JP5115010B2 - プライマー組成物及びこれを用いたガスバリアフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、プライマー組成物及びこれを用いたガスバリアフィルムに関し、例えば、エレクトロニクス分野や建装材分野で求められる過酷な保存環境においても有用なプライマー組成物及びこれを用いたガスバリアフィルムに関する。
従来、食品、非食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料には、内容物の変質を抑制しそれらの機能や性質を保持するために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体を遮断するガスバリア性能を備えて、これら気体(ガス)による影響を防止することが求められている。
そのため、温度・湿度などによる影響が少ないアルミニウム等の金属からなる金属箔を、ガスバリア層として用いた包装材料が一般的に用いられてきた。
ところが、アルミニウム等の金属からなる金属箔を用いた包装材料は、ガスバリア性には優れるものの、包装材料を透視して内容物を確認することができない、使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならない、検査の際は金属探知器が使用できないなどの問題があった。
そこで、このような問題を解決した包装材料として、例えば、特許文献1、2には、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機酸化物より形成される蒸着膜を、真空蒸着法やスパッタリング法等の形成手段により熱可塑性樹脂フィルム(基材)上に積層したフィルムが開示されている。該フィルムは、透明性及び酸素、水蒸気等のガス遮断性を有しており、金属箔等では得ることのできない透明性とガスバリア性を両立した包装材料として好適である。
ところで、包装材料は、通常、包装材料の表面に文字・絵柄等を印刷加工したり、他のフィルム(シーラントフィルム等)と貼り合わせたり、容器等の包装体へ形状加工したりするなど、様々な工程を経て包装体となる。特に、ボイル殺菌、レトルト殺菌、オートクレーブ殺菌等の殺菌工程を行う場合は、上述したような種々な工程を経た後に殺菌工程が行われるため、過酷な条件下においても耐えられるように十分注意して包装材料を設計する必要がある。
しかし、特許文献1、2に記載のような基材上に蒸着膜が積層したフィルムでは、シーラントフィルムと貼り合わせて製袋した後、内容物を充填してボイル殺菌やレトルト殺菌を行うと、シール部の一部にデラミが発生して外観不良が起こったり、デラミが発生した部分からガスバリア性が低下して内容物が変質したりする等の問題があった。
そこで、このような問題を解決した包装材料として、例えば、特許文献3、4には、基材層上に蒸着層とガスバリア性被覆層が順次積層した積層体の基材層と蒸着層の間に、アクリルポリオールとイソシアネートを含むプライマー層(蒸着用プライマー層)を設けたガスバリア積層フィルムが開示されている。該ガスバリア積層フィルムは、耐ボイル性、耐レトルト性、耐オートクレーブ性を有するものであって、温度や水(湿度)による影響を低減し、デラミの発生やガスバリア性の低下を抑制できる。
近年では、包装材料は食品、非食品、医薬品等の包装に用いられるだけでなく、エレクトロニクス分野や建装材分野でも利用されるようになってきた。特に、ガスバリア性能が要求されるエレクトロニクス分野と、耐久性が要求される建装材分野の双方を包含した太陽電池モジュール関連分野では、太陽電池を屋根などの形状に合わせて自由に変形できるように、ガラス基板に代わって包装材料をフィルム基板として用いることもある。そのため、包装材料にはより高いガスバリア性能が求められる。また、太陽電池などのエレクトロニクス製品は、建装材と同様に20〜30年間の長期に渡って製品保証する必要がある。そこで、製品の性能を過酷条件下で保存評価(例えば、85℃−85%相対湿度下で2000〜3000時間保管する。)したり、PCT評価(加圧蒸気による促進試験;例えば、105℃−100%相対湿度下で200時間保管する)したりすることで、ガラス基板の代替である包装材料の性能を判定する場合がある。
このように、包装材料には、上述したような殺菌工程での条件よりも、より過酷な条件下においても、ガラスバリア性能を付与する必要があった。
米国特許第3442686号明細書 特公昭63−28017号公報 特許第3736130号公報 国際公開第04/048081号パンフレット
しかしながら、特許文献3、4に記載のような、基材層と蒸着層の間にプライマー層を設けたフィルムでは、過酷条件下での保存評価やPCT評価を行うと、基材層とプライマー層との密着性が低下して外観不良を起こしたり、ガスバリア性能が低下したりすることがあった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、高温・高湿下の過酷な条件においても、密着強度やガスバリア性能に優れるガスバリアフィルムに有用なプライマー組成物及びこれを用いたガスバリアフィルムを実現することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、従来のフィルムを用いて高温・高湿の過酷条件下で保存評価やPCT評価を行うと、基材層とプライマー層との密着性が低下する原因が、高温長時間の保管における基材層の熱収縮率と、プライマー層の熱収縮率が異なることに起因する界面付近で発生する歪み(応力)であることを見出した。また、基材層やプライマー層が硬い材質となる成分により形成されるため、界面で発生した歪(応力)を緩和ができないことも原因の1つであることが分かった。
さらに、耐熱性を有するフィルムなどの積層体の設計を行う場合は、通常、ガラス転移温度が高い材料あるいは結晶化度が高い材料を用いることが公知技術として知られているが、このような技術では上述した環境での密着性やガスバリア性能を付与することが困難であること分かった。
本発明者らは、基材層とプライマー層との界面付近で発生する歪み(応力)を低減するために、プライマー層を形成させるプライマー組成物を構成する成分として、素材としては耐熱性をもたないが、熱による収縮率も小さく、結晶化に伴う歪も小さく、かつ粘着的な接着機構を付与することが可能な成分を用いることを見出した。これにより、高温・高湿の過酷な環境下における保存評価においても、特に基材層とプライマー層との密着性が向上し、密着強度やガスバリア性能を維持することが可能なガスバリアフィルムを実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のプライマー組成物は、以下に示す成分P−1を主成分とする樹脂成分と、以下に示す成分P−2からなる架橋剤成分とを含有するプライマー組成物であって、前記成分P−1の含有量が、当該プライマー組成物100質量%中50〜70質量%であり、かつ、前記樹脂成分と前記架橋剤成分の質量比が樹脂成分/架橋剤成分=100/5〜100/100であることを特徴とするプライマー組成物。
成分P−1:ガラス転移温度が40℃未満であるポリエステルポリオール及び/または該ポリエステルポリオールのイソシアネート伸長物。
成分P−2:イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、一般式M(OR’)で示される遷移金属系化合物、リン系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤成分。(ただし、R’はアルキル基であり、Mは遷移金属であり、nはMのイオンの価数である。)
ここで、前記成分P−1が非晶性であることが好ましい。

さらに、前記樹脂成分が以下に示す成分P−3を含有し、かつ、該成分P−3と前記成分P−1との質量比が(成分P−1)/(成分P−3)=99/1〜50/50であることが好ましい。
成分P−3:前記成分P−1と非相溶であり、かつ、ガラス転移温度が40℃以上であるポリオール及び/または該ポリオールのイソシアネート伸長物。
また、前記ポリオールが、アクリルポリオール及び/またはカーボネートポリオールであることが好ましい。
また、以下に示す成分P−4を含有することが好ましい。
成分P−4:一般式R−Si(OR’)で示されるオルガノシランあるいはその加水分解物、及び/または、一般式M(OR’)で示される1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物。(ただし、Rはアルキル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基よりなる群から選ばれる官能基であり、R’はアルキル基であり、Mは金属であり、nはMのイオンの価数である。)
