以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。以下の説明において同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一であるものとする。
(MFP全体構成)
図1は、本発明の実施形態に従う画像読取装置としてのMFP1の外観図である。
図1を参照して、本発明の実施の形態に従うMFP1は、コピー機能、スキャナ機能、ファックス機能等を有するデジタル複合機である。
MFP1は、後述する操作パネル10を備えており、この操作パネル10は、複数のキー11aと、当該キー11aに対するユーザの操作による各種の指示や、文字、数字などのデータの入力を受付ける操作部11と、ユーザに対する指示メニューや取得した画像に関する情報などの表示を行なう液晶等からなるディスプレイ12とを有している。
また、MFP1は、原稿を光学的に読取って画像データを得るスキャナ13と、読取画像に基づいて記録シート上に画像を印刷するプリンタ14とを備えている。
また、MFP1の本体上面には、原稿トレイ17に載置された原稿をスキャナ13に送る自動原稿搬送装置(ADF(auto document feeder)とも称する)15が、下部にはプリンタ14に記録シートを供給する給紙部18が、中央部にはプリンタ14によって画像を印刷された記録シートが排出されるトレイ19がそれぞれ配備されている。
さらに、MFP1の本体の内部には、本体を制御するための各部で用いられる制御プログラム、画像データ(読取画像)、各種パラメータ等、必要なデータを記憶する記憶部26などが設けられている。
図2は、本発明の実施の形態に従うMFP1のハードウェア構成について説明する図である。
図2を参照して、本発明の実施の形態に従うMFP1は、紙媒体等の原稿を画像データ(電子データ)に変換するためのスキャナ13と、印刷処理を実行するためのプリンタ14と、電子メール(E−mailとも称する)の送受信を実行するためのメーラ22と、公衆回線を利用したデータ伝送を実行するためのファクシミリ16と、通信インタフェース(I/F)34と、入力等の操作指示を実行する操作パネル10と、制御プログラム、各種パラメータ等が格納されたROM(Read Only Memory)30と、制御部20等で実行される制御処理を実行するためのワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)28と、MFP1に登録された各種情報等を格納するHDD(Hard Disk Drive)32と、MFP1全体を制御する制御部20と、原稿をスキャナ13に搬送する搬送手段であるADF15とを備える。制御部20は、例えばCPU(Central Processing Unit)等で構成されるものとする。また、ROM30と、RAM28と、HDD32により記憶部26が構成される。
なお、各部は内部バス21を介して制御部20と接続されており、制御部20は、各部との間でデータの授受を実行することが可能である。
ADF15は、原稿トレイ17に載置された原稿をスキャナ13の読取ガラスに搬送する。
スキャナ13は、複数の光電変換素子(受光素子)で構成される光センサを含む。光センサは、読取ガラスを介して写真、文字、絵などの画像情報を原稿から光電的に読取って画像データを取得する。本例においては、当該画像データ(読取画像とも称する)を取得する光センサとして、2つの光センサ(CCD(Charge Coupled Device),CIS(Contact Image Sensor))を設ける場合について説明する。取得された読取画像は、デジタルデータに変換され、周知の各種画像処理を施された後、RAM28内に一旦格納され、プリンタ14等に送られ、画像の印刷やデータの保存に供される。
プリンタ14は、スキャナ13等により取得された読取画像に基づいて、給紙部18に格納された記録シート上に画像を印刷処理する。
メーラ22は、図示されていないネットワークを介して接続されたメールサーバ等との間で電子メールの送受信を実行する。
ファクシミリ16は、スキャナ13等により取得された読取画像を所定のプロトコルに従って他のファクシミリ装置に送信する。
通信I/F34は、MFP1の内部の各部と図示されていないネットワークと接続された外部の機器等とを接続するためのインタフェースである。通信I/F34は、有線あるいは無線によりネットワークと接続されて、他のMFPあるいはPC(Personal Computer)等とデータの授受を実行する。なお、ネットワークとしては、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)などが想定されている。
また、操作パネル10のディスプレイ12は、LCD(Liquid Crystal Display)とタッチパネルとを含み、LCDが各種モードの表示を行うとともに、タッチパネルが表示内容等に従った各種設定等を受け付ける。また、操作部11は、ユーザによる種々の入力に用いられるものである。これらがユーザインタフェースの要部として機能する。
図3は、操作パネル10の構成について説明する図である。
図3を参照して、操作パネル10において、複数のキー11aと、ディスプレイ12とが設けられる。ユーザは、ディスプレイ12に表示されたユーザに対する指示メニューや、取得した画像に関する情報等の表示を見て、キー11aを操作して、各種の指示や、文字、数字などのデータを入力することが可能である。
スタートキー201は、コピー/スキャン等の動作を開始させるために用いられる。テンキー202は、コピー枚数等の数値を入力するために用いられる。クリアキー203は、入力された数値のクリア、および記憶部26に蓄積された画像データを破棄する等に用いられる。
ストップキー204は、コピー/スキャン動作の停止を指示するために用いられる。パネルリセットキー205は、設定されている操作モードおよびジョブを破棄するために用いられる。
また、ディスプレイ12は、各種モードの表示等を行い、表面にはタッチパネル206が取り付けられている。このタッチパネル206によって、ユーザはディスプレイ内の表示内容に従った各種設定を行うことができる。
タッチパネル206における設定画面領域207には、通常は、コピー動作やスキャン動作を実行する際に行う基本的/応用的な設定のためのボタンが配置されている。各ボタンを挿下すると、その詳細設定を行うための階層画面が表示される。
具体的には、一例として、本例においては、選択可能な「基本」設定タブ、「集約」設定タブ、「原稿画質」設定タブ、「応用」設定タブが配置されている場合が示されている。
そして、本例においては「基本」設定タブが選択された状態の階層画面が示されており、印刷用紙の濃度あるいは下地部分を調整するための「濃度/下地」設定ボタン232、原稿の読取形態(片面/両面)および出力用紙(印刷用紙)の印刷形態(片面/両面)を設定するための「片面/両面」設定ボタン234、印刷倍率を調整するための「倍率」設定ボタン236、および用紙のサイズを設定するための「用紙」設定ボタン238が一例としてそれぞれ示されている。
例えば、「片面/両面」設定ボタン234を選択して、読取形態を両面に設定することによりユーザは両面の読取の設定が可能である。MFP1は両面の読取の設定が行なわれると、CCDとCISとによる両面同時読取を行なう。
また、「倍率」設定ボタン236を選択することによりユーザは、原稿の読取画像に関して、所定の倍率への縮小/拡大を実行するように設定することが可能である。つまり、ユーザは所望の設定倍率を手動で設定することができる。なお、「倍率」設定ボタン236を選択しない場合には、初期値として、原稿の読取画像の設定倍率は等倍(1.000倍)に設定される。
また、ユーザは、「集約」設定タブを選択することにより、複数枚の原稿を読み取って1枚の用紙の片面に集約して印刷する機能の選択が可能であるものとする。例えば、2枚の原稿の読取画像を1枚の用紙の片面に印刷する2イン1モードや、4枚の原稿の読取画像を1枚の用紙の片面に印刷する4イン1モード等がある。なお、2イン1モードを選択した場合には、当該モードの選択に従い、2枚の原稿の読取画像を1枚の用紙の片面に配置するための倍率が、設定倍率として自動的に設定される。
なお、ユーザが設定倍率を手動で設定する場合と、MFP1が自動的に設定倍率を設定する場合のいずれの場合においても、主走査方向の設定倍率(主走査設定倍率)と副走査方向の設定倍率(副走査設定倍率)とを独立して設定することが可能である。
コピー(Copy)キー210、およびスキャン(Scan)キー211はMFP1をコピー/スキャナの何れのモードで動作させるかを設定するための選択キーである。なお、初期状態においては、コピー(Copy)キー210が選択キーとして選択された状態であるものとする。
コピーキー210を押下した場合、MFP1はコピー機として使用可能となる。
この時、タッチパネル206の設定画面領域207には、コピー動作に対する各種設定を行うための表示が行われる。諸設定を終了後、原稿トレイ17に原稿がセットされた状態でスタートキー201を押下することにより、コピー動作が開始される。
また、スキャンキー211を押下した場合、MFP1はスキャナとなる。
この時、タッチパネル206の設定画面領域207には、スキャン動作に対する各種設定を行うための表示が行われる。諸設定を終了後、原稿トレイ17に原稿がセットされた状態でスタートキー201を押下することにより、スキャン動作が開始される。
また、ファックス(Fax)キー213がコピーキー210とスキャンキー211と同様に設けられており、当該キーを押下した場合、MFP1をファックスのモードで動作させることが可能である。この時、タッチパネル206の設定画面領域207には、ファックス動作に対する各種設定を行うための表示が行なわれる。原稿トレイ17に原稿がセットされた状態でスタートキー201を押下することによりファックス送信が開始される。
図4は、本発明の実施の形態に従う画像読取装置を含む画像形成装置の概略を説明する図である。
図4を参照して、ADF15は、原稿トレイ17と、給紙ローラ113と、分離ローラ115と、レジストローラ117と、リードローラ対119と、搬送ガイド部材120と、リード排出ローラ対121と、排出ローラ対123と、排紙ローラ対130と、反転排出ローラ対122と、排紙トレイ127と、排紙・反転切換部125,126と、CIS129と、ADF15の全体を制御するためのADF制御部161とを含む。なお、ADF15と、スキャナ13とで画像読取装置を構成する。
スキャナ13は、透明な部材から構成された読取ガラス131と、プラテンガラス132と、光を照射するための光源133と、光源の光を反射させる反射部材135と、赤(R)、緑(G)および青(B)それぞれに対応して3つのラインセンサが副走査方向に配列されたCCD141と、原稿からの反射光をCCD141に導くための反射ミラー137A,137B,137Cと、反射ミラー137Cで反射した光をCCD141上に結像させるためのレンズ139と、CCD141が出力する画像データを処理するための第1画像処理部143と、CIS129が出力する画像データを処理するための第2画像処理部145と、スキャナ13全体を制御するスキャナ制御部151とを含む。
プリンタ14は、スキャナ制御部151を介して第1および第2画像処理部143,145から入力された画像データの画像形成処理を実行し、印刷用紙に対して所定の印刷モードに従って入力された画像データを印刷する。
ADF制御部161は、給紙ローラ113、分離ローラ115、レジストローラ117、リードローラ対119、リード排出ローラ対121、排出ローラ対123、反転排出ローラ対122および排紙ローラ対130とを回転させる動力源となるモータの駆動を制御する。また、ADF制御部161は、原稿の排出(排紙)および反転の制御を実行するための排紙・反転切換部125,126の制御も実行する。
給紙ローラ113は、原稿トレイ17に積載された複数の原稿の最上段から1枚の原稿を捌き、分離ローラ115に原稿を搬送し、分離ローラ115およびレジストローラ117は、原稿をリードローラ対119に搬送する。リードローラ対119は、搬送ガイド部材120を介して、原稿を読取ガラス131上のスキャナ13の第1読取位置L1に搬送する。
第1読取位置L1を通過した原稿は、リード排出ローラ対121に到達するとリード排出ローラ対121により第2読取位置L2に搬送される。
リード排出ローラ対121を通過した原稿は、CIS129の第2読取位置L2を通り、排出ローラ対123に導かれた後、排出ローラ対123により、原稿は排紙ローラ対130に導かれる。排紙ローラ対130を通過した原稿は、搬送経路P1から排紙トレイ127に排出され、積載される。
なお、本例においては、一例として、排紙・反転切換部125,126の切換えに従って搬送経路が切換えられ、排出ローラ対123から、搬送経路P2の方向へと原稿が一端導かれ、そして、再び排出ローラ対123を介して搬送経路P3を介してレジストローラ117へと導くことも可能である。この場合、レジストローラ117へと導かれた原稿は先にレジストローラ117に導かれた状態と反転した状態で再び導かれ、再び、第1および第2読取位置へと搬送することが可能となる。そして、第1および第2読取位置へと搬送された原稿は、反転した状態であるため排紙・反転切換部125,126の切換えに従ってリード排出ローラ対121から搬送経路P4の方向へと原稿が一端導かれ、そして、反転排出ローラ対122と、排紙ローラ対130により搬送経路P1から排紙トレイ127に排出することも可能である。当該方式により、反転した原稿は、元の状態に戻り、排紙ローラ対130から排紙トレイ127に導かれることになる。
