JP5267017B2 - 加飾シート、加飾樹脂成形品の製造方法及び加飾樹脂成形品 - Google Patents
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Description
特許文献3では、撥液層をパターン状に形成し、撥液層の形成されていない部分に、撥液層の表面より凹んだ親水又は親油性層を形成することで、表面の凹凸形状を形成したインサートフィルムが提案されているが、撥液インキ印刷部と非印刷部の境界部が表面保護層の塗膜の表面張力により丸みを帯び凹凸の鮮鋭性に欠け、また、撥液性インキ印刷部が細い場合は凹凸がきれいに再現されない等意匠的に問題があった。また、撥液インキ印刷部は表面保護層に被覆されないため、耐傷性等の表面物性に劣る問題があった。
(1)基材上に少なくとも、部分的に設けられた低艶絵柄インキ層と、該低艶絵柄インキ層上に存在してこれと接触すると共に、該低艶絵柄インキ層が形成された領域及び該低艶絵柄インキ層が形成されていない領域を含む全面にわたって被覆する表面保護層を有する加飾シートであって、該表面保護層の厚さが1〜20μmであり、該低艶絵柄インキ層の体質顔料/樹脂の質量比(P/V比)が0.2〜2.0であり、且つ該低艶絵柄インキ層の体質顔料の吸油量(JIS K 5101−13−1:2004に準拠する)が50ml/100g以上150ml/100g未満である加飾シート、
(2)上記(1)に記載の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、該成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程を有する加飾樹脂成形品の製造方法、
(3)上記(1)に記載の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の該成形面に対し、前記加飾シートの基材が対面するように設置した後、該加飾シートを加熱、軟化させると共に、前記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び、可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程を順次施す加飾樹脂成形品の製造方法、及び
(4)上記(2)又は(3)に記載の製造方法により製造した加飾樹脂成形品、
を提供するものである。
低艶絵柄インキ層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましい。また、上記表面保護層と低艶絵柄インキ層の厚さの関係は、表面保護層の厚さが低艶絵柄インキ層の厚さの1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがさらに好ましい。上記表面保護層の厚さが上記低艶絵柄インキ層の厚さの1.5倍以上であると、低艶絵柄インキ層が相対的に薄くなり成形時にクラックが生じなくなる。
また上記表面保護層の厚さが上記低艶絵柄インキ層の厚さの5倍以下であると高い意匠性を発揮できる。
この観点から低艶絵柄インキ層の厚さが0.6〜7μmであることがさらに好ましい。
また、低艶絵柄インキ層の体質顔料の吸油量が50ml/100g未満であると、表面保護層/低艶絵柄インキ層のグロス値が高くなり、表面保護層のみの部分と表面保護層/低艶絵柄インキ層の部分との艶差が小さくなり、高い意匠性を発揮しにくくなる。一方、体質顔料の吸油量が150ml/100g以上であると、深絞りをするときの成形性が低下する。
本発明に用いる体質顔料としては、特に限定されず、シリカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が上げられるが、吸油量、粒径、細孔容積等の材料設計の自由度が高く、意匠性、インキとしての塗工安定性に優れていることから、シリカが好ましく、特に微粉末のシリカが好ましい。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
樹脂成分として電離放射線硬化性樹脂単独を含む樹脂組成物を用いると、より高い耐摩耗性や耐擦傷性が得られるので好ましい。樹脂成分として電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物を用いると、架橋硬化して表面保護層を形成した後の成形性が向上するので好ましい。特に、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との質量比が75:25〜25:75の範囲であると、表面保護層の成形性及び表面の耐摩耗性、耐擦傷性のバランスが良好となり好ましい。この観点から、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との質量比が60:40〜25:75の範囲であることがさらに好ましい。
ここで「樹脂成分として電離放射線硬化性樹単独」とは、樹脂成分中に電離放射線硬化性樹脂が100質量%であるだけでなく、耐摩耗性や耐擦傷性を阻害しない範囲で他の樹脂成分を含んでよいものであり、電離放射線硬化性樹脂が90質量%以上、好ましくは95質量%以上含む場合をも包含する。
より具体的には、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が好ましい。