また、本発明のガスバリアフィルムは、前記プライマー組成物より形成されるプライマー組成物層を、基材層の一方の面上に積層した積層体を有し、かつ、該積層体のプライマー組成物層上に、蒸着層、蒸着層/蒸着用オーバーコート層、蒸着用プライマー層/蒸着層、蒸着用プライマー層/蒸着層/蒸着用オーバーコート層よりなる群より選ばれる1種が積層していることを特徴とする。
ただし、蒸着層上に蒸着用オーバーコート層が積層し、蒸着用プライマー層上に蒸着層が積層するものとする。
ここで、前記蒸着層は、厚さが5〜300nmであり、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化インジウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の無機酸化物より形成されることが好ましい。
さらに、前記蒸着用プライマー層が、以下に示す成分H−1に対し、以下に示す成分H−2及び/または成分H−3を配合した2種類以上の化合物より形成されることが好ましい。
成分H−1:ガラス転移温度が40℃以上であるポリエステルポリオール、該ポリエステルポリオールのイソシアネート伸長物、アクリルポリオール、該アクリルポリオールのイソシアネート伸長物、カーボネートポリオール、該カーボネートポリオールのイソシアネート伸長物よりなる群から選ばれる少なくとも1種。
成分H−2:イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、一般式M(OR’)で示される遷移金属系化合物、リン系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤。(ただし、R’はアルキル基であり、Mは遷移金属であり、nはMのイオンの価数である)
成分H−3:一般式R−Si(OR’)で示されるオルガノシランあるいはその加水分解物、及び/または、一般式M(OR’)で示される1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物。(ただし、Rはアルキル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基よりなる群から選ばれる官能基であり、R’はアルキル基であり、Mは金属であり、nはMのイオンの価数である)
また、前記蒸着用オーバーコート層が、以下に示す成分O−1と成分O−2とを配合した2種類以上の化合物より形成されることが好ましい。
成分O−1:水溶性高分子。
成分O−2:一般式R−Si(OR’)で示されるオルガノシランあるいはその加水分解物、一般式M(OR’)で示される1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物、リン系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種。(ただし、Rはアルキル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基よりなる群から選ばれる官能基であり、R’はアルキル基であり、Mは金属であり、nはMのイオンの価数である。)
本発明によれば、高温・高湿下の過酷な条件においても、密着強度やガスバリア性能に優れるガスバリアフィルムに有用なプライマー組成物を実現できる。
また、本発明のプライマー組成物によれば、高温・高湿下の過酷な条件においても、密着強度やガスバリア性能に優れるガスバリアフィルムが得られる。
さらに、本発明のガスバリアフィルムによれば、エレクトロニクス部材や建装材の分野など、より高温・高湿の過酷な条件での保存評価が必要な場合においても、好適に用いることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[プライマー組成物]
本発明のプライマー組成物は、樹脂成分と架橋剤成分とを有する。
<樹脂成分>
樹脂成分は、以下に示す成分P−1を主成分とする。また、樹脂成分は、成分P−1のみからなってもよく、成分P−1以外の成分を含有してもよい。
樹脂成分の含有量はプライマー組成物100質量%中、25〜95質量%が好ましく、35〜80質量%がより好ましく、50〜70質量%が特に好ましい。
(成分P−1)
成分P−1は、樹脂成分の主成分となるものであり、ガラス転移温度が40℃未満であるポリエステルポリオール及び/または該ポリエステルポリオールのイソシアネート伸長物である。
ガラス転移温度が40℃以上であると、形成されるプライマー組成物層が、基材層との界面で発生した歪(応力)を緩和することが困難となる。ガラス転移温度は25℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましい。
なお、本発明において「主成分」とは、樹脂成分100質量%中、50質量%以上含まれることを意味する。
ポリエステルポリオールとしては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸などの脂肪族系;芳香族系の二塩基酸の一種以上(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)と、ジオールの一種以上(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなど脂肪族系;シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリーコルなどの脂環式系;キシリレングリーコルなどの芳香族系)とを用いて得られる、ガラス転移温度が40℃未満の共重合ポリエステル樹脂などが挙げられる。また、該共重合ポリエステル樹脂の両末端が水酸基であるものも好適に用いられる。
さらに、前記共重合ポリエステル樹脂の両末端の水酸基を、イソシアネート化合物を用いて鎖伸長を施したポリエステルポリオールのイソシアネート伸長物が挙げられる。イソシアネート化合物としては、例えば、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種のイソシアネート化合物の単体、またはイソシアネート化合物からなるアダクト体、ビューレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。
また、成分P−1は、非晶性であることが好ましい。結晶性のものを用いると、結晶核形成、核成長といった結晶生成に伴って界面に凹凸が発生しやすくなり、基材層とプライマー組成物層との密着性が低下しやすくなる。成分P−1としては、非晶性ポリエステルポリオールが特に好ましく、結晶生成に伴う凹凸の発生を防止したり、結晶化に伴う体積収縮を抑制したりするので、密着性を向上させるという点で効果的である。さらに、非晶性ポリエステルポリオール用いることで、粘接着的な効果も期待できる。
なお、本発明において、「非結晶」は、「低結晶性で結晶化速度が遅いもの」も包含する。
成分P−1の含有量は、プライマー組成物100質量%中、25〜95質量%であり、35〜80質量%が好ましく、50〜70質量%がより好ましい。含有量が25質量%未満となると、得られるプライマー組成物層の基材層に対する接着強度が低下しやすくなる。一方、含有量が95質量%を越えると、ブロッキングが発生しやすくなる。
また、成分P−1は、樹脂成分100質量%中、50質量%〜100質量%含有されるのが好ましく、より好ましくは60〜90質量%であり、特に好ましくは70〜80質量%である。樹脂成分中の含有量が50質量%未満であると、接着強度が低下しやすくなる。
(成分P−3)
樹脂成分は、成分P−1のみからなってもよいが、以下に示す成分P−3を含有してもよい。成分P−3を含有することにより、ブロッキング防止の効果がさらに向上したり、後述するようにプライマー組成物層上に蒸着用プライマー層を設ける場合には、これらの相関密着性が向上したりする。
前記成分P−3は、前記成分P−1と非相溶であり、かつ、ガラス転移温度が40℃以上のポリオール及び/または該ポリオールのイソシアネート伸長物である。成分P−3と成分P−1が相溶系であると、両者が均一に混ざり合うことで中間的な性質を示すようになり、特に高温・高湿下における密着性(耐湿熱密着性)が低下しやすくなる。
また、ガラス転移温度が40℃未満であると、成分P−1、成分P−2と共に複合化した場合にブロッキング防止効果が低下しやすくなる。ガラス転移温度は60℃以上が好ましく、10℃以下がより好ましい。
前記ポリオールは、アクリルポリオール及び/またはカーボネートポリオールであることが好ましい。