なお、上記において説明した排紙・反転切換部125,126の切換えによる搬送経路の切換え等は本件において必須のものではなく、排紙・反転切換部125,126、反転排出ローラ対122を設けない構成とすることも当然に可能である。
CCD141は、ラインセンサとして原稿の搬送方向と実質的に垂直な主走査方向に複数配列された非接触型の光電変換素子を含む。本実施例においては、一例として、CCD141は600dpiの読取解像度に対応しているものとする。
CCD141は、ADF15により搬送される原稿が第1読取位置L1を通過する際に、原稿の画像をラインセンサにより光学的に読取り、光電変換した画像データを第1画像処理部43に出力する。
CIS129は、ラインセンサとして原稿の搬送方向と実質的に垂直な主走査方向に複数配列された密着型の光電変換素子を含む。本実施例においては、一例として、CIS129は600dpiの読取解像度に対応しているものとする。
また、CIS129の主走査方向の走査周期(1ラインの走査時間)は、CCD141の主走査方向の走査周期と同じとする。よって、第1読取位置L1における原稿の搬送速度と、第2読取位置L2における原稿の搬送速度とが等しければ、CCD141による副走査方向の読取倍率とCIS129による副走査方向の読取倍率とは等しくなる。
CIS129は、原稿の搬送経路に設けられた開口部128に臨んでおり、第2読取位置L2を通過する原稿の画像を光学的に読取り、光電変換した画像データを第2画像処理部145に出力する。
MFP1においては、読取形態として両面が設定されると、CCD141とCIS129とが、搬送される原稿の表面、裏面の画像をそれぞれ一度に読取る。つまり、両面同時読取を行なう。
また、MFP1においては、読取形態として片面が設定されると、CCD141が搬送される原稿の表面の画像を読み取る。つまり片面読取を行なう。
なお、以下においては、リードローラ対119、リード排出ローラ対121、排出ローラ対123をそれぞれ搬送ローラR1,R2,R3とも称する。また、搬送ローラR1,R2,R3を総称して、単に搬送ローラと称することがある。
本例においては、ADF15により搬送ローラを用いて搬送される原稿に対して、原稿の画像を読み取る方式、すなわち流し読みによる画像読取を「ADF読取」とも称する。
一方で、スキャナ13は、ADF15を用いない、手置き原稿の画像も読み取る。
具体的には、手置き原稿は、プラテンガラス132上に載置される。プラテンガラス132上に載置された手置き原稿は、移動可能なスライダユニットがプラテンガラス132全面に渡って移動することによりプラテンガラス132に面した手置き原稿の画像を読み取ることが可能である。スライダユニットは、光源133と、反射部材135と、反射ミラー137A〜137C等とを搭載する。そして、当該スライダユニットをスライダモータ55(図5参照)によりプラテンガラス132の一方の端部から他方の端部まで移動させる。
CCD141は、スライダユニットを介して入力される手置き原稿の画像をラインセンサにより光学的に読取り、光電変換した画像データを第1画像処理部43に出力する。
本例においては、手置き原稿に対して、スライダユニットを用いて原稿の画像を読み取る画像読取を「手置読取」とも称する。
図5は、ADF15およびスキャナ13の機能構成について説明する図である。
図5を参照して、ADF15は、ADF制御部161と、それぞれがADF制御部161に接続された第1〜第4駆動部63,65,67,69と、第1〜第4駆動部63,65,67,69にそれぞれ接続された第1〜第4パルスモータ64,66,68,70と、CIS129とを含む。
スキャナ13は、スキャナ制御部151と、それぞれがスキャナ制御部151に接続されたスライダ駆動部53と、第1画像処理部143と、第2画像処理部145と、第1画像処理部143に接続されたCCD141とを含む。
スキャナ制御部151とADF制御部161とは、互いに通信可能なように接続されている。また、CIS129と、第2画像処理部145とは、互いに通信可能なように接続されている。
スキャナ制御部151とADF制御部161とは、互いに通信することにより、原稿のサイズ情報、動作モード、原稿を読取るためのタイミング情報等の各種の制御情報等をやり取りする。
第1〜第4パルスモータ64,66,68,70は、第1〜第4駆動部63,65,67,69のそれぞれが出力するφ0〜φ3の4つの励磁信号により駆動される。
一例として、給紙ローラ113、分離ローラ115、レジストローラ117、リードローラ対119、リード排出ローラ対121、排出ローラ対123、反転排出ローラ対122および排紙ローラ対125は、第1〜第4駆動部63,65,67,69にのいずれかにより駆動され、原稿を搬送するタイミングに応じて、回転速度や回転方向が別々に切換えられる。
具体的には第1パルスモータ64は、給紙ローラ113、分離ローラ115、レジストローラ117を回転駆動させる。第2パルスモータ66は、リードローラ対119、リード排出ローラ対121、排出ローラ対123を回転駆動させる。第3パルスモータ68は、排紙ローラ対130を回転駆動させる。第4パルスモータ70は、反転排出ローラ対122を回転駆動させる。なお、本例においては、4つの駆動部およびモータを設けたローラ対等を駆動する場合について説明したが、さらに別の駆動部およびモータを設けてローラ対を制御するようにすることも可能である。
MFP1は、ADF読取を行なう場合には、基本的には(後述する両面同時読取時の表面を除く)には、副走査方向の読取倍率の調整を、原稿の搬送速度を変えることにより行なう。制御部20は、原稿が副走査設定倍率に対応する搬送速度で搬送されるように、第1〜第4パルスモータ64,66,68,70の駆動を制御する。
具体的には、制御部20がADF制御部161に対して搬送速度を指示し、ADF制御部161が、指示された搬送速度となるように第1〜第4駆動部63,65,67,69に対して駆動信号(φ0〜φ3)を出力する。第1〜第4駆動部63,65,67,69は駆動信号(φ0〜φ3)に応じて第1〜第4パルスモータ64,66,68,70を駆動し、第1〜第4パルスモータ64,66,68,70は、副走査設定倍率に対応する搬送速度で原稿が搬送されるように搬送ローラを駆動する。
MFP1は、手置読取を行なう場合には、副走査方向の読取倍率の調整を、スライダの移動速度を変えることにより行なう。そこで、制御部20は、副走査設定倍率に対応する移動速度でスライダが移動するように、スライダモータ55の駆動を制御する。
具体的には、制御部20がスキャナ制御部151に対して移動速度を指示し、スキャナ制御部151が、指示された移動速度となるようにスライダ駆動部53に対して駆動信号(φ0〜φ3)を出力する。スライダ駆動部53は駆動信号(φ0〜φ3)に応じてスライダモータ55を駆動し、スライダモータ55は、スライダが副走査設定倍率に対応する移動速度でスライダを移動する。
第1画像処理部143は、CCD141が原稿を読取って出力する読取画像が入力される。第1画像処理部143は、入力される読取画像に所定の画像処理を施してスキャナ制御部151に出力する。第2画像処理部145は、CIS129が原稿を読取って出力する読取画像が入力される。第2画像処理部145は、入力される読取画像に所定の画像処理を施し、スキャナ制御部151に出力する。
スキャナ制御部151は、入力される読取画像を、プリンタ14に出力する。あるいは、外部インタフェースを介してそれに接続されたコンピュータあるいはメモリ等に出力することも可能である。
図6は、第1および第2画像処理部の機能について説明する図である。
図6を参照して、第1画像処理部143は、画像入力部81と、入力データ処理部82と、SH補正部83と、明度・色差分離部84と、画像調整部85と、色空間変換部86と、圧縮伸張部87とを含む。
また、第2画像処理部145は、画像入力部181と、入力データ処理部182と、SH補正部183と、明度・色差分離部184と、画像調整部185と、色空間変換部186と、圧縮伸張部187とを含む。
第1画像処理部143および第2画像処理部145とは構成が同一であるので、ここでは第1画像処理部143について説明する。
画像入力部81は、CCD141から赤(R)、緑(G)および青(B)のそれぞれの画像データの入力を受ける。CCD141は、赤(R)、緑(G)および青(B)の3つのラインセンサそれぞれに対応した画像データ(1読取ラインデータ)を画像入力部81に出力する。すなわち、赤(R)、緑(G)および青(B)の3つのラインセンサそれぞれに対応した画像データが取得されるが、本例においては説明を簡易にするため1つのラインセンサの画像データについて主に説明する。
入力データ処理部82は、CCD141から入力されるアナログ画像データをデジタルの画像データに変換する。当該入力データ処理部82において、後述する電子変倍処理が実行されるものとする。電子変倍処理には、副走査方向の間引き処理、主走査方向の間引き処理・水増し処理が含まれる。
SH補正部83は、入力データ処理部82から入力される画像データをシェーディング補正し、シェーディング補正後の画像データを明度・色差分離部84に出力する。
明度・色差分離部84は、画像データを明度成分と色差成分とに分離し、それぞれを画像調整部85に出力する。
画像調整部85は、シャープネス調整部85A、HVC調整部85Bおよび濃度補正部85Cを含む。シャープネス調整部85Aは、画像を鮮明化または平滑化する処理を実行し、HVC調整部85Bは、画像の色相(H)、明度(V)および彩度(C)を調整する。
濃度補正部85Cは、画像の濃度を補正する。画像調整部85は、処理したRGBそれぞれの画像データを色空間変換部86に出力する。
色空間変換部86は、画像データの色空間をRGB色空間からL*a*b*色空間に変換し、圧縮伸張部87に出力する。圧縮伸張部87は、画像データを圧縮し、圧縮した画像データをRAM等のメモリ90に記憶する。また、圧縮伸張部87は、メモリ90に記憶された圧縮された画像データを伸張し、スキャナ制御部151に出力する。
両面同時読取が行なわれると、第1画像処理部143により画像処理が施された表面の読取画像と、第2画像処理部145により画像処理が施された裏面の読取画像とが、メモリ90に格納される。そして、メモリ90から読み出されて伸張された、表面の読取画像と裏面の読取画像とがスキャナ制御部151に出力される。以下においては、表面の読取画像を表面読取画像と称し、裏面の読取画像を裏面読取画像とも称する。
スキャナ制御部151は、第1画像処理部143と第2画像処理部145から入力された読取画像をプリンタ14に出力する。そして、プリンタ14において、一例として両面印刷が実行される。
次に、本発明の実施の形態に従う搬送ローラR1〜R3の搬送速度の設定について説明する。
図7は、MFP1における、搬送ローラ間の搬送速度の違いに起因する副走査倍率のズレ及び、そのズレを補正するための補正係数について説明する図である。
図7(A)を参照して、ここでは、搬送ローラR1〜R3による原稿の搬送速度の比率(速度比)がそれぞれ示されている。搬送ローラR1〜R3の速度比は、1:1.004:1.008である。第1読取位置L1、第2読取位置L2で原稿のたるみが発生しないように、搬送路の下流に配置された搬送ローラほど原稿の搬送速度が大きくなっている。
搬送ローラR1〜R3の速度比は、搬送ローラR1〜R3の外径比に依存する。具体的には、各搬送ローラR1〜R3の回転速度(1回転する速度)は同じであり、各搬送ローラの外径比に従って原稿の搬送速度の速度比が定まる。
各搬送ローラR1〜R3の回転速度を同じにすることにより、1つのモータで搬送ローラR1〜R3を駆動することが可能となる。これにより、部品点数を削減することが可能である。本例においては、上述したように、第2パルスモータ66により搬送ローラR1〜R3が駆動されるものとする。
なお、搬送ローラによる原稿を搬送する力(搬送力)は、搬送ローラR1>搬送ローラR2>搬送ローラR3の関係である。原稿が、2つ以上の搬送ローラによって搬送されている状態では、搬送力が最も大きい搬送ローラが支配的となるため、原稿は搬送力が最も大きい搬送ローラの搬送速度で搬送される。
以下に図4を参照しながら、搬送路における原稿の位置と、原稿の搬送速度について説明する。
まず、原稿の先端が搬送ローラR1に到達すると、原稿は搬送ローラR1の搬送速度で搬送される。
原稿の先端が搬送ローラR2に到達すると、原稿が搬送ローラR1とR2の両方にかかる状態となるが、搬送ローラR1の搬送力が搬送ローラR1よりも大きいため、原稿はR1の搬送速度で搬送され続ける。また、原稿の先端が搬送ローラR3に到達すると、原稿が搬送ローラR1、R2、R3にかかる状態となるが、搬送ローラR1の搬送力が最も大きいため、原稿は搬送ローラR1の搬送速度で搬送され続ける。
