JP5082735B2 - 付着物処理設備、及び付着物処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、エレベーターシャフト等からアスベスト等の付着物を除去等する際に用いられる付着物処理設備、及び付着物処理方法に関する。
建物に装備されるエレベーターは、通常、エレベーターシャフトと呼ばれる鉛直方向に長い内部空間(昇降路)を備え、このエレベーターシャフト内を乗りかごが上下昇降するように構成されている。そして、高層ビル等では、一般に2連や3連という多連式のエレベーターが採用されており、つまり、エレベーターシャフト内には、複数台の乗りかごが左右に並列配置されていて、各乗りかごは互いに独立に昇降動作を行えるようになっている。
このようなエレベーターシャフト内には、その昔に、鉄骨架構の耐火被覆目的で施工されたアスベストがそのまま鉄骨に付着状態で残存していることがあり、このようなアスベストは、飛散前に一刻も早く除去等の無害化処理を施す必要がある。
ここで、エレベーターシャフト内の付着物を取る方法として、例えば、特許文献1が開示されている。但し、この付着物は綿ゴミであってアスベストにあらず、つまり、現時点においては、エレベーターシャフト内でアスベスト等の有害付着物を処理する具体的方法について公開されていない。
特開2007−145448号
ところで、一般に、建屋内のアスベストを処理する際には、養生シート等により隔離密閉された作業空間を形成し、その中で処理作業を行うことが義務付けられている。
そして、このことは、エレベーターシャフト内のアスベストを処理する場合も例外ではなく、例えば、エレベーターシャフトの場合には、エレベーターシャフト全体を隔離密閉養生する必要がある。
しかしながら、上述のような多連式のエレベーターの場合にエレベーターシャフト全体を隔離密閉すると、全てのエレベーターを使えなくなってしまい著しく不便となるので、少なくとも1台のエレベーターは稼働状態にできるのが望ましい。
本発明はかかる従来の課題に鑑みて成されたもので、少なくとも1台のエレベーター等の稼働を確保しながらも、エレベーターシャフト等に付着するアスベスト等の付着物の処理を実行可能な付着物処理設備、及び付着物処理方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために請求項1に示す付着物処理設備は、
物体を上下昇降する複数の昇降軌道が水平方向の左右に並列して設定された内部空間を有する中空構造体内において、付着物を処理する際に前記中空構造体に取り付けられる設備であって、
前記内部空間を、互いに隣り合う前記昇降軌道同士の間で水平方向の左右に仕切って、前記処理のための作業空間を密閉区画する仕切り部材を備えており、
前記仕切り部材は、
鉛直方向の上下及び水平方向の前後に延出する気密性シートと、
前記気密性シートに面接触して補強する補強シートと、
前記気密性シート及び前記補強シートの形状を平面形状に保持する保持部材と、を備え、
前記気密性シートの外周縁は、前記内部空間の天井部、床部、前後の側壁にそれぞれ密着固定されており、
前記保持部材は、鉛直方向の上下に延びる複数の縦材と水平方向の前後に延びる複数の横材とが互いに交差して係合した井桁状部材であり、
前記縦材の上端部及び下端部は、それぞれ、前記内部空間の天井部及び床部に固定される一方、前記横材の両端部は、それぞれ、前記内部空間の前後の側壁に固定されていることを特徴とする付着物処理設備。
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の付着物処理設備であって、
前記縦材は、前記天井部から垂下されつつ張った状態で下端部が前記床部に固定されたワイヤーであり、
前記横材は、前記前後の側壁に突っ張って両端部が当接固定される棒体であり、
前記縦材には、前記横材を着脱可能に係止するフック状の係止部材が鉛直方向に所定ピッチで設けられていることを特徴とする。
上記請求項2に示す発明によれば、前記内部空間の天井部から床部へと前記ワイヤーを垂下して両端部を固定するとともに、前記ワイヤーの係止部材に前記横材を係止して、前記横材の両端部を前記側壁に固定すれば、前記保持部材は完成され、もって、当該保持部材を容易に組み立てることができる。
また、前記ワイヤーには張力が作用しているので、作業空間の隣の昇降軌道の作動風等に有効に抵抗し、もって、前記仕切り部材が煽られることを確実に防ぐことができる。