アクリルポリオールとしては、(メタ)アクリル酸や、アルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等。)などのモノマーに対し、2−ヒドキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリルモノマーを共重合させた共重合体;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等。)、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルコキシ(メタ)アクリルアミド、(アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等。)、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマーを共重合させた共重合体;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマーなどを共重合させた共重合体;イソプロペニル-オキサゾリン、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、マレイン酸、アルキルマレイン酸モノエステル、フマル酸、アルキルフマル酸モノエステル、イタコン酸、アルキルイタコン酸モノエステル、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン等のモノマーを共重合させた共重合体などが挙げられる。
カーボネートポリオールとしては、カーボネート化合物とジオールとを反応させて得られるものが挙げられる。
カーボネート化合物としてはジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネートなどを用いることができる。ジオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリールなどの脂環式ジオール;キシリレングリールなど芳香族ジオールなどが挙げられる。これらカーボネート化合物やジオールは、各々1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、成分P−3としては、上述したようなポリオールの両末端の水酸基を、イソシアネート化合物を用いて鎖伸長を施したポリオールのイソシアネート伸長物を用いてもよい。イソシアネート化合物としては、成分P−1の説明において先に例示したイソシアネート化合物の中から、1種以上を選択して使用してもよい。
成分P−3は、前記成分P−1との質量比が(成分P−1)/(成分P−3)=99/1〜50/50となるように含有されるのが好ましく、より好ましくは80/20〜70/30である。成分P−3の質量割合が上記範囲外となると、耐湿熱密着性が低下しやすくなる。
本発明に用いられる樹脂成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の樹脂を必要に応じて含有してもよい。
その他の樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ポリウレタン系、ポリカーボネート系などの樹脂が挙げられる。
ところで、プライマー組成物は、樹脂成分として上述した成分P−1を含有するため、粘接着的な効果が期待できる反面、ガスバリアフィルムを製造して巻取りする際に、ブロッキングが発生しやすくなる傾向にある。
そこで、プライマー組成物に架橋剤成分を含有させることにより、成分P−1が架橋構造となるためブロッキングの発生を抑制できる。
また、プライマー組成物が上述したような異種の成分(成分P−1、成分P−3など)を含有する場合、溶剤に溶解している状態では各成分が均一な状態であっても、基材層上への塗布した後に乾燥させてプライマー組成物層を形成させると(すなわち、溶剤を除去すると)、造膜されると共に各成分が分離した状態(相分離構造)となりやすい。例えば、この相分離構造の形態が完全に海島構造(すなわち、成分P−1が形成する海層に、成分P−3が島状に分散した構造)を形成しているとすると、プライマー組成物層の表層には成分P−1からなるスキン層が存在することになるため、成分P−3の効果(ブロッキング防止、蒸着用プライマー層との密着性向上)を十分に発揮することが困難になる。
しかし、プライマー組成物が架橋剤成分を含有することにより各成分が複合化されて、プライマー組成物層が形成される際に相分離構造が生じるのを抑制することができる。
<架橋剤成分>
架橋剤成分は、以下に示す成分P−2からなる。
成分P−2は、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、一般式M(OR’)で示される遷移金属系化合物、リン系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤成分である。ただし、R’はアルキル基であり、Mは遷移金属であり、nはMのイオンの価数である。このような架橋剤成分は、ポリエステルポリオールの末端水酸基または末端カルボキシル基と反応して架橋構造を形成する。
イソシアネート化合物としては、成分P−1の説明において先に例示したイソシアネート化合物の中から、1種以上を選択して使用してもよい。
カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド化合物としてはN,N’−ジ−o−トルイルカルボジイミド、N,N’−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’−ジオクチルデシルカルボジイミド、N−トリイル−N’−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,2−ジ−t−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N’−フェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−トルイルカルボジイミドなどの単官能体を、誘導体化して多官能タイプにしたものが挙げられる。特に、成分P−1が、末端カルボキシル基を残したポリエステルポリオール、またはイソシアネート化合物により鎖伸長を施し、ウレタン結合を形成したポリエステルポリオール樹脂である場合は、カルボジイミド化合物が好適である。
一般式M(OR’)で示される遷移金属系化合物としては、ポリエステルポリオールの末端水酸基を遷移金属がキレート形成することで架橋するタイプが挙げられる。具体的には、アルキルチタネート、チタンアルコキシド、アルキルジルコネート、炭酸ジルコニウムアンモニウムなどの化合物が挙げられる。
リン系化合物としては、リン酸あるいはその塩が挙げられる。具体的には、オルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、またはこれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩;トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、ウルトラメタリン酸などの縮合リン酸、またはこれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩などが挙げられる。またリン酸トリフェニルなどのリン酸エステルも用いることができる。
架橋剤成分は、前記樹脂成分との質量比が(樹脂成分)/(架橋剤成分)=100/5〜100/100となるように含有される。好ましくは100/10〜100/50であり、より好ましくは100/20〜100/40である。架橋剤成分の質量割合が上記範囲より少なくなると、ブロッキングが発生しやすくなる。特に、樹脂成分が成分P−3を含有する場合、各成分の複合化が行われにくくなり、ブロッキングがより発生しやすくなり、相分離構造となりやすくなる。一方、架橋剤成分の質量割合が上記範囲より多くなると、均質なプライマー組成物層となりすぎる傾向にある。特に、樹脂成分が成分P−3を含有する場合、成分P−2は、成分P−1と成分P−3との中間的な性質を示すようになる傾向にある。その結果、各成分が均一に混ざりあい耐湿熱密着性が低下しやすくなる。
<成分P−4>
本発明のプライマー組成物は、上述した樹脂成分と架橋剤成分以外にも、必要に応じて、以下に示す成分P−4を含有してもよい。P−4を含有することにより、後述する蒸着層に対する密着性を向上させることが可能となり、プライマー組成物層に蒸着用プライマー層としての機能を付与させることができる。さらに、プライマー組成物層上に蒸着層を設けるに際して適切な硬さを付与させることもできる。