原稿の後端が搬送ローラR1を抜けると、原稿は搬送ローラR2とR3にかかる状態となり、原稿は搬送力の大きい搬送ローラR2の搬送速度で搬送されることとなる。そして、原稿の後端が搬送ローラR2を抜けると、原稿は搬送ローラR3のみにかかる状態となり、原稿の後端が搬送ローラR3を抜けるまで、原稿は搬送ローラR3の搬送速度で搬送されることとなる。
したがって、所定サイズの原稿を読み取った場合に、CCD141の第1読取位置L1における原稿の搬送速度(の平均値)に対して、CIS129の第2読取位置L2における原稿搬送速度(の平均値)の方が所定割合速いことになる。すなわち、第1読取位置L1と第2読取位置L2との間で原稿の搬送速度の差が生じていることになる。
図7(A)を参照して、搬送ローラR1、R2、R3は、それぞれ、搬送路における搬送ローラR1−R2間の距離が100mm、搬送ローラR2−R3間の距離が30mmとなるように設置されている。
なお、以下においては、ADF読取で片面を読み取ることを、ADF片面読取といい、ADF読取で両面を読み取ることを、両面同時読取という。つまり、手置読取と、ADF読取における片面読取においてはいずれも原稿の片面が読み取られるが、前者を「手置読取」、後者を「ADF片面読取」と表現して区別するものとする。
<ADF片面読取>
まず、ADF片面読取の場合の搬送ローラの搬送速度について説明する。なお、以下において、特に説明がない限り、主走査設定倍率と副走査設定倍率は等倍(1.000倍)が設定されているものとする。
ADF片面読取の場合には、副走査方向の読取倍率の調整は、原稿の搬送速度を変えることにより行なう。一方で、CCD141の主走査方向の1ラインあたりの走査周期(Ta)は固定値(一定)である。従って、副走査方向の読取倍率を等倍にするためには、原稿の搬送速度を、CCD141の主走査方向の1ラインあたりの走査周期(Ta)のうちに、CCD141の読取解像度である600dpiの1画素幅(約0.042mm)だけ進める速度に設定すればよい。このように、副走査方向に等倍の画像を読み取るための原稿の搬送速度(Vr0)は理論的に求めることができる。以下において、副走査方向に等倍の画像を読み取るための原稿の搬送速度(Vr0)のことを基準搬送速度Vr0とも称することとする。
MFP1は、副走査方向に等倍の画像を読み取る場合は、基準搬送速度Vr0で原稿を搬送し、CCD141により画像を読み取る。例えばA4L(主走査方向297mm×副走査方向210mm、以下、単に主297mm×副210mmのように記載する)の大きさの原稿を読み取ると、読取画像の副走査方向の画素数は、210mmに対応する約4960画素(210mmを600dpiの1画素幅で除算した値)となる。なお、以下においては、便宜上、読取画像の大きさを、画素数を解像度(600dpi)に基づいて換算した長さ(mm)を用いて表現する。
原稿の搬送速度は、副走査設定倍率と基準搬送速度Vr0とに基づいて決定される。具体的には、式(1)に示すように、基準搬送速度Vr0を副走査設定倍率で除算することにより、副走査設定倍率に対応する原稿搬送速度を決定する。
原稿の搬送速度(Vr1)=(基準搬送速度Vr0)÷(副走査設定倍率) ・・・式(1)
例えば、副走査設定倍率が等倍の場合は、原稿の搬送速度(Vr1)を基準搬送速度Vr0に決定する。副走査設定倍率が2倍の場合は、原稿の搬送速度を基準搬送速度Vr0の1/2に決定する。これにより、CCD141による読取画像の副走査方向の倍率は2倍となる。副走査設定倍率が他の場合も同様である。
なお、第1読取位置L1における原稿の搬送速度は、原稿の後端が搬送ローラR1を抜ける前(搬送ローラR1による搬送速度)と、原稿の後端が搬送ローラR1を抜けた後(搬送ローラR2による搬送速度)とで変化する。しかし、第1読取位置L1は、一般的に搬送ローラR1とのごく近くに配置されるため、搬送ローラR2による搬送速度で搬送される部分については無視できるものとする。
このように、ADF片面読取の場合には、原稿の搬送速度を変えることにより副走査設定倍率に応じた読取画像を得ることができる。
<両面同時読取>
次に、両面同時読取の場合の原稿の搬送速度について説明する。
前述のように、第2読取位置L2における原稿の搬送速度は、原稿を搬送する搬送ローラによる搬送速度に依存する。
具体的には、原稿は、原稿の後端が搬送ローラR1を抜けきるまで搬送ローラR1による搬送速度で搬送され、原稿の後端が搬送ローラR1を抜けきると、搬送ローラR2による搬送速度で搬送される。その後、原稿の後端が搬送ローラR2を抜けきるまで搬送ローラR2による搬送速度で搬送され、原稿の後端が搬送ローラR2を抜けきると、搬送ローラR3による搬送速度で搬送される。
原稿サイズそれぞれについて、搬送ローラR1による搬送速度で搬送される距離(長さ)、搬送ローラR2による搬送速度で搬送される長さ、搬送ローラR3による搬送速度で搬送される長さを求めると、図7(B)に示されたとおりとなる。
具体的には、原稿サイズがA3(主297×副420mm)の場合には、搬送ローラR1の搬送速度で搬送される長さは290mm、搬送ローラR2の搬送速度で搬送される長さは100mm、搬送ローラR3の搬送速度で搬送される長さは30mmとなる。
また、同様に、原稿サイズがA4S(主210×副297mm)の場合には、搬送ローラR1の搬送速度で搬送される長さは167mm、搬送ローラR2の搬送速度で搬送される長さは100mm、搬送ローラR3の搬送速度で搬送される長さは30mmとなる。
また、同様に、原稿サイズがA4L(主297×副210mm)の場合には、搬送ローラR1による搬送速度で搬送される長さは80mm、搬送ローラR2による搬送速度で搬送される長さは100mm、搬送ローラR3による搬送速度で搬送される長さは30mmとなる。
また、同様に、原稿種類がA5L(主210×副149mm)の場合には、搬送ローラR1による搬送速度で搬送される長さは19mm、搬送ローラR2による搬送速度で搬送される長さは100mm、搬送ローラR3による搬送速度で搬送される長さは30mmとなる。
また、同様に、原稿種類がはがき(主149×副105mm)の場合には、搬送ローラR1による搬送速度で搬送される長さは0mm、搬送ローラR2による搬送速度で搬送される長さは75mm、搬送ローラR3による搬送速度で搬送される長さは30mmとなる。
なお、第2読取位置L2における、それぞれの搬送ローラによる搬送速度で搬送される長さは、搬送ローラR2、R3と第2読取位置L2との位置関係によって変わる。図7(B)においては、一例として、第1読取位置L1における搬送速度と第2読取位置L2における搬送速度とが最大となる場合について記載している。
原稿種類がA3の場合、副走査方向の原稿の長さである420mmのうち、100mmが、搬送ローラR1よりも搬送速度の速い搬送ローラR2による搬送速度で搬送され、30mmは、搬送速度のさらに速い搬送ローラR3による搬送速度で搬送される。
それゆえ、副走査方向の原稿の長さのうち、搬送ローラR2、R3による搬送速度で搬送される長さに関しては、基準搬送速度Vr0よりも速く原稿が搬送されるため、CIS129による読取画像の副走査方向の長さ(裏面副走査読取長)は、本来の副走査方向の原稿の長さよりも短くなる。
よって、原稿を基準搬送速度Vr0で搬送し、CIS129にて原稿の裏面を読み取ると、原稿サイズがA3の場合には裏面副走査読取長は419.4mmとなる。原稿サイズがA4Sの場合には、裏面副走査読取長は296.4mmとなる。原稿サイズがA4Lの場合には、裏面副走査読取長は209.4mmとなる。原稿種類がA5Sの場合には、裏面副走査読取長は148.4mmとなる。原稿種類がはがきの場合には、裏面副走査読取長は104.5mmとなる。
このように、CIS129の第2読取位置L2における搬送速度が、CCD141の第1読取位置L1における搬送速度よりも速いことに起因して、裏面副走査読取長がCCD141による読取画像の副走査方向の長さ(表面副走査読取長)よりも短くなる。
これを倍率に換算して考えると、CIS129による読取画像の副走査方向の倍率(裏面副走査読取倍率)は、原稿サイズがA3の場合には、99.85%となる。
原稿サイズがA4Sの場合には裏面副走査読取倍率は99.79%となる。原稿サイズがA4Lの場合には裏面副走査読取倍率は99.70%となる。同様に、原稿サイズがA5Sの場合には裏面副走査読取倍率は99.57%となる。また、原稿サイズがはがきの場合には裏面副走査読取倍率は99.49%となる。
図8は、原稿の副走査方向の長さと裏面副走査読取倍率との関係を示すグラフである。
図8に示されるように、原稿の副走査方向の長さが短いほど裏面副走査読取倍率が小さくなる。すなわち、原稿の副走査方向の長さが小さいほど、裏面読取画像は、本来の原稿サイズよりも副走査方向に縮小されて読み取られる。
本実施の形態においては、上述したCIS129による読取画像が副走査方向に縮小されることに対応して、両面同時読取の場合に、裏面副走査方向の倍率が等倍になるように、副走査設定倍率を補正し、補正した副走査設定倍率に基づいて原稿の搬送速度を変える。以下に補正の内容を説明する。
(1.原稿サイズがA4Lの場合の補正)
まず、A4L(主297×副210mm)を基準となる原稿(以下、基準原稿とも称する)として、原稿サイズがA4Lである場合の補正の内容について説明する。
図9は、A4Lの原稿を両面同時読取する場合における、搬送ローラの搬送速度と読取画像のサイズの関係を説明する図である。
図9を参照して、原稿を基準搬送速度Vr0で搬送すると、前述のように、裏面副走査読取長は209.4mmとなる。すなわち、裏面読取画像は副走査方向に縮小される。この場合の裏面副走査読取倍率は209.4/210=99.70%である。
そこで、裏面副走査読取倍率を等倍に補正するための補正係数(裏面副走査補正係数ε)を算出すると、1.003(=100/99.7)となる。なお、以下において、基準原稿(A4L)における裏面副走査補正係数をε0とも称する。
両面同時読取の場合には、裏面副走査補正係数ε0に基づいて副走査設定倍率を補正し、裏面副走査倍率補正値を算出する。そして、その裏面副走査倍率補正値に基づいて原稿の搬送速度を決定する。
具体的には、裏面副走査倍率補正値を式(2)により求める。
裏面副走査倍率補正値=(副走査設定倍率)×(裏面副走査補正係数ε)・・・式(2)
副走査設定倍率が等倍である場合には、裏面副走査倍率補正値は、ε0と同じ値、つまり、1.003となる。
そして、式(2)により求めた裏面副走査倍率補正値を式(3)に代入することにより原稿の搬送速度を決定する。
原稿の搬送速度(Vr1)=(基準搬送速度Vr0)÷(裏面副走査倍率補正値) ・・・式(3)
すなわち、原稿の搬送速度は、基準搬送速度Vr0よりも少し遅く決定される。これにより、裏面副走査読取倍率を等倍とすることができる。その結果、裏面副走査読取長は210mmとなる。
一方で、裏面読取画像を等倍にするために原稿を基準搬送速度Vr0よりも遅く搬送すると、CCD141による読取画像(表面読取画像)の副走査読取倍率(表面副走査読取倍率)は等倍よりも大きくなる。具体的には、表面副走査読取倍率が1.003となる。
そこで、CCD141による読取画像に対する副走査方向の倍率補正値(表面副走査倍率補正値)を、式(4)により算出する。
表面副走査倍率補正値=(副走査設定倍率)/(裏面副走査補正係数ε)・・・式(4)
つまり、裏面副走査読取倍率を等倍にするために基準搬送速度Vr0を遅くした分(拡大された分)だけ、画像を元に戻す(縮小する)ように、表面読取画像に対する倍率を補正する。
そして、算出された表面副走査倍率補正値に応じた副走査方向の電子変倍処理(間引き処理)を、表面読取画像に対して行なう。
以上のように、両面同時読取の場合は、裏面副走査読取倍率が等倍になるような原稿の搬送速度とすることにより、裏面読取画像については副走査方向に電子変倍することなく等倍の画像を得ることができる。また、表面読取画像については副走査方向に電子間引きすることにより等倍の画像を得ることができる。
(2.原稿サイズがA4L以外の場合の補正)
以下に、基準原稿(A4L)以外の原稿に対する補正の内容について説明する。
まず、原稿サイズそれぞれの裏面副走査読取倍率についての、基準原稿(A4L)での裏面副走査読取倍率に対する比率を求める。
具体的には、A3の裏面副走査読取倍率は99.85%であり、A4Lの裏面副走査読取倍率は99.70%であるため、A3とA4Lとの裏面副走査読取倍率の比率は、100.15%である。つまり、これは、A4Lの裏面副走査読取倍率が等倍となるような搬送速度で原稿を搬送すると、A3の裏面副走査読取倍率は100.15%となることを意味する。
また、A4Sの裏面副走査読取倍率は99.79%であり、A4Lの裏面副走査読取倍率は99.70%であるため、A4SとA4Lとの裏面副走査読取倍率の比率は、100.09%である。他の原稿サイズについても同様に算出することができる。
このように、基準搬送速度Vr0を、基準原稿(A4L)の裏面副走査補正係数ε0で補正すると、基準原稿(A4L)での裏面副走査読取倍率は等倍になるが、基準原稿(A4L)以外の原稿サイズでの裏面副走査読取倍率は等倍とはならない。これは、副走査方向の原稿の全長に対する、搬送ローラR2による搬送速度で搬送される長さおよび搬送ローラR3による搬送速度で搬送される長さの比率が、原稿サイズごとに異なるためである。