請求項3に示す発明は、請求項1又は2に記載の付着物処理設備であって、
前記処理の作業者が搭乗し、前記作業空間を上下昇降する作業ゴンドラを備えていることを特徴とする。
上記請求項3に示す発明によれば、作業者は、作業ゴンドラに乗って上下に移動することにより前記付着物の処理対象部位の近傍まで接近することができる。よって、作業足場を組まずに済み、もって、処理コストや処理期間の削減を図ることができる。
また、前記仕切り部材を前記中空構造体に取り付ける作業も、上記の作業ゴンドラに乗って行うことができるので、作業足場を組まずに済み便利である。
請求項4に示す発明は、請求項3に記載の付着物処理設備であって、
前記作業ゴンドラには、前記内部空間の天井部から吊下されたワイヤーを巻き上げる巻き上げ機が搭載固定され、前記ワイヤーの巻き上げ量の調整により、前記作業ゴンドラは上下昇降することを特徴とする。
上記請求項4に示す発明によれば、作業ゴンドラはワイヤーを巻き上げる巻き上げ機を搭載していれば良いので、装置構成の簡略化を図れる。
請求項5に示す発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の付着物処理設備であって、
前記作業空間から吸気口を介して吸い込んだ空気をフィルターに通すことにより前記空気中の異物を捕集するとともに、前記フィルターを通過後の空気を前記作業空間の外側へ排気することにより、前記作業空間の気圧を、前記作業空間の外側の気圧よりも低くする集塵機を備えていることを特徴とする。
上記請求項5に示す発明によれば、前記集塵機によって、作業空間内の付着物等の異物は捕集されるとともに、作業空間内の気圧は、その外側の気圧よりも低くされる。よって、前記仕切り部材等の取り合いにおいて意図せず隙間が形成されてしまうような場合であっても、その隙間から外部空間への異物の漏出は有効に抑制されて、作業空間は高度な密閉隔離状態に維持される。
請求項6に示す発明は、請求項5に記載の付着物処理設備であって、
前記付着物の処理は、前記付着物に向けてドライアイス粒を噴射して衝突させることにより前記付着物を剥がす処理であり、
前記集塵機の吸気口は、前記作業空間内における下部に配置されていることを特徴とする。
上記請求項6に示す発明によれば、ドライアイス粒の昇華により生じる二酸化炭素ガスは、作業空間の下方に溜まるが、作業空間の下部には前記集塵機の吸気口が配置されている。よって、発生した二酸化炭素ガスは速やかに作業空間から排気されるため、当該作業空間において作業者は安全に前記処理作業を行うことができる。
請求項7に示す発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の付着物処理設備を用いて、前記中空構造体の内部の付着物を処理することを特徴とする付着物処理方法である。
上記請求項7に示す発明によれば、上述の請求項1乃至8と同様の作用効果を奏することができる。
請求項8に示す発明は、請求項7に記載の付着物処理方法であって、
前記作業空間での前記処理が終了したら、前記作業空間を、順次、前記複数の昇降軌道のうちの未処理の昇降軌道へ移動することを特徴とする。
上記請求項8に示す発明によれば、同時に前記作業空間を複数形成せずに済み一つだけ形成すれは良いので、仕切り部材としては多くとも2つだけ有していれば事足りる。よって、仕切り部材の準備数を減らすことができて、処理コストを低減可能となる。
請求項9に示す発明は、請求項8に記載の付着物処理方法であって、
前記作業空間は、前記内部空間内を左から右へと一方向に、又は、右から左へと一方向に順次移動していくことを特徴とする。
上記請求項9に示す発明によれば、前回区画されていた作業空間の仕切り部材の少なくとも一方を、今回区画される作業空間の仕切り部材として流用できるので、その取り付け取り外し作業を省略できて、作業効率が向上する。なお、この作業効率の向上効果は、特に、前回区画されていた作業空間の次の作業空間の候補として2つ以上の空間が存在していて選択しなければならない場合、つまり前記内部空間に昇降軌道が3つ以上存在する場合に有効に発揮される。
本発明に係る付着物処理設備、及び付着物処理方法によれば、少なくとも1台のエレベーター等の稼働を確保しながらも、エレベーターシャフト等に付着するアスベスト等の付着物の処理を実行可能となる。