なお、蒸着用プライマー層とは、詳しくは後述するが、蒸着層に対する密着性が高く、一般的に基材層と蒸着層との間に設けられ、各層間の接着強度を高めるために用いられる。
P−4は、一般式R−Si(OR’)で示されるオルガノシランあるいはその加水分解物、及び/または、一般式M(OR’)で示される1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物である。ただし、Rはアルキル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基よりなる群から選ばれる官能基であり、R’はアルキル基であり、Mは金属であり、nはMのイオンの価数である。
一般式R−Si(OR’)で示されるオルガノシランあるいはその加水分解物としては、例えば、エチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシアプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、グリシドオキシトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、あるいはその加水分解物が挙げられる。中でもエポキシ基が含まれているグリシドオキシトリメトキシシランやエポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、イソシアネート基が含まれるイソシアネートプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。これらのオルガノシランは単量体に限られず、構造によってはニ量体、三量体などの化合物も用いることができる。
一般式M(OR’)で示される1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物としては、テトラエトキシシラン、トリプロポキシアルミニウム、あるいはその加水分解物が挙げられる。
なお、加水分解物を得る方法としては、金属アルコキシドに直接酸やアルカリ等を添加して加水分解を行う方法など既知の方法を用いることができる。また、必要に応じて、錫化合物など反応を促進させる反応触媒を添加してもよい。
成分P−4の含有量は、特に制限されないが、成分P−1、または成分P−3が配合される場合は成分P−1と成分P−3との合計100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、20〜50質量部がより好ましい。成分P−4の含有量が1質量部未満であると、プライマー組成物を蒸着層のプライマーとして用いた場合、蒸着層に対する密着性が低下しやすくなる。一方、成分P−4の含有量が100質量部を越えると、蒸着層に対する密着性の向上の効果は飽和してしまう。
(その他)
本発明においては、上述した各成分を含むプライマー組成物を後述するガスバリアフィルムに用いる際には、溶剤に溶解させた状態で用いるのが好ましい。
溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶剤の含有量は、プライマー組成物100質量部に対して100〜100000質量部が好ましく、200〜10000質量部がより好ましい。
以上のように、本発明のプライマー組成物は、成分P−1を樹脂成分の主成分として、含有することにより、粘着による密着性を向上させ、高温・高湿の過酷な条件下において基材層とプライマー組成物層との界面で生じる歪みの低減し、応力を緩和できる。
また、成分P−2からなる架橋剤成分を含有することにより、ブロッキングの発生を防止し、成分P−1と成分P−3の双方の機能を両立化(すなわち、架橋構造形成による相分離構造を抑制)できる。
さらに、必要に応じて成分P−3を樹脂成分として含有することにより、ブロッキングの発生をより防止し、プライマー組成物層上に蒸着用プライマー層を設ける場合は、両者の密着性を向上させる。
また、必要に応じて成分P−4を含有することにより、プライマー組成物層上に蒸着層を設ける場合は、両者の密着性を向上させると共に、蒸着層を形成させるに適当なプライマー組成物層の硬さを付与することができる。
[ガスバリアフィルム]
本発明のガスバリアフィルムは、上述したプライマー組成物より形成されるプライマー組成物層を備えている。
図1は、本発明のガスバリアフィルム一実施形態を説明した断面図である。図示例のガスバリアフィルム1は、基材層11の一方の面上にプライマー組成物層12が積層した積層体10を有し、かつ、該積層体10のプライマー組成物層12上に、蒸着層13が積層している。
また、図2に示すように、ガスバリアフィルム2は、積層体10のプライマー組成物層12上に、蒸着層13と蒸着用オーバーコート層14とが順次積層した形態であってもよい。
さらに、図3に示すように、ガスバリアフィルム3は、積層体10のプライマー組成物層12上に、蒸着用プライマー層15と蒸着層13とが順次積層した形態であってもよい。
また、図4に示すように、ガスバリアフィルム4は、積層体10のプライマー組成物層12上に、蒸着用プライマー層15と蒸着層13と蒸着用オーバーコート層14とが順次積層した形態であってもよい。
ここで、各層について説明する。
(基材層)
基材層11を形成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、組成上PETとPCTの共重合体であるPET−G(イーストマンケミカル)など共重合タイプを含む各種ポリエステルフィルム;ポリアミド6、ポリアミド6,6、芳香族ポリアミドやポリイミドなどの共重合タイプを含む各種ポリアミド(イミド)フィルム;ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などの共重合タイプを含むポリオレフィン系フィルム;ポリスチレン系フィルム(PS);ポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリアクリルニトリル(PAN)などのアクリル系フィルム、またはこれらのビニル/(メタ)アクリル系樹脂の共重合体からなるフィルム;ポリカーボネート(PC)系フィルム;ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などの各種含ハロゲン系樹脂フィルムなどを用いることができる。これらフィルムは延伸であってもよく、未延伸であってもよい。
また、これらフィルムは、得られるガスバリアフィルムの用途に応じて使い分けることができ、例えば一般的な包装材として用いる場合は、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド6、ポリプロピレン樹脂などが好ましい。また、高温・高湿の過酷な条件下で用いる場合は、ポリエチレンナフタレートやポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレートなどの高耐熱性ポリエステルフィルム、ポリカーボネート系フィルム、アクリル系樹脂フィルムや各種含ハロゲン系樹脂フィルムを用いるのが好ましい。
これらのフィルムには、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが添加されていてもよい。また、後述するプライマー組成物層12との密着性を向上させるという点でコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理を施しておいても構わない。さらに、薬品処理や溶剤処理などを施してもよい。
基材層11の厚さは、特に制限されないが、3〜200μmが好ましく、6〜30μmがより好ましい。
(プライマー組成物層)
プライマー組成物層12は、上述した本発明のプライマー組成物により形成される。これにより、高温・高湿の過酷な条件下においても、基材層11とプライマー組成物層12との密着性が低下しにくいので、得られるガスバリアフィルムはエレクトロニクス分野や建装材分野でも、好適に用いることができる。
プライマー組成物層12の厚さは、0.01〜50μmが好ましく、0.1〜2μmがより好ましい。
(蒸着層)
蒸着層13は酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化インジウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の無機酸化物より形成される。中でも、透明性を有し、かつ酸素、水蒸気等のガスバリア性を有する点で、酸化珪素や酸化アルミニウムが好ましい。