そこで、前述した、原稿サイズそれぞれについての、A4Lとの裏面副走査読取倍率の比率に基づいて、A4L以外の原稿サイズにおいても裏面読取画像が等倍となるように、副走査設定倍率を補正する。
具体的には、前述した、A4Lとの裏面副走査読取倍率の比率の逆数を補正係数(サイズ依存補正係数α)として用いる。
原稿サイズA3は、A4Lに対する裏面副走査読取倍率の比率が100.15%であるからサイズ依存補正係数αは99.85%(=100/100.15)となる。同様に、原稿サイズA4Lは、A4Lとの裏面副走査読取倍率の比率が100.09%であるから、サイズ依存補正係数αは、99.91%(100/100.09)となる。他の原稿サイズについても同様に算出することができる。
両面同時読取する場合には、まず、式(5)のように、裏面副走査補正係数ε0と原稿サイズに対応するサイズ依存補正係数αとに基づいて副走査設定倍率を補正して裏面副走査倍率補正値を求める。
裏面副走査倍率補正値=(副走査設定倍率)×(裏面副走査補正係数ε0)×(原稿サイズに対応するサイズ依存補正係数α)・・・式(5)
そして、式(5)で求めた裏面副走査倍率補正値を式(3)に代入し、原稿の搬送速度(Vr1)を決定する。
このように、副走査補正係数ε0に加え、原稿サイズに対応するサイズ依存補正係数αを用いて副走査設定倍率を補正することにより、原稿サイズが基準原稿(A4L)以外の場合にも、裏面副走査読取倍率を等倍にすることができる。
しかし、以上のように、裏面副走査読取倍率が等倍となるように原稿の搬送速度(Vr1)を決定すると、基準原稿A4Lの場合と同様に、表面副走査読取倍率は等倍とはならない。
そこで、表面副走査倍率補正値を、式(6)により算出し、算出された表面副走査倍率補正値に応じた副走査方向の間引き処理を、表面読取画像に対して行なう。
表面副走査倍率補正値=(副走査設定倍率)/(裏面副走査補正係数ε0)/(原稿サイズに対応するサイズ依存補正係数α)・・・式(6)
以上のように、基準原稿(A4L)以外の原稿を両面同時読取する場合には、サイズに応じた補正係数いいかえるならばサイズのばらつきを補正するための補正係数(サイズ依存補正係数α)により裏面副走査読取倍率を補正し、裏面副走査読取倍率が等倍になるような原稿の搬送速度を設定することにより、裏面読取画像については副走査方向に電子変倍することなく等倍の画像を得ることができる。また、表面読取画像については副走査方向に電子間引きすることにより等倍の画像を得ることができる。
なお、基準原稿(A4L)における両面原稿を読み取る場合における倍率補正値ε0と、原稿サイズそれぞれに対応するサイズ依存補正係数αは、データテーブルとして予めROM30に格納されている。なお、図8に示すグラフを近似式としてROM30に格納しておき、原稿サイズ(原稿の副走査方向の長さ)をその近似式に代入することにより、サイズ依存補正係数αを算出するようにしても良い。
(3.機差ばらつきが存在する場合の補正)
上記においては、CCD141,CIS129等の部品の取り付け位置等の機差ばらつきがないものとして、両面同時読取した場合の表面副走査読取倍率と裏面副走査読取倍率とを等倍に補正する方法について説明した。
一方で、MFP1においては、一般的に、CCD141,CIS129等の部品の取り付け位置等に機差ばらつきがあり、その機差ばらつきに起因して各装置毎に読取倍率にもばらつきが生じる。従って、その機差ばらつきに起因する読取倍率のばらつきを補正するための処理が必要となる。
以下に、機差ばらつきを考慮した補正の内容について説明する。
まず、(i)機差ばらつきに起因する読取倍率のばらつきを補正するための補正係数について説明する。そして、次に、(ii)当該補正係数を用いた補正処理について説明する。
(i) 機差ばらつきを補正するための補正係数
MFP1では、機差ばらつきに起因する読取倍率のばらつきを補正するための補正係数として、機差補正係数βを用いる。機差補正係数βは、MFP1で実際に読み取られた読取画像に基づいて算出される補正係数であり、MFP1が製造される際(出荷される前)に算出され、予めROM30に格納される。
以下に、機差補正係数βを算出する方法について説明する。
図10は、機差補正係数βを算出する方法を説明するフローチャートである。
機差ばらつきは、手置読取でのCCD141による読取に関する機構(例えば、反射ミラー137A,137B,137C等のスライダユニットや、スライダモータ、レンズ139等)、ADF読取でのCCD141による読取に関する機構(例えば、搬送ローラR1、反射ミラー137A,137B,137Cと、レンズ139等)、ADF読取でのCIS129による読取に関する機構(例えば、搬送ローラR2等)それぞれにおいて発生する。なお、個々で挙げられている機構は一例であり、他の要素においても機差ばらつきの原因となる。
したがって、手置読取でのCCD141による読取(手置読取)、ADF片面読取または両面同時読取でのCCD141による読取(ADF表面読取)、両面同時読取でのCIS129による読取(ADF裏面読取)、それそれに対応する機差補正係数βを算出する必要がある。
図10を参照して、まず、手置読取に関する機差補正係数βの算出処理を実行する(ステップS2)。処理内容の詳細は後述する。
そして、次に、ADF表面読取に関する機差補正係数βの算出処理を実行する(ステップS4)。処理内容の詳細は後述する。
次に、ADF裏面読取に関する機差補正係数βの算出処理を実行する(ステップS6)。処理内容の詳細は後述する。そして、処理を終了する(エンド)。
(i−1) 手置読取に関する機差補正係数
図11は、図10のフローチャートのステップS2における、手置読取に関する機差補正係数βの算出処理について説明する図である。なお、手置読取、ADF表面読取、ADF裏面読取、いずれに関する機差補正係数βについても、基準原稿(A4L)を用いて算出処理を行なう。
図11を参照して、まず、スライダ搬送速度として、基準搬送速度Vr0を設定する(ステップS10)。
そして、A4Lサイズのテストチャートをプラテンガラス132に載置し、テストチャートの画像読取(読取テスト)を行なう(ステップS12)。テストチャートには、例えば、A4Lサイズよりも少し小さめの矩形パターン(テストパターン)が印刷されたものを用いる。
そして、テストチャートの読取画像におけるテストパターンの主走査方向および副走査方向の長さを測定する(ステップS14)。
次に、測定結果に基づき、手置読取時の主走査方向の補正係数β(M0)と、手置読取時の副走査方向の補正係数β(S0)とを算出する(ステップS16)。以下において、手置読取時の主走査方向の補正係数β(M0)を手置主走査補正係数β(M0)といい、手置読取時の副走査方向の補正係数β(S0)を手置副走査補正係数β(S0)という。また、手置主走査補正係数β(M0)と手置副走査補正係数β(S0)とを総称して手置補正係数とも称する。
手置主走査補正係数β(M0)は、テストパターンの主走査方向の幅の測定値と、テストパターンの主走査方向の本来の幅とに基づき算出される。具体的には、手置主走査補正係数β(M0)は式(7)により算出される。
手置主走査補正係数β(M0)=(主走査方向の本来の幅)/(主走査方向の幅の測定値)・・・式(7)
つまり、手置主走査補正係数β(M0)は、テストパターンの主走査方向の幅が本来の幅よりも大きい場合、すなわち主走査読取倍率が等倍よりも大きい場合には1.000よりも小さな値となり、テストパターンの主走査方向の幅が本来の幅よりも小さい場合、すなわち主走査読取倍率が等倍よりも小さい場合には1.000よりも大きな値となる。
また、手置副走査補正係数β(S0)は、テストパターンの副走査方向の幅の測定値と、テストパターンの副走査方向の幅の本来の値とに基づき算出される。具体的には、手置副走査補正係数β(S0)は式(8)により算出される。
手置副走査補正係数β(S0)=(本来の副走査方向の幅)/(副走査方向の幅の測定値)・・・式(8)
そして、ROM30に手置補正係数β(M0),β(S0)を登録し(ステップS18)、手置補正係数βの算出処理を終了する(リターン)。
図12は、図11に示すフローチャートのステップS12で読み取られるテストチャートの読取画像の一例を示す。テストチャートに印刷されたテストパターンは、前述のように、A4Lサイズよりも少し小さめの矩形パターンである。しかし、図12においては、便宜上、テストパターンをA4Lサイズと同じ大きさとしている。
図12を参照して、機差ばらつきが生じていない理想的な状態のテストチャートの読取画像と、機差ばらつきが生じている場合のテストチャートの読取画像とが示されている。
機差ばらつきが生じている場合のテストチャートの読取画像の一例として、A4L(主297mm×副210mm)のテストパターンが、主297.2mm×副210.2mmの大きさで読み取られた場合を示している。
この場合に、手置主走査補正係数β(M0)は、主走査方向の本来の幅(297mm)と主走査方向の幅の測定値(297.2mm)とを式(7)に代入することにより、下記のように算出される。
β(M0)=0.999=297/297.2
また、手置副走査補正係数β(S0)は、副走査方向の本来の幅(210mm)と主走査方向の幅の測定値(210.2)とを式(8)に代入することにより、下記のように算出される。
β(S0)=0.999=210/210.2
なお、機差ばらつきが生じていない理想的な場合には、β(M0)とβ(S0)の値はいずれも1.000となる。
(i−2) ADF表面読取に関する機差補正係数
図13は、図10のフローチャートのステップS4における、ADF表面読取に関する機差補正係数βの算出処理について説明する図である。ADF表面読取に関する機差補正係数βの算出処理は、基本的には、図11に示す手置補正係数βの算出処理と同様の内容である。
図13を参照して、まず、搬送ローラの搬送速度として、基準搬送速度Vr0を設定する(ステップS20)。
そして、前述のテストチャートを原稿トレイ17に載置に載置し、ADF片面読取で画像読取(読取テスト)を行なう(ステップS22)。
そして、テストチャートの読取画像におけるテストパターンの主走査方向および副走査方向の長さを測定する(ステップS24)。
次に、測定結果に基づき、ADF表面読取時の主走査方向の補正係数β(M1)と、ADF表面読取時の副走査方向の補正係数β(S1)とを算出する(ステップS26)。以下において、ADF表面読取時の主走査方向の補正係数β(M1)を表面主走査補正係数β(M1)といい、ADF表面読取時の副走査方向の補正係数β(S1)を表面副走査補正係数β(S1)という。また、表面主走査補正係数β(M1)と表面副走査補正係数β(S1)とを総称して表面補正係数とも称する。
表面主走査補正係数β(M1)は、手置読取時と同様に、式(9)により算出される。
表面主走査補正係数β(M1)=(主走査方向の本来の幅)/(主走査方向の幅の測定値)・・・式(9)
また、表面副走査補正係数β(S1)は、手置読取時と同様に、は式(10)により算出される。
表面副走査補正係数β(S1)=(副走査方向の本来の幅)/(副走査方向の幅の測定値)・・・式(10)
そして、ROM30に表面補正係数β(M1),β(S1)を登録し(ステップS28)、表面補正係数βの算出処理を終了する(リターン)。
なお、表面主走査補正係数β(M1)と表面副走査補正係数β(S1)についての、補正値を算出する際の考え方は、図12を用いて説明した手置主走査補正係数β(M0)と手置副走査補正係数β(S0)と同様であるためその説明は省略する。
(i−3) ADF裏面読取に関する機差補正係数
図14は、図10のフローチャートのステップS6における、ADF裏面読取に関する機差補正係数βの算出処理について説明する図である。ADF裏面読取に関する機差補正係数βの算出処理は、基本的には、図11に示す手置補正係数βの算出処理と同様の内容である。
図14を参照して、まず、搬送ローラの搬送速度として、基準搬送速度Vr0を設定する(ステップS30)。
そして、前述のテストパターンが裏面となるように、テストチャートを原稿トレイ17に載置し、両面同時読取で画像読取(読取テスト)を行なう。(ステップS32)。そして、本読取テストにおいては、CIS129による読取画像、すなわち裏面読取画像を取得する。
そして、テストチャートの裏面読取画像におけるテストパターンの主走査方向および副走査方向の長さを測定する(ステップS34)。なお、ここで測定される長さは、機差ばらつきだけでなく、上述した、CCD141の第1読取位置L1と、CIS129の第2読取位置L2とにおける搬送速度の差に起因する副走査読取倍率の差異の影響も含むものである。
次に、測定結果に基づき、ADF裏面読取時の主走査方向の補正係数β(M2)と、ADF裏面読取時の副走査方向の補正係数β(S2)とを算出する(ステップS36)。以下において、ADF裏面読取時の主走査方向の補正係数β(M2)を裏面主走査補正係数β(M2)といい、ADF裏面読取時の副走査方向の補正係数β(S2)を裏面副走査補正係数β(S2)という。また、裏面主走査補正係数β(M2)と裏面副走査補正係数β(S2)とを総称して裏面補正係数とも称する。
