する模式図である。図10に示すように、この冷却部448は、インクカートリッジ410内の水貯留室35内に貯留されている水溶液を冷却液として、キャリッジ14に搭載されて圧電アクチュエータ17を駆動制御するICチップ18の周囲を冷却するように構成されている。この冷却部448は、キャリッジ14内のICチップ18近傍に設けられて冷却液を貯留可能な冷却液室456を形成する冷却液タンク465と、それぞれインクカートリッジ410の水貯留室35を冷却液室456と連通させる冷却液往路455及び冷却液復路457からなる冷却液循環経路454と、冷却液循環経路454内の冷却液に動圧を付与するポンプ469とを備える。
図11は、図7のXI−XI矢視図であり、第4実施形態のインクカートリッジ410の構成を示す断面図である。図11に示すように、このインクカートリッジ410には、水貯留室35を外部と連通させる水流出孔462と水流入孔463とが設けられており、水流出孔462には、冷却液往路455を構成するカートリッジ側冷却液供給チューブ458が接続されており、水流入孔463には、冷却液復路457を構成するカートリッジ側冷却液回収チューブ461が接続されている(図10も参照)。なお、カートリッジ側冷却液供給チューブ458、カートリッジ側冷却液回収チューブ461及びカートリッジ側インク供給チューブ428aの端部は図示しない支持機構により支持されてその配置が固定されており、インクカートリッジ410がカートリッジ装着部9に装着されると自動的に、カートリッジ側冷却液供給チューブ458が水流出孔462と接続され、カートリッジ側冷却液回収チューブ461が水流入孔463と接続され、カートリッジ側インク供給チューブ428aがインク供給孔33と接続されるようになっている。そして、これらチューブ458,461,428aの端部内には、普段は閉じていて対応する孔と接続されたときに開くバルブ機構(不図示)が設けられている。これにより、インクカートリッジ410がカートリッジ装着部9に装着されていないときに、冷却液往路及び冷却液復路内の水溶液がチューブから漏出することが防止され、インクがチューブから漏出することが防止される。また、インクカートリッジ410の水流入孔462、水流出孔463及びインク供給孔33の内部にも、普段は閉じていて対応するチューブと接続されたときに開くバルブ機構(不図示)が設けられている。
図8に示すように、カートリッジ側冷却液供給チューブ458は、チューブ保持部材449の一端壁449bに圧入されており、冷却液室35と第1空間452とを連通させている。チューブ保持部材449の他端壁449cには、キャリッジ側インク供給チューブ428bと並ぶようにして、キャリッジ側冷却液供給チューブ459が接続されている。該冷却液供給チューブ459は、他端壁449cの内部に形成された貫通孔464を介して第1空間452と連通している。
図12は、図7のXII−XII矢視図であり、画像記録ユニット413の構成を側断面視で示す模式図である。図12に示すように、キャリッジ14の内底面にはICチップ38が搭載されており、冷却液タンク465は、このICチップ38とインクサブタンク19との間に配設されている。冷却液タンク456には、それぞれ冷却液室456を外部と連通させる水流入孔466及び水流出孔467が設けられている。水流入孔466には、前述したキャリッジ側冷却液供給チューブ459が接続されており、水流出孔467にはキャリッジ側冷却液回収チューブ460が接続されている(図10も参照)。
図8及び図9に示すように、キャリッジ側冷却液回収チューブ460は、チューブ保持部材449の他端壁449cに接続されており、貫通孔468を介して第2空間463と連通している。また、図8に示すように、チューブ保持部材449の一端壁には、カートリッジ側冷却液回収チューブ461が接続されている。該カートリッジ側冷却液回収チューブ461は、一端壁449bの内部に形成された貫通孔468bを介して第2空間453と連通していると共に、前述したようにインクカートリッジ410の水流入孔463を介して水貯留室35と連通している(図11も参照)。
このように、冷却液往路455は、カートリッジ側冷却液チューブ458と、第1空間452と、キャリッジ側冷却液供給チューブ459とから構成され、冷却液復路457は、キャリッジ側冷却液回収チューブ460と、第2空間453と、カートリッジ側冷却液回収チューブ461とから構成されている(図10参照)。
図7に示すように、カートリッジ側冷却液供給チューブ458は、カートリッジ側インク供給チューブ428aと上下に重なった状態で配置されており、キャリッジ側冷却液供給チューブ459はキャリッジ側インク供給チューブ428bと上下に重なった状態で配置されている。カートリッジ側冷却液供給チューブ458とカートリッジ側冷却液回収チューブ461は、インクカートリッジ410とチューブ保持部材449の一端壁449bとの間で左右に並んでそれぞれ前後に延びている。これら両チューブ458,461に挟まれるようにしてポンプ469が設けられている。図10にその構成を示すように、ポンプ469は、チューブポンプにより構成されており、矢印Rで示す所定方向に回転駆動されるドラム470と、ドラム470の外周面上に突起状に設けられた複数の圧子471とを備えてなり、両チューブ458,461はこの圧子471により押し潰されるようにして配置されている。
