JP5070718B2 - インサート成形用加飾シート - Google Patents
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Description
上記の成形用加飾シートはシートを伸ばして加飾する事から、伸びた部分は厚みが薄くなる為に、得られる加飾成形品は(シートが伸びた部分で)被着体の色の影響を受けやすかった。それは、伸ばされた成形用加飾シートの部分では、その着色した絵柄インキ層等の厚みが薄くなりその隠蔽性が低下する為であった。その為、被着体自体の色が、成形用加飾シートの隠蔽性が低下した部分を透過して見える為、周囲と色が異なってしまう。従って、成形品の絵付けされた色調が射出樹脂の色の影響を受け無い様にするために、種々の検討がなされている。
また、特許文献3では、基材シートからなる第一層と、有機顔料を着色剤として含み印刷等で形成された絵柄模様層を有する第二層と、全面に印刷、塗工等で形成された無機顔料を着色剤の主成分として含む全ベタ層からなる第三層とが積層された構成の加飾シートが開示されている。
そして、特許文献4では、熱可塑性樹脂基材シートに、少なくとも、樹脂中に着色剤を含有する隠蔽層と、樹脂中に着色剤を含有し前記隠蔽層と同色相で且つ隠蔽層よりも濃い色を持った着色層とを、その順に積層した成形用加飾シートを提案している。
しかしながら、これらの隠蔽層は、隠蔽性は高くても、耐ブロッキング性や沈降安定性が低かったりして、隠蔽性、耐ブロッキング性及び沈降安定性を鼎立させることは困難であった。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
1.表面から順に、基材シート、絵柄模様層、隠蔽層及び接着剤層を積層してなるインサート成形用加飾シートであって、該隠蔽層がガラス転移点Tg(℃)50〜75を有する樹脂及び無機顔料を含むことを特徴とするインサート成形用加飾シート。
2.基材シートがアクリル樹脂からなる上記1に記載のインサート成形用加飾シート。
3.隠蔽層の樹脂がアクリル樹脂である上記1又は2に記載のインサート成形用加飾シート。
4.隠蔽層の無機顔料が、白色無機顔料、黄色無機顔料及び茶色無機顔料からなる群から少なくとも一種選択される無機顔料を含む上記1〜3のいずれかに記載のインサート成形用加飾シート。
5.白色無機顔料が酸化チタンであり、黄色無機顔料が酸化鉄イエローであり、かつ茶色無機顔料が弁柄である上記4に記載のインサート成形用加飾シート。
6.隠蔽層の厚み換算PV比〔基準厚み:2μm、ここで、PV比は、(顔料の固形分の質量/樹脂の固形分の質量)である〕が2.5以上である上記1〜5のいずれかに記載のインサート成形用加飾シート。
本発明のインサート成形用加飾シート10は、表面から順に、基材シート11、絵柄模様層12、隠蔽層13及び接着剤層14を積層してなる。
また、図2は、本発明の加飾シートを用いたインサートフィルムの断面を示す模式図である。加飾シート10の接着剤層14表面とバッカーシート20表面とが一体化されてインサートフィルム30が製造される。
本発明においては、隠蔽層13に用いられるバインダーとしての樹脂のガラス転移点Tg(℃)が50〜75℃であることを要する。50℃未満であると耐ブロッキング性が低下し、75℃を超えると沈降安定性が悪化するからである。ここで、耐ブロッキング性とは、印刷後、印刷物を積み重ねたり、他のシート等と重ねたりしたとき、印刷表面がくっつきにくい性質をいい、沈降安定性とは、インキの保管時に顔料等が沈降して底で固まるか、ハードケークを生じ、撹拌しても再分散しなくなる現象が発生しにくい性質をいう。耐ブロッキング性と沈降安定性とは、印刷インキ等に求められる重要な性質である。
さらに、本発明に係る隠蔽層13は隠蔽性の高い無機顔料を含むことを要する。その無機顔料は、白色無機顔料、黄色無機顔料及び茶色無機顔料からなる群から少なくとも一種選択される無機顔料を含むことが好ましい。必要に応じ、さらに、顔料としてカーボンブラック等の黒色無機顔料等を含んでもよい。
黄色無機顔料としては、酸化鉄イエロー、黄鉛、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン黄等が挙げられるが、酸化鉄イエローが有害物質を含まない点で好ましい。