裏面主走査補正係数β(M2)は式(11)により算出される。
裏面主走査補正係数β(M2)=(本来の主走査方向の幅)/(主走査方向の幅の測定値)・・・式(11)
また、裏面副走査補正係数β(S2)は式(12)により算出される。
裏面副走査補正係数β(S2)=(本来の副走査方向の幅)/(副走査方向の幅の測定値)・・・式(12)
そして、ROM30に裏面補正係数β(M2),β(S2)を登録する(ステップS38)。そして、裏面補正係数βの算出を終了する(リターン)。
図15は、図14に示すフローチャートのステップS32で読み取られるテストチャートの読取画像の一例を示す。なお、図12の場合と同様に、便宜上、テストパターンをA4Lサイズと同じ大きさとしている。
図15を参照して、機差ばらつきが生じていない理想的な状態でのテストチャートの読取画像と、機差ばらつきが生じている場合のテストチャートの読取画像とが示されている。
機差ばらつきが生じていない理想的な状態では、A4L(主297mm×副210mm)のテストパターンが、主297.0mm×副209.4mmの大きさで読み取られる。これは、前述したように、CCD141の第1読取位置L1における原稿の搬送速度と、CIS129の第2読取位置L2における原稿搬送速度の違いに起因するものである。
この場合に、裏面副走査補正係数β(S2)は、副走査方向の本来の幅(210mm)と副走査方向の幅の測定値(209.4mm)とを式(12)に代入することにより、下記のように算出される。
β(S2)=1.003=210/209.4
裏面補正係数β(S2)は、機差ばらつきがない状態では1.003となる。
一方、図15を参照して、機差ばらつきが生じている場合のテストチャートの読取画像の一例として、A4L(主297mm×副210mm)のテストパターンが、主297.2mm×副209.6mmの大きさで読み取られた場合が示されている。
この場合に、裏面主走査補正係数β(M2)は、主走査方向の本来の幅(297mm)と主走査方向の幅の測定値(297.2mm)とを式(11)に代入することにより、下記のように算出される。
β(M2)=0.999=297/297.2
また、裏面副走査補正係数β(S2)は、副走査方向の本来の幅(210mm)と副走査方向の幅の測定値(209.6)とを式(12)に代入することにより、下記のように算出される。
β(S2)=1.002=210/209.6
なお、機差ばらつきが生じている場合の裏面の副走査補正係数β(S2)には、CIS129による読取に関する機構の機差ばらつきの影響だけでなく、CCD141の第1読取位置L1における原稿の搬送速度とCIS129の第2読取位置L2における原稿搬送速度の違いの影響も含む。
図16は、図10に示す出荷時パラメータの設定処理に従ってROM30に登録された補正係数について説明する図である。
図16(A)を参照して、ROM30には、手置主走査補正係数β(M0)および手置副走査補正係数β(S0)が登録される。
手置補正係数は、手置読取に関する機差ばらつきに起因する読取倍率のばらつきを補正するためのものであり、手置読取による読取画像に対する倍率補正に用いられる。
図16(B)を参照して、ROM30には、表面主走査補正係数β(M1)および表面副走査補正係数β(S1)が登録される。
表面補正係数は、ADF読取での表面画像の読取に関する機差ばらつきに起因する読取倍率のばらつきを補正するためのものであり、ADF読取での表面読取画像に対する倍率補正に用いられる。
図16(C)を参照して、ROM30には、裏面主走査補正係数β(M1)および裏面副走査補正係数β(S1)が登録される。
裏面補正係数は、ADF読取での裏面画像の読取に関する機差ばらつきに起因する読取倍率のばらつきを補正するためのものであり、ADF読取での裏面読取画像に対する倍率補正に用いられる。
(ii) 機差補正係数を用いた補正処理
以下に、機差ばらつきを考慮した補正処理の内容について説明する。
(ii−1) 手置読取に関する補正処理
手置読取時には、手置主走査補正係数β(M0)と、手置副走査補正係数β(S0)とを用いて、主走査設定倍率および副走査設定倍率の補正が行なわれる。
手置読取の場合には、副走査方向に関して、手置副走査補正係数β(S0)に基づいて副走査設定倍率を補正し、手置副走査倍率補正値を算出する。そして、その手置副走査倍率補正値に基づいてスライダの移動速度を決定する。
具体的には、手置副走査倍率補正値を式(13)により求める。
手置副走査倍率補正値=(副走査設定倍率)×(手置副走査補正係数β(S0))・・・式(13)
そして、式(13)により求めた手置副走査倍率補正値を式(14)に代入することによりスライダの移動速度を決定する。
スライダの移動速度(Vr1)=(基準搬送速度Vr0)÷(手置副走査倍率補正値) ・・・式(14)
式(14)で算出されたスライダの移動速度(Vr1)で画像を読み取ることにより、手置読取時の副走査読取倍率は等倍となる。
手置読取の場合には、主走査方向に関して、手置主走査補正係数β(M0)に基づいて主走査設定倍率を補正し、手置主走査倍率補正値を算出する。そして、補正処理は、その手置主走査倍率補正値に基づいて、主走査方向の電子変倍(間引きまたは水増し)処理を施すことにより行なう。
具体的には、手置主走査倍率補正値を式(15)により求める。
手置主走査倍率補正値=(主走査設定倍率)×(手置主走査補正係数β(M0))・・・式(15)
そして、式(15)により求めた手置主走査倍率補正値に基づき、主走査方向の電子変倍処理を行なう。これにより、手置読取時の主走査読取倍率は等倍となる。
なお、電子変倍処理としては、例えば、単純間引きによる縮小処理、単純水増しによる拡大処理など一般的な変倍処理が用いられ、特に限定されない。以下に記載する電子変倍処理についても同様であり、説明は繰り返さない。
(ii−2) ADF片面読取に関する補正処理
ADF読取による片面読取時には、表面主走査補正係数β(M1)と、表面副走査補正係数β(S1)とを用いて、主走査設定倍率および副走査設定倍率の補正が行なわれる。
ADF片面読取の場合には、副走査方向に関して、表面副走査補正係数β(S1)に基づいて副走査設定倍率を補正し、表面副走査倍率補正値を算出する。そして、その表面副走査倍率補正値に基づいて原稿の搬送速度を決定する。
具体的には、表面副走査倍率補正値を式(16)により求める。
表面副走査倍率補正値=(副走査設定倍率)×(表面副走査補正係数β(S1))・・・式(16)
そして、式(16)により求めた表面副走査倍率補正値を式(17)に代入することにより原稿の搬送速度を決定する。
原稿の搬送速度(Vr1)=(基準搬送速度Vr0)÷(表面副走査倍率補正値) ・・・式(17)
式(17)で算出された原稿の搬送速度(Vr1)で画像を読み取ることにより、ADF読取による片面読取時の副走査読取倍率は等倍となる。
ADF片面読取の場合には、主走査方向に関して、表面主走査補正係数β(M1)に基づいて主走査設定倍率を補正し、表面主走査倍率補正値を算出する。そして、補正処理は、その表面主走査倍率補正値に基づいて、主走査方向の電子変倍(間引きまたは水増し)処理を施すことにより行なう。
具体的には、表面主走査倍率補正値を式(18)により求める。
表面主走査倍率補正値=(主走査設定倍率)×(表面主走査補正係数β(M1))・・・式(18)
そして、式(18)により求めた表面主走査倍率補正値に基づき、主走査方向の電子変倍処理を行なう。これにより、ADF読取による片面読取時の主走査読取倍率は等倍となる。
(ii−3) 両面同時読取に関する補正処理
両面同時読取時には、表面主走査補正係数β(M1)と、表面副走査補正係数β(S1)、裏面主走査補正係数β(M2)と、裏面副走査補正係数β(S2)とを用いて、主走査設定倍率および副走査設定倍率の補正が行なわれる。
両面同時読取の場合には、副走査方向に関して、裏面副走査補正係数β(S2)に基づいて副走査設定倍率を補正し、裏面副走査倍率補正値を算出する。そして、その裏面副走査倍率補正値に基づいて原稿の搬送速度を決定する。
具体的には、裏面副走査倍率補正値を式(19)により求める。
裏面副走査倍率補正値=(副走査設定倍率)×(裏面副走査補正係数β(S2))・・・式(19)
そして、式(19)により求めた裏面副走査倍率補正値を式(20)に代入することにより原稿の搬送速度を決定する。
原稿の搬送速度(Vr1)=(基準搬送速度Vr0)÷(裏面副走査倍率補正値) ・・・式(20)
式(20)で算出された原稿の搬送速度(Vr1)で原稿を搬送することにより、両面同時読取による裏面読取画像の副走査読取倍率は等倍となる。
両面同時読取の場合には、裏面読取画像の主走査方向に関して、裏面主走査補正係数β(M2)に基づいて主走査設定倍率を補正し、裏面主走査倍率補正値を算出する。そして、補正処理は、その裏面主走査倍率補正値に基づいて、主走査方向の電子変倍(間引きまたは水増し)処理を施すことにより行なう。
具体的には、裏面主走査倍率補正値を式(21)により求める。
裏面主走査倍率補正値=(主走査設定倍率)×(裏面主走査補正係数β(M2))・・・式(21)
そして、式(21)により求めた裏面主走査倍率補正値に基づき、主走査方向の電子変倍処理を行なう。これにより、両面同時読取による裏面読取画像の主走査読取倍率は等倍となる。
両面同時読取の場合には、表面読取画像の副走査方向に関して、表面副走査補正係数β(S1)と裏面副走査補正係数β(S2)とに基づいて表面副走査設定倍率を補正し、表面副走査倍率補正値を算出する。そして、補正処理は、表面副走査倍率補正値に基づいて電子変倍処理(間引き処理)を施すことにより行なう。
具体的には、表面副走査倍率補正値を式(22)により求める。
表面副走査倍率補正値=(副走査設定倍率)×(表面副走査補正係数β(S1))÷(裏面副走査補正係数β(S2))・・・式(22)
そして、式(22)により求めた表面副走査倍率補正値に基づき、表面読取画像に対し副走査方向の電子変倍処理(間引き処理)を行なう。これにより、両面同時読取による表面読取画像の副走査読取倍率は等倍となる。
以下に、表面読取画像の副走査方向の設定倍率の補正を、表面副走査補正係数β(S1)と裏面副走査補正係数β(S2)とに基づいて行なう理由を説明する。
表面副走査補正係数β(S1)は、前述のように、原稿の搬送速度をVr0とした場合に、表面副走査読取倍率を等倍に補正するための補正係数である。よって、原稿の搬送速度Vr0であれば、表面副走査補正係数β(S1)のみに基づいて表面読取画像の副走査方向の設定倍率の補正を行なえば良い。
しかし、両面同時読取においては、前述のように、裏面読取画像の副走査読取倍率が等倍となるように原稿の搬送速度が変えられるため、表面副走査補正係数β(S1)のみに基づいて表面読取画像の副走査方向の設定倍率の補正を行なっても、表面副走査読取倍率は等倍にはならない。具体的には、裏面副走査補正係数β(S2)の分だけ拡大された画像となる。
そのため、式(22)のように、副走査設定倍率を表面副走査補正係数β(S1)で補正した上、さらに裏面副走査補正係数β(S2)で補正する必要がある。
両面同時読取の場合には、表面読取画像の主走査方向に関して、表面主走査補正係数β(M1)に基づいて主走査設定倍率を補正し、表面主走査倍率補正値を算出する。そして、補正処理は、その表面主走査倍率補正値に基づいて、主走査方向の電子変倍(間引きまたは水増し)処理を施すことにより行なう。
具体的には、表面主走査倍率補正値を式(23)により求める。
表面主走査倍率補正値=(主走査設定倍率)×(表面主走査補正係数β(M1))・・・式(23)
そして、式(23)により求めた表面主走査倍率補正値に基づき、主走査方向の電子変倍処理を行なう。これにより、両面同時読取による表面読取画像の主走査読取倍率は等倍となる。
図17は、本発明の実施の形態に従うMFP1におけるコピー機能を実行する場合の処理の流れについて説明するフロー図である。制御部20はROMに記憶されたプログラムに基づいて図17のフロー図に示す処理を行なう。
図17を参照して、まずコピーモードが選択されたかどうかを判断する(ステップS50)。
具体的にはコピーキー210が押下されたかどうかに基づいて判断する。なお、コピーキー210が押下されるまで当該状態を維持し続ける。
コピーキー210が押下された場合(ステップS50においてYES)には、制御部20は、ユーザからのコピー動作の設定を受け付ける(ステップS52)。
ユーザは、図3で説明した操作パネル10に表示された内容に従ってコピー動作の各種設定が可能である。例えば、ユーザは、原稿サイズ、印刷形態として片面/両面、倍率、印刷用紙、集約(2in1、4in1)等の設定が可能である。なお、原稿サイズは、スキャナ13または原稿トレイ17に設置されたセンサにより、自動的に検知してもよい。
そして、コピーモードの設定に従い倍率設定処理を実行する(ステップS54)。具体的には、制御部20は、ステップS54で受け付けたコピー動作の設定及びROM30に格納された各種パラメータに従って、搬送ローラによる搬送速度、スライダの移動速度、電子変倍処理の変倍率を決定する等の処理を実行する。その詳細については後述する。
そして、スタートキーが押下されたかどうかを判断する(ステップS56)。