また、前述したようにチューブ保持部材449は、その一部を筐体2の内側面に接触させた上で屈曲されている。チューブ保持部材449は、側壁449a,449aを上下に向けるようにして配置されており、第1空間452をなすフィルム450が屈曲されたチューブ保持部材449の内周側に向けられ、第2空間453をなすフィルム451がその外周側に向けられている。従って、第2空間453をなすフィルム451の一部が筐体2の内側面に接触した状態となる。これに対し、筐体2の内側面には、このフィルム451と接触する部分において、アルミニウム等の熱伝導率の高い材料をプレート状に成型してなるヒートシンク472が取り付けられている(図10も参照)。なお、このようにチューブ保持部材449を配置すれば、4本のインク供給チューブ428aは両側壁449a,449aの間にて上下に並んだ状態となるため、インク供給チューブ428aのうちチューブ保持部材449により保持されている部分を同じ曲率で引き回すことができる。
このような冷却部448を備えたプリンタ403において、ポンプ469が駆動されると、水貯留室内35の水溶液(冷却液)が冷却液往路455を冷却液室456に向けて流れる。このとき、第1空間内452を通過する過程で、カートリッジ側インク供給チューブ458内のインクの温度上昇を抑えることができる。また、カートリッジ側インク供給チューブ458の外側が水溶液で満たされているため、カートリッジ側インク供給チューブ458内のインクの水の蒸発を抑えることができる(図8及び図9参照)。
また、冷却液室456に流入した冷却液がICチップ18からの熱を奪うことにより、キャリッジ14内における吐出ヘッド15の周辺の温度上昇を抑えることができる。
また、このポンプ469の駆動により、ICチップ18との熱交換によって温度上昇された冷却液室456内の冷却液が、冷却液復路457を水貯留室35に向けて流れる。このとき、第2空間453を通過する過程で、冷却液は、筐体2の内側面に取り付けられたヒートシンク472に熱を吸収される。このように冷却された冷却液が、カートリッジ側冷却液回収チューブ461を介して水貯留室35に導かれる。
本実施形態においても、第1乃至第3実施形態と同様にして、水貯留室35内の水溶液の水をインクパック34を介してインク貯留室32内に透過させることにより、インクの蒸発が生じても長期に亘ってインクの濃度を一定に保つことができ、インクの粘度を長期に亘って一定に保つことができる。従って、吐出ヘッド15によるインクの吐出動作を安定して行うことができるようになる。
さらに、冷却部448により、この水溶液を冷却液として吐出ヘッド15の周辺を水冷可能になっている。これにより吐出ヘッド15のインク流路内のインクや、吐出ヘッド15の上方に配置されたインクサブタンク19内のインクの温度上昇を抑えることができる。従って、吐出ヘッド15の周辺におけるインクの粘度変化を防止することができ、吐出ヘッド15によるインクの吐出動作をより安定して行うことができるようになる。
このように、本実施形態の水貯留室35内に貯留される水溶液は、冷却液として流用されるため、そのために効果的な成分が混入されていてもよい。すなわち、グリセリン等の高沸点の液体が混入されていてもよいし、ICチップ18の周辺の温度条件下(例えば20〜80度)で相変化を行う相変化材料を封入した微粒カプセルが混入されていてもよい。
なお、ポンプ469を駆動するタイミングについては、キャリッジ15の周辺からの発熱は、ICチップ18に内蔵される回路により圧電アクチュエータ17が駆動制御されて印刷動作が実施されているときに顕著に表れるため、この印刷動作の実施と同時に行うようにしてもよい。これにより、発熱が顕著に表れるときに冷却を行い、その他のときにはポンプ469を休止して電力消費等を抑えることができる。また、キャリッジ14に、吐出ヘッド15の周辺の温度を検知して該温度を表す温度データを出力可能な温度センサを搭載しておき、該温度データが予め定めてある閾値温度を超えていると判断されるときにポンプ469を駆動する制御を行うようにしてもよい。
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態は、第4実施形態に対し、冷却部548の構成が異なる。なお、前述した実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を簡略にする。
図13は、第5実施形態のプリンタ503の概要構成を平面視で示す模式図である。図14は、図13のXIV−XIV矢視図であり、第5実施形態の画像記録ユニット513の構成を側断面視で示す模式図である。図13及び図14に示す本実施形態の冷却部548は、第4実施形態を示した図7及び図12と比べるとわかるように、ポンプ469が省略されている替わりに、冷却液室465の水流入孔466に流入側逆止弁573が設けられていると共に、水流出孔467に流出側逆止弁574が設けられている。インクカートリッジ410や冷却液循環経路454やチューブ保持部材449やヒートシンク472等の他の構成については、第4実施形態の冷却部448と同様となっている。