特に好ましい態様である、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体においては、メタクリル酸メチルに由来する構成単位100モルに対して、アクリル酸メチルに由来する構成単位が0.1〜10モルの範囲であることが好ましい。メタクリル酸メチルに由来する構成単位100モルに対して、アクリル酸メチルに由来する構成単位が上記範囲内であると、表面保護層を形成した後の表面の耐摩耗性、耐擦傷性、耐溶剤性が特に向上する。以上の点から、メタクリル酸メチルに由来する構成単位100モルに対して、アクリル酸メチルに由来する構成単位は1〜9モルの範囲がさらに好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体はランダム共重合体であってもブロック共重合体であっても良い。
なお、ここで重量平均分子量とは、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算のものである。ここで用いる溶媒としては通常用いられるものを適宜選択して行うことができ、例えば、テトラヒドロフラン(THF)又はN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)などが挙げられる。
貯蔵弾性率の測定条件は、JIS K7244−1及び7244−4に準拠し、表面保護層を構成する樹脂組成物を架橋硬化して製膜した幅10mm、厚さ15μmのシートをクランプ間距離10mm、開始温度30℃、終了温度180℃、昇温速度5℃/分、測定周波数1Hzにて測定する。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでも良く、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。また、本発明のポリマーの表面保護層としての性能(成形性及び耐擦傷性)を損なわない程度に共重合して使用することもできる。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
図1はインサート成形に用いる場合の本発明の加飾シート10の断面を示す模式図である。図1に示す例では、透明な基材11上に絵柄層12、隠蔽層13及び接着剤層14を有し、かつ、基材11の絵柄層12の反対側に表面保護層15及び低艶絵柄インキ層16を有するものである。ここで、表面保護層15は上述の表面保護層形成用樹脂組成物を架橋硬化して形成されるものである。また、基材11と表面保護層15、又は低艶絵柄インキ層16の間にプライマー層を設けても良い。インサート成形に用いる場合は、接着剤層14(低艶絵柄インキ層とは反対側の面)にバッカーフィルム20を積層しても良い。
基材の厚さは、用途に応じて選定されるが、通常、0.02〜1.0mm程度であり、コスト等を考慮すると0.02〜0.5mm程度が一般的である。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また該基材はプライマー層を形成する等の処理を施しても良いし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていても良い。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
バッカーフィルム20としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂やウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が用いられる。射出樹脂と同じ樹脂を用いることが好ましい。バッカーフィルム20の厚さは、用途に応じて選定されるが、通常、0.1〜1.0mm程度であり、コスト等を考慮すると0.1〜0.5mm程度が一般的である。
本発明の加飾シートは、プライマー層の下記測定条件で測定した120℃における破断伸度が200%以上であることが好ましく、300%以上であることがさらに好ましい。破断伸度が200%以上であると、真空成形時において表面保護層の延伸部に微細な割れや白化が生じにくい。
(破断伸度測定の測定条件)
JIS K 7127:1999に準拠し、該プライマー層を構成するプライマー組成物を架橋硬化(50℃72時間加熱)して製膜した幅25mm×長さ(チャック間距離)50mm×厚さ40±10μmのサンプルを120℃のオーブン投入後、120秒放置した後、引張速度:50mm/minで破断伸度を測定する。
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなる(メタ)アクリル樹脂が好適に用いられる。
ここで(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルを意味する。
(メタ)アクリル・ウレタン共重合体樹脂としては、例えばアクリル/ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂が好ましい。硬化剤としては、上記の各種イソシアネートが用いられる。アクリル/ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂は所望により、アクリル/ウレタン比(質量比)を好ましくは(9/1)〜(1/9)、より好ましくは(8/2)〜(2/8)の範囲で調整し、種々の加飾シートに用いることができるので、プライマー組成物に用いられる樹脂として特に好ましい。
本発明においては、調製された塗工液を、基材11の表面に、硬化後の厚さが1〜20μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
また、表面保護層15の最表面における、低光沢領域17の上部は、低艶絵柄インキ層16の形成に伴って隆起し、凸形状18を有していても良い。表面保護層15の表面がこのように凸形状を有することによって、この部分で光が散乱されるため、また表面積が増加し、かつ低艶が認識できる視野角も広がるため、上記低光沢領域17の効果と協調してさらに視覚的な凹凸感が強調される。