なお、本発明においては、上述した無機酸化物以外にも、ガスバリア性以外の機能を有する無機蒸着膜も用いてもよく、これにより各種機能を有するガスバリアフィルムが得られる。
蒸着層13の厚さは、用いられる無機酸化物の種類や構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜300nmが好ましく、10〜150nmがより好ましい。厚さが5nm未満であると、均一な膜が得られにくくなり、ガスバリアの機能が十分に発揮できにくくなる。一方、厚さが300nmを越えると、得られるガスバリアフィルムが柔軟性に乏しくなり、折り曲げたり引っ張ったりするなどの外的な要因により、亀裂が生じる場合がある。
(蒸着用オーバーコート層)
蒸着用オーバーコート層14は、本発明のガスバリアフィルムのガスバリア性をより向上させる目的で、上述した蒸着層13上に設けられる(図2)。
蒸着用オーバーコート層14は、以下に示す成分O−1と成分O−2とを配合した2種類以上の化合物より形成される。
成分O−1は、水溶性高分子であり、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコールが好ましい。
成分O−2は、一般式R−Si(OR’)で示されるオルガノシランあるいはその加水分解物、一般式M(OR’)で示される1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物、リン系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。これらは、成分P−2、成分P−4の説明において先に例示した各金属アルコキシド及びその加水分解物、一般式R−Si(OR’)で示されるオルガノシランあるいはその加水分解物、一般式M(OR’)で示される1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物、リン系化合物の中から、1種以上を選択して使用してもよい。ただし、Rはアルキル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基よりなる群から選ばれる官能基であり、R’はアルキル基であり、Mは金属であり、nはMのイオンの価数である。
成分O−1と成分O−2は、質量比が(成分O−1)/(成分O−2)=99/1〜70/30となるように配合されるのが好ましい。
蒸着用オーバーコート層14の厚さは、0.01〜50μmが好ましく、0.1〜2μmがより好ましい。
(蒸着用プライマー層)
蒸着用プライマー層15は、蒸着層13に対する密着性に優れており、蒸着用プライマー層15を設ける場合は、図3に示すように、積層体10のプライマー組成物層12と蒸着層13の間に設けるのがよい。また、蒸着用プライマー層15を設けることにより、ブロッキングをより防止できる。
蒸着用プライマー層15は、以下に示す成分H−1に対し、成分H−2及び/または成分H−3を配合した2種以上の化合物より形成される。
成分H−1は、ガラス転移温度が40℃以上であるポリエステルポリオール、該ポリエステルポリオールのイソシアネート伸長物、アクリルポリオール、該アクリルポリオールのイソシアネート伸長物、カーボネートポリオール、該カーボネートポリオールのイソシアネート伸長物よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。ガラス転移温度が40℃未満であると、蒸着層13との密着性が低下しやすくなる。ガラス転移温度は50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。
ポリエステルポリオールは、成分P−1の説明において先に例示した共重合ポリエステル樹脂の共重合成分を調整することで、ガラス転移温度が40℃以上となるので、これを用いればよい。具体的には、芳香族ジカルボン酸などの剛直なモノマーを用いることにより、ガラス転移温度が40℃以上のポリエステルポリオールが得られる。
さらにこのポリエステルポリオールの両末端の水酸基を、イソシアネート化合物を用いて鎖伸長を施したポリエステルポリオールのイソシアネート伸長物が挙げられる。イソシアネート化合物としては、成分P−1の説明において先に例示したイソシアネート化合物の中から、1種以上を選択して使用してもよい。
ガラス転移温度が40℃以上のアクリルポリオール、カーボネートポリオールとしては、成分P−3の説明において先に例示した各アクリルポリオール、カーボネートポリオールから、1種以上を選択してもよい。さらに、上述したようなポリオールの両末端の水酸基を、イソシアネート化合物を用いて鎖伸長を施したポリオールのイソシアネート伸長物を用いてもよい。イソシアネート化合物としては、成分P−1の説明において先に例示したイソシアネート化合物の中から、1種以上を選択して使用してもよい。
なお、成分H−1として、アクリルポリオールやカーボネートポリオール、またはこれらのイソシアネート伸長物を用いる場合、成分P−3と成分H−1は同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
成分H−2はイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、一般式M(OR’)で示される遷移金属系化合物、リン系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤である。これらは、成分P−2の説明において先に例示した各ソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、一般式M(OR’)で示される遷移金属系化合物、リン系化合物の中から、1種以上を選択して使用してもよい。ただし、R’はアルキル基であり、Mは遷移金属であり、nはMのイオンの価数である。
成分H−3は、一般式R−Si(OR’)で示されるオルガノシランあるいはその加水分解物、及び/または、一般式M(OR’)で示される1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物である。これらは、先に例示した各オルガノシラン、その加水分解物、金属アルコキシド、その加水分解物の中から、1種以上を選択して使用してもよい。ただし、Rはアルキル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基よりなる群から選ばれる官能基であり、R’はアルキル基であり、Mは金属であり、nはMのイオンの価数である。
成分H−2及び/または成分H−3の配合量(ただし、成分H−2と成分H−3を両方配合する場合はその合計の配合量)は、成分H−1(100質量部)に対して、1〜99質量部が好ましく、30〜70質量部がより好ましい。
蒸着用プライマー層15の厚さは、0.01〜50μmが好ましく、0.1〜2μmがより好ましい。
なお、本発明においては、図4に示すように、積層体10のプライマー組成物層12上に、蒸着用プライマー層15、蒸着層13、蒸着用オーバーコート層14を順次積層してもよい。このような層構成とすることにより、ガスバリアフィルムの密着強度とガスバリア性がより向上する。
このように、本発明のガスバリアフィルムは、上述した各層が積層した層構造となっている。各層を形成させる方法はとしては、特に制限されず、公知の技術を用いることができる。例えば、プライマー組成物層12は、プライマー組成物をグラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、マイクログラビアコート、コンマコート、エアナイフコート、メイヤーバーコート、ディップコート、ダイコート、スプレーコートなどの各種コーティング手法にて基材層11上に塗布すればよい。蒸着用オーバーコート層14、蒸着用プライマー層15を形成させる場合も、同様で、各層を形成する成分(材料)を上述したコーティング手法を用いて、対象となる層に塗布すればよい。
なお、プライマー組成物層12上に蒸着用プライマー層15を積層させる場合は、それぞれ単独でコーティングを行っても構わないが、プライマー組成物層12が蒸着用プライマー層13よりもブロッキングしにくいことから、2ヘッドのインラインで塗工しても構わない。