図1A及び図1Bは、本実施形態の付着物処理設備の適用対象であるエレベーターEVの側断面図及び平断面図(図1A中のB−B断面図)である。すなわち、この付着物処理設備は、中空構造体の内部空間の一例としてのエレベーターシャフトEVS内において、以前に鉄骨等に耐火被覆として吹き付けられたアスベストに対し除去等の無害化処理をする際に用いられるものである。なお、以下の説明では、図に示すように、互いに直交する三方向をそれぞれ、上下方向(鉛直方向)、左右方向(水平方向)、及び、前後方向(水平方向)と言う。
===エレベーターEVについて===
エレベーターEVは、ビル等の建物BLDGの一部に区画されたエレベーターシャフトEVSと、このエレベーターシャフトEVS内を所定の昇降軌道TRに沿って上下昇降可能に案内された乗りかご13と、エレベーターシャフトEVSの上方の機械室MR内に配置されて、つり合い重りWを備えた吊りロープRを用いて前記乗りかご13を吊り下げつつ上下昇降する巻き上げ機19と、を備えている。そして、このエレベーターEVは所謂3連式のエレベーターEVであり、つまり、図1Bに示すようにエレベーターシャフトEVS内には、3つの乗りかご13,13,13が左右に並列して設けられており、各乗りかご13は、それぞれに対応して機械室MRに設置された各巻き上げ機19によって、各昇降軌道TRに沿って独立に昇降動作をする。なお、以下では、乗りかご13の各昇降軌道TRのことを、単にエレベーターEVとも言う。
エレベーターシャフトEVSは、鉛直方向に長い直方体形状の空間である。詳しくは、鉄骨梁21aと鉄骨柱21bとが鉛直方向に長い略直方体形状に組まれてエレベーターシャフトEVSの柱梁架構21が構築され、また、上下に隣り合う鉄骨梁21a,21a同士の間にはALC(気泡コンクリート)版等のコンクリートパネル23が配置され、これにより、エレベーターシャフトEVSの側壁23が前後左右の四方を囲って形成されている。また、これら四方の側壁23の上端及び下端には、それぞれ、天井部26a及び床部26bが形成されており、これにより、エレベーターシャフトEVS内は、概ね上下前後左右の六方の全てが閉じた略閉空間になっている。
なお、四方の側壁23のうちの前方の側壁23には、各乗りかご13及び建物BLDGの各階フロアーに対応させてエレベーターEVの乗り場出入口23aが開口形成されているとともに、各乗り場出入口23aには、左右にスライドする開閉扉25が設けられている。よって、乗りかご13の無い状態において前記開閉扉25が開くと、エレベーターシャフトEVS内は、建物BLDG側の空間であるエレベーターホールEVHと連通状態になる。
ところで、上述からわかるように、一般にエレベーターシャフトEVS内には、柱梁架構21の鉄骨梁21aが部分的に露出している。また、エレベーターEVによっては鉄骨柱21bも露出し、更には側壁23よりも内側において前記柱梁架構21に鋼製のブレース(不図示)が掛け渡し補強されている場合もある。そして、このような鉄骨露出部位に対しては建築基準法上耐火被覆が必須であり、以前はその素材としてアスベストが使用されていた。そのため、現在も既存のエレベーターシャフトEVS内にはアスベストが露出していることがある。
このようなアスベストに対しては、例えば、既存エレベーターEVの設備更新工事等に併せて、無害化処理が行われる。この無害化処理としては、アスベストを剥がす等の物理的に取り除く除去処理や、薬液塗布等により塗布部位の表面を固めてその場にアスベストを封じ込める封じ込め処理、更には、板材等でアスベストの付着部位を囲って外に露出しないようにする囲い込み処理等が挙げられる。
そして、何れの処理を行うにせよ、その処理作業時には、周囲にアスベストが飛散しないように、その作業空間WSを隔離密閉養生することが義務付けられている。
しかし、3連式等の多連式エレベーターEVの場合にエレベーターシャフトEVS全体を隔離密閉養生すると、全てのエレベーターEVを使えなくなり著しく不便となるので、少なくとも1台のエレベーターEVは稼働状態にできるのが望ましい。
そこで、以下で説明する本実施形態の付着物処理設備及び付着物処理方法では、仕切り部材81によってエレベーターシャフトEVS内を水平方向の左右に仕切って、前記作業空間WSを乗りかご13単位、つまり昇降軌道TR単位(エレベーターEV単位)で密閉区画するようにしており、これにより、前記作業空間WS外の乗りかご13(昇降軌道TR、エレベーターEV)の稼働を確保している(例えば図2Aを参照)。