また、物性を向上させるために、必要に応じて、成形性を損なわない程度に、電離放射線硬化型樹脂、熱硬化性樹脂又はその硬化剤(イソシアネート等)を添加することが出来る。
絵柄層12が表現しようとする模様のうち、例えば、艶を消して、視覚的に凹部を表現したい部分と低艶絵柄インキ層16を同調させることによって艶差による視覚的凹部を有する模様が得られる。絵柄層12によって木目模様を表現しようとする場合には、木目の導管部分に低艶絵柄インキ層16のインキ部分を同調させることにより、艶差により導管部分が視覚的に凹部となった模様が得られる。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材11として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材11への余分な電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
なお、測定条件としては、幅25mm、長さ120mmの試験片を用い、引張速度1000mm/分、チャック間距離80mm、標線間距離50mm、温度160℃の条件であり、表面保護層にクラックが入る際の引張伸度を測定するものである。
インサート成形法では、真空成形工程において、本発明の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させ、加飾樹脂成形品を製造する。
なお、射出成形同時加飾法では、射出樹脂による熱圧を加飾シートが受けるため、平板に近く、加飾シートの絞りが小さい場合には、加飾シートは予熱してもしなくても良い。
なお、ここで用いる射出樹脂としてはインサート成形法で説明したものと同様のものを用いることができる。
本発明の加飾樹脂成形体は、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材、幅木、回縁等の造作部材、窓枠、扉枠等の建具、壁、床、天井等の建築物の内装材、テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体、容器などの用途に適している。
評価方法
(1)分子量の測定
東ソー(株)製高速GPC装置を用いた。用いたカラムは東ソー(株)製、商品名「TSKgel αM」であり、溶媒はN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を用い、カラム温度40℃、流速0.5cc/minで測定を行なった。尚、本発明における分子量及び分子量分布はポリスチレン換算を行った。
基材フィルムに対し、低艶絵柄インキ層を基材全面の約半分程度に対して被覆するように一様に一定膜厚で印刷して形成した後、基材全面に表面保護層を形成した。表面保護層と反対側の面にバッカーフィルムと貼り合わせ、インサート成形した後の低艶絵柄インキ層形成領域/表面保護層(表面保護層/低艶絵柄インキ層)と低艶絵柄インキ層非形成領域/表面保護層(表面保護層のみ積層されている部分)の光沢度をグロスチェッカー(光沢計:ガードナー社製、商品名「マイクロ−グロス」)を用いて、JIS K5600に準拠して、入射角60度の条件で測定した。
実施例及び比較例に示した熱可塑性フィルムの裏面に、グラビア印刷により木目柄の絵柄層を形成した。次に、絵柄層を施していない表面に、アクリル/ウレタンブロック共重合体を主剤とし、硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型ウレタン系樹脂を塗工して、厚さ2μmの透明プライマー層を形成した。該プライマー層の上に、各実施例及び比較例で製造した低艶絵柄インキを用い、実施例及び比較例で示した膜厚にて、木目柄の絵柄層に合わせた意匠の低艶絵柄インキ層をグラビア印刷にて形成した。次に、各実施例及び比較例で製造した電子線硬化性樹脂組成物を、硬化後の膜厚が実施例及び比較例で示した膜厚になるように塗工した。尚、PPフィルム等、インキ、接着剤等との密着性が必要なフィルムを用いる場合は、適宜、コロナ処理等の処理を行っても良い。この未硬化状樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ、次に該シートの絵柄層に膜厚10μmのウレタン系接着剤を施し、バッカーフィルムである膜厚400μmの隠蔽着色ABS樹脂シートと貼り合わせて加飾シートを得た。試験片として幅25mm、長さ120mmの試験片を切り出し、引張速度1000mm/分、チャック間距離80mm、標線間距離50mm、温度160℃の条件で引張試験を行い、伸度250%まで測定した。低艶絵柄インキ層と硬化膜にクラックが入る引張伸度(%)で評価し、伸度250%まででクラックが入らなかったものは >250と表記した。
実施例及び比較例の加飾シートを用いてインサート成形した後の意匠性を以下の基準で評価した。
○:低艶絵柄インキ層部が凹部として認識され、さらには木目の質感も得られ、意匠性が高かった。
×:意匠が平面的で、意匠性に劣るものであった。
実施例及び比較例の加飾シートを用いて真空成形及び射出同時加飾した後の外観を以下の基準で評価した。
◎:外観上異常なし。
○:3次元形状部又は250%延伸部の一部に軽微な艶変化又はクラックが発生したが実用上問題なし。
△:3次元形状部又は250%延伸部の一部に軽微な艶変化又はクラックが発生した。
×:延伸部分に著しい艶変化又はクラックが発生した。
<真空成形>
加飾シートを赤外線ヒーターで160℃に加熱し、軟化させた。次いで、射出成形用雌型と同形状の型を用いて真空成形を行い(最大延伸倍率250%)、型の内部形状に成形した。型より加飾シートを離型し、不要部分をトリミングして成形品を得た。