また、蒸着層13を形成させる方法としては、通常の真空蒸着法(物理蒸着法:PVD)により形成させてもよく、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いて形成させてもよい。真空蒸着法を適用する際に用いる真空蒸着装置の加熱手段としては、電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式が好ましい。また、プライマー組成物層12と基材層11の密着性や、プライマー組成物層12の緻密性を向上させる目的で、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いてもよい。さらに、蒸着層13の透明性を高める目的で、蒸着の際に、酸素ガスなど吹き込んで行う反応蒸着法を用いてもよい。
なお、本発明においては、必要に応じてガスバリアフィルムの両面に、さらに接着剤層を介して耐候性基材層を設けてもよい。例えば図5に示すように、基材層11と、蒸着用オーバーコート層14の、他の層と接していない側の面上に、接着剤層16と耐候性基材層17を順次積層させたものをガスバリアフィルム5としてもよい。
接着剤層16や耐候性基材層17を形成させる方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
なお、耐候性基材とは、高温・高湿の保存環境下においても加水分解しにくい基材のことである。
接着剤層16を形成する接着剤としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールを主剤としたポリウレタン系接着剤が好ましい。
接着剤層16の厚さは、0.1〜30μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。
耐候性基材層17を形成する材料としては、耐候性を示すものであれば特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、などの各種ポリエステルフィルムが好ましい。
以上のように、本発明のプライマー組成物によれば、高温・高湿下の過酷な条件においても、密着強度やガスバリア性能に優れるガスバリアフィルムが得られる。
特に、エレクトロニクス分野や建装材分野など、過酷な条件での保存評価が必要となる場合でも、密着性やガスバリア性能を低下させることなく適用することができる。
さらに、本発明のプライマー組成物を用いれば、本発明の構成例とは異なる層構成の材料、例えば各種無機化合物蒸着層(ITOなど)や、アクリル系ハードコートなどの機能性材料層を、プライマー組成物層を介して基材層に設けることで、機能性材料層の基材層に対する耐湿熱密着性を向上させることができ、ガスバリア性だけでなく幅広い領域での機能性フィルムを設計することが可能になる。
なお、本発明のガスバリアフィルムは、ボイル殺菌やレトルト殺菌においても十分耐えうるものであり、食品、非食品、医薬品を問わず、従来の高温殺菌が必要な包装材料としても好適に用いることができる。
以下に試験を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら試験に限定されるものではない。
[耐湿熱密着性の評価1]
各試験例のプライマー組成物を基材層に設けたときの耐湿熱密着性についての評価を行った。なお、各試験例で用いるプライマー組成物は、表1に示す成分と溶剤(トルエン/メチルエチルケトン=50/50)を混合した溶剤系のプライマー組成物である。ただし、プライマー組成物100質量部に対して溶剤が2000質量部となるように混合した。
まず、基材層としてポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(未処理、厚さ:12μm)または、ポリフッ化ビニル(PVF)フィルム(コロナ処理、厚さ:25μm)を用い、図6に示すように、各基材層11上に各試験例のプライマー組成物を0.3〜0.5g/mとなるようにグラビアコートにより塗布し、積層体10を作製した。
次いで、積層体10の両面に、2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて、ドライラミネート法により、耐候性ポリエチレンテレフタレート(PET)基材(固相重合により数平均分子量を増加させた高分子量PET、厚さ:188μm)を貼り合わせ、層構成が「耐候性(PET)基材層17/接着剤層16/基材層11/プライマー組成物層12/接着剤層16/耐候性(PET)基材層17」のフィルムを得た。
<評価>
以下に示す各測定・評価結果を表1に示す。
(初期におけるラミネート強度の測定)
得られたフィルムの、基材層11/プライマー組成物層12間のラミネート強度を、万能試験機(オリエンテック(株)製、「テンシロン」)を用い、クロスヘッドスピード300mm/分のT型剥離で測定した。
(保存環境下におけるラミネート強度の測定)
得られたフィルムを用い、PCT評価(加圧蒸気による促進試験)を行った。
まず、フィルムを105℃−100%相対湿度の環境下で168時間保存した。次いで、基材層11/プライマー組成物層12間のラミネート強度を、上述した方法と同様にして測定した。
(接着強度の評価)
PCT評価後の、基材層11/プライマー組成物層12間のラミネート強度を、プライマー組成物の耐湿熱密着性の評価とした。評価基準を以下に示す。
○:PCT評価後のラミネート強度が1N/15mm以上。
×:PCT評価後のラミネート強度が1N/15mm未満。
(ブロッキングの評価)
グラビアコートにより作製した積層体10をロール状態にし、ブロッキングの影響による次工程(ドライラミネート法により耐候性(PET)基材を積層体10に張り合わせる工程)の加工のしやすさをブロッキングの評価とした。評価基準を以下に示す。
○:ブロッキングが発生しない(加工しやすい。)。
△:加工時に剥離音が聞こえるが、加工できる。
×:ブロッキングが発生することで、ロールの供給ができず、加工不能。
(総合評価)
上述した各項目(ラミネート強度の測定、剥離面の様子、ブロッキングの評価)の結果をもとに、総合評価を行った。評価基準を以下に示す。なお、△以上を合格とした。
○:全ての項目が○である。
△:いずれかの項目に△はあるが、×はない。
×:いずれかの項目に×がある。
<試験例1>
成分P−1として、ガラス転移温度(Tg)=85℃のアクリルポリオール(AP)を用い、成分P−2として、イソシアネート化合物(I:イソホロンジイソシアネート(IPDI)のアダクト体)を用い、成分P−1と成分P−2の質量比(固形分比)が(成分P−1)/(成分P−2)=100/60となるように調整した溶剤系のプライマー組成物を用いた。
<試験例2>
成分P−1として、ガラス転移温度(Tg)=62℃のポリエステルポリオール(PP)を用い、成分P−2として、イソシアネート化合物(I)を用い、成分P−1と成分P−2の質量比(固形分比)が(成分P−1)/(成分P−2)=100/20となるように調整した溶剤系のプライマー組成物を用いた。
<試験例3>
成分P−1として、ガラス転移温度(Tg)=7℃のポリエステルポリオール(PP)を用い、成分P−2として、イソシアネート化合物(I)を用い、成分P−1と成分P−2の質量比(固形分比)が(成分P−1)/(成分P−2)=100/1となるように調整した溶剤系のプライマー組成物を用いた。
<試験例4>
試験例3で用いたプライマー組成物において、質量比を(成分P−1)/(成分P−2)=100/25となるように調整した溶剤系のプライマー組成物を用いた。
<試験例5>
成分P−1として、ガラス転移温度(Tg)=7℃のポリエステルポリオール(PP)を用い、成分P−2として、イソシアネート化合物(I)を用い、成分P−3として、ガラス転移温度(Tg)=85℃のアクリルポリオール(AP)を用い、成分P−1、成分P−2、成分P−3の質量比(固形分比)が(成分P−1)/(成分P−2)/(成分P−3)=75/25/25となるように調整した溶剤系のプライマー組成物を用いた。
<試験例6>
試験例5で用いたプライマー組成物において、質量比が(成分P−1)/(成分P−2)/(成分P−3)=25/25/75となるように調整した溶剤系のプライマー組成物を用いた。
<試験例7>
成分P−3として、ガラス転移温度(Tg)=62℃のポリエステルポリオール(PP)を用いた以外は試験例5と同様にして調整した溶剤系のプライマー組成物を用いた。
<試験例8>
成分P−3として、ガラス転移温度(Tg)=62℃のポリエステルポリオール(PP)を用い、質量比が(成分P−1)/(成分P−2)/(成分P−3)=25/25/75となるようにした以外は試験例5と同様にして調整した溶剤系のプライマー組成物を用いた。
<試験例9>
試験例5で用いたプライマー組成物において、質量比が(成分P−1)/(成分P−2)/(成分P−3)=75/1/25となるように調整した溶剤系のプライマー組成物を用いた。
<試験例10>