===本実施形態に係る付着物処理設備及び付着物処理方法===
<<<付着物処理設備>>>
図2Aは、本実施形態に係る付着物処理設備の説明用の斜視図であり、図2Bは同側断面図であり、図2Cは同平断面図(図2B中のC−C断面図)である。なお、図2Aでは、エレベーターシャフトEVS及び機械室MRの輪郭線のみをそれぞれ二点鎖線及び三点鎖線で示し側壁23は透視して示している。
この例では、当該アスベスト処理作業が、エレベーターEVの設備更新工事に併せてなされるとともに、この設備更新工事は、3連のうちの各エレベーターEVに対して一台ずつ順番に行われ、これにより、常に残りの2つのエレベーターEVは稼働状態に維持されるようにしている。また、各エレベーターEVの設備更新工事の実施の際には、真っ先に、その乗りかご13がエレベーターシャフトEVSから取り外される。よって、当該アスベスト処理作業の開始時には、既に、処理対象のエレベーターEVの乗りかご13は、エレベーターシャフトEVS内に無い状態となっている。
図2A乃至図2Cに示すように、付着物処理設備は、エレベーターシャフトEVS内を左右に仕切って作業空間WSを密閉区画する仕切り部材81と、作業空間WS内を換気すべく作業空間内の空気を吸い込む集塵機61と、吊りワイヤー73により上下昇降可能に吊り下げられて作業者が搭乗可能な作業ゴンドラ71と、ドライアイス粒をアスベストの付着部位に向けて噴射してアスベストを除去するドライアイスブラスト装置(不図示)と、を備えている。
(1)仕切り部材81
図2Aに示すように、仕切り部材81は、左右に隣り合うエレベーターEV,EV同士の間に、エレベーターシャフトEVSの鉛直方向の上下の全長及び水平方向の前後の全幅に亘って延在して設けられ、これにより、処理対象のエレベーターEVの昇降空間UDSが、処理対象以外のエレベーターEVの昇降空間UDSから隔離されて、その結果、処理対象のエレベーターEVのための作業空間WSが密閉区画される。
ここで、処理対象のエレベーターEVが、左右方向の左端又は右端のエレベーターEVの場合には、それと隣り合う稼働中のエレベーターEV(乗りかご13)は一つであるため、それとの間に仕切り部材81は一つだけ設けられるが、処理対象のエレベーターEVが、左端及び右端以外の場合には、左右の両隣りに稼働中のエレベーターEV(乗りかご13)が存在するため、その場合には、処理対象のエレベーターEVの左右両脇に仕切り部材81,81が対で設けられる。例えば、図2Aの例の場合は、処理対象のエレベーターEVが左端のエレベーターEVであるので、この場合の隣り合うエレベーターEVは真ん中のエレベーター1台のみであり、もって、仕切り部材81は一つだけ設けられる。
ちなみに、上述の昇降空間UDSとは、各エレベーターEVの乗りかご13が上下昇降するのに必要な最小空間のことであり、その上端はエレベーターシャフトEVSの天井部26aであり、下端は同床部26bであり、つまり、鉛直方向に関してはエレベーターシャフトEVSの全長に亘っている。よって、図示例の3連式の場合には、エレベーターシャフトEVSは3つの昇降空間UDSを有している。
図3は、仕切り部材81の一部を破断して示す斜視図である。
仕切り部材81は、鉛直方向の上下及び水平方向の前後に延出する気密性シート87と、前記気密性シート87に粘着テープ等により面接触状態で貼り付けられて補強する補強シート85と、前記補強シート85の面の側に設けられ、前記気密性シート87及び前記補強シート85を平面形状に保持する保持部材82と、を有する。そして、気密性シート87の外周縁は、その全周に亘ってエレベーターシャフトEVSの天井部26a、床部26b、及び前後の側壁23に粘着テープ89等により密着固定されており、これによって、前記作業空間WS内は高度な密閉状態に区画される。なお、気密性シート87は、その外周縁の先端部87aが作業空間WS側を向くように曲げられているので(例えば図2Cを参照)、作業空間WS内の作業者は、当該気密性シート87の外周縁を前記天井部26a、床部26b、及び前後の側壁23に密着固定し易くなり、もって確実に固定可能となる。
上記の気密性シート87としては、例えば、ポリエチレンシートやPETシート等を挙げることができる。また、補強シート85としては、テント地の布材や不織布、PET(ポリエチレンテレフタレート)シート等を例示できる。