<射出成形同時加飾>
加飾シートを可動金型内に設置し、赤外線輻射面ヒーターで加飾シートを130℃まで加熱して軟化させた後、射出成形型で真空成形により予備成形した。その後、雌雄両型を型締めした後、耐熱ABS樹脂を雄型のゲートから射出し、射出成形物の成形と同時に加飾シートをその表面に積層一体化して、加飾成形品を成形した。射出成形条件としては、射出樹脂温度230℃、ホットランナはマニホールド部温度240℃、ゲート部温度235℃、金型は雌型が45℃、雄型が50℃、射出時間5秒、冷却時間20秒で行った。型開き後、加飾成形品を型より取り出して射出成形同時加飾品を得た。
表面処理をしていないPETフィルムの上に表面保護層形成用樹脂組成物を架橋硬化後の膜厚が約15μmになるように塗布した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させた。硬化膜をPETフィルムから剥がして、幅10mm、長さ20mmの試験片を切り出した。該試験片を用いて、JIS K7244−1:1998及び7244−4:1999に準拠し、動的粘弾性測定装置〔レオメトリック・サイエンス・エフ・イー(株)製「RSA II」〕を用い、140℃の貯蔵弾性率を測定した。測定は、クランプ間距離10mm、開始温度30℃、終了温度180℃、昇温速度5℃/分、測定周波数1Hzにて測定した。
電子線硬化性樹脂(以下「EB樹脂」という)である4官能のウレタンアクリレート(以下、「EB−1」という)33質量部に、重量平均分子量(Mw)1.1×105、数平均分子量(Mn)0.64×105、多分散度(Mw/Mn)1.72のメタクリル酸メチル(以下「MMA」という)単独重合体(以下、「PMMA−1」という)を67質量部混合し、電子線硬化性樹脂組成物を得た。EB−1:PMMA−1の質量比(即ち、第1表におけるEB:PMMA比)は33:67である。
次に、基材として、両面コロナ放電処理を施した厚さ60μmの透明ポリプロピレン系フィルムを用い、該フィルムの裏面に、着色顔料を配合した2液硬化型ウレタン樹脂からなるインキを用い、グラビア印刷により木目柄の絵柄層を形成した。次いで、絵柄層を施していない表面に、アクリル/ウレタンブロック共重合体を主剤とし、硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型ウレタン系樹脂を塗工して、厚さ2μmの透明プライマー層を形成した。該プライマー層の上に、ブチラール系印刷インキ(樹脂成分:ブチラール樹脂)100質量部に、吸油量130ml/100g、平均粒径2μmのシリカ(シリカA)をP/V比0.6にて配合して得たインキを用い、グラビア印刷にて、上記絵柄層の木目柄の導管部と同調するように塗工し、厚さ1μmの低艶絵柄インキ層を得た。
該低艶絵柄インキ層上に、上記表面保護層形成用電子線硬化性樹脂組成物を硬化後の厚さが3μmとなるように塗工した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させた。次に、得られた積層シートの絵柄層側に膜厚10μmの2液硬化型ウレタン系樹脂接着剤を施し、バッカーフィルムである膜厚400μmの隠蔽着色ABS樹脂シートと貼り合わせてインサート成形用及び引張試験用加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
なお、表面保護層を形成するための樹脂組成物の140℃における貯蔵弾性率は3.1×106Paであった。
<グロス評価用サンプル作製>
次に、基材として、両面コロナ放電処理を施した厚さ60μmの透明ポリプロピレン系フィルムを用い、アクリル/ウレタンブロック共重合体を主剤とし、硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型ウレタン系樹脂を塗工して、厚さ2μmの透明プライマー層を基材全面に形成した。次に該透明プライマー層の上に低艶絵柄インキ層を厚さ1μmにて基材全面の約半分程度に対して被覆するように一様に一定膜厚で印刷して形成するように、グラビアコートした。次に基材全面に表面保護層を全面に形成し(形成方法は上記と同じ)、表面保護層とは反対側の面にバッカーフィルムである膜厚400μmの隠蔽着色ABS樹脂シートと貼り合わせて意匠性評価用加飾シートを作製した後、射出成形時にシートの表面保護層が射出成形型の雌型に当たるようにインサート成形し、グロス評価用サンプルを作製した。
<射出成形サンプル作製>
上記のインサート成形用加飾シートを用いて上記「(5)成形性」項に記載された真空成形により得られた成形品、及び上記のインサート成形用加飾シートのバッカーフィルムと貼り合わせていないシートを用いて上記「(5)成形性」項に記載された射出成形同時加飾により得られた射出成形同時成形品を得た。真空成形品及び射出成形同時加飾成形品の双方について成形性を評価した。
実施例1のシリカAを吸油量110ml/100g、平均粒径2〜3μmのシリカ(シリカB)に変更した以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
実施例1において、EB−1:PMMA−1の質量比を25:75と変更し、低艶絵柄インキ層と表面保護層の膜厚を第1表記載の値にした以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
なお、表面保護層を形成するための樹脂組成物の140℃における貯蔵弾性率は2.2×106Paであった。
実施例3のシリカAを吸油量110ml/100g、平均粒径2.5μmのシリカ(シリカC)に変更し、表面保護層の膜厚を第1表記載の値にした以外は実施例3と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