試験例5で用いたプライマー組成物において、質量比が(成分P−1)/(成分P−2)/(成分P−3)=75/100/25となるように調整した溶剤系のプライマー組成物を用いた。
<試験例11>
試験例5で用いたプライマー組成物において、質量比が(成分P−1)/(成分P−2)/(成分P−3)=75/150/25となるように調整した溶剤系のプライマー組成物を用いた。
<試験例12>
成分P−2として、カルボジイミド系架橋剤(CDI:ジフェニルカルボジイミドの多官能誘導体)を用いた以外は試験例5と同様にして調整した溶剤系のプライマー組成物を用いた。
<試験例13>
成分P−2として、チタン系架橋剤(Ti:チタニウムイソプロポキシド)を用いた以外は試験例5と同様にして調整した溶剤系のプライマー組成物を用いた。
<試験例14>
成分P−2として、リン系架橋剤(P:リン酸トリフェニル)を用いた以外は試験例5と同様にして調整した溶剤系のプライマー組成物を用いた。
<試験例15>
成分P−1として、ガラス転移温度(Tg)=30℃であり、かつ低結晶性(結晶化速度が遅い)のポリエステルポリオールエマルジョン(PP−e)を用い、成分P−2として、水系のウレタン用イソシアネート化合物(I−aq)を用い、成分P−3として、ガラス転移温度(Tg)=85℃のアクリルポリオールエマルジョン(AP−e)を用いた以外は、試験例5と同様にして調整した溶剤系のプライマー組成物を用いた。
Figure 0005115010
試験例1、2は、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上のアクリルポリオール、及びポリエステルポリオールを成分P−1として用いたため、PCT評価を行うと、基材層とプライマー組成物層とが剥離してしまい、耐湿熱密着性が低下しやかった。また、ラミネート強度も初期に比べて低下していた。
また、試験例6、8は、プライマー組成物中の成分P−1の含有量が20質量%であったため、耐湿熱密着性が低下しやすくかった。
さらに、試験例11は、樹脂成分と架橋剤成分の質量比が樹脂成分/架橋剤成分=100/150であったため、耐湿熱密着性が低下しやすくかった。
なお、樹脂成分と架橋剤成分の質量比が樹脂成分/架橋剤成分=100/1の場合(試験例3、9)は、ブロッキングが発生したため、ラミネート強度の測定及びプライマー組成物の耐湿熱密着性評価を実施することができなかった。特に試験例3は成分P−1の含有量が95質量%を超えたため、ブロッキングしやすかった。
一方、ガラス転移温度(Tg)が40℃未満のポリエステルポリオールを成分P−1として用いた場合、特にガラス転移温度(Tg)が40℃以上のポリオールを成分P−3として用い、かつ、樹脂成分と架橋剤成分の質量比が樹脂成分/架橋剤成分=100/25または、100/100である場合(試験例5、7、10、12〜15)は、PCT評価を行っても、基材層とプライマー組成物層とは剥離せず、耐湿熱密着性を維持することができた。
[耐湿熱密着性の評価2]
各試験例のプライマー組成物を基材層に設け、さらに多層構造としたときの耐湿熱密着性および、蒸着用プライマーの代替の可能性についての評価を行った。なお、各試験例で用いるプライマー組成物は、表2に示す成分と溶剤(トルエン/メチルエチルケトン=50/50)を混合した溶剤系のプライマー組成物である。ただし、プライマー組成物100質量部に対して溶剤が2000質量部となるように混合した。
まず、以下に示す2種類のサンプルを作製した。
(サンプル1)
基材層としてポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(未処理、厚さ:12μm)を用い、基材層上に各試験例のプライマー組成物を0.3〜0.5g/mとなるようにグラビアコートにより塗布し、積層体を作製した。
(サンプル2)
基材層としてポリエチレンテレフタタレート(PET)フィルム(未処理、厚さ:12μm)を用い、基材層上に各試験例のプライマー組成物を0.3〜0.5g/mとなるようにグラビアコートにより塗布し、積層体を作製した。さらに、プライマー組成物層上に、ガラス転移温度(Tg)=85℃のアクリルポリオール(AP;成分H−1)/イソシアネート化合物(I;成分H−2)/シランカップリング剤(SC;成分H−3)=100/55/10(固形分比)からなる蒸着用プライマー層15−1、またはガラス転移温度(Tg)=62℃のポリエステルポリオール(PP;成分H−1)/イソシアネート化合物(I;成分H−2)=100/20(固形分比)からなる蒸着用プライマー層15−2を、0.1〜0.2g/mとなるようにグラビアコートにより設けた。
このようにして得られたサンプル1の基材層上、およびサンプル2の蒸着用プライマー層上に、シリカからなる蒸着層を厚さが30nmになるようにPVD法(物理蒸着法)により設けた。さらに、ポリビニルアルコール(成分O−1)とテトラエトキシシラン(成分O−2)を主成分とする水系の蒸着用オーバーコート層をグラビアコートにより設けた。
次いで、基材層と蒸着用オーバーコート層の両面に、2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて、ドライラミネート法により、耐候性ポリエチレンテレフタレート(PET)基材(固相重合により数平均分子量を増加させた高分子量PET、厚さ:188μm)を貼り合わせ、層構成が図5に示すような「耐候性(PET)基材層17/接着剤層16/基材層11/プライマー組成物層12/蒸着層13/蒸着用オーバーコート層14/接着剤層16/耐候性(PET)基材層17」のフィルム(層構成1)と、層構成が「耐候性(PET)基材層/接着剤層/基材層/プライマー組成物層/蒸着用プライマー層/蒸着層/蒸着用オーバーコート層/接着剤層/耐候性(PET)基材層」のフィルム(層構成2)を得た。
<評価>
以下に示す各測定・評価結果を表2に示す。
(初期におけるラミネート強度の測定)
得られた各フィルムの、基材層/プライマー組成物層間、または基材層/蒸着用プライマー層間のラミネート強度を、万能試験機(オリエンテック(株)製、「テンシロン」)を用い、クロスヘッドスピード300mm/分のT型剥離で測定した。
(初期におけるガスバリア性の評価)
得られた各フィルムの初期における酸素及び水蒸気のバリア性を評価した。
酸素バリア性(O);
モダンコントロール社製のモコンを用い、30℃−70%相対湿度の環境下で測定した。
水蒸気バリア性(HO);
モダンコントロール社製のモコンを用い、40℃−90%相対湿度の環境下で測定した。
(保存環境下におけるラミネート強度の測定)
得られたフィルムを用い、PCT評価(加圧蒸気による促進試験)を行った。
まず、フィルムを、105℃−100%相対湿度の環境下で168時間保存した。次いで、基材層/プライマー組成物層間、または基材層/蒸着用プライマー層間のラミネート強度を、上述した方法と同様にして測定した。
(接着強度の評価)
PCT評価後の、基材層/プライマー組成物層間、または基材層/蒸着用プライマー層間のラミネート強度を、プライマー組成物の耐湿熱密着性の評価とした。評価基準を以下に示す。
○:PCT評価後のラミネート強度が1N/15mm以上。
×:PCT評価後のラミネート強度が1N/15mm未満。
(ガスバリア性の評価)
得られたフィルムの保存環境下における酸素及び水蒸気のバリア性を、上述した方法と同様にして評価した。
(総合評価)
初期及び保存環境下(PCT評価後)におけるガスバリア性の評価結果と、密着性の評価結果をもとに、総合評価を行った。評価基準を以下に示す。
○:酸素バリア性または水蒸気バリア性の測定結果において、PCT評価後の結果が初期の結果の10倍未満であり、ラミナート強度が1N/15mm以上。
×:酸素バリア性または水蒸気バリア性の測定結果において、PCT評価後の結果が初期の結果の10倍以上であり、ラミナート強度1N/15mm未満。
<試験例16>
プライマー組成物を用いず、基材層上に直接蒸着用プライマー層15−1を設けたサンプルを用い、層構成2(ただし、プライマー組成物層は無し)としたフィルムを用いた。
<試験例17>
プライマー組成物を用いず、基材層上に直接蒸着用プライマー層15−2を設けたサンプルを用い、層構成2(ただし、プライマー組成物層は無し)としたフィルムを用いた。
なお、蒸着用プライマー層15−2は、試験例2で用いたプライマー組成物に相当する。
<試験例18>
試験例5で用いたプライマー組成物と同様のものを用い、プライマー組成物層上に蒸着用プライマー層15−1を設けたサンプル2を作製し、層構成2としたフィルムを用いた。
<試験例19>
試験例5で用いたプライマー組成物と同様のものを用い、プライマー組成物層上に蒸着用プライマー層15−2を設けたサンプル2を作製し、層構成2としたフィルムを用いた。