なお、保持部材82としては、例えば、図3に示すように、鉛直方向の上下に延びる複数の縦材83と水平方向の前後に延びる複数の横材84とが互いに直交して係合した井桁状(格子状)部材82を例示できる。そして、この井桁状部材82によれば、その井桁面が前記補強シート85に面接触状態で粘着テープ等により接着されてその平面形状を維持するので、補強シート85を介して気密性シート87の平面形状を確実に平坦に維持することができる。
また、前記縦材83の上端部83a及び下端部(不図示)は、それぞれ、前記エレベーターシャフトEVSの天井部26a及び床部26bに着脱可能に固定される一方、前記横材84の両端部84aは、それぞれ、前記エレベーターシャフトEVSの前後の側壁23,23に着脱可能に固定されている。よって、四方の全てを固定されているので、前記仕切り部材81を確実にエレベーターシャフトEVS内に支持して、その脱落を防ぐことができる。
図4A乃至図4Cは縦材83及び横材84を詳細に説明するための図であり、図4Aに斜視図を示し、図4Bには図4A中のB−B矢視図を示し、また、図4Cには同C−C矢視図を示している。
上記の縦材83としては、例えばワイヤーであり、その上下の両端部は、それぞれ、天井部26a及び床部26bに植設されたアイボルトやフック部材88等を介して対応する部位に係止固定される(図3)。また、上記の横材84としては、例えば、前記前後の側壁23,23に突っ張って両端部84a,84aが当接固定される棒体であり、より詳しくは、その長手方向の両端に吸盤の如き圧接密着部84aを備え、これら圧接密着部84aが送りねじ機構84b等にて長手方向に進退することにより全長を伸縮可能な棒部材である。そして、前記縦材83たるワイヤー83には、前記横材84を着脱可能に係止するフック状の係止部材83cが鉛直方向に所定ピッチで設けられている(図4A乃至図4C)。よって、前記エレベーターシャフトEVSの天井部26aから床部26bへと前記ワイヤー83を垂下しつつ張った状態で両端部を天井部26a及び床部26bに固定するとともに、前記ワイヤー83の各係止部材83cに横材84をそれぞれ係止し、しかる後に、これら横材84を伸長させて圧接密着部84aを前後の側壁23,23に固定すれば、前記保持部材82は井桁状に完成される。
ところで、上記の如く区画された作業空間WS内には、図2Cに示すように、通常、処理対象のエレベーターEVの乗り場出入口23aが臨んでいる。また、乗り場出入口23a以外にも開口部や隙間が存在していることもある。ここで、そのような開口部や隙間は、適宜、ポリエチレンシート等の養生シート(不図示)により覆われて閉塞される。例えば、乗り場出入口23aにあっては、その開閉扉25が全閉状態にされるとともに、開閉扉25の周囲の隙間等が養生シートにより覆われれば、作業空間WSにおける外部空間への空気の流路はほぼ遮断される。なお、前記開閉扉25を全閉にできない場合、つまり、エレベーターシャフトEVSから開閉扉25を取り外したり全開状態にする必要のある場合には、乗り場出入口23aをその全面に亘り養生シートで覆って密閉すれば良い。
(2)集塵機61
図2Bに示すように、集塵機61は、エレベーターシャフトEVSの外側の1階フロアー等に配置される。そして、集塵機61の吸気口61aは、適宜なダクト63を介して作業空間WS内に配置され、作業空間WSの空気を集塵機61内に取り込むようになっている。そして、この集塵機61に取り込まれた空気は、その内部のフィルター(不図示)に通されて当該空気中の異物が捕集されるとともに、前記フィルターを通過後の浄化空気は、集塵機61の排気口61bから外部空間へ排気され、これにより、前記作業空間WS内の気圧を、前記作業空間WSの外側(外気)の気圧よりも低い負圧状態にする。よって、前記仕切り部材81等の取り合いにおいて意図せずに隙間が形成される等前記作業空間WS内の密閉性が多少悪くても、そのような隙間からのアスベストの外部漏出は有効に防止される。
ちなみに、上述の吸気口61aは、作業空間WS内の最も低位に配置するのが望ましい。この理由は、この例ではアスベスト除去処理としてドライアイスブラスト法を採用しているからである。つまり、このドライアイス粒の昇華により発生する二酸化炭素ガスが、作業空間WS内の下部たる前記床部26bに溜まり易く、同下部を積極的に排気する必要があるためである。よって、図示例では、吸気口61aはエレベーターシャフトEVSの床部26bに載置されている。