図13に示すように、キャリッジ側冷却液供給チューブ459及びキャリッジ側冷却液回収チューブ460は、画像記録ユニット513からキャリッジ14の走査方向のうち右方に向けて延びている。なお、キャリッジ14の走査方向のうちいずれかに延びていればよく、左方に延びていてもよい。
図14に示すように、冷却液タンク465の水流入孔466は下面に形成されており、キャリッジ側冷却液供給チューブ459内の冷却液は、水流入孔466を下側から上側へ向けて流れて冷却液室456内に流入する。また、冷却液タンク465の水流出孔467は上面に形成されており、冷却液室456内の冷却液は、水流出孔467を下側から上側へ向けてキャリッジ側冷却液回収チューブ460へと流出する。流入側逆止弁573は、この水流入孔466の上側の開口を塞ぐようにして載置された弁体を含んでなり、流出側逆止弁574は、この水流出孔467の上側の開口を塞ぐようにして載置された弁体を含んでなる。該弁体は、冷却液よりも比重が大きくなっていると共に、冷却液の動圧によって浮上可能なように軽量になっている。
図15は、本実施形態における冷却液を循環させるための動作を説明する作用図であり、(a)はキャリッジ14が移動方向を右方に反転すべくインク吐出位置の左端に位置している状態を示しており、(b)はキャリッジ14が移動方向を左方に反転すべくインク吐出位置の右端に位置している状態を示している。なお、プリンタ503が印刷動作を実施する際には、キャリッジ14がインク吐出位置において左右に往復移動するようになっているが、キャリッジ14はインク吐出位置における中間部分では略等速運動を行うようになっている。
図15(a)に示すように、左方に移動するキャリッジ14が移動方向を右方へ反転する際には、キャリッジ14が所定の減速度で減速されて左端で停止状態となった後、所定の加速度で加速しながら右方に移動していく。従って、キャリッジ14から右方に延びるようにして設けられているキャリッジ側冷却液供給チューブ459及びキャリッジ側冷却液回収チューブ460内の冷却液には、左方に向けた慣性力が作用する。このため、チューブ459,460内の冷却液は、矢印Wで示すようにこの慣性力に応じた動圧を受けて流れようとする。すなわち、キャリッジ側冷却液供給チューブ459内の冷却液は、水流入孔466を下側から上側へと向けて流れることとなり、動圧が流入側逆止弁573の弁体の重力に抗して流入側逆止弁573の弁体を浮上させて流入側逆止弁573を開弁させ、冷却液が冷却液室456内へと流入する。キャリッジ側冷却液回収チューブ460内の冷却液は、水流出孔467を上側から下側へ向けて流れようとするが、流入側逆止弁574の弁体が水流出孔467の開口を塞ぐため、冷却液が冷却液室456内へと逆流しないようになっている。
図15(b)に示すように、右方に移動するキャリッジ14が移動方向を左方へ反転する際には、キャリッジ14が所定の減速度で減速されて右端で停止状態となった後、所定の加速度で加速しながら左方に移動していく。従って、キャリッジ側冷却液供給チューブ459及びキャリッジ側冷却液回収チューブ460内の冷却液には、右方に向けた慣性力が作用する。このため、チューブ459,460内の冷却液は、矢印Wで示すようにこの慣性力に応じた動圧を受けて流れようとする。すなわち、キャリッジ側冷却液回収チューブ460の冷却液は、水流出孔467を下側から上側へ向けて流れようとし、動圧が流出側逆止弁574の弁体の重力に抗して流出側逆止弁574の弁体を浮上させて流出側逆止弁574を開弁させ、冷却液がキャリッジ側冷却液回収チューブ460へと流れていく。キャリッジ側冷却液供給チューブ459内の冷却液は、水流入孔466を上側から下側へと流れようとするが、流入側逆止弁573の弁体が水流入孔466の開口を塞ぐため、冷却液室456内からキャリッジ側冷却液供給チューブ459へと冷却液が逆流しないようになっている。
このように印刷動作の実施に伴ってキャリッジ14が左右に往復移動されると、その方向転換時の加減速に伴って作用する慣性力を動圧として冷却液循環経路454内を冷却液が流れる。このとき、逆止弁573、574により逆流が防止され、冷却液循環経路454内の冷却液は一方向に流れて循環することとなる。なお、チューブ459,460をキャリッジ14からキャリッジ14の走査方向に延びるようにして設けているため、キャリッジ14の加減速に応じた慣性力により生じる動圧の発生する方向と、チューブ459,460の延びる方向とが平行となっており、キャリッジ14の往復移動を利用した冷却液の流通をスムーズに行わせることができる。
このように、本実施形態では、冷却液を循環させるための専用の駆動源を不要としており、冷却部548をコンパクトに構成することができる。ただし、本実施形態に第4実施形態のポンプ469を併設し、キャリッジ14の走査が行われていない間にも冷却液を循環させるように構成してもよい。