茶色無機顔料としては、弁柄、硫化水銀、カドミウムレッド、クロムバーミリオン、アンバー、ローアンバー、バーントアンバー、イエローオーカー、ヴァンダイクブラウン、シェンナ、ローシェンナ、バーントシェンナ等が挙げられるが、弁柄が有害物質を含まず、入手し易い点で好ましい。
上述より通常の隠蔽層の厚みは2μm 程度であることを考慮し、隠蔽層13の無機顔料の量の指標として樹脂組成物層の「厚み換算PV比」を用いることができる。
厚み換算PV比=PV比×〔(樹脂組成物層の厚み(μm)/2(μm)〕
ここで、〔PV比=(顔料の固形分の質量/樹脂の固形分の質量)〕である。
本発明においては、隠蔽層のPV比が4の場合では、隠蔽層の厚みが2μmであるとその「厚み換算PV比」が4、隠蔽層の厚みが4μmであるとその「厚み換算PV比」が8、隠蔽層の厚みが1μmであるとその「厚み換算PV比」が2となる。隠蔽層13が、複数の樹脂組成物層からなる場合は、各樹脂組成物層の厚み換算PV比を累計すればよい。隠蔽層の厚み換算PV比が2.5以上であれば、高い隠蔽性を享受でき好ましく、2.8以上であれば特に好ましい。しかし、厚み換算PV比が20を超えると隠蔽性向上のメリット享受しにくくなる一方隠蔽層が厚くなり過ぎてコスト高のデメリットが大きくなり好ましくない。
バッカーシート20がABS樹脂又はポリオレフィン樹脂の場合は、接着剤層14としてブロックイソシアネートを硬化剤とする2液硬化型ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン等が好ましい。
次に、本発明の加飾シート10を用いて、インサート成形により加飾成形品を製造する方法を説明する。本発明の加飾シート10は、バッカーシート20とドライラミネーション等により接着し一体化してインサートフィルム30となる。このインサートフィルム30を真空成形により所定の型付けを行なう。
図3、4及び5は、夫々本発明の加飾シートを用いたインサートフィルムの真空成形工程において、真空成形前の加熱段階を示す工程模式図、加熱段階終了後の真空成形準備段階を示す工程模式図及び真空成形を示す工程模式図である。
図6は、本発明の加飾シートを用いたインサートフィルムのトリミング工程を示す工程模式図である。
図7及び8は、本発明の加飾シートを用いたインサートフィルムの射出成形工程において、夫々射出成形の準備段階及び射出成形を示す工程模式図である。
図3において、固定枠(図示しない)に固定したインサートフィルム30が軟化する所定の温度になるまでヒーター42で加熱し、図4に示すように加熱され軟化したインサートフィルム30に真空成形金型41を押し付け、図5に示すように同時に真空成形金型41から真空ポンプ(図示しない)で空気を吸引しインサートフィルム30を真空成形金型41にしっかりと密着させる。
インサートフィルム30が真空成形金型41に密着した後、インサートフィルム30を冷却し成形したインサートフィルム30から真空成形金型41をはずし、固定枠から成形されたインサートフィルム30をはずす。
次に、図6に示すトリミング工程において真空成形されたインサートフィルム30の余分な部分を切り取り、トリミングされたインサートフィルム30を図7に示すように射出成形金型51にはめ込み、図8に示すようにバッカーシート20側に射出樹脂を打ち込む。最後に射出成形金型51から取り出して加飾成型品を得る。(詳細については、例えば、特許文献5参照)
なお、樹脂のガラス転移点Tg(℃)、隠蔽層の隠蔽性、耐ブロッキング性及び沈降安定性は、下記の方法に従って測定した。
1.樹脂のガラス転移点Tg(℃)
試験片を室温から20℃/分の割合で昇温させ、示差走査熱量計(DSC)にて発熱量を測定し、吸熱曲線図又は発熱曲線図を作成し、変曲点前後の直線部分に夫々延長線を引き、2本の延長線間の1/2直線と吸熱曲線又は発熱曲線との交点をTgとした。
2.隠蔽性
隠蔽層を無色透明なシートに印刷した後、その印刷シートの背面が白の場合と黒の場合とで色の見え方が違うことを以下の基準で判断した。
○:見た目の違いが無いかあるいはほとんど無い状態である。
△:多少見た目に違いがある状態で実使用に問題がある。