また、この二酸化炭素ガスの滞留の観点からは、作業空間WS内の上部に外気の取り入れ口(不図示)を設けると良い。但し、その場合には、この取り入れ口を、例えばアスベストの通過は規制する通気性フィルターで覆い、これにより、取り入れ口からのアスベストの漏出を防止するのが望ましい。
(3)作業ゴンドラ71
図2Aに示すように、作業ゴンドラ71は例えばデッキ型ゴンドラであり、エレベーターシャフトEVSの天井部26aに吊りワイヤー73を介して懸架されたケージ71を本体とする。ケージ71の平面サイズは、エレベーターEV毎に設定される各作業空間WSに収まるサイズであり、つまり、エレベーターシャフトEVS内を略三等分してなる前記昇降空間UDSの平面サイズよりも小さくなっている。
また、このケージ71には、吊りワイヤー73を巻き上げる巻き上げ機75が搭載されており、ケージ71に搭乗した作業者が操作盤により巻き上げ機75のワイヤー巻き上げ量を調整することによって、ケージ71たる作業ゴンドラが上下昇降する。
ちなみに、吊りワイヤー73の上端をエレベーターシャフトEVSの天井部26aに固定するための所謂突梁77は、例えば機械室MR内に取り付けられており、もって、吊りワイヤー73は、天井部26aに形成されたエレベーターEVの前記吊りロープR用挿通孔等の貫通孔Hを通してエレベーターシャフトEVS内に垂下される。垂下後には、この貫通孔Hも適宜な閉塞部材で密閉されるのは言うまでもない。
(4)ドライアイスブラスト装置
ドライアイスブラスト装置(不図示)は、作業空間WS内の空気を取り込んでコンプレッサーにより圧縮空気を生成するとともに、この圧縮空気によってドライアイス粒をホース先端のノズルから噴射するものであり、作業ゴンドラ71に搭載されている。
なお、ここでは、このドライアイスブラスト装置から噴射したドライアイス粒をアスベストに衝突させてアスベストを除去しているが、除去方法は何等これに限るものではなく、例えば、手でアスベストを掻き落として除去しても良いし、更には、この除去処理の代わりに、前述の封じ込め処理や囲い込み処理を施しても良い。
<<<付着物処理方法>>>
上述の付着物処理設備によれば、作業空間WSを密閉区画すべき処理対象のエレベーターEVを左から右へと順番に替えながら、各エレベーターEVに対して以下の一連の手順(1)〜(4)を繰り返すことにより、エレベーターシャフトEVS内の全てのアスベストが除去される。
(1)処理対象のエレベーターEVの昇降空間UDSへの作業ゴンドラ71の設置
先ず、図2Aに示すように、処理対象のエレベーターEVから乗りかご13や吊りロープR等を取り外す。そして、エレベーターシャフトEVSの天井部26aから、処理対象のエレベーターEVの昇降空間UDS内に吊りワイヤー73を垂下する。また、図2BのエレベーターシャフトEVSの床部26b上に、作業ゴンドラ71のケージ71を搬入するとともに、前記吊りワイヤー73の下端を作業ゴンドラ71の巻き上げ機75にセットする。そして、これにより、ケージ71たる作業ゴンドラ71は、処理対象のエレベーターEVの昇降空間UDSにおいて使用可能状態となる(図2A)。
(2)集塵機61の設置
図2Bに示すように、1階フロアー等の地上付近に集塵機61を配置するとともに、ダクト63を介して吸気口61aを、処理対象のエレベーターEVの昇降空間UDS内の床部26bに配置する。
(3)処理対象のエレベーターEV用の作業空間WSを区画
図2A及び図2Cに示すように、前記仕切り部材81を、処理対象のエレベーターEVの昇降空間UDSと、それに隣接するエレベーターEVの昇降空間UDSとの間に配置して両者を仕切って当該処理対象のエレベーターEVの昇降空間UDSを隔離し、これにより、処理対象のエレベーターEV用の作業空間WSが区画される。なお、左端又は右端のエレベーターEVが処理対象の場合には、当該エレベーターEVの右端側又は左端側にのみ仕切り部材81が配置されるが、真ん中のエレベーターEVが処理対象の場合には、当該エレベーターEVの左右両脇に仕切り部材81,81が対で配置される。
また、当該作業空間WS内に位置する乗り場出入口23a等の各種隙間をポリエチレンシート等で密閉養生する。更に、床部26bも、その全面に亘り養生シートを敷いて覆う。
(4)作業空間内のアスベスト除去
先ず、集塵機61を稼働させ、作業空間WS内を負圧状態にする。