スタートキーが押下された場合(ステップS56でYES)には、倍率設定処理の設定に従って画像読取処理を行ない(ステップS58)、読取画像に基づいて印刷処理を実行する(ステップS60)。すなわち、コピー動作が開始される。そして、コピー動作終了後、再び、ステップS52に戻り、再度、ユーザからのコピー動作の設定を受け付ける。
スタートキーが押下されない場合(ステップS56においてNO)には、再び、ステップS52に戻り、ユーザからのコピー動作の設定を受け付ける。
図18は、図17に示すフロー図のステップS54で行なわれる倍率設定処理の内容を説明するフロー図である。当該倍率設定処理を実現するためのプログラムは予めROM30に格納されており、当該プログラムを制御部20が読み出して実行することにより以下に示す処理が実行される。
図18を参照して、まず、手置読取か、ADF読取かを判断する(ステップS72)。手置読取か否かの判断は、プラテンガラス132上に原稿が載置されたか否かを、スキャナ13に設置されたセンサで検出することにより行なう。また、ADF読取か否かの判断は、原稿トレイ17に原稿が載置されたか否かを、原稿トレイ17に設置されたセンサで検出することにより行なう。
ステップS72において、手置読取であると判断した場合(ステップS72において手置き)には、次に設定倍率Aを取得する(ステップS74)。
制御部20は、ユーザにより設定された設定倍率Aを取得する。なお、設定倍率Aは、原稿の主走査方向の設定倍率AMおよび副走査方向の設定倍率ASで構成されている。ここで言う「ユーザにより設定された設定倍率」とは、ユーザにより直接選択された倍率のみならず、例えば、ユーザから集約の機能(例えば2in1)の選択を受け付け、2in1に対応する倍率として制御部20が自動的に決定した倍率も含む。
そして、次に、手置主走査補正係数β(M0)と手置副走査補正係数β(S0)をROMから読み込む(ステップS76)。
そして、次に、手置主走査倍率補正値と手置副走査倍率補正値とを算出する(ステップS78)。具体的には、式(15)に、主走査設定倍率AMと手置主走査補正係数β(M0)とを代入して手置主走査倍率補正値を算出する。また、式(13)に、副走査設定倍率ASと手置副走査補正係数β(S0)とを代入して手置副走査倍率補正値を算出する。
そして、ステップS78で算出した手置副走査倍率補正値に基づくスライダの移動速度の決定処理、および手置主走査倍率補正値に基づく主走査方向の電子変倍の変倍率の設定処理を実行する(ステップS80)。スライダの移動速度は式(14)に基づき決定する。主走査方向の電子変倍の変倍率は、手置主走査倍率補正値をそのまま設定する。
そして、処理を終了(リターン)し、図17のフローチャートに戻って、手置読取による画像読取処理を行なう(ステップS58)。画像読取処理においては、図18のステップS80で決定したスライダの移動速度でスライダを移動し、ステップS80で設定した変倍率に基づいて主走査方向の電子変倍処理を行なう。
このように、手置読取に関する機構の機差ばらつきに起因する主走査方向、副走査方向の読取倍率のズレを、手置主走査補正係数β(M0)と手置副走査補正係数β(S0)とに基づいて補正する。主走査方向の読取倍率のズレは、読取画像に対する主走査方向の電子変倍処理により補正する。副走査方向の読取倍率のズレは、スライダの移動速度を変えることにより補正する。
これにより、手置読取に関する機構に機差ばらつきが生じた場合にも、適正な読取倍率に補正することができる。また、副走査方向の読取倍率の補正をスライダの移動速度を変えることにより行なうため、副走査方向の電子変倍処理に起因する画質の劣化を防止し、画質の高い読取画像を得ることができる。また、副走査方向の電子変倍処理を行なわないため、画像処理部(第1画像処理部143)の規模を小さくすることができ、MFP1のコストを抑えることができる。また、副走査方向の電子変倍処理を行なわないため、画像読取処理のパフォーマンスの低下を防止することができ、画像読取を高速で行なうことができる。
図18のフローチャートに戻り、ステップS72において、ADF読取であると判断した場合(ステップS72においてADF)には、片面読取か、両面読取かを判断する(ステップS81)。ユーザにより、操作パネル10を介して、片面読取が設定されたか、両面読取が設定されたかに基づいて判断する。
そして、片面読取が設定されたと判断した場合(ステップS81において片面読取)には、ユーザにより設定された設定倍率Cを取得する(ステップS82)。なお、設定倍率Cは、原稿の主走査方向の設定倍率CMおよび副走査方向の設定倍率CSで構成されている。ここで言う「ユーザにより設定された設定倍率」とは、ユーザにより直接選択された倍率のみならず、例えば、ユーザから集約の機能(例えば2in1)の選択を受け付け、2in1に対応する倍率として制御部20が自動的に決定した設定も含む。
そして、次に、表面主走査補正係数β(M1)と表面副走査補正係数β(S1)をROMから読み込む(ステップS84)。
そして、次に、表面主走査倍率補正値と表面副走査倍率補正値とを算出する(ステップS86)。具体的には、式(18)に、主走査設定倍率CMと表面主走査補正係数β(M1)とを代入して表面主走査倍率補正値を算出する。また、式(16)に、副走査設定倍率CSと表面副走査補正係数β(S1)とを代入して表面副走査倍率補正値を算出する。
そして、ステップS86で算出した表面副走査倍率補正値に基づく原稿の搬送速度の決定処理、および表面主走査倍率補正値に基づく主走査方向の電子変倍の変倍率の設定処理を実行する(ステップS88)。原稿の搬送速度は式(17)に基づき決定する。主走査方向の電子変倍の変倍率は、表面主走査倍率補正値をそのまま設定する。
そして、処理を終了(リターン)し、図17のフローチャートに戻って、ADF片面読取による画像読取処理を行なう(ステップS58)。画像読取処理においては、図18のステップS88で決定した原稿の搬送速度で原稿を搬送し、ステップS88で設定した変倍率に基づいて主走査方向の電子変倍処理を行なう。
このように、ADF表面読取に関する機構の機差ばらつきに起因する主走査方向、副走査方向の読取倍率のズレを、表面主走査補正係数β(M1)と表面副走査補正係数β(S1)とに基づいて補正する。主走査方向の読取倍率のズレは、読取画像に対する主走査方向の電子変倍処理により補正する。副走査方向の読取倍率のズレは、原稿の搬送速度を変えることにより補正する。
これにより、ADF表面読取に関する機構に機差ばらつきが生じた場合にも、適正な読取倍率に補正することができる。また、副走査方向の読取倍率の補正を原稿の搬送速度を変えることにより行なうため、副走査方向の電子変倍処理に起因する画質の劣化を防止し、画質の高い読取画像を得ることができる。また、副走査方向の電子変倍処理を行なわないため、画像処理部(第1画像処理部143)の規模を小さくすることができ、MFP1のコストを抑えることができる。また、副走査方向の電子変倍処理を行なわないため、画像読取処理のパフォーマンスの低下を防止することができ、画像読取を高速で行なうことができる。
図18のフローチャートに戻り、ステップS81において、両面読取が設定されたと判断した場合(ステップS81において両面読取)には、ユーザにより設定された設定倍率Eを取得する(ステップS90)。なお、設定倍率Eは、原稿の主走査方向の設定倍率EMおよび副走査方向の設定倍率ESで構成されている。ここで言う「ユーザにより設定された設定倍率」とは、ユーザにより直接選択された倍率のみならず、例えば、ユーザから集約の機能(例えば2in1)の選択を受け付け、2in1に対応する倍率として制御部が自動的に決定した倍率も含む。
そして、次に、設定された原稿サイズに対応するサイズ依存補正係数α、表面主走査補正係数β(M1)、表面副走査補正係数β(S1)、裏面主走査補正係数β(M2)、裏面副走査補正係数β(S2)をROMから読み込む(ステップS92)。
そして、次に、表面主走査倍率補正値、表面副走査倍率補正値、裏面主走査倍率補正値および裏面副走査倍率補正値を算出する(ステップS94)。
具体的には、式(23)に、主走査設定倍率EMと表面主走査補正係数β(M1)とを代入して表面主走査倍率補正値を算出する。式(21)に、主走査設定倍率EMと裏面主走査補正係数β(M2)とを代入して裏面主走査倍率補正値を算出する。
また、式(19)に、副走査設定倍率ESと裏面副走査補正係数β(S2)とを代入して裏面副走査倍率補正値が算出されるが、式(19)は、原稿サイズが基準原稿(A4L)に対応するものである。すなわち、上述したように原稿サイズが基準原稿(A4L)以外の場合には、式(24)のように副走査設定倍率ESと裏面副走査補正係数β(S2)とサイズに応じた補正係数(サイズ依存補正係数α)とに基づいて副走査設定倍率を補正して裏面副走査倍率補正値を算出する。
裏面副走査倍率補正値=(副走査設定倍率)×(裏面副走査補正係数β(S2)×(サイズ依存補正係数α)・・・式(24)
すなわち、上式は、式(19)に、原稿サイズの違いに起因する裏面副走査倍率値のズレを補正するための、原稿サイズに対応するサイズ依存補正係数αによる補正を加えたものである。
また、式(22)に、副走査設定倍率ESと表面副走査補正係数β(S1)とを代入して表面副走査倍率補正値が算出されるが、式(22)は、原稿サイズが基準原稿(A4L)に対応するものである。すなわち、上述したように原稿サイズが基準原稿(A4L)以外の場合には、式(25)のように副走査設定倍率ESと表面副走査補正係数β(S1)とサイズに応じた補正係数(サイズ依存補正係数α)とに基づいて副走査設定倍率を補正して表面副走査倍率補正値を算出する。
表面副走査倍率補正値=(副走査設定倍率)×(表面副走査補正係数β(S1))÷(裏面副走査補正係数β(S2))/(原稿サイズに対応するサイズ依存補正係数α)・・・式(25)
すなわち、上式は、式(22)に、原稿サイズの違いに起因する表面副走査倍率値のズレを補正するための、原稿サイズに対応するサイズ依存補正係数αによる補正を加えたものである。
そして、ステップS94で算出した表面主走査倍率補正値に基づく表面の主走査方向の電子変倍の変倍率の設定処理、裏面主走査倍率補正値に基づく裏面の主走査方向の電子変倍の変倍率の設定処理、裏面副走査倍率補正値に基づく原稿の搬送速度の決定処理、および表面副走査倍率補正値に基づく電子変倍の変倍率の設定処理を実行する(ステップS98)。
表面の主走査方向の電子変倍の変倍率、表面の副走査方向の電子変倍の変倍率、裏面の主走査方向の電子変倍の変倍率はそれぞれ、表面主走査倍率補正値、表面副走査倍率補正値、裏面主走査倍率補正値をそのまま設定する。原稿の搬送速度は式(20)に基づき決定する。
そして、処理を終了(リターン)し、図17のフローチャートに戻って、両面同時読取により画像読取処理を行なう(ステップS58)。画像読取処理においては、図18のステップS98で決定した原稿の搬送速度で原稿を搬送し、ステップS98で設定した変倍率に基づいて、表面読取画像に対し主走査方向の電子変倍処理と副走査方向の電子変倍処理を行ない、裏面読取画像に対し主走査方向の電子変倍処理を行なう。なお、前述のように、読取位置における原稿の搬送速度の違いに起因して、表面の副走査読取倍率は裏面の副走査読取倍率よりも大きくなるため、表面読取画像に対する副走査方向の電子変倍処理は、縮小する処理(間引き処理)となる。
このように、両面同時読取時において、表面読取に関する機構の機差ばらつきに起因する主走査方向の読取倍率のズレを表面主走査補正係数β(M1)に基づいて補正する。また、表面読取に関する機構の機差ばらつきおよびサイズばらつきに起因する副走査方向の読取倍率のズレを、表面副走査補正係数β(S1)、裏面副走査補正係数β(S2)およびサイズ依存補正係数αに基づいて補正する。また、裏面読取に関する機構の機差ばらつきに起因する主走査方向の読取倍率のずれを裏面主走査補正係数β(M2)に基づいて補正する。また、裏面読取に関する機構の機差ばらつきおよびサイズばらつきに起因する副走査方向の読取倍率のズレを、裏面副走査補正係数β(S2)、サイズ依存補正係数αに基づいて補正する。
表面の主走査方向の読取倍率のズレは、表面読取画像に対する主走査方向の電子変倍処理により補正する。表面の副走査方向の読取倍率のズレは、表面読取画像に対する副走査方向の電子変倍処理により補正する。裏面の主走査方向の読取倍率のズレは、裏面読取画像に対する主走査方向の電子変倍処理により補正する。裏面の副走査方向の読取倍率のズレは、原稿の搬送速度を変えることにより補正する。
これにより、両面同時読取時において、表面読取に関する機構と裏面読取に関する機構とに機差ばらつきが生じた場合にも、適正な読取倍率に補正することができる。また、副走査方向の電子変倍処理は常に間引き処理(縮小処理)となり、電子変倍処理による副走査方向の水増し処理(拡大)を行なう必要がないため、画像読取処理のパフォーマンスが低下することはなく、画像読取を高速で行なうことができる。また、表面読取画像に対してのみ副走査方向の電子変倍処理を行ない、裏面読取画像に対しては副走査方向の電子変倍処理を行なわないため、副走査方向の電子変倍処理に起因する画質の劣化を最小限に抑えることができる。また、副走査方向の電子変倍処理による水増し処理(拡大処理)を行なう必要がないため、画像処理部(第2画像処理部145)の規模を小さくすることができ、MFP1のコストを抑えることができる。