×:見た目が大幅に違う状態で実使用に問題がある。
4.耐ブロッキング性
隠蔽層印刷面と非印刷面を重ね合わせてブロッキング・テスターにより2.94MPaの荷重をかけ、40℃で72時間放置した後、接している面同士の付着・接合程度を以下の指標により評価した。
○:重ねた印刷シートを剥がす際、全く抵抗が無い状態である。
△:重ねた印刷シートを剥がす際、若干抵抗が有る(ペリペリと音が鳴る)状態である。
×:重ねた印刷シートを剥がす際、抵抗が有り更に裏移りする(隠蔽層が非印刷シートに転移する)状態である。
5.沈降安定性
以下の指標により隠蔽層に用いるインキの保管時の顔料の沈降レベルを評価した。
○:インキの顔料が容器の底に固まっているか若しくはハードケークが発生しているが、撹拌により再分散する場合、又は底の固まり若しくはハードケークが存在していない場合である。
×:インキの顔料が容器の底に固まっているか又はハードケークが発生しており、撹拌により再分散しない場合である。
ポリブチルメタクリレート樹脂からなる基材シート(厚さ75μm)に、ポリブチルメタクリレート/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(質量比:2/1)からなる絵柄模様層(厚さ1μm)、ポリメチルメタクリレート及びポリブチルメタクリレートの混合物及び無機顔料からなる隠蔽層(厚さ2μm)及び2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤からなる接着剤層(厚さ10μm)を順次積層して、8種類の加飾シートを調製した。
隠蔽層の樹脂は、表1の樹脂のTgになるように、ポリメチルメタクリレートとポリブチルメタクリレートとの混合比(質量比)を調整した。
また、隠蔽層の無機顔料は、実施例1〜2及び比較例1〜4では、白色無機顔料、黄色無機顔料及び茶色無機顔料を5/45/50(質量比)で混用し、実施例3では黄色無機顔料と茶色無機顔料を50/50(質量比)で混用し、実施例4では黄色無機顔料のみを用いた。なお、白色無機顔料として酸化チタン、黄色無機顔料として酸化鉄イエロー、茶色無機顔料として弁柄を用いた。
これら8種類の加飾シートの隠蔽層の隠蔽性、耐ブロッキング性及び沈降安定性を評価した。結果を表1に示す。
11 基材シート
12 絵柄模様層
13 隠蔽層
14 接着剤層
20 バッカーシート
30 インサートフィルム
41 真空成形金型
42 ヒーター
51 射出成形金型
Claims (7)
- 表面から順に、基材シート、絵柄模様層、隠蔽層及び接着剤層を積層してなるインサート成形用加飾シートであって、該隠蔽層がガラス転移点Tg(℃)50〜75を有する樹脂及び無機顔料を含み、かつ隠蔽層の厚み換算PV比〔基準厚み:2μm、ここで、PV比は、(顔料の固形分の質量/樹脂の固形分の質量)である〕が2.5〜20であることを特徴とするインサート成形用加飾シート。
- 基材シートがアクリル樹脂からなる請求項1に記載のインサート成形用加飾シート。
- 隠蔽層の樹脂がアクリル樹脂である請求項1又は2に記載のインサート成形用加飾シート。
- 隠蔽層の無機顔料が、白色無機顔料、黄色無機顔料及び茶色無機顔料からなる群から少なくとも一種選択される無機顔料を含む請求項1〜3のいずれかに記載のインサート成形用加飾シート。
- 白色無機顔料が酸化チタンであり、黄色無機顔料が酸化鉄イエローであり、かつ茶色無機顔料が弁柄である請求項4に記載のインサート成形用加飾シート。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の加飾シートと、その接着剤層を介して配設されたバッカーシートとを具備するインサートフィルム。
- 表面から順に、基材シート、絵柄模様層、隠蔽層、接着剤層及びバッカーシートを積層してなるインサートフィルムを具備する加飾成形品であって、該隠蔽層がガラス転移点Tg(℃)50〜75を有する樹脂及び無機顔料を含み、かつ隠蔽層の厚み換算PV比〔基準厚み:2μm、ここで、PV比は、(顔料の固形分の質量/樹脂の固形分の質量)である〕が2.5〜20であることを特徴とする加飾成形品。
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