そうしたら、作業者は、図2Aに示すように、作業ゴンドラ71に乗りながら作業空間WS内を上下昇降することにより鉄骨梁21a等のアスベスト付着部位へと接近し、ドライアイスブラスト装置を用いて作業空間WS内のアスベストを除去していく。ここで、ドライアイスブラスト装置から噴射したドライアイス粒は、アスベストに衝突後に昇華して二酸化炭素ガスとなり作業空間WS中の下部に溜まるが、溜まった二酸化炭素ガスは、集塵機61の吸気口61aから吸い込まれて速やかに外部空間に排気される。
そして、作業空間WS内の全てのアスベストの除去が終了したら、最後に、当該除去により床部26bの養生シート上に落下等したアスベストを掃除機等で吸い込んで清掃する。
清掃が済んだら、当該処理対象のエレベーターEVに対するアスベスト除去作業はほぼ終了するので、次に、処理対象を右隣のエレベーターEVに移すべく、天井部26aから吊りワイヤー73を外し、ケージ71とともに搬出し、また、集塵機61の吸気口61aも搬出する。
但し、今アスベスト処理したエレベーターEVと次に処理するエレベーターEVとの間の仕切り部材81については、当該次の処理の作業空間WSを区画する際に流用可能なので、特段の事情の無い限りは取り外す必要はなく、もって、取り外さなければ、次回処理するエレベーターEVにおいてなされる上述の(3)の「処理対象のエレベーターEV用の作業空間WSの区画」の作業負荷を軽減することができる。
そうしたら、次に処理対象となった右隣のエレベーターEVに対して、上述の(1)〜(4)の作業を繰り返す。そして、処理対象のエレベーターEVの処理が終了する度に、順次、処理対象を右隣のエレベーターEVに移して上述の(1)〜(4)の作業を繰り返し、最後に、左右方向の右端のエレベーターEVの処理が終了したら、全てのエレベーターEVに対して処理が完了し、つまり、エレベーターシャフトEVS内の全てのアスベストが除去されたことになる。
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
上述の実施形態では、中空構造体の内部空間の一例としてエレベーターシャフトEVSを示したが、何等これに限るものではなく、多連式のタワーパーキング(立体駐車場とも言い、タワー状構造物の内部空間に、複数の自動車を上下昇降するための無端の周回軌道を設けたもの)を中空構造体として、これに適用しても良い。すなわち、タワーパーキングの内部空間には、複数の周回軌道が水平方向の左右に並列に設けられており、各周回軌道は、それぞれ独立に周回運動可能である。
上述の実施形態では、気密性シート87は一枚ものであるように説明したが、これに限らず、補強シート85が気密性を有する場合には、気密性シート87を適宜なサイズの複数のシートから構成し、これらを粘着テープ等によって繋ぎ合わせて上記の仕切り部材81の大きさまで大きくしても良い。但し、補強シート85については、強度の観点から極力一枚ものの方が望ましい。
上述の実施形態では、エレベーターシャフトEVS内に乗りかご13が無い状態でアスベスト処理を行う場合を例示したが、エレベーターシャフトEVS内に乗りかご13が在る状態でアスベスト処理を行っても良い。なお、この場合には、乗りかご13は、アスベストの処理作業の邪魔にならないように、エレベーターシャフトEVSの上端又は下端へ移動されており、上端又は下端の無害化処理をする際には、乗りかご13は処理済みの位置へ移動されるのは言うまでもない。
上述の実施形態では、エレベーターシャフトEVS内に作業ゴンドラ71を持ち込んでアスベストの処理作業を行っていたが、各エレベーターEV(昇降空間UDS又は昇降軌道TR)が具備する乗りかご13を作業ゴンドラ71の代わりに使用しても良い。すなわち、乗りかご13の屋根面に作業者が乗って処理作業を行っても良い。
本実施形態の付着物処理設備及び同方法の適用対象である3連式エレベーターEVの側断面図である。 同エレベーターEVの平断面図(図1A中のB−B断面図)である。 本実施形態に係る付着物処理設備の説明用の斜視図である。 同側断面図である。 同平断面図(図2B中のC−C断面図)である。 仕切り部材81の一部を破断して示す斜視図である。 保持部材91に係る縦材83及び横材84を詳細に説明するための図であり、図4Aに斜視図を示し、図4Bには図4A中のB−B矢視図を示し、また、図4Cには同C−C矢視図を示している。
符号の説明
13 乗りかご、19 巻き上げ機、
21 柱梁架構、21a 鉄骨梁、21b 鉄骨柱、
23 側壁(コンクリートパネル)、23a 乗り場出入口、
25 開閉扉、
26a 天井部、26b 床部、