以上のように、MFP1では、手置読取では、主走査方向の読取倍率は電子変倍処理により補正し、副走査方向の読取倍率はスライダの移動速度を変えることにより補正する。ADF片面読取では、主走査方向の読取倍率は電子変倍処理により補正し、副走査方向の読取倍率は原稿の搬送速度を変えることにより補正する。両面同時読取では、主走査方向の読取倍率と表面の副走査方向の読取倍率は電子変倍処理により補正し、裏面の副走査方向の読取倍率は原稿の搬送速度を変えることにより補正する。また、表面の副走査方向の読取倍率を補正するための電子変倍処理は常に間引き処理(縮小処理)となる。
つまり、手置読取、片面読取、両面同時読取で得られる読取画像のうち、副走査方向の電子変倍処理が施されるのは、両面同時読取における表面読取画像のみとなる。そのため、副走査方向の電子変倍処理に起因する画質の低下を最小限に抑えることができる。また、副走査方向の電子変倍処理は常に間引き(縮小処理)となり、電子変倍処理による副走査方向の水増し処理(拡大)を行なう必要がないため、画像読取処理のパフォーマンスが低下することはなく、画像読取を高速で行なうことができる。
このように、MFP1によると、画像読取処理のパフォーマンスを低下させることなく、画質の劣化を最小限に抑えることができる。
なお、上記においては、一例として、MFP1におけるコピー機能を利用した場合において、倍率設定処理を実行して、表面および裏面における主走査倍率設定処理により機差ばらつきに起因して変化する主走査方向における読取倍率を補正するとともに、両面原稿等の搬送ローラの搬送速度の設定処理を実行して、読取位置における搬送速度の差および機差ばらつきに起因して変化する読取画像の読取倍率を補正する場合について説明したが、スキャナ13のみを用いたスキャン機能、ファクシミリ16を用いたFAX機能を利用する場合においても同様に適用可能である。
なお、上記の図18のフロー図においては、両面同時読取において、サイズ依存補正係数αに基づいて原稿サイズの違いに起因する表面副走査倍率値のズレを補正する場合について説明したが基準原稿(A4L)の場合にはサイズ依存補正係数αによる補正は不要である。また、原稿サイズの違いに起因する当該ズレは他のズレと比較して相対的に大きくないためサイズ依存補正係数αによる補正を実行しないようにすることも可能である。
(変形例1)
(4.原稿の厚さを考慮した補正)
本実施の形態の変形例1においては、上記で説明した機差ばらつきおよび原稿の厚さを考慮した補正の内容について説明する。
上記においては、原稿の厚さについては特に考慮していなかったが原稿の厚さのばらつきに起因して読取倍率にばらつきが生じる。
図19は、原稿の厚さのばらつきに従う表面読取画像の表面副走査読取倍率について説明する図である。ここでは、厚さ128(g/m2)の基準原稿(A4L)を基準としてADF片面読取をした場合の一例が示されている。
図19に示されるように、厚さ128(g/m2)よりも原稿の厚さが厚いほど読取倍率が大きくなる場合が示されている。一方、厚さ128(g/m2)よりも原稿の厚さが薄いほど読取倍率が小さくなる場合が示されている。
したがって、当該厚さばらつきに起因する読取倍率のばらつきを補正するための処理が必要となる。
本実施の形態の変形例1においては、厚さ128(g/m2)の基準原稿(A4L)を基準として、原稿の厚さに応じた厚さばらつきを補正するための補正係数γを用いることにより読取倍率を補正する。
まず、基準原稿(A4L)のそれぞれの厚さに関して、厚さ128(g/m2)の基準原稿(A4L)との表面副走査読取倍率に対する比率を求める。
具体的には、厚さ210(g/m2)の基準原稿(A4L)の表面副走査読取倍率は100.30%であり、厚さ128(g/m2)の基準原稿(A4L)の表面副走査読取倍率は100.00%であるため、厚さ210(g/m2)の基準原稿(A4L)と厚さ128(g/m2)の基準原稿(A4L)との表面副走査読取倍率の比率は、100.30%である。つまり、これは、厚さ128(g/m2)の基準原稿(A4L)の表面副走査読取倍率が等倍となるような搬送速度で原稿を搬送すると、厚さ210(g/m2)の基準原稿(A4L)の表面副走査読取倍率は100.30%となることを意味する。
また、厚さ80(g/m2)の基準原稿(A4L)の表面副走査読取倍率は99.90%であり、厚さ128(g/m2)の基準原稿(A4L)の表面副走査読取倍率は100.00%であるため、厚さ80(g/m2)の基準原稿(A4L)と厚さ128(g/m2)の基準原稿(A4L)との表面副走査読取倍率の比率は、99.90%である。他の原稿サイズについても同様に算出することができる。
このように、基準搬送速度Vr0を、厚さ128(g/m2)の基準原稿(A4L)に合わせて補正すると、厚さ128(g/m2)の基準原稿(A4L)での表面副走査読取倍率は等倍になるが、厚さ128(g/m2)の基準原稿(A4L)以外の原稿サイズでの表面副走査読取倍率は等倍とはならない。これは、副走査方向において、原稿の厚さに従って原稿の搬送速度が異なるためである。
そこで、前述した、原稿の厚さそれぞれについての、厚さ128(g/m2)の基準原稿(A4L)との表面副走査読取倍率に対する比率に基づいて、厚さが異なる原稿サイズにおいても表面読取画像が等倍となるように、副走査設定倍率を補正する。
具体的には、前述した、厚さ128(g/m2)の基準原稿(A4L)との表面副走査読取倍率の比率の逆数を補正係数(厚さ依存補正係数γ)として用いる。
厚さ210(g/m2)の基準原稿(A4L)は、厚さ128(g/m2)の基準原稿(A4L)に対する表面副走査読取倍率の比率が100.30%であるから厚さ依存補正係数γは99.70%(=100/100.30)となる。同様に、厚さ80(g/m2)の基準原稿(A4L)は、厚さ128(g/m2)の基準原稿(A4L)に対する表面副走査読取倍率の比率が99.90%であるから厚さ依存補正係数γは100.10%(=100/99.90)となる。他の原稿サイズについても同様に算出することができる。
なお、厚さ128(g/m2)の基準原稿(A4L)を基準とした場合の他の厚さの基準原稿(A4L)に関する原稿の厚さに応じた厚さ依存補正係数γは、データテーブルとして予めROM30に格納されている。なお、図19に示すグラフを近似式としてROM30に格納しておき、原稿の厚さをその近似式に代入することにより厚さ依存補正係数γを算出するようにしても良い。
ADF片面読取の場合には、副走査方向に関して、表面副走査補正係数β(S1)と、厚さ依存補正係数γとに基づいて副走査設定倍率を補正し、表面副走査倍率補正値を算出する。そして、その表面副走査倍率補正値に基づいて原稿の搬送速度を決定する。
具体的には、表面副走査倍率補正値を式(26)により求める。
表面副走査倍率補正値=(副走査設定倍率)×(表面副走査補正係数β(S1))×(原稿の厚さに対応する厚さ依存補正係数γ)・・・式(26)
そして、式(26)により求めた表面副走査倍率補正値を式(17)に代入することにより原稿の搬送速度を決定する。
式(17)で算出された原稿の搬送速度(Vr1)で画像を読み取ることにより、ADF読取による片面読取時の副走査読取倍率は等倍となる。
なお、表面主査倍率補正値については、式(18)で説明したのと同様である。
以上のように、厚さの異なる基準原稿についてADF片面読取する場合には、原稿の厚さに応じた補正係数(厚さ依存補正係数γ)により表面副走査読取倍率を補正し、表面副走査読取倍率が等倍になるような原稿の搬送速度を設定することにより、表面読取画像については副走査方向に電子変倍することなく等倍の画像を得ることができる。
なお、上記においては、ADF片面読取の場合について説明したが両面同時読取の場合にも同様に適用される。
両面同時読取の場合には、裏面読取画像の副走査方向に関して、裏面副走査補正係数β(S2)と、厚さ依存補正係数γとに基づいて副走査設定倍率を補正し、裏面副走査倍率補正値を算出する。そして、その裏面副走査倍率補正値に基づいて原稿の搬送速度を決定する。
具体的には、裏面副走査倍率補正値を式(27)により求める。
裏面副走査倍率補正値=(副走査設定倍率)×(裏面副走査補正係数β(S2))×(原稿の厚さに対応する厚さ依存補正係数γ)・・・式(27)
そして、式(27)により求めた裏面副走査倍率補正値を式(20)に代入することにより原稿の搬送速度を決定する。
式(20)で算出された原稿の搬送速度で原稿を搬送することにより、両面同時読取による裏面読取画像の副走査読取倍率は等倍となる。
また、両面同時読取の場合には、表面読取画像の副走査方向に関して、表面副走査補正係数β(S1)と裏面副走査補正係数β(S2)と、厚さ依存補正係数γとに基づいて表面副走査設定倍率を補正し、表面副走査倍率補正値を算出する。そして、補正処理は、表面副走査倍率補正値に基づいて電子変倍処理(間引き処理)を施すことにより行なう。
具体的には、表面副走査倍率補正値を式(28)により求める。
表面副走査倍率補正値=(副走査設定倍率)×(表面副走査補正係数β(S1))÷(裏面副走査補正係数β(S2))/(厚さ依存補正係数γ)・・・式(28)
そして、式(28)により求めた表面副走査倍率補正値に基づき、表面読取画像に対し副走査方向の電子変倍処理(間引き処理)を行なう。これにより、両面同時読取による表面読取画像の副走査読取倍率は等倍となる。
なお、表面および裏面の主走査倍率補正値については、式(21),(23)で説明したのと同様である。
以上のように、厚さの異なる基準原稿について両面同時読取する場合には、原稿の厚さに応じた補正係数(厚さ依存補正係数γ)により裏面副走査読取倍率を補正し、裏面読取倍率が等倍となるような原稿の搬送速度を設定することにより、裏面読取画像については副走査方向に電子変倍することなくと等倍の画像を得ることができる。また、表面読取画像については副走査方向に電子間引きすることにより等倍の画像を得ることができる。
本発明の実施の形態の変形例1に従うMFP1におけるコピー機能を実行する場合の処理の流れについては、図17で説明したのと同様であるのでその詳細な説明は繰り返さない。
図20は、本発明の実施の形態の変形例1に従う倍率設定処理の内容を説明するフロー図である。当該倍率設定処理を実現するためのプログラムは予めROM30に格納されており、当該プログラムを制御部20が読み出して実行することにより以下に示す処理が実行される。
図20を参照して、図18のフロー図と比較して異なる点は、ステップS85およびステップS93を追加した点が異なる。ステップS72〜ステップS81までの処理については、図18で説明したのと同様である。
片面読取が設定されたと判断した場合(ステップS81において片面読取)には、ユーザにより設定された設定倍率Cを取得する(ステップS82)。
そして、次に、表面主走査補正係数β(M1)と表面副走査補正係数β(S1)をROMから読み込む。(ステップS84)。
そして、さらに、厚さ依存補正係数γをROMから読み込む(ステップS85)。具体的には、ユーザが操作パネル10において入力した原稿の厚さの値に従って、上述したように厚さ128(g/m2)の基準原稿(A4L)を基準とした場合の他の厚さの基準原稿(A4L)に関する原稿の厚さに応じた厚さ依存補正係数γを格納したデータテーブルを参照して、厚さ依存補正係数γを読み込む。
そして、次に、表面主走査倍率補正値と表面副走査倍率補正値とを算出する(ステップS86)。具体的には、式(18)に、主走査設定倍率CMと表面主走査補正係数β(M1)とを代入して表面主走査倍率補正値を算出する。また、式(26)に、副走査設定倍率CSと表面副走査補正係数β(S1)とを代入して表面副走査倍率補正値を算出する。
そして、ステップS86で算出した表面副走査倍率補正値に基づく原稿の搬送速度の決定処理、および表面主走査倍率補正値に基づく主走査方向の電子変倍の変倍率の設定処理を実行する(ステップS88)。原稿の搬送速度は式(17)に基づき決定する。主走査方向の電子変倍の変倍率は、表面主走査倍率補正値をそのまま設定する。
そして、処理を終了(リターン)し、図17のフローチャートに戻って、ADF片面読取による画像読取処理を行なう(ステップS58)。画像読取処理においては、図18のステップS88で決定した原稿の搬送速度で原稿を搬送し、ステップS88で設定した変倍率に基づいて主走査方向の電子変倍処理を行なう。
このように、ADF表面読取に関する機構の機差ばらつきに起因する主走査方向の読取倍率のズレを表面主走査補正係数β(M1)に基づいて補正する。また、機差ばらつきおよび厚さばらつきに起因する副走査方向の読取倍率のズレを、表面副走査補正係数β(S1)と厚さ依存補正係数γとに基づいて補正する。主走査方向の読取倍率のズレは、読取画像に対する主走査方向の電子変倍処理により補正する。副走査方向の読取倍率のズレは、原稿の搬送速度を変えることにより補正する。
これにより、ADF表面読取に関する機構に機差ばらつきおよび原稿の厚さばらつきが生じた場合にも、適正な読取倍率に補正することができる。また、副走査方向の読取倍率の補正を原稿の搬送速度を変えることにより行なうため、副走査方向の電子変倍処理に起因する画質の劣化を防止し、画質の高い読取画像を得ることができる。また、副走査方向の電子変倍処理を行なわないため、画像処理部(第1画像処理部143)の規模を小さくすることができ、MFP1のコストを抑えることができる。また、副走査方向の電子変倍処理を行なわないため、画像読取処理のパフォーマンスの低下を防止することができ、画像読取を高速で行なうことができる。