実施例3のシリカAを吸油量110ml/100g、平均粒径2μmのシリカ(シリカD)に変更し、表面保護層の膜厚を第1表記載の値にした以外は実施例3と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
実施例3の低艶絵柄インキ層の印刷インキをポリエステルウレタン系印刷インキ(樹脂成分:数平均分子量3,000、ガラス転移温度(Tg)−62.8℃のポリエステルウレタン樹脂)に変更し、低艶絵柄インキ層と表面保護層の膜厚及びP/V比を第1表記載の値にした以外は実施例3と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
実施例3の基材を透明アクリル樹脂フィルム(厚さ75μm)に変更し、低艶絵柄インキ層と表面保護層の膜厚を第1表記載の値にした以外は実施例3と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
実施例1のシリカAを吸油量250ml/100g、平均粒径3〜4μmのシリカ(シリカE)に変更した以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
実施例1のシリカAを吸油量180ml/100g、平均粒径3〜4μmのシリカ(シリカF)に変更した以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
実施例1のシリカAを吸油量130ml/100g、平均粒径2〜3μmのシリカ(シリカG)に変更し、かつP/V比を2.2に変更した以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
11.基材
12.絵柄層
13.隠蔽層
14.接着剤層
15.表面保護層
16.低艶絵柄インキ層
17.低光沢領域
18.凸形状
20.バッカーフィルム
Claims (11)
- 基材上に少なくとも、部分的に設けられた低艶絵柄インキ層と、該低艶絵柄インキ層上に存在してこれと接触すると共に、該低艶絵柄インキ層が形成された領域及び該低艶絵柄インキ層が形成されていない領域を含む全面にわたって被覆する表面保護層を有する加飾シートであって、該表面保護層の厚さが1〜20μmであり、該低艶絵柄インキ層の体質顔料/樹脂の質量比(P/V比)が0.2〜2.0であり、且つ該低艶絵柄インキ層の体質顔料の吸油量(JIS K 5101−13−1:2004に準拠する)が50ml/100g以上150ml/100g未満である、深絞りに用いられる加飾シート。
- 前記表面保護層を形成するための樹脂組成物の以下の測定条件で測定した140℃における貯蔵弾性率が1×105〜1.2×108Paの範囲である請求項1に記載の加飾シート。
貯蔵弾性率の測定条件:JIS K7244−1及び7244−4に準拠し、表面保護層を形成するための樹脂組成物を架橋硬化して製膜した幅10mm、厚さ15μmのシートをクランプ間距離10mm、開始温度30℃、終了温度180℃、昇温速度5℃/分、測定周波数1Hzにて測定する。 - 前記表面保護層が電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを100:0〜25:75の比率(質量比)で含む樹脂組成物を架橋硬化したものである請求項1又は2に記載の加飾シート。
- 前記熱可塑性樹脂のゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算重量平均分子量が9万〜12万の範囲の(メタ)アクリル樹脂である請求項3に記載の加飾シート。
- 前記熱可塑性樹脂の多分散度が1.1〜3.0である請求項3又は4に記載の加飾シート
- 前記電離放射線硬化性樹脂が電子線硬化性樹脂である請求項3〜5のいずれかに記載の加飾シート。
- JIS K 7127に準拠した以下の測定条件で測定した引張試験における引張伸度が160%以上である請求項1〜6のいずれかに記載の加飾シート。
測定条件;幅25mm、長さ120mmの試験片を用い、引張速度1000mm/分、チャック間距離80mm、標線間距離50mm、温度160℃の条件で、表面保護層にクラックが入るまでの引張伸度を測定する。 - 前記基材の前記低艶絵柄インキ層とは反対側の面に少なくともバッカーフィルムを有する請求項1〜7のいずれかに記載の加飾シート。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の加飾シートを深絞りの真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、該成形シートを深絞りの射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程を有する加飾樹脂成形品の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の加飾シートを、所定形状の成形面を有する深絞りの可動金型の該成形面に対し、前記加飾シートの基材が対面するように設置した後、該加飾シートを加熱、軟化させると共に、前記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び、可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程を順次施す加飾樹脂成形品の製造方法。
- 請求項9又は10に記載の製造方法により製造した加飾樹脂成形品。
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