61 集塵機、61a 吸気口、61b 排気口、63 ダクト、
71 ケージ(作業ゴンドラ)、73 吊りワイヤー、75 巻き上げ機、
77 突梁、
81 仕切り部材、82 保持部材、
83 ワイヤー(縦材)、83a 上端部、83c 係止部材、
84 横材、84a 圧接密着部(両端部)、84b 送りねじ機構、
85 補強シート、87 気密性シート、87a 先端部、
88 フック部材、89 粘着テープ、
EV エレベーター、MR 機械室、TR 昇降軌道、
UDS 昇降空間、WS 作業空間、
EVH エレベーターホール、
EVS エレベーターシャフト(内部空間)、BLDG 建物(中空構造体)、
H 貫通孔、R 吊りロープ

Claims (9)

  1. 物体を上下昇降する複数の昇降軌道が水平方向の左右に並列して設定された内部空間を有する中空構造体内において、付着物を処理する際に前記中空構造体に取り付けられる設備であって、
    前記内部空間を、互いに隣り合う前記昇降軌道同士の間で水平方向の左右に仕切って、前記処理のための作業空間を密閉区画する仕切り部材を備えており、
    前記仕切り部材は、
    鉛直方向の上下及び水平方向の前後に延出する気密性シートと、
    前記気密性シートに面接触して補強する補強シートと、
    前記気密性シート及び前記補強シートの形状を平面形状に保持する保持部材と、を備え、
    前記気密性シートの外周縁は、前記内部空間の天井部、床部、前後の側壁にそれぞれ密着固定されており、
    前記保持部材は、鉛直方向の上下に延びる複数の縦材と水平方向の前後に延びる複数の横材とが互いに交差して係合した井桁状部材であり、
    前記縦材の上端部及び下端部は、それぞれ、前記内部空間の天井部及び床部に固定される一方、前記横材の両端部は、それぞれ、前記内部空間の前後の側壁に固定されていることを特徴とする付着物処理設備。
  2. 請求項1に記載の付着物処理設備であって、
    前記縦材は、前記天井部から垂下されつつ張った状態で下端部が前記床部に固定されたワイヤーであり、
    前記横材は、前記前後の側壁に突っ張って両端部が当接固定される棒体であり、
    前記縦材には、前記横材を着脱可能に係止するフック状の係止部材が鉛直方向に所定ピッチで設けられていることを特徴とする付着物処理設備。
  3. 請求項1又は2に記載の付着物処理設備であって、
    前記処理の作業者が搭乗し、前記作業空間を上下昇降する作業ゴンドラを備えていることを特徴とする付着物処理設備。
  4. 請求項3に記載の付着物処理設備であって、
    前記作業ゴンドラには、前記内部空間の天井部から吊下されたワイヤーを巻き上げる巻き上げ機が搭載固定され、前記ワイヤーの巻き上げ量の調整により、前記作業ゴンドラは上下昇降することを特徴とする付着物処理設備。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の付着物処理設備であって、
    前記作業空間から吸気口を介して吸い込んだ空気をフィルターに通すことにより前記空気中の異物を捕集するとともに、前記フィルターを通過後の空気を前記作業空間の外側へ排気することにより、前記作業空間の気圧を、前記作業空間の外側の気圧よりも低くする集塵機を備えていることを特徴とする付着物処理設備。
  6. 請求項5に記載の付着物処理設備であって、
    前記付着物の処理は、前記付着物に向けてドライアイス粒を噴射して衝突させることにより前記付着物を剥がす処理であり、
    前記集塵機の吸気口は、前記作業空間内における下部に配置されていることを特徴とする付着物処理設備。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の付着物処理設備を用いて、前記中空構造体の内部の付着物を処理することを特徴とする付着物処理方法。
  8. 請求項7に記載の付着物処理方法であって、
    前記作業空間での前記処理が終了したら、前記作業空間を、順次、前記複数の昇降軌道のうちの未処理の昇降軌道へ移動することを特徴とする付着物処理方法。
  9. 請求項8に記載の付着物処理方法であって、
    前記作業空間は、前記内部空間内を左から右へと一方向に、又は、右から左へと一方向に順次移動していくことを特徴とする付着物処理方法。
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