図20のフローチャートに戻り、ステップS81において、両面読取が設定されたと判断した場合(ステップS81において両面読取)には、ユーザにより設定された設定倍率Eを取得する(ステップS90)。
そして、次に、設定された原稿サイズに対応するサイズ依存補正係数α、表面主走査補正係数β(M1)、表面副走査補正係数β(S1)、裏面主走査補正係数β(M2)、裏面副走査補正係数β(S2)をROMから読み込む。
そして、さらに、厚さ依存補正係数γをROMから読み込む(ステップS93)。具体的には、ユーザが操作パネル10において入力した原稿の厚さの値に従って、上述したように厚さ128(g/m2)の基準原稿(A4L)を基準とした場合の他の厚さの基準原稿(A4L)に関する原稿の厚さに応じた厚さ依存補正係数γを格納したデータテーブルを参照して、厚さ依存補正係数γを読み込む。
そして、次に、表面主走査倍率補正値、表面副走査倍率補正値、裏面主走査倍率補正値および裏面副走査倍率補正値を算出する(ステップS94)。
具体的には、式(23)に、主走査設定倍率EMと表面主走査補正係数β(M1)とを代入して表面主走査倍率補正値を算出する。式(21)に、主走査設定倍率EMと裏面主走査補正係数β(M2)とを代入して裏面主走査倍率補正値を算出する。
また、式(27)に、副走査設定倍率ESと裏面副走査補正係数β(S2)と、厚さ依存補係数γとを代入して裏面副走査倍率補正値が算出されるが、式(27)は、原稿サイズが基準原稿(A4L)に対応するものである。すなわち、上述したように原稿サイズが基準原稿(A4L)以外の場合には、式(29)のように副走査設定倍率ESと裏面副走査補正係数β(S2)と、厚さ依存補正係数γと、サイズに応じた補正係数(サイズ依存補正係数α)とに基づいて副走査設定倍率を補正して裏面副走査倍率補正値を算出する。
裏面副走査倍率補正値=(副走査設定倍率)×(裏面副走査補正係数β(S2)×(原稿の厚さに対応する厚さ依存補正係数γ)×(サイズ依存補正係数α)・・・式(29)
すなわち、上式は、式(27)に、原稿サイズの違いに起因する裏面副走査倍率値のズレを補正するための、原稿サイズに対応するサイズ依存補正係数αによる補正を加えたものである。
また、式(28)に、副走査設定倍率ESと表面副走査補正係数β(S1)と、厚さ依存補正係数γとを代入して表面副走査倍率補正値が算出されるが、式(28)は、原稿サイズが基準原稿(A4L)に対応するものである。すなわち、上述したように原稿サイズが基準原稿(A4L)以外の場合には、式(30)のように副走査設定倍率ESと表面副走査補正係数β(S1)と、厚さ依存補正係数γと、サイズに応じた補正係数(サイズ依存補正係数α)とに基づいて副走査設定倍率を補正して表面副走査倍率補正値を算出する。
表面副走査倍率補正値=(副走査設定倍率)×(表面副走査補正係数β(S1))÷(裏面副走査補正係数β(S2))/(厚さ依存補正係数γ)/(原稿サイズに対応するサイズ依存補正係数α)・・・式(30)
すなわち、上式は、式(28)に、原稿サイズの違いに起因する表面副走査倍率値のズレを補正するための、原稿サイズに対応するサイズ依存補正係数αによる補正を加えたものである。
そして、ステップS94で算出した表面主走査倍率補正値に基づく表面の主走査方向の電子変倍の変倍率の設定処理、裏面主走査倍率補正値に基づく裏面の主走査方向の電子変倍の変倍率の設定処理、裏面副走査倍率補正値に基づく原稿の搬送速度の決定処理、および表面副走査倍率補正値に基づく電子変倍の変倍率の設定処理を実行する(ステップS98)。
表面の主走査方向の電子変倍の変倍率、表面の副走査方向の電子変倍の変倍率、裏面の主走査方向の電子変倍の変倍率はそれぞれ、表面主走査倍率補正値、表面副走査倍率補正値、裏面主走査倍率補正値をそのまま設定する。原稿の搬送速度は式(20)に基づき決定する。
そして、処理を終了(リターン)し、図17のフローチャートに戻って、両面同時読取により画像読取処理を行なう(ステップS58)。画像読取処理においては、図18のステップS98で決定した原稿の搬送速度で原稿を搬送し、ステップS98で設定した変倍率に基づいて、表面読取画像に対し主走査方向の電子変倍処理と副走査方向の電子変倍処理を行ない、裏面読取画像に対し主走査方向の電子変倍処理を行なう。
このように、両面同時読取時において、表面読取に関する機構の機差ばらつきに起因する主走査方向の読取倍率のズレを表面主走査補正係数β(M1)に基づいて補正する。また、表面読取に関する機差ばらつきおよび厚さばらつきに起因する副走査方向の読取倍率のズレを、表表面副走査補正係数β(S1)、裏面副走査補正係数β(S2)、厚さ依存補正係数γ、サイズ依存補正係数αに基づいて補正する。また、裏面読取に関する機構の機差ばらつきに起因する主走査方向の読取倍率のズレを裏面主走査補正係数β(M2)に基づいて補正する。また、裏面読取に関する機構の機差ばらつきおよびサイズばらつきならびに厚さばらつきに起因する副走査方向の読取倍率のズレを、裏面副走査補正係数β(S2)、サイズ依存補正係数α、厚さ依存補正係数γに基づいて補正する。
これにより、両面同時読取時において、表面読取に関する機構と裏面読取に関する機構とに機差ばらつきおよび原稿の厚さばらつきが生じた場合にも、適正な読取倍率に補正することができる。また、副走査方向の電子変倍処理は常に間引き処理(縮小処理)となり、電子変倍処理による副走査方向の水増し処理(拡大)を行なう必要がないため、画像読取処理のパフォーマンスが低下することはなく、画像読取を高速で行なうことができる。また、表面読取画像に対してのみ副走査方向の電子変倍処理を行ない、裏面読取画像に対しては副走査方向の電子変倍処理を行なわないため、副走査方向の電子変倍処理に起因する画質の劣化を最小限に抑えることができる。また、副走査方向の電子変倍処理による水増し処理(拡大処理)を行なう必要がないため、画像処理部(第2画像処理部145)の規模を小さくすることができ、MFP1のコストを抑えることができる。
(変形例2)
本実施の形態の変形例2においては、倍率設定処理において、両面同時読取における表面副走査倍率補正値に従う表面読取画像の副走査方向の電子変倍処理(間引き処理)の実行の有無をさらに判定する方式について説明する。
電子変倍処理(間引き処理)は、画質劣化となるため画質を優先する場合には、表面読取画像の副走査方向における電子変倍処理を実行しない方が望ましいとも考えられる。
したがって、両面同時読取において、機差ばらつきに起因して生じる読取倍率の変化にしたがって表面読取画像と裏面読取画像との読取倍率差が小さくなるような場合には、表面読取画像の副走査方向における電子変倍処理(間引き処理)を実行せず、画質を優先させる方が望ましい場合も考えられる。
したがって、本実施の形態の変形例2においては、機差ばらつきに起因する読取倍率のばらつきを補正するための機差補正係数を考慮して、表面読取画像の読取倍率と裏面読取画像の読取倍率との差が小さい場合には、表面読取画像の副走査方向における電子変倍処理(間引き処理)を実行せず、逆に、表面読取画像の読取倍率と裏面読取画像の読取倍率との差が大きい場合には、表面読取画像の副走査方向における電子変倍処理(間引き処理)を実行する方式について説明する。
図21は、本発明の実施の形態の変形例2に従う両面同時読取の倍率設定処理について説明するフロー図である。当該両面同時読取の倍率設定処理を実現するためのプログラムは予めROM30に格納されており、当該プログラムを制御部20が読み出して実行することにより以下に示す処理が実行される。
図21を参照して、図20で説明した両面同時読取の倍率設定処理のフローと比較して、電子変倍処理(間引き処理)の実行の有無を判定する処理(電子間引き判定処理とも称する)であるステップS95を追加した点が異なる。その他の処理については、図20のフローと同様であるのでその詳細な説明は繰り返さない。
図22は、本発明の実施の形態の変形例2に従う電子間引き判定処理について説明する図である。当該電子間引き判定処理を実現するためのプログラムは予めROM30に格納されており、当該プログラムを制御部20が読み出して実行することにより以下に示す処理が実行される。
図22を参照して、まず、表面副走査補正係数β(S1)および裏面副走査補正係数β(S2)を確認する(ステップS100)。
そして、次に、裏面副走査補正係数β(S2)に対する表面副走査補正係数β(S1)の比を算出する(ステップS102)。
そして、積値が99.5%未満か否かを判断する(ステップS104)。
そして、積値が99.5%未満であると判断される場合(ステップS104においてYES)には、表面読取画像の副走査方向における電子変倍処理(間引き処理)実行フラグをオン(ON)に設定する(ステップS106)。そして、処理を終了する(リターン)。
一方、積値が99.5%未満でないと判断される場合(ステップS104においてNO)には、表面読取画像の副走査方向における電子変倍処理(間引き処理)実行フラグをオフ(OFF)に設定する(ステップS108)。そして、処理を終了する(リターン)。
そして、図22に戻って、当該電子変倍処理(間引き処理)の実行フラグのオン/オフに応じてステップS98における表面副走査倍率補正値に基づく電子変倍の変倍率の設定処理を実行する。すなわち、電子変倍処理(間引き処理)の実行フラグがオフである場合には、電子変倍の変倍率の設定処理は実行されない。一方、電子変倍処理(間引き処理)の実行フラグがオンである場合には、表面の副走査方向の電子変倍の変倍率は、表面副走査倍率補正値に設定される。
図23は、裏面副走査補正係数β(S2)に対する表面副走査補正係数β(S1)の比について説明する図である。
図23に示されるように、裏面副走査補正係数β(S2)に対する表面副走査補正係数β(S1)の比について、99.5%未満である場合として、太線よりも下側領域が示されている。
表面副走査倍率補正値を算出する式(22)にも示されるように、表面副走査倍率補正値は、表面副走査補正係数β(S1)と裏面副走査補正係数β(S2)との比に依存する。
表面副走査倍率補正値=(副走査設定倍率)×(表面副走査補正係数β(S1))÷(裏面副走査補正係数β(S2))・・・式(22)
したがって、表面副走査補正係数β(S1)/裏面副走査補正係数β(S2)≒1の場合には、表面副走査倍率補正値≒副走査設定倍率となる。
すなわち、表面読取画像に関して副走査方向の読取倍率の補正は必要ではない。
一方、裏面副走査補正係数β(S2)≧表面副走査補正係数β(S1)の関係がある場合に、裏面副走査補正係数β(S2)に対する表面副走査補正係数β(S1)の比が小さくなればなるほど、表面副走査倍率補正値が小さくなる。すなわち、表面読取画像に関して副走査方向の読取倍率の補正が必要となる。
本例においては、表面読取画像に関して副走査方向の電子変倍処理(間引き処理)の判定基準である裏面副走査補正係数β(S2)に対する表面副走査補正係数β(S1)の比のしきい値として、一例として、99.5%に設定する。
裏面副走査補正係数β(S2)に対する表面副走査補正係数β(S1)の比が小さい場合、すなわち、表面読取画像と裏面読取画像との機差ばらつきに起因する読取倍率の差が大きい場合には、電子変倍処理(間引き処理)を実行することとし、逆に、比が99.5%以上である場合、すなわち、表面読取画像と裏面読取画像との機差ばらつきに起因する読取倍率の差が小さい場合には、電子変倍処理(間引き処理)を実行しないこととする。
当該方式により、表面読取画像と裏面読取画像との読取倍率の差が小さい場合に電子間引きを実行しないように設定することにより画質の精度を優先させることが可能となる。
なお、当該場合においては、電子変倍処理(間引き処理)を実行しないため表面読取画像において、表面の原稿の長さが裏面に対して幾分大きくなる可能性がある。すなわち、メモリ90に格納される読取画像のサイズが異なる可能性があるが、メモリ90に格納される読取画像のデータ量のサイズを超える部分については、入力がなかったものと扱う。当該方式により、サイズを調整することが可能である。
なお、本例においては、積値について、99.5%未満である場合を例に挙げたが、一例であり、他の値に設定することも可能である。
なお、コンピュータを機能させて、上述のフローで説明したような制御を実行させる方法あるいは当該方法を実現するプログラムを提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびメモリカードなどの一時的でないコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
なお、プログラムは、コンピュータのオペレーションシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
提供されるプログラム製品は、ハードディスクなどのプログラム格納部にインストールされて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。