<試験例20>
試験例5で用いたプライマー組成物に、さらに成分P−4としてシランカップリング剤を、質量比が(成分P−1)/(成分P−2)/(成分P−3)/(成分P−4)=75/25/25/25となるように配合したものを用いてサンプル1を作製し、層構成1としたフィルムを用いた。
<試験例21>
試験例20で用いたプライマー組成物と同様のものを用い、プライマー組成物層上に蒸着用プライマー層15−1を設けたサンプル2を作製し、層構成2としたフィルムを用いた。
<試験例22>
試験例20で用いたプライマー組成物と同様のものを用い、プライマー組成物層上に蒸着用プライマー層15−2を設けたサンプル2を作製し、層構成2としたフィルムを用いた。
Figure 0005115010
プライマー組成物を用いない場合(試験例16、17)は、PCT評価を行うと、基材層と蒸着用プライマー層とが剥離してしまい、耐湿熱密着性が低下しやかった。また、ラミネート強度も初期に比べて低下していた。さらに、PCT評価を行うことで、フィルムを通過する酸素や水蒸気の量が初期に比べて増え、ガスバリア性が低下した。
一方、プライマー組成物を用いた場合(試験例18〜22)は、PCT評価を行っても、基材層とプライマー組成物層とは剥離せず、耐湿熱密着性やガスバリア性を維持することができた。
また、蒸着用プライマー層を用いない場合(試験例20)でも、耐湿熱密着性やガスバリア性を維持することができた。これにより、プライマー組成物層が蒸着用プライマー層と同等の効果を有することが明らかとなった。
以上の結果から、本発明のプライマー組成物より得られるプライマー組成物層は、高温多湿下における苛酷な環境下においても、各種基材層との耐湿熱密着性に優れていた。また、本発明のプライマー組成物は、蒸着用プライマー層の耐湿熱密着性を向上させるためのプライマー層として用いたり、蒸着用プライマ層の代わりに用いたりすることも可能である。
本発明のガスバリアフィルムの一例を示す断面図である。 本発明のガスバリアフィルムの他の例を示す断面図である。 本発明のガスバリアフィルムの他の例を示す断面図である。 本発明のガスバリアフィルムの他の例を示す断面図である。 本発明のガスバリアフィルムの他の例を示す断面図である。 実施例(耐湿熱密着性の評価1)で製造したフィルムを示す断面図である。
符号の説明
1、2、3、4、5:ガスバリアフィルム、10:積層体、11:基材層、12:プライマー組成物層、13:蒸着層、14:蒸着用オーバーコート層、15:蒸着用プライマー層、16:接着剤層、17:耐候性基材層

Claims (9)

  1. 以下に示す成分P−1を主成分とする樹脂成分と、以下に示す成分P−2からなる架橋剤成分とを含有するプライマー組成物であって、
    前記成分P−1の含有量が、当該プライマー組成物100質量%中50〜70質量%であり、かつ、前記樹脂成分と前記架橋剤成分の質量比が樹脂成分/架橋剤成分=100/5〜100/100であることを特徴とするプライマー組成物。
    成分P−1:ガラス転移温度が40℃未満であるポリエステルポリオール及び/または該ポリエステルポリオールのイソシアネート伸長物。
    成分P−2:イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、一般式M(OR’)で示される遷移金属系化合物、リン系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤成分。(ただし、R’はアルキル基であり、Mは遷移金属であり、nはMのイオンの価数である。)
  2. 前記成分P−1が非晶性であることを特徴とする請求項1に記載のプライマー組成物。
  3. 前記樹脂成分が以下に示す成分P−3を含有し、かつ、該成分P−3と前記成分P−1との質量比が(成分P−1)/(成分P−3)=99/1〜50/50であることを特徴とする請求項1または2に記載のプライマー組成物。
    成分P−3:前記成分P−1と非相溶であり、かつ、ガラス転移温度が40℃以上であるポリオール及び/または該ポリオールのイソシアネート伸長物。
  4. 前記ポリオールが、アクリルポリオール及び/またはカーボネートポリオールであることを特徴とする請求項3に記載のプライマー組成物。
  5. 以下に示す成分P−4を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプライマー組成物。
    成分P−4:一般式R−Si(OR’)で示されるオルガノシランあるいはその加水分解物、及び/または、一般式M(OR’)で示される1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物。(ただし、Rはアルキル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基よりなる群から選ばれる官能基であり、R’はアルキル基であり、Mは金属であり、nはMのイオンの価数である。)
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のプライマー組成物より形成されるプライマー組成物層を、基材層の一方の面上に積層した積層体を有し、かつ、該積層体のプライマー組成物層上に、蒸着層、蒸着層/蒸着用オーバーコート層、蒸着用プライマー層/蒸着層、蒸着用プライマー層/蒸着層/蒸着用オーバーコート層よりなる群より選ばれる1種が積層していることを特徴とするガスバリアフィルム。
    ただし、蒸着層上に蒸着用オーバーコート層が積層し、蒸着用プライマー層上に蒸着層が積層するものとする。
  7. 前記蒸着層は、厚さが5〜300nmであり、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化インジウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の無機酸化物より形成されることを特徴とする請求項6に記載のガスバリアフィルム。
  8. 前記蒸着用プライマー層が、以下に示す成分H−1に対し、以下に示す成分H−2及び/または成分H−3を配合した2種類以上の化合物より形成されることを特徴とする請求項6または7に記載のガスバリアフィルム。
    成分H−1:ガラス転移温度が40℃以上であるポリエステルポリオール、該ポリエステルポリオールのイソシアネート伸長物、アクリルポリオール、該アクリルポリオールのイソシアネート伸長物、カーボネートポリオール、該カーボネートポリオールのイソシアネート伸長物よりなる群から選ばれる少なくとも1種。
    成分H−2:イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、一般式M(OR’)で示される遷移金属系化合物、リン系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤。(ただし、R’はアルキル基であり、Mは遷移金属であり、nはMのイオンの価数である)
    成分H−3:一般式R−Si(OR’)で示されるオルガノシランあるいはその加水分解物、及び/または、一般式M(OR’)で示される1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物。(ただし、Rはアルキル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基よりなる群から選ばれる官能基であり、R’はアルキル基であり、Mは金属であり、nはMのイオンの価数である)
  9. 前記蒸着用オーバーコート層が、以下に示す成分O−1と成分O−2とを配合した2種類以上の化合物より形成されることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
    成分O−1:水溶性高分子。
    成分O−2:一般式R−Si(OR’)で示されるオルガノシランあるいはその加水分解物、一般式M(OR’)で示される1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物、リン系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種。(ただし、Rはアルキル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基よりなる群から選ばれる官能基であり、R’はアルキル基であり、Mは金属であり、nはMのイオンの価数